歯科助手のお仕事とその魅力~コンプライアンスを守って、安心安全な医療を。~患者さんへも自分たちにも〜
2025年1月20日
歯科助手のお仕事とその魅力~コンプライアンスを守って、安心安全な医療を。~患者さんへも自分たちにも〜
こんにちは!岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
今回は、歯科助手の仕事についてご紹介します。
歯科助手の役割や魅力、歯科衛生士との職務の違いなどをお伝えしたいと思います!
1.歯科助手の主な仕事内容
歯科助手は、患者さんが安心して治療を受けられる環境を整える、重要な役割です。
「国家資格が必要になる業務」以外のすべて業務のうち、それぞれの歯科医院で、お任せする業務を決めて行っています。よって、その業務はさまざまで、医院ごとにかなり差があります。
代表的な業務は以下の10個です。
1-1. 診療準備
患者さんの治療をスムーズに行えるように、治療に必要な器具や材料を事前に準備します。
当院は受付配属と診療室配属を完全に分けていますが、受付と診療室業務を兼任している歯科医院の方が多数派です。
1-2. 診療介助
歯科医師がスムーズに治療を行えるように、必要な器具や材料をチェアサイドに随時用意したり、患者さんの口腔内を吸引器で吸引したりします。
また、型を採るための印象材を練ったり、型に石膏を流し込んだりすることもあります。
1-3. 機材と物品の管理
治療に使用する器具や材料が、いつでも使用できるように管理することも重要な業務です。
器具の滅菌や保管、使用済み器具の洗浄、修理依頼、在庫管理や発注などを担当します。
小規模から中規模の歯科医院では、受付配属メンバーが滅菌消毒業務も兼任しているところも多いです。
当院は、受付配属メンバーは受付業務を専任で行っています。
1-4. 歯科医師のサポート業務
治療スケジュールの管理、カルテの整理、診療記録の入力を行います。
また、診療室や受付で、患者さんからの質問や相談もされることがあります。
その場でわかる範囲でお答えしたり、わからないことは歯科医師に確認してからお答えします。
1-5. 電話応対業務
患者さんからのお電話でのご予約のお申し込みや、変更に対応します。
診療内容やオペレーションを理解している歯科助手さんは、診療について理解していない受付専任の歯科助手さんと比べると、患者さんを可能な限り多く診療ができて、診療室スタッフに無理や危険が起こらない、上手な予約の取り方ができます。
当院は、電話業務は受付と診療室が分担して行っています。
1-6. 受付
窓口業務です。診察券や保険証の確認、問診票の記入補助、診療室への案内、会計業務などを行います。
保険診療を行う場合、保険証やマイナンバーの番号や期限の管理や、基礎的な保険診療のルールを知っておく必要があります。本格的な医療事務を目指す場合は、より深く保険のルールを学ぶ必要があります。
小規模の歯科医院では、診療介助業務と受付業務を兼任しているところの方が多いです。
1-7. 患者さんへのカウンセリングや治療の説明業務
歯科医師が行う医療面接とは別に、トリートメントコーディネーターやカスタマーサクセスとして、患者さんの価値観や治療の希望などを聞き取りしたり、相談相手になったりする業務です。
中規模以上の医療法人では、歯科助手の上位職種として、トリートメントコーディネーターやカスタマーサクセスを目指す人も多いです。
当院の場合は、数年の研鑽を積んだ、専任のマスタートリートメントコーディネーターが在籍しています。
トリートメントコーディネーターは、1日で認定資格が取れる協会もあれば、半年以上の研鑽が必要な協会もあり、レベル差が大きい資格です。
将来的に、診療室配属歯科助手・受付・保育士の上位職として、当院基準のトリートメントコーディネーターよりは、かなりチャレンジしていただきやすい、カスタマーサクセスを増やしていく予定です。
1-8. 院内環境の整備
清潔で快適な院内環境を保つため、掃除や備品の補充を行います。
1-9. 医療事務
保険算定の確認や修正を行う業務です。
医院によって求められるレベルが違います。
受付スタッフを医療事務と呼んでいるところもあれば、保険のルールに精通して、算定について歯科医師に意見ができる人を、医療事務と定義しているところもあります。
できることによって、収入も大幅に違っています。
当院の医療事務メンバーは、専門職を目指してトレーニングをしてもらっています。
1-10. MFT(筋機能療法)指導業務
歯科衛生士や保育士、管理栄養士が担当することも多いですが、歯科助手が担当する場合もあります。
お口の体操や、食事の姿勢などを指導する業務です。
当院では、保育士メンバーが行っていますが、ベテランの歯科助手メンバーは指導もできるようにトレーニングをしています。
2.歯科助手と仕事を分担する職種
歯科医院によって、受付・診療室業務すべてを行っているところもあれば、受付+滅菌、受付+医療事務、滅菌+準備+MFTを行っているところなど、組み合わせはさまざまです。
現在当院では、診療室配属歯科助手さんは、診療介助+物品管理+滅菌+診療準備をしています。
MFTは保育士さんが、受付は専任の受付配属歯科助手の人が、医療事務業務も専任の医療事務担当の人が行っています。
歯科助手は国家資格が不要です。
当院は未経験での入職大歓迎です。入職したメンバーの9割が、未経験からチャレンジしています。
未経験の方にとって仕事を覚えやすい環境づくりとして、できるだけ最初に担当する業務には集中して学んでいただけるようにしています。
診療室の業務を一通りマスターできたら、次のキャリアアップとして、受付・患者さんへの説明業務・MFT(口呼吸を鼻呼吸に改善するためのパーソナルトレーニング)・インプラント手術の介助業務・顕微鏡を使用した精密治療の介助業務、など担当範囲を広げていただくようにしています。
3.歯科衛生士と歯科助手の業務の違い
歯科助手は「国家資格が必要な診療業務」を行うことができません。
「相対的歯科医行為」と言われる仮の蓋を入れたり外したり、歯周病検査や歯石除去をしたり、といったことはできません。
