今どきの歯磨きとデジタル化
2022年6月6日
今どきの歯磨きとデジタル化
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
今回は、ハミガキをテーマに、昔と比較して考え方が変わったものと、変わらず大切なポイントについてお話します。
お子さまに限らず、大人でも歯磨きはなかなか大変です。
僕が歯科医師になった20年ぐらい前では、歯磨きと言えば小さなヘッドで上手に、丁寧に磨くバス法が勧められていました。
バス法


その歯磨きの基本は今も変わっていませんが、今どきは歯磨きアプリなどもあるようです。
今回は小児歯科医として、歯磨きの大事と思うポイントと、今の流れについてお話していきます。
虫歯予防の「昔から変わらない」特に大事なポイント
1)砂糖の摂取量をコントロールする
特に小児においては、砂糖の量のコントロールが虫歯予防のキモになります。
2)歯磨きでプラーク(歯垢)をしっかり取り除く
歯磨きスキル×時間の掛け算で、プラークがどのくらい取り除けるかが決まります。
歯磨きが上手でも30秒では磨き残しも出るでしょうし、歯磨きがさほど上手でなくても、時間をかければ綺麗にできます。
ちなみに、ある程度綺麗に磨ける状態になるためには、最低「3分以上」歯磨きした方が良いと言われています。
虫歯予防の「今では常識が変わった」項目
歯ブラシのヘッドの大きさや、毛の密度は個人の好みで変えて良さそうですが、「歯ブラシ1本でオーラルケアは十分!」という時代は、どうやら終わったようです。
日本人…小さな歯ブラシで磨き、フロスや歯間ブラシはあまり使わない
ヨーロッパやアメリカ…大き目の歯ブラシでザっと磨いて、フロスや歯管ブラシなどを併用するのが常識
今の歯科界の結論…歯ブラシ磨きだけでは無理、フロスや歯間ブラシの併用が必要
日本人は器用なので、歯ブラシ1本で済ませようとしてしまう方が多いのです。
しかし、今や、フロスや歯間ブラシは必須という考え方が主流になっています。
虫歯予防の「最近登場した、便利な道具」…電動歯ブラシ+連動アプリ
電動歯ブラシと、それに連動するアプリで例の黄金時間である3分を目標として、アプリで指示される部位を見ながら必要な時間当てていく…という方法があります。これが非常に効率が良く、おススメです。
その他の歯磨きアプリも、手用で磨くとしても必要な歯磨き時間の間、歯磨きを続けたくなるようにゲーム要素を加えたものなどが人気です。
目的にあった歯磨きペーストを選ぶ
~電動歯ブラシを用いる場合は研磨剤不使用の歯磨きペーストを使おう~
歯磨き剤も歯磨剤の添加、無添加・フッ素など薬効成分など細分化されています。
私、現在46歳なのですが、歯茎の下がりを切に感じております。
歯茎が下がれば象牙質の露出が増え、知覚過敏がおきてしまいます。
そのため、電動歯ブラシを使う際には、研磨剤の入っていない歯磨剤を使う必要があります。
他にも、フッ素による再石灰化を強みにした歯磨剤、
手磨きによるステイン除去(歯の着色汚れ)を想定したもの、
歯周病予防をメインにしたもの、
知覚過敏の人におすすめなものなど、
歯磨きペーストによって特徴があります。
どんな歯磨き粉が自分に合うか分からない方は、お気軽に相談してくださいね。
結局のところ、歯を守りたいという意識の高さが大事
また、電動歯ブラシを使っている人でも、なんとなくヘッドを歯にあてているだけ…という人の場合は、磨き残しが多くあるなんてことは珍しくありません。
やはり結局のところ、歯が大事と思う価値観と、全体を磨く意識が大事なんだと思います。
意志と道具、薬効の特徴を上手に使って、歯を大事にしていきましょう!
まとめ
いかがでしたか?
・虫歯予防として、糖分の摂取量を減らすこと、3分以上歯磨きをすることが重要です。
・歯みがきに使う道具は好みによって変えてよいと思います(歯ブラシのヘッドなど)が、フロスや歯間ブラシも併用しましょう。
・電動歯ブラシはかなり自動化されているのでお勧めです。
・知覚過敏の有無や虫歯の罹患しやすさなど、年齢によって歯ブラシと歯磨剤の適応も変わります。
意志と道具、薬効成分を上手に把握して、歯を大事にしていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
虫歯のなりやすさと体質について
2022年1月14日
岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
現在、当院には虫歯予防に努力してくださっている方が多く通院してくださっています。
とてもうれしく思っています。
以前に作ってしまった、削るほどではない初期虫歯を管理するのも、我々歯科医師の重要な役目です。
参考リンク:削らなくても治る虫歯があるって本当?
削らなくても治る虫歯があるって本当?
