MFT特集 その9 「下唇を噛む癖」咬唇癖ついて考える
2024年11月25日
MFT特集 その9 「下唇を噛む癖」咬唇癖ついて考える
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
MFT関連の第9回である今回は、「咬唇癖」について考えてみようと思います。
これは第8回で触れました深いかみ合わせ(deep bite)に随伴する症状です。
日本人は顔の構造の特徴から、Deep biteな上顎前突の顔の人が増加しているようです。
*画像は同意を得て掲載しています*
MTF特集1~7はこちら(クリックすると、ページに移動します)
1.咬唇癖とは?
口唇癖は上顎前歯の裏に下口唇を咬む癖で、挟み込まれた下口唇が上顎前歯を唇側に押すため、上顎前歯がさらに前突していきます。
出っ歯だから唇を咬み、唇を咬むから出っ歯が悪化するという、悪循環です。
2.咬唇癖を予防するには「3歳未満で止めること」が重要
乳歯列期に唇にあとが残るほど「下唇を吸う」子供がいますが、乳歯の指吸い癖と一緒で、3歳ぐらいまでにやめれれば歯列への影響は少ないとされています。
これらの癖は授乳などと同じような『吸う感覚』を味わうためにするといわれており、3歳以降も続けるようであれば、癖として定着してしまいます。
癖として定着している場合、自力での改善は意識してもなかなか難しいです。
口唇癖はほぼ無意識でする行動で、ストレスがかかったり、緊張するととくに唇を咬む傾向にあります。
指吸い癖もそうですが、『吸う感覚』が心地よい、と感じている場合は辞める動機がなかなかありません。
3.咬唇癖を治す方法
3-1)噛みたいときには別のことをさせる
唇を咬む癖が良くないことであることを本人に説明した上で、噛みたい時には他のこと、お気に入りの玩具で遊ぶなどといった、他の事をさせるよう誘導するという方法があります。
ただ、前述のとおり、いったん癖として定着してしまっていると、これだけで完全に癖を治すことは難しいことが多いです。
3-2)矯正により口腔の形の改善する+口腔機能の発達を促す
顔が丸く、頬の筋肉が強い場合、下顎が奥に押し込まれています。
(詳しくはこちらの記事もご覧ください:MFT特集その8「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える)
こうした場合、マウスピースなどで前歯のかみ合わせを「浅くする」ことにより、下顎の成長を促すことができます。また、上の前歯を矯正によって引っ込め、上下の前歯の間に下口唇を入らないようにすることが有効です。
また、口腔機能の発達不全が背景にある(唇の力が弱い・咬合力が未発達・舌を上に持ち上げる力が弱い、など)ことが多いため、MFT(筋機能訓練)により改善を試みることが重要です。
4.咬唇癖は放置すると悪化する
口の習癖は、様子を見ていても、咬合と筋肉の悪循環の作用により徐々に症状が悪化していく事が多いです。口唇癖はその典型です。
正常な発育を阻害する因子は、なるべく早めに矯正やMFTなどを組み合わせて実施して、形の修正・癖の修正を両面から支援することが重要だと考えます。
まとめ
いかがでしたか?
- ・上顎前突、Deep biteでは、唇を咬む癖(咬唇癖)が出やすいです。
- ・唇と咬むから出っ歯が悪化し、出っ歯だから唇を咬む…という悪循環が発生し、咬合と筋肉の作用により悪化していく症例が多く存在します。
- ・咬む行為が本人にとって心地よい場合、自然にはなかなかやめられません。矯正などによる口腔の形の修正と、MFTなどのトレーニング、本人の発達と理解、を通じて正常な発育を阻害する因子を修正してあげることが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
MFT特集 第8回 – 「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える
2024年10月25日
MFT特集 第8回 – 「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
今回はMFT(口腔筋機能療法)に関連した第8回の特集として、最近よく見られる深いかみ合わせ(deep bite)についてお話します。
MTF特集1~7はこちら(クリックすると、ページに移動します)
MFT特集その1 筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
MFT特集その2 「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
MFT特集その3 お口の機能発達は10歳までが勝負!
