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MFT(口腔筋機能訓練)特集その3 お口の機能発達は10歳までが勝負!

2024年4月25日

 

MFT(口腔筋機能訓練)特集その3

お口の機能発達は10歳までが勝負!

 

 

こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 小児歯科専門医の吉村です。

MFT(マイオ ファンクショナル セラピー:筋機能訓練)の第3回です。

今回は「筋機能訓練は何歳までに始めたら良いの?また、何歳までがリミットなの?」というテーマのお話です。

 

小児歯科、MFT、筋機能訓練

 

1)筋機能訓練(MFT)は10歳までに終えたい

保険診療の小児口腔機能発達不全症は、18歳未満が対象です。

が、実際は10歳までが勝負と言われています。

筋機能訓練を10歳までに行わないと、効果が激減してしまうワケ

人間の咀嚼、嚥下、発音、呼吸などの口腔機能は、成長発育期に日常生活の中で学習して自然に獲得するものです。

口腔機能にとっての成長発育期が、10歳までなんです。

5,6歳から取り組んで(遅くとも8歳から始めて)、10歳までに終わるのが理想です。

 

2)筋機能訓練(MFT)では、何を訓練で改善するの?

MFTで改善するのは、呼吸と嚥下(えんげ)の機能です。

歯並びを悪くする原因でもある「呼吸」「嚥下」のうち、ここでは「嚥下」に焦点をあてて解説しますね。

 

「嚥下」がうまくできない状態(摂食嚥下障害)では、どんなことがおこっているのでしょうか。

嚥下とは、食べる・飲み込むという一連の動作です。

食べ物が実際にある体の「場所」と、食べ物をどう処理するかの「体の働き」がうまく嚙み合っていないと、嚥下はうまくできません。

 

 

詳しく説明していきます。

咀嚼嚥下(そしゃくえんげ:かんで飲み込むこと)は2つのとらえ方があります。

2-1)食べ物がどこにあるかで分ける「相(そう)」

相は「口腔相」「咽頭相」「食道相」に分けられますが、これは食べ物が体のどこにあるか、という分け方です。

 

2-2)認識や筋肉の動きで分ける「期(き)」

期は神経目線の考え方です。

「認知期」「準備期」「口腔期」「咽頭期」「食道期」という流れです。

認知期・・・「食べよう」と思うことにより無意識に食べる心構えをする段階

準備期・・・噛む段階

口腔期・・・飲み込む直前の段階

咽頭期(いんとうき)、食道期・・・食べ物がその場所に来たときに、体が無意識に、オートマチックに動く段階

 

2-3)咀嚼嚥下障害は、相と期が上手くかみ合っていない状態で発生する

MFTの訓練は「期」の中でのそれぞれの改善点をトレーニングする方法とされています。

舌の位置、動き、持久力、可動域、機能

口唇の動き、閉鎖力、可動域、機能

舌や口唇が正しい機能を発揮しやすくする姿勢

など、多岐にわたり、様々なトレーニング方法があります。

 

3)機能は一度獲得出来たら、後戻りはしない

通常、人間は食事するとき、舌の位置とか深く考えずにほぼ無意識に行います。

ですが、「食べよう」「食べ物を口に入れよう」「噛もう」というのは、意識して行います。

この「意識する部分」の訓練を繰り返せば、神経筋機能が刺激、発達して改善できる。これがMFTを行う理論的根拠とされています。

 

また、習得するのは難しいのですが、習得したら無意識レベルまでいくので、後戻りはしないとされる根拠でもあります。

 

4)どうして10歳までに終えたいの?

この記事の冒頭で、筋機能訓練は5,6歳から開始して、10歳までには終えるのが理想的だとお伝えしました。

 

10歳ごろまでは

・乳歯が生える/抜ける、永久歯が生えるなど変化が大きい時期

・顎の成長や口腔のボリューム(容積)の変化が大きい時期

・神経機能が発達しやすい時期

ということもあり、体が「変化を受け入れやすい」「機能獲得に有利な時期」なのです。

 

特に、脳をはじめとした神経系の成長は、10歳前後までに成人の95.6%にまで達します。

この時期は、さまざまな神経回路が形成されます。

よって、神経系の働きを高めるような運動や動作を行うと、発達を促す効果が高いんです。

 

それ以上の年齢では改善しないわけではありません。

しかし、癖を治すのに強い意志が必要となり、発達もゆっくりとなるので、大きなストレスを感じる人も多いです。

 

5)MFTで歯並びが綺麗になるって本当!?

5-1)口腔の機能発達不全が歯並びを悪くする

口呼吸や低位舌(ていいぜつ)、舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)などの口腔機能の発達不全は、出っ歯や歯のガタガタ、受け口の原因になることが知られています。

そのため、歯列矯正と併用して行うケースも多いです。

 

矯正治療で歯並び治療をする時に、歯並びを悪くする癖があれば治療効果が低下します。

そして、せっかく歯並びを治療しても、歯並びを悪くする癖があれば、またすぐに歯並びは悪く戻ってしまうことも多いです。

 

5-2)MFTをすれば全員歯並びが良くなるわけではない

歯並びの悪さの原因が、何かによります。

口腔機能の発達不全が歯並びを悪くしている原因の場合、口腔機能が改善したら歯並びが良くなることもあります。

ただ、それは神経筋機構が改善した結果です。MFTによって、歯並びが直接改善するわけではありません。

 

年齢や歯並びや骨の状態によっては、MFTだけでは歯並びを改善できないこともあります。

その場合は、矯正治療との併用してMFTを行うことも多いです。

 

6)10歳までに機能獲得をするために、8歳までにMFTを始めたい

MFTは2年間くらいトレーニングを行います。

獲得しなければいけない機能不全が、どの程度かによって、期間は前後します。

10歳未満の方であれば、2年のMFT期間で、ほとんどの場合大幅な機能改善が期待できます。

 

MFT期間の目安は2年間ですが、

  • ・症例の重度・軽度
  • ・どのくらいご自宅でトレーニング時間を作れるか
  • ・トレーニングのための通院頻度

などによっても必要とされる期間は変わります。

 

絶対に8歳までに始めなければいけない、ということではありません。

しかし、8歳くらいまでに始めると、「安心」ではあります。

 

7)まとめ

いかがでしたか?

