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歯科治療と接着性レジンセメントに求められる性質

2025年3月24日

こんにちは!岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 吉村剛です。

今回も歯科材料分野のブログ 第二弾、歯の被せ物の材料と接着セメントについてのお話です。

まだご覧になっていない人はこちらの記事もどうぞ

第一弾 詰め物を歯にひっつける「接着」と、なるべく削らない歯科治療:MI(ミニマルインターベンション)

https://tsuboidental.com/blogs/archives/7032

 

1. 歴史的な歯の美意識の変化

時と共に、歯の美意識も変わってきました。

大昔、日本の既婚女性の歯はお歯黒というもので黒く染められていました。
この黒は鉄成分で虫歯予防効果や、虫歯を目立たせない効果がありました。

 

岩国 歯医者 お歯黒

 

 

40年ぐらい前になると時代はバブルです。
わざわざ歯を金に置き換えて闇にキラッと光る歯が、お金持ちの象徴とされました。
昔のミュージシャンの動画とか見ると、金歯よく見ます。

平成時代に入ると、時代は真っ白な歯です。

スポーツ選手や芸能人の歯は紙のような白さの歯をめざし、1995年には「芸能人は歯が命」というキャッチコピーが、流行語大賞にも選ばれました。

一本だけ白くしても逆に目立つので、全体のトーンを合わせることが一般的になりました。

令和の現在はそこから変わって、ナチュラルな歯の色が一般的です。

ただし、昔と比べ明らかに全体的に明るい色が好まれるようになり、特に全体のトーン、バランスがとれていることが求められるようになりました。
歯のホワイトニングをする人も、かなり増えました。

ということで、現在の歯の被せ物の材料は、透明感がありながらも、天然の歯の色調を表現できることが重要になりました。

2.現代の歯の詰め物・被せ物の材質

ジルコニアクラウンの商品ごとの見た目の差

左:ジルコニア冠(クラウン)  右:エステティックジルコニア冠(クラウン)

上の写真はどちらもジルコニアという、見た目が綺麗な被せ物の材料でできています。

左右の画像を見比べてみてください。

 

右の方は歯の尖端に半透明の部分があります。

天然の歯も、一番外側は半透明なので、より天然の歯に近い見た目になっています。

現代の「審美補綴物(しんびほてつぶつ)」見た目が綺麗とされる材料は多種あるのですが、代表的なものが上の写真のジルコニアを含めたセラミックです。

このセラミックにも、いろいろな種類がありますし、なんならメーカーごと、製品ごとに違いがあります。

基本的にセラミックはお皿などの陶材から進化した材料です。

硬く、白く綺麗で、歯に近い透明感があり、患者さんからはもっとも人気が高い素材の一つです。

代表的な材料と天然の歯、保険の銀との物性の比較は下記の通りです。

歯科材料の機会的性質比較表

弾性率:大きいほど柔軟性がある

曲げ強さ:大きいほど丈夫

圧縮強さ:大きいほど丈夫

モース硬度:大きいほど硬く耐摩耗性がある

破壊靭性:大きいほど亀裂が出来たときに割れにくい

実はセラミックは天然の歯より、柔軟で丈夫で摩耗に強いのです。

ジルコニアは陶器のような見た目なのに金属より柔軟性があり、耐摩耗性が高いため、しっかり鏡面研磨すればジルコニア冠もお向かいの天然の歯も、摩耗しにくいと言われています。

3.昔はセラミックを歯に直接、接合させることができなかった。

いかにセラミックが優れた柔軟性や丈夫さを獲得しても、人の体重とほぼ等しいという圧力を日常的に受ける歯に、1㎜程度の薄さで被せるとなると、耐久性の問題が発生してしまうのです。

歯と完全に一体化できるならば、天然の歯と等しい性能を発揮できます。

しかし、歯とセラミックの間に「歯科用セメント」の層が入ることにより、その性能を発揮できない時代が長くありました。

硬いものと硬いものをセメントで張り付けたものに、力をかければどうなるでしょう?