また、これは法律で決まったことではなく、あくまで学会のガイドラインに過ぎないのですが、泣いて暴れるお子さんの虫歯治療をする際に、安全のために道具を使って抑えないといけないような場面では、歯科衛生士か歯科医師が(治療担当の歯科医師とは別に)1名、治療の安全確保のために必要とされています。
大学病院などでは、若い歯科医師や研修医が暴れるお子さんを抑える役をすることもありますが、一般開業医ではまず歯科衛生士が同伴することになります。
4.歯科助手を守る「コンプライアンス」
4-1. 法律と規則の遵守
業務範囲を正しく理解し、法令を遵守することが重要です。
4-2. 感染対策の徹底
器具の滅菌や院内の衛生管理を徹底することで、患者さんとスタッフの安全を守ります。
コロナ流行期に、飲食店ではクラスターが多数発生したのに、歯科医院ではクラスターはほとんど発生しませんでした。
歯科医院の日頃の感染対策があったからだと思います。
当院でも、最新の感染対策ガイドラインに基づき、定期的な研修を実施しています。
4-3. 働きやすい職場環境の提供
スタッフが安心して働ける環境を整えることも、コンプライアンスの一環です。
当院では、労働基準法を遵守し、残業ゼロに向けての取り組み、産休・育休取得支援などを行っています。
5.歯科助手として働く魅力
歯科助手の仕事は、患者さんの笑顔を支えるやりがいのある職種です。
以下のような魅力があります:
- ・未経験からでも始められる
- ・専門性の高いスキルが身につく/資格取得できる
- ・「ありがとう」と言ってもらえる仕事
5-1. 未経験からでも始められる
特別な資格が不要なため、未経験でも挑戦しやすい職種です。
5-2. 専門性の高いスキルが身につく/資格取得できる
日本に6万8713軒もある歯科医院・病院口腔外科の多くで、歯科助手経験者は優遇採用されます。
歯科の医療用語、印象材や石膏の扱い、吸引の技能、保険や滅菌の知識と経験が重視されるためです。
5-3. 「ありがとう」と言ってもらえる仕事
歯科助手という仕事は、医療現場の中でも特に患者さんとの距離が近く、直接「ありがとう」という感謝の言葉をいただける機会が多い職業です。
歯科治療に不安を抱える患者さんに寄り添い、優しく声をかけたり、治療の流れを丁寧に説明したりすることで、患者さんの緊張を和らげることができます。
6.歯科助手の仕事の「大変な部分」も正直にお伝えします
6-1. 立ち時間が長い
歯科助手の仕事は、基本的に立ち仕事が多いです。
6-2. 覚えることが多い
歯科助手の仕事では、治療器具の名前や専門用語を覚える必要があります。
7.まとめ:歯科助手を目指す方へ
歯科助手は診療補助、器具管理、受付業務などさまざまな業務で歯科医院で活躍しています。
未経験からでも始められ、国家資格は不要ですが、専門性の高いスキルや知識を身につけることでキャリアアップが可能です。
もし歯科助手の仕事に興味を持っている方がいれば、ぜひ一度チャレンジしてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
子どもがプレオルソを嫌がる場合、どうしたら良い?
2024年10月26日
子どもがプレオルソを嫌がる場合、どうしたら良い? ~低年齢の小児マウスピース型矯正を成功させるコツ~
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
今日は、お子さんがマウスピース矯正装置を嫌がった時、どうしたら良い?というお話です。
お子さんの将来のために、せっかく始めたマウスピース矯正。
代表的なものにプレオルソ、ムーシールド、マイオブレイス、T4Kなどがあります。
しかし、いざ矯正装置を使い始めると、お子さんが嫌がって使ってくれない…
しばしば聞くお悩みです。
今回は、特にプレオルソについて、お子さんが嫌がった場合の対処法や実践的なアドバイスをご紹介します。
1 プレオルソとお子さんの心理
プレオルソは、毎日「日中1時間以上と就寝中」装着する矯正器具です。
プレオルソは柔らかく、歯茎にあたっても痛みはほとんど無い矯正装置です。
友達に見られるわけでも、痛いわけでもないプレオルソを、お子さんはどうして嫌がるのでしょうか?
それは、お子さん自身が歯並びに関心が薄く、矯正の必要性を感じていない低年齢で使用される矯正器具だからです。
親御様はお子さんの将来を考えて、歯並びを治してあげたい。
しかしご本人は、そもそも外見に対する意識が育つ前であり、モチベーションを保つことが難しいのです。
思春期になれば、矯正治療をさせてくれた保護者の方へ感謝する日が来るのですが、4~10歳というプレオルソの対象年齢においては「こんな面倒なことをするくらいなら、歯並びきにしないもん」と思ってしまうお子さんがいても仕方がないと思います。
2 お子さんにマウスピースを使ってもらいやすくなる方法
2- 1 お子さん本人が矯正治療に主体的に参加するように配慮する
保護者の方が準備したプレオルソを「はい、あとはお口に入れるだけよ」とお子さんに渡すより、お子さんが自分で準備するようにした方が、継続率が上がることが多いです。
具体的には
・プレオルソをお湯で軟化させて広げる作業をお子さんに任せる
・プレオルソをリテーナークリーナーなどで消毒する作業をお子さんに任せる
・装着時間の記録(ちゃんと使用できた日に、カレンダーにシールを貼るなど)をお子さんの仕事にする
などです。
ただし、お子さんに任せきりにするのではなく、保護者の方は毎日、手を出さずに側で見守ってあげる必要があります。
2-2 プレオルソの使用と楽しいことをセットにする
プレオルソを装着中は会話が難しいため、お子さんが不快に感じることもあります。
そういう時は、プレオルソとお子さんが楽しいと感じることをセットにしてみましょう。
・プレオルソの日中使用時間(1時間)はスイッチやスマホのゲームをやって良い
・プレオルソの日中使用時間はYouTubeを見て良い時間とする
などです。
ただし、プレオルソを入れたまま、他の事に夢中になるとお口が開いてしまうことがあります。
それではプレオルソの効果が期待できませんから、お口が開いてしまうようなら、お口にテープを貼ってあげるようにしてください。
3. 家族全体でのサポート
家族全員でサポートする姿勢も大切です。例えば、プレオルソを口腔内に装着して喋れない時に、他のご家族がみんなでおしゃべりを楽しんでいたら、プレオルソを外したくなってしまいますよね?
