子どものいびきについて
2021年5月20日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
5月中旬、気持ちのいい季節になりましたね。
ただ、この時期は朝晩の気温差が大きく、また黄砂が多い時期で、鼻炎・鼻づまりになりやすい時期でもあります。
今回は、鼻炎になりやすい季節によくある「いびき」の悩みについてお話していきます。
どうして「いびき」が出るの?
起きているとき、大人も子どもも呼吸音は出ません。
これは気道の確保が十分にできていることの表れです。
ところが、睡眠時は舌が重力によって気道を押し、気道が狭くなってしまいます。
気道が狭くなってしまうと、喉の部分でホイッスルのように音が出てしまいます。
これが「いびき」で、大人も子どもも音が発するメカニズムに違いはありません。
参考リンク)いびきの原因って?~音が鳴るメカニズム~
いびきの原因って?~音が鳴るメカニズム~
いびきには、様子を見ても問題ない「いびき」と、気にしないといけない「いびき」があります。
気にしなくて良い「いびき」、要注意な「いびき」
日本人は顎が小さく、体格的にいびきが起きやすいと言われています。
特に子供においては近年増加傾向にあり、習慣的にいびきをする割合が10%程度あると言われています。
気にしなくて良い「いびき」
要注意な「いびき」
- やや高い音
- 不規則なもの(たまに途切れるなど)
- 寝起きが悪い、日中眠気を覚える
要注意な「いびき」とは、睡眠時無呼吸症候群や、その予備軍のサインであることが多いです。
体内に十分な酸素が入っていっていないことが考えられます。
子どものいびきの原因は、アレルギー性の鼻炎、もしくはアデノイド・扁桃腺の肥大が多いです。
アデノイドは免疫を獲得する6-7歳で最も大きくなります。
通常であれば問題ないですが、免疫が過敏な子どもでは腫れあがり、いびきにつながることがあります。
アデノイドと歯並びの関係
アデノイドが腫れている子どもは、歯列不正が起きやすいと言われています。
面長(ロングフェイス)や下顎が小さく引っ込んだ顔を総称してアデノイド顔貌と言い、上顎前突(出っ歯)や叢生(歯並びがガタガタしている)が非常に起きやすくなっています。
アデノイド顔貌はここ10年ぐらいで、特に増えたと言われています。
その他の症状としては、アデノイドは耳管も閉塞するため、中耳炎が起きやすかったりします。
また、多くはないのですが、子供でも睡眠時無呼吸症候群が起きている場合があります。
子供の睡眠時無呼吸症候群
子供の睡眠時無呼吸症候群の発生率は1-2%程度と言われています。
1時間の中で、5回程度10秒以上の呼吸が停止している場合に、診断がつきます。
睡眠時無呼吸症候群外来や、小児の場合は小児科で検査することになります。
子供の睡眠時無呼吸症候群の問題点
- 日中も眠く、フラフラしてしまう
- 成長ホルモンの分泌が阻害され、発達や身長の伸びなどに問題が出る場合がある
このような状態でのいびきは大変に危険です。早めにご相談下さい。
まとめ
いかがでしたか?
- 日本人は骨格的にいびきをかきやすく、子どもにおいては増加傾向です。
- 10%程度の子どもがいびきをかいており、1-2%は特に重症の睡眠時無呼吸症候群を併発している場合があります。
- アデノイド、扁桃腺の腫脹が原因で起きるいびきでは、歯列不正を伴う場合が多いです。
- 睡眠時無呼吸を伴ういびきの場合、成長発達までかかわる重症な場合があり、注意が必要です。
思い当たることが…という方は、お気軽にご相談ください。
いびきの原因って?~音が鳴るメカニズム~
2017年4月8日
イビキの仕組みと睡眠の質のお話
こんにちは!つぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
すっかり暖かくなってきましたね。朝に布団から出たくなくなる季節は過ぎ、心地よい春の朝を皆さん楽しんでおられるかと思います。
「歳をとったら、眠りが浅くなって朝が眠い…」
「太ってから妻にイビキがうるさいと言われる…」
「ときおり、自分のイビキで目が覚める…」
「春の朝は花粉症がつらいので嫌いです」
おや、春眠暁を覚えずどころでない方々がいらっしゃいますね。
最後の花粉症のお話はまた、別の機会を設けさせていただくとしまして、今回はイビキについてお話です。
どうしてイビキは出るの?
そもそもイビキってどうして寝ている時だけ鳴るの?
そもそも、どうして息をするだけで音がでるのでしょうか。
息を吐くだけで大きな音が出るなんて、まるでホイッスル(笛)のようですよね。
これはホイッスルの構造です。