MFT特集その4 お口ポカンの影響と直し方について
MTF特集その5 口呼吸とアレルギー、アデノイド
MFT特集その6 矯正手法とMFTについて
MFT特集その7 舌癖と歯列不正のメカニズムについて
筋肉は、歯並びやかみ合わせに大きな影響を与えます。
第5回でも軽く触れましたが、日本人は丸顔が多く、幼い印象を持たれる顔が多い傾向があります。
骨や筋肉の視点から見ると、下あごの発達が悪く、咬筋が優位になりやすい顔の作りです。
実はこの特徴が、深いかみ合わせの症状と一致しています。
つまり、日本人は深いかみ合わせになりやすい顔の作りであると言えます。
1 ディープバイトの原因と影響
ディープバイトは奥歯をぎゅっと噛みしめてしまう「クレンチング」が原因です。
歯の高さである「咬合高径」は、噛む力と萌出する力のバランスで決まります。
噛む力が強ければ、萌出力が負けてしまい、歯の高さが低くなります。
このディープバイトの問題点は、時間が経つにつれてさらに深くなり(悪化する)可能性が高いことです。
2 下あごの成長とディープバイトの関係
下あごの成長は上あごに比べて遅く、思春期前後にピークを迎えます。
しかし、この時期に咬筋が強すぎると、下あごの発達が阻害され、上顎前突の傾向が強まります。
そのため、思春期前後までにバイトアップやマウスピース矯正など、下あごの発達を促す介入を行うことが有効です。
また、広島大学の研究でも、ディープバイトは自然には改善せず、むしろ悪化することが多いとされています。
3 家庭でできるディープバイト対策
家庭でできる対策としては「クレンチング(噛みしめ癖)予防」が挙げられます。
人間は集中すると癖が出やすく、奥歯を無意識に上下の歯を接触させてしまう癖がつくことがあります(歯牙接触癖:tooth contacting habit)。
これが進行すると、歯を常に噛んでいる状態となり、さらに問題が悪化することがあります。
また、ストレスがかかると歯ぎしりなど、奥歯を強くかみしめる症状が出る人もいます。
人は安静時、「上下の歯が当たっていない状態」が正常です。
上下の歯が接触するのは、食事時間も入れて1日約17分と言われています。
以上より、普段から上下の歯を当てない・噛みっぱなしにしないように意識することが大事です。
4 下あごに負担をかける癖に注意
頬杖やうつぶせ寝など、下あごに負担をかける癖も良くありません。
これらの癖は姿勢に関連しており、自分がどのような状況で下あごに力をかけているかを把握することが重要です。
例えば、ゲームをする時も、口を開けている人もいれば、奥歯をかみしめている子供も多くいます。
最近のお子さんの生活習慣の傾向として、ゲームやスマホなどを長時間するケースが多くみられます。
そうした生活習慣の中で、奥歯をかみしめるにしろ、開けているにしろ、お口の癖が強く影響するようになったと臨床家として感じています。
お子さんの生活の癖や姿勢の癖、お口の癖などを親御さんがしっかりチェックしてあげることが重要です。
まとめ
生活習慣や癖が歯並びに影響することを意識し、「お口の悪い癖」「口腔機能発達不全」を見逃さないことが重要です。良く分からない場合は、お近くの歯医者さんでチェックしてもらってくださいね。
生活習慣の悪化を防ぐためにも、早めの対策がおススメです。
いかがでしたか?
・日本人は丸顔で、ディープバイトになりやすい顔の作りです。
・クレンチングによって下あごが押し込まれ、悪化しやすい傾向があります。
・ゲームなどの集中による癖もディープバイトに影響するため、生活習慣を見直すことが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
MFT特集7 舌癖と歯列不正のメカニズムについて
2024年9月26日
MFT特集7 舌癖と歯列不正のメカニズム~舌の悪い癖と歯並びが悪くなることの関わりについて~
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック、小児歯科専門医の吉村です。
今回は、MFT(口腔筋機能療法)の第7回として、舌癖がどのように歯並びに影響を与えるかを解説します。
第1章 舌癖と歯列不正の関係
舌癖は「舌が正しい位置にない状態」とも言えます。
舌に力が入っていないと、舌の厚みや模様がはっきりしません。
舌が正しい位置にあれば、力が入り、舌の模様がはっきりします。
例えるなら、牛タンのブロックのように厚みがあり、縦にしっかりとした形が舌の正しい姿です。
舌が弛緩して低位になると、上下前歯の間か、下顎に収まるようになります。
- ・舌が上下の前歯の間に収まるようになれば、舌突出癖が誘発され、『開咬』になります。
- ・舌が下顎に収まってしまえば、下顎歯列が拡大されて、『反対咬合』の傾向を呈してきます。
- ・上顎は舌の刺激が少ないため、横幅が狭く、口蓋が高く(上顎のくぼみが深く)なります。
- ・低位舌の場合、口輪筋が発達不全をおこし、お口ポカン(口唇閉鎖不全)になりやすくなります。
- ・お口ポカンになると、前歯は『出っ歯』の状態を呈する場合があります。
第2章 舌癖が発音に与える影響
舌癖は発音にも影響を与えます。
舌が正しい位置にないと、サ行やタ行の発音がくぐもった音になり、ナ行やラ行も正しく発音できなくなることがあります。
話している内容は通じるのですが、もごもごしゃべっている感じとか、飴玉をなめている感じという印象になりやすいです。
また、舌癖に関連する他の口腔悪習癖も、改善の難易度に違いがあります。
個人差はありますが、一般的に改善しやすいものとしにくいものに分けられます。
◆改善しやすいもの:原因が明確で、その癖を継続している期間が短いもの
- ・口唇閉鎖不全
- ・咬合力の低下
- ・弄舌癖
- ・口唇癖
- ・一部の歯列異常(非骨格性のもの)
◆改善しにくいもの:複合的な要因によるもの
- ・口呼吸
- ・構音障害
- ・異常嚥下癖
- ・長期の指しゃぶりや咬爪癖
複合的な要因によるものは、歯科的なアプローチのみでは治療が難しいことがあります。
舌癖は「舌を自由に動かす」感覚が失われている場合が多いです。
MFTや矯正治療を通じて、自由に動かせる舌と理想的な歯並びを手に入れましょう。
まとめ
いかがでしたか?
