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プレオルソでこどもの受け口は治せる?

2026年9月16日

岩国市 受け口 プレオルソ
岩国市 小児矯正 プレオルソ

こんにちは。医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。

今回は、プレオルソを使ったこどもの反対咬合(はんたいこうごう:下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせ)の矯正治療についてお話しします。反対咬合は『受け口』とも呼ばれ、下顎前突(かがくぜんとつ:下顎が上顎より前方に出ている状態)を伴うこともあります。

先に結論を知りたい方へ

プレオルソで改善を目指せる受け口もあります。ただし、すべての反対咬合に適しているわけではありません。

歯の傾き、顎の骨格や成長方向、舌の使い方などを確認したうえで、治療方法を判断します。

知りたい内容から読む

※掲載する症例は、患者さんと保護者の方の同意を得たうえで、個人が特定されないよう配慮しています。治療結果には個人差があります。

1)反対咬合(受け口・下顎前突)は遺伝的な要因が関係することがあります

反対咬合(下顎前突)は、不正咬合(ふせいこうごう:歯並びや噛み合わせに問題がある状態)の中でも遺伝的な要因が関係しやすいと考えられています。

親子や兄弟姉妹など、同じ家族の中に反対咬合の人がいることは珍しくありません。ご両親に受け口がなくても、祖父母や親戚に同じような骨格的特徴がみられることもあります。

反対咬合の家族性を説明するとき、歴史上の有名な例として挙げられるのが、ヨーロッパの王家であるハプスブルク家です。

ハプスブルク家の人々を描いた肖像画には、下唇や下顎が前方へ出て見える特徴的な顔立ちが、何世代にもわたって描かれています。この特徴は、歴史的に「ハプスブルク家の顎(Habsburg jaw)」と呼ばれてきました。
岩国市 受け口 プレオルソ

ハプスブルク家では、王家の血統や領土を維持するため、血縁関係の近い人同士の結婚が繰り返されました。その結果、顎や顔立ちに関する遺伝的な特徴が、家系内で現れやすくなった可能性があると考えられています。実際に、ハプスブルク家15名を描いた66点の肖像画を、複数の顎顔面外科医が評価した研究があります。この研究では、『ハプスブルク家の顎』には下顎前突だけでなく、上顎の成長不足も関係している可能性が示されています。

参考文献:Vilas R, et al. Is the “Habsburg jaw” related to inbreeding? Annals of Human Biology. 2019.

2)反対咬合には、舌の位置や使い方も関係します

多くの反対咬合のお子さんを診察していると、骨格や歯の傾きだけでなく、舌の位置や動かし方にも特徴がみられます。

舌は何もしていないとき、先端が上の前歯のすぐ後ろ付近にあり、舌全体が上顎の内側へ軽く触れている状態が望ましいとされています。

正常
岩国市 小児矯正 プレオルソ

一方、受け口のお子さんでは、舌が低い位置にあり、下の前歯を前方へ押すような動きをしていることがあります。

低位舌(ていいぜつ:舌が本来より低い位置にある状態)
岩国市 小児矯正 プレオルソ

また、話し方や食べ方、飲み込み方は、幼少期に家庭内で身につけていくものでもあります。

顎や舌の形といった遺伝的な要素に、家庭内で身につく発音や食べ方などの環境的な要素が重なることで、兄弟姉妹に似た口の使い方や噛み合わせが現れる可能性があります。

ただし、舌の位置だけが反対咬合の原因とは限りません。骨格や噛み合わせの影響で、結果として舌が低い位置(低位舌)になっていることもあります。

そのため当院では、歯並びだけでなく、舌の位置や動き、飲み込み方、発音なども確認します。必要に応じて、MFT(口腔筋機能訓練)を行っています。
岩国市 小児矯正 プレオルソ

関連記事 MFT特集その7 舌癖と歯列不正のメカニズムについて

https://tsuboidental.com/blogs/archives/6811

3)反対咬合は思春期に悪化することがあります

反対咬合には、思春期に身長や手足が伸びる時期とともに、下顎の成長が目立ってくることがあるという特徴があります。

そのため、思春期を迎える前に前歯の反対咬合を一度改善し、上顎や永久歯が正常に成長しやすい環境を整えておくことは、将来の噛み合わせを考えるうえで大切です。

上下の前歯の噛み合わせがいったん正常になれば、噛むことそのものが「上の歯が下顎を引っ込め、下の歯が上の歯を外側に押す」という矯正力として働くためです。

その後の思春期成長で、反対咬合が再発したとしても、小児期に一度も治療しなかった場合とくらべて軽症で済む可能性が高いのです。その結果、将来的に顎の骨を手術で動かす外科的矯正治療を避けられる場合もあります。

もちろん、幼少期に治療を行えば、将来の骨切り手術(顎の骨を手術で動かす外科的矯正治療)を絶対に回避できるわけではありません。下顎の成長そのものを完全に止めることはできないため、早期に反対咬合が改善しても、思春期以降まで経過を確認する必要があります。

それでも、将来の悪化を少しでも抑えるため、成長期の治療は大切な選択肢だと考えています。

4)反対咬合の特徴をおさらい

反対咬合には、主に次のような要因が関係します。

  • ・上の前歯が内側へ傾いている
  • ・下の前歯が外側へ傾いている
  • ・上顎の成長が小さい
  • ・下顎の成長が強い
  • ・噛み合わせによって下顎が前方へ誘導されている
  • ・舌の位置や口周りの筋肉の使い方に偏りがある

実際には、1つの要因だけでなく、複数の要因が重なっていることもあります。

歯の傾きが中心となっている反対咬合と、上下の顎の骨格差が大きい反対咬合とでは、治療方法も将来の見通しも異なります。そのため、「受け口だから同じ装置で治療する」のではなく、原因を見極めるための診断が重要です。

5)プレオルソとは?