しかし、残念ながら、虫歯ができてしまう方もおられます。
そこで今回は、お子さんの虫歯のなりやすさと体質を中心にお話していきます。
大人はまた少し違うので、またいつか解説します。
1)虫歯のなりやすさを左右する因子
キースの輪
歯科医師が大学で最初に習う、キースの輪と呼ばれる虫歯の原因因子同士の重なりを示すものがあります。

画像参照https://www.apagard.com/oralpedia/oralcare/details/Vcms4_00000101.html
細菌、歯質、糖分、時間の重なりで、多く重なるとリスクが高まります。
最近の統計学的なアプローチで検討している論文では、虫歯の原因因子の重要度ランキングでは
1位 唾液量
2位 乳歯う蝕の経験歯数
3位 菌の量
4位 プラーク(歯垢)量
5位 飲食回数
6位 フッ素使用頻度
という順でした。
個人的な感覚にはなりますが、この他に虫歯の重症度(大きさ)なども、重要だと考えています。
2)小児と唾液について
イグノーベル賞という、人々を笑わせ、考えさせられるユニークな研究などに贈られる賞があります。
2019年のイグノーベル賞に、小児の一日唾液量を研究した、という明海大の渡部教授の研究がありました。
専門外の方にとっては、『なぜ小児の一日の唾液量を知りたいと思ったのか』が笑いポイントなのでしょうが、歯科医師、特に小児歯科医師にとっては「知りたかった!」という重要な研究です。
それによると、小児(6歳児)の唾液量は500mlで、成人よりも若干少ないという結果でした。
大学病院勤務時代、小児がんなどのため、抗がん剤を投薬されていたお子さんたちの口腔内を診察する機会がありました。
唾液量や唾液の緩衝能(虫歯を防ぐ効果です)などが低く、虫歯リスクはどうやっても高いままでした。
抗がん剤ほどではありませんが、多くの薬で、唾液量の減少が見られることが知られています。
薬を常用している場合は注意が必要です。
3)歯質と虫歯リスクについて
学校健診などでは、細菌が原因でなくても歯の状態が悪ければ、う蝕と診断されます。
特にエナメル質形成不全は虫歯と診断され、最近よく見かけます。
エナメル質形成不全についてはこちら
参考リンク:エナメル質とその形成不全について~治療と原因~
エナメル質とその形成不全について~治療と原因~
ちなみに近年の発表では、エナメル質形成不全の歯が一本でも見られる人の発生率は20-25%にも昇るようです。
4-5人に1人はそういう歯をお持ちの割合になります。
また、黄色人種はそのほかの人種に比べてエナメル質が薄い傾向にあり、虫歯が進行しやすく注意が必要です。
まとめ
- 細菌、歯質、糖分、時間のリスクが重なり、虫歯ができます。
- 虫歯の原因因子は、唾液量、乳歯う蝕の経験歯数、菌の量、プラーク量、飲食回数、フッ素使用頻度などがあります。
- 唾液量、歯質などは個人差が大きいですが、総じて日本人は歯が強くない傾向にあります。
以上のような要素を考えながら、予防対策を行うことが重要です。
診療室では、虫歯に最もなりやすい人に対しても、なりにくい方法を考えます。
そして、その対策を説明しています。
「チョコ止めましょう」
「グミやめましょう」
「そろそろ卒乳が必要です」
など、飲食習慣の改善も含めたお話になることもあります。
そのため、少し厳しく聞こえる場合もあるかもしれません。
しかし、個人の体質や虫歯リスクに対して、最も効果的な予防や処置を行うことが重要と思っています。
ご不明な点や、虫歯予防について話が聞きたい場合は、お気軽におたずねください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
どうして定期的な歯石取りを勧められるの? 歯石と歯石取りのお話
2021年7月9日
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
あなたは歯科医院で「歯石がついていますよ」と言われたことはありませんか?
当院では、定期的な歯科受診と歯石除去をおススメしております。
今日はその理由をお話しします。
歯石って何からできているの?
歯石というのは、お口の中のプラーク(細菌の塊)に唾液の中に含まれるカルシウム分などが沈着して石灰化してしまったものです。
要は、ばい菌の死骸が固まったものですね。
歯石がつきやすい場所
唾液腺、という唾液が分泌される器官の付近では歯石が付きやすい、出来やすい傾向にあります。
また、歯垢が残りやすい場所も歯石が付きやすくなります。
具体的に言うと、下の前歯の内側や、上の奥歯の外側などです。
もちろん、歯のまわりのプラークを取らずにそのままにしておくと、どの部位でも歯石になっていきます。
歯石が体に悪い理由
歯石は多孔質(穴がいっぱい空いている形状)なので、その穴に虫歯菌や歯周病菌が棲みつきやすく、歯周病やむし歯などのリスクファクターとなってしまいます。
また、歯石からはLPSという毒素を出します。
LPSという毒素は、炎症性サイトカインという、炎症を促進する物質を体に出させます。
それによって歯周組織の破壊が促進されて、歯周病の直接の原因にもなってしまいます。
歯垢が歯石になってしまうと、歯ブラシでは取り除くことは出来ません。
歯科医院で歯石取りをするのが、一般的な対処法です。
歯科衛生士や歯科医師という、国家資格を持つ専門家が歯石の除去を行います。
ちなみに、家庭用のスケーラー(歯石取りの道具)と称して、通販サイトなどで歯石取りの道具が売られていますが、おススメしません。
歯科医師や歯科衛生士でも、家庭用の照明の下でセルフで自分の歯石を取るなんて歯を傷めそうなことはしませんからね。
よろしければ、こちらの記事も参考になさってください。
参考リンク:家庭用超音波スケーラーは歯をかえって傷つけてしまう危険性がある
参考リンク:ネット通販でセルフケア用に売られているオーラルケア用品、 買って良いもの・ダメなもの
歯茎の上から見える歯石と、歯茎の下の見えない歯石
歯石にも種類があります。
歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)と、歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)に分けられます。
言葉どおり、歯肉の上の歯石か、歯肉の下の歯石かってことです。
歯肉縁上歯石
口を開けて、歯茎の上にある歯石です。
- 白っぽく比較的柔らかです。
- 柔らかといっても、歯石はほっておくとどんどん固くなってしまいます。
- 歯肉縁上ということで、歯肉より上の歯の表面に付いてきます。
- 歯周病が進行してくると、歯のまわりのポケットとよばれる溝がどんどん深くなって行きます。
歯肉縁下歯石
歯茎の上から目では見えない、歯と歯茎の間(歯周ポケット)の中に出来てくる歯石です。
- 黒褐色をしています。
- 黒いのは、血液の成分が影響しています。