- ・舌癖がある舌は力が入っておらず、厚みがなく、模様やしわがはっきりしていないという特徴があります。
- ・舌が低位である場合、上下前歯の付近に存在すれば開咬となり、下顎に位置すれば下顎前突になりやすいです。
- ・舌癖がある場合、構音障害(くぐもったような発音)になることがあります。
- ・舌の習癖には治しやすいものと治しにくいものがあり、舌癖のある期間の長さで治療難易度が変わります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯並びが治れば滑舌が改善する!?~滑舌と歯並びの関係~
2024年9月19日
歯並びと滑舌の関係
1. はじめに
こんにちは、つぼい歯科クリニックの院長 坪井です。
お子さんの滑舌が悪いことで悩んでいるお母さま方へ、今回は歯並びと滑舌の関係についてお話しします。
現代のお子さんの多くが、口唇や舌を正しく使えていないと言われています。
一般的に3割程度のお子さんが、舌や口唇を上手に動かすことが苦手な「口腔機能発達不全症」と言われていますが、小児歯科の臨床に携わる歯科医師の体感としては3割どころではなく、5~7割と感じています。
- 滑舌が悪い
- 舌の可動域が小さい
- 舌を挙上するのが苦手
- 風船を膨らますことができない
- 蝋燭を吹き消せない
- 普段から口が開いている
- 食事がとても時間がかかる
今回は、こうした「小児口腔機能発達不全症」の症状のうち、滑舌と歯並びの関係に焦点を当ててお話しようと思います。
2. 子供の滑舌と歯並び
歯並びが滑舌に与える影響は非常に大きいです。
歯の位置がずれていると、舌が正しい位置に動かず、発音が難しくなります。
例えば、歯並びの横幅が狭く、口蓋(上顎のお椀のような形態)が深い場合、舌を上に持ち上げて上顎に触れさせることが難しくなることがあります。すると「タ行」の発音が難しくなることがあります。
また、上の前歯が前に出っ歯となっていて、下の前歯との距離が大きく空いている場合、舌を上の前歯に擦って音を出す「サ行」が言いにくくなることもあります。
滑舌が悪いと、友達とのコミュニケーションに支障をきたしたり、コンプレックスになったりすることがあるため、可能ならば低年齢のうちに改善したいところです。
3. 歯列矯正の効果
横幅が狭く出っ歯型の歯並びと、正常な歯並びを見比べてみましょう。
横幅が狭く、出っ歯型の歯並び
正常な歯並び
横幅が狭くなってしまった場合、上顎が深くなってしまい、舌を当てるのが難しくなってしまいます。
こうして舌を正常に動かすことが難しい場合、ちょっと籠ったような発音になることが多いです(口蓋化構音)。
歯列矯正治療では前歯を引っ込めたり、(10歳以下の小児の場合は)急速拡大装置と呼ばれる、上顎の横幅をしっかり広げる治療などで、構音が難しくなってしまう原因を治療することができます。
急速拡大装置
4. MFTや言語聴覚士によるトレーニングの併用
歯列矯正だけでなく、筋機能療法(MFT)や言語聴覚士によるトレーニングも有効です。
当院は、口腔機能発達不全症のお子様が矯正治療を行う場合、ほぼMFTも併用しています。
*ただし、お子様の年齢が10歳以上の場合で治療効果が薄いと判断した場合は、ご自宅での簡単なトレーニングの指導のみとさせていただいています。
MFTについては、こちらの記事もご覧ください。
参考リンク:お口の機能発達は10歳までが勝負!
参考リンク:当院のMFTの様子(インスタグラム)
*インスタグラムは音がでますのでご注意ください
5. まとめ
いかがでしたか?
・滑舌と悪い歯並びには関係があり、歯並びを治すことで滑舌が改善することがあります。
・特に「タ行」「サ行」で特に改善が見られます。
・MFTや言語聴覚士によるトレーニングを併用した方が効果的です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
MFT特集 その6 矯正手法とMFTについて
2024年8月15日
矯正手法とMFTについて
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科、小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT関連の第6回で、MFTと矯正方法の選択についてのお話です。
実は、歯並びやかみ合わせには、筋肉の働きが深く関係しているんです。
今回の記事では、その秘密を解き明かしつつ、どうして矯正治療とMFT(口腔筋機能訓練、マイオファンクショナルセラピー)が大切なのかをお話しします。
お子さんの歯並びが気になる保護者の方は、ぜひお読みください。
MTF特集1~5はこちら
MFT特集その1 筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
MFT特集その2 「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
MFT特集その3 お口の機能発達は10歳までが勝負!
MFT特集その4 お口ポカンの影響と直し方について
MTF特集その5 口呼吸とアレルギー、アデノイド
第一章 なぜ筋肉が歯並びに影響するのか?
筋肉は、歯並びやかみ合わせに大きな影響を与えます。
特に、舌や唇の筋肉が正しく機能しないと、不正咬合が進行することがあります。
この問題を放置すると、後々の治療が難しくなる可能性があります。
- 舌小帯・上唇小帯の影響:筋肉がその付着点や起始点で異常に働くと、歯が引っ張られ、不正咬合が増悪することがあります。
例えば、舌小帯や上唇小帯という筋の付着点に問題がある場合、筋肉が正常に機能せず、歯並びが乱れる原因になります。
舌小帯
参照リンク 舌小帯・上唇小帯 | 歯科用語 (shika-yogojiten.jp)
上唇小帯参照リンク 舌小帯・上唇小帯 | 歯科用語 (shika-yogojiten.jp)
このようなケースでは、小帯切除術と呼ばれる簡単な外科処置で改善が見込まれます。
最近では、この処置を選ぶ患者さんが増えています。
- 口や鼻のサイズ:口が小さいと、鼻腔や気道も狭くなることがあります。
この場合、矯正治療によって上顎の拡大することで、呼吸や気道スペースが確保されます。
下顎は、上顎の拡大に伴って自然に成長することも多く、矯正による顎の大きさや位置の改善は、呼吸にも良い影響を与えることが報告されています。
第二章 MFTと矯正治療って何?
