乳歯は生え変わるのに、なぜ治療が必要なの?
2017年4月28日
皆さんこんにちは。岩国のつぼい歯科に新たに加わりました、歯科医師の吉村剛です。
小児歯科の専門医の資格を持っていますので、時々お子様の治療などで登場します。
よろしくお願いいたします。
最近皆さんから、お子様の歯の治療や歯並びについて多くの質問が寄せられております。
お子様も成長するにつれ、お口の中もどんどん変化していきます。
歯科でもお子様の成長に応じて、その時に最適な治療の考え方や内容が変わっていくことが多くあります。
これからその時期に応じた、歯や治療について解説していこうと考えておりますので、よろしくお願いします。
そもそも乳歯ってなんでしょう?
歯は、生え変わるという特徴を持つ唯一の組織です。
しかし、すべての動物がそうなのでしょうか?
いえ、大きく3つに分けられます
①サメや魚
サメや魚は、たくさん歯があり、狩りなどで一部が簡単に抜けてしまいますが、またすぐに生え変わります。
なおその際には、歯だけでなく、歯並びごと生え変わります。
これらを多換歯性(たかんしせい)といいます。
魚類は体も永遠に大きくなっていくので、顎の大きさにあわせて歯が増えていきます。
うろこみたいなイメージですが、そもそも歯はうろこから進化した組織なのです。
②ネズミやリス
ネズミやリスなどの前歯は一生に一回しか生えませんが、永遠に延びていきます。
これを1生歯性(いっせいしせい)といいます。
前歯は硬いものを噛んで、少しずつ削れていき、長さを保っています。
爪みたいなイメージです。
③ヒトなどを含む多くの哺乳類(ほにゅうるい)
人間を含む多くの哺乳類は二生歯性(にせいしせい)です。
新生児の小さな顎(歯槽)には、どう折りたたんでも、乳歯のサイズの歯しか折りたたんでいれておけません。
また、成長するといっても子供の顎の大きさには限界があり、歯胚(歯の芽)のサイズは歯よりもずいぶん小さいのですが、それでも1回生え変わる個数分(28本~32本)のしか入れておけません。
そのため生え変わりも1回です。
つまり、そもそも乳歯のサイズと歯の生えかわりは、顎のサイズ調整のため決まっているのですね。
進化にともなって歯は大きく、複雑な形になりましたが、人類になってからは、体のサイズ、脳のサイズのために調整を受けることとなり、先天的に親知らずなどが無い人もいます。
動物においては、寿命=歯の存在であることが多く、ライオンなどは歯がなくなると死んでしまいます。
人間は食事に工夫が出来るため、死にこそしませんが、お子さんの脳の発育や老化の防止には歯から来る刺激が欠かせないため、歯がなくなると認知症等の問題が生じやすいといわれています。
人間が糖分を多く摂取し、虫歯になるようになったのはここ2000年ぐらいで、最近のことです。
動物としては、人間も歯を失うことを想定して進化していないのですね。
ただし、色々工夫して失った歯の代替手段を考えたのも、やはり人間だけです。
結局のところ乳歯でも永久歯でもオリジナルの自分の歯が一番なので、予防が一番なのですが、なくなってしまった場合はその修復(治療)を精いっぱいやっていきます。お口の健康維持を歯医者さんとやっていきましょう!よろしくお願いいたします。
まとめ
いかがでしたか?
- 歯は生え変わるが、動物によって生え変わる回数がちがう
- 人間を含む多くの哺乳類は1回生え変わる(乳歯から永久歯)
- そもそも乳歯のサイズや生え変わりの回数は、顎のサイズによってきまった
- 人間も虫歯になるようになったのはここ2000年ぐらいのことで、乳歯も永久歯も失うことは想定されていない
- だから乳歯も永久歯も早くに失うと健康にさまざまな影響を生ずることがある
最後までお読みいただきありがとうございました。
いびきと睡眠時無呼吸症候群の治療・改善法について
2017年4月22日
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
突然ですが、質問です。
いびきをかかずに眠れるとしたら、どうですか?
同じ部屋に寝ている家族もぐっすり眠れたり、目覚ましを使わなくてもいつもより自然と目が覚めるかもしれません。
明るい日差しが目に入って起きたり、小鳥のさえずりが聞こえて目がさめたり、気持ちの良い朝の空気を感じられるかも…
そうなったら素敵ですね♪
前回はイビキの仕組みと睡眠の質についてのお話をしました。
いびきの原因って?~音が鳴るメカニズム~
寝ている時は下顎と舌が気道を圧迫します。
太ったり歳をとったりすると寝ている時に気道がさらに狭くなりやすく、イビキが出やすい、という内容でした。
寝ている時に気道が狭くなり、睡眠中の呼吸が十分にできないため眠りが浅くなり、日常生活に支障をきたす病気として、睡眠時無呼吸症候群があります。
睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)とは?