 

  • ・MFTの訓練は「期」の中でのそれぞれの改善点をトレーニングする方法とされ、様々なステップに分けられています。
  • ・口腔機能をMFTによって習得するのは難しいのですが、習得したら一生抜けない技術です。
  • ・ただし、受け入れやすい年齢は上限が決まっており(10歳)、その後では強い意志が必要となります。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

MFT 「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと

2024年3月6日

MFT(口腔筋機能訓練)特集その2

「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと

 

こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。

 

今回はMFT(マイオ ファンクショナル セラピー 口腔筋機能訓練)の第2回です✨

小児の口腔の発達とMFTについて考えようと思います。

 

1)MFTの目標は「正しい姿勢・正しい咀嚼と嚥下・正しい呼吸」

 

正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸とは、なんでしょうか?

リンク先は小児歯科学会の啓発ポスターです。

 

参考リンク:口は閉じて食べましょう!

 

正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸として大事なことは、

 

・前歯で噛みきり、しっかり噛んで程よいところで飲み込む

・背もたれは使わずに、背筋を伸ばした姿勢で座る

・足置きを用いて、足裏を床につけて食事する

・口を閉じて食べる

 

とされています。

岩国 歯医者 正しい姿勢

さて、あなたのご家庭では、お子さんは普段、どのような姿勢をしていらっしゃるででしょうか?

 

2)現代家庭ではお子さんは「良い姿勢」を習得しにくい

 

ソファーに座ると、子供の場合は足裏が床につかないですし、ソファーだと背もたれにもたれてしまいますよね?

また、ご家族みなさんで食卓を囲むとき、子供は足置きがなけれは足裏が床につかないはずです。

岩国 歯医者 MFT

 

お子さんは足をブラブラ、させていませんか?

背もたれを使っていませんか?

猫背・巻き肩になっていませんか?

岩国 歯医者 よくない姿勢

診療室でお子さんを見ていると、今はほとんどのお子さんが、こうした「悪い姿勢」になってしまっているように感じています。

 

お子さんが普段の生活でソファーや足のつかない椅子を使っていると、良い姿勢をするための筋肉が発達せずに、良い姿勢をすることそのものが難しくなってしまうんです。

 

3)姿勢の維持には筋肉と関節の柔軟性と筋肉量が重要

 

僕も若いころに比べて姿勢が悪いと言われることが増えてきました。

つい気が緩むと猫背になっていたり、椅子に浅く座って足を組んだりしてしまい、女性メンバーに「姿勢が悪い」と注意されてしまいます。

 

姿勢の維持に重要なのは筋肉、関節の柔軟性とある程度の筋肉量です。

使いやすい筋肉ばかり使用し、使っていない(サボっている)筋肉があると、使い続けている筋肉は緊張して固く短縮してより強くなり、サボっている筋肉は伸びて弛緩し、衰え細くなります。それによってさらに姿勢が悪くなったり、体の不調が出てきます。高齢になると骨が曲がったり、傷みが出てくる原因にもなります。

 

特にパソコンやスマホなどをするときは、ストレートネック(首を前方に傾けるような姿勢)になりやすく、首・肩・舌の周囲筋・表情筋などと連動して筋肉が緊張してしまいます。

 

岩国市 歯医者 ストレートネック

 

お子さんだけでなく、成人でも、

「猫背・巻き肩・ストレートネック」になってしまうと、口腔周囲筋の不調和につながって(程度の差はありますが)口腔機能の低下や、TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)や顎関節症などの症状が出てしまうことがあります。

 

予防や症状改善のためには「正しい姿勢」を維持するために、筋肉のトレーニングやストレッチを行うことや、良くない環境を見直すことが有効とされています。

 

 

4)正しい姿勢をするために見直すこと

 

4-1)小児・成人共通

・椅子に座るときには足裏を床につける

・椅子のせもたれやソファーは使用しない

 

4-2)乳幼児

・離乳食は大人のゲンコツサイズの野菜の水煮などを手づかみ食べさせる

・足をブラブラさせない。サイズにあった乳幼児用椅子を用いる

 

4-3)小児

・口腔周囲筋を良く動かすような遊びをする(口笛、吹き矢など)

・足裏が床につかない時は足置き台を用いる

・学習机に向かう時の椅子も、足置き台を足裏が付くようにする

 

4-4)成人

・スマホやパソコンを使うときの姿勢に気を付ける

・巻き肩にならないよう、肩甲骨を寄せる筋トレを行うか、大胸筋や前腕屈筋群、広背筋を伸ばすようなストレッチを行う

・座り時間が長くなりすぎないように気を付ける

 

5)「仕上げ磨き嫌い」や「食事の好き嫌い」も、口腔の発達不全に由来している!?

 

保護者の方の悩みである仕上げ磨き。

実は、仕上げ磨きが嫌いなお子さんは、口腔機能の発達不全があるかもしれません。

 

口腔内の筋肉の動きが悪い部分=筋肉の強い緊張がある部分は、過敏な部位に変化していきます。

歯磨きが苦手なお子様たちの口を観察すると、舌小帯や上唇小帯の短縮症があったり、低位舌などがある場合が多いです。そうした「発達不全の原因」があるために、口腔内が過敏になって、大人に触られるのを嫌がるようになってしまうんです。

 

ですので、MFTのスタートは過敏を除去する、脱感作となります。

口から舌を突き出したりする動きや、口の周囲をトレースさせる動き、舌に歯ブラシを当てる動きなどです。

また、筋肉の発達とともに過敏も落ち着いてくる場合が多いです。

 

MFTは最終的に歯並びの改善に大きく寄与する場合もありますが、第一に目標とすべきは正しい機能の獲得と発達です。歯磨きが苦手、食事が遅い、口を開けて食べる、好き嫌いが多いなどの問題がある場合、口腔領域全体の発達の問題ととらえて見直してみると良いでしょう。

 

6)まとめ

 

いかがでしたか?