MFTは、筋肉の働きを改善するための治療法です。これを行うことで、矯正治療がより効果的になります。
- MFTの役割:MFTは、筋肉のバランスを整え、歯並びを正しく導くサポートをします。筋肉が正常に働くことで、歯が正しい位置に並びやすくなり、矯正治療の効果が高まります。
- 矯正治療との組み合わせ:矯正治療とMFTを併用することで、歯の動きがスムーズになり、理想的な歯並びが期待できます。これにより、将来的な歯並びの安定性も向上します。
第三章 どうやってMFTと矯正治療を行うのか?
それでは、具体的にどのように治療を進めるのでしょうか?
- 丸顔の特徴と治療:日本人に多い丸顔の特徴として、咀嚼筋(食べ物を噛む筋肉)が強いことが挙げられます。
丸顔で咀嚼筋が優位な場合、下顎を成長させる治療法やMFTが向いているとされています。
具体的には、咬合斜面板、咬合挙上板などの装置が用いられるほか、ある程度はマウスピース矯正でも治療が可能です。
- 面長の特徴と治療:一方、面長の特徴としては、咀嚼筋が弱く、低活動であることが多いです。
このような場合、まずは上唇小帯や舌小帯など、筋活動を阻害している因子を取り除くことが重要です。
その上で、硬いものを食べたりガムを噛んだりして、咀嚼筋を鍛えるMFTが効果的です。さらに、鼻が悪い場合も多いため、鼻呼吸の練習や必要に応じた耳鼻科治療が行われます。
直接的な影響は少ないとされていますが、上顎の拡大によって副産物的に鼻呼吸が改善されたという報告もあります。
臼歯部を圧下させる(かみ合わせを低くする)装置も効果的です。
複数の歯に大きな処置が必要な場合は、マルチブラケットやインビザライン矯正などの本格的な矯正が適しています。
第四章:他に考慮すべきことは?
MFTと矯正治療以外にも、いくつかの重要なポイントがあります。
- 鼻呼吸の促進:鼻呼吸ができるようにすることも重要です。
これには耳鼻科治療や鼻の通りを改善するための対策が必要になることがあります。
拡大によって鼻呼吸が改善することもありますが、専門的な治療が必要なケースも少なくありません。
- 骨格の改善:骨格的な問題を早期に改善することで、将来的な抜歯や手術が不要になることがあります。
子供時代に骨格的な不正を指摘し、小児矯正やMFTの結果、改善された場合、抜歯や手術並みの効果が得られることもあります。
まとめ
- 筋肉の働きは、歯並びに大きな影響を与えます。
- MFTと矯正治療を組み合わせることで、より効果的な治療が期待できます。
- 鼻呼吸や骨格の問題も併せて考えることが、より良い結果を生む鍵です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
MFTや矯正について、個別にご相談がある場合は、かかりつけの歯科医院でご相談してください。
当院では、矯正相談での受診や、矯正相談会なども定期的に行っていますので、ご興味がある方はお気軽にお申し込みください。
MFT特集その5 口呼吸とアレルギー、アデノイド
2024年7月3日
口呼吸とアレルギー、アデノイド
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT(マイオファンクショナルセラピー)の第5回で、前回に引き続き口唇閉鎖に係わる要素、「鼻呼吸」について考えてみようと思います。
参考リンク
鼻呼吸について
突然ですが、みなさんは、飲み物を飲みながら鼻で息ができますか?
答えは「できない」。我々人類は、気道と食道が咽頭で交わる構造になっているので、呼吸と嚥下は同時に行うことはできません。気道と食道が交わるので、人間は鼻でも口でも呼吸ができてしまい、また、呼吸と嚥下を同時にはできなくなってしまったんです。
赤ちゃんの場合
では赤ちゃんはどうでしょうか?母乳を10分、15分と吸っている間、ずっと息を止めているのでしょうか?もちろん、ちゃんと呼吸しています。実は赤ちゃんは、気道と食道が完全に分離しているんです。生後6か月以降に喉頭が下降して、成人と同じように気道と食道が交わるようになるんです。つまり新生児のうちは、赤ちゃんは鼻呼吸のみで、呼吸と嚥下を同時に行うことができるんですね。
動物の場合
では、人間以外の動物はどうでしょうか?動物は気道と食道が完全に分
離しており、我々人類の近縁である類人猿ですらも鼻呼吸のみです。犬や猫が暑いときにハアハアやっているのは呼吸ではなく、血管が多い舌を冷やしている行為です。
人類の進化と口呼吸
人類は二足歩行になった結果、口、咽頭、喉頭が大きく広がり、言語を習得して色々な音が出せるようになりましたが、同時に口での呼吸も可能となりました。人間も、二足歩行がまだ出来ない赤ちゃんの頃は気道と食道が完全分離していて、1歳程度で言語を習得するようになると口、咽頭、喉頭あたりが大きくなって、口呼吸も可能になるんです。
免疫系の発達と口呼吸
一方で、1歳前後で卒乳すると母乳由来の免疫が減少し、様々な病原体や物質に巡り合うことにより子供は自分自身での免疫を作るようになります。この時期の免疫系の発達はものすごく、10歳ごろには成人の200%ぐらいの免疫力を持つことになります。
