こんにちは、つぼい歯科クリニック 院長の坪井です。
今日は、「噛み合わせ」のお話です。

というのも、先日事務長に
「歯科医院で働くまで“かみ合わせ”って単語を聞いたことが無かったんですよね。」
「多くの患者さんも、きっとそうなんじゃないですか?」
「意味は、歯と歯が噛んでる状態のことなんでしょうが…、歯科医院では『噛み合わせがどうこう』ってよく言いますが、きっと患者さんも分かったような、でもちゃんと理解しているかと言うと微妙って方、多いんじゃないですか?」
と言われ、なるほどと思ったのです。

  • 噛み合わせには複数の状態がある
  • 噛み合わせが乱れる原因
  • 噛み合わせが乱れてしまうと、どうなる?

少し難しいお話ですが、歯医者さんで良く聞く「噛み合わせ」って何なの?とご興味をお持ちの方は、ぜひお読みください。

噛み合わせには、複数の状態がある

専門用語では、噛み合わせのことを「咬合(こうごう)」と言います。
歯と歯が噛んでいる状態のことです。

歯と歯が噛んでいる状態なのですが、上顎の骨に上の歯が、下顎の骨に下の歯が、それぞれ歯はがっちり固定されているわけなので、
これはつまり、
上の顎骨に対する下の顎骨の位置関係の話なのです。

下顎の位置関係で、上下の歯がどう触れているか、あるいは触れていないかが決まるんですね。

下顎の位置の中で、上下が「噛んでいる」と言われている状態には、咬頭嵌合位(こうとうかんごうい)や中心位などがあります。

咬頭嵌合位(こうとうかんごうい)

上の歯と下の歯が、ぐっと噛んで、一番安定して噛んでいる(広い面積で噛んでいる)顎の位置です。

一般的な虫歯治療において、
「噛み合わせを記録させてくださいね~」と、型取りの前後で何か(ワックスやシリコンなど)を噛むよう指示されますが、あれは咬頭嵌合位(こうとうかんごうい)を記録しています。上下の歯型模型で噛み合わせを再現するためです。

歯医者にとっても、咬頭嵌合位をしっかり再現できる虫歯治療は楽チンです。「噛んでくださいね~」と言うだけで記録を取ることが可能ですから。

虫歯治療でも、
とてもたくさんの歯を失ってしまっている場合や、
噛み合わせが既に乱れてしまっている場合、
大きな入れ歯を作る場合は、
天然の「咬頭嵌合位」をすでに失ってしまっていることがあり、この場合は別の方法で下顎の位置を記録せねばなりません。

中心位

これは簡単に言えば、下顎の骨が顎の関節の中で安定的に蝶番運動(ちょうばんうんどう 注1)ができる位置を言います。

注1)「関節頭」が「関節窩」内で「回転」する運動のことを、ドアなどの”蝶番(ちょうつがい)“に例えて「蝶番運動(ちょうばんどう)」といいます。

わかりにくいですね。
でも、この「中心位」を丁寧に説明しようとすると、それこそ歯科の分厚い専門書1冊分になっちゃうんです。

記録方法も、「はい、噛んでくださいね~」だけで済まず、色んな補助器具を用いて、安定的に噛める場所を探す必要があります。
特に、総入れ歯や、たくさんの歯を失った大きな部分入れ歯の場合、「咬頭嵌合位(こうごうかんごうい)」はすでに失われていますから、この中心位を探さないと、噛める入れ歯にならないんです。

総入れ歯や、大きな部分入れ歯の治療が、虫歯や被せ物の治療より多くの通院が必要となる理由の一つです。

「咬頭嵌合位」が失われている場合、実は、ものすごく確認しなきゃいけないこと多くなってしまいます。

入れ歯を作るときに「まだ完成しないの!?」と言われることが多いのですが…、このような事情があるんです。

噛み合わせが乱れる原因

後天的に噛み合わせが乱れる原因は、

  1. 歯をたくさんの本数、失ってしまったから
  2. 虫歯を長期間放置してしまったから、治療途中で放置してしまったから
  3. TCH(歯牙接触癖)や歯ぎしり、食いしばりで歯が咬耗(噛むことで歯が摩耗してしまう)してしまったから
  4. 歯周病、怪我、その他の原因で歯の位置がズレてしまったから
  5. 頬杖、横寝、左右片方でばかり噛む癖、口呼吸などで、歯並びを悪くしてしまったから

など、多岐に渡ります。

a~c)までは、歯や、歯の噛み合わせの面が削れることによって咬頭嵌合位を失ってしまったケースです。

d~e)は、歯の位置が動いてしまうことで、噛み合わせに不具合が出てしまったケースですね。

噛み合わせが乱れると、どうなる?

a~c)の場合は、噛み合う歯を失っていたり、歯が摩耗してサイズが小さくなったりしていますので、噛み合わせが低くなります。

噛み合わせが低くなると、鼻からオトガイまでの距離が短くなり、口回りの皮膚があまって、口角が下がります。

頭部の輪郭は、鼻からオトガイまでの距離が短くなること、口角が下がることから、老けた印象になります。

また、噛む場所を失って食事がしにくくなったり、痛みが出ることもあります。

d)の場合は、特定の歯が揺れてきたり、噛むと痛みが出るようになったりすることがあります。

e)の場合は、顎関節の症状が出たり、口呼吸により出っ歯になってしまったりなどする可能性があります。

虫歯を放置したり、歯を失ったのを放置したりは、患者さんご本人も何が問題か分かっている場合が多いのですが、

c~e)の癖や歯周病が背景になっている場合は、ご本人がどんな原因で痛みが出ているのか、ご存知ないことが多いです。
特に、日常的に痛いとまではいかない、違和感や稀に起きる痛みなどは、放置されがちです。

噛み合わせが乱れる前の治療は、治療難易度も低く、また通院回数も少ないのです。

しかし噛み合わせが乱れた後に、噛み合わせを治す治療は、治療難易度も高く、通院回数も多いです。

治療費用も、もちろん噛み合わせが乱れてしまった後の方が高額になります(受診回数も、治す場所も増えますので…)。

「思い当たる悪い癖」や「気になる口の症状」がある場合は、一度歯科医院で相談されることをおススメします。

まとめ

いかがでしたか?

  • 噛み合わせが乱れる前と、乱れてしまった後では治療の難易度も通院回数も差がある。
  • 噛み合わせが乱れる原因に思い当たる方は、早めに歯科に受診しましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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