セメントの接着強度が低ければ、いかに優れた材料であっても、接合面が壊れてしまいます。

セラミックが天然の歯よりも物性に優れているのに、天然の歯より割れやすいのは、この「接合面が弱い」問題があるからです。
逆に天然の歯は「最初から一塊で継ぎ目がない」からこそ、割れにくいのです。

 

・「接着性レジンセメント」登場前の、セラミックの問題点

 

セラミック(実は天然の歯も)は、曲げ強くて強度があっても、一定以上の強い力がかかって一部に小さなヒビが入ってしまうと、ヒビが全体に広がって割れてしまいます。

これを脆性破壊と言います。
お茶碗がひび割れるイメージです。

一方で、金属は薄くても、針金のように曲がる性質(延性と塑性)があるので、強い力がかかっても、強い力がかかった部分が歪むことで力を分散し、全体にはひび割れない性質があります。

こうした理由から、セメントの性能が低く歯と被せ物が一体化できない時代は、セラミック単独の被せ物は存在しませんでした

昔のセラミックの被せ物は、金属の内冠にセラミックを張り付けた陶材焼き付け鋳造冠(メタルボンド)しかなく、20年前は「綺麗な被せ物」というと、これを指しました。

メタルボンドクラウン

陶材焼き付け鋳造冠(メタルボンド)

今はあまり人気がない被せ物です

4.接着性セメントの登場が「オールセラミック」時代を作った

接着性レジンの発明により状況が変わりました。

セラミックを歯の表面に強固にくっつけることができるようになったのです。

そして初めて、セラミックの「歯に近い透明感・白さ」「歯に近い弾性率」の特徴を生かせるようになりました。

こうして、現在では自由診療の被せ物といえばオールセラミックという時代になりました。

セラミックだけではありません。

保険のCAD/CAM冠(セラミックの粒子を樹脂で固めた白い被せ物、保険の白い冠)はセラミック以上に歯の接着しにくい材質として知られていますが、接着性セメントの進化によって、現在では脱離の問題はずいぶん少なくなっています。

e-maxクラウン

e-MAX冠(ファインセラミック製)

5.金属 VS オールセラミック

接着性レジンセメントの登場で、現代の歯科治療はまさに「脱金属時代」という様相です。

皆さん、白くて綺麗な方が良いっておっしゃいますからね。

ただ、金属もセラミックも、それぞれメリット・デメリットがあります。

そしてそのメリットとデメリットは裏表の特徴であるともいえます。

 

・金属は強い力がかかっても歪むことで力を分散するため、割れにくい

↔ 金属は中に虫歯ができても外れないため、虫歯の発見が遅れる、虫歯になりやすい。

 

・セラミックは強い力がかかると脆性破壊が起きる

↔ セラミックは少しでも詰め物の状態が悪くなったら外れることで、セラミックの下は虫歯に非常になりにくい

 

・金属は塑性変形するため、薄い被せ物でも割れにくい

↔ 金属は科学的・物理的に不安定で摩耗や金属イオンの放出、硫化銀の形成などが起きる。
長期安定性が低く、アレルギーや変色の原因になる。

 

・セラミックは変形しないため、被せ物にはある程度の厚みが必要

↔ セラミックは科学的・物理的に安定で、アレルギーや変色を起こさない。

 

・セラミックは歯にしっかりと接着しないと取れやすい。
防湿やタンパク除去などの前処置をしっかりする必要がある。
樹脂含侵層を作るためのプライマー処理が必須。

↔ 少しでも接着が甘い部分があれば外れるので、中に虫歯ができにくい。
樹脂を歯にしみこませた「樹脂含侵層」は虫歯になりにくくなる。

 

・金属は弱い接着でもとれにくい。
防湿やタンパク除去をちゃんとしなくても歯につく

↔ プライマー処理はされないことが多い。
タンパク除去処理、防湿が不十分なまま歯に装着されると、虫歯の原因になる。

*金(ゴールド 18K以上)は、他の金属とは異なり、虫歯になりやすい、化学的に不安定、変色を引き起こすというデメリットがありません。アレルギーに対しても、他金属と比較すると起こしにくいです。
金属の延性や塑性変化の性質を持ちながらも、最も虫歯になりにくい歯科材料の一つです。

 

このように、セラミックにも金属にも長所と短所がそれぞれあります。

私たち歯科医師は、まずは患者さんの価値観をまずはしっかり聞かせていただいて、お口の状態を見て、医学的にできること・できないことをすり合わせていくことで、患者さんお一人お一人に合わせた治療計画を立案させていただくことが大事だと思っています。

 

まとめ

いかがでしたか?

・歯に関する美しさの常識は時代と共に変化しています。

・セラミックは接着性セメントの進化により、適応範囲が広がりました。

・歯科材料は進化していますがそれぞれメリット、デメリットがあります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

歯科技工士ってどんな仕事? 勤め先が歯科医院の場合とラボの場合で、仕事はどう変わるの?

2025年3月17日

こんにちは、岩国の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。

今回は歯科医院のお仕事シリーズの第4弾、「歯科技工士」編です!