・プレオルソ使用時間に他のご兄弟は宿題をする
・プレオルソ使用時間=テレビやゲームをする時間は、ご兄弟もおしゃべりせずテレビやゲームを楽しむ
・小児矯正の進捗を家族で共有し、小さな成長もみんなで喜ぶ
・矯正装置をしっかり使用できたことを、毎日褒める、親御さんが喜ぶ
など、矯正治療を頑張っているお子さんが疎外感を感じたりしないよう、達成感を感じられるようにサポートをしてくださると、成功率がUPします。
特に低年齢のお子さんの場合、上手にできたことをご家族がとても喜ぶと、大きな達成感を感じてポジティブに矯正治療に取り組むことができるお子さんが多いです。
4.達成感を味わえる仕組みを導入する
小さな目標を達成するたびにご褒美を設けるなど、達成感を得られるような仕組みを取り入れると効果的です。
・引換券制度(エコノミートークン法)
ちゃんと装置を使えたらシールが貰え、シールを何個集めたらご褒美が貰える、という方法。
・コレクションインセンティブ法
男の子ならカードゲームのカード(遊戯王カードやポケモンカードなど)、女の子ならシールなどをコレクションしたいという気持ちを利用する方法。
カードゲームやフレークシールを一緒に選んで購入して、パックごとお子さんに渡さずに、毎日装置をちゃんと使えた1枚もらえる、という感じです。
5. まとめ
プレオルソによる小児矯正は、将来のお子さんの健康な歯並びと笑顔のために効果的な治療法です。お子さんが使用を嫌がる場合も、主体性を大切にしながら、家族でサポートし、楽しみと組み合わせていくことが大事です。
多少の困難があっても継続することで、必ず良い結果につながります。
- ・お子さんがプレオルソを嫌がるのは、頑張るモチベーションが湧かないからです。
- ・お子さんが主体的に矯正治療に参加する実感を持てるよう配慮したり、楽しいこととセットにしたりするなど工夫をすると、嫌がらなくなることも多いです。
- ・ご家族のサポートやご褒美作戦も有効です。毎日のことなので、ご褒美は引換券制にするか、廉価なものを集めさせるかなどの作戦がおススメです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
MFT特集7 舌癖と歯列不正のメカニズムについて
2024年9月26日
MFT特集7 舌癖と歯列不正のメカニズム~舌の悪い癖と歯並びが悪くなることの関わりについて~
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック、小児歯科専門医の吉村です。
今回は、MFT(口腔筋機能療法)の第7回として、舌癖がどのように歯並びに影響を与えるかを解説します。
第1章 舌癖と歯列不正の関係
舌癖は「舌が正しい位置にない状態」とも言えます。
舌に力が入っていないと、舌の厚みや模様がはっきりしません。
舌が正しい位置にあれば、力が入り、舌の模様がはっきりします。
例えるなら、牛タンのブロックのように厚みがあり、縦にしっかりとした形が舌の正しい姿です。
舌が弛緩して低位になると、上下前歯の間か、下顎に収まるようになります。
- ・舌が上下の前歯の間に収まるようになれば、舌突出癖が誘発され、『開咬』になります。
- ・舌が下顎に収まってしまえば、下顎歯列が拡大されて、『反対咬合』の傾向を呈してきます。
- ・上顎は舌の刺激が少ないため、横幅が狭く、口蓋が高く(上顎のくぼみが深く)なります。
- ・低位舌の場合、口輪筋が発達不全をおこし、お口ポカン(口唇閉鎖不全)になりやすくなります。
- ・お口ポカンになると、前歯は『出っ歯』の状態を呈する場合があります。
第2章 舌癖が発音に与える影響
舌癖は発音にも影響を与えます。
舌が正しい位置にないと、サ行やタ行の発音がくぐもった音になり、ナ行やラ行も正しく発音できなくなることがあります。
話している内容は通じるのですが、もごもごしゃべっている感じとか、飴玉をなめている感じという印象になりやすいです。
また、舌癖に関連する他の口腔悪習癖も、改善の難易度に違いがあります。
個人差はありますが、一般的に改善しやすいものとしにくいものに分けられます。
◆改善しやすいもの:原因が明確で、その癖を継続している期間が短いもの
- ・口唇閉鎖不全
- ・咬合力の低下
- ・弄舌癖
- ・口唇癖
- ・一部の歯列異常(非骨格性のもの)
◆改善しにくいもの:複合的な要因によるもの
- ・口呼吸
- ・構音障害
- ・異常嚥下癖
- ・長期の指しゃぶりや咬爪癖
複合的な要因によるものは、歯科的なアプローチのみでは治療が難しいことがあります。
舌癖は「舌を自由に動かす」感覚が失われている場合が多いです。
MFTや矯正治療を通じて、自由に動かせる舌と理想的な歯並びを手に入れましょう。
まとめ
いかがでしたか?
- ・舌癖がある舌は力が入っておらず、厚みがなく、模様やしわがはっきりしていないという特徴があります。
- ・舌が低位である場合、上下前歯の付近に存在すれば開咬となり、下顎に位置すれば下顎前突になりやすいです。
- ・舌癖がある場合、構音障害(くぐもったような発音)になることがあります。
- ・舌の習癖には治しやすいものと治しにくいものがあり、舌癖のある期間の長さで治療難易度が変わります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯並びが治れば滑舌が改善する!?~滑舌と歯並びの関係~
2024年9月19日
歯並びと滑舌の関係
1. はじめに
こんにちは、つぼい歯科クリニックの院長 坪井です。
お子さんの滑舌が悪いことで悩んでいるお母さま方へ、今回は歯並びと滑舌の関係についてお話しします。
現代のお子さんの多くが、口唇や舌を正しく使えていないと言われています。
一般的に3割程度のお子さんが、舌や口唇を上手に動かすことが苦手な「口腔機能発達不全症」と言われていますが、小児歯科の臨床に携わる歯科医師の体感としては3割どころではなく、5~7割と感じています。
- 滑舌が悪い
- 舌の可動域が小さい
- 舌を挙上するのが苦手
- 風船を膨らますことができない
- 蝋燭を吹き消せない
- 普段から口が開いている
- 食事がとても時間がかかる
今回は、こうした「小児口腔機能発達不全症」の症状のうち、滑舌と歯並びの関係に焦点を当ててお話しようと思います。
2. 子供の滑舌と歯並び
歯並びが滑舌に与える影響は非常に大きいです。
歯の位置がずれていると、舌が正しい位置に動かず、発音が難しくなります。
例えば、歯並びの横幅が狭く、口蓋(上顎のお椀のような形態)が深い場合、舌を上に持ち上げて上顎に触れさせることが難しくなることがあります。すると「タ行」の発音が難しくなることがあります。
また、上の前歯が前に出っ歯となっていて、下の前歯との距離が大きく空いている場合、舌を上の前歯に擦って音を出す「サ行」が言いにくくなることもあります。
滑舌が悪いと、友達とのコミュニケーションに支障をきたしたり、コンプレックスになったりすることがあるため、可能ならば低年齢のうちに改善したいところです。
3. 歯列矯正の効果
横幅が狭く出っ歯型の歯並びと、正常な歯並びを見比べてみましょう。
横幅が狭く、出っ歯型の歯並び
正常な歯並び
横幅が狭くなってしまった場合、上顎が深くなってしまい、舌を当てるのが難しくなってしまいます。
こうして舌を正常に動かすことが難しい場合、ちょっと籠ったような発音になることが多いです(口蓋化構音)。
歯列矯正治療では前歯を引っ込めたり、(10歳以下の小児の場合は)急速拡大装置と呼ばれる、上顎の横幅をしっかり広げる治療などで、構音が難しくなってしまう原因を治療することができます。
急速拡大装置
4. MFTや言語聴覚士によるトレーニングの併用
歯列矯正だけでなく、筋機能療法(MFT)や言語聴覚士によるトレーニングも有効です。
当院は、口腔機能発達不全症のお子様が矯正治療を行う場合、ほぼMFTも併用しています。
*ただし、お子様の年齢が10歳以上の場合で治療効果が薄いと判断した場合は、ご自宅での簡単なトレーニングの指導のみとさせていただいています。
MFTについては、こちらの記事もご覧ください。
参考リンク:お口の機能発達は10歳までが勝負!
参考リンク:当院のMFTの様子(インスタグラム)
*インスタグラムは音がでますのでご注意ください
5. まとめ
いかがでしたか?