眠っている間(7時間)に10秒以上の無呼吸が30回以上ある状態を睡眠時無呼吸症候群と言います。
気道が狭くなっているために睡眠中の呼吸が十分にできずに眠りが極端に浅くなり、日常生活に支障が出る可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群になると起こる症状
- 眠りが浅くなって疲れが取れない
- 集中力が低下
- 昼間に眠くなる/昼間に居眠りしてしまう
この病気が社会的に注目されるようになったきっかけは、2003年の山陽新幹線での運転手の居眠り運転だったと記憶しています。
睡眠時無呼吸症候群によって昼間に集中力が低下した結果、運転手さんが居眠り運転してしまった事件ですね。
事件が大きく報道された直後、私の父も病院で睡眠時無呼吸症候群の診断を受けたので、我が家にとっても大きなできごとでした。
父のイビキがとても大きいことはもちろん知っていましたが、生真面目で仕事熱心な父は日中に眠そうなそぶりを見せなかったので、それが病気のサインであるとは家族の誰も気づかなかったのです。
報道を見た父に「この病気かもしれないから、夜中に呼吸が止まってるか見ててくれない?」と頼まれ、寝ずの番で父の無呼吸の回数を数えた翌朝に病院受診を勧めた記憶があります。
ちなみに、寝ずの番で無呼吸の回数を家族が数えなくても、内科や耳鼻科などの病院に受診すればちゃんと検査で調べてもらえますので、もしかして睡眠時無呼吸症候群かも?と思ったら病院・診療所への受診をお勧めします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の改善法
1.痩せる
太っていてSASがある方は、痩せて気道を圧迫する脂肪の量が減ると、症状の軽減がみられる場合があります。
「私は睡眠時無呼吸症候群かも!?でも、病院に行く時間しばらく作れないなぁ…」と思った方で、スリムでない方は試してみる価値があるでしょう。
2.寝酒や、夕食後の深酒を避ける
舌は筋肉の塊で、筋力低下により舌根沈下(ぜっこんちんか)が起きやすくなるというお話を前回しました。
加齢による筋力低下の他に、舌の筋力低下を起こすもう一つの原因になるもの…それはお酒です。
お酒を飲むと、ちょっと力が入りにくくなりますよね。
舌の筋肉も同じように力が入りにくくなり、重力に引っ張られて気道を押しつぶしやすくなってしまいます。
寝酒や夕食後の深酒は睡眠時無呼吸症候群を悪化させやすいので、日常的な習慣としては避けた方が良いでしょう。
3.物理的に鼻に加圧した空気を送り込む(CPAP シーパップ)
CPAP(シーパップ)は、気道が閉塞していても物理的に加圧した空気を送り込んで呼吸させる方法で、最も一般的な睡眠時無呼吸症候群の治療法ともいえるでしょう。
こちらは鼻にマスクを固定して寝ます。
画像 日本呼吸器学会 https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/
後ほどご説明する、歯科で作成する睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースを口に装具を入れるのと、「どっちが楽ですか?」と聞かれることも多いのですが…
どっちもどっち、でしょうか。
私の父はこちらを使用していますが、慣れるまでは「寝るために装置をつけているのに、装置が気になって寝れない…」と嘆いておりました。
ですが、人工呼吸器のように空気を送り込んでくれる装置なので、確実性では最も優れた治療法と言えるでしょう。
長所:確実性が高い。
短所:
- CPAPを購入する場合と、レンタルする場合があるが、いずれも口腔内装具より高額。
- 慣れるまで不快感がある。
- 装置が大きいので、旅行などの時に持ち運びが大変。
4.口腔内装具(マウスピース)で舌根沈下を防ぐ
歯科で舌根沈下を防ぐための口腔内装具(マウスピース)をオーダーメイドで作ることができます。
内科などの病院・診療所の診断書を書いてもらってから歯科で口腔内装具を作る場合、健康保険適応になります。
まずは医科(睡眠外来、呼吸器科、循環器科、耳鼻科など)への受診をお勧めします。
口腔内装具の作成費用は3割負担で型取りと噛み合わせの記録に1600円程度、装具に5500~7000円程度です。
歯科で作る睡眠時無呼吸症候群用の口腔内装具(マウスピース)
長所:
- 装置が小さいので持ち運びに便利。2回の受診で装置が完成する。
- CPAP(シーパップ、睡眠時無呼吸症候群用の空気を送るマスクのこと)より安価。
短所:
- 慣れるまでは不快感がある。
- 慣れないうちは睡眠中に外れることがある。
「入院なんて時間的に無理!手っ取り早く装具が欲しい!」という方は、当院では自由診療(保険診療の10割負担にはなりますが)でお引き受けしておりますので、気になる方はご相談ください。
ちなみに不快感の程度は下顎を前に出す量と、個人の感じ方によるかと思います。
イビキ軽減の目的で使用する場合は上下の前歯を突き合わせで噛む程度で良いでしょうが、気道をしっかり広げるため下顎を上顎より前にまで持っていく必要があるときなどは慣れるまではそれなりに不快感があるかと思います。