歯科技工士とはどんな仕事か、歯科医院と歯科技工ラボと仕事はどう変わるのかなどについて、解説します。

技工作業

過去のお仕事シリーズはこちら

歯科医師と歯科衛生士の業務範囲って、どうちがうの?

https://tsuboidental.com/blogs/archives/6895

歯科助手のお仕事とその魅力~コンプライアンスを守って、安心安全な医療を。

~患者さんへも自分たちにも〜

https://tsuboidental.com/blogs/archives/6922

歯科医院のお仕事 ~医療事務編~

https://tsuboidental.com/blogs/archives/7059

1 歯科技工士ってどんな仕事

歯科技工士は歯科医師の指示に基づき、詰め物(インレー)、被せ物(クラウン)、入れ歯(義歯)、矯正装置などの歯科技工物を製作する医療技術専門職です。

国家資格で、専門学校や大学で資格を取得することができます。

岩国近郊では、広島県廿日市市にある広島歯科技工士専門学校が最寄りの学校になります。

他にも、広島大学歯学部口腔健康科学科の口腔工学専攻(4年制)でも資格が取得できます。

主な仕事内容は、患者さんごとの歯型を基に石膏模型を作成し、オーダーメイドで金属・セラミック・ジルコニアなどの素材を使用して精密な修復物を作成します。

最近では、手作業の職人仕事だけではなく、歯科医院から患者さんの3Dデータを受け取ってCAD/CAM技術で技工物を作るケースも増えてきました。

CAD/CAMのパソコンモニタ画面

CAD/CAM(キャドキャム):コンピューターによる設計と製造を組み合わせた技術

CAD(Computer Aided Design):コンピューターによる設計支援

CAM(Computer Aided Manufacturing):コンピューターによる製造支援

主な就職先は?

主な就業先は歯科技工所や歯科医院です。

フリーランスとして活躍されている人も大勢います。

歯科技工専門学校に入学する学生さんの人数が減っていること、高齢化が進んでいることなどから、「就職には困らない資格」と言われています。

2.歯科医院と歯科技工所(ラボ)では、働き方が違う?

給与の違いは労働時間の違い

時間対お金の図

歯科技工士を志す学生さんや、新卒の歯科技工士さんが就職先を探そうとして驚くのが、勤め先によって年収に大きな差があることです。

「最初は治療を実際に見ることができる歯科医院でキャリアを始めたかったけれど、給料が歯科技工所(ラボ)より低いので諦めた」という声も多く聞きます。

実際、歯科医院と歯科技工所(ラボ)では、歯科技工所の方が給与が高いことが多いです。

勤務時間の差(残業代)がそのまま給与格差につながっている形です。

歯科医院で働く場合

歯科医院では、

・ほとんど残業がない(そのため残業代がない)

・9時~18時半前後の日勤帯勤務が主流

・有給も比較的自由に取ることができる

歯科技工所で働く場合

歯科技工所(ラボ)では、

・1日平均就労時間は自営業の技工士さんは10.8時間

・残業は多い(残業代分、収入は上がる)

・独立すれば収入はさらに伸びる(労働時間は増える)

歯科医院勤務の魅力はライフワークバランスが良いこと

歯科医院では技工の量によって、患者さんの予約をコントロールできます。

「今は溜まった仕事もないので、この詰め物は、明日にできます。」
「この入れ歯は1週間ください」

など、患者さんごとに技工士さんは納期のコントロールが可能であるため、「納期が間に合わないから夜なべして、何とか間に合わせないといけない」といったことをする必要がありません。

また、多くの歯科医院では院内に技工士が在籍していても、外部の歯科技工所とも取引があり、納期が詰まってきた場合は一部を外注化するなどして、仕事量をコントロールできます。

ですから、多くの医院では残業がほとんどありません。

ちなみに当院でも、未処理の技工が溜まらないように、外注(ラボに発注する)と内製(院内技工士が作成する)を分けていて、内製はスピードを要求されるもの、矯正治療器具関係、義歯関係のみとしています。

さらに、歯科技工士が有給取得した後など未処理技工が増えた場合は、歯科助手や歯科衛生士が石膏流しを行うなどして、歯科技工士が残業にならないよう医院全体で取り組んでいます。

歯科技工所の魅力は、量をこなせることや、がんばれば給与アップにつながること

一方、ラボではクライアントの歯科医院から、どれくらいの模型が届くか事前に分からず、しかも
「今仕事が立て込んでいるので納期を伸ばしてください」
「今は仕事が多いので受注は制限しています」
といった交渉ができないことから、注文が殺到すれば残業するしかない状況になりがちです。

残業は多いものの、残業代が付くので院内技工士より収入は高くなりますし、短期間に大量の技工を作ることが多いことから、キャリアのスタートとして、手早い仕事が出来るようになりたい技工士さんにおススメです。