岩国市 小児矯正 プレオルソ

プレオルソは、主に成長期のこどもに使用する、やわらかい素材でできたマウスピース型の矯正装置です。

歯を1本ずつ細かく動かす成人用のマウスピース型矯正装置とは、役割が異なります。プレオルソは、口周りの筋肉や舌の使い方を整えながら、噛み合わせや歯並びの改善を目指します。

一般的には、日中の1〜2時間と寝ている間に装着します。ただし、必要な装着時間や使用期間は、お子さんの年齢、症状、使用する装置によって異なります。

また、プレオルソだけですべての反対咬合を治療できるわけではありません。前歯をより積極的に動かす必要がある場合や、歯列の形を整える必要がある場合には、固定式の装置を併用することがあります。当院でも、プレオルソに加えて、歯の裏側に装着する固定式装置のリンガルアーチや、上顎の歯列を横に広げる固定式装置のクワドヘリックス、MFT(口腔筋機能訓練)を症状に応じて組み合わせることで、より良い成果を上げています。
岩国市 小児矯正 プレオルソ

6)プレオルソと相性のよい反対咬合とは?

顔や顎の成長方向には個人差があります。

矯正歯科では、顔が縦方向に成長する傾向を『ドリコフェイシャル』、横方向の幅があり、噛む力が強く、深い噛み合わせになりやすい傾向を『ブラキフェイシャル』と呼ぶことがあります。

ドリコフェイシャル傾向

  • ・顔が縦長になりやすい
  • ・噛み合わせが浅い、または前歯が噛み合わない開咬になりやすい
  • ・歯が並ぶスペースが不足しやすい
  • ・治療によって噛み合わせの高さが増えすぎないよう注意が必要

ブラキフェイシャル傾向

  • ・顔の横幅が比較的広い
  • ・噛む力が強い傾向がある
  • ・噛み合わせが深くなりやすい
  • ・顎関節や歯に強い力が加わることがある

プレオルソを含むマウスピース型の装置は、深い噛み合わせを浅くすることが得意です。つまり、お子さんがブラキフェイシャル傾向の場合、プレオルソとの相性が良いのです。
岩国市 受け口 プレオルソ

一方、縦方向への成長が強いお子さんでは、噛み合わせがさらに浅くなったり、顔の縦方向の成長が強くなったりしないか、慎重に確認しながら使用する必要があります。

装置がお口の状況に適しているかどうかの選択は、見た目だけでは判断できません。当院では、お口の中の診査やレントゲン検査、必要に応じたセファロ分析(頭部のレントゲン写真を使って、顎の大きさや位置、成長方向などを調べる検査)などをもとに治療方法を検討します。

7)この記事のまとめ

  • ・反対咬合は、下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせです。
  • ・反対咬合には、歯の傾き、顎の骨格、遺伝、舌の使い方などが関係します。
  • ・プレオルソだけでなく、リンガルアーチやMFTを組み合わせる必要がある場合があります。
  • ・早期治療には、前歯の噛み合わせや顎の成長環境を整える目的があります。
  • ・治療後も思春期の下顎成長を確認するため、長期的な経過観察が必要です。

8)よくある質問

Q1.こどもの受け口は、自然に治ることがありますか?

乳歯の生え方や噛む位置によって一時的に反対咬合に見えるケースでは、成長や歯の生え変わりに伴って改善することがあります。

しかし、自然に改善するかどうかを家庭で判断するのは困難です。骨格的な要因がある場合や、下顎を前方へずらして噛む習慣がある場合には、早めに診断を受けることをおすすめします。

Q2.何歳から相談するのがいいですか?

乳歯が生えそろい、反対咬合が確認できる3〜5歳頃からご相談いただけます。

ただし、診断を受けたら必ずすぐに装置を使用するわけではありません。お子さんの成長、症状、装置を使用できるかどうかを確認し、治療開始時期を検討します。

Q3.プレオルソだけで受け口を治せますか?

プレオルソだけで改善を目指せる症例もありますが、すべての反対咬合に対応できるわけではありません。

前歯を積極的に動かす必要がある場合には、リンガルアーチなどの固定式装置を併用することがあります。骨格的な問題が大きい場合には、別の治療方法を検討します。

Q4.プレオルソは1日に何時間使用しますか?

一般的には、日中の1〜2時間と寝ている間に使用します。

ただし、具体的な装着時間は、お子さんの症状や治療計画によって異なります。当院では、診断後に使用方法をご説明します。

Q5.治療期間はどのくらいですか?

前歯の反対咬合の改善には、半年〜1年程度かかることがあります。ただし、症状や成長の状態、装置の使用状況によって治療期間は異なります。

前歯の噛み合わせが改善した後も、永久歯への生え変わりや思春期の成長を確認するため、長期的な経過観察が必要です。

Q6.プレオルソの治療は痛いですか?