 

・MFTの目標は、正しい姿勢で、正しく噛んで飲み込み、正しく呼吸する、ことです。

・口腔周囲筋の不調和があると、口腔機能発達不全の原因となります。

・仕上げ磨きの嫌いな子は不調和に起因する感覚過敏が原因である場合が多いです。

・歯磨きが苦手、食事の好き嫌いなどの問題がある場合、口腔領域全体の発達の問題ととらえて生活習慣を見直すことをおススメします。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

MFT 筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう

2024年1月25日

MFT特集その1

筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう

 

こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。

 

今回から、歯科界でこの数年話題の、MFT(マイオ ファンクショナル セラピー:口腔筋機能訓練)について、何回かで解説していこうと思います。

 

MFTをお子さんの歯並びや口呼吸を改善するためのトレーニングとして、歯科医院で説明を受けたことがあるという人もおられるかもしれません。

また、ここ2~3年は、MFTをお子さんだけでなく、高齢の方や睡眠障害のある方にもオススメしている歯科医院も少しずつ増えてきています。

 

MFTとは「お口の筋トレ」

全身においても筋力量の維持は、健康のために大変重要と考えられています。

一定以上の筋肉が存在することが骨、内臓、その他血液を含め、肉体を守る鎧となるんです。

口腔も同じで、筋肉量があることや、筋肉を正しく動かすこと(口腔の機能を獲得すること)が重要と言われています。

 

サルコペニアとフレイル(高齢者の筋肉量減少による機能低下)

高齢者において、筋肉量が減り身体機能が低下した状態をサルコペニアと言います。

サルコペニアが進行して、要介護一歩手前になってしまった状態がフレイル(虚弱状態)です。

このフレイルは、要介護状態の前段階ではあるものの、「トレーニングによって回復可能な状態」とされています。

フレイルの状態がさらに進行してしまうと・・・

・身体の維持が難しくなる

・歩行困難になる

・寝たきり

・食べ物が嚥下できない

といった「要介護状態」になってしまうんですね。

 

では、「トレーニングによって回復可能な状態」であるフレイルの初発症状はどこにでるでしょうか?

フレイルの初発症状は口に出る「オーラルフレイル」

高齢になって筋肉量が衰えてくると、口腔機能低下症(オーラルフレイル)といって、もともと持っていた口の機能を十分に使うことが出来なくなってしまう状態になることが多いです。

そして、この「オーラルフレイル(口の虚弱状態)」は「全身のフレイル(虚弱状態)」に先駆けて現れることが多いです。

 

高齢者の口腔機能低下については、こちらの記事で解説していますので、ぜひお読みくださいね。

 

参考リンク:老いは口から始まる。歯医者が教える要介護にならないためのポイント!

 

オーラルフレイルの最初の症状

・滑舌が悪くなる

・食べこぼしやわずかなむせがでやすい

・噛めない食品の増加する

 

この3つは口腔顔面の筋機能に問題がある幼児の、食生活での問題点と完全に一致します。

子どもの発音、嚥下機能の発達がうまくいっていない状態を「小児口腔機能発達不全症」と言います。

小児口腔機能発達不全症と

口腔機能低下症

高齢者が、若いころはもっていた口腔機能が低下した状態が「口腔機能低下症」で

小児が、本来もつべき口腔機能を獲得できていない状態が「小児口腔発達不全症」です。

この2つは、対になる概念です。

 

乳幼児期・学齢期に口腔機能の獲得をしっかりできていれば、高齢になってからのフレイルはゆるやかに始まります。

一方で、小児期に十分な口腔機能を獲得できなかった場合は、フレイルがより若い段階で、急激に始まります。

 

逆に言えば、小児期に筋機能をしっかり獲得しておけば、発音や嚥下の問題点はあらかた解消します。

そしてその後も筋力量をある程度維持できれば、老年期のお口の衰えも予防することができる、ということを意味しています。

高齢になってからのオーラルフレイルが進行するとどうなる?

・嚥下が難しくなる。とろみ食や介護食でないと食べられなくなる。

・誤嚥しやすくなる。

・誤嚥のため、誤嚥性肺炎を起こしやすくなる

・食の問題からタンパク質が不足し、全身のフレイルへと進行する

 

高齢期のオーラルフレイルを、子供のうちからしっかりと予防したいですね。

口腔機能の獲得をしやすい年齢は10歳まで

お口の機能と筋力量の獲得を目的として行うトレーニングがMFTです。

口腔機能の獲得は、10歳以降はなかなか難易度が高いという特徴があります。

もちろん、何歳からはじめても意味はあるのですが、できれば効果が高い10歳までに獲得しておきたいものです。

 

当院でも小児口腔機能発達不全症のスクリーニング(保険適応)や、ご自宅で今日からできるトレーニング、口腔機能を伸ばす遊びの指導や、習い事としてのMFTスクールなども行っております。

気になる方は、一度ご相談ください。

 

まとめ

いかがでしたか?

・MFTとはマイオ ファンクショナル セラピーの略で、口腔機能訓練でお口に関する筋のトレーニングを意味します。

・口腔の機能と筋肉量をつけることができれば、嚥下・発音などの問題点を解消できるようになります。

・小児の口腔機能発達不全症を治療できなかった場合、高齢期にフレイルになりやすくなります。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

矯正の早期治療(3歳~)がおススメな症例とは?

2023年11月24日

お子様の歯並び矯正は

何歳から始めることができるか、ご存じですか?

こんにちは、つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科

院長の坪井です。

 

1歳半検診や、3歳児検診などでも
「受け口が気になります」

「よくしゃくれた顎をしているのが気になって…」
「出っ歯な気がします」
と保護者の方のご相談を受けることも多い、この疑問。

 

お子様の矯正治療は何歳から?

 

実は、症例によってベストタイミングが変わります!