また、いずれは独立して自分の歯科技工所を起業したいと思う技工士さんは、歯科技工所で経験を積む必要があります。

上記の事情から、歯科医院にはライフワークバランスをとって働きたい女性技工士さんが比較的多く、

逆に男性技工士さんは残業があっても年収が高く、独立の夢もある歯科技工所を選ぶ人が多い印象です。

院内技工士とラボ技工士の比較図

3 歯科技工士さんの職務は所属組織の設備や医院/ラボの得意領域によって変わる

歯科技工士の仕事は、伝統的な手作業による技術からデジタル技術へと移行しつつあります。

ただし、その移行スピードや導入される技術は、勤務先の歯科技工所や歯科医院の設備状況によって異なります。

3-1)CAD/CAM設備がある場合

歯科医院、歯科技工所ともに3Dスキャナーは既に広く普及しています。

3Dスキャナーで得た3Dデータをもとに、技工物を作成するCAD/CAM(コンピュータ支援設計・製造)システムは、歯科医院へはさほど普及しておらず、歯科技工所には普及しています。

CAD/CAM操作をしている歯科技工士

3-2)鋳造設備がある場合

従来の金属冠や金属の詰め物を製作するために必要な設備です。

歯科技工所にはほぼ必ずあります。

歯科医院の技工室には、あるところとないところがあります。

その医院の技工物のほぼすべてを院内で作成する場合には、鋳造設備がありますし、矯正装置や特急の仕事のみを院内で作成する場合には、鋳造設備は不要となります。

3-3)そのほか、院長/提携医院の得意な治療に合わせて

歯科医院の院内技工士さんの場合は、院長こだわりの小児矯正装置や、インプラントの仮歯や上部構造、特殊な入れ歯などを製作することもあります。

また、一般的な入れ歯でも、かみ合わせを特殊な方法で記録する場合(フェイスボウトランスファーやゴシックアーチ法など)なども、院長と連携がとりやすい院内技工士が関わって製作することがあります。

4.歯科医院の技工士は、歯科技工所との情報連携のカナメ

歯科医院は、模型や電子データ、技工指示書に納品書、請求書、貴金属の預かり書など、非常に多くの書類やデータをやり取りします。

医院によりますが、歯科医院の技工士さんはそうした技工所との情報連携の責任者をしていることも多いです。

一方、歯科技工所の技工士さんは納期が厳しい歯科技工に専念するために、そうした情報連携は事務員さんが行っていることが多いかもしれません。

5.ラボとクリニック、どっちの職場がタイプ?

5-1)ラボの歯科技工士に向くタイプ

・職人気質で淡々と技工がしたい人

・技工作業が手早い人

・起業を目指している人

・残業できる人

・歯科技工を幅広くできるようになりたいと思っている人

・技工だけに専念したい人

5-2)歯科医院の技工士に向くタイプ

・育児や子育て、介護中で家庭と両立したい人

・ライフワークバランスを重視したい人

・矯正器具やインプラント技工、特殊な義歯など、ニッチ領域を極めたい人

・診療室のチェアサイドで、自分の技工物を患者さんが使用しているところを直接確認したい人

・女性の多い職場で勤務が可能/希望する人

・患者さんに会うことも多いので、清潔感がある非喫煙者(タバコ臭いのはNG)

院内技工士とラボ技工士、向いているタイプ

6.歯科技工士と歯科医師の業務範囲って、どうちがうの?

歯科医師(絶対的歯科医行為)と歯科衛生士(相対的歯科医行為)の仕事には、グレーゾーンがあるというテーマを以前、記事にしました。

参考リンク

歯科医師と歯科衛生士の業務範囲って、どうちがうの?

https://tsuboidental.com/blogs/archives/6895

では、歯科技工士と歯科医師の業務範囲はどう違うのでしょうか?

歯科医師は、すべての歯科技工を自分で行っても法的に問題ありません(毎日、たくさん技工物を作成している歯科技工士の方が上手なことも多いですが…)。

一方で、歯科技工士は歯科医師抜きで患者さんを治療してはいけない、という判例があります。

具体的には、歯が1本も残っていない患者さんの総入れ歯を、歯科医師抜きで歯科技工士だけで作ったことが裁判になったことがあります。

参考リンク

裁判例検索

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51636

昭和34年の最高裁判所判例では

「 歯科技工士はたとい総入歯の作り換えに伴うものであつても、印象採得、咬合採得、試適、嵌入をすることはできないとすることは、公共の福祉のための制限であつて、憲法第二二条、第一三条に違反するものではない。

要は、歯が1本もなくても、歯科技工士は『歯科医師の指導のもと』、技工すべきであるという判例です。

歯科技工士は、患者さんの口腔内に装着する技工物を作成できる専門職でありつつも、治療計画を立てることはできず、チェアサイドにおいて法的にできることは歯科助手と同等のものである、ということですね。

逆に言えば、技工の参考にするためにお口や歯の写真を撮影する、などは多くの技工士さんが行っています。

7 まとめ

いかがでしたか?