・滑舌と悪い歯並びには関係があり、歯並びを治すことで滑舌が改善することがあります。
・特に「タ行」「サ行」で特に改善が見られます。
・MFTや言語聴覚士によるトレーニングを併用した方が効果的です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
矯正治療は何歳から始めるのが一番良い?
2024年9月3日
矯正治療は何歳から始めるのが一番良い?
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井文です。
今日は「矯正治療は何歳から始めるのが一番良い?」という話題です。
当院には、2~3歳のお子様から、60代くらいまでの方が矯正治療に通院されています。
大人になってからでも、多くの場合は治療可能です。
しかし、悪い歯並びは子供のうちに治してしまう方がメリットが大きいのも、事実です。
1)小児矯正の重要性
まず、小児矯正についてお話ししましょう。
10歳前後までの時期が対象の小児矯正を行う理由は、成長期を利用して顎の骨を正しい位置に導くことができるからです。
この時期に矯正を行うことで、将来的に抜歯を避けることができる場合もあります。
小児矯正の詳細については、別の記事で詳しく書いていますので、ご興味がある方はぜひ読んでみてくださいね。
★参考リンク★
成長を利用して治す小児矯正で「非抜歯矯正」!
2)小児矯正のデメリット
一方で、小児矯正にはデメリットも存在します。
例えば、治療期間が長くなることや、装置の管理が難しいことがあります。
また、子供自身が治療に対して積極的でない場合、治療がうまく進まないこともあります。
3)12~13歳以上の矯正治療
では、小児矯正の時期を逃してしまった12~13歳以上の方の場合はどうでしょうか?
人間の頭蓋は10歳前後で成長をほぼ終えるので、「矯正治療で顎を育てることができる」時期は終わっています。
しかし実は、「顎を育てる時期が終わっている12~13歳」でも、早めに治療した方が良い理由があるんです。
今回は、その理由を5つご紹介します。
4)早めに歯列矯正を行うことのメリット
4-1)治療期間が短い・歯が良く動く
思春期の成長期にある12~13歳の段階では、骨や歯が柔らかく、治療に対する反応が良いです。
この時期に矯正治療を開始することで、治療期間を短縮し、歯の動きを促進することが期待できます。
4-2)痛み・違和感が少ない
若い時期に治療を始めると、歯や口腔の状態がまだ柔らかいため、痛みや違和感が少なく、患者が治療に対して快適に適応できます。
4-3)社会生活への影響が小さい
思春期は学業や友情など、社会的な関係が形成される時期です。
この時期に治療を始めると、社会生活への影響が少なく、同世代との交流や自己表現がしやすくなります。
成人後に治療を始めると、仕事や社会生活において制約を受ける可能性があります。
特に飲食業や営業など、外見や口元が重要な職業に従事する場合、治療が難しくなることがあります。
4-4)加速矯正を行える
近年では加速矯正技術が進歩しており、治療期間をより短縮することが可能です。
思春期に始めることで、このような新しい技術を駆使し、より迅速かつ効果的な治療が行えます。
4-5)高校デビュー・大学デビュー・社会人デビューの時には綺麗な歯並びでいられる
思春期に治療を終えると、高校や大学、社会人としての新たなステージに綺麗な歯並びで臨むことができます。
「失った時間は取り戻せない」ため、思春期に治療を受けることで、将来の自分に自信を持って臨むことができます。
5)私の体験談:思春期の思い出を変える矯正治療
5-1)私の生まれつきの歯並びの問題
私は生まれつき、上の2番目の前歯が2本生えていました。
本来1本のところに2本生えているため、その部分の歯並びが乱れていました。
小学生2年生のころ、母に連れられて矯正相談に行ったことを覚えています。
母は矯正治療が保険適用外であることから、治療を受けさせるべきかどうか、非常に悩んでいました。
母は私に「文ちゃん、歯並び、気になる?治したい?」と尋ねました。
当時の私は小学2年生で、外見や歯並びについて何も気にしていない年齢でしたので、
「全然!このままでいいよ!」と答えました。
母が、ホッとした表情をしたのを、よく覚えています。
5-2)思春期の変化
しかし、思春期に入ると外見がそれなりに気になるようになりました。
笑ったときに上の前歯の歯並びが乱れていることがコンプレックスとなって、口元を隠すことが増えました。
小学生のころは、歯を見せて笑っている写真が多く残っていますが、中学生~高校生の頃の写真では、歯を見せて笑っている写真はほとんどありません。
5-3)矯正治療の決断
大学生になった私は矯正治療を受けたいと、強く思うようになりました。
毎日鏡で自分の顔を見るたび、歯並びが気になる…と思うのを辛く感じるようになっていましたし、
歯磨きを頑張っても、歯並びが乱れて歯が重なっている部分には虫歯ができてしまいました。
両親も私の気持ちを汲んで、
「もっと早くに矯正させてあげたら良かった」
と言ってくれて、晴れて歯並びを治療を受けることが出来ました。
5-4)もっと早くにしておけば良かった
治療が終わったとき、私は自分の笑顔に自信を持てるようになりました。
ただ、矯正治療をする前に虫歯になってしまった歯は元には戻りませんし、
口元を隠して過ごした思春期の時間も戻りません。
矯正治療は何歳からでもできますが、どうせやるなら、確かに早めが良かったなと個人的には思っています。
6)矯正治療を考えている方へ
矯正治療は何歳からでも始められます。
しかし、矯正をされる方の多くが、子供か、若い方です。
「どうせやるなら早いうちに始める方が、メリットが大きい」からです。
小児期から始めれば、抜歯を回避できる可能性が高くなり、
思春期から始めれば、治療期間を短縮し、痛みや違和感を軽減することができます。
大学時代から始めれば、社会生活への影響も少なく、将来の自分に自信を持つことができます。
迷っていらっしゃる方は、当院でも無料矯正相談会を毎月開催しておりますので、よろしければ一度相談に知らしてくださいね。
まとめ
いかがでしたか?
・矯正治療は何歳からでも始めることができますが、早めに始めることで多くのメリットがあります。
・治療期間が短縮されます。
・痛みや違和感が軽減されます。
・社会生活への影響が少ないです。
・将来の自分に自信を持つことができます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
MFT特集その5 口呼吸とアレルギー、アデノイド
2024年7月3日
口呼吸とアレルギー、アデノイド
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT(マイオファンクショナルセラピー)の第5回で、前回に引き続き口唇閉鎖に係わる要素、「鼻呼吸」について考えてみようと思います。
参考リンク
鼻呼吸について
突然ですが、みなさんは、飲み物を飲みながら鼻で息ができますか?
