「歯ぎしり・食いしばり」のいろいろ
2020年9月24日
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
今日は、ブラキシズムのお話です。
ブラキシズムって聞いたことはありますか?
ブラキシズムとは、睡眠時や覚醒時を問わずに歯を動的、または静的にすり合せたり、噛み締めたりする癖のことを指します。
簡単に言えば、「歯ぎしり・食いしばり」のことですね。
原因としては、ストレスなどの複合的な要因とされています。
ブラキシズムは無意識に行われる癖であり、動作が行われる際には筋肉の異常緊張と、それに伴って、歯および歯の周りの組織への炎症性破壊、更には顎の関節に異常な負荷がかかってしまいます。
ブラキシズムの種類
ブラキシズムは、その動作形態により3つの型に分類されています。
グラインディング
上下の歯を臼の如くすり合わせる運動(臼磨運動)を行う癖を指します。
ギシギシと音を立て、歯に異常な力が働くので、歯質の崩壊を招きやすいようです。
睡眠時に多く、一般に呼ばれる「歯ぎしり」はグラインディングを指す事が多いとのこと。
クレンチング
上下の歯を静的に強く噛み合わせる動作のことです。
起きている時に無意識にやってしまっていることが多く、自覚症状はもちろん、他覚症状もほとんど無いために発見が遅れがちです。
タッピング
上下の歯を動的にカチカチと噛み合わせる動作のことです。
頻度としては夜間の出現頻度は8~16%、昼間も含めると8~34%と報告されています。
ブラキシズム(歯ぎしり・くいしばり)の治療法
ブラキシズムの治療法としては咬合調整、マウスピース療法、ストレスマネージメント療法などがあります。
マウスピースを使う
第一選択は、取り外しのできるマウスピース療法(スプリント療法)でしょうか。
咬合調整(かみ合わせを削ったり、盛ったりして調節する治療)は、歯を削ってしまったら戻りませんから、まずはマウスピースから始めることが多いです。
もっとも、削る必要が無く、盛る一択の咬合調整が必要な場合は、そちらから始めることもあります。この2つの治療法は、あくまで対症療法です。
マウスピースは短期的にブラキシズム抑制に効果があるようです。
ですが、すべての患者さんに有効ということでもないようです。しかし、歯を守るという点では効果が期待できる治療です。
歯より先にマウスピースが削れてくれますから、歯が保護されるんです。
あとは顎の関節への負担軽減にも役立ちますね。
ストレスマネージメント療法を行う
ストレスマネージメント療法については…「ストレス」が原因で起こることが多いブラキシズムですから、その元になるストレスを軽減させることができたら、もちろん一番良いとは思います。
が、そんなに簡単にストレスを減らせるなら、苦労は無いんですよね。
原因療法としては、あまり効果的な治療法は見受けられないようです。
ブラキシズムとは異なるのですが、TCHという考え方が近年注目されています。
TCHとは?
TCHというのは上下歯列接触癖の英語の頭文字をとったもので、
一日のうち上下の歯の接触している総時間が増えてしまう習癖を指します。
参考リンク
歯医者で「歯ぎしりか食いしばりがありそうですね」と言われたけれど、
思い当たる節がない…それは、TCH(歯列接触癖)かも!?
いろいろな影響を生じてしまう状態であり、顎関節症などへの原因となったりするようです。
これについては、また後日詳しくお伝えしてみようと思います。
まとめ
いかがでしたか?
- ブラキシズム(歯ぎしり・くいしばり)には、グライディング、クレンチング、タッピングの3種類がある。
- 治療法としては、マウスピースやストレスマネージメント療法などがある。
- はぎしりまでしていなくても、TCHといって上下の歯が接触する時間が長いだけでも、はぎしりと同じような、歯がしみたり痛みが出たり、顎関節症のような症状が出ることもある。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯医者で「歯ぎしりか食いしばりがありそうですね」と言われたけれど、思い当たる節がない…それは、TCH(歯列接触癖)かも!?
2020年3月28日
TCHとその治し方
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井です。
今日は、歯ぎしりや食いしばりは無いのに、歯がどんどん削れてしまう…、という良くない口の癖についてのお話です。
突然ですが、普通の人が上下の歯を触れさせる時間って、1日どのくらいの長さだと思いますか?