- 縁上歯石とくらべると、薄くて固く、取り除くことが困難です。
定期的な歯石除去が必要な理由
歯石は、古くなった歯垢が石灰化したものです。
毎日歯磨きしても、次の日には歯垢がついてしまいます。
それと同じで、毎日歯磨きが必要なように歯石も「一定期間あけば必ずついてしまうもの」です。
100%磨き残しなく歯磨きできる人など、ほぼいませんから、仕方ありません。
歯磨きのプロである歯科医師や歯科衛生士でも、3か月に1回ほどのペースで歯石除去をしてもらっています。
ただ、残念ながら日本では定期的な歯科受診の習慣を持つ人がまだまだ少ないです。
そして、それがそのまま「80歳になったときに、残る歯の本数が少ない」ことにつながっています。
歯石の取り除き方
歯科医院では以下の流れで歯石を取り除いています。
- 歯肉(歯ぐき)の状態の検査を行う
- 歯肉縁上歯石を除去する
- 歯肉の状態を再検査する
- 必要に応じて歯肉縁下歯石を除去する
- 歯肉の状態を再検査する
- 歯肉の状態が安定化している場合は、状態の維持を行う
安定化していない場合は、さらに歯石を除去する
「どうしてこんなに検査するの!?」と思われるかもしれません。
状態を把握しないと適切な治療を行うことはできません。
また、保険診療の場合、こうした折々の検査が義務付けられています。
最初から縁上・縁下すべての歯石を除去できるというものではありません。
上から攻めていかないと、下の縁下歯石にもアクセスできないんです。
縁上歯石を取り終わると、歯肉が腫れがおさまって来ます。
なので、歯肉は引き締まって、色味も健康な状態に近づきます。
歯肉が引き締まると、隠れていた縁下歯石が見えてくることもあります。
縁上歯石をとる時には超音波スケーラーと呼ばれる器具などを使います。
縁上歯石のスケーリング(除石)では、麻酔はあまりしません。
しかし、ポケットの深い部分についている縁下歯石を取る場合は、必要に応じて麻酔をすることもあります。
浅い部分の縁下歯石を取るときには麻酔は不要ですので、状態に応じて行います。
歯肉縁下歯石を取ることが、歯周病の治療・予防に重要
歯肉縁下の歯石をとるということが目的というか、歯周病の治療の大きな手段と言えます。
これらの処置を歯科医師よりも多くこなしているのが歯科衛生士です。
歯科衛生士は国家資格を持つ専門職であり、予防のスペシャリストとして活躍しています。
歯石とりだけでなく、ホームケアのアドバイスや、歯ブラシや歯間ブラシの使い方、場合によっては虫歯になりにくい飲食のアドバイスをさせていただくこともあります。
歯石は溜まってくるものなので定期的に専門家によるチェックを受けることがおススメです。
まとめ
いかがでしたか?
歯石は定期的につくものなので、歯科医院での定期的な除去をおススメします。
歯石の定期的な除去が、長期的に見れば歯の本数を減らさないポイントになります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
歯科と『感染症』のかかわり
2021年4月29日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
春が来て、季節は巡っていきます。
緊急事態宣言で大騒ぎでした昨年度の3-4月頃からほぼ1年が経ちました。
コロナの第4波が来ている今、一度歯科と『感染症』というものを考えてみようと思います。
菌が体に入ってから感染症を起こすまで
家庭の医学であるメルクマニュアルを参考にすると、体内に侵入した微生物が感染症を引き起こすには、まず増殖しなければなりません。
生物が増殖を始めると、以下の3つのパターンのどれかが起こります。
- 微生物が増え続けて人体の防御機構に打ち勝ってしまう。
- 均衡状態に達して、慢性感染の状態になる。
- 人体の免疫機能により、またときに治療の効果も加わって、侵入した微生物が排除される。
ウィルス性疾患で熱が出た、というのが①の状態ですね。
歯科に関係する、う蝕(虫歯)に関しては、もともとが口の中にいる常在菌なので、②または③になります。
また感染の重症度がどのくらいになるかは、次のような因子によって決まります。
- その微生物が毒素や酵素といった物質を作るかどうか
- その微生物に抗菌薬に対する耐性ができるかどうか
- その微生物が人体の防御機構を妨げるかどうか
- 免疫系が十分に機能しているか。
虫歯菌はひ弱なのに、やっかいな理由
虫歯の原因菌であるミュータンス菌は、意外なことに非常にひ弱な菌で、抗菌薬でかなりいなくなります。
そして、もともと常在菌ですので、歯以外の部分には、ものすごく免疫が弱っていない限り影響していません。
「虫歯菌が弱い菌!?虫歯予防がこんなに大変なのに!?」
と思った人もいるかもしれません。
虫歯菌が作る「糊(のり)」=菌体外多糖(きんたいがいたとう)
虫歯菌は、糖(特に砂糖)から酸と菌体外多糖という「糊(のり)」のような物質を作ります。
「糊」は、まるでバリアのように菌を守ります。
そのため、抗菌薬や消毒薬が効きにくくなります。
また、菌は「糊」を使って歯にひっつきます。
そのため、ウガイくらいでは取れなくなります。
虫歯予防のために、うがいだけではなく、歯磨きが必要な理由です。
以上より、虫歯菌は菌単独では弱いくせに、歯に対しては虫歯という病気をつくったり、完全に口腔内から撲滅することが難しかったりするんですね。
COVID19がやっかいな理由
コロナに関しては、専門外なので僕なりの理解なのですが、このウイルス(COVID19)は細胞に侵入する能力がこれまでになく異常に高いようです。
COVID19はACE-II受容体という人間の細胞の器官を足掛かりに侵入するのですが、人間の咽頭など喉の部分の細胞には、これが常に発現しています。
COVID19に感染しても、多くの人は喉風邪程度の軽症で済むのですが、悪化すると肺に近いところまで炎症症状がでます。
炎症がある時・部位では、ACE-II受容体が多くなり、これを足掛かりにウイルスが侵入し、肺炎になるようです。
一度COVID19の侵入を深く許してしまうと、b~dの要素が大変に強いため、重症化してしまうケースが多いそうです。
COVID19の感染予防と重症化予防には、口腔ケアが有効
我々にできる対処法で、最も簡単なものはは免疫力をしっかりと保つこと、そしてしっかりと感染予防(手洗い、消毒、歯磨き)を行うことでしょう。
以前のブログでもお話しましたが、歯垢(プラーク)はほっておくと病原性が高くなる性質があり、喉や肺にも炎症を引き起こします。
COVID19の感染予防と重症化予防に口腔ケアは有効ですが、逆に言えば、口の中が汚れていたり、歯周病が進んでいると、COVID19の重症化リスクも上がるということです。
日々の口腔ケアと歯科医院での定期的な清掃が最も効果的で、インフルエンザでも口腔ケアの重要性が報告されています。
ぜひ口腔ケアを一緒にがんばっていきましょう!
