MFT特集その5 口呼吸とアレルギー、アデノイド
2024年7月3日
口呼吸とアレルギー、アデノイド
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT(マイオファンクショナルセラピー)の第5回で、前回に引き続き口唇閉鎖に係わる要素、「鼻呼吸」について考えてみようと思います。
参考リンク
MFT特集その1 筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
MFT特集その2 「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
MFT特集その3 お口の機能発達は10歳までが勝負!
MFT特集その4 お口ポカンの影響と直し方について
鼻呼吸について
突然ですが、みなさんは、飲み物を飲みながら鼻で息ができますか?
答えは「できない」。我々人類は、気道と食道が咽頭で交わる構造になっているので、呼吸と嚥下は同時に行うことはできません。気道と食道が交わるので、人間は鼻でも口でも呼吸ができてしまい、また、呼吸と嚥下を同時にはできなくなってしまったんです。
赤ちゃんの場合
では赤ちゃんはどうでしょうか?母乳を10分、15分と吸っている間、ずっと息を止めているのでしょうか?もちろん、ちゃんと呼吸しています。実は赤ちゃんは、気道と食道が完全に分離しているんです。生後6か月以降に喉頭が下降して、成人と同じように気道と食道が交わるようになるんです。つまり新生児のうちは、赤ちゃんは鼻呼吸のみで、呼吸と嚥下を同時に行うことができるんですね。
動物の場合
では、人間以外の動物はどうでしょうか?動物は気道と食道が完全に分
離しており、我々人類の近縁である類人猿ですらも鼻呼吸のみです。犬や猫が暑いときにハアハアやっているのは呼吸ではなく、血管が多い舌を冷やしている行為です。
人類の進化と口呼吸
人類は二足歩行になった結果、口、咽頭、喉頭が大きく広がり、言語を習得して色々な音が出せるようになりましたが、同時に口での呼吸も可能となりました。人間も、二足歩行がまだ出来ない赤ちゃんの頃は気道と食道が完全分離していて、1歳程度で言語を習得するようになると口、咽頭、喉頭あたりが大きくなって、口呼吸も可能になるんです。
免疫系の発達と口呼吸
一方で、1歳前後で卒乳すると母乳由来の免疫が減少し、様々な病原体や物質に巡り合うことにより子供は自分自身での免疫を作るようになります。この時期の免疫系の発達はものすごく、10歳ごろには成人の200%ぐらいの免疫力を持つことになります。
免疫系の発達は生きていく上で非常に重要ですが、この時期に多くのアレルギー反応も生じます。現代社会ではアレルギー反応が強く出る子が多く、鼻詰まりやアデノイド(のどに存在する免疫系の重要な器官)の腫大が多くの子供に見られます。こうした鼻詰まりも口呼吸になってしまう一因となります。
アデノイドと口呼吸
アデノイドの肥大や鼻詰まりが落ち着くのは、6歳頃です。免疫力のピークと、アデノイド発症のピークが一致しないのは、環境要因や生活習慣など複雑な要因が関係するためですが、問題は1~6歳の間、鼻が通りにくい状態にあることで口呼吸が癖になってしまうことです。この(アデノイドなどの)原因が無くなった後も継続する「癖になってしまった口呼吸」のことを「習慣性口呼吸」と言います。
口呼吸のデメリット
口呼吸のデメリットは、以下のように多岐にわたります。
- 歯並びへの影響(出っ歯になりやすい)
- 唾液が前歯に触れないことで唾液による再石灰化作用が弱くなり、虫歯になりやすくなる
- 咽頭が乾燥する、鼻毛のろ過が行われないためにウィルス性疾患にかかりやすくなる
- 鼻を呼吸で使わないことにより、鼻が横方向に成長せず、より鼻呼吸がしにくくなる
口呼吸の予防
口呼吸の予防には、以下の対策があります。
- アデノイドなどがある場合は耳鼻科で処置する
- アレルギー対策を行う
- 口唇閉鎖しやすいような生活習慣を取り入れる
3歳までに形成された癖は自力で治すのは難しいです。大人では意識することである程度改善できますが、小さな子供に系統だった努力をさせるのは困難です。簡単な訓練でも、ステップを踏んで地道に習慣化していく必要があります。
参考リンク:楽しく筋機能訓練(インスタグラム)
まとめ
いかがでしたか?
1.新生児期の呼吸は鼻呼吸ですが、気道と食道が交差するようになる1歳ころから口呼吸が増え始めます。
2.1歳児からのアレルギーや習慣が原因で口呼吸になってしまう子供が多くいます。
3.アデノイドが落ち着くのは6歳ころからです。これらの症状は耳鼻科での治療が必要になります。
4.癖になった口呼吸は、なかなか自然での改善は望めません。習慣性口呼吸がある場合は筋機能訓練が有効です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。