MFT特集 その11 リハビリの考え方でアプローチするMFTの実践方法
2025年1月21日
MFT特集 その11 リハビリの考え方でアプローチするMFTの実践方法
こんにちは、つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT特集その11 MFTの実際とその考え方をまとめです。
MFT(筋機能療法)や、小児口腔機能発達不全症について詳しく知りたい方は、ぜひ過去の記事もご覧ください。
MTF特集1~10はこちら(クリックすると、ページに移動します)
1.MFTはリハビリの考え方と似ている
リハビリでは、体の機能がうまく働かなくなったとき、ただ障害された部分を治すだけではなく、他の部分を使って障害された機能を補うことを考えます。
たとえば、私自身の話ですが、よく背中が痛くなることがありました。
症状ケース1
- ・症状 背中が痛い
- ・原因 軽度ヘルニア+姿勢や背中の筋肉と腹筋のバランスが悪い
- ・トレーニング 首の牽引、懸垂運動、背中の筋を意識しながらの運動、腹筋運動などのリハビリ
このように、具体的な動き(トレーニング)を通して体を改善していくのがリハビリの基本です。
リハビリは英語でrehabilitationと言います。
Re(再び)+ habilitate(適応させる、能力を与える)+ion(~すること)で、元は持っていた機能を回復させること、という意味です。
一方でMFTは「ハビリテーションhabilitation」、まだ獲得されていない機能を新たに習得させます。

元あった機能か、まだ獲得されていない機能かの違いで、トレーニングの基本的な考え方は似ているんです。

2.滑舌の問題もリハビリと同じアプローチで
実は、滑舌の問題もリハビリと似た考え方で改善できます。たとえば、「カ行がうまく言えない」という悩みはよくあります。
症状ケース2
- ・症状 カ行の発音が難しい
- ・原因 舌の奥を持ち上げる力が弱い
- ・トレーニング MFT:口腔筋機能療法(舌挙上トレーニング)
トレーニング例
こうした練習を通して、舌の動きを改善し、滑舌を良くしていきます。ただ「舌の奥を鍛えましょう」と言われても難しいですが、具体的な方法を取り入れることで、自然とできるようになるのです。
3.リハビリとMFTの共通点
リハビリの基本は次の5つです:
リハビリの基本
- ・できないことをできるまで練習する
- ・方法を変えて反復練習する
- ・環境を整える
- ・補助具を使う
- ・できない部分を他の人や道具で補う
これらはMFTにも当てはまります。
たとえば、1~3はMFTの練習そのものですし、4や5は矯正装置を使って歯列を整えることが該当します。
4.MFTの明るい未来
MFTがリハビリよりも希望を感じられるのは、練習を頑張れば、できるようになるお子さんが多いことです。神経や脳の障害で動かなくなった部分を改善するリハビリに比べると、MFTは「コツ」をつかむことが重要です。そのコツさえ伝われば、あとは一気にできるようになることが多いのです。
ただし、お子さんの場合、その「コツ」を伝えるのが少し大変だったりします。
私たちクリニックを挙げて取り組んでいますので、みんなで一緒に頑張っていきましょう!
5.まとめ
いかがでしたか?
- ・MFTはリハビリの考え方と同じ方法を用います。
- ・ただ「ここが問題です」と指摘されるだけでは、誰もすぐに改善できるわけではありません。トレーニングを通じて、少しずつ正しい機能を身につけていきます。
- ・トレーニングを繰り返し行いながら、歯並びを整える矯正治療を組み合わせることで、後戻りが少なく、機能がしっかり整った歯科矯正を実現することができます。
今回でMFT特集は完結です!
長い間お付き合いありがとうございました。
MFT特集 その10「かみ合わせのずれとその原因:正中のずれを考える
2025年1月2日
MFT特集 その10 「かみ合わせのずれとその原因:正中のずれを考える」
こんにちは!岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT(口腔筋機能療法)関連の第10回として、「正中のずれ」について考察します。
かみ合わせのずれや偏咀嚼など、いわゆる「ずれ」の原因を探り、その対応方法について解説します。
正中のずれの原因は大きく分けて以下の2つに分類されます。
正中とは?
正中(せいちゅう)とは、歯科においては、主に上下の歯の中心を指し、特に前歯の中心線を意味します。
正中のずれの原因は?
1.構造の問題(萌出や顎の成長などの問題)
2.機能の問題(偏咀嚼や舌癖などの問題)
それぞれの原因に応じた対応方法も異なるため、まずは正中線のずれを確認し、次に上顎と下顎のどちらに問題があるのかを観察することが重要です。
1.構造の問題
1-1 交差咬合
乳犬歯や犬歯のかみ合わせがずれている場合、下顎が偏位することがあります。
上下顎のバランスが悪い場合に多く、特に下顎が大きい(下顎前突傾向)ケースで見られます。
このような場合、上顎を拡大する矯正治療を行うことで改善が期待できます。