まとめ
いかがでしたか?
- 感染症の面からみると、ミュータンス菌は大変弱い菌ですが、毎日の口腔ケアが必要です。
- COVID19予防のために、口腔ケアをみんなでがんばっていきましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯磨き時の飛沫は、コロナウィルスの感染源となる?感染リスクを下げるちょっとしたコツ
2021年4月24日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井です。
COVID-19感染症も最初の緊急事態宣言が出されてから、もう1年になりますね。
今春は待望のワクチン接種が始まったりしましたが、一般人までワクチンが回ってくるまでにはもう少しかかりそうですね。
歯磨きする時のソーシャルディスタンス
去年は学校や幼稚園での歯磨きが自粛されたりしていたところが多かったと聞きますが、現在では多くの学校や幼稚園で、食後の歯磨きが再開されています。
歯磨きをすると、唾液の飛沫が約2メートルも飛ぶと言われいます。
よって、学校などでの歯磨きは、換気の良いスペースで2メートル離れて行うことが勧められています。
歯磨きペーストは消毒成分が配合されたものがおススメ
歯磨きペーストに含まれる成分で、消毒成分CPCや界面活性剤の成分が、新型コロナウィルスを不活化するとの報告があります。
消毒剤や石鹸手洗いでウィルスを消毒できるのですから、そうした成分が配合されている歯磨きペーストがコロナウィルスに有効、というのは、納得ですね。
歯磨きペーストに配合されていると嬉しい、おススメ消毒成分 CPC
CPC(セチルピリジニウム塩化物水和物)については、米国疾病予防管理センターも、新型コロナウイルス感染拡大期における歯科医院向け暫定歯科対応要綱の中で、口腔内や飛沫中の微生物量を減らせる、と報告しています。
また、口腔化粧品メーカーのサンスターは(あくまで試験管内の実験結果ではありますが) CPC を配合した液体製剤が新型コロナウイルスを 99.9%不活化(感染性消失)したと報告しています。
CPCはコロナ流行期にあわせて出てきた消毒成分ではありません。
もともとは歯周病菌に対する殺菌効果がある商品として、以前から販売されていました。
つまり、新型コロナ対策だけでなく、歯周病予防効果も同時にできるので、おススメです。
歯磨きペーストやデンタルリンスを買う時には、CPCが配合されているものかどうかチェックしてみてはどうでしょうか。
パッケージの成分表に「CPC」と書いてありますが、わからない方はかかりつけの歯科医院で聞いてみてくださいね。
多くの歯科医院の窓口販売で取り扱いがあると思います。
歯ブラシの管理には気を付けましょう!
他の人の歯ブラシと自分の歯ブラシを接触させないことが大切
最後に、一番大事なことです。
学校や幼稚園、高齢者施設などでの歯ブラシの管理は注意してください。
複数の人の歯ブラシを一か所に集めてしまうと、歯ブラシ同士が接触して感染リスクが高くなってしまいます。
家庭内でも、歯ブラシ立てで歯ブラシ同士が接触すると家庭内感染のリスクが高くなってしまいますので、接触しない距離で管理するようにしましょう。
歯磨きには、ウィルス感染症の予防効果がある!
インフルエンザや新型コロナウィルス感染症といったウィルス感染症の予防効果があると言われています。
食後の歯磨きをする小学校と、食後の歯磨きをしない小学校で比較した報告があります。
インフルエンザ流行期による学級閉鎖の率が、前者は45%、後者が80%と大きな差が出たことが知られています。
お口の中をしっかりケアして、感染症に負けない体を作りましょう!
まとめ
いかがでしたか?
- 歯磨きは2メートル人と離れてしましょう
- CPC配合の歯磨きペーストがおススメです
- 歯ブラシ同士が触れないように管理しましょう
- しっかり歯磨きで、感染症に負けない体を作りましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。
糖尿病で、お薬を飲んでいても血糖値が安定しない…それは歯石のせいかもしれません。
2021年3月15日
歯周病と糖尿病の関係
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
歯周病と全身疾患の関係について耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。
今回は糖尿病との関係について考えていきたいと思います。
参考リンク
認知症と歯周病
歯科と糖尿病、脳血管障害、要介護度は関係が深い!?あれこれ関わっているお口の病気
糖尿病とは?