お食事の時に、歯と歯が触れる時間も込みで、1日に上下の歯が触れる合計時間です。
1.20分
2.2時間
3.12時間
さてさて…答えは、
「1.20分」でした!
意外に短い時間ですよね?
より正確には、平均17分程度と言われています。
朝昼晩の食事も込みで、たったの17分なんです。
しかし、中にはもっと多くの時間、上下の歯を触れさせている方がおられます。
歯医者で「歯ぎしりか食いしばりがあるかも」と言われたけれど、心当たりがない…という方もいらっしゃるかもしれません。
思い当たる方は、TCHかもしれません。
上下の歯を、何となく長時間触れさせてしまう癖:TCH(Tooth Contacting Habit)
食いしばりといえば、上下の歯をぐっと噛みしめてしまう癖ですが、TCHは長時間「接触」しているだけでTCHです。
なんせ、正常が「17分」、長時間が「20分以上」ですから、ご本人が思っているより「歯にとってはとても長い時間の上下の歯の接触」になってしまうのです。
診療室で、上記のような説明をいたしますと、TCHを持つ多くの患者さんが
「えっ!上下の歯って、常に触れていないとダメなんじゃないんですか!?」
とおっしゃいます。
歯は何もしていないとき、「触れていないのが正常」であり、ふわっと上下の歯と歯の間に隙間があります。
これを安静空隙(あんせいくうげき)と言います。安静にしているときに、上下の歯と歯の間にあるスキマ、という意味です。そのままですね。
何もしていない時の口の中のスタンダードな姿は、安静空隙が数ミリ空いていて、かつ、舌が上の前歯の内側(スポット、と言われるポジションです)に触れています。唇は閉じていて、鼻で呼吸している…、と覚えていただくと良いでしょう。
上顎の赤丸の部分が「スポット」
TCHになると、どういう症状がでるの?
TCHの主な症状は以下のようなものです。
- 歯が割れたり、欠けたりしやすい
- 詰め物が割れたり、欠けたりしやすい
- 歯がしみたり、痛みが出ることがある
- 頬の筋肉が疲れたり、違和感が出ることがある
- 顎が痛くなったり、口が空きにくくなったりする
TCHによる症状の治療法
TCHによって、前述のような症状が出てしまった場合、どうすればよいでしょうか?
マウスピースで歯を保護する
まず、歯や詰め物を保護するためにマウスピースで歯を保護する方法があります。マウスピースは保険適応で作ることができます。
このマウスピースは歯よりも柔らかいプラスチックで出来ており、歯ぎしりや食いしばり、そしてTCHによって歯がダメージを受ける代わりに、マウスピースが削れてくれることで歯が守られます。
主に夜間に使用します。起きている時も、もちろん使用することはできるのですが、厚みがあるため、かなり喋りにくいです。対面で喋る分には、滑舌悪いなりに会話を聞き取ってもらえますが、電話では何を言っているか分からないと言われてしまいますので、お仕事中のご使用には不向きです。
付箋をあちこちに貼る
「歯と歯を離す」と書いた付箋を、お仕事や家事、勉強などをされる場所のあちこちに貼ります。どこを向いても、視界に入るように、仕事用デスク5枚、トイレ3枚、寝室5枚、冷蔵庫に1枚、洗面所にも1枚…と、これでもか!という枚数を貼ります。
「そ、そんな原始的な方法で…」
と皆さん、苦笑いされるのですが、これがかなり有効なんです。
無意識に歯を歯をキュッとくっつけてしまうTCH、意識して歯を離すというのは至難の業。でも、付箋を目にしたら「歯と歯を離して、力を抜く」と習慣づけてしまうのは、そんなに難しくないのです。
そして1)のマウスピースよりこちらの方が、効果が高い方も大勢います。
しかも、ほとんどお金をかけない方法ですので、最初にTCHの症状が出た場合はまずやってみることをおススメします。
ただ、最大の欠点として、部屋が付箋だらけになります。
仕事、家事、勉強の姿勢を見直す
特にパソコン仕事が多い方にお勧めな方法で、モニターをモニターアームを用いて高い位置にしたり、昇降机、パソコン台を設置するなどの方法があります。
他にも、本を読むときに本を高い位置にしてくれる書見台を用いる、などもおススメです。
青の位置にモニターを持ってくる
こちらは机の上に置くタイプの高さ調整のできる机です。出典:amazon
どうしてモニターアームを使えば良いのか?その理由は、簡単に確かめることができます。上下の歯を軽くあてて、まっすぐ前を向き、次に下を向いてください。