答えは「できない」。我々人類は、気道と食道が咽頭で交わる構造になっているので、呼吸と嚥下は同時に行うことはできません。気道と食道が交わるので、人間は鼻でも口でも呼吸ができてしまい、また、呼吸と嚥下を同時にはできなくなってしまったんです。
赤ちゃんの場合
では赤ちゃんはどうでしょうか?母乳を10分、15分と吸っている間、ずっと息を止めているのでしょうか?もちろん、ちゃんと呼吸しています。実は赤ちゃんは、気道と食道が完全に分離しているんです。生後6か月以降に喉頭が下降して、成人と同じように気道と食道が交わるようになるんです。つまり新生児のうちは、赤ちゃんは鼻呼吸のみで、呼吸と嚥下を同時に行うことができるんですね。
動物の場合
では、人間以外の動物はどうでしょうか?動物は気道と食道が完全に分
離しており、我々人類の近縁である類人猿ですらも鼻呼吸のみです。犬や猫が暑いときにハアハアやっているのは呼吸ではなく、血管が多い舌を冷やしている行為です。
人類の進化と口呼吸
人類は二足歩行になった結果、口、咽頭、喉頭が大きく広がり、言語を習得して色々な音が出せるようになりましたが、同時に口での呼吸も可能となりました。人間も、二足歩行がまだ出来ない赤ちゃんの頃は気道と食道が完全分離していて、1歳程度で言語を習得するようになると口、咽頭、喉頭あたりが大きくなって、口呼吸も可能になるんです。
免疫系の発達と口呼吸
一方で、1歳前後で卒乳すると母乳由来の免疫が減少し、様々な病原体や物質に巡り合うことにより子供は自分自身での免疫を作るようになります。この時期の免疫系の発達はものすごく、10歳ごろには成人の200%ぐらいの免疫力を持つことになります。
免疫系の発達は生きていく上で非常に重要ですが、この時期に多くのアレルギー反応も生じます。現代社会ではアレルギー反応が強く出る子が多く、鼻詰まりやアデノイド(のどに存在する免疫系の重要な器官)の腫大が多くの子供に見られます。こうした鼻詰まりも口呼吸になってしまう一因となります。
アデノイドと口呼吸
アデノイドの肥大や鼻詰まりが落ち着くのは、6歳頃です。免疫力のピークと、アデノイド発症のピークが一致しないのは、環境要因や生活習慣など複雑な要因が関係するためですが、問題は1~6歳の間、鼻が通りにくい状態にあることで口呼吸が癖になってしまうことです。この(アデノイドなどの)原因が無くなった後も継続する「癖になってしまった口呼吸」のことを「習慣性口呼吸」と言います。
口呼吸のデメリット
口呼吸のデメリットは、以下のように多岐にわたります。
- 歯並びへの影響(出っ歯になりやすい)
- 唾液が前歯に触れないことで唾液による再石灰化作用が弱くなり、虫歯になりやすくなる
- 咽頭が乾燥する、鼻毛のろ過が行われないためにウィルス性疾患にかかりやすくなる
- 鼻を呼吸で使わないことにより、鼻が横方向に成長せず、より鼻呼吸がしにくくなる
口呼吸の予防
口呼吸の予防には、以下の対策があります。
- アデノイドなどがある場合は耳鼻科で処置する
- アレルギー対策を行う
- 口唇閉鎖しやすいような生活習慣を取り入れる
3歳までに形成された癖は自力で治すのは難しいです。大人では意識することである程度改善できますが、小さな子供に系統だった努力をさせるのは困難です。簡単な訓練でも、ステップを踏んで地道に習慣化していく必要があります。
参考リンク:楽しく筋機能訓練(インスタグラム)
まとめ
いかがでしたか?
1.新生児期の呼吸は鼻呼吸ですが、気道と食道が交差するようになる1歳ころから口呼吸が増え始めます。
2.1歳児からのアレルギーや習慣が原因で口呼吸になってしまう子供が多くいます。
3.アデノイドが落ち着くのは6歳ころからです。これらの症状は耳鼻科での治療が必要になります。
4.癖になった口呼吸は、なかなか自然での改善は望めません。習慣性口呼吸がある場合は筋機能訓練が有効です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯科用CTで出来ること ~根管治療でCTって必要なの?~
2024年6月6日
歯科用CTで出来ること
~根管治療でCTって必要なの?~
こんにちは、医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
唐突ですが、歯科医院で使用するX線検査に関するクイズです!
CTが100とすると
デンタルレントゲンが55
パノラマレントゲンが28
さて、これは何を比較した数字でしょうか!?
答えは「歯の根尖病巣の検出力」
歯の根っこの先に、膿が溜まったりしてできる根尖病巣ですが、X線撮影の種類で検出力に大きな差があるんです。
根尖病巣や根管治療に関しては、こちらの記事をご参考になさってください。
さてさて、最近は歯医者さんでも、ときどき目にする「CT(コンピュータ断層撮影)」
歯科医院においての普及率(導入率)は10~20%と言われています。
CTという単語はご存じでも、
・実際に撮影を経験したことは無い
・医科では撮影したことあるけれど歯科では撮影したことが無い、
という方が多いのではないでしょうか?
今は歯科領域でも根管治療(歯の根っこの治療)や親知らずの抜歯、小児の歯の萌出不全、矯正治療、インプラント治療など、幅広い分野で活用されています。
今回は聞いたことはあるけれど撮影する機会はそれほどない、歯科用CTのお話です。
1)CTは何がすごいの?
CTはX線を使用して体の断層画像を撮影し、コンピューターを使ってそれらの画像を合成して立体的な画像を作成します。
CT画像は、骨や歯、血管や膿瘍などの内部構造を非常に詳細に観察することができます。
従来のレントゲンは3D(立体)のものを2D(平面)で見る、いわば影絵です。
CTは3Dのものを3Dで見ることができるため、病巣の位置や大きさなどを正確に把握することができるのです。
だからCTは
小さなフィルムで歯を数本単位で撮影するデンタルレントゲンの約2倍、
顎全体を検査して全体を把握するのに用いるパノラマレントゲンの約3倍もの
診断能力を持つんですね。
2)CTとレントゲンの、実際の見え方の違い
まず、パノラマレントゲンでの見え方です。
黄色で囲った部分と、青で囲った部分に注目してください。
黄色の方は、歯医者の目で見ても「もしかして根っこの先に根尖病巣があるかも…でも良く分からないな?」という感じ。青の方は、「問題無さそう」に見えます。
ではCTではどのように見えるでしょうか?
写真は本人の使用許可を頂いています
黄色も青も、どちらにも根尖に透過像(骨の密度が薄くなっている、もしくは骨が無くなっている像)が確認できます。
特に青の方は、病巣が歯の裏側(舌側側)に重なって存在しているため、パノラマレントゲンではまったく分からない、CTでないと検出できない病巣になります。
3)どうしてCTは他のレントゲンより詳細に分かるの?
CT以外のレントゲンは、いわば「影絵」。
被写体の厚みや詳細な形は分からないんです。
歯科医師は、歯の解剖学的な形が頭に入っているので、2Dのレントゲンを見たら「こういう像が写っているということは、きっとこんな感じになっていると思う」という感じで、経験則と統計データをもとに、本来の形を想像しながら治療をしていきます。
しかし影絵は影絵です。
たとえば、下記のような影絵を見た場合はどうでしょうか?