糖尿病というのは、インスリンの作用不足で慢性的な高血糖状態になり、それが原因でさまざまな合併症を引き起こしてしまう疾患を言います。
糖尿病と歯周病は関係が深い
糖尿病になると、歯周病になりやすく、歯周病があると糖尿病が悪化しやすいことがわかっています。
糖尿病があると歯周病になりやすいのは、なぜ?
- 毛細血管が切れて、血行が悪くなる
- 血行が悪いので細菌感染が起きても白血球による迎撃が十分にできない
- 細菌を抑える力が弱まるので、歯周病になりやすい
- 組織の修復能も下がるので、歯周病になりやすい
糖尿病のコントロールの指標としてHbA1cというものがあります。
このコントロールが良くないと、歯槽骨(歯を支えている骨)の吸収がコントロールが良い人と比べて多いという研究データもあります。
糖尿病が改善したら、歯周病も治る?
糖尿病が無い人でも、歯周病にはなります。
日本人の約8割が歯周病などの歯茎に炎症をもっているという統計もありますから(日本では成人の80%、約8000万人が罹患していると言われています)、糖尿病がなおったからといって歯周病が治るとは限りません。
ただ、糖尿病が改善する前よりは、歯周病も軽度になることが多いと言われています。
糖尿病の有無に関わらず、歯石をとったり、定期的に歯科を受診して悪くなっているところがないかチェックすることは重要です。
歯周病があると、糖尿病が悪化しやすいのはなぜ?
歯周病は慢性の炎症性疾患です。
炎症によって産生された物質は体の中でインスリンを効きにくくしてしまう作用があります。
さらに、歯周病菌の出す内毒素とよばれる物質にもインスリンの働きを妨げてしまう作用があります。
その結果、歯周病を放置すると、糖尿病を悪化させてしまうことが多いのです。
さらには、糖尿病の合併症である心血管病変や腎症の進行に対しても影響を及ぼしてしまう可能性があります。
歯周病を治療すると糖尿病が良くなることが多い?
歯周病が無い状態、もしくは非常に安定した状態で保たれると、血糖値が改善することが多いと報告されています。
「血糖値がなかなか安定しない…」という方は、まずは歯科で、歯周病が無いかチェックしてみることをおススメします。
まとめ
いかがでしたか?
- 糖尿病と歯周病はどちらかが改善すると、もう片方も改善する可能性がある
- 糖尿病と歯周病は、どちらかが悪化すると、もう片方も悪化する可能性がある。
- 糖尿病で血糖値が安定しないとお悩みの方は、歯科治療もぜひ検討してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯磨き粉を使う人は使わない人より歯がちゃんと磨けていないことがある!?~歯磨き粉のいろいろ~
2021年2月22日
岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦和則です。
今回は歯磨き粉についてお話していきます。
歯磨き粉のメリット・デメリット
みなさん、歯磨き粉はどんな目的で使いますか?
使うと口の中がスッキリするため
汚れをよく落とすため
口臭予防
歯を白くするため
などなど・・・
歯磨き粉を使う場合と使わない場合、どっちが汚れがよく落ちるの?
歯磨き粉を使用して磨いた場合と、そうでない場合を比べると、使わないよりも使ったほうが汚れはよく落とせるといった実験結果が出ているようです。
さらには、汚れを落とす効果に加えて、汚れが付きにくくなる効果もあるようです。
同じ歯磨きをするにしても、歯磨き粉を使っているほうが歯垢(プラーク)の付着量に差異が認められるようです。
歯磨き粉自体にも香りがついていますが、歯垢(プラーク)が少ない状態をキープすることでも口臭防止効果があります。
歯の着色対策の歯磨き粉は有効。しかし研磨剤が含まれているタイプのものは注意も必要
歯の着色に関しても、それに特化した商品もあり、たばこやコーヒー、紅茶などををよく摂取するような場合には助かりますね。
着色を取り除こうと思うと、研磨剤配合のものということになるかもしれません。
研磨剤に関して言うと、歯面を傷つけるということに変わりはないので、ブラッシング圧などは注意が必要です。また、歯がしみるという方は、症状が悪化することがあります。
フッ素配合の歯磨き粉
ほとんどの歯磨き粉にはフッ素が配合されています。
歯質強化の作用も期待されます。
フッ素の効果については、歯磨き粉の一番の効果と言ってもいいかもしれませんね。最近はフッ素の濃度が高い商品も見られるようになりました。
使用できる年齢に制限はあるのですが、高濃度による効果は期待できると思います。
歯科医院で塗るフッ素と歯磨き粉のフッ素は併用しても大丈夫?
歯科医院で塗るフッ素は市販では売られていない高い濃度です。
3ヶ月に一回くらいの頻度で歯に塗っておくと、低濃度のフッ素がずっと口の中にあり、歯が少し強くなります。
自宅で使うフッ素入りの歯磨き粉は、歯科医院で塗ったフッ素によって、口の中にあるフッ素濃度よりも高い濃度です。
しかし、歯磨きで歯に触れる時間は非常に短いので全く問題ありません。
歯科医院のフッ素と家でのフッ素のダブル効果を狙っていくのもおすすめです。
歯磨き粉のデメリットとは?
ここまで歯磨き粉の良い点をお話してきました。
デメリットはなんでしょうか?
