外傷歯の治療について(シリーズ2)
2022年9月24日
外傷歯の治療について(シリーズ2)
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
今回も外傷シリーズで行こうと思います。
以前にお話ししたのは1歳ぐらいのかなり小さなお子さんでしたが、今回は小学校~中学生くらいの時期によく起こる外傷についてお話していきます。
小学生から中学生の間によく起こる外傷例
Bくんは、11歳半の男の子。
友達とスポーツ少年団でハンドボールを頑張っています。
試合形式の練習中に友達と激突し、前歯付近を打ちました。
上唇と上の前歯の歯茎から出血があり、前歯がぐらついているようです。
歯が欠けているかはよくわかりません。
1)スポーツでの外傷
小学~中学生の歯の外傷は、スポーツによるものが多くなります。
一般的に体の接触が多いスポーツでは、特にリスクが高い傾向にあります。
そのため、空手の組手競技などでは、スポーツ用マウスピースの使用が求められています。
球技でのケガも多いですが、競技の内容によって違いがあります。
歯のケガが少ないスポーツ
テニスなど
歯のケガが多く報告されているスポーツ
体の接触が多いラグビー、バスケットボール、ハンドボールなどでは多発しています。
(令和3年学校歯科医会会雑誌No2参照)
そのため、歯科医としては、スポーツ用マウスピースを「可能であれば」というより、「ぜひとも」つけていただきたいと考えています。
2)口を含む頭頚部のケガ
口を含む頭頚部のケガには、頭頚部の外傷(打撲、切り傷、歯のケガもここに含まれる)から、脳震盪、脊髄損傷など重篤なものもあります。
脳震盪など重篤なものの場合、動かさない方がよい場合も多いです。
まずは命に係わるものかどうかを判断しましょう。
歯科医院でも、けがした部位のみではなく、顎骨等のチェックも行っています。
実際、介在骨折というパターンで、打った部位ではない場所が骨折している(顎の下を打った、顎関節部が折れていた、など)ということがあります。
このような大きなけがの場合、大学病院などでの処置となります。
3)ぐらついている歯の処置
歯を打った場合、ほとんどすべての歯で振盪といわれる状態になっています。
歯は歯槽骨に、歯根膜といわれる血管、繊維で繋がっています。
揺れている場合は、その歯根膜のどこかに亀裂、断裂が起きています(これが振盪)。
その断裂部位が歯根の先端部分であれば、歯の歯髄が壊死して後日変色が起きます。
見ただけでは断裂部位は判断できません。
歯髄の活性によっては歯髄壊死が起きない場合もあるので、歯が揺れている場合は、まず固定して安静にしておくのが重要です。
4)歯が欠けた場合
前回にも少し記載していますが、大きく3パターンに分けられます。
・軽度の歯冠破折(しかんはせつ:歯の表面が欠けた)
ほんの少し欠けただけなら、様子見することもあります。
歯科用プラスチックで、欠けたところを埋めることもあります。
・歯冠破折(しかんはせつ:歯が欠けた~割れた)
神経が出てしまうほどの割れ方をしてしまった場合は、根っこの治療をします。
・歯根破折(しこんはせつ:歯の根っこが割れた)
歯の根っこが割れてしまうと、残念ながら抜歯するしかないこともあります
ただ、12歳ぐらいの若い歯髄は生命力、治癒力が強く、こちらの想像を超える治り方をする場合があります。
歯髄壊死をしている部分を取り除いてやれば、結果としては歯や歯根の長さはだいぶ短くなったりしますが、なんとか歯として残せることもあります。
まとめ
・まずは怪我の内容、体の状態を広い視野で確認しましょう。唾液等で出血は大きく見える場合もあります。
・ぐらぐらしている歯の場合は、まずは固定して安静にすることが重要です。
歯の破折はその折れた部位によって治療方法や予後が異なります。
若い永久歯の場合は、歯根破折など厳しい状態でも残す努力と歯髄の生命反応の結果、残せることもあります。
・外傷は年齢、歯の受傷具合で方針が大きく異なります。
12歳ぐらいのお子さんの場合、受傷状況を教えていただけると治療の参考になる場合が多いです。
また、1度治ったところでも、2度目のダメージは強く出る傾向にあります。
何度もぶつけないように気を付けましょう。
いかがでしたか?
けが予防のためにも、スポーツ用のマウスピースはできればつけていただきたいと考えます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。