TCHとその治し方

こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井です。

今日は、歯ぎしりや食いしばりは無いのに、歯がどんどん削れてしまう…、という良くない口の癖についてのお話です。

突然ですが、普通の人が上下の歯を触れさせる時間って、1日どのくらいの長さだと思いますか?

お食事の時に、歯と歯が触れる時間も込みで、1日に上下の歯が触れる合計時間です。

1.20分

2.2時間

3.12時間

 

さてさて…答えは、

「1.20分」でした!

意外に短い時間ですよね?
より正確には、平均17分程度と言われています。

朝昼晩の食事も込みで、たったの17分なんです。

しかし、中にはもっと多くの時間、上下の歯を触れさせている方がおられます。

歯医者で「歯ぎしりか食いしばりがあるかも」と言われたけれど、心当たりがない…という方もいらっしゃるかもしれません。

思い当たる方は、TCHかもしれません。

上下の歯を、何となく長時間触れさせてしまう癖:TCH(Tooth Contacting Habit)

食いしばりといえば、上下の歯をぐっと噛みしめてしまう癖ですが、TCHは長時間「接触」しているだけでTCHです。

なんせ、正常が「17分」、長時間が「20分以上」ですから、ご本人が思っているより「歯にとってはとても長い時間の上下の歯の接触」になってしまうのです。

診療室で、上記のような説明をいたしますと、TCHを持つ多くの患者さんが

「えっ!上下の歯って、常に触れていないとダメなんじゃないんですか!?」

とおっしゃいます。

歯は何もしていないとき、「触れていないのが正常」であり、ふわっと上下の歯と歯の間に隙間があります。
これを安静空隙(あんせいくうげき)と言います。安静にしているときに、上下の歯と歯の間にあるスキマ、という意味です。そのままですね。

何もしていない時の口の中のスタンダードな姿は、安静空隙が数ミリ空いていて、かつ、舌が上の前歯の内側(スポット、と言われるポジションです)に触れています。唇は閉じていて、鼻で呼吸している…、と覚えていただくと良いでしょう。

上顎の赤丸の部分が「スポット」

TCHになると、どういう症状がでるの?

TCHの主な症状は以下のようなものです。

  • 歯が割れたり、欠けたりしやすい
  • 詰め物が割れたり、欠けたりしやすい
  • 歯がしみたり、痛みが出ることがある
  • 頬の筋肉が疲れたり、違和感が出ることがある
  • 顎が痛くなったり、口が空きにくくなったりする

TCHによる症状の治療法

TCHによって、前述のような症状が出てしまった場合、どうすればよいでしょうか?

マウスピースで歯を保護する

まず、歯や詰め物を保護するためにマウスピースで歯を保護する方法があります。マウスピースは保険適応で作ることができます。

このマウスピースは歯よりも柔らかいプラスチックで出来ており、歯ぎしりや食いしばり、そしてTCHによって歯がダメージを受ける代わりに、マウスピースが削れてくれることで歯が守られます。

主に夜間に使用します。起きている時も、もちろん使用することはできるのですが、厚みがあるため、かなり喋りにくいです。対面で喋る分には、滑舌悪いなりに会話を聞き取ってもらえますが、電話では何を言っているか分からないと言われてしまいますので、お仕事中のご使用には不向きです。

付箋をあちこちに貼る

「歯と歯を離す」と書いた付箋を、お仕事や家事、勉強などをされる場所のあちこちに貼ります。どこを向いても、視界に入るように、仕事用デスク5枚、トイレ3枚、寝室5枚、冷蔵庫に1枚、洗面所にも1枚…と、これでもか!という枚数を貼ります。

「そ、そんな原始的な方法で…」
と皆さん、苦笑いされるのですが、これがかなり有効なんです。

無意識に歯を歯をキュッとくっつけてしまうTCH、意識して歯を離すというのは至難の業。でも、付箋を目にしたら「歯と歯を離して、力を抜く」と習慣づけてしまうのは、そんなに難しくないのです。

そして1)のマウスピースよりこちらの方が、効果が高い方も大勢います。
しかも、ほとんどお金をかけない方法ですので、最初にTCHの症状が出た場合はまずやってみることをおススメします。

ただ、最大の欠点として、部屋が付箋だらけになります。

仕事、家事、勉強の姿勢を見直す

特にパソコン仕事が多い方にお勧めな方法で、モニターをモニターアームを用いて高い位置にしたり、昇降机、パソコン台を設置するなどの方法があります。
他にも、本を読むときに本を高い位置にしてくれる書見台を用いる、などもおススメです。

青の位置にモニターを持ってくる

こちらは机の上に置くタイプの高さ調整のできる机です。出典:amazon

どうしてモニターアームを使えば良いのか?その理由は、簡単に確かめることができます。上下の歯を軽くあてて、まっすぐ前を向き、次に下を向いてください。

下を向いた時の方が、かみ合わせが深くなったというか、上下の歯がより強く当たるようになったのが分かったと思います。

下を向くと、その分だけ、歯と歯の接触は強くなります。下を向く時間が短くなるように環境を整えることで、TCHを軽減することが出来るのです。

モニターアームや書見台は、昔は専門店まで行かないと入手できませんでしたが、今はネット通販で1万円台でも良い物が売っていますので、おススメです。

TCHの改善法は、出来ることを出来る範囲でするしかない

以前、TCHを持つ美容師さんに
「仕事中にずっと噛んでいるのを止めたいのだけれど、仕事中はマウスピースは(喋れないと困るので)出来ないし、付箋もお店に貼ることができません。下を向くのも、仕事上、しないわけにいきません。どうしたら良いですか?」
と訊かれ、非常に困りました。

結局のところ、出来ることを、出来る範囲でやるしかないと思います。
例えばお客さんから見えにくい部分に付箋を貼るとか、自分の道具類に付箋の代わりにテプラで「歯と歯を離す」と貼る、なんて方法もあるでしょう。
また腕は疲れるかもしれませんが、時間を決めて、お客さんの椅子を出来るだけ高い位置まで上げてお仕事するなんて方法もあるでしょう。

工夫のヒントが思いつかない場合は、お気軽にご相談くださいね。

まとめ

  • 1日20分以上、上下の歯が接触した状態にある癖を「TCH」と言います
  • TCHになると、歯が欠けたり、痛みが出たり、顎関節症になりやすくなったりすることがあります。
  • TCHの症状は「マウスピースを使用する」「付箋をあちこちに貼る」「下を向く時間を短くする」などの方法で軽減させることができます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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