歯科医院でよく言われているのは、
「磨けてないのに磨いた気持ちになってしまう」という点です。
歯磨き粉は、あわあわになって、泡をうがいしたらサッパリしたり、強い香りで口臭がわからなくなってスッキリしたりしますよね。
これが曲者で、ちゃんと歯ブラシを当てて歯垢(プラーク)が落とせていないけど、磨けた気分になってしまうんですね。
磨けてないけど磨いた気分になってしまうのを防ぐためにも、特に夕食後は丁寧に時間をかけて磨くことを意識してもらえらればと思います。
その他機能に特化した色々な歯磨き粉もある
いろいろと近年では機能特化したものも多くでていますね。
歯周病、ホワイトニングなどなど。
さらには、ホワイトニングに関しても、歯に優しくホワイトニングなどの商品もありますね。知覚過敏に対する歯磨き粉も機能特化と言えますね。
発砲作用が少ないようなものもあり、他にも、虫歯予防をしながら歯を白くしたい、歯周病や口臭が気になるなどに対応した商品もありますので、気軽に質問していただけたらなと思います。
まとめ
- 歯磨き粉には汚れを落としたり、汚れがつきにくくなる成分も入っています。
- 着色対策の歯磨き粉は研磨剤が入っているので注意も必要です。
- 歯科医院のフッ素と歯磨き粉のフッ素でダブル効果を狙うのがオススメです。
- 歯磨き粉のさっぱり感と香りで磨けた気分になってしまうので、夕食後は特に丁寧に時間をかけて歯磨きをしてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
プラークってなんだろう?~歯磨き粉や歯ブラシのCMでおなじみの、あの言葉~
2021年1月24日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
みなさん、プラークと言う言葉を聞いたことはありませんか?
歯ブラシや歯磨き粉のテレビCMで、良く聞きますよね。
プラークは別名、歯垢ともいいます。
プラーク=細菌と、細菌の分泌物と、細菌の死骸で出来たネバネバ
プラークとは歯の表面に付着している細菌の寄り集まりのようなものです。
色的には白や乳白色といった感じでしょうか、古くなってくると黄色やオレンジっぽくなってきます。
プラーク(歯垢)はバイオフィルムの1種です。
またカタカナ語が出てきましたね。
バイオフォルムも、テレビCMで聞く言葉です。主にパイプ除菌などの商品のCMで耳にするはずです。
バイオフィルム=微生物と微生物の分泌物などで作られた膜
プラークの他には、排水溝などのぬめりなどもこれにあたります。
バイオフィルムは、漂白剤でも使わない限り、物理的に磨き落とすしかない!
「歯磨きが面倒だから、マウスウォッシュだけで綺麗になったら良いのに」
「最近、細かいものが見えにくいから、磨き残しを溶かして落としてくれるお薬があれば良いのに」
と、思ったことはありませんか?
ハイプや排水溝は塩素系の漂白剤で綺麗になりますが、口の中にそんな劇薬を使うわけにはいきません。
酸素系漂白剤としても用いられるオキシドールで、排水溝のぬめりが取れないように、弱い薬剤のみでプラークを完全に溶かすことはできません。
どうしても、物理的に磨き落とす必要があるのです。
バイオフィルムって、なんでそんなに落としにくいの?
細菌が集まって菌体外多糖というネバネバした分泌物で周りを固めたものがバイオフィルムです。
このネバネバがバリアとして働いて、抗生物質や免疫細胞による貪食(細菌を免疫細胞が殺す働き)から細菌を守ります。
お口の中では、虫歯原因菌のミュータンス連鎖球菌が出す菌体外多糖(ムタン=グルカン)がプラークを歯にしっかりと引っ付ける作用をしています。
ちなみに「ミュータンスレンサ球菌」という名前は、ムタンを産生する細菌ということからきている説があります(*他の説もあります)。
参考:外部サイト(日本細菌学会)
http://jsbac.org/youkoso/mutansStreptococci.html
虫歯菌と歯周病菌
ミュータンス菌は砂糖(ショ糖)を原料としてムタンを産生します。これによって他の口腔内細菌とともにプラークとして成熟して行きます。
プラークは細菌の寄り集まりと書きましたが、プラーク1mg中には1~2億もの細菌が存在しているようです。
種類としても600種類ほどの細菌が寄り集まっています。
歯の表面にいる筋の多くは「酸素が好き」な好気性菌と言われる菌です。
しかし、成熟したプラークの中には酸素は届きませんから、分厚いプラークの奥の方には、「酸素が嫌い」な嫌気性菌が増えていきます。
口の中の代表的な嫌気性菌に、歯周病菌もいます。
プラークが古くなる=長いこと落とせずにいるプラークが出来ると、歯周病菌が増えていってしまうんです。
プラークは、むし歯、歯周病のどちらにも関係しています。
先ほどにも書いたのですが、プラークには防御力が備わっています。
しかも時間がたつほど歯にしっかりとこびりついていきます。
うがい程度では除去できませんから、歯みがきで落とすしかありません。
さらに長い間歯面にプラークが存在していると、唾液に含まれるカルシウムなどによって石灰化してしまいます。
これが歯石と呼ばれるもので、灰白色や黒褐色の石灰化物です。
この歯石も、歯周病を引き起こす毒素を出して、歯周病を悪化させていきます。
歯石はさらに除去が困難となるため、歯科医院での歯石取りは定期的に行う必要があるということになりますね。
完全に溶かすことは出来ないのに、マウスウォッシュは何のために使うの?
