固いものを食べたら顎が発達するというのはホント?子どもの発達と食べ物の固さについて
2022年2月27日
固いものを食べたら顎が発達するというのはホント?子どもの発達と食べ物の固さについて
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
最近、小さなお子さんの保護者の方から、よく食事のことなど質問されます。
特に「うちの子、固いものを食べないんです」といった質問が多いです。
食べることは生きることに直結しており、特に子どもでは、発達が摂食嚥下に大きくかかわります。
そこで今回は歯から「食」、特に固いものについてお話していきます。
1)小児の発達と食の形態について
一般的に、離乳食のはじまる時期は生後5-6か月です。
そのころの離乳食は、おかゆ的な、流し込むようなものが多いです。
舌も前後にしか動きません。
離乳中期と言われる、生後7-8か月では、歯茎で押しつぶせる程度の固さが良いとされています。
舌も上下でも動くようになります。
1歳半程度までくると、第一乳臼歯(D)まで生えてきます。
このころになると、赤ちゃんの空間認識能力が進み、上手にスプーンを向かい入れるようになります。
そのため、ある程度の食感があるものが望ましいとされています。
離乳が終わると手づかみ食べの時期となり、一般食となります。
成長に合わせた食形態で食べられないと・・・
これらの時期に適切に食べられてないとどうなるでしょうか?
結果は、詰め込み、丸呑みとなってしまいます。
時期によっては喉に詰まって窒息しそうになる場合もあります。
離乳期の赤ちゃんが丸呑みしてしまう原因
離乳期の赤ちゃんが丸呑みしてしまう原因には、
- お腹が空いていない、または、お腹が空きすぎている
- 食事形態が適切でない
などが考えられています。
常に失敗してしまう場合は、焦らずに離乳にむけての食形態を一段階前に戻すことも大事です。
食事の形態を考え、本人の発達を待ちましょう。
また、子どもは他人の観察で学習します。
大人や兄弟などと一緒に食事をする経験や、いろんな食材を食べる経験が大事です。
2)固いものを食べると顎(あご)が発達するというのはホント?
あごが小さなお子さんの場合に、「固いものを食べたら顎が大きくなりますか?」という質問がよくあります。
固いものを食べたら、ほんの少し大きくなる可能性はあるようですが、誤差の範囲と言われています。
歯列不正が解消されるまでに、顎が大きくなることは無いようです。
一方で、固いものを食べることで、顎の周囲の筋肉が発達し、咀嚼が上手になる効果があります。
異常嚥下や、それに伴う歯列不正(歯並びが悪くなること)は減少したり、改善したりする可能性があります。
3)食べ物の固さと食べ方について
咬む(かむ)というのは、大雑把にわけて2パターンに分けられます。
- チョッパータイプ・・・食材を噛んで(かんで)切り分けること
- グラインディングタイプ・・・食材をすり潰すこと
あまりにも固い食べ物は、前歯でなく奥歯で切り分けるという作業を無理やりやっている場合が多いです。
そのため、老年期では歯や歯周組織に対してダメージを与えてしまう場合があります。
大人でも咬み切れなかった食材は、丸のみせざるを得ず、これはよくありません。
4)食文化によって食べ方が変わる
口の構造や食べ方は人種や国の違いが出ます。
日本人が多めに食べてきた食材は、噛み応えがあると言っても、すり潰せる食材(穀物など植物性由来のもの)が多めです。
文化の違いや食べ方の違いも楽しみながら、孤食(こしょく:一人で食事をとること)を避けて、豊かな食生活を考えていきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
- 小児においては、歯の萌出や発達と共に食事の形態は変える必要があります。
発達に合わせていかないと、食塊を上手に分解できず、丸呑みになってしまう可能性があります。 - 固いものを食べることにより、顎周囲の筋肉の発達や咀嚼運動の上達が期待できますが、顎が大きくなることは無いようです。
- 老年になるとあまりに固すぎるものは、奥歯で切り刻む動きを無理にするため、歯周組織にダメージを及ぼす場合があります。我々も文化の違いや食材の違いもふまえながら、適切な、豊かな食生活を考えましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。