影絵だけを見た場合、
「シルエットからして、テディ・ベアかな?首に何かつけているようだな。テディ・ベアの首についている飾りだから、経験的にチョーカーかリボンかもしれないとは思うけれど。」
くらいは言えるでしょう。
しかし、リボンが蝶々結びされている、と見えているわけではありません。
まさにこれが、CTと他のレントゲンとの「見え方の差」なんです。
4)CT、デンタルレントゲン、パノラマレントゲンの違い
では、歯科領域のどんな病気もCTで撮影すべきか!?…というと、そんなことはありません。
それぞれの良い点、悪い点があり、歯科医師は症例によって使い分けています。
4-1)被ばく量とリスク
- 歯科用CT: 歯科用CTは、一般的なX線撮影よりも被ばく量が高くなります。とはいえ、医科用CTの被ばく量の1/10程度の0.04mSv程度。1年間に自然放射線で受ける被ばく量(平均2.4mSv)の数百分の1の線量になります。
- パノラマレントゲン: パノラマレントゲンの被ばく線量は、約0.005~0.03mSv程度。
- デンタルレントゲン: デンタルレントゲンの被ばく線量は、約0.005~0.01μSv(0.000005~0.00001mSv)程度です。非常に低い被ばく量です。
4-2)情報の正確さや情報量
- 歯科用CT: 歯や顎の詳細な構造を観察することができます。骨の密度や厚さ、歯の位置関係、根尖病巣の詳細は状態、歯にヒビや割れが無いかなど、より詳細な情報を得ることができます。
- パノラマレントゲン: パノラマレントゲンは全体の歯や口腔の構造を一度に撮影するため、全体像を把握することに適していますが、詳細な情報は得られません。根尖病変もある程度大きさが無いと判定できません。
- デンタルレントゲン: デンタルレントゲンは特定の歯や歯周組織を詳しく見ることができますが、X線の影絵である以上、CTよりは得られる情報は少ないです。
4-3)被写体の範囲
- 歯科用CT: 歯を数本だけ、顎骨全体、頭部や咽頭部までと、撮影したい範囲を選ぶことができます。
- パノラマレントゲン: パノラマレントゲンは口腔内全体~顎骨~顎関節までを撮影することができます。
- デンタルレントゲン: デンタルレントゲンは特定の歯や歯周組織を対象としており、口腔内の局所的な領域を撮影します。
4-4)保険診療で使用可能かどうか
- 歯科用CT: 保険診療では「3根管以上の複雑な根管を持つ歯」にCTを撮影して良いとされています。前歯の根っこの治療の場合、基本的には保険でCTを撮影することはできません。
- パノラマレントゲン:3部位以上の撮影部位があるときに撮影します。
- デンタルレントゲン:根管治療時に、もっとも一般的に使用されます。
パノラマレントゲンで顎の骨の状態や、虫歯や根尖病巣が無いかを全体的に確認して、
虫歯や根尖病巣を見つけたら、その部分だけデンタルレントゲンで再確認して、
デンタルレントゲンでも分かりにくい3根管の奥歯では必要に応じてCTを撮影する、
というパターンが多いです。
保険診療では、パノラマレントゲンやデンタルレントゲンで分からない場合にCTを撮影するので、最初からCTのみを撮影する、というやり方は認められていません。
5)CT、マイクロスコープ、Ni-Tiファイルは「根管治療の三種の神器」
*私が勝手にそう言っているだけです
影絵を経験則で補いながら治療するのと、実際に「見える」のでは、診断力に差がでます。
最近は、CT、マイクロスコープ、Ni-Tiファイルなどの先進機器が保険診療でも導入され、治療成績を上げてきています。
その他にもバイオセラミックスセメントにバイオアクティブガラス配合シーラーにと(日本で保険診療では使用できないものも含めて)どんどん技術・材料が進歩しています。
次回は根管治療とマイクロスコープについて、解説していこうと思います。
6)まとめ
いかがでしたか?
- CTは他のレントゲンに比べて、根尖病巣の検出精度が高いです。
- CTは被ばく量が他のレントゲンと比較すると多いです。
- 歯科用CTは医科用CTの1/10程度の被ばく量です。
- CT、パノラマレントゲン、デンタルレントゲンは症例に応じて歯科医師が使い分けています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
MFT 「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
2024年3月6日
MFT(口腔筋機能訓練)特集その2
「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT(マイオ ファンクショナル セラピー 口腔筋機能訓練)の第2回です✨
小児の口腔の発達とMFTについて考えようと思います。
1)MFTの目標は「正しい姿勢・正しい咀嚼と嚥下・正しい呼吸」
正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸とは、なんでしょうか?
リンク先は小児歯科学会の啓発ポスターです。
参考リンク:口は閉じて食べましょう!
正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸として大事なことは、
・前歯で噛みきり、しっかり噛んで程よいところで飲み込む
・背もたれは使わずに、背筋を伸ばした姿勢で座る
・足置きを用いて、足裏を床につけて食事する
・口を閉じて食べる
とされています。
さて、あなたのご家庭では、お子さんは普段、どのような姿勢をしていらっしゃるででしょうか?
2)現代家庭ではお子さんは「良い姿勢」を習得しにくい
ソファーに座ると、子供の場合は足裏が床につかないですし、ソファーだと背もたれにもたれてしまいますよね?
また、ご家族みなさんで食卓を囲むとき、子供は足置きがなけれは足裏が床につかないはずです。
お子さんは足をブラブラ、させていませんか?
背もたれを使っていませんか?
猫背・巻き肩になっていませんか?