交差咬合:上顎の拡大で改善します。
1-2 乳犬歯の早期喪失
顎が歯に対して小さく、歯が並ぶスペースが不足しているお子さんでは、前歯の生え変わりにともない、乳犬歯が早期に抜けてしまうことがあります。
顎が小さなお子さんの場合、下顎側切歯(前から2番目の歯)が生えるときに、本来ならば乳側切歯という、乳歯の前から2番目の歯とだけ入れ替わらなければならないところ、乳犬歯の根っこも同時に溶かしてしまうことが多いのです。
すると、下顎側切歯が生えてくる7歳前後に、乳犬歯を早期に失ってしまうのです。
乳犬歯が早期に抜けると、永久歯の犬歯が生えるスペースを失ってしまい、結果的に犬歯が八重歯になることがあります。

八重歯(犬歯低位唇側傾斜):矯正治療で改善します。
この場合は、軽度であれば小児矯正によって顎を拡大して歯の生えるスペースを確保したり、重度であれば抜歯による成人歯列矯正による改善が必要になります。
2.機能の問題
2-1 偏咀嚼
歯の位置に問題がなくても、舌癖や歯の喪失が原因で偏咀嚼が起こることがあります。
また、歯の痛みや萌出時の早期接触も偏咀嚼の原因となります。
改善方法としては、以下のようなトレーニングが有効です。
- 普段あまり噛んでいない側(非咀嚼側)での咀嚼トレーニング
- 鏡を見ながら正中を合わせるトレーニング
これらを繰り返すことで、少しずつ癖を改善することが可能です。
チューイングガムを用いたトレーニングがおススメです。
2-2 普段の姿勢
頬杖やうつ伏せ寝など、日常の姿勢もかみ合わせのずれに影響を与えます。
特に、片側だけで頬杖をつくなどの悪習癖がある場合、かみ合わせだけでなく筋肉の付き方にも歪みが生じます。このような場合、以下の対応が重要です。
- 悪い癖を治す
- 周囲の筋肉を正しく鍛える
- 体幹を鍛えるトレーニング
これにより、悪い状態に戻らないよう予防することができます。
MFT(筋機能療法)ではこうした姿勢の矯正なども行っていきます。
まとめ
いかがでしたか?
- 正中のずれの原因は、構造の問題(交差咬合や乳犬歯の早期喪失)と機能の問題(偏咀嚼や姿勢の悪さ)に分けられます。
- 交差咬合や乳犬歯の早期喪失など、構造の問題の場合はMFTよりも矯正治療がより有効です。
- 舌癖や普段の姿勢など、機能の問題の場合はMFTのトレーニングや姿勢改善が効果的です。
偏咀嚼や姿勢の悪さが原因の場合、MFTのガムトレーニングや体幹を意識した筋肉トレーニングを取り入れることで改善が期待できます。
正中のずれを改善するためには、原因を正確に把握し、それに応じた適切な対応を行うことが大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
MFT特集 その9 「下唇を噛む癖」咬唇癖ついて考える
2024年11月25日
MFT特集 その9 「下唇を噛む癖」咬唇癖ついて考える
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
MFT関連の第9回である今回は、「咬唇癖」について考えてみようと思います。
これは第8回で触れました深いかみ合わせ(deep bite)に随伴する症状です。
日本人は顔の構造の特徴から、Deep biteな上顎前突の顔の人が増加しているようです。

*画像は同意を得て掲載しています*
MTF特集1~8はこちら(クリックすると、ページに移動します)
1.咬唇癖とは?
口唇癖は上顎前歯の裏に下口唇を咬む癖で、挟み込まれた下口唇が上顎前歯を唇側に押すため、上顎前歯がさらに前突していきます。