装置を使い始めた直後には、締めつけられる感じや歯や顎の違和感が生じることがあります。また、唾液が増えたり、話しにくくなったりすることもあります。

通常は使用に慣れるにつれて軽減しますが、強い痛みや粘膜の傷がある場合には、装置の調整が必要です。

Q7.MFTとは何をする治療ですか?

MFTは「口腔筋機能訓練」といい、舌、唇、頬などの筋肉を適切に使うためのトレーニングです。

お子さんの正常な発達を促すために、舌の安静時の位置、飲み込み方、口の閉じ方などを、さまざまなトレーニングを通して身につけていくプログラムです4歳~12歳の間であれば、口呼吸を鼻呼吸に改善したり、矯正の後戻りを引き起こす良くない舌癖などの改善をめざすことができます。MFTだけで骨格的な反対咬合を治すものではなく、必要に応じて矯正装置と組み合わせて行います。

Q8.両親が受け口でなくても、こどもが受け口になることはありますか?

あります。

顎や歯並びに関係する特徴は、両親だけでなく祖父母などから受け継ぐことがあります。また、遺伝以外にも、歯の生え方、顎の成長、舌や口周りの筋肉の使い方などが関係します。

Q9.早く治療すれば、将来の手術を避けられますか?

早期治療によって現在の噛み合わせを改善し、顎が成長しやすい環境を整えることはできますが、将来の外科手術を絶対に避けられるわけではありません。

下顎の成長が非常に強い場合や、上下の顎の骨格差が大きい場合には、成長終了後に外科的矯正治療が必要になることがあります。

Q10.治療後に受け口へ戻ることはありますか?

あります。

とくに骨格的な下顎前突では、思春期の下顎成長によって反対咬合が再び現れることがあります。そのため、前歯の噛み合わせが改善しても、成長終了まで定期的な確認が必要です。

9)お子さんの受け口が気になる方へ

反対咬合は、見た目だけで自然に改善するか、早めに治療を検討した方がよいかを判断することは困難です。

また、同じ受け口でも、プレオルソが適しているお子さんもいれば、別の装置や経過観察が適しているお子さんもいます。

当院では、歯並びだけでなく、顎の成長方向、永久歯の状態、舌や口周りの筋肉の使い方まで確認したうえで、治療の必要性や開始時期をご説明します。

「乳歯だから、まだ様子を見てよいのか分からない」

「家族に受け口の人がいるので心配」

「プレオルソがこどもに合うか知りたい」

このような場合は、まずは無料矯正相談をご利用ください。

無料矯正相談について詳しく見る https://tsuboikyousei.com/soudankai/

当院の小児矯正について詳しく見る https://tsuboidental.com/pediatric/

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

次回は、実際にプレオルソで反対咬合を改善した3症例について、解説します。

ぜひ、次回の記事もご覧ください。

生えたての永久歯の根管治療について ――歯根の完成を目指した2症例

2026年8月29日

こんにちは。岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 小児歯科専門医で副院長の吉村です。

突然ですが、「幼若永久歯(ようじゃくえいきゅうし)」という言葉を聞いたことはありますか?

幼若永久歯とは、生えてから間もなく、歯根や歯質がまだ十分に完成していない永久歯のことです。一般的には、歯が生えてから2〜3年程度の永久歯を指します。

今回は、こどもの生えたての永久歯である「幼若永久歯」について解説します。6〜12歳のお子さんがいる保護者の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

1)生えたての永久歯は、虫歯になりやすく進行も速い

生えたての永久歯は、見た目は大人の永久歯と同じように見えても、歯質がまだ十分に成熟していません。酸に対する抵抗力、つまり「耐酸性能」が低いため、大人の成熟した永久歯と比べて虫歯になりやすく、いったん虫歯になると進行も速いという特徴があります。

場合によっては、数か月で虫歯が神経にまで達することもあります。

また、永久歯にはまれに「中心結節」や「歯内歯」など、虫歯や神経の炎症につながりやすい特殊な構造がみられることがあります。そのため、きちんと歯磨きを頑張っていても、虫歯になってしまう場合もあります。

2)生えたての永久歯の根管治療はとても難しい

生えたての永久歯と、大人の成熟した永久歯との大きな違いは、主に次の2点です。

1つ目は、先ほどご説明したとおり、歯質がまだ十分に成熟しておらず、虫歯の進行が非常に速いことです。

2つ目は、歯根がまだ完成していないことです。

通常、大人の永久歯では歯根や根管が完成しています。そのため、根管治療では、感染した組織や細菌をできるだけ取り除き、根管内を清潔にしたうえで密閉し、再治療のリスクを減らすことが重要になります。

一方、歯根が完成していない「根未完成歯」では、根の先端が大きく開いています。この状態で歯髄炎や根の先の炎症を起こすと、治療は非常に難しくなります。

このような歯に対しては、感染を抑えながら、歯根の先端が閉じるように誘導する治療を行います。専門的には「アペキシフィケーション(根尖閉鎖術)」などと呼ばれる治療法です。