診療室でお子さんを見ていると、今はほとんどのお子さんが、こうした「悪い姿勢」になってしまっているように感じています。
お子さんが普段の生活でソファーや足のつかない椅子を使っていると、良い姿勢をするための筋肉が発達せずに、良い姿勢をすることそのものが難しくなってしまうんです。
3)姿勢の維持には筋肉と関節の柔軟性と筋肉量が重要
僕も若いころに比べて姿勢が悪いと言われることが増えてきました。
つい気が緩むと猫背になっていたり、椅子に浅く座って足を組んだりしてしまい、女性メンバーに「姿勢が悪い」と注意されてしまいます。
姿勢の維持に重要なのは筋肉、関節の柔軟性とある程度の筋肉量です。
使いやすい筋肉ばかり使用し、使っていない(サボっている)筋肉があると、使い続けている筋肉は緊張して固く短縮してより強くなり、サボっている筋肉は伸びて弛緩し、衰え細くなります。それによってさらに姿勢が悪くなったり、体の不調が出てきます。高齢になると骨が曲がったり、傷みが出てくる原因にもなります。
特にパソコンやスマホなどをするときは、ストレートネック(首を前方に傾けるような姿勢)になりやすく、首・肩・舌の周囲筋・表情筋などと連動して筋肉が緊張してしまいます。
お子さんだけでなく、成人でも、
「猫背・巻き肩・ストレートネック」になってしまうと、口腔周囲筋の不調和につながって(程度の差はありますが)口腔機能の低下や、TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)や顎関節症などの症状が出てしまうことがあります。
予防や症状改善のためには「正しい姿勢」を維持するために、筋肉のトレーニングやストレッチを行うことや、良くない環境を見直すことが有効とされています。
4)正しい姿勢をするために見直すこと
4-1)小児・成人共通
・椅子に座るときには足裏を床につける
・椅子のせもたれやソファーは使用しない
4-2)乳幼児
・離乳食は大人のゲンコツサイズの野菜の水煮などを手づかみ食べさせる
・足をブラブラさせない。サイズにあった乳幼児用椅子を用いる
4-3)小児
・口腔周囲筋を良く動かすような遊びをする(口笛、吹き矢など)
・足裏が床につかない時は足置き台を用いる
・学習机に向かう時の椅子も、足置き台を足裏が付くようにする
4-4)成人
・スマホやパソコンを使うときの姿勢に気を付ける
・巻き肩にならないよう、肩甲骨を寄せる筋トレを行うか、大胸筋や前腕屈筋群、広背筋を伸ばすようなストレッチを行う
・座り時間が長くなりすぎないように気を付ける
5)「仕上げ磨き嫌い」や「食事の好き嫌い」も、口腔の発達不全に由来している!?
保護者の方の悩みである仕上げ磨き。
実は、仕上げ磨きが嫌いなお子さんは、口腔機能の発達不全があるかもしれません。
口腔内の筋肉の動きが悪い部分=筋肉の強い緊張がある部分は、過敏な部位に変化していきます。
歯磨きが苦手なお子様たちの口を観察すると、舌小帯や上唇小帯の短縮症があったり、低位舌などがある場合が多いです。そうした「発達不全の原因」があるために、口腔内が過敏になって、大人に触られるのを嫌がるようになってしまうんです。
ですので、MFTのスタートは過敏を除去する、脱感作となります。
口から舌を突き出したりする動きや、口の周囲をトレースさせる動き、舌に歯ブラシを当てる動きなどです。
また、筋肉の発達とともに過敏も落ち着いてくる場合が多いです。
MFTは最終的に歯並びの改善に大きく寄与する場合もありますが、第一に目標とすべきは正しい機能の獲得と発達です。歯磨きが苦手、食事が遅い、口を開けて食べる、好き嫌いが多いなどの問題がある場合、口腔領域全体の発達の問題ととらえて見直してみると良いでしょう。
6)まとめ
いかがでしたか?
・MFTの目標は、正しい姿勢で、正しく噛んで飲み込み、正しく呼吸する、ことです。
・口腔周囲筋の不調和があると、口腔機能発達不全の原因となります。
・仕上げ磨きの嫌いな子は不調和に起因する感覚過敏が原因である場合が多いです。
・歯磨きが苦手、食事の好き嫌いなどの問題がある場合、口腔領域全体の発達の問題ととらえて生活習慣を見直すことをおススメします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
インビザラインのアライナー(マウスピース)の交換頻度は「7日」が基本
2024年3月5日
インビザラインのアライナー(マウスピース)の交換頻度は「7日」が基本
~4日・5日・7日・10日のバリエーションと、その理由~
インビザライン(Invisalign)は、歯列矯正を行う際に用いられる透明なマウスピース型の装置です。
従来の矯正装置であるブラケットやワイヤーと比べて目立たず、日常生活に支障をきたしにくいという利点があります。
インビザライン矯正の特徴については、こちらの記事もぜひお読みください。
参考リンク:マウスピース型矯正とワイヤー矯正の違いとは?
参考リンク:インビザライン矯正の魅力 便宜抜歯を回避できる
アライナー(マウスピース)を使用した矯正治療は、患者さんにとって利便性が高いため、とても人気です。
アライナーを効果的に使用するためには、適切な頻度でアライナーを交換することが重要です。
今回は、インビザライン矯正に関する「よくある疑問」として、アライナーの交換頻度について解説します。
1)アライナー(マウスピース)の交換頻度の基本は7日
一般的に、アライナーの交換頻度は7日間を基準としています。
7日交換の場合、4日間使用して歯を動かし、その後3日間は装着したまま歯を安定させるための期間として機能します。このサイクルを繰り返すことで、徐々に歯並びを整えていきます。
2)加速装置を用いて4~5日交換にできることも!
矯正加速装置は、アライナーを使用する際に歯をより速く動かすための装置です。
症例によっては、この装置を用いて4~5日で交換できることもあります。
矯正加速装置は元はインプラントが顎骨と早く結合させるために開発された機械で、骨のリモデリング(吸収と再生)を特殊な光や振動で活性化させます。
この装置を用いて4日交換で40代の方の矯正治療ができたという症例報告もあります。
ただし、若年者と比べて、30代以上の方はやはり歯が動く速度が遅くなる傾向があり、当院では30歳以上の方にはあまりおススメしておりません。
*30歳以上の方でも、7日交換で使用していただくことは良くあります。
*4日交換できなくても、加速装置を用いることでアライナーの浮き上がりなどが減った結果、トータルの治療期間が短くなることは多いです。
3)症例によっては10日交換となることもある
症例によっては歯をゆっくりと動かした方が良い場合もあります。
そのような場合は、アライナーの交換頻度を10日間に1回に設定することもあります。
以下は、10日交換となる可能性が高い症例の特徴です。
3-1)大きな歯の移動が必要な場合
歯並びを大幅に変える必要がある場合、ゆっくりとした動きが歯を過度に負担から守る必要があることがあります。
3-2)歯の傾きや回転が多い場合
特に、歯肉退縮しやすい症例(前歯をわずかに唇側に拡大しなければならない症例など)で、歯の元の傾きが大きい場合はゆっくり歯を動かす必要があることがあります。
3-3)歯茎や歯槽骨の健康状態が悪い場合
歯茎や歯槽骨の状態が良くない場合、ゆっくりとした動きをすることで、歯を健康に保ちながら歯列を改善することがあります。
これはあくまで当院の話ではありますが、10代~30代の方で10日交換をすることはほぼありません。
4)それ以外に交換頻度が変わることはある?