下を向いた時の方が、かみ合わせが深くなったというか、上下の歯がより強く当たるようになったのが分かったと思います。
下を向くと、その分だけ、歯と歯の接触は強くなります。下を向く時間が短くなるように環境を整えることで、TCHを軽減することが出来るのです。
モニターアームや書見台は、昔は専門店まで行かないと入手できませんでしたが、今はネット通販で1万円台でも良い物が売っていますので、おススメです。
TCHの改善法は、出来ることを出来る範囲でするしかない
以前、TCHを持つ美容師さんに
「仕事中にずっと噛んでいるのを止めたいのだけれど、仕事中はマウスピースは(喋れないと困るので)出来ないし、付箋もお店に貼ることができません。下を向くのも、仕事上、しないわけにいきません。どうしたら良いですか?」
と訊かれ、非常に困りました。
結局のところ、出来ることを、出来る範囲でやるしかないと思います。
例えばお客さんから見えにくい部分に付箋を貼るとか、自分の道具類に付箋の代わりにテプラで「歯と歯を離す」と貼る、なんて方法もあるでしょう。
また腕は疲れるかもしれませんが、時間を決めて、お客さんの椅子を出来るだけ高い位置まで上げてお仕事するなんて方法もあるでしょう。
工夫のヒントが思いつかない場合は、お気軽にご相談くださいね。
まとめ
- 1日20分以上、上下の歯が接触した状態にある癖を「TCH」と言います
- TCHになると、歯が欠けたり、痛みが出たり、顎関節症になりやすくなったりすることがあります。
- TCHの症状は「マウスピースを使用する」「付箋をあちこちに貼る」「下を向く時間を短くする」などの方法で軽減させることができます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
顎関節症って?どれぐらいで受診したらいいの?
2020年1月1日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。みなさんは顎関節症という言葉を聞いたことがありますか?
顎関節症の症状
顎関節症は、耳の下あたりの顎の関節に痛みがあったり、口が開きにくかったり、音が鳴る、口を開けるときにまっすぐ口が開かない、などの症状が出ることがあります。
僕自身も顎関節症患者のひとりです。年に1~2度、数日間ですが顎の関節が痛くなります。
僕の場合は口を大きく開けたり、かたいもの、コシのあるようなものを食べたりすると、痛みが出ることが多いです。
フランスパンみたいなものは、つらいですね…。
口を開け閉めしたときに顎の音が鳴る症状に関して言えば、常時その状態です。
顎関節症といってもいろいろなパターンがあります。
①あごを開け閉めするとカクカク、ポコポコと軽い音が鳴るケース
僕の場合は、左の顎がカクカクなります。調子にのって無理をすると痛くなってきます。
痛いときも、痛くない時もカクカクといった音は鳴ります。
音に関して言えば、治すことはほぼ不可能であり、ずっと付き合っていく症状と言えるでしょう。
痛みがないなら、特に治療する必要はありませんが、そもそも顎関節症になってしまった原因となる習慣があるようなら、その習慣を止めるよう心掛けることは必要でしょう。
顎関節症を起こす習慣
顎関節症の原因として有名なものには、頬杖や食いしばり、ストレス、かみ合わせや寝る体勢(横寝・うつ伏せ寝)などがあります。
関節雑音についてもう少し詳しく言うと、顎の関節には関節円板って言う線維性の組織が骨と骨の間にあるんです。
顎を開け閉めするとき骨の動きに伴って関節円板も動くのですが、この動きが悪いと関節からずれてしまうことがあります。この、顎の骨から関節円板がずれたり戻ったりするときに音が鳴るんです。
②顎を開け閉めすると、ジャリジャリと音が鳴るケース
ずれたままになっていると関節の音がジャリジャリ、もしくはプチプチという音に変わってくることがあります。
捻髪音 (ねんぱつおん )って言うのですが、関節円板がずれたまま戻らなくなって、顎関節の骨と骨が擦れる音に変わるんです。①のケースが重症化した状態です。
またまた自分の話になりますが、たまに夜中に寝ていて関節円板がずれて戻らなくなる時もあったりします。
①から②へ重症化するのは、ある日を境にいきなり…というより、悪化したり良くなったりを繰り返す境界の時期があるんです。