左から2番目の歯をご覧ください。
ほぼ歯根が完成しているものの、先端部分はまだ完成していない段階の幼若永久歯の根管治療。他の歯の歯根と比べて、先端(根尖)部分が太く、未完成であることが分かります。

アペキシフィケーション(根尖閉鎖術)で治療終了後。根尖の形は、他の歯のように細くならずに治癒しています。

3)生えたばかりの永久歯を残す治療

近年では、歯科用セメントをはじめとする材料が進化し、生体への親和性に配慮された材料や、根管をより緊密に封鎖できる材料も使用できるようになりました。以前と比べ、生えたての永久歯を残すための治療の選択肢は広がっています。

今回は、治療後の経過をある程度確認できた2症例をご紹介します。

3-1)症例1|9歳女性・歯内歯

3-1-1)「顔が急に腫れた」とのことで来院

この患者さんは、「顔が急に腫れた」とのことで来院されました。

先に相談した近隣の歯科医院でも、腫れの原因がよく分からなかったとのことでした。

当院でレントゲン撮影を行い、歯の状態を詳しく確認したところ、歯内歯が原因になっていると考えられました。

このレントゲンをよく見てみると……

本来、歯の神経が入っている部分に、歯内歯が確認できます。

3-1-2)歯内歯とは?

歯内歯とは、歯の表面の一部が内側へ深く入り込み、歯の内部に袋状の構造ができている歯の形態異常です。

歯を切断して観察すると、歯の中にもう一つ歯があるように見えることから、「歯内歯」と呼ばれています。

出典:https://www.jsop.or.jp/atlas/developmental-anomalies-of-the-teeth/dens-in-dente/

内側に入り込んだ深い溝は、歯ブラシできれいにすることが困難です。そのため、溝の内部に細菌が入り込み、虫歯や歯髄炎を起こしやすい構造といわれています。

歯には動揺があり、頬側の歯ぐきには、たまった膿の排出路もできていました。

抜歯も視野に入る厳しい状態でしたが、ご家族と相談し、まずは歯を残すための治療を行うことになりました。

3-1-3)歯根の完成を目指して治療

治療では、感染した根管内を清潔にしながら、永久歯の根の先端が閉じることを目指すアペキシフィケーション(根尖閉鎖術)を行いました。

歯ぐきにできていた膿の出口は、2回目の診療時には消失しました。


膿を取り除く際には、歯や歯根をつくる可能性のある未分化な細胞まで、一緒に流れ出てしまうことがあります。そのため、感染源は取り除きながらも、必要以上に根の先を刺激したり、膿を過剰に除去したりしないよう配慮しました。

根管内をできるだけ清潔にし、緊密に密閉して経過を確認したところ、5回目頃の診療時から、根管の先端に閉鎖する傾向がみられるようになりました。

治療開始から半年後には、根の周囲にわずかな骨の形成が確認できました。そして、治療開始から4年が経過した現在では、歯根の先端が完成しています。

処置した根管は太いままで、歯の強さには今も少し不安が残ります。しかし、治療前の厳しい状態を考えると、歯根の先端が完成し、永久歯を保存できていることは、非常に良好な結果だと考えています。

3-2)症例2|9歳男性・中心結節の破折

3-2-1)中心結節とは?

中心結節とは、主に小臼歯の噛み合わせ面にみられる、小さな突起状の構造です。歯の形態異常の一つに分類され、特に下顎の第1小臼歯、第2小臼歯に多くみられます。

外見上は、小さな「こぶ」や「ツノ」のように見えます。

中心結節の内部には、歯髄、いわゆる歯の神経が入り込んでいることがあります。そのため、硬いものを噛むなどして中心結節が折れると、神経が露出したり、細菌が入り込んだりする危険があります。

発生率はおよそ1〜4%とされ、日本人を含むアジア人に比較的多くみられる形態異常です。

中心結節は、このような小さな突起としてみられます。

歯の内部構造です。歯の「こぶ」にも神経が通っています。

3-2-2)中心結節が折れてしまうと、歯の神経が露出してしまう

この患者さんは、「乳歯の生え変わりの部分が激しく痛み、泣いている」と連絡をいただきました。

「歯の生え変わりにしては、かなり強い痛みだな」と思いながら診察したところ、乳歯の下で生えてきていた永久歯の中心結節が折れていました。

歯の神経が外に出ると、強い痛みが出ることがあります。また、口の中の細菌が神経に入ると、顔が腫れたり、歯がぐらぐらしたりすることも。

この患者さんも、あっという間に顔が大きく腫れ、歯もぐらぐらした状態になってしまいました。

症例1と同様に、歯根の先端の閉鎖を目指す治療を行いました。

治療開始時には、根の先端がまったく閉じていない根未完成歯の状態でした。そのため、根管内に薬を入れ、慎重に経過を確認しています。

この症例でも、2回程度の治療で痛みや歯の動揺はなくなり、状態はかなり改善しました。


歯根は未完成で、アペキシフィケーション(根尖閉鎖術)を行いました。

3-2-3)半年後も歯根は未完成

治療開始から半年が経過した先日、根管の先端が閉じ始めていることを期待して、もう一度歯の内部を確認しました。

しかし、歯根はまだ未完成で、根の先端が閉じ始める傾向は、まだ十分に確認できませんでした。

治療した部分を再び開けることで、根の先端に残る細胞に感染が生じる可能性があります。一方で、根管内の薬を交換することが細胞を刺激し、根の先端が完成するきっかけになる可能性を示した報告もあります。