免疫系の発達は生きていく上で非常に重要ですが、この時期に多くのアレルギー反応も生じます。現代社会ではアレルギー反応が強く出る子が多く、鼻詰まりやアデノイド(のどに存在する免疫系の重要な器官)の腫大が多くの子供に見られます。こうした鼻詰まりも口呼吸になってしまう一因となります。
アデノイドと口呼吸
アデノイドの肥大や鼻詰まりが落ち着くのは、6歳頃です。免疫力のピークと、アデノイド発症のピークが一致しないのは、環境要因や生活習慣など複雑な要因が関係するためですが、問題は1~6歳の間、鼻が通りにくい状態にあることで口呼吸が癖になってしまうことです。この(アデノイドなどの)原因が無くなった後も継続する「癖になってしまった口呼吸」のことを「習慣性口呼吸」と言います。
口呼吸のデメリット
口呼吸のデメリットは、以下のように多岐にわたります。
- 歯並びへの影響(出っ歯になりやすい)
- 唾液が前歯に触れないことで唾液による再石灰化作用が弱くなり、虫歯になりやすくなる
- 咽頭が乾燥する、鼻毛のろ過が行われないためにウィルス性疾患にかかりやすくなる
- 鼻を呼吸で使わないことにより、鼻が横方向に成長せず、より鼻呼吸がしにくくなる
口呼吸の予防
口呼吸の予防には、以下の対策があります。
- アデノイドなどがある場合は耳鼻科で処置する
- アレルギー対策を行う
- 口唇閉鎖しやすいような生活習慣を取り入れる
3歳までに形成された癖は自力で治すのは難しいです。大人では意識することである程度改善できますが、小さな子供に系統だった努力をさせるのは困難です。簡単な訓練でも、ステップを踏んで地道に習慣化していく必要があります。
参考リンク:楽しく筋機能訓練(インスタグラム)
まとめ
いかがでしたか?
1.新生児期の呼吸は鼻呼吸ですが、気道と食道が交差するようになる1歳ころから口呼吸が増え始めます。
2.1歳児からのアレルギーや習慣が原因で口呼吸になってしまう子供が多くいます。
3.アデノイドが落ち着くのは6歳ころからです。これらの症状は耳鼻科での治療が必要になります。
4.癖になった口呼吸は、なかなか自然での改善は望めません。習慣性口呼吸がある場合は筋機能訓練が有効です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お口ポカンの影響と直し方について
2024年6月21日
お口ポカンの影響と直し方について
こんにちは!岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 小児歯科専門医の吉村剛です。
今回はMFT(マイオファンクショナルセラピー:口腔筋機能訓練)の第4回で、一番よくある症状である口唇閉鎖、つまりお口ぽかんについてお話しします。
あなたはお口ポカン(口唇閉鎖不全)について、聞いたことがあるでしょうか?
口唇閉鎖不全とは、日常的に口が開いている状態を指します。
2021年の調査では、3歳から12歳の子どもの約30.7%がこの状態でした。
近年非常に増加していて、社会問題になっています。
口唇閉鎖不全は口呼吸につながりやすいですが、必ずしも口唇閉鎖不全、イコール、口呼吸を意味するわけではありません。
今回は、口唇閉鎖不全の原因と改善方法についてお話しします。
お口ポカンはなぜ悪い?
口唇閉鎖不全(お口ポカン)とは、日常的に口が開いている状態を指します。
これが口呼吸に繋がることがあります。
お口ポカンの原因
・鼻呼吸ができていない・・・鼻閉やアデノイド肥大などの原因がある場合。
・お口周囲の筋肉の発達が十分でない
・嚥下や発音、呼吸に関連する筋肉の発達が十分でない場合。
以上より、お口ポカンを改善するには、下記の対策をしていくことになります。
口唇閉鎖不全(お口ポカン)を改善するには
・鼻呼吸ができているか確認する。
・鼻閉やアデノイド肥大などがあれば、耳鼻科での治療を受ける。
・お口周囲の筋肉を鍛えるためのトレーニング(MFT:口腔筋機能訓練)を行う。
お口ポカンに対して何もしなければどうなる?
もしこの問題を放置すると、成長期にさまざまな領域に悪影響を与える可能性があります。
例えば、歯並びが悪くなったり、口呼吸になり集中力が維持できなくなったり、スポーツを行う時にその子の本来のポテンシャルが発揮できなくなったり、睡眠障害が起こる原因となります。
よって、早期の対応が大切です。
以上のような対策を講じることで、口唇閉鎖不全を改善し、健康な発育を促すことができます。
何かご不明点があれば、いつでもご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
1 口唇閉鎖不全(お口ぽかん)は小児の約30%に見られ、鼻閉や筋肉の弱さが原因で起こります。
2 鼻閉やアデノイド肥大が原因の場合は耳鼻科での治療が必要です。
3 筋機能トレーニング(MFT)で口唇閉鎖不全の改善が可能で、早期対応が重要です
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
MFT(口腔筋機能訓練)特集その3 お口の機能発達は10歳までが勝負!
2024年4月25日
MFT(口腔筋機能訓練)特集その3
お口の機能発達は10歳までが勝負!