私の母はイビキ防止と快眠のために、下顎を少し前に出したこの装具を使用しておりますが、初日から不快感は特になかったそうです。
まとめ
- イビキがあり、眠りが浅くなっている方は睡眠時無呼吸症候群の可能性がある
- 睡眠時無呼吸症候群の人は、痩せたり寝酒を避けたりすることで改善の可能性もある
- マウスピースやCPAPなどの治療法で、睡眠中の呼吸をサポートすることができる
治療法もいろいろありますが「もしかして自分は睡眠時無呼吸症候群かも?」と思われた方は、まずは医科または歯科にてご相談されてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
いびきの原因って?~音が鳴るメカニズム~
2017年4月8日
イビキの仕組みと睡眠の質のお話
こんにちは!つぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
すっかり暖かくなってきましたね。朝に布団から出たくなくなる季節は過ぎ、心地よい春の朝を皆さん楽しんでおられるかと思います。
「歳をとったら、眠りが浅くなって朝が眠い…」
「太ってから妻にイビキがうるさいと言われる…」
「ときおり、自分のイビキで目が覚める…」
「春の朝は花粉症がつらいので嫌いです」
おや、春眠暁を覚えずどころでない方々がいらっしゃいますね。
最後の花粉症のお話はまた、別の機会を設けさせていただくとしまして、今回はイビキについてお話です。
どうしてイビキは出るの?
そもそもイビキってどうして寝ている時だけ鳴るの?
そもそも、どうして息をするだけで音がでるのでしょうか。
息を吐くだけで大きな音が出るなんて、まるでホイッスル(笛)のようですよね。
これはホイッスルの構造です。
画像:http://www.ekouhou.net/
マウスピースと書いてあるところが口をつけて息を吹き込むところです。
ここから息を吹き込んで、排気口から息が抜けていきます。
この排気口に細い羽根のようなパーツがあり、この細い羽根の部分に息が当たると風切り音が鳴ります。
奥の共鳴室でこの風切り音が共鳴して、大きな音が鳴るんですね。
さて、次はヒトの喉の構造です。
画像:https://kotobank.jp/
上顎の喉のすぐ近くには軟口蓋(なんこうがい)といい、その先端に口蓋垂(こうがいすい)が垂れ下がっています。
軟口蓋のお向かいには舌がありますね。
ホイッスルとちょっと構造が似ていませんか?
鼻の穴や口がマウスピース、口蓋垂がある部分が排気口の羽根、鼻の孔が共鳴室です。
なぜ起きているときにはイビキが出ないの?
起きているときは頭が直立していますから、下顎と舌は重力で下に引っ張られ、気道は広い状態です。
気道が広ければホイッスルの排気口のように風切り音が出る場所がなくなります。
一方、寝ている時は横になっていますから、下顎と舌は重力で下に引っ張られ、気道を押しつぶして塞いでしまいます(舌根沈下)。
舌根沈下により狭くなった気道と口蓋垂の部分がちょうどホイッスルの排気口のような形になって風切り音が出ます。
これがイビキの正体です。
イビキが悪化する要因は何?
冒頭のお悩みに戻りましょう。
「歳をとったら、眠りが浅くなって朝が眠い…」
「太ってから妻にイビキがうるさいと言われる…」
「ときおり、自分のイビキで目が覚める…」
どうして、歳をとったり太ったりしたらイビキが出やすくなるのでしょう。
また、イビキが出ると眠りが浅くなるのでしょうか。
舌は筋肉の塊
他の場所の筋肉と同じく、舌も加齢により筋力低下します。
すると重力に抵抗して同じ位置に留まる力が弱くなりますから、睡眠時の舌根沈下は大きくなります。
舌が大きく沈み込めば、その分気道が大きく圧迫されます。
また、太ると喉周りについた脂肪が物理的に気道を細くしてしまいますので、ちょっとの舌根沈下でも気道が強く圧迫されてしまうのです。
イビキが出るようになると、眠りが浅くなった
これはイビキが眠りを浅くするというより、気道が狭くなることによって睡眠時に十分な呼吸ができないことによることが多いです。
この状態が悪化したものが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」といって、寝ている間に十分に呼吸できないため眠りが極端に浅くなってしまう病気です。イビキはそうした病気のサインでもあるのです。
まとめ
- 寝ている時にいびきが出て、起きている時はいびきが出ないのは舌根沈下による
- 舌は筋肉なので、加齢とともに筋力が衰え、舌根沈下しやすくなる
- 太ると脂肪が気道を細くするので、少しの舌根沈下でも大きく気道を塞いでしまう
- 気道が塞がれた状態は呼吸がしにくいので睡眠が浅くなる
いかがでしたでしょうか?
さて、次回は「イビキと睡眠時無呼吸症候群、そしてその改善法」をテーマにお送りいたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。