出っ歯だから唇を咬み、唇を咬むから出っ歯が悪化するという、悪循環です。
2.咬唇癖を予防するには「3歳未満で止めること」が重要
乳歯列期に唇にあとが残るほど「下唇を吸う」子供がいますが、乳歯の指吸い癖と一緒で、3歳ぐらいまでにやめれれば歯列への影響は少ないとされています。
これらの癖は授乳などと同じような『吸う感覚』を味わうためにするといわれており、3歳以降も続けるようであれば、癖として定着してしまいます。
癖として定着している場合、自力での改善は意識してもなかなか難しいです。
口唇癖はほぼ無意識でする行動で、ストレスがかかったり、緊張するととくに唇を咬む傾向にあります。
指吸い癖もそうですが、『吸う感覚』が心地よい、と感じている場合は辞める動機がなかなかありません。
3.咬唇癖を治す方法
3-1)噛みたいときには別のことをさせる
唇を咬む癖が良くないことであることを本人に説明した上で、噛みたい時には他のこと、お気に入りの玩具で遊ぶなどといった、他の事をさせるよう誘導するという方法があります。
ただ、前述のとおり、いったん癖として定着してしまっていると、これだけで完全に癖を治すことは難しいことが多いです。
3-2)矯正により口腔の形の改善する+口腔機能の発達を促す
顔が丸く、頬の筋肉が強い場合、下顎が奥に押し込まれています。
(詳しくはこちらの記事もご覧ください:MFT特集その8「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える)
こうした場合、マウスピースなどで前歯のかみ合わせを「浅くする」ことにより、下顎の成長を促すことができます。また、上の前歯を矯正によって引っ込め、上下の前歯の間に下口唇を入らないようにすることが有効です。
また、口腔機能の発達不全が背景にある(唇の力が弱い・咬合力が未発達・舌を上に持ち上げる力が弱い、など)ことが多いため、MFT(筋機能訓練)により改善を試みることが重要です。
4.咬唇癖は放置すると悪化する
口の習癖は、様子を見ていても、咬合と筋肉の悪循環の作用により徐々に症状が悪化していく事が多いです。口唇癖はその典型です。
正常な発育を阻害する因子は、なるべく早めに矯正やMFTなどを組み合わせて実施して、形の修正・癖の修正を両面から支援することが重要だと考えます。
まとめ
いかがでしたか?
- ・上顎前突、Deep biteでは、唇を咬む癖(咬唇癖)が出やすいです。
- ・唇と咬むから出っ歯が悪化し、出っ歯だから唇を咬む…という悪循環が発生し、咬合と筋肉の作用により悪化していく症例が多く存在します。
- ・咬む行為が本人にとって心地よい場合、自然にはなかなかやめられません。矯正などによる口腔の形の修正と、MFTなどのトレーニング、本人の発達と理解、を通じて正常な発育を阻害する因子を修正してあげることが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
MFT特集 第8回 – 「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える
2024年10月25日
MFT特集 第8回 – 「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
今回はMFT(口腔筋機能療法)に関連した第8回の特集として、最近よく見られる深いかみ合わせ(deep bite)についてお話します。