この歯根が完成していない原因は、現時点では分かっていません。症例1と比べ、膿を処理した際に、歯根の形成に関わる細胞が多く流出した可能性もありますが、現時点では判断できません。

症例2の歯が今後どのような経過をたどるかは、まだ定まっていません。

これからも慎重に経過を観察しながら、何とか永久歯を残せるよう、できる限りの治療を続けていきます。

4)根未完成歯でも、治療後に歯根が成長することがあります

今回ご紹介した症例以外でも、根管が完成していない永久歯に対しては、感染を抑えながら歯根の先端の閉鎖を目指す治療を行います。

根管治療の終了後、数年たってからレントゲンを撮影すると、歯根の先端が閉じているだけでなく、歯根自体がさらに伸びている場合もあります。

生えたての永久歯、とりわけ根未完成歯の根管治療は、本当に難しい治療です。残念ながら、すべての歯を残せるわけではありません。

それでも、今回ご紹介したような治療によって、治療開始時には残すことが難しいと思われた永久歯を保存できたときは、私たち歯科医師も大変うれしく思います。

生えたての永久歯の痛みや腫れは、早めにご相談ください

もちろん、今回のような状態にならないことが第一です。

生えたての永久歯は耐酸性能が低く、大人の成熟した永久歯より虫歯になりやすいうえ、虫歯の進行も速いという特徴があります。また、歯根が完成していない状態で歯髄炎や根の先の炎症を起こすと、治療が非常に難しくなります。

中心結節や歯内歯のような特殊な構造は、ご家庭で見分けることが難しい場合もあります。永久歯が生えてきた時期には、定期健診で歯の形や生え方を確認しておくことが大切です。

すでに強い痛みや腫れがある場合でも、歯を残せる可能性があります。生えたての永久歯について気になる症状がある場合は、できるだけ早めにご相談ください。

5)まとめ

  • ・生えたての永久歯は耐酸性能が低く、大人の永久歯より虫歯になりやすく、進行も速い傾向があります。
  • ・生えたての永久歯には、中心結節や歯内歯など、神経の炎症につながりやすい構造がみられることがあります。
  • ・歯根が完成していない状態で歯髄炎や根の先の炎症が起こると、治療は難しくなります。
  • ・根未完成歯では、感染を抑えながら、歯根の先端が閉じることを目指して治療します。
  • ・炎症が強い場合には歯を残せないこともありますが、厳しい状態でも保存できる可能性があります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

小児の部分矯正とは?少数歯を短期間で整える「MTM」について

2026年4月23日

岩国市 歯科 部分矯正

 

こんにちは。岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。

今回は、小児の部分矯正についてお話しします。

たとえば、

  • ・この1本だけ、なかなか生えてこない
  • ・12歳臼歯が手前の歯にひっかかって、まっすぐ生えてこない

このように、一部の歯だけにトラブルが起きていることがあります。

こうした場合に行うのが、MTM(マイナー・トゥース・ムーブメント)です。

MTMとは、少数の歯だけを動かして整える部分的な矯正治療のことです。

今回は、実際の症例も交えながら、できるだけわかりやすくご紹介します。

1)全顎矯正と部分矯正

矯正には「全体を整える治療(全顎矯正)」と「一部だけ整える治療(部分矯正)」があります。
岩国市 小児歯科 矯正

1-1)全顎矯正

お口全体のかみ合わせや歯並びを整える治療です。

  • ・ワイヤー矯正
  • ・アライナー矯正(インビザライン、クリアコレクト、SMARTEEなど)
  • ・小児予防矯正(プレオルソ、マイオブレイス、ムーシールドなどの既成マウスピース)
  • ・小児矯正(固定式・取り外し式の拡大装置を用いて、顎の大きさや歯の並ぶスペースを整える治療)

1-2)部分矯正

気になる一部分だけを治療する方法です。

  • ・前歯だけなど、限られた範囲を整える部分矯正
  • ・自然には正しい位置に生えにくい永久歯を、正しい方向へ導く小児部分矯正

2)小児矯正における「全顎矯正」と「部分矯正」の違い

  • お口ぽかん
  • 口呼吸
  • 舌の癖
  • 飲み込み方や姿勢の問題
  • 顎の成長バランス

こうした問題に対して、MFT(口腔筋機能療法)や既成のマウスピース型装置を使いながら、顎全体やお口の機能を育てていく治療は、全体をみる矯正治療にあたります。

一方で、永久歯への生え変わりの時期には、

  • ・歯の生え方のトラブル
  • ・歯が本来と違う場所・向きに生えてくること

といった問題が起こることがあります。

このような場合には、まず特に問題のある1本、あるいは限られた数本の歯を優先して治療することがあります。

全体を一度に動かすのではなく、まずはトラブルの大きい部分を整えることで、その後の治療が進めやすくなることもあるためです。

このような、少数の歯を対象にした矯正治療がMTMです。
岩国市 小児歯科 矯正

3)実際の小児MTM症例

12歳臼歯(第二大臼歯)が斜めに生えてきたケース

ここからは、当院で実際に治療した症例をご紹介します。

この患者さんは、ほかの歯並びやかみ合わせには大きな問題がなかった一方で、12歳臼歯(第二大臼歯)だけが手前の歯にひっかかり、自力ではうまく生えてこられない状態でした。
岩国市 小児歯科 矯正