 

1)1~2歳は「早すぎる」

 

1~2歳ですと「矯正治療をしなければならない」

ということを赤ちゃん本人が理解することが難しく

一般的に「まだ早い」とされています。

 

ただし、発達の早めの子(特に女の子に多いです)は

2歳半くらいから治療を開始可能な場合も。

一般的には3歳くらいからが、

一番最初のタイミングになります。

 

2)3歳前後に開始するのがおススメな症例

 

「かみ合わせが悪い」症例では、

早期治療がおススメです。

・受け口

・交差咬合(斜めに噛んでる)

・下の前歯が上の前歯に完全に隠れて見えない(過蓋咬合)

 

また、「歯が並ぶスペースが足りないのは明白」という症例も

この時期から治療をすることがあります。

・歯が重なりあって生えている

・出っ歯(重度)

 

その他には「口腔機能発達不全」

かつ「歯並びが悪い」場合も

早期治療をおススメすることが多いです。

具体的には

・下の前歯が上の前歯に完全に隠れている

・習慣的にイビキをする

 

最後の口腔機能発達不全の場合は、

本当はMFT(筋機能訓練)も合わせて

おこなうことが望ましいです。

 

 

3)3歳前後には治療しないこともある症例

「歯が並ぶスペースが少し不足している」症例は

この時期には開始しないこともあります。

 

・歯並びがガタガタしている(軽度)

・出っ歯(軽度)

・歯と歯がぴったりくっついている(閉鎖歯列弓)

 

これらの症例は、

もう少し大きくなった6~7歳になってから

永久歯の前歯が生えてから行うことが多いです。

 

検査によってある程度、歯列不正の程度を

予測できる年齢になるからです。

 

検査するまでもなく

「歯列がガタガタになりますね」という症例の場合は、

早くに治療してあげればよいのです。

一方で、「もしかして治療は不要かも!?」という

軽度症例の場合は、分析して矯正治療が

本当に必要かどうか確認してから

治療を開始したいからです。

 

4)いつ頃、どこに相談したら良い?

 

歯並びが悪くなるお子様は、

1歳半検診や3歳児検診で

およその見当がつきますから、

検診で指摘されたら歯医者さんに相談に

行ってみましょう。

 

1歳半検診、3歳児検診では歯列や

軟組織を診る項目があるので、

将来的に歯列不正が出そうな場合は

指摘があるかと思います。

 

2歳半~3歳で小児の歯並び治療をしている

医院に相談に行けば、今後の見通しも

含めて相談できると思います。

 

まとめ

・早期治療(3歳前後)は、

歯列不正がほぼ確定している症例や

口腔機能発達不全症もあわせて

認められる場合におススメです。

・発達が早い子で2歳半から、

多くは3歳頃から矯正治療ができます。

・場合によっては「6~7歳まで待ちましょう」と

言われることもあります。

 

症例によって、ベストの矯正開始年齢は異なりますので、
詳しくは直接、ご相談くださいね!

 

最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

外傷歯の治療について(シリーズ2)

2022年9月24日

外傷歯の治療について(シリーズ2)

 

こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。

今回も外傷シリーズで行こうと思います。

以前にお話ししたのは1歳ぐらいのかなり小さなお子さんでしたが、今回は小学校~中学生くらいの時期によく起こる外傷についてお話していきます。

 

小学生から中学生の間によく起こる外傷例

Bくんは、11歳半の男の子。

友達とスポーツ少年団でハンドボールを頑張っています。

試合形式の練習中に友達と激突し、前歯付近を打ちました。

上唇と上の前歯の歯茎から出血があり、前歯がぐらついているようです。

歯が欠けているかはよくわかりません。

 

1)スポーツでの外傷

小学~中学生の歯の外傷は、スポーツによるものが多くなります。

一般的に体の接触が多いスポーツでは、特にリスクが高い傾向にあります。

そのため、空手の組手競技などでは、スポーツ用マウスピースの使用が求められています。

 

 

球技でのケガも多いですが、競技の内容によって違いがあります。

歯のケガが少ないスポーツ

テニスなど

歯のケガが多く報告されているスポーツ

体の接触が多いラグビー、バスケットボール、ハンドボールなどでは多発しています。

(令和3年学校歯科医会会雑誌No2参照)

 

そのため、歯科医としては、スポーツ用マウスピースを「可能であれば」というより、「ぜひとも」つけていただきたいと考えています。

 

2)口を含む頭頚部のケガ

口を含む頭頚部のケガには、頭頚部の外傷(打撲、切り傷、歯のケガもここに含まれる)から、脳震盪、脊髄損傷など重篤なものもあります。

 

脳震盪など重篤なものの場合、動かさない方がよい場合も多いです。
まずは命に係わるものかどうかを判断しましょう。

 

歯科医院でも、けがした部位のみではなく、顎骨等のチェックも行っています。

 

実際、介在骨折というパターンで、打った部位ではない場所が骨折している(顎の下を打った、顎関節部が折れていた、など)ということがあります。

このような大きなけがの場合、大学病院などでの処置となります。

 

3)ぐらついている歯の処置

歯を打った場合、ほとんどすべての歯で振盪といわれる状態になっています。

 

歯は歯槽骨に、歯根膜といわれる血管、繊維で繋がっています。

揺れている場合は、その歯根膜のどこかに亀裂、断裂が起きています(これが振盪)。

 

その断裂部位が歯根の先端部分であれば、歯の歯髄が壊死して後日変色が起きます。

 

見ただけでは断裂部位は判断できません。

歯髄の活性によっては歯髄壊死が起きない場合もあるので、歯が揺れている場合は、まず固定して安静にしておくのが重要です。

 

4)歯が欠けた場合

前回にも少し記載していますが、大きく3パターンに分けられます。

 

・軽度の歯冠破折(しかんはせつ:歯の表面が欠けた)

ほんの少し欠けただけなら、様子見することもあります。

歯科用プラスチックで、欠けたところを埋めることもあります。

 

・歯冠破折(しかんはせつ:歯が欠けた~割れた)

神経が出てしまうほどの割れ方をしてしまった場合は、根っこの治療をします。

 

・歯根破折(しこんはせつ:歯の根っこが割れた)