マウスウォッシュには、大まかに分けて以下の4種類があります。
- 口腔の保湿を目的としたもの(バイオティーンなど)…口腔乾燥症の方向け
- プラークを落とした上で、歯ぐきの炎症を抑えることを目的としたもの(コンクール、リステリンなど)…歯周病の方向け
- プラークを落とした上で、フッ素による再石灰化を目的としたもの(ミラノールなど)…歯周病の心配の少ないお子様向け
- タンパク分解作用、消毒作用によりプラークの表面の菌を殺したり、プラークが溶けやすい状態にする目的のもの(POICウォーターなど)…プラークそのものを攻撃するタイプなので、歯周病・虫歯予防両用です。ただし、口腔乾燥症の方には向きません。
プラークを完全に溶かすことはできないけれど、たんぱく質を分解することで取れやすくするウガイ薬はあります。
ご興味のある方は、お気軽にお尋ねください。
インプラント術後の方、矯正装置が口の中に入っていて磨きにくい方、歯並びのガタガタのため磨きにくいところがある方には、特におススメです。
まとめ
- プラークが硬い歯石になる前に歯磨きで出来るだけ落としましょう。
- 磨き残しがどうしても歯石になってしまうので、定期的に歯科医院で取り除く必要があります。
- ウガイ薬だけでプラークを取り除くことはできませんが、取れやすくするものはあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
口の中が汚れていると、熱を出しやすくなってしまう!?「誤嚥性肺炎」のおはなし
2020年8月9日
こんにちは!つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
突然ですが、お口の中に少し唾液を溜めて、上を向いてみてください。
むせた方…それは「誤嚥」です!
誤嚥って何?
食べ物や飲み物でむせた経験は、あなたにもきっとあると思います。
人間の喉は、途中で食道(食べ物や飲み物を胃に送る道)と気道(空気を肺に送る道)に枝分かれしています。
喉頭蓋という、可動式のフタのような器官が「食べ物が食道に行くように、気道をふさぐ」ために、気管に食べ物や飲み物が行かないのです。
「むせる」とは、食道ではなく気道の方に、食べ物や飲み物が入ってしまったときに、気道から食道にむけて追い出そうとして起こる反応です。
「むせる」ことが出来るので、気管や肺に異物が入り込まないで済むんですね。
では、「むせる」ことが出来ないと、どうなるでしょうか?
気道に異物が入っても、「むせる」ことが上手にできなければ、肺炎になってしまう
高齢者になると、喉の筋力が低下して上手にむせることが出来なくなってしまう方も少なくありません。

肺炎は、高齢者ほど多く、さらに重大な結果を引き起こしてしまいます。
高齢者の肺炎のうち1/3程度が誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)と言われていますから、ご高齢の方にとってはとても身近な病気です。
人間が2足歩行に進化したために「誤嚥(ごえん)」するようになった
「そもそも、どうして食道と気道が合流しているの?」
「ほかの動物がむせているところ、そういえば見たことない…」
そうなんです。
誤嚥は人間が2足歩行となった弊害といえます。
2足歩行によって食べ物と、呼気が同じ所を通るように変化してしまった結果、人間の喉はとても複雑な作りになってしまっているのです。
自分でもできる「誤嚥性肺炎」予防法!
誤嚥(ごえん)により、口腔内細菌などが肺に入ることで起こる肺炎を、誤嚥性肺炎といいます。
歯垢(しこう、プラーク)の中には、大量の細菌が棲息していて、唾や食べ物・飲み物などを誤嚥することで、口腔内の細菌が肺に運ばれてしまうのです。
自分でも出来る「誤嚥性肺炎予防」というと、やはり口腔内の細菌数を減らすことが一番ではないでしょうか。
歯周病なども、口腔内の細菌感染です。
歯を残すことは、もちろんとても大事なのですが(80歳で20本以上の歯が残っている人の、要介護度は低いことがわかっています。
歯を減らさずにおくことは、健康寿命を伸ばすためにも、とても重要です!)
参考リンク:歯科と糖尿病、脳血管障害、要介護度は関係が深い!?あれこれ関わっているお口の病気
一方で、歯が多く残っているということは、しっかりとしたケアをしないと、汚れやすい環境を作りやすいと言うことでもあります。
1)誤嚥性肺炎予防は、歯磨きが基本です!
歯磨きの方法、苦手な部分に対する対処方法などを、歯科医院においてレクチャーを受けてみる、というのもおススメです。
歯磨きは子どもの頃からやっていますから、簡単に思っている人は多いのではないでしょうか?
では、あなたのまわりに「虫歯も歯周病も、1本もない!経験したこともない!」という方はおられるでしょうか?
おそらく、めったに居ないはずなのです。
統計上、日本人の8割以上の方が歯肉炎・歯周病を持っていることが分かっています。虫歯を経験した人も入れると、ほぼ100%に近くなると思います。
これらの病気にならないための歯磨きは、大人にとっても、とても難しいのです。
2)細菌数を減らす消毒成分を持つうがい薬もおススメです。
当院では、POICウォーターという次亜塩素酸水や、ネオステリングリーンというベンゼトニウム塩化物製剤のうがい薬を、よく使っていただいております。
3)管理の不十分な入れ歯も、誤嚥性肺炎のリスクとなります。
入れ歯の表面にも、細菌がカビはたくさん繁殖します。
適切なケア、手入れが必要です。
義歯ブラシでの洗浄と、義歯洗浄剤での消毒など、ちゃんとしたお手入れ方法があります。
もし、不安がある方はお気軽にご質問くださいね。
自分で出来ない場合は、プロ(歯科衛生士)に頼む!