術前の写真では、12歳臼歯が斜めの方向に傾いたまま生えてきていることがわかります。

このままでは自然な改善が難しいため、その歯だけを対象に矯正治療を行いました。
岩国市 小児歯科 矯正

治療開始から6か月後には、12歳臼歯が起き上がってきて、正しい方向へ近づいています。

この患者さんは、臨床上問題ないレベルまで歯が起き上がったタイミングで装置を取り外し、あとは歯の根っこの完成を見守りつつ、上下の歯が噛み合う中での「噛み合わせの完成」を待つことになりました。

 

僕は大学時代にもよく似た症例を何度も経験しており、実は論文も書いています(大臼歯の近心傾斜および萌出不全に対する効率的な咬合誘導 吉村剛ら 小児歯科学雑誌 47巻5号)。
岩国市 小児歯科 矯正

この症例でも、論文で発表した設計の矯正装置を用いました。
岩国市 小児歯科 矯正

この装置は、

  • ・シンプル
  • ・歯の裏に装置が来るので目立たない
  • ・歯みがきがしやすい
  • ・違和感が少ない

といった特徴があります。

装置装着後、右側の奥歯は約3か月、左側も約6か月ほどで生える方向が修正されました。

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4)第二大臼歯の近心傾斜は比較的よくみられるトラブル

第二大臼歯の近心傾斜は、決して珍しいものではなく、比較的よく問題になります。

今回は、歯列のガタガタや、受け口、出っ歯といった全体的な歯並びの問題がなかったため、この部分的な治療だけで終了しました。

ただし、患者さんによっては、

  • ・歯が並ぶスペースが足りない
  • ・全体のかみ合わせにも問題がある

といったケースもあります。

その場合は、MTMで一部分の問題を改善したあとに、さらに全体の矯正治療が必要になることもあります。
岩国市 小児歯科 矯正

5)当院の矯正治療について

今回は比較的シンプルな装置で改善できた症例でしたが、矯正治療はいつも同じ方法で対応できるものではありません。

大切なのは、矯正の基本原則を踏まえながら、その患者さんに合った方法を考えることです。

当院では、矯正治療について複数の歯科医師が院内でカンファレンスを行い、それぞれの得意分野や治療経験を持ち寄って、よりよい治療法を検討しています。

「この歯だけ、少し気になる」

「自然に生えてくるのを待っていいのか心配」

そのような場合も、まずは一度ご相談ください。

6)まとめ

いかがでしたか?

  • ・矯正治療には、お口全体を整える全顎矯正と、一部だけを整える部分矯正があります。
  • ・小児では、永久歯の生え変わりの時期に、歯の生え方のトラブルや生える位置のずれが起こることがあります。
  • ・そのような場合、まず問題のある歯だけを優先的に治療する方法があり、これをMTM(少数歯の移動)といいます。
  • ・まずは「様子を見てよいのか」「治療が必要なのか」を確認するためにも、早めの相談がおすすめです。

最後までお読みいただきありがとうございました

こどもの歯並び相談は何歳から? 歯科医が答える0歳〜12歳の年齢別Q and A

2026年3月5日

岩国市 歯科 小児矯正
岩国市 歯科 小児矯正
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。

「うちの子、少し受け口気味かも?」

「周りの子は矯正を始めているけれど、うちはまだ早い?」

 

大切なお子さんの歯並びだからこそ、「最善のタイミングで相談したい」と思うのは自然なことです。

でも、いつ歯科医院に行けばいいのか、迷ってしまう保護者の方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、小児矯正には『その年齢でしかできない治療』があり、相談のタイミングはお子さんの成長段階によって異なります。

本記事では、歯科医師の視点から0歳から12歳までの年齢別に『よくある悩み』と『歯科医院での診断基準』をQ&A形式でまとめました。お子さんの年齢に合わせて、まずは今チェックするポイントを確認してみてくださいね。
岩国市 歯科 小児矯正

1. 【0~2歳】乳歯が生え揃うまでの時期

Q. 下の前歯が出ている(受け口)気がします。すぐに矯正が必要ですか?

A. いいえ、この時期はまだ心配ありません。

0〜1歳頃は、赤ちゃんが遊びで下顎を前に出しているだけのことが多く、骨格的な受け口(反対咬合)と診断するには早い時期です。

本格的な治療は一般的に3歳頃から検討しますので、まずは見守りましょう。
岩国市 歯科 小児矯正

Q. 歯が生えるのが遅いのが心配です。/歯が生える順番が違うようで不安です。

A. 歯が生える時期が半年程度ズレることは問題ありません。

たとえ将来的に歯が足りない(先天性欠如)などの可能性があっても、この年齢ではレントゲン撮影や矯正治療が難しいのが実情です。検査をしても、検査結果によらず経過観察となることが多いです。

まずは3歳を過ぎるまでは、焦らず経過を見ていきましょう。

★この時期のポイント

「お口ポカン」や「口呼吸」の癖がないか確認しましょう。

また、離乳食では「スプーンを口に入れない」「手掴み食べさせる」「食材を大きいまま・長いまま出す」ことで、上唇で捕食する力、噛む力を育てることが大切です。

参考リンク:

授乳や卒乳の方法や時期で、子どもの口呼吸を引き起こしてしまう!?