歯の根っこが割れてしまうと、残念ながら抜歯するしかないこともあります

 

ただ、12歳ぐらいの若い歯髄は生命力、治癒力が強く、こちらの想像を超える治り方をする場合があります。

歯髄壊死をしている部分を取り除いてやれば、結果としては歯や歯根の長さはだいぶ短くなったりしますが、なんとか歯として残せることもあります。

 

まとめ

・まずは怪我の内容、体の状態を広い視野で確認しましょう。唾液等で出血は大きく見える場合もあります。

・ぐらぐらしている歯の場合は、まずは固定して安静にすることが重要です。
歯の破折はその折れた部位によって治療方法や予後が異なります。
若い永久歯の場合は、歯根破折など厳しい状態でも残す努力と歯髄の生命反応の結果、残せることもあります。

・外傷は年齢、歯の受傷具合で方針が大きく異なります。
12歳ぐらいのお子さんの場合、受傷状況を教えていただけると治療の参考になる場合が多いです。
また、1度治ったところでも、2度目のダメージは強く出る傾向にあります。
何度もぶつけないように気を付けましょう。

 

いかがでしたか?

けが予防のためにも、スポーツ用のマウスピースはできればつけていただきたいと考えます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

歯の怪我:外傷歯の治療について(シリーズ1)

2022年8月26日

歯の怪我:外傷歯の治療について(シリーズ1)

 

こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。

歯の怪我(外傷)…どんなイメージを持っていますか?

 

怪我はある日突然、起こります。

当院では小中学校が近いこともあり、「急に歯や口を怪我してしまった!」と受診されるケースも多いです。

 

歯の外傷にもいろいろなパターンがあり、一度にすべては書けません。

そこで外傷シリーズとして、よくある歯の外傷のパターンを解説させていただこうと思います。

 

歯の外傷の種類

 

1-1)歯が割れた

 

軽度の歯冠破折(しかんはせつ:歯の表面が欠けた)

ほんの少し欠けただけなら、様子見することもありますし

歯科用プラスチックで欠けたところを埋めることもあります。

 

歯冠破折(しかんはせつ:歯が欠けた~割れた)

神経が出てしまうほどの割れ方をしてしまった場合は、根っこの治療をします。

 

歯根破折(しこんはせつ:歯の根っこが割れた)

歯の根っこが割れてしまうと、残念ながら抜歯するしかないこともあります。

 

1-2)歯がぐらぐらする・抜けた

 

歯の亜脱臼(あだっきゅう:軽い打撲のような状態)

歯を打ってしまったけれど、様子見で大丈夫な状態です。

 

歯の脱臼(強い打撲のような状態~歯が抜けかけた状態)

歯を打って、ぐらぐらしてしまっている状態です。

歯が植わっている歯槽骨(しそうこつ)にダメージを受けています。

従って、動揺している歯では固定が必要です。

ワイヤーで添え木を行って固定します。

 

それでも歯の神経や血管がダメージを受けており、後で歯の変色が起きる場合も。

変色が起きたら根の治療が必要となる場合が多いです。

 

歯の嵌入(かんにゅう:歯が歯茎にめり込んでしまった)

大人ではほぼ起きません。子どもの外傷でよく見られます。

子どもであっても、嵌入(かんにゅう)した歯が永久歯の場合は、とても予後が悪いです。

乳歯の場合は、ふたたび生えてくることを期待して様子見することが多いです。

 

歯の脱落(歯が抜けた)

再植(さいしょく:抜けた歯をもとの歯茎に戻すこと)が可能な場合もあります。

歯の保護液(学校の保健室にあることがあります)や、牛乳、お口の中(唾液)に漬けた状態でなるべく早く歯科医院に受診してください。

抜けた歯を水道水で洗ってしまうと、歯の根っこの表面の細胞が死んでしまうことで、歯を戻せなくなってしまいます。

 

歯の外傷の予後と考え方(文化や国などによる)の違い

 

歯の予後について

 

生えたばかりの歯の怪我は、乳歯でも永久歯でも、予後はあまりよくありません。

生えかけの歯の根の先は未完成で、「歯になっていく組織」がそこに存在しています。

歯になっていく組織は出血しやすく、多めに出血すればその歯の予後は悪化しやすい傾向にあります。

 

小さなお子さんの怪我は突然起こってします。

怪我をしたら、治療は待ったなしです。

まずトレーニングして、歯科医院に慣れてから歯科治療する、といったことはできません。

お子さんが号泣する中、出血を伴う治療をがんばってもらうしかないケースも、少なくありません。

 

予後に対する国ごとの考え方の違い

 

契約社会のアメリカでは、予後が不安定な乳歯では、抜歯となることが多いようです。

一方日本では、なるべく残す方向で、まず考えてみることが多いです。

医学的にはどちらも間違っていない判断だと思います。

 

次に、低年齢のお子さんの怪我のよくパターンについて、お話していきます。

 

1~2歳児の歯の外傷の代表的パターン:歯の嵌入(かんにゅう)

 

Aくんは、1歳半の男の子。

まだ歩きは覚束なく、公園で遊具に顔から激突してしまいました。

上唇と上の前歯の歯茎から出血があり、生えたばかりの乳前歯が2本、歯茎にめり込んでしまいました。

 

この年齢の外傷の、かなり代表的なパターンです。

 

歯が歯茎にめり込んだ状態(陥入:かんにゅう)は、その歯の周囲骨の広い範囲に骨折が起きている状態です。

 

永久歯の嵌入(かんにゅう)

永久歯では、上にも書きましたが、最も予後が悪いとされています。

永久歯の治療は、めり込んでいる歯を定位置まで引っ張り出し、歯の根の治療をして、歯の定着を待ちます。

 

乳歯の嵌入(Aくんのケース)

乳歯では少し状況が異なります。

 

幼児の骨は柔らかく、生えた直後ぐらいの歯であれば、80%くらいの歯が、自然に生え直してくるようです。

ただし、生え直してきた歯にも、なんらかの症状がみられることが多いです。

 