僕は歯科医師なので、重症化した時に何をすれば良いか分かりますが…それでも、スパッと治癒!とならないのが、顎関節症のやっかいなところです。
関節炎版がずれたまま戻らない状態をクローズドロックと言います。
クローズドロックの状態で治療せずに放置すると、骨の変形が起きるなど、より重症化しやすいと言われていますので、心当たりのある方は歯科医院で相談してくださいね。
重症化しないように予防することが大事
顎関節症の症状が出やすい方には、夜中に食いしばったりして症状を悪化させてしまうケースが良くみられます。
朝起きて顎の調子が悪い、顎がダルい・痛いようでしたら、マウスピース(スプリント)を作ってもいいのかなと思います。
顎関節用マウスピース治療
マウスピース(スプリント)は顎の関節をストレスのかかりにくい状態にする装置です。
慣れるのにも時間がかかることもあるのですが、顎関節症に対しての根本的な治療法が無いので、こうした「顎関節を安静にさせる道具」を用いて症状を緩和させます。
軽症のうちに重症化予防することも大事だと思います。
そして、横寝・うつぶせ寝、頬杖、片方だけの歯で噛むなどの悪い癖に心当たりがある場合は、早めに癖を止めるように心がけましょう。
受診のタイミング
顎の痛みがだんだん強くなる場合は、一度専門家にご相談した方がよい場合もあります。
朝起きてすぐ痛みを感じる場合はマウスピースで改善することもあります。
口を開けられないなど、すでに重症な場合は受診した方がよいかと思います。
まとめ
- 顎の音が鳴る症状は、基本的には治せません。
- 顎関節症を起こす、悪化させる癖は早めに止めるよう心がけましょう。
- 顎関節症の症状がある方は、マウスピースを使用した方が良いことがあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
5歳ぐらいの子どもの歯ぎしりと顎関節症の話
2018年3月9日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
最近、保護者の方とお子さんとの添い寝期間が長めになってきているのもあり、お子さんの夜間の歯ぎしりが気になるとの相談をうけることがあります。
実際、僕も子供と一緒に寝る時や夜間に様子を見に行った時などに、甲高い音でキリキリと歯ぎしりが聞こえ、びっくりしたことがあります。
大人の歯ぎしりはストレスによるものが多い
歯科でよく相談を受けるのは、大人の歯ぎしりについてです。
大人の方の歯ぎしりの原因は主にストレスと関係があると言われています。
人間はストレスを受けると、それを解消するために無意識下に行う行動があり、その代表的なものが歯ぎしりです。
また、睡眠中に何らかの刺激で交感神経が昂る(要は眠りが浅くなる)と、歯ぎしりを起こすのもわかってきています。
つまり大人の歯ぎしりは、ストレスに対して体が対応してなんとか解消している、体の注意サインの一つとしてとらえることができますね。
ですから対処法としては、ストレスを減らすのがまず第一ですが、無理な場合はマウスピース(ナイトガード)を付ける治療が適していますので、お気軽にご相談ください。
子どもの歯ぎしりは生理的なものであることが多い
では、お子様の歯ぎしりの場合はどうでしょうか。
けっこうギリギリ音がするので、「きっと大人並みにストレスを感じており、いろいろ大変なのかも…」と心配にもなりますが、ちょうど5-6歳ぐらいでおきる歯ぎしりは、生理的なものである場合が多いようです。
子どもは5-6歳の時期に前歯が生え変わりを迎え、顎も一番大きく成長するので、歯と歯の間に隙間が生まれたりして、一時的に咬み合わせが不安定になります。
小児期ではその時期に無意識下で歯ぎしりすることで、よく噛める部位を自然に調整しているようです。
また、もともと下顎は頭蓋骨から筋肉と腱のみで釣り下がっているだけで不安定なものです。
乳歯から永久歯への生え変わるこの時期は、顔面周囲の筋肉や神経がたくましく、また鋭敏なものに作り替えられる時期でもあります。
歯ぎしりは、下顎の位置を筋や神経に覚えさせて噛み合わせを鋭敏かつ安定したものにしている、という効果があるようです。
したがって、生え変わりの時期だけの一時的な歯ぎしりであれば生理的なものなので、心配はありません。
子ども歯ぎしりで治療が必要な場合はどんな時?
