インビザライン矯正、抜歯する?抜歯しない?
2025年5月10日
こんにちは、医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
今日は、インビザラインの抜歯症例と、非抜歯症例の違いについてのお話です。
1.そもそもどうして矯正治療で抜歯が必要になるの?
口腔内にスペースがないことが原因で、歯並びがガタガタになったり、出っ歯になったりします。
顎骨が成長中のお子さんの場合は、小さい顎を大きく成長させるという手段を使うことができます(小児矯正)。
しかし顎の成長が終わっている成人の場合は、顎を大きくすることは困難です。
すると、歯並びが綺麗に並ぶためのスペースをつくる必要があるのです。
特に、前歯が突出している場合や、顎の大きさに対して歯のサイズが過大に大きい場合(7~8mmのスペース不足がある場合)に抜歯が選ばれることが多くなります。
(治療前)顎のサイズが、横方向に特に小さく、歯のサイズが大きい症例です。
このくらいのスペース不足になると、抜歯して治療する他ありません。
(治療後)前から4番目の歯を抜歯して、歯並びを治療しました。
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主訴:歯のガタガタを綺麗にしたい
治療期間:1年半
治療回数:14回
治療費用:88万円(税込)
リスク・副作用:
・マウスピースを使用する時間が不足した場合は治療が長期化する可能性がある
・適切な口腔衛生管理ができないと虫歯のリスクがある
・歯茎部の歯肉のラインは左右対称にできないことがある
治療内容:マウスピース矯正(インビザライン)による歯列・咬合治療
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2.抜歯せずに治療する場合とは?
歯並びを綺麗に整えるために必要なスペースが7~8mm以下の場合は、抜歯せずに治療することが多いです。
インビザラインは奥歯を、より奥に移動させることができます。
この移動量は、2mm程度までが確実であると言われています。
左右の奥歯を後ろに移動させれば、4mmのスペースを獲得できます。
また、インビザラインではIPR(Inter Proximal Reduction)という、歯と歯の間にあるエナメル質を少し削る処置を行うことが多いです。
隣接する歯の側面を0.1mmから0.5mm程度削ることで、歯が並ぶためのスペースを確保するのです。
歯は片方の顎で合計14本ありますから、IPRの最大量は0.5mm×13か所=6.5mmとなります。
奥歯を後ろに移動させて得る4mmと、IPRで得る6.5mmの合計で10.5mmが、非抜歯で得られるスペースの最大量となります。
しかし、実際は正中を合わせたり、歯根が顎骨からはみ出ない範囲での移動に抑えたりなどの制限がかかります。
以上により当院では、スペース不足が7~8mm以下で、前歯をひっこめる量が4mm以下の症例を非抜歯で治療することが多いです。
(治療前)前歯のガタガタが大きいですが、上の歯だけが前に突出しているわけではなく、糸切り歯(前から3番目の歯)付近の顎の横幅が狭いことが分かります。
(治療後)糸切り歯と、小臼歯(前から4~5番目の歯)を少し傾斜させることで歯並びの横幅を大きくし、さらにIPRと奥歯の移動を合わせて、抜歯せずに歯並びを整えました。
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主訴:反対に噛んでいる前歯を治したい。
歯のガタガタを治したい。
治療期間:1年
治療回数:17回
治療費用:88万円(税込)
リスク・副作用:
・マウスピースを使用する時間が不足した場合は治療が長期化する可能性がある
・適切なこう口腔衛生管理ができないと虫歯のリスクがある
・歯茎部の歯肉のラインは左右対称にできないことがある
治療内容:マウスピース矯正(インビザライン)による歯列・咬合治療
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3.抜歯症例と非抜歯症例で、治療期間に差はあるの?
抜歯か非抜歯かで治療期間が変わるというより、歯の移動量によって治療期間が変わります。
「歯が並ぶスペースが10mm不足しているので抜歯が必要」という場合でも、
「抜歯で歯並びのガタガタを取る」場合、歯の移動量はさほど大きくなりません(左写真)。
一方で「抜歯で前歯をひっこめる」場合は、歯の移動量は大きくなることが多いです(右写真)。
他にも、非抜歯であっても上下の歯の正中を合わせる場合や、奥歯が手前に倒れ込んでいる場合、八重歯の移動量が大きい場合など、時間がかかることが多いケースはたくさんあります。
一般的に、インビザライン治療は約1年から2年程度かかりますが、歯並びの治療プランによって差があるため、抜歯だから長い、非抜歯だから短いということにはなりません。
治療計画ができあがった段階で、個別に担当医にご確認いただくのが一番確実です。
4.抜歯か非抜歯かで、治療費用は変わるの?
矯正治療のための抜歯は、保険が効きません。
当院は抜歯矯正の場合の抜歯料金は無料(当院での矯正治療のみ。
他院で矯正治療される場合は、便宜抜歯費用を申し受けております)。
ですが、医院によっては別途料金が発生する場合があります。
また、矯正で歯を動かす量が小さい症例(前歯の小さな隙間を閉じたい、前歯の小さなガタガタを取りたい、など)の場合はインビザラインGOなどの少ないアライナー枚数で治療する代わりに費用を抑えたプランを選べることがあります。
インビザラインGOでの治療例(治療前)
インビザラインGOでの治療例(治療後)
このように、歯を動かす量が小さい症例では、治療期間が短くなるだけでなく、費用も安くなります。
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主訴:前歯のスキマを閉じたい
治療期間:半年
治療回数:6回
治療費用:44万円(税込)
リスク・副作用:
・マウスピースを使用する時間が不足した場合は治療が長期化する可能性がある。
・アライン社の規定により追加アライナーは1セットに限定されるため、アライナーの使用時間が不足した場合は、最終仕上げがブラケットになることがある。
・適切なこう口腔衛生管理ができないと虫歯のリスクがある。
・歯茎部の歯肉のラインは左右対称にできないことがある。
治療内容:マウスピース矯正(インビザライン)による歯列・咬合治療
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5.まとめ
いかがでしたか?
・矯正において、顎のスペースが足りない量が大きい場合に抜歯が選択されます。
・7~8mm以下のスペース不足の場合は、非抜歯で治療することが多いです。
・治療期間は、抜歯か非抜歯かよりも、歯の移動量で決まります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!