50%くらいは、無症状か、神経の部分が歯の質に置き換わってしまう歯髄狭窄(しずいきょうさく)という状態(治癒の1パターンとも考えられます)になります。

残りの50%くらいは、根っこの治療が必要となります。

 

乳歯の場合は、めり込むぐらい骨にダメージがあった割には、良い治り方をすることが多いんですね。

 

まとめ

 

・動揺している歯では、歯の周囲の歯槽骨にダメージがあります。
治療は、ワイヤーで添え木を行って固定します。
それでも歯髄につながる神経、血管がダメージを受けて、後日歯の変色が起きる場合があります。
その場合、根の治療が必要になります。

 

・小さなお子さんの場合、けがは突然起こります。
出血や根の完成度により予後は異なります。
日本ではなるべく残す努力をしますが、海外では不安を残さないため抜歯をすることもあります。
文化や国により考え方が異なります。

 

・歯の陥入(かんにゅう・めりこむこと)は広範囲に歯槽骨の骨折が起きています。
永久歯では最も予後が悪いとされています。
乳歯では少し状況が異なり、再萌出(さいほうしゅつ・また生えてくること)する場合があります。

 

歯の外傷は、年齢、歯の受傷具合で方針が大きく異なります。

早く治療することで、その後の予後が変わることもあります。

まずはお電話で、できるだけ早くご相談ください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

歯科のレーザー治療ってどんなことをしているの?

2022年4月28日

歯科のレーザー治療ってどんなことをしているの?

~音が小さい、痛みが少ない、治癒が早い歯科治療を実現するレーザー治療とは~

こんにちは、つぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。

 

つぼい歯科クリニックではレーザー設備を導入しております。

お子さんの治療でも使うこともあるのですが、従来の治療法と比較して痛みが少なかったり、治癒が早いなど、良い特徴をたくさん持っています。

回は小児歯科範囲が中心ですが、レーザーを用いた治療について解説してみようと思います。

 

レーザー治療のメカニズム

 

レーザー治療とは、強い力を持った特殊な光を患部に照射して行う治療です。

組織に吸収された光が熱エネルギーに変化し、分子構造を破壊や変化して患部に作用し、治療効果をもたらします。

 

かなり強い力で照射した場合、レーザーはそれこそレーザービームとして、皮膚など組織切開や、時間はかかりますが虫歯部分の処置(切削ではなくて蒸散:散らして病原性をなくす)ことができます。

一方で、弱めの力で照射した場合や切開部位の周囲では、温熱・光線作用が働き、止血効果や、細胞の活性化、殺菌作用が期待できます。

 

人体に作用する治療法には、外科的な方法や、薬物などの内科的な方法だけでなく、温熱、光線などを用いた方法が昔から存在しました。

レーザー治療は温熱・光線療法の良いとこ取りしたような治療法であるといえます。

 

2)小児歯科でのレーザー治療

 

①小帯などの切除

小帯が歯並びの悪化の原因(空隙歯列など)の場合、上唇小帯や舌小帯などの筋を切った方がいい場合があります。

レーザーで切開すれば、出血や縫合する量が減らすことが可能で、通常の治療法よりも治癒も早くなります。

 

②歯を折ってしまった場合

転倒などの事故で歯を折ってしまった場合、神経が少し出てしまっている場合があります。

根が未完成の場合、神経の処置を大きく行うことは勧められません(状況によりますが)。

このような場合にレーザーを用いると、止血効果、殺菌効果、鎮静効果が期待できます。

 

③根未完成な歯の根の治療

外傷や虫歯の治療の結果、不幸にも、根が未完成にもかかわらず、痛めてしまう場合があります。

一般的に根未完成の治療は直りが悪く、痛みが出やすいです。

その理由は悪い部分は取り除く必要があるが、取りすぎると根周囲の根を完成させる細胞にダメージを与え、そこに細菌が増殖しやすいためです。

お互いが関係しているため、なかなかバランスが取れません。

そこにレーザーを用いると、治癒力が期待できるため、あまり触りすぎずに治せる可能性があります。

 

④小さな虫歯やしみる部分の処置

乳歯や生えたての幼若永久歯は、完成した永久歯と違って、タンパク成分が多く含まれます。

そのため、歯の象牙細管内での変動が起きやすく、しみたりしやすいです。

 

また、歯が柔らかいため、虫歯の進行が早いという特徴があります。

そういう部分でタンパク成分を変性させて固定化し、治癒効果を向上させるためにもレーザーは向いています。

 

子どもにレーザー治療をすると、大人よりも痛みが強く出てしまうケースもある

お子さんの治癒力はかなり驚くべきものがありますが、体がその許容量を超えた場合、一般的に炎症や痛みは大人よりも強く出るという特徴があります。

そのため、炎症や痛みの対策は、可能な限りの工夫や処置が必要です。

 

レーザーは、通常の器具で虫歯を削るよりも時間がかかかることや、スムーズに削れるわけではないなど、欠点が無いわけではありません。

しかし、メリットも多いため、レーザーを使用した方が良い症例では積極的に取り入れています。

 

まとめ

  • レーザーを用いた治療では、外科的な処置と光線・温熱療法を組み合わせたようなことが可能となり、止血効果、殺菌効果、鎮静効果などが期待できます。
  • 小児歯科領域では、外科的な処置、根未完成な歯の処置など適応範囲が多いです。
  • 時間がかかるとか、歯など硬組織には適応がやや難しく、なかなか削れないなどのデメリットもありますが、治療においてよい効果が期待できます。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

歯が生えてこない?

2022年3月28日

歯が生えてこない?