介護が必要な方など、自力でのお手入れや、ご家族によるお手入れが難しい場合は歯科医師・歯科衛生士による訪問歯科診療をご利用いただくと良いでしょう。
口腔ケアのあるなしで、誤嚥性肺炎のリスクに違いがあるようです。
お口の中の専門家として、お手伝いできることもあると思いますので、気軽にご相談くださいね。
まとめ
- ご高齢の方の場合、口の中が汚れていると誤嚥性肺炎になりやすいです。
- 口腔ケアにより、誤嚥性肺炎のリスクを下げることができます。
- 歯磨き、うがい薬、入れ歯のケアなどが、口腔内の細菌数を減らすのに有効です。
- 自力での口腔ケアが難しい場合は、訪問歯科診療をご利用いただくのも良いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お子さんの歯並びと8020(ハチマルニイマル)
2020年7月22日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
新型コロナウイルスの流行期、マスクをする時間が増えた方が多いのではないでしょうか?
マスクをしていると、口呼吸になりやすい
「マスクをすると口呼吸になりやすい」とよく言われています。
子どもの頃からこんなに長期間、マスクをする羽目になってしまった今のお子さん達が心配です。
顎や頭の骨が成長している最中の子どもが、口呼吸の癖をつけてしまうと、鼻(正確に言えば「副鼻腔」という、鼻と連結した空洞です)が十分に発達しません。
そのため、上顎が横に成長することができなくなり、
その結果、歯が前にあふれてしまう…。
つまり出っ歯さんになりやすくなってしまうのです。
歯並びが悪いと何が起こるのか、矯正のタイミングなどの質問にお答えします!
1)年をとった時に、自分の歯を残せない歯並びとは?
みなさんは8020(ハチマルニイマル)という標語はご存じですか?
「80歳で20本の歯を残しましょう!」という意味の言葉です。
なぜ80歳の時に20本歯が残っているのが良いのか?
80歳で20本の歯が残っている人は、そうでない人と比べて、要介護度が低く、高齢でも自活できる人の割合が高いと言われています。
東北大学の研究で、80歳で歯が20本以上ある人と0本の人を比較すると、寿命だけでなく、健康寿命を比較しても、男性で92日、女性で70日の差が出ました。
健康寿命というのは、寝たきりなどにならずに、自分の力で日常制限を受けずに生活できる寿命です。
また、20本歯が残っていれば、たいていのものを食べることができると言われています。
8020を達成しにくい歯並び
8020を達成しにくい歯並びの人がいることがわかっています。
反対咬合・開咬
2000年の東京文京区と千葉市の結果ですが、
反対咬合(はんたいこうごう:受け口)と開咬(かいこう:前歯が咬んでいない咬み合わせ)の人の8020達成率は驚異的に低く、ほぼ0%です。
反対咬合
開咬

共通しているのは、
奥歯で、すべての咬合力をほぼ支える咬み合わせであるという事です。
奥歯が抜けると徐々に前に…という負のスパイラルを生じやすいのです。
叢生
次点で問題のある咬み合わせは、
いわゆる叢生(そうせい:ガタガタの歯並び)です。
叢生は虫歯リスクの高さと関係があるようですが、個人差も大きい印象です。
叢生

2)お口ポカンを防ぎたい!噛み合わせを鍛える時期とは?
お口ポカンはなぜ悪い?
近年、お口がよく開いているお子さんが増えています。
お口がポカンと開きっぱなしになっていても、口呼吸になってしまいます。
また、歯並びが崩れてしまいます。
「お口ポカン」も、防ぎたい「悪い口の癖」と言えます。
前回の小児歯科学会学術大会でも、そのような報告が多くされています。
お口ポカンの原因は口輪筋の発達不全
お口周りの筋(口輪筋:こうりんきん)の強さが、その能力に大きく関係していると言われています。
研究によると、
口輪筋の強さは、3歳児では3ニュートン(N)、6歳児で6N、11歳で8Nまで上がりますが、12歳では8.5Nで、それ以降はあまり伸びていかないことが報告されています。
つまりは口輪筋の発達は、3歳から6歳が最も旺盛で、11歳ぐらいでその成長は落ち着いてしまうということです。その成長のピークに合わしてトレーニングするのが最も効率的と言われています。
口輪筋を鍛えてお口ポカンを改善する
お口ポカンを防ぐトレーニングについては、過去の記事をご覧くださいね。
あいうべ体操
3)子供時代に口腔機能の能力をしっかり高めて、高齢になっても機能低下しにくい口をつくっておく
口腔機能は乳幼児期で一気に発達し、成人期では変化が少なく、高齢期で低下します。
よって、まずすべきことは、
小児期(3歳~6歳、遅くとも11歳)ぐらいまでに口腔機能をできるだけ鍛え、ピークを上げることです。
将来的に問題が出やすい咬み合わせ(反対咬合、開咬、叢生)の治療も、そのころまでに治しておくことが、正常な発達の上で重要です。
高齢期で機能を落とさないやり方はいくつかありますが、最も大事なことは、歯と筋肉をなくさない、これに尽きます。
できるだけピークを上げて、成人期~高齢期ではメンテナンスを行い、機能を落とさないようにしていきましょう。
まとめ
- 口腔機能を保つためには、まず発達時期に適切に機能を発達させることと、そのピークを落とさないことが重要です。
- お子さんの口の機能の発達は、3歳から6歳までが最も旺盛で、11歳ぐらいまでは成長がみられますが、そこからは変化が少なくなります。
- 8020を達成しにくい咬み合わせは、奥歯で多くの負担をかけている開咬と反対咬合です。可能であれば11歳ぐらいまでに治療を行いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。