授乳や卒乳の方法や時期で、子どもの口呼吸を引き起こしてしまう!?


2. 【3~4歳】歯列早期治療の検討期

Q. 「お口ポカン」や「いびき」が気になります。歯並びに関係ありますか?

A. 大いに関係があります。

口呼吸や指しゃぶりのクセは、顎の成長をさまたげ、将来的な歯並びの乱れにつながります。

3歳を過ぎると、マウスピース型の装置などを使って、こうした「悪習癖」を改善する早期治療が可能になります。

また、口腔機能発達不全が認められる場合は、MFT(口腔筋機能訓練)を通して、口腔機能を育てることも重要です。

参考リンク:

MFT特集 その4 お口ポカンの影響と直し方について

MFT特集 その4 お口ポカンの影響と直し方について


Q. 3歳児検診で「反対咬合:はんたいこうごう(受け口)」と言われましたが、治療できますか?

A. はい、治療を開始できる年齢です。

3歳頃になると、部分的な反対咬合(はんたいこうごう)などは装置を使って改善できるケースが増えてきます。まずは歯科医院で「歯並びが正常かどうか」「口腔機能(正しく口が使えているか)」のチェックを受けることをおすすめします。
岩国市 歯科 小児矯正

参考リンク:

低年齢の受け口治療 ~目立たない装置で、短期間で改善する!~

低年齢の受け口治療 ~目立たない装置で、短期間で改善する!~


矯正の早期治療(3歳~)がおススメな症例とは?

矯正の早期治療(3歳~)がおススメな症例とは?


ムーシールドで反対咬合治療(3歳)インスタグラム
https://www.instagram.com/p/C7lcuIAPfgq/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA%3D%3D

 

3. 【5〜6歳】お口のトレーニング(MFT)と歯列早期治療の適齢期

Q. 乳歯の歯と歯の間に隙間がなく、綺麗な歯並びで生えています。その場合、将来歯並びがガタガタになりやすいと聞いたのですが…?

A. その可能性が高いです。今が「顎を育てる」チャンスの年齢です。

乳歯の時期に隙間がない(閉鎖歯列)場合、歯並びより一回り大きなサイズの永久歯が並びきらずに叢生:そうせい(ガタガタ)になるリスクがあります。この時期は、顎を広げる矯正装置や、お口周りの筋肉を鍛えるトレーニング(MFT:口腔筋機能訓練)が最も効果を発揮する時期です。

Q. いつも口が開きっぱなしです。あいうべ体操など、できることは試してみましたが改善しません。どうすれば良いですか?

A. 専門的なトレーニング(MFT)をおススメします。5〜6歳はMFTで「お口を閉じる力」を身につける絶好の時期です。

この年齢になると、お子さんの理解力もぐんと高まり、「なぜこの練習が必要なのか」を自分で意識して取り組めるようになります。セルフケアで効果が出なかった子でも、プロの指導のもとでトレーニングを始めると、劇的に改善するケースも多いです。
岩国市 歯科 小児矯正

Q. 3歳の時に一度マウスピース矯正を試みたのですが、こどもが嫌がって使ってくれませんでした。5歳になって再挑戦しても使ってくれないかもと不安です。

A. 3歳という年齢は、まだ「どうして歯並びを治療しないといけないのか」について理解できず、中には嫌がってしまうお子さんもいます。しかし、3歳でできなかった子でも、5〜6歳になれば「できる」ようになる子がほとんどです。

ただ、「せっかく始めたのに途中で続けられなかった」という経験があると、ご不安になる保護者の方のお気持ちは自然なことです。使用感の良い市販のお試し用装置(矯正する力はありませんが、口唇のトレーニングなどに用いることができます)などもご用意していますので、「うちの子が出来るかどうか不安」という方も、ぜひご相談ください。

参考リンク:

子どもがプレオルソを嫌がる場合、どうしたら良い?

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ムーシールドを嫌がる場合、上手に使うコツは?

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4. 【6〜9歳】小児矯正の「黄金期」

Q. 将来的に歯並びがとても悪くなるなら矯正しないととは思うのですが、軽度の歯のガタガタ程度なら大人になってからでも良いかな?と思っています。将来的にどの程度、歯並びがガタガタになるか、事前に調べることはできますか?

A. ある程度、可能です。上下の前歯が4本揃った時が、最も詳しい分析ができる「黄金期」です。

小野の回帰式という、乳歯から永久歯に生え変わる際、あごの中にどれくらいのスペースが必要かを予測する計算式で、事前にある程度分析することが可能です。まずはご相談ください。

Q. 前歯が生え変わりましたが、乳歯の時よりガタガタして見えます。このまま様子を見ていて大丈夫ですか?

A.大丈夫な場合とそうでない場合があるため、歯科医院でご相談ください。 今がまさに、様子を見るか治療を始めるかの分岐点です。

乳歯よりも大きな永久歯が生えてくるため、この時期に重なりが出るのは自然なことでもあります。しかし、それが「一時的な重なり」なのか「あごのスペースが足りない」のかは、見た目だけでは判断できません。当院ではこの時期に、すでに生えている前歯の横幅から、まだ生えていない奥の歯の大きさをミリ単位で予測する分析を行っています。