MTF特集1~7はこちら(クリックすると、ページに移動します)
MFT特集その1 筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
MFT特集その2 「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
MFT特集その3 お口の機能発達は10歳までが勝負!
MFT特集その4 お口ポカンの影響と直し方について
MTF特集その5 口呼吸とアレルギー、アデノイド
MFT特集その6 矯正手法とMFTについて
MFT特集その7 舌癖と歯列不正のメカニズムについて
筋肉は、歯並びやかみ合わせに大きな影響を与えます。
第5回でも軽く触れましたが、日本人は丸顔が多く、幼い印象を持たれる顔が多い傾向があります。
骨や筋肉の視点から見ると、下あごの発達が悪く、咬筋が優位になりやすい顔の作りです。
実はこの特徴が、深いかみ合わせの症状と一致しています。
つまり、日本人は深いかみ合わせになりやすい顔の作りであると言えます。
1 ディープバイトの原因と影響
ディープバイトは奥歯をぎゅっと噛みしめてしまう「クレンチング」が原因です。
歯の高さである「咬合高径」は、噛む力と萌出する力のバランスで決まります。
噛む力が強ければ、萌出力が負けてしまい、歯の高さが低くなります。
このディープバイトの問題点は、時間が経つにつれてさらに深くなり(悪化する)可能性が高いことです。
2 下あごの成長とディープバイトの関係
下あごの成長は上あごに比べて遅く、思春期前後にピークを迎えます。
しかし、この時期に咬筋が強すぎると、下あごの発達が阻害され、上顎前突の傾向が強まります。
そのため、思春期前後までにバイトアップやマウスピース矯正など、下あごの発達を促す介入を行うことが有効です。
また、広島大学の研究でも、ディープバイトは自然には改善せず、むしろ悪化することが多いとされています。
3 家庭でできるディープバイト対策
家庭でできる対策としては「クレンチング(噛みしめ癖)予防」が挙げられます。
人間は集中すると癖が出やすく、奥歯を無意識に上下の歯を接触させてしまう癖がつくことがあります(歯牙接触癖:tooth contacting habit)。
これが進行すると、歯を常に噛んでいる状態となり、さらに問題が悪化することがあります。
また、ストレスがかかると歯ぎしりなど、奥歯を強くかみしめる症状が出る人もいます。
人は安静時、「上下の歯が当たっていない状態」が正常です。
上下の歯が接触するのは、食事時間も入れて1日約17分と言われています。
以上より、普段から上下の歯を当てない・噛みっぱなしにしないように意識することが大事です。
4 下あごに負担をかける癖に注意
頬杖やうつぶせ寝など、下あごに負担をかける癖も良くありません。
これらの癖は姿勢に関連しており、自分がどのような状況で下あごに力をかけているかを把握することが重要です。
例えば、ゲームをする時も、口を開けている人もいれば、奥歯をかみしめている子供も多くいます。
最近のお子さんの生活習慣の傾向として、ゲームやスマホなどを長時間するケースが多くみられます。
そうした生活習慣の中で、奥歯をかみしめるにしろ、開けているにしろ、お口の癖が強く影響するようになったと臨床家として感じています。
お子さんの生活の癖や姿勢の癖、お口の癖などを親御さんがしっかりチェックしてあげることが重要です。
まとめ
生活習慣や癖が歯並びに影響することを意識し、「お口の悪い癖」「口腔機能発達不全」を見逃さないことが重要です。良く分からない場合は、お近くの歯医者さんでチェックしてもらってくださいね。
生活習慣の悪化を防ぐためにも、早めの対策がおススメです。
いかがでしたか?
・日本人は丸顔で、ディープバイトになりやすい顔の作りです。
・クレンチングによって下あごが押し込まれ、悪化しやすい傾向があります。
・ゲームなどの集中による癖もディープバイトに影響するため、生活習慣を見直すことが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
MFT特集7 舌癖と歯列不正のメカニズムについて
2024年9月26日
MFT特集7 舌癖と歯列不正のメカニズム~舌の悪い癖と歯並びが悪くなることの関わりについて~
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック、小児歯科専門医の吉村です。
今回は、MFT(口腔筋機能療法)の第7回として、舌癖がどのように歯並びに影響を与えるかを解説します。
第1章 舌癖と歯列不正の関係
舌癖は「舌が正しい位置にない状態」とも言えます。
舌に力が入っていないと、舌の厚みや模様がはっきりしません。
舌が正しい位置にあれば、力が入り、舌の模様がはっきりします。
例えるなら、牛タンのブロックのように厚みがあり、縦にしっかりとした形が舌の正しい姿です。
舌が弛緩して低位になると、上下前歯の間か、下顎に収まるようになります。
- ・舌が上下の前歯の間に収まるようになれば、舌突出癖が誘発され、『開咬』になります。
- ・舌が下顎に収まってしまえば、下顎歯列が拡大されて、『反対咬合』の傾向を呈してきます。
- ・上顎は舌の刺激が少ないため、横幅が狭く、口蓋が高く(上顎のくぼみが深く)なります。
- ・低位舌の場合、口輪筋が発達不全をおこし、お口ポカン(口唇閉鎖不全)になりやすくなります。
- ・お口ポカンになると、前歯は『出っ歯』の状態を呈する場合があります。
第2章 舌癖が発音に与える影響
舌癖は発音にも影響を与えます。
舌が正しい位置にないと、サ行やタ行の発音がくぐもった音になり、ナ行やラ行も正しく発音できなくなることがあります。
話している内容は通じるのですが、もごもごしゃべっている感じとか、飴玉をなめている感じという印象になりやすいです。
また、舌癖に関連する他の口腔悪習癖も、改善の難易度に違いがあります。
個人差はありますが、一般的に改善しやすいものとしにくいものに分けられます。
◆改善しやすいもの:原因が明確で、その癖を継続している期間が短いもの
- ・口唇閉鎖不全
- ・咬合力の低下
- ・弄舌癖
- ・口唇癖
- ・一部の歯列異常(非骨格性のもの)
◆改善しにくいもの:複合的な要因によるもの
- ・口呼吸
- ・構音障害
- ・異常嚥下癖
- ・長期の指しゃぶりや咬爪癖
複合的な要因によるものは、歯科的なアプローチのみでは治療が難しいことがあります。
舌癖は「舌を自由に動かす」感覚が失われている場合が多いです。
MFTや矯正治療を通じて、自由に動かせる舌と理想的な歯並びを手に入れましょう。
まとめ
いかがでしたか?
- ・舌癖がある舌は力が入っておらず、厚みがなく、模様やしわがはっきりしていないという特徴があります。
- ・舌が低位である場合、上下前歯の付近に存在すれば開咬となり、下顎に位置すれば下顎前突になりやすいです。
- ・舌癖がある場合、構音障害(くぐもったような発音)になることがあります。
- ・舌の習癖には治しやすいものと治しにくいものがあり、舌癖のある期間の長さで治療難易度が変わります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯並びが治れば滑舌が改善する!?~滑舌と歯並びの関係~
2024年9月19日
歯並びと滑舌の関係
1. はじめに
こんにちは、つぼい歯科クリニックの院長 坪井です。
お子さんの滑舌が悪いことで悩んでいるお母さま方へ、今回は歯並びと滑舌の関係についてお話しします。
現代のお子さんの多くが、口唇や舌を正しく使えていないと言われています。
一般的に3割程度のお子さんが、舌や口唇を上手に動かすことが苦手な「口腔機能発達不全症」と言われていますが、小児歯科の臨床に携わる歯科医師の体感としては3割どころではなく、5~7割と感じています。
- 滑舌が悪い
- 舌の可動域が小さい
- 舌を挙上するのが苦手
- 風船を膨らますことができない
- 蝋燭を吹き消せない
- 普段から口が開いている
- 食事がとても時間がかかる
今回は、こうした「小児口腔機能発達不全症」の症状のうち、滑舌と歯並びの関係に焦点を当ててお話しようと思います。
2. 子供の滑舌と歯並び
歯並びが滑舌に与える影響は非常に大きいです。
歯の位置がずれていると、舌が正しい位置に動かず、発音が難しくなります。
例えば、歯並びの横幅が狭く、口蓋(上顎のお椀のような形態)が深い場合、舌を上に持ち上げて上顎に触れさせることが難しくなることがあります。すると「タ行」の発音が難しくなることがあります。
また、上の前歯が前に出っ歯となっていて、下の前歯との距離が大きく空いている場合、舌を上の前歯に擦って音を出す「サ行」が言いにくくなることもあります。
滑舌が悪いと、友達とのコミュニケーションに支障をきたしたり、コンプレックスになったりすることがあるため、可能ならば低年齢のうちに改善したいところです。
3. 歯列矯正の効果
横幅が狭く出っ歯型の歯並びと、正常な歯並びを見比べてみましょう。

