電子タバコと口腔がん ~匂いも煙も出ないけれど、発がん性は同じだけある~
2020年5月5日
こんにちは、つぼい歯科クリニック 院長の坪井です。
最近、どこのコンビニでも電子タバコが売られていますね。
煙とニオイの出ない煙草を求めている人が多い証拠だと思います。
職場や家庭で、タバコのニオイによる人間関係のトラブルもめずらしくないので、お悩みの方も多いのかもしれません。
今日は煙草と電子タバコの話題です。
「煙草との上手なお付き合い」「注意すべきこと」を中心にお話しますので、
「タバコはどうしてもやめられないんだけどなぁ~」という方も、ぜひ読んでいただけれるとうれしいです。
歯医者が書く煙草の話題となると、愛煙家ほど
「またお説教でしょ!読みたくない!」と、思われるもしれません。
タバコが健康に良くないとか、みんな知っていますよね。
「禁煙した方が良いよ」だなんて、今まで何度も色んな人から言われてきたことでしょう。
私も「ダイエットした方が良いよ」だなんて、そりゃあ、もう…色んな人に言われ過ぎて耳タコです。
きっとタバコをやめられない人も、同じような気持ちなのかなと思います。
タバコは止めた方が良いのは分かっている。
その上で、やめられないなら、せめて、より危険度の低いタバコとのお付き合いをするところから、チャレンジしてみるのはどうでしょうか。
「無煙タバコ」いろいろ ~噛み煙草、嗅ぎ煙草だけは止めておいた方が良い~
2015年に最初にIQOS(アイコス)が登場した時(名古屋のみ2014年に発売だったらしいですが)は、大変な話題と、順番待ちがあったと聞いています。全国のコンビニに並ぶようになったのは2016年の頃ですね。
IQOSが登場する前に、JTが無煙タバコとして、噛み煙草・嗅ぎ煙草を普及させようとしていた時期がありました。
この時は歯科医師会・医師会の総力を挙げての反対キャンペーンがあり、いったん試験販売が中止となった…という報せを聞いたのですが、いつの間にかひっそりと販売されているようです。
そんなにメジャーな煙草でもありませんので、知らないという人は、一生知らない方が良いでしょう。
既に愛用している方は、これだけは、やめた方が良いと思います。
長時間の会議など「煙草が吸えない時間が長い時に、口の中に入れっぱなしにしておくだけでニコチンが摂取できる」というのが売り文句のようです。
が、紙巻タバコや電子タバコのように濃度の低い煙や蒸気の形で摂取せず、高濃度のニコチンを一部の粘膜だけに触れさせて摂取するスタイルです。
当然、高濃度のタバコの成分に晒された部分は、発がんリスクが高くなります。
勇気のある人は、今から歯肉癌・舌癌を検索してみてください。
手術では、ごっそり歯や顎骨、舌を切り取ることが多いです。
治癒後も見た目・食事・会話などで終生苦労することになります。
いろんなニコチンの摂取法の中でも、噛み煙草・嗅ぎ煙草は、あえて選ばない方が良いでしょう。
電子タバコ
電子タバコは、現在ではIQOS以外にもたくさんの種類が発売されています。
IQOSが登場したての頃は
「紙巻タバコに比べて著しく有害成分が少ない」
「副流煙が無いので受動喫煙のリスクが無い」
と言われていましたが、
現在では
「有害成分に関しては紙巻タバコとほぼ同等」
「ニコチン依存性の点では紙巻タバコと同等の危険性」
「受動喫煙を起こすので周囲への配慮は必要」
ということで決着がついているようです。
健康面では、特にメリットはないようですね。
「タバコの匂いが気になる」という場合は、電子タバコへの乗り換えが有効…という感じでしょうか。
あと、紙巻タバコのようにヤニが歯に付かないということも、電子タバコの利点と言えるかもしれません。
電子タバコも含め、喫煙習慣がある人は歯科定期管理の際に、喫煙習慣を伝えてください
私たち歯科スタッフは、患者さんの口を直接覗き込みますから、本数の少ない方でも紙巻タバコの愛煙家なら、だいたいわかります。
しかし電子タバコやそのほかの無煙タバコの場合、気づかないこともあります。
当院では、定期管理で受診時など定期的に、歯磨きの回数や喫煙の有無、服薬状況などを用紙に記入していただいています。
これは、患者さんの健康習慣や全身の状態を把握することで、管理の精度を上げるためのものです。
喫煙習慣の項目では、電子タバコや噛み煙草・嗅ぎ煙草の場合、記入すべきかどうか迷われる患者さんもいるようです。
煙草の種類に関係なく(そして禁煙挑戦中でニコチンパッチを使用されている場合も)、スタッフに伝えてください。
血中ニコチン濃度によって、歯肉の炎症反応が変わってくる
血中にニコチンが含まれると、血管が収縮します。これが全身に色んな健康被害をもたらします。口の中では、歯周病の悪化と、歯周病の見え方が変わる…という形で現れます。
赤々と腫れたり、出血したりせず、白くブヨブヨとした歯周病になることが多いです。
毛細血管が収縮しているために、歯周病菌と戦う免疫細胞があまり来ることができず、歯周病の重症度が実際より軽度に見えることがあります。
例えば、
今まで、そこまで歯茎は悪くないと思っていたら、ある朝突然、噛むと歯が痛く感じた。そこで急いで歯科医院に受診したら
「ここまで進んだ歯周病は治すのが難しい」と言われてしまう…、
なんてケースもあります。
もともと歯周病は「静かなる病気」と言われ、重症化しないと痛みがあまり出ません。
逆に、歯周病で痛みを感じたら、かなり重症化していて完全な治癒は難しいことも多い病気です。
そこに、煙草によって歯周病の発見と治療が大幅に遅れてしまう、なんてことにならないよう、愛煙家こそ定期的な歯科管理をおススメいたします。
ヤニ取りはおまけ、歯周病の管理が一番大事なのです。
これは、電子タバコ愛用者にも言えることです。
愛煙家だからこそ、自分の小さな異変に早く気付く工夫を
噛み煙草・嗅ぎ煙草ほどでなくとも、電子タバコや紙巻タバコも発がん性リスクがあります。
もちろん、他の病気のリスクもあるのですが、どちらにしても「異変を感じたらすぐに医療機関でチェックを」受ける必要があります。
でも、普段から自分の体に関心が無いと、いつもとどう違うか分かりませんよね。
- 最近、痰がやたら出るようになった
- 声が掠れて治らない
- 舌に治らないデキモノがある・舌のデキモノが大きくなってきた
- 歯茎に治らない口内炎がある
- 日常の動作ですぐに息が切れる
- 煙草を吸ったら、ケホケホと咳が出る
などの症状が出たら、早いうちに医療機関に相談されることをおススメします。
また、何かが起きた時の早期発見のために、普段はあまり歯科に行かないという人も、自治体の無料検診はぜひ利用しましょう!
まとめ
- 噛み煙草、嗅ぎ煙草はやめましょう
- 電子タバコは紙巻タバコと同等のリスクを持ちます
- 愛煙家こそ、歯科での定期チェックをうけましょう
- 喫煙習慣は、ニコチンパッチも含め申告してくださると口腔管理の精度が上がります
- 愛煙家は自分の体に興味をもって、異変があったら医療機関に相談しましょう。
- 自治体の無料検診はぜひ利用しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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