乳歯であっても歯の神経が出そうなぐらい歯ぎしりをしている場合や、明らかにストレスや神経過敏な状態が原因となっている場合は、治療をすることもあります。
この場合もマウスピースが選択されますが、歯の交換が伴われるため、治療が大人ほどスムーズにいかない場合があります。もしかしたら、周りの環境を調整していただく方がいいかもしれませんね。
また一方で、咬み合わせに問題があると、歯ぎしりによって顎の関節や個別の歯にひどく負担がかかる場合があります。
例えば、上顎の前歯が一本だけ歯列の内側にあるような場合、その歯が噛み合わせの中で、釘が一本刺さったような状態となり、咬合のスムーズな動きを邪魔する場合があります(咬合性外傷)。
そこで歯ぎしりする癖が強いと、さらに歯や顎に負担がかかります。
このような場合は早めの矯正が必須となりますので、歯ぎしりと顎の痛み(顎関節症)、歯並びの3つに問題がある場合はお早めにご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 大人の歯ぎしりはストレス等が原因で、注意が必要であるが、子供の歯ぎしりは生理的なもので心配ないものである場合が多い。
- 小児期の歯ぎしりによって、顎の成長に伴う一時的な咬合の不安定さが解消し、より鋭敏な、安定したものに作り替えている。
- ただし、歯並びや咬み合わせに問題があり、顎関節にも何らかの症状がある場合や、歯に痛みなどを生じている場合は早めに治療が必要なことがある。
お子様のはぎしりに不安を感じる方は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
顎が外れる顎関節症 治し方・症状の違いは?
2017年2月17日
~顎関節症の種類と治療法~
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
前回は、顎関節の仕組みについてお話しました。
今回は顎関節症の種類と治療法についてのお話ししていこうと思います。
正常な顎関節の構造
下顎は大きく口を開けるときには前方に移動し、関節円板という軟骨が下顎の滑走を手助けするんでしたね。
顎関節の仕組みを参照
そして、下顎が元の位置に戻るとき、関節円板もスムーズに定位置に戻ります。
「カクッ」「ポキッ」と音が鳴る仕組み
ところが、この関節円板がスムーズに戻らない状態になることがあります。
関節円板が戻るときにちょっと引っかかって「カクッ」「ポキッ」という音が鳴ります。
この症状は顎関節症の一種です。
では、顎関節症にはどのような種類があるのでしょうか?
顎関節症の種類
顎関節症学会による顎関節症の分類をできるだけわかりやすく解説していきたいと思います。
Ⅰ型
耳の上あたりにある筋肉や頬の耳に近い筋肉が痛い。顎の周りの筋が痛い。口が開きにくいことがある。
Ⅱ型
顎関節の関節を包む袋や、関節靱帯、関節円板が伸びたり、捻挫している。顎が痛い、動かしにくい、等。
Ⅲ型
関節円板の位置がずれたり、穴が開いたり、組織が病的に硬くなったりしている。
痛みは強くなかったり、痛みがないことも多い。
Ⅲ型a
関節円板の位置がずれるが、すぐに元に戻るタイプ「コキッ」「ポキッ」という軽い音が鳴る。
Ⅲ型b
関節円板の位置がずれたまま戻らない。口が開けにくくなる。
Ⅳ型
顎関節の骨が変形したり、関節円板が変形したりする重症例。「ジャリジャリ」「プチプチ」という音が鳴る。
Ⅴ型
上のⅠ~Ⅳ型以外のもの。心理的要因などによる顎関節による痛みなど。
さて、前回の最初にとりあげました
「痛くないし、口も開くけれど、音が「ポキッ」鳴るので大きく口を開けるのはちょっと抵抗がある」
というのは何型になるでしょう?
↓
↓
↓
答えはⅢ型aです!(実は私もこの症状があります!)