・歯科技工士は歯科医師の指示で詰め物・被せ物や入れ歯、矯正装置などを作る専門職です。

・高齢化と学生数の減少が進んでいるため、国家資格は必要ですが「就職には困らない仕事」です。

・デジタル技術の進化がどんどん進んできている業界です。

・歯科技工士は起業して高収入を目指すことも、ライフワークバランス重視の職場も、自分にあった働き方を選ぶことが出来る職業です。

歯科技工士は患者の口腔内に合わせた技工物を製作する重要な医療技術職です。
近年はデジタル化が進む一方で人材不足の課題もあります。
しかし高齢社会において歯科補綴物の需要は高まっており、専門性の高い技術者として今後も必要とされる職業です。
歯科技工士に興味をお持ちの方は、ぜひ進路の一つとして考えていただけると嬉しいです!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

歯科医院のお仕事 ~医療事務編~

2025年3月5日

こんにちは、岩国の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。

今回は歯科医院のお仕事シリーズの第3弾、「医療事務」編です!

医療事務スタッフの仕事内容や、どんな人がなるのか、どういう人に向いた仕事なのかなどについて、ご紹介していきます。

 

過去のお仕事シリーズはこちら

歯科医師と歯科衛生士の業務範囲って、どうちがうの?

https://tsuboidental.com/blogs/archives/6895

歯科助手のお仕事とその魅力~コンプライアンスを守って、安心安全な医療を。
~患者さんへも自分たちにも〜

https://tsuboidental.com/blogs/archives/6922

はじめに

現代の歯科医院では、チーム医療が重要視され、多職種が協力しながら業務を遂行しています。

それにより、それぞれの専門職が自身のスキルを最大限に活かしながら、質の高い医療を提供することが可能になります。

ここでは、歯科以外の病院医療事務まで範囲を広げず、歯科医院での医療事務というテーマでお話しします。

医療事務風の女性

1 医療事務の仕事内容

一般的には、医療事務は歯科保険制度や保険請求に関する専門知識を持ち、歯科医師をサポートする役割を担っています。

医療事務には国家資格がないので、業務内容に明確な定義はありません。

そのため、業務内容や求められるスキルも、各病院・診療所によって、同じではありません。

ある医院では、一般事務と区別する目的で、受付担当者を医療事務と呼んでいたり、

またあるクリニックでは、保険算定に関する専門家的な位置づけで、ドクターや院内の保険診療に係る人に注意やアドバイスを行っている人を医療事務と定義していることもあります。

受付業務をしている女性スタッフと、スタッフにレクチャーしている医療事務

 

保険のルールのおおまかな流れ

日本の医療保険の流れは、ざっくり言うと次のとおりです。

保険のルールに従って算定を行った場合

o 治療当日、患者さん本人から負担割合分の費用を窓口で支払ってもらう

o 約2ヶ月後に、残り7割から10割の金額を、各保険者(国保や支払基金など)が医療機関に振り込む

 

3割負担の人の場合

 

 

保険のルールに従った算定ができない場合(算定に誤りがある場合や保険証番号が違う場合など)

o 保険者から支払いを拒否される

o 結果として、歯科医院でかかった材料代や人件費、技工代が赤字になる可能性がある

とても難解な日本の保険制度

日本の歯科保険制度は「療養担当規則(りょうようたんとうきそく)」に従って運用されています。

しかし、この規則を読むだけでは、具体的にどのように保険算定を行うのか、歯科医師でも理解が難しいです。

例えば、歯周ポケットが4mm未満の患者さんに対しての歯周病治療は以下のようなことを行います。

• お口の状態を確認する

• 歯ぐきが悪くなっていないかを検査する

• バイオフィルムを除去する

• 歯石がついていないか検査する

• 必要に応じて歯石を除去する

これらは一般的に「歯周病の重症化予防治療」と呼ばれます。

この治療は、療養担当規則ではどのように記載されているのでしょうか?

療養担当規則の抜粋

「歯科点数表の解釈」より

 

な、長ぁい!!!