インビザラインなどのアライナー矯正では、IPR(歯と歯の間をわずかにトリミングすること)を行うタイミングが決まっています。
また、アタッチメントという、歯と同じ色の装置を歯に接着して歯を動かすのですが、何枚目でこのアタッチメントを新たに付ける、というタイミングも最初から決まっています。
この「タイミング」は「アライナー●枚目に交換する前」というタイミングです。
*何枚目でIPRやアタッチメント装着するかは、症例により異なります。
ただ、そのタイミングきっちりに歯医者さんに受診できるかというと…
・通院できるのは土曜だけ
・平日は18時以降しか通院できない
となると、IPRやアタッチメント装着のタイミングの前でアライナー交換が出来ずに、結果として交換頻度が下がってしまうことがあります。
ただ、アライナー矯正は始めた日から全日程が決まっている治療でもあります。
数回先の予定を確認して、複数回の予約をとったり、受診予定日のスケジュール管理をしっかりすることで、7日交換を維持することが出来ます。
IPRの頻度が多い症例の場合、こうした「受診スケジュールの管理」が治療期間を大きく左右することもあるんです。
アライナー矯正は「スケジュール管理」で結果的に治療期間を短くすることができるんです。
5)まとめ
いかがでしたか?
・アライナーの交換頻度は7日が基本です。
・加速装置を用いることで4~5日交換に出来ることもあります。
・症例によっては10日交換となることもあります。
・スケジュール管理をしっかり行うことで、矯正治療を早く終えることができます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
インビザライン矯正のよくある「後悔」と、そのリカバー法
2024年2月20日
インビザライン矯正のよくある「後悔」と、そのリカバー法
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
今日は「インビザライン矯正をやってみて後悔したこと」をご紹介しようと思います。
よくある後悔と、それに対する対策もありますから、ぜひ最後までお読みくださいね!
1)インビザライン(Invisalign)矯正の特徴
透明なプラスチック製のマウスピース(アライナー)を使って歯並びを調整する方法です。
従来の矯正治療と異なり、歯に金属のワイヤーや複雑な形態の装置が付かない、
食事と歯磨きの際はマウスピースを外せることが特徴です。
インビザラインの利点(長所)
・治療中の見た目が良い
・矯正していることを気づかれないことも多い
・装置が外れたなどで急患受診しなければいけないことが少ない
・マウスピースを外して歯磨きできるので、衛生的
・マウスピースを外して食事ができるので、食事制限が無い
・奥歯を動かすので、抜歯を回避できることも多い
マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いについては
こちらでも解説しています。
マウスピース型矯正とワイヤー矯正の違いとは?
ぜひお読みくださいね✨
しかし、インビザラインがすべての面でワイヤー矯正より優れているというわけではありません。
マウスピース矯正特有の、課題・短所もあります。
以下では、よくある後悔について詳しく説明します。
2)インビザライン矯正の「よくある後悔」
2-1) マウスピースの使用時間が長い
インビザライン矯正において、マウスピースの使用時間は「1日20~22時間」。
使用時間が長いというより、食事と歯磨き中だけ外せるって感じです。
使っていない時間は、歯が動かない時間ではなく「歯が後戻りする時間」です。
それもそのはず、従来のワイヤー矯正は「そもそも自分では外せない」のですから、
外せない、装置が付いている状態が「矯正中の標準の状態」なんです。
それを「食事中と歯磨き中だけは外せるようになった、画期的な矯正法」がインビザラインです。
食事中と歯磨きの時に外せる=「装置が取れにくい」「食事制限が無い」「歯磨きがしやすい」
ですから、矯正中の不快感は非常に少なくなりますし、
装置が外れたことによって急患来院しなくてはいけない回数もかなり減らすことができました。
一方で「装置をサボることが出来てしまう」という欠点も生まれました。
「寝る時だけつけてれば良いんでしょ?」
「1日の半分以上使っていれば十分長い時間頑張ってると思う」
みたいな感じで使ってしまうと、歯は動きません。
インビザラインのよくある失敗談に「装着時間が足りない」というパターンがあります。
お仕事でお料理の味見や、会食の機会が多い方に、この失敗パターンが多い印象があります。
当院でも、料理人の方にはワイヤー矯正の方をおススメしたりしています。
★対処方法
・お仕事で味見などが多い職種の場合は、最初からワイヤー矯正にする。
・外食や会食の機会が多い場合も、何時間もだらだら食事せずに、出来る範囲で食べる時間をコンパクトにする。
・矯正加速装置を併用することで、治療期間そのものを短くする。
★矯正加速装置とは?
歯に振動や光を与えることで、歯の周囲の骨のリモデリング(骨の吸収と再生)を活発化させる装置です。
元はインプラントが骨に結合するのを加速させる目的で開発されました。
若年者の場合は、7日交換のマウスピースを、4日交換にできるほど、矯正が加速されます。
この装置を使えば、1日のマウスピースの使用時間が短くなるわけではありません。
しかし、治療期間を短くすることができますから、「この期間だけは頑張ろう」と予定を立てやすくなります。
2-2) 前歯が思うほど下がらなかった
インビザライン矯正は、前歯を傾斜移動させることで歯並びを整えるため、前歯を後ろに引っ込める量には限界があります。
とはいえ、4㎜程度(条件があえばもっと)は前歯を下げることが可能です。
また、下顎のかみ合わせを前に動かすことで、上下の前歯の差を減らすことで、7~8㎜前歯が引っ込んだように見えます。
ただ、それでもワイヤー矯正よりは歯の移動の自由度が低いというのも事実です。
ですから、インビザライン矯正を行う場合は事前に前歯を引っ込める量をシュミレーションで確認していただいてから、治療を開始することとなります。
当院でもシミュレーションを見た上で「もっと、前歯が下がりませんか?」とおっしゃる患者さんには、便宜抜歯(矯正治療のために歯を抜く)をしたり、より自由度が高いワイヤー矯正に切り替えたりして、患者さんが最終的に目指したいゴールへ到達できる治療方法を選択していただいています。
しかし、PCでシミュレーションを見たときは「こんなに前歯が引っ込むなんて、素敵!」と思ったのに、いざ、治療が進むと「もうちょっと前歯を下げたかった」と後悔してしまう方も稀にいます。
「シュミレーションを見たときは、このくらい治るなら、見た目の悪いワイヤー矯正より目立たないマウスピースが良いと思ったけれど、やっぱり、もっと前歯が下がるプランにしておけばよかった」
せっかく頑張ってきたのだから、後悔は無いようにしたいですよね。
大丈夫です。
対処方法はありますので安心してください。
★対処方法
・ワイヤー矯正(便宜抜歯あり)に切り替える
当院ではこうした場合、目指したいゴール(前歯をどれだけ下げたいか、など)について改めて相談の場を設け、ご希望があれば便宜抜歯(横の歯を間引いく)ありのワイヤー矯正への切り替えをさせていただいております。
3)まとめ
いかがでしたか?
インビザラインは沢山の長所がありますが、
・マウスピース装着時間が長い(20~22時間)こと
・前歯を引っ込めることができる量が、ワイヤー矯正と比べると小さい
という側面があります。
十分な説明やシミュレーションを見て検討した上で治療開始しても
「もっと●●なハズだった」という後悔してしまうことも、無いとは言い切れません。
最初から後悔が無い選択をすることが最も大事ではありますが、
もし「思っていたのと違う」と感じた場合は、当院ではワイヤー矯正への切り替えをおススメしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。