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 小児歯科専門医の吉村です。
MFT(マイオ ファンクショナル セラピー:筋機能訓練)の第3回です。
今回は「筋機能訓練は何歳までに始めたら良いの?また、何歳までがリミットなの?」というテーマのお話です。
1)筋機能訓練(MFT)は10歳までに終えたい
保険診療の小児口腔機能発達不全症は、18歳未満が対象です。
が、実際は10歳までが勝負と言われています。
筋機能訓練を10歳までに行わないと、効果が激減してしまうワケ
人間の咀嚼、嚥下、発音、呼吸などの口腔機能は、成長発育期に日常生活の中で学習して自然に獲得するものです。
口腔機能にとっての成長発育期が、10歳までなんです。
5,6歳から取り組んで(遅くとも8歳から始めて)、10歳までに終わるのが理想です。
2)筋機能訓練(MFT)では、何を訓練で改善するの?
MFTで改善するのは、呼吸と嚥下(えんげ)の機能です。
歯並びを悪くする原因でもある「呼吸」「嚥下」のうち、ここでは「嚥下」に焦点をあてて解説しますね。
「嚥下」がうまくできない状態(摂食嚥下障害)では、どんなことがおこっているのでしょうか。
嚥下とは、食べる・飲み込むという一連の動作です。
食べ物が実際にある体の「場所」と、食べ物をどう処理するかの「体の働き」がうまく嚙み合っていないと、嚥下はうまくできません。
詳しく説明していきます。
咀嚼嚥下(そしゃくえんげ:かんで飲み込むこと)は2つのとらえ方があります。
2-1)食べ物がどこにあるかで分ける「相(そう)」
相は「口腔相」「咽頭相」「食道相」に分けられますが、これは食べ物が体のどこにあるか、という分け方です。
2-2)認識や筋肉の動きで分ける「期(き)」
期は神経目線の考え方です。
「認知期」「準備期」「口腔期」「咽頭期」「食道期」という流れです。
認知期・・・「食べよう」と思うことにより無意識に食べる心構えをする段階
準備期・・・噛む段階
口腔期・・・飲み込む直前の段階
咽頭期(いんとうき)、食道期・・・食べ物がその場所に来たときに、体が無意識に、オートマチックに動く段階
2-3)咀嚼嚥下障害は、相と期が上手くかみ合っていない状態で発生する
MFTの訓練は「期」の中でのそれぞれの改善点をトレーニングする方法とされています。
舌の位置、動き、持久力、可動域、機能
口唇の動き、閉鎖力、可動域、機能
舌や口唇が正しい機能を発揮しやすくする姿勢
など、多岐にわたり、様々なトレーニング方法があります。
3)機能は一度獲得出来たら、後戻りはしない
通常、人間は食事するとき、舌の位置とか深く考えずにほぼ無意識に行います。
ですが、「食べよう」「食べ物を口に入れよう」「噛もう」というのは、意識して行います。
この「意識する部分」の訓練を繰り返せば、神経筋機能が刺激、発達して改善できる。これがMFTを行う理論的根拠とされています。
また、習得するのは難しいのですが、習得したら無意識レベルまでいくので、後戻りはしないとされる根拠でもあります。
4)どうして10歳までに終えたいの?
この記事の冒頭で、筋機能訓練は5,6歳から開始して、10歳までには終えるのが理想的だとお伝えしました。
10歳ごろまでは
・乳歯が生える/抜ける、永久歯が生えるなど変化が大きい時期
・顎の成長や口腔のボリューム(容積)の変化が大きい時期
・神経機能が発達しやすい時期
ということもあり、体が「変化を受け入れやすい」「機能獲得に有利な時期」なのです。
特に、脳をはじめとした神経系の成長は、10歳前後までに成人の95.6%にまで達します。
この時期は、さまざまな神経回路が形成されます。
よって、神経系の働きを高めるような運動や動作を行うと、発達を促す効果が高いんです。
それ以上の年齢では改善しないわけではありません。
しかし、癖を治すのに強い意志が必要となり、発達もゆっくりとなるので、大きなストレスを感じる人も多いです。
5)MFTで歯並びが綺麗になるって本当!?
5-1)口腔の機能発達不全が歯並びを悪くする
口呼吸や低位舌(ていいぜつ)、舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)などの口腔機能の発達不全は、出っ歯や歯のガタガタ、受け口の原因になることが知られています。
そのため、歯列矯正と併用して行うケースも多いです。
矯正治療で歯並び治療をする時に、歯並びを悪くする癖があれば治療効果が低下します。
そして、せっかく歯並びを治療しても、歯並びを悪くする癖があれば、またすぐに歯並びは悪く戻ってしまうことも多いです。
5-2)MFTをすれば全員歯並びが良くなるわけではない
歯並びの悪さの原因が、何かによります。
口腔機能の発達不全が歯並びを悪くしている原因の場合、口腔機能が改善したら歯並びが良くなることもあります。
ただ、それは神経筋機構が改善した結果です。MFTによって、歯並びが直接改善するわけではありません。
年齢や歯並びや骨の状態によっては、MFTだけでは歯並びを改善できないこともあります。
その場合は、矯正治療との併用してMFTを行うことも多いです。
6)10歳までに機能獲得をするために、8歳までにMFTを始めたい
MFTは2年間くらいトレーニングを行います。
獲得しなければいけない機能不全が、どの程度かによって、期間は前後します。
10歳未満の方であれば、2年のMFT期間で、ほとんどの場合大幅な機能改善が期待できます。
MFT期間の目安は2年間ですが、
- ・症例の重度・軽度
- ・どのくらいご自宅でトレーニング時間を作れるか
- ・トレーニングのための通院頻度
などによっても必要とされる期間は変わります。
絶対に8歳までに始めなければいけない、ということではありません。
しかし、8歳くらいまでに始めると、「安心」ではあります。
7)まとめ
いかがでしたか?