 

実際には2ページにわたって、保険算定可能な条件や、費用請求はどうするかなどが、詳細に文章で説明されています。

療養担当規則

「わ、わかりにくい!」

 

多くの歯科学生が国家資格を取得して歯科医師になった後、保険診療を行うために教本を読んで、最初に抱く感想です。

保険のルールは4年ごとに大きな改定があるので、常に最新の情報が必要

保険のルールは4年に1回、とても大きな変更があり、小さな変更はもっと短いスパンでも行われることがあります。

新しいルールに対応していかなければ、保険者(国保連合や支払基金)からの支払いを拒否されて、治療しても7割から10割の金額が医院に支払われない結果になります。

医療事務は歯科医師の時間を作り、治療精度の向上や、患者さんの待ち時間の短縮にも貢献している

歯科医師は、診療と患者さんへの対応、日々進化する歯科診療技術を学ぶことでかなり忙しいです。

さらに院長になると、経営の勉強、仕入れや取引先の工夫によるコスト削減、スタッフ教育、求人採用、ホームページなどの広報活動、新メニューの開発、歯科医師会等の出務も加わり、激務になります。

激務で集中して仕事ができない歯科医師

 

医療事務は、保険請求業務をサポートし、歯科医師の保険請求における指南役を務めながら、請求に誤りがないかをチェックする役割も担っています。
正しい保険算定をサポートし、歯科医師の時間を作る重要な仕事です。

 

当院では、歯科医師がカルテ入力を行った後、医療事務がチェックを行い、ミスがあれば指摘・修正を求める体制をとっています。
この仕組みにより、歯科医師は1日により多くの患者さんの診療ができたり、患者さんごとの治療計画をきちんと立案する時間が取れるようになります。

 

落ち着いて精度の高い仕事ができている歯科医師

また、医療事務がカルテの代行入力を行う場合もあります。

歯科医師は治療後、レセプトコンピュータですみやかにカルテ入力を行います。

歯科医師でなければできない仕事に集中したい場合などは、医療事務がチームメンバーとして代行入力します。

歯科医師は、代行入力された内容を、会計前に確認して承認/修正し、カルテを会計に回します。

これによりカルテ入力時間を短縮し、患者さんの会計待ちの時間を短縮することができます。

 

歯科医院によっては、受付・歯科助手・歯科衛生士がこうした医療事務業務を兼任していることも多いです。

当院は、受付・歯科助手・歯科衛生士も自分の専門特化した領域を優先的に磨いて欲しいという思いから、医療事務業務は専任スタッフが担当しています。

2.医療事務の具体的業務内容

医療事務の業務はカルテ・レセプト作業を中心に多岐にわたります。

 

 

・日常診療のカルテのチェック(不備がないかの確認)とドクターへの申し送り

・レセプト業務(保険診療の請求業務)

・返戻業務(保険請求を拒否されたもの修正して再請求したり、ミスに気づいて自発的に取り下げてから修正再請求を行う業務のこと)

・自治体への検診料請求(妊婦検診・成人歯科検診など)

・ドクターが作成した紹介状の管理や投函

・お薬手帳や紹介状、検査値用紙のスキャン・管理

・レセプトコンピュータのメーカーとの連携

歯科医院内で唯一と言ってもよいかもしれない「ホワイトカラー職」ですが、その業務は専門性が高く、覚えるべき内容も非常に多いです。

歯科医療事務必携の書!4冊で2700ページほどあります。

3.どんな人が医療事務になる?

夢を抱いている医療事務の女性

医療事務には国家資格がないため、誰でも挑戦できる職種です。

しかし、歯科助手や受付から転身するケースが多いのが実情です。

歯科治療の流れを理解していないと、規則や教本を読んでも実務で活かしにくいためです。

逆に、歯科治療の理解が深い場合、リモートワークで就労可能な業務です。

実際、当院の医療事務メンバーのうちの1人に、育休後、リモートワークで復帰した女性歯科医師もいます。

ご自宅で幼いお子さまとの時間を大事にしながら、歯科の専門性を生かして、フルリモートで活躍しています。

(当院では患者情報の保護を徹底しながら、リモートでレセコンを操作できる設備を導入しています。)

リモートで稼働している専用レセプトコンピュータ

4.医療事務に向いている人はどんなタイプ?

・コツコツとした作業が得意な人

・ミスなく、スピードを意識できる人
(作業がゆっくりな人は、毎日残業になるか、残して帰ると雪だるまのように増えていき、月末に大変な思いをすることになります。)

・分からないことは、ある程度自分で調べて仕事を進めることができる人

・責任感が強い人(自分の責任範囲を完遂できる人)

・覚えることが多い仕事に忌避感がない人

医療事務がパソコン入力を行っている様子

5.保険のルールをどうやって覚える?