 

こんにちは、つぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。

今回は歯の生え変わりをテーマにお話していきます。

 

つぼい歯科クリニックでは、必要に応じて顎全体を確認できるエックス線写真(パノラマエックス線写真)を撮影します。

X線写真では、虫歯や歯周病、そしてお子さまの場合は歯の生え方について。異常がないかどうかを確認しています。

お子さまの乳歯が抜けた後に、なかなか永久歯が生えてこない場合には、保護者の方も「どうなっているんだろう?」とご心配になりますよね。

 

乳歯が抜けた後、なかなか永久歯が生えてこない場合には、以下の2パターンがあります。

  • 骨の中の永久歯は正常であるけれども、なかなか生えてこない場合
  • 何らかの異常があり、問題があって処置が必要な場合

くわしくご説明していきます。

 

 歯の生え変わりは歯によって時期が決まっている

歯の生え変わりの流れ

 

通常は6歳ごろ、下の前歯(A)から生え変わりはじめます。

次に、上の前歯が続き、第一大臼歯が生えます。

その後、しばらく停滞します(1年~2年)。

9~10歳ごろから乳犬歯、乳臼歯が一気に抜けていきます。

 

1)永久歯が生えてこなくても様子を見ていい場合

上の乳前歯は指しゃぶりしていたり、何回か打った(ケガをした)ことがあるような場合は早めに抜けてしまうことがあります

傷は一度完全に治ってしまうと、皮膚や骨が固くなって、1年ぐらい生えてこないこともあります。

定期的なレントゲン検査で、順調に萌出にむかって育っているかはチェックしないといけませんが、経過観察のみの場合も多くあります。

 

2)スペース確保(=隙を保つ)のための装置が必要な場合

乳臼歯(奥歯の乳歯)が大きな虫歯になった場合、残念ながら早めに抜けてしまうことがあります。

 

6歳臼歯は隙間があれば前へ移動する性質があります。

つまり、本来あるべき乳歯が早く抜けることで、永久歯が生えてくるために必要なスペースがなくなってしまいます。

よって、早くに抜けてしまった乳歯のスペースに永久歯が生えてこれるように、スペースの確保の治療(保隙:ほげき)が必要になります。

 

保隙の治療は1本ぐらいの場合は保険が適応となる症例もあります。

 

また、6歳臼歯が生える方向に問題がある場合、乳歯が悪影響をうけて、乳歯も早めに抜けてしまうことがあります。

後継永久歯がなかなか生えてこない場合、奥歯であれば周囲の歯が動いてしまうので、スペース確保が必要です。

 

3)永久歯が生えてくるように積極的な処置が必要な場合

永久歯の歯根は、完成するまでは萌出する(ほうしゅつ:歯が生えてくること)力があります。

しかし、歯根が完成してしまうと、萌出する力はなくなります。

宇宙ロケット発射ブースターみたいなイメージですね。

 

永久歯の萌出はかなり繊細なメカニズムです。

ほんの少しの邪魔がある場合も、なかなか生えないと言われています。

永久歯の萌出する道筋に邪魔がある場合(具体的には異常な乳歯や歯牙種、過剰歯など)や、歯根が完成してしまったけれども、生えてこない場合は、治療が必要となります。

 

治療は具体的には、

  • 邪魔をしている乳歯や過剰歯などの抜歯
  • 生えてこない永久歯の上の部分の骨や歯肉に穴をあける(開窓処置)
  • 生えてこない永久歯にボタンをつけて、口の中にむけて引っ張ったる(牽引)

などを行います。

 

いずれにしても、レントゲン検査で1)~3)のどれになるか判定を行います。

「あれ?永久歯が生えてこないな?」と思われる方は、お気軽にご相談ください。

 

まとめ

  • 乳歯では、歯の萌出には正しい時期と順番があります。
    レントゲンの診査によって、経過を見守るのみの場合、スペースを保って様子を見る場合、積極的な処置が必要な場合に分けられます。
  • 奥歯の乳歯の早期脱落の場合、なかなか次の永久歯が生えてこないので、スペース確保するための保隙装置が必要な場合があります。
  • 永久歯の萌出は、歯根が完成するまでがリミットであり、処置できる時期が限られます。
    萌出を邪魔する異常な乳歯、歯牙種、過剰歯などがあった場合、積極的な抜歯や小手術が必要です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

固いものを食べたら顎が発達するというのはホント?子どもの発達と食べ物の固さについて

2022年2月27日

固いものを食べたら顎が発達するというのはホント?子どもの発達と食べ物の固さについて

 

こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。

最近、小さなお子さんの保護者の方から、よく食事のことなど質問されます。
特に「うちの子、固いものを食べないんです」といった質問が多いです。
食べることは生きることに直結しており、特に子どもでは、発達が摂食嚥下に大きくかかわります。

そこで今回は歯から「食」、特に固いものについてお話していきます。

1)小児の発達と食の形態について

一般的に、離乳食のはじまる時期は生後5-6か月です。
そのころの離乳食は、おかゆ的な、流し込むようなものが多いです。
舌も前後にしか動きません。

離乳中期と言われる、生後7-8か月では、歯茎で押しつぶせる程度の固さが良いとされています。
舌も上下でも動くようになります。

1歳半程度までくると、第一乳臼歯(D)まで生えてきます。

このころになると、赤ちゃんの空間認識能力が進み、上手にスプーンを向かい入れるようになります。
そのため、ある程度の食感があるものが望ましいとされています。

離乳が終わると手づかみ食べの時期となり、一般食となります。

成長に合わせた食形態で食べられないと・・・

これらの時期に適切に食べられてないとどうなるでしょうか?

結果は、詰め込み、丸呑みとなってしまいます。

時期によっては喉に詰まって窒息しそうになる場合もあります。

離乳期の赤ちゃんが丸呑みしてしまう原因

離乳期の赤ちゃんが丸呑みしてしまう原因には、

  • お腹が空いていない、または、お腹が空きすぎている
  • 食事形態が適切でない

などが考えられています。

常に失敗してしまう場合は、焦らずに離乳にむけての食形態を一段階前に戻すことも大事です。
食事の形態を考え、本人の発達を待ちましょう。

また、子どもは他人の観察で学習します。
大人や兄弟などと一緒に食事をする経験や、いろんな食材を食べる経験が大事です。

2)固いものを食べると顎(あご)が発達するというのはホント?

