MFT特集その1 筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
2024年1月25日
MFT特集その1
筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
今回から、歯科界でこの数年話題の、MFT(マイオ ファンクショナル セラピー:口腔筋機能訓練)について、何回かで解説していこうと思います。
MFTをお子さんの歯並びや口呼吸を改善するためのトレーニングとして、歯科医院で説明を受けたことがあるという人もおられるかもしれません。
また、ここ2~3年は、MFTをお子さんだけでなく、高齢の方や睡眠障害のある方にもオススメしている歯科医院も少しずつ増えてきています。
MFTとは「お口の筋トレ」
全身においても筋力量の維持は、健康のために大変重要と考えられています。
一定以上の筋肉が存在することが骨、内臓、その他血液を含め、肉体を守る鎧となるんです。
口腔も同じで、筋肉量があることや、筋肉を正しく動かすこと(口腔の機能を獲得すること)が重要と言われています。
サルコペニアとフレイル(高齢者の筋肉量減少による機能低下)
高齢者において、筋肉量が減り身体機能が低下した状態をサルコペニアと言います。
サルコペニアが進行して、要介護一歩手前になってしまった状態がフレイル(虚弱状態)です。
このフレイルは、要介護状態の前段階ではあるものの、「トレーニングによって回復可能な状態」とされています。
フレイルの状態がさらに進行してしまうと・・・
・身体の維持が難しくなる
・歩行困難になる
・寝たきり
・食べ物が嚥下できない
といった「要介護状態」になってしまうんですね。
では、「トレーニングによって回復可能な状態」であるフレイルの初発症状はどこにでるでしょうか?
フレイルの初発症状は口に出る「オーラルフレイル」
高齢になって筋肉量が衰えてくると、口腔機能低下症(オーラルフレイル)といって、もともと持っていた口の機能を十分に使うことが出来なくなってしまう状態になることが多いです。
そして、この「オーラルフレイル(口の虚弱状態)」は「全身のフレイル(虚弱状態)」に先駆けて現れることが多いです。
高齢者の口腔機能低下については、こちらの記事で解説していますので、ぜひお読みくださいね。
参考リンク:老いは口から始まる。歯医者が教える要介護にならないためのポイント!
オーラルフレイルの最初の症状
・滑舌が悪くなる
・食べこぼしやわずかなむせがでやすい
・噛めない食品の増加する
この3つは口腔顔面の筋機能に問題がある幼児の、食生活での問題点と完全に一致します。
子どもの発音、嚥下機能の発達がうまくいっていない状態を「小児口腔機能発達不全症」と言います。
小児口腔機能発達不全症と
口腔機能低下症
高齢者が、若いころはもっていた口腔機能が低下した状態が「口腔機能低下症」で
小児が、本来もつべき口腔機能を獲得できていない状態が「小児口腔発達不全症」です。
この2つは、対になる概念です。
乳幼児期・学齢期に口腔機能の獲得をしっかりできていれば、高齢になってからのフレイルはゆるやかに始まります。
一方で、小児期に十分な口腔機能を獲得できなかった場合は、フレイルがより若い段階で、急激に始まります。

逆に言えば、小児期に筋機能をしっかり獲得しておけば、発音や嚥下の問題点はあらかた解消します。
そしてその後も筋力量をある程度維持できれば、老年期のお口の衰えも予防することができる、ということを意味しています。
高齢になってからのオーラルフレイルが進行するとどうなる?
・嚥下が難しくなる。とろみ食や介護食でないと食べられなくなる。
・誤嚥しやすくなる。
・誤嚥のため、誤嚥性肺炎を起こしやすくなる
・食の問題からタンパク質が不足し、全身のフレイルへと進行する
高齢期のオーラルフレイルを、子供のうちからしっかりと予防したいですね。
口腔機能の獲得をしやすい年齢は10歳まで
お口の機能と筋力量の獲得を目的として行うトレーニングがMFTです。
口腔機能の獲得は、10歳以降はなかなか難易度が高いという特徴があります。
もちろん、何歳からはじめても意味はあるのですが、できれば効果が高い10歳までに獲得しておきたいものです。
当院でも小児口腔機能発達不全症のスクリーニング(保険適応)や、ご自宅で今日からできるトレーニング、口腔機能を伸ばす遊びの指導や、習い事としてのMFTスクールなども行っております。
気になる方は、一度ご相談ください。
当院の筋機能療法(MFT)
まとめ
いかがでしたか?
・MFTとはマイオ ファンクショナル セラピーの略で、口腔機能訓練でお口に関する筋のトレーニングを意味します。
・口腔の機能と筋肉量をつけることができれば、嚥下・発音などの問題点を解消できるようになります。
・小児の口腔機能発達不全症を治療できなかった場合、高齢期にフレイルになりやすくなります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
インビザライン矯正の魅力 便宜抜歯を回避できる
2024年1月4日
インビザライン矯正の魅力:便宜抜歯なしで歯並びが綺麗になる矯正治療

こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
最近、歯並びの改善に興味を持っている方や矯正治療を検討している方にとって、歯を抜かずに歯並びを整える方法が注目されています。
その中でも、インビザラインに代表されるマウスピース矯正は便宜抜歯をしなくて済むことが多いという特徴があります。

インビザライン矯正で治っていく様子
写真はすべて、患者さまの同意と許可をいただいて使用しております。
上は、当院のインビザライン症例です。歯を抜かずに歯並びが綺麗になっていることが分かると思います。
これ、旧来のワイヤー矯正ですと抜歯して治す症例に該当します。
インビザラインでは、どうして従来では抜歯して治療する必要がある歯並びを、抜歯せずに治せるのでしょうか?
今回は、その理由について詳しくご説明します。
目次
1.インビザライン矯正とは?
2. 矯正治療のために抜歯する(便宜抜歯)場合
3.インビザライン矯正で便宜抜歯を回避できる理由
4.インビザラインで便宜抜歯する場合
5.まとめ
1.インビザライン矯正とは?
まず初めに、インビザライン矯正について簡単に説明します。
これは透明なマウスピースを用いて歯を移動させ、歯並びを整える方法です。
従来の矯正装置とは異なり、金属製のブラケットやワイヤーがなく、
目立たず快適に治療を進めることができるのが特徴です。
詳しく解説した記事があるので、こちらもご覧ください。
マウスピース矯正の種類(マウスピース矯正に値段の差があるのはどうして?)
マウスピース型矯正とワイヤー矯正の違いとは?
マウスピース型矯正の治療期間と回数の目安
2. 矯正治療のために抜歯する(便宜抜歯)場合
「便宜抜歯」は、健康な歯だけれども矯正治療を行うにあたり、必要があって歯を抜くことを指します。

歯並びがガタガタになったり、出っ歯になったりするには理由があります。
歯が並ぶことができるスペースに対して歯の幅が大きいと、スペース不足となります。
そうすると、歯が全体的に前にあふれると出っ歯に、重なって並ぶことでガタガタの歯並びになります。
そこで便宜抜歯で歯の数を減らすことで、歯が綺麗に並ぶことができるスペースを作るわけです。
しかし、多くの人は
「歯並びを綺麗にするために必要なら仕方ないけど
できれば便宜抜歯せずに歯並びが綺麗になったら嬉しい」
が本音だと思います。
3.インビザライン矯正で便宜抜歯を回避できる理由
ではなぜ、インビザライン矯正は便宜抜歯を回避することができるのでしょうか。
それは、以下の3つの方法でスペースを作るからです。
A. IPR(ディスキング)
*ワイヤー矯正でも行うことがあります
IPRは、ディスキングとも呼ばれ、歯と歯の間にわずかなスペースを作るための方法です。
専用器具を用いて0.2~0.6mm程度のスキマを歯と歯の間をトリミングします。
歯は通常、点接触で隣の歯と接触しているため、0.2~0.6㎜程度のトリミングでは、しみるようになったり歯周病になりやすくなったりはしないと言われています。
B. 歯の移動や回転
*ワイヤー矯正でも行うことがあります
奥歯(特に第一大臼歯)を少し回転させたり、
横の歯を外側に少し傾けたり、
前歯を内側に傾けたりすることで、
スペースをつくったり出っ歯を改善したりします。
C.奥歯を、奥の方に移動させる
*インビザラインが特に得意とする特徴です
インビザラインは奥歯をより奥に移動させてスペースを作ることが得意です。
もう一度、治療過程の動画をご覧ください。
奥歯が、奥に移動していることが分かると思います。

インビザライン矯正で治っていく様子
写真はすべて患者さまの同意と許可をいただいております。
通常のワイヤー矯正でも、アンカーインプラントを併用するなどすれば出来ないこともないのですが、難易度は高い方法になります。
(十代女性の場合はアンカーインプラントが安定しないことも多いです)
インビザラインでは、奥歯をより奥に移動させることが得意なので、歯を抜かずに歯並びを改善することができます。
4.インビザラインで便宜抜歯する場合
では、インビザラインでは抜歯は一切しないのかと言うとそうでもありません。
・親知らずは事前に抜歯することが多い
奥歯をより奥に移動させることでスペースを作る場合、親知らずが治療の邪魔になることがあります。
その場合は親知らずは先に抜歯を済ませます。
・歯の移動量がとても大きい場合は便宜抜歯することもある
奥歯を奥に移動させるだけでは歯並びを整えるだけのスペースを作れない場合は、便宜抜歯を行うこともあります。
5.まとめ
いかがでしたか?
1.インビザライン矯正は、マウスピースで歯を動かす矯正治療です。
2. インビザライン矯正では便宜抜歯をせずに済むことが多いです。
3.親知らずは事前に抜歯することが多いです。
4.歯の移動量が多い場合はインビザラインでも便宜抜歯をすることもあります。
インビザラインで便宜抜歯を行う場合については、また別の機会に詳しく解説します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。