歯科医師は、診療をしながら「この処置はどう入力するのか?」と先輩に確認し、赤本(あんちょこ本)を参考にしながら学んでいきます。
研修医1年を終える頃には、基本的な入力ができるようになりますが、知識を深めるためには継続的な学習が必要です。

ほとんどの歯科医師は保険請求のWEBセミナーを受講したり、分からないことがあれば調べてくれる相手を確保したりして対応しています(歯科医師会にも、そうした役割を担当されている先生がいます)。

医療事務スタッフは、民間の保険請求セミナーやオンライン講座を活用して学ぶことが一般的です。

一度知識を得ても、それだけでは勉強は終わりません。

療養担当規則は毎年改正されます。

また、4年に1度は保険の大改正があるため、改正のたびに何がどう変わったのか、追いかけ続けなくてはなりません。

改正の度に説明会が歯科医師会/保険医協会/民間セミナーとあちこちで開催されるため、院長と手分けして改正内容を把握していく必要があります。

覚えることは大変多いですが、それこそが専門性が高い業務の証です。

当院の場合、院内の医療事務メンバーの他に、ニチイ学館のレセプトチェックサービスに1か月分まとめてダブルチェックもしてもらっています。

レセプトチェック業務は、50~60代の人がフリーランスで活躍しているケースも多いです。

国家資格はないものの、専門性が非常に高いゆえに、極めれば独立もできる、そんな夢のあるお仕事です。

まとめ

いかがでしたか?

・医療事務は、歯科医師やスタッフと連携しながら、歯科医院の運営を支える重要な職種です。

・医療事務は保険請求を正しく行う門番であり、スタッフへの指南役でもあります。

・保険請求に関する深い知識がある場合は、フルリモートワークも可能な職種です。

・いきなり医療事務になるよりも、歯科助手や歯科受付などを経て転身する人が多いです。

・医療事務は覚えることは非常に多いですし、納期を守ることが重要な仕事でもあります。

・専門性が高いため、極めればフリーランスとして独立もできる、夢のある仕事です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

CRの材料学とMI(ミニマルインターベンション)について

2025年3月3日

詰め物を歯にひっつける「接着」と、なるべく削らない歯科治療:MI(ミニマルインターベンション)

こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 歯科医師の吉村剛です。

ここ20年~30年で日本の歯科材料は大きく発展しました。

今回から、歯科材料に焦点を当てて、お話していきます。

1)接着技術が登場する前の虫歯治療

大昔、歯にくっつく材料はないとされていました。

その時代は、金箔などを詰めていくのが最良の治療法とされていました。

その後、精密な印象(型取)をとれる技術が確立し、それを石膏に置き換え、そこで蝋(ろう)で形を作り、金や銀の合金で歯に詰める技術が確立しました。

それが、いわゆる銀歯です。

その頃の詰めやすい・外れにくい形を分類してまとめたのが、アメリカの歯科医師G.V.ブラック(グリーン・バーディマン・ブラック)が1884年に提唱した、虫歯治療における窩洞(かどう)の分類と形成の原則、ブラックの窩洞という分類です。

歯につめものを引っ付ける(接着)技術が発展した今となっては、ブラックの窩洞は「削りすぎ」と言われるようになりました。
しかし、接着技術が発展する前(ほんの20~30年前まで)は、削る量を最小にする方法とされていました。

僕が歯科医師になった20年ほど前は、リン酸亜鉛セメントなどで、歯と詰め物被せ物っをくっつけていました。

この『くっつけて』は、実は「接着」ではありません。

接着と区別して「合着」と言われています。

リン酸亜鉛セメントは、薄く固まる性質があります。

隙間を埋めて、機械的嵌合力(異なる材料や部品が物理的に結合する力)を発揮させていました。

2)接着技術の登場

1990年代からのプライマー、ボンディングの進化とレジンの発達により、材料と歯を科学的に引っ付けることができるようになりました。

「接着」の登場です。

たとえるならば、

・「合着」は木工用ボンド

・「接着」はアロンアルフアのような瞬間接着剤

みたいなものです。

3)歯科の「接着」の仕組み

では、「接着」は、どうして大きな力で歯と引っ付くことができるようになったのでしょうか?