あごが小さなお子さんの場合に、「固いものを食べたら顎が大きくなりますか?」という質問がよくあります。

固いものを食べたら、ほんの少し大きくなる可能性はあるようですが、誤差の範囲と言われています。
歯列不正が解消されるまでに、顎が大きくなることは無いようです。

一方で、固いものを食べることで、顎の周囲の筋肉が発達し、咀嚼が上手になる効果があります。
異常嚥下や、それに伴う歯列不正(歯並びが悪くなること)は減少したり、改善したりする可能性があります。

3)食べ物の固さと食べ方について

咬む(かむ)というのは、大雑把にわけて2パターンに分けられます。

  • チョッパータイプ・・・食材を噛んで(かんで)切り分けること
  • グラインディングタイプ・・・食材をすり潰すこと

あまりにも固い食べ物は、前歯でなく奥歯で切り分けるという作業を無理やりやっている場合が多いです。
そのため、老年期では歯や歯周組織に対してダメージを与えてしまう場合があります。

大人でも咬み切れなかった食材は、丸のみせざるを得ず、これはよくありません。

4)食文化によって食べ方が変わる

口の構造や食べ方は人種や国の違いが出ます。

日本人が多めに食べてきた食材は、噛み応えがあると言っても、すり潰せる食材(穀物など植物性由来のもの)が多めです。
文化の違いや食べ方の違いも楽しみながら、孤食(こしょく:一人で食事をとること)を避けて、豊かな食生活を考えていきましょう。

まとめ

いかがでしたか?

  • 小児においては、歯の萌出や発達と共に食事の形態は変える必要があります。
    発達に合わせていかないと、食塊を上手に分解できず、丸呑みになってしまう可能性があります。
  • 固いものを食べることにより、顎周囲の筋肉の発達や咀嚼運動の上達が期待できますが、顎が大きくなることは無いようです。
  • 老年になるとあまりに固すぎるものは、奥歯で切り刻む動きを無理にするため、歯周組織にダメージを及ぼす場合があります。我々も文化の違いや食材の違いもふまえながら、適切な、豊かな食生活を考えましょう。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

虫歯のなりやすさと体質について

2022年1月14日

岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。

現在、当院には虫歯予防に努力してくださっている方が多く通院してくださっています。
とてもうれしく思っています。
以前に作ってしまった、削るほどではない初期虫歯を管理するのも、我々歯科医師の重要な役目です。

参考リンク:削らなくても治る虫歯があるって本当?

削らなくても治る虫歯があるって本当?

 

しかし、残念ながら、虫歯ができてしまう方もおられます。
そこで今回は、お子さんの虫歯のなりやすさと体質を中心にお話していきます。
大人はまた少し違うので、またいつか解説します。

1)虫歯のなりやすさを左右する因子

キースの輪

歯科医師が大学で最初に習う、キースの輪と呼ばれる虫歯の原因因子同士の重なりを示すものがあります。

画像参照https://www.apagard.com/oralpedia/oralcare/details/Vcms4_00000101.html

細菌、歯質、糖分、時間の重なりで、多く重なるとリスクが高まります。
最近の統計学的なアプローチで検討している論文では、虫歯の原因因子の重要度ランキングでは

1位 唾液量
2位 乳歯う蝕の経験歯数
3位 菌の量
4位 プラーク(歯垢)量
5位 飲食回数
6位 フッ素使用頻度

という順でした。

個人的な感覚にはなりますが、この他に虫歯の重症度(大きさ)なども、重要だと考えています。

2)小児と唾液について

イグノーベル賞という、人々を笑わせ、考えさせられるユニークな研究などに贈られる賞があります。
2019年のイグノーベル賞に、小児の一日唾液量を研究した、という明海大の渡部教授の研究がありました。

専門外の方にとっては、『なぜ小児の一日の唾液量を知りたいと思ったのか』が笑いポイントなのでしょうが、歯科医師、特に小児歯科医師にとっては「知りたかった!」という重要な研究です。

それによると、小児(6歳児)の唾液量は500mlで、成人よりも若干少ないという結果でした。

大学病院勤務時代、小児がんなどのため、抗がん剤を投薬されていたお子さんたちの口腔内を診察する機会がありました。
唾液量や唾液の緩衝能(虫歯を防ぐ効果です)などが低く、虫歯リスクはどうやっても高いままでした。

抗がん剤ほどではありませんが、多くの薬で、唾液量の減少が見られることが知られています。
薬を常用している場合は注意が必要です。

3)歯質と虫歯リスクについて

学校健診などでは、細菌が原因でなくても歯の状態が悪ければ、う蝕と診断されます。
特にエナメル質形成不全は虫歯と診断され、最近よく見かけます。

エナメル質形成不全についてはこちら
参考リンク:エナメル質とその形成不全について~治療と原因~

エナメル質とその形成不全について~治療と原因~

ちなみに近年の発表では、エナメル質形成不全の歯が一本でも見られる人の発生率は20-25%にも昇るようです。
4-5人に1人はそういう歯をお持ちの割合になります。
また、黄色人種はそのほかの人種に比べてエナメル質が薄い傾向にあり、虫歯が進行しやすく注意が必要です。

まとめ

  • 細菌、歯質、糖分、時間のリスクが重なり、虫歯ができます。
  • 虫歯の原因因子は、唾液量、乳歯う蝕の経験歯数、菌の量、プラーク量、飲食回数、フッ素使用頻度などがあります。
  • 唾液量、歯質などは個人差が大きいですが、総じて日本人は歯が強くない傾向にあります。

以上のような要素を考えながら、予防対策を行うことが重要です。

診療室では、虫歯に最もなりやすい人に対しても、なりにくい方法を考えます。
そして、その対策を説明しています。

「チョコ止めましょう」
「グミやめましょう」
「そろそろ卒乳が必要です」
など、飲食習慣の改善も含めたお話になることもあります。
そのため、少し厳しく聞こえる場合もあるかもしれません。

しかし、個人の体質や虫歯リスクに対して、最も効果的な予防や処置を行うことが重要と思っています。

ご不明な点や、虫歯予防について話が聞きたい場合は、お気軽におたずねください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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