- ・MFTの訓練は「期」の中でのそれぞれの改善点をトレーニングする方法とされ、様々なステップに分けられています。
- ・口腔機能をMFTによって習得するのは難しいのですが、習得したら一生抜けない技術です。
- ・ただし、受け入れやすい年齢は上限が決まっており(10歳)、その後では強い意志が必要となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
MFT 「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
2024年3月6日
MFT(口腔筋機能訓練)特集その2
「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT(マイオ ファンクショナル セラピー 口腔筋機能訓練)の第2回です✨
小児の口腔の発達とMFTについて考えようと思います。
1)MFTの目標は「正しい姿勢・正しい咀嚼と嚥下・正しい呼吸」
正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸とは、なんでしょうか?
リンク先は小児歯科学会の啓発ポスターです。
参考リンク:口は閉じて食べましょう!
正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸として大事なことは、
・前歯で噛みきり、しっかり噛んで程よいところで飲み込む
・背もたれは使わずに、背筋を伸ばした姿勢で座る
・足置きを用いて、足裏を床につけて食事する
・口を閉じて食べる
とされています。
さて、あなたのご家庭では、お子さんは普段、どのような姿勢をしていらっしゃるででしょうか?
2)現代家庭ではお子さんは「良い姿勢」を習得しにくい
ソファーに座ると、子供の場合は足裏が床につかないですし、ソファーだと背もたれにもたれてしまいますよね?
また、ご家族みなさんで食卓を囲むとき、子供は足置きがなけれは足裏が床につかないはずです。
お子さんは足をブラブラ、させていませんか?
背もたれを使っていませんか?
猫背・巻き肩になっていませんか?
診療室でお子さんを見ていると、今はほとんどのお子さんが、こうした「悪い姿勢」になってしまっているように感じています。
お子さんが普段の生活でソファーや足のつかない椅子を使っていると、良い姿勢をするための筋肉が発達せずに、良い姿勢をすることそのものが難しくなってしまうんです。
3)姿勢の維持には筋肉と関節の柔軟性と筋肉量が重要
僕も若いころに比べて姿勢が悪いと言われることが増えてきました。
つい気が緩むと猫背になっていたり、椅子に浅く座って足を組んだりしてしまい、女性メンバーに「姿勢が悪い」と注意されてしまいます。
姿勢の維持に重要なのは筋肉、関節の柔軟性とある程度の筋肉量です。
使いやすい筋肉ばかり使用し、使っていない(サボっている)筋肉があると、使い続けている筋肉は緊張して固く短縮してより強くなり、サボっている筋肉は伸びて弛緩し、衰え細くなります。それによってさらに姿勢が悪くなったり、体の不調が出てきます。高齢になると骨が曲がったり、傷みが出てくる原因にもなります。
特にパソコンやスマホなどをするときは、ストレートネック(首を前方に傾けるような姿勢)になりやすく、首・肩・舌の周囲筋・表情筋などと連動して筋肉が緊張してしまいます。
お子さんだけでなく、成人でも、
「猫背・巻き肩・ストレートネック」になってしまうと、口腔周囲筋の不調和につながって(程度の差はありますが)口腔機能の低下や、TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)や顎関節症などの症状が出てしまうことがあります。
予防や症状改善のためには「正しい姿勢」を維持するために、筋肉のトレーニングやストレッチを行うことや、良くない環境を見直すことが有効とされています。
4)正しい姿勢をするために見直すこと
4-1)小児・成人共通
・椅子に座るときには足裏を床につける
・椅子のせもたれやソファーは使用しない
4-2)乳幼児
・離乳食は大人のゲンコツサイズの野菜の水煮などを手づかみ食べさせる
・足をブラブラさせない。サイズにあった乳幼児用椅子を用いる
4-3)小児
・口腔周囲筋を良く動かすような遊びをする(口笛、吹き矢など)
・足裏が床につかない時は足置き台を用いる
・学習机に向かう時の椅子も、足置き台を足裏が付くようにする
4-4)成人
・スマホやパソコンを使うときの姿勢に気を付ける
・巻き肩にならないよう、肩甲骨を寄せる筋トレを行うか、大胸筋や前腕屈筋群、広背筋を伸ばすようなストレッチを行う
・座り時間が長くなりすぎないように気を付ける
5)「仕上げ磨き嫌い」や「食事の好き嫌い」も、口腔の発達不全に由来している!?
保護者の方の悩みである仕上げ磨き。
実は、仕上げ磨きが嫌いなお子さんは、口腔機能の発達不全があるかもしれません。
口腔内の筋肉の動きが悪い部分=筋肉の強い緊張がある部分は、過敏な部位に変化していきます。
歯磨きが苦手なお子様たちの口を観察すると、舌小帯や上唇小帯の短縮症があったり、低位舌などがある場合が多いです。そうした「発達不全の原因」があるために、口腔内が過敏になって、大人に触られるのを嫌がるようになってしまうんです。
ですので、MFTのスタートは過敏を除去する、脱感作となります。
口から舌を突き出したりする動きや、口の周囲をトレースさせる動き、舌に歯ブラシを当てる動きなどです。
また、筋肉の発達とともに過敏も落ち着いてくる場合が多いです。
MFTは最終的に歯並びの改善に大きく寄与する場合もありますが、第一に目標とすべきは正しい機能の獲得と発達です。歯磨きが苦手、食事が遅い、口を開けて食べる、好き嫌いが多いなどの問題がある場合、口腔領域全体の発達の問題ととらえて見直してみると良いでしょう。
6)まとめ
いかがでしたか?