歯の少し内側の構造(象牙質)は、コラーゲン繊維とカルシウム(正確には、ハイドロキシアパタイト)で出来ています。

歯の内部構造の図

詰め物を入れるために歯を削った後、削った部分の表面を酸処理すると、象牙質のカルシウムが溶けてコラーゲンの繊維がむき出しになります。

削った面にコラーゲン繊維が絨毯のようにフサフサと広がっているところに、前処理剤(プライマー)を流し込み、コラーゲン繊維と樹脂が混ざり合った層を作ります。

この、樹脂を含んだコラーゲン繊維の層が間に入ることで、材料が歯と科学的に「接着」するのです。

そうは言っても、歯に詰め物や被せ物をくっつけても、外れてしまったということを経験されたり、見聞きされた経験がある、という方もいらっしゃるかもしれません。

次に、接着したのに外れてしまう原因についてもご説明します。

4)接着したのに詰め物が外れてしまう原因

4-1)詰め物や歯が割れた/歯と詰め物の間に虫歯が出来た

レジンは圧縮には強いのですが、引っ張る力に弱い特徴があります。

よって、噛む力のかかり方によっては、歯とレジンの境目などに大きな力がかかってしまい、詰め物や歯が割れてしまうことがあります。

また、目に見えない小さなヒビが原因で虫歯になってしまうこともあります。

この場合はいくら接着がしっかりできていても、詰め物は外れてしまいます。

その他にも、残っている歯の質が少なすぎて、外れてしまうケースもあります。

そのような場合の解決法として、歯の土台や、詰め物のデザインを変更することで、外れにくくできることがあります。

4-2)接着強度が不足した

基本的に、大手歯科材料メーカーの接着セメント(歯科用の糊)は非常に強度があります。
しかし、選ぶ詰め物によっては、接着強度が出にくいものがあります。

代表的なものが保険の被せ物のPEEK冠です。

これは接着が非常に難しい材料で、丁寧に接着しても、他の素材の被せ物と比較すると接着強度が低くなってしまう傾向があります。

対策として、土台の形の工夫で取れにくくする、PEEK冠専用の接着セメントを用いるなどを行います。

PEEK冠

4-3)接着を阻害する因子があった場合

接着を阻害する因子は、何だと思われますか?

答えは、「水」と「空気」です。

歯科用の接着剤は、人体に反応する水溶性の部分(水に溶ける性質の部分)と、樹脂と反応する脂溶性の部分(油に溶ける性質の部分)を持っています。

ボンディング材はアルコールの配合量などで、厳密に水溶性と脂溶性の配合割合を調整しています。

唾液や呼気の水分などにより、水分比率などが少しでもおかしくなると、接着力が下がってしまいます。

そして、空気は樹脂の「硬化阻害因子」であり、しっかり固まるのを邪魔してしまいます。
歯科用接着性セメントを使用する場合は、当院では「オキシガード」という空気を遮断するジェルを使うなどして、接着力をUPさせるようにしています。

*スーパーボンドと言う、空気が接着阻害因子にならない歯科用セメントも存在します。

4-4)TCH(歯牙接触癖)や歯ぎしりなどの、詰め物が取れやすい習慣がある

どれほど接着力が強力でも、それを上回る強い外力が日常的にかかってしまうと、外れてしまうことはあります。

実際の臨床では、これが最も多いかもしれません。

このようなケースでは、接着の力も借りつつ、伝統的なブラックの窩洞で詰め物を作る場合もあります。

5)接着がもたらしたMI(ミニマムインターベーション)歯科

接着剤の進化によって、歯と詰め物・被せ物を、直接くっつけることができるようになり、歯の削り方が変わりました。

より歯を削る量を少なくすることができるようになりました。

それがミニマムインターベンション(最小の侵襲・できるだけ歯を削らない治療)といわれる概念です。

1884年に提唱されたブラックの窩洞は、合着セメントしか世の中にない前提で、取れないようにするための削り方が必要でした。

しかし今は、接着の力を借りて、「取れない削り方」をする必要性が小さくなったためです。

接着と合着の対比図

接着と合着の対比についての概念図

6)技術革新が推し進める歯科治療の未来

歯科の進歩や流れは、材料の特徴や進化が大きく影響しています。

これはスマートフォンの普及・進化や、AIの進化とともに、私たちのライフスタイルそのものが変化していくことと、よく似ています。

技術の進化により概念が変わってきています。

今回は詰め物・被せ物を歯にひっつける接着性セメントのお話でした。

詰め物・被せ物の材料なども、ここ10年で新しいものがどんどん登場してきました。

もちろん、いわゆる保険の銀歯(金銀パラジウム合金)や、最古の歯科材料である金も、まだまだ現役です。

歯科医院に行くと、いろいろ説明されるけれど、あまりピンと来ないという方も多い、「歯科の材料学」。

次回は接着性とについてと、現在よく使われる材料の材料学などを、深掘りしてお話していく予定です。
ぜひご覧ください。

7)まとめ

いかがでしたか?

・昔は歯に接着する材料がなく、機械的嵌合力で詰め物を歯に付けていました。

・歯のコラーゲンと樹脂を含有する層が作れるようになったボンディング剤の進化により、歯と詰め物が科学的に「接着」できるようになりました。
ここ30年ぐらいの歯科材料の進化です。

・材料の進化に伴い、最小の侵襲で歯科治療するというミニマムインターベンションが可能になりました。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!

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