横幅が狭く、出っ歯型の歯並び

正常な歯並び
横幅が狭くなってしまった場合、上顎が深くなってしまい、舌を当てるのが難しくなってしまいます。
こうして舌を正常に動かすことが難しい場合、ちょっと籠ったような発音になることが多いです(口蓋化構音)。
歯列矯正治療では前歯を引っ込めたり、(10歳以下の小児の場合は)急速拡大装置と呼ばれる、上顎の横幅をしっかり広げる治療などで、構音が難しくなってしまう原因を治療することができます。

急速拡大装置
4. MFTや言語聴覚士によるトレーニングの併用
歯列矯正だけでなく、筋機能療法(MFT)や言語聴覚士によるトレーニングも有効です。
当院は、口腔機能発達不全症のお子様が矯正治療を行う場合、ほぼMFTも併用しています。
*ただし、お子様の年齢が10歳以上の場合で治療効果が薄いと判断した場合は、ご自宅での簡単なトレーニングの指導のみとさせていただいています。
MFTについては、こちらの記事もご覧ください。
参考リンク:お口の機能発達は10歳までが勝負!
参考リンク:当院のMFTの様子(インスタグラム)
*インスタグラムは音がでますのでご注意ください
5. まとめ
いかがでしたか?
・滑舌と悪い歯並びには関係があり、歯並びを治すことで滑舌が改善することがあります。
・特に「タ行」「サ行」で特に改善が見られます。
・MFTや言語聴覚士によるトレーニングを併用した方が効果的です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。