ご飯を食べる時にくちゃくちゃ音が出てしまうお子さんの話
2021年3月26日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
春ですね。春といえば花粉症です。前回も書きましたが、今年は大変です。ついつい口呼吸になっちゃいますね。
最近小児歯科学会のホームページを見ていると、お子さんの鼻の発達が悪くなってきた、口呼吸が増えたことが問題視されています。
背景に、マスクの使用があると言われています。
マスクを着用すると、どうしても口呼吸になってしまう方が増えてしまうんです。
口呼吸になってしまった結果、食べる時にくちゃくちゃ音が出る子が増えています。
「くちゃくちゃ」と唇を閉じずに食事する癖がついてしまうと、大人になってからマナー的な面で会食時に困ったり、コンプレックスになったりしてしまうかもしれません。
コロナ禍の現在、感染予防対策の面からも問題なので(口呼吸は免疫力低下の原因にもなってしまいます)学会としても注意喚起ポスターを配ったりしています。
今回は、口呼吸の原因と対策をまとめてみました。
口呼吸の原因と対策
1)歯並びが良くない
歯並びのバランスが良くないと、食事をする際に噛みやすい部分に歯を自然とずらしてしまうことになります。
また、かみ合わせた時に隙間があると食べ物を捕らえ辛く、同じように噛み合わせを自然にずらす際に口を開ける必要があり、音が出やすくなると思われます。
特に上顎前突と開咬でよく音が出やすいようです。
対策はやはり矯正することですが、併せて口周囲の筋肉を鍛えることが重要です。
上顎前突
開咬
2)鼻づまりによる口呼吸
口呼吸が主だと、ご飯を食べる時に大忙しです。
呼吸をしながら、咀嚼し、嚥下する。
実は、どれも同時にはできない構造になっています。
試しに、口で呼吸しながら唾を飲み込もうとしてみてください。
絶対に、できないんです。飲み込むその瞬間は、呼吸が止まります。
鼻が詰まった状態で食事をしようとすると、すべてが中途半端になり、結果的に音がたくさん発生します。
空気を飲み込む量も多い様です。
鼻呼吸が自然にできない人は、鼻、咽頭、喉や首、舌、唇の筋肉も弱い傾向にあります。
口呼吸を獲得するためには、鼻炎を治す治療をした上で、鼻で呼吸をするトレーニングも大事です。
有名な「あいうべ体操」や、夜間に鼻呼吸で睡眠するように口を軽くテープで止める方法などがあります。
参考リンク
あいうべ体操
https://tsuboidental.com/2019/04/20/incho-61/#i-6
3)ご飯に集中していない、食べる音をわざと立てて楽しんでいる
これは難しい問題を含んでいますが、ご飯の孤食も原因にあるようです。
子供はご飯の食べ方などは、周りの兄弟や大人を見ることで、適切な時期に「見て覚え」ます。
コロナも相まって、孤食が多い場合は、ご飯の食べ方が下手な子が多いようです。
具体的には、一口量が多い、スプーンやフォークなどの持ち方が正しくない、など。
また、食卓にご飯以外にテレビやスマホなどがあると、当然集中できておらず、「正しい食べ方を学習する」機会を失ってしまう原因になります。
一度、苦手意識ができるとわざと音を立てる子も出てくるため、悪循環が起きてしまいます。
基本的には昔ながらのやり方、つまり食卓のご家族で囲んで、家庭でのルール、マナーを再確認することが重要です。
学会からも、口呼吸や不正咬合などの個人の状態の問題と、孤食をしない、テレビを見ながら食べないなど、家族・家庭での問題を分けて考えるべきとされています。
まとめ
いかがでしたか?
- ご飯を食べる時にくちゃくちゃ音が出る子には、鼻が詰まって口呼吸が多い場合や、歯並びが悪い場合など、口及び口周囲の機能に問題がある場合があります。必要であれば矯正も考えます。
- 口の周囲の筋力の問題もあるので、鼻呼吸を獲得するための筋トレとして「あいうべ体操」がおススメです。
- 適切な時期に摂食が上手くならなかったことにより、ご飯の食べ方に苦手意識がある子もいます。家庭での食事時の状態を、生活の面からも見直すことも重要です。
歯科医院として治療が必要であれば支援していきますので、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
糖尿病で、お薬を飲んでいても血糖値が安定しない…それは歯石のせいかもしれません。
2021年3月15日
歯周病と糖尿病の関係
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
歯周病と全身疾患の関係について耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。
今回は糖尿病との関係について考えていきたいと思います。
参考リンク
認知症と歯周病
歯科と糖尿病、脳血管障害、要介護度は関係が深い!?あれこれ関わっているお口の病気
糖尿病とは?
糖尿病というのは、インスリンの作用不足で慢性的な高血糖状態になり、それが原因でさまざまな合併症を引き起こしてしまう疾患を言います。
糖尿病と歯周病は関係が深い
糖尿病になると、歯周病になりやすく、歯周病があると糖尿病が悪化しやすいことがわかっています。
糖尿病があると歯周病になりやすいのは、なぜ?
- 毛細血管が切れて、血行が悪くなる
- 血行が悪いので細菌感染が起きても白血球による迎撃が十分にできない
- 細菌を抑える力が弱まるので、歯周病になりやすい
- 組織の修復能も下がるので、歯周病になりやすい
糖尿病のコントロールの指標としてHbA1cというものがあります。
このコントロールが良くないと、歯槽骨(歯を支えている骨)の吸収がコントロールが良い人と比べて多いという研究データもあります。
糖尿病が改善したら、歯周病も治る?