画像:http://www.ekouhou.net/
マウスピースと書いてあるところが口をつけて息を吹き込むところです。
ここから息を吹き込んで、排気口から息が抜けていきます。
この排気口に細い羽根のようなパーツがあり、この細い羽根の部分に息が当たると風切り音が鳴ります。
奥の共鳴室でこの風切り音が共鳴して、大きな音が鳴るんですね。
さて、次はヒトの喉の構造です。

画像:https://kotobank.jp/
上顎の喉のすぐ近くには軟口蓋(なんこうがい)といい、その先端に口蓋垂(こうがいすい)が垂れ下がっています。
軟口蓋のお向かいには舌がありますね。
ホイッスルとちょっと構造が似ていませんか?
鼻の穴や口がマウスピース、口蓋垂がある部分が排気口の羽根、鼻の孔が共鳴室です。
なぜ起きているときにはイビキが出ないの?
起きているときは頭が直立していますから、下顎と舌は重力で下に引っ張られ、気道は広い状態です。
気道が広ければホイッスルの排気口のように風切り音が出る場所がなくなります。
一方、寝ている時は横になっていますから、下顎と舌は重力で下に引っ張られ、気道を押しつぶして塞いでしまいます(舌根沈下)。

舌根沈下により狭くなった気道と口蓋垂の部分がちょうどホイッスルの排気口のような形になって風切り音が出ます。
これがイビキの正体です。
イビキが悪化する要因は何?
冒頭のお悩みに戻りましょう。
「歳をとったら、眠りが浅くなって朝が眠い…」
「太ってから妻にイビキがうるさいと言われる…」
「ときおり、自分のイビキで目が覚める…」
どうして、歳をとったり太ったりしたらイビキが出やすくなるのでしょう。
また、イビキが出ると眠りが浅くなるのでしょうか。
舌は筋肉の塊
他の場所の筋肉と同じく、舌も加齢により筋力低下します。
すると重力に抵抗して同じ位置に留まる力が弱くなりますから、睡眠時の舌根沈下は大きくなります。
舌が大きく沈み込めば、その分気道が大きく圧迫されます。
また、太ると喉周りについた脂肪が物理的に気道を細くしてしまいますので、ちょっとの舌根沈下でも気道が強く圧迫されてしまうのです。
イビキが出るようになると、眠りが浅くなった
これはイビキが眠りを浅くするというより、気道が狭くなることによって睡眠時に十分な呼吸ができないことによることが多いです。
この状態が悪化したものが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」といって、寝ている間に十分に呼吸できないため眠りが極端に浅くなってしまう病気です。イビキはそうした病気のサインでもあるのです。
まとめ
- 寝ている時にいびきが出て、起きている時はいびきが出ないのは舌根沈下による
- 舌は筋肉なので、加齢とともに筋力が衰え、舌根沈下しやすくなる
- 太ると脂肪が気道を細くするので、少しの舌根沈下でも大きく気道を塞いでしまう
- 気道が塞がれた状態は呼吸がしにくいので睡眠が浅くなる
いかがでしたでしょうか?
さて、次回は「イビキと睡眠時無呼吸症候群、そしてその改善法」をテーマにお送りいたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。