・MFTの目標は、正しい姿勢で、正しく噛んで飲み込み、正しく呼吸する、ことです。
・口腔周囲筋の不調和があると、口腔機能発達不全の原因となります。
・仕上げ磨きの嫌いな子は不調和に起因する感覚過敏が原因である場合が多いです。
・歯磨きが苦手、食事の好き嫌いなどの問題がある場合、口腔領域全体の発達の問題ととらえて生活習慣を見直すことをおススメします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
MFT 筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
2024年1月25日
MFT特集その1
筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
今回から、歯科界でこの数年話題の、MFT(マイオ ファンクショナル セラピー:口腔筋機能訓練)について、何回かで解説していこうと思います。
MFTをお子さんの歯並びや口呼吸を改善するためのトレーニングとして、歯科医院で説明を受けたことがあるという人もおられるかもしれません。
また、ここ2~3年は、MFTをお子さんだけでなく、高齢の方や睡眠障害のある方にもオススメしている歯科医院も少しずつ増えてきています。
MFTとは「お口の筋トレ」
全身においても筋力量の維持は、健康のために大変重要と考えられています。
一定以上の筋肉が存在することが骨、内臓、その他血液を含め、肉体を守る鎧となるんです。
口腔も同じで、筋肉量があることや、筋肉を正しく動かすこと(口腔の機能を獲得すること)が重要と言われています。
サルコペニアとフレイル(高齢者の筋肉量減少による機能低下)
高齢者において、筋肉量が減り身体機能が低下した状態をサルコペニアと言います。
サルコペニアが進行して、要介護一歩手前になってしまった状態がフレイル(虚弱状態)です。
このフレイルは、要介護状態の前段階ではあるものの、「トレーニングによって回復可能な状態」とされています。
フレイルの状態がさらに進行してしまうと・・・
・身体の維持が難しくなる
・歩行困難になる
・寝たきり
・食べ物が嚥下できない
といった「要介護状態」になってしまうんですね。
では、「トレーニングによって回復可能な状態」であるフレイルの初発症状はどこにでるでしょうか?
フレイルの初発症状は口に出る「オーラルフレイル」
高齢になって筋肉量が衰えてくると、口腔機能低下症(オーラルフレイル)といって、もともと持っていた口の機能を十分に使うことが出来なくなってしまう状態になることが多いです。
そして、この「オーラルフレイル(口の虚弱状態)」は「全身のフレイル(虚弱状態)」に先駆けて現れることが多いです。
高齢者の口腔機能低下については、こちらの記事で解説していますので、ぜひお読みくださいね。
参考リンク:老いは口から始まる。歯医者が教える要介護にならないためのポイント!
オーラルフレイルの最初の症状
・滑舌が悪くなる
・食べこぼしやわずかなむせがでやすい
・噛めない食品の増加する
この3つは口腔顔面の筋機能に問題がある幼児の、食生活での問題点と完全に一致します。
子どもの発音、嚥下機能の発達がうまくいっていない状態を「小児口腔機能発達不全症」と言います。
小児口腔機能発達不全症と
口腔機能低下症
高齢者が、若いころはもっていた口腔機能が低下した状態が「口腔機能低下症」で
小児が、本来もつべき口腔機能を獲得できていない状態が「小児口腔発達不全症」です。
この2つは、対になる概念です。
乳幼児期・学齢期に口腔機能の獲得をしっかりできていれば、高齢になってからのフレイルはゆるやかに始まります。
一方で、小児期に十分な口腔機能を獲得できなかった場合は、フレイルがより若い段階で、急激に始まります。
逆に言えば、小児期に筋機能をしっかり獲得しておけば、発音や嚥下の問題点はあらかた解消します。
そしてその後も筋力量をある程度維持できれば、老年期のお口の衰えも予防することができる、ということを意味しています。
高齢になってからのオーラルフレイルが進行するとどうなる?
・嚥下が難しくなる。とろみ食や介護食でないと食べられなくなる。
・誤嚥しやすくなる。
・誤嚥のため、誤嚥性肺炎を起こしやすくなる
・食の問題からタンパク質が不足し、全身のフレイルへと進行する
高齢期のオーラルフレイルを、子供のうちからしっかりと予防したいですね。
口腔機能の獲得をしやすい年齢は10歳まで
お口の機能と筋力量の獲得を目的として行うトレーニングがMFTです。
口腔機能の獲得は、10歳以降はなかなか難易度が高いという特徴があります。
もちろん、何歳からはじめても意味はあるのですが、できれば効果が高い10歳までに獲得しておきたいものです。
当院でも小児口腔機能発達不全症のスクリーニング(保険適応)や、ご自宅で今日からできるトレーニング、口腔機能を伸ばす遊びの指導や、習い事としてのMFTスクールなども行っております。
気になる方は、一度ご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
・MFTとはマイオ ファンクショナル セラピーの略で、口腔機能訓練でお口に関する筋のトレーニングを意味します。
・口腔の機能と筋肉量をつけることができれば、嚥下・発音などの問題点を解消できるようになります。
・小児の口腔機能発達不全症を治療できなかった場合、高齢期にフレイルになりやすくなります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!