永久歯の本数のトラブル(先天性欠損歯や過剰歯)について
2019年6月1日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
長い連休が終わり、今は暑くもなく寒くもなく丁度良い季節ですね。
5月は幼稚園、小学校などでも検診が行われ、皆さんから歯並びの相談などを受けることがあります。
その中で、最近増えているのが、歯の数の問題です。
今回は永久歯の本数によるトラブルをテーマにお話ししていきます。
歯数の問題には、永久歯の歯の数が足りない先天性欠損と、余分な歯の芽である過剰歯が存在するという大きく二つが挙げられます。
1)永久歯が生えてこない!?先天性欠損歯について
先天性欠損歯については、2010年に日本小児歯科学会の大規模な調査が行われました。
その調査では10%、つまり10人に1人ぐらいに一本以上の先天性欠損(欠損歯)が存在することが明らかになりました。
10人に1人は歯科医師としてはかなり多い頻度に思います。
先日、つぼい歯科クリニックでも、学会の研究協力の一環で、当院における先天性欠損歯の頻度を調べました。
結果は、やはり日本小児歯科学会の大規模な調査と変わらない頻度(7%)でした。
欠損部位について
欠損部位としてよくあるのは、下の前歯(前から1-2番目)と小臼歯(前から4-5番目)です。
下の前歯が少ないと、下顎の前方部の成長が少し悪くなるので、咬み合わせが深い歯並び=出っ歯になることが多いです。
また、上下の歯の真ん中(正中)が少しずれますが、気になるほど目立つことはあまりありません。
小臼歯がない部位で乳歯が抜けると、大臼歯(6番目)が倒れる場合が多くなります。時間の経過とともに咬み合わせが低くなり、顎関節症をおこす原因にもなり得るので、何らかの矯正治療か補綴治療(歯列の隙間を冠やブリッジ、入れ歯などでうめる治療)が望ましいです。
その一方で、虫歯でない場合、乳歯も意外と維持できる(30~40代まで)ので、抜けるまで様子を見るケースもあります。
2)過剰歯について
過剰歯は近年まだ決定的な調査はなされてはおりませんが、2-5%の頻度であると言われています。
当院でも先日併せて調査を行いましたが、2%ぐらいでした。
40-50人に一人、つまりはクラスに1人ぐらいの割合ですね。
過剰歯の場合、圧倒的に上の前歯の間に存在します(70%程度)。
過剰歯には上向き、水平、下向きの3パターンが存在し、上向きの場合、生えてくることがあります。
過剰歯はイメージとして、上顎の真ん中に釘が刺さっているようなもので、前歯の永久歯はそれを避けて生えようとします。
そのため、歯並びが相当悪化する場合があります。
歯並びに影響する場合、過剰歯の抜歯は必須ですし、矯正もかなりの確率で必要です。
3)それら以外の歯の萌出障害
その他にも何らかの原因で、歯の萌出障害(生えてこない・傾いて生えてきた等)を生ずる場合があります。
多いのは、上顎前歯と犬歯(前から3番目)です。
原因によっては、手術込みの矯正治療が必要となる場合があります。
4)治療について
先天性欠損歯は、基本的に今ある乳歯や永久歯を維持し、咬み合わせを保っていく、いわゆる「待ち」の状態で考えます。
一方、過剰歯・萌出障害は処置のタイミングが大事で、手術込みの矯正を行う場合があります。
どちらにしても詳しい診査が必要ですので、歯の数について何かお気づきのことがありましたら、早めにご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 永久歯の本数についてのトラブルには、先天性欠損歯や過剰歯が挙げられます。
- 先天性欠損歯は10%、過剰歯は2-5%と、頻度は意外と高く、最近よく相談をうける問題です。
- 先天性欠損歯の場合、基本的には今ある乳歯や永久歯を維持し、咬み合わせを保っていくことが重要です。
- 過剰歯や、萌出障害の場合、手術込みの矯正が必要となる場合が多く、タイミングが重要で、詳しい精査が必要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。