当院では、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型の方が比較的多くいらっしゃいます。
顎関節症の治療
口が全く開かないなら理学療法を、多少なり口が開くならスプリント療法を行うことが多いです。
ただし、4cm程度口を開けることができて、日常生活に不便が無い場合は治療は必要ないと言われています。
私も、音は鳴るものの恵方巻の丸かぶりも出来る程度にしっかり開口できますし、不便も無いので治療はしていません。
Ⅳ型、Ⅴ型の場合は、重症度に応じて大学病院などとの連携が必要になる場合があります。
スプリント療法ってどんなもの?
スプリントはマウスピース型の「自分で着脱できる顎関節のギプス」と思っていただくと良いかと思います。
顎関節が炎症を起こしているのですから、軽く固定して安静にする必要があります。
顎関節は顔の外から固定することができません。
そこで、上下の歯の間に厚みのある硬いマウスピースを装着することで、強制的に「マウスピースの厚み分だけ口が開いた状態=顎関節に負荷がかからない状態」をキープできるようにします。
2回ほどで作成可能ですので、顎の痛みでお悩みの方は、一度ご相談ください。
顎が痛い 耳の下カクッ!っと音が鳴るんだけど大丈夫?
2017年2月6日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
皆さんの周りに、あるいは皆さんご自身に「顎が鳴る」という方はおられませんか?
実は、私も中学生頃から「コキッ」という音が鳴ります。
「痛くないし、口も開くけれど、音が鳴るので大きく口を開けるのはちょっと抵抗がある…」
これ、実は顎関節症の一種なのです。
今日は、意外にありふれている病気「顎関節症」についてお話していこうと思います。
~進化が招いた顎関節症~
顎関節症とは?
顎の関節にかかわる筋や骨、軟骨に異常を起こす慢性疾患群をまとめて「顎関節症」と呼びます。
顎関節症の症状
- 痛くないけど音が鳴る
- 口が開かない
- 口が開けにくい
- 顎の筋肉が痛い
顎関節の構造
まず、正常な顎関節を図解しますと下のような感じになっています。
水色の部分が「関節円板」という軟骨で、顎関節の骨の間に挟まって下顎が円滑に滑走する手助けをする
とともに、骨が直接擦れないようにして骨を保護する働きがあります。
関節の部分を拡大してみましょう。下顎頭というのは、顎関節の下顎の部分です。
画像参照:©コムネット
画像参照:©コムネット
面白いことに、口を大きく開けると下顎頭は関節からいったん外れて、前方に移動します。
画像参照:©コムネット
画像参照:©コムネット
普通の関節は、骨は定位置で蝶番運動しますが顎関節はソケットから出て行ってしまいます。
「顎が外れる」といいますが、誰でも大きく口を開ければ顎は外れます。
しかし、口を閉じたらすぐ元に戻ります。
(患者様は自力で戻せなくなった時に、「顎が外れた」と言われますが…)
自力で外して戻せる、不思議な関節が「顎関節」なのです。
顎関節は複雑に動くために、エラーも起こりやすいのです。
なんでそんなに複雑に動くの?
画像参照https://www.peppynet.com/library/archive/old/html/12aw_170
上の図は4足歩行の動物(犬)の骨格図です。
4足歩行の犬や猫は、威嚇するときにビックリするくらい大きく口を開けます。
人間はあんなに口は開きません。
それは骨格を見ると分かりやすいです。
4足歩行の動物は、思いっきり口を開けても、下顎は首になかなかぶつかりません。
対して、人間は口を大きく開けると下顎がすぐに首にぶつかってしまいます。
二足歩行のため、首が垂直に立っているせいです。
画像参照http://mitsunoy.jugem.jp/
でも、もっと口を開けたい!
類人猿や原始人だったころには、ナイフとフォークで切り分けて食べるとか、お箸で一口サイズに取り分けるとか、できなかったでしょうからね。
大きく口を開けてガブっと噛り付くことができる必要があったのです。
そこで編み出したのが、「顎を外して前に出す」。
口を一定以上開いて、首にぶつかりそうになったら下顎を前に移動させて、物理的に首と距離を取ります。
そうすれば、もっと口を開くことができます。
そして、複雑に動くようになったのはいいのですが、前に動いた下顎や関節円板が上手く戻らなかったり、炎症を起こしたりする「顎関節症」が生まれたのです。
まさに「進化が招いた病気」と言えますね。
次回は、タイプ別の顎関節症の治療法についてお話します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。