糖尿病が無い人でも、歯周病にはなります。
日本人の約8割が歯周病などの歯茎に炎症をもっているという統計もありますから(日本では成人の80%、約8000万人が罹患していると言われています)、糖尿病がなおったからといって歯周病が治るとは限りません。
ただ、糖尿病が改善する前よりは、歯周病も軽度になることが多いと言われています。
糖尿病の有無に関わらず、歯石をとったり、定期的に歯科を受診して悪くなっているところがないかチェックすることは重要です。
歯周病があると、糖尿病が悪化しやすいのはなぜ?
歯周病は慢性の炎症性疾患です。
炎症によって産生された物質は体の中でインスリンを効きにくくしてしまう作用があります。
さらに、歯周病菌の出す内毒素とよばれる物質にもインスリンの働きを妨げてしまう作用があります。
その結果、歯周病を放置すると、糖尿病を悪化させてしまうことが多いのです。
さらには、糖尿病の合併症である心血管病変や腎症の進行に対しても影響を及ぼしてしまう可能性があります。
歯周病を治療すると糖尿病が良くなることが多い?
歯周病が無い状態、もしくは非常に安定した状態で保たれると、血糖値が改善することが多いと報告されています。
「血糖値がなかなか安定しない…」という方は、まずは歯科で、歯周病が無いかチェックしてみることをおススメします。
まとめ
いかがでしたか?
- 糖尿病と歯周病はどちらかが改善すると、もう片方も改善する可能性がある
- 糖尿病と歯周病は、どちらかが悪化すると、もう片方も悪化する可能性がある。
- 糖尿病で血糖値が安定しないとお悩みの方は、歯科治療もぜひ検討してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯科治療中に、オエっとなりやすい!~嘔吐反射~
2021年3月2日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
少しずつ春らしくなってきましたね。
最近、当院でよくある要望として、「オエっとなりやすいので配慮してほしい」という患者さんが、大人の方にもお子様にも増えています。
そこで、「オエっとなる」嘔吐反射のメカニズムや、歯科医院で可能な対処法についてまとめました。
嘔吐反射とは?
オエッとなる症状を嘔吐反射と言います。
嘔吐反射は、口腔内を触られたときに吐き気を起こす現象で、専門的には「異常絞扼反射(いじょうこうやくはんしゃ)」と言います。
嘔吐反射が極端に強い人では、のどの奥以外の、ごく浅い部分でも、口腔内を触られたり、物が入ったりすると強い吐き気を覚えてしまいます。
ただ、不思議なことに食物では、どんな喉の奥であっても吐き気もなく飲み込めるわけで、この点から嘔吐反射は心理学的な原因が強いと考えられています。
また、口呼吸が強く、口で息をしている場合、水が口に溢れると息ができなくなります。したがって、そのような人は「息が出来なくなるかも」という不安から、嘔吐反射が強めである場合も多いです。
歯科治療の場での嘔吐反射への対処法
1)嘔吐反射が起きやすい、トリガーポイントとなる部分の把握
歯の萌出に伴い、えずくポイントはだんだん喉の奥になっていきます。
また、人によって、この浅さなら大丈夫とか、ここを触られるのが苦手、というのがあります。
僕は嘔吐反射が強い患者さんの場合、そうしたポイントを確認するようにしています。
2)「天突」というツボを押す
のど仏の下の、鎖骨と鎖骨の間のくぼみにある「天突(てんとつ)」というツボを指で数秒間押し続けることで、ひどかった嘔吐反射が和らぐ事があります。
小児歯科医としての経験上、実際にやってみると、結構効果がある方が多いと思っています。試してみる価値はありますよ。
3)口呼吸がある場合は、鼻呼吸になる訓練を日頃からする
口呼吸は嘔吐反射を引き起こすリスクが大変高まりますので、鼻で息ができる訓練を日ごろから行うことが重要です。
口呼吸は、いろんなリスクを伴う悪い癖なので、歯科治療の必要が無い方でも、直すトレーニングをされることをおススメします。
参考リンク
口呼吸は万病のもと!?体調不良と呼吸の関係
口呼吸を鼻呼吸に改めるための筋トレを行う
4)物理に的に水が喉の奥に溢れないようにする配慮を行う
ラバーダムと呼ばれる治療する歯以外を覆ってしまうシートを使うと、物理的に水を排除できます。
5)鎮静を行う
それでもなお、嘔吐反射が強く治療が難しい場合は、リラックスすることを目的とした薬物を用いることもあります。
当院では最も安全性が高い鎮静薬物として、笑気ガスを鼻から吸入して治療を受けることが可能です。
笑気ガスによる鎮静効果でウトウトとまどろむ中で、治療を受けることができます。
参考リンク
笑気ガスによる歯科診療を導入しました
ただ、お子様の場合、笑気ガス程度の弱い鎮静であれば『イヤなものは嫌!!』という感情は残っています。
特に、歯科治療が嫌で部屋に入る前から号泣している…というお子様の場合は、鼻水も出ていて、鼻からの吸入も困難となり、鎮静効果が十分に発揮されないこともあります。
笑気ガスよりも鎮静効果が高いものとしては、静脈内鎮静法と全身麻酔法がありますが、専門性が必要なため、当院では実施しておりません。
嘔吐反射が強い人は(もちろん、そうでない方もですが)最初から虫歯を作らないように予防することが何よりも大切だと思います。
そして、いざ、虫歯を作ってしまったけれど嘔吐反射が…という方は、まずはあきらめずに、色々な方法を歯科医師、歯科医院と共にトライしていきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
- 嘔吐反射は心理学的な原因が強いと考えられています。また、口呼吸が反射を増強している場合があります
- 嘔吐反射への対応としては、トリガーポイントの把握、水を喉に行かさない配慮、リラックス効果を高める薬物の使用などが考えられます。
- う蝕は進行性の病変です。あきらめずに治療可能な方法を検討していきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。