Q. 中学生になってからでは遅いですか?なぜ今、相談すべきなのですか?

A. 「歯を抜かずにきれいに並べる」ための土台が作れる、唯一の時期だからです。

中学生になってからの矯正では、すでに成長が終わった顎の中で歯を並べるため、健康な歯を抜いてスペースを作る必要が増えます。
しかし今なら、あごの成長をサポートして「歯が並ぶ十分な広さ」を作ってあげることができます。
この時期を逃すと、あごを広げることは難しくなります。
岩国市 歯科 小児矯正

Q. 「10歳を過ぎると小児矯正は手遅れ」と聞いたことがありますが、本当ですか?

A.手遅れではありませんが、、口腔機能獲得の「トレーニングの効果」が出にくくなるのは事実です。

形態(歯並び)は抜歯などが必要となったとしても、成人してからも治療可能です。
しかし、お口をポカン(口呼吸)の改善や、低位舌などの舌の悪いクセは、10歳を過ぎると改善が非常に難しくなるのです。
「お口を閉じる」「鼻で呼吸する」といった正しい機能を楽に身につけられるのは今がラストチャンスです。

参考リンク:

歯並びが治れば滑舌が改善する!?~滑舌と歯並びの関係~

歯並びが治れば滑舌が改善する!?~滑舌と歯並びの関係~


 

5. 【10~12歳】小児矯正のタイムリミット

Q. もうすぐ中学生ですが、今からでも間に合いますか?

A. 永久歯の生え変わり状況によります。乳犬歯が残っていれば、まだ小児矯正の枠組みで対応できる可能性があります。
もし全ての歯が永久歯に生え変わってしまうと、大人の矯正(成人矯正)として扱うことが一般的です。
その場合は、乳歯と永久歯の生え変わりを見守りながら、成人矯正を始めるタイミングを見極めていきます。

Q. 12歳でMFT(お口のトレーニング)はできますか?ずっと口で呼吸しているので心配です。

A. トレーニング自体は可能ですが、10歳未満の頃のような劇的な変化を出すのが難しい時期に入っています。
そのため、当院では、12歳を過ぎたお子さんに対して、費用や時間をかける「通院して習い事のように継続的に取り組むMFT」は積極的にはおすすめしておりません。

参考リンク:

MFT(口腔筋機能訓練)特集その3 お口の機能発達は10歳までが勝負!

MFT(口腔筋機能訓練)特集その3 お口の機能発達は10歳までが勝負!


 

6. まとめ:迷ったら早めの確認を

お子さんの歯並びは、単に見た目の問題だけでなく、「正しく噛む」「鼻で呼吸する」といった全身の健康に直結する機能の問題でもあります。

以下に年齢ごとのポイントをまとめます。

  • ・0〜2歳:
    お口の癖をチェック
  • ・3〜6歳:
    早期治療やトレーニングを検討
  • ・6〜9歳:
    精密な分析と顎の成長サポート
  • 岩国市 歯科 小児矯正

「まだ早いかな?」と思っても、相談は早すぎることはありません。

適切な時期を逃さないために、お子さんの年齢に合わせたポイントを意識してみてくださいね。

この記事についてくわしく聞きたい、または個別にお子さんのお口の状態を確認したい場合は、お気軽にスタッフまでお声がけください。

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「まだ治療するか決めていない」段階でも大丈夫です。

現状を知ることが第一歩です。

また、治療方法や費用について詳しく知りたい方は、当院の矯正ページもご覧ください。

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子供の歯並び改善


最後までお読みいただきありがとうございました。

日本の口腔保健(小児歯科を含む)の目指すもの

2026年2月13日

日本の口腔保健(小児歯科を含む)の目指すもの

こんにちは、岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。

前回は、日本と海外の「予防歯科」の考え方の違いについて解説しました。

医療で何を重視するかは国によって異なりますが、日本の特徴は次の2点でした。

  • ・日本は予防よりも治療に重きを置いている
  • ・予防については個人の価値観が重視され、学校や自治体の関与は比較的少ない

これは良い・悪いという話ではなく、医療に対する考え方の違いによるものです。現在の日本の保健行政も、この前提に基づいて計画が立てられています。

参考リンク:世界と日本の歯科保健シリーズ

1)日本は「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」を目指している

 

日本では2024年に策定された「健康日本21」歯科版の「歯・口腔の健康づくりプラン」に基づき、「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」を大きな目標として医療行政が進められています。

具体的な取り組みとしては、

  • ・学校での歯科検診
  • ・学校での歯みがき実施や歯科保健教育
  • ・フッ素の活用
  • ・ライフコースアプローチの推進

などが挙げられます。

ライフコースアプローチとは、幼少期、場合によっては胎児期からの生活習慣や健康状態が、成人期・高齢期の健康にまで影響するという考え方です。

「子どものころの習慣が一生を左右する」という視点に立った健康づくりです。

次の章から、具体的な目標について解説していきましょう。

岩国市 歯科 検診

2)日本が健康寿命を延ばすために目指している「目標」

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2-1)歯周病を有する人の減少と、その格差の縮小

  • ・正しいセルフケア(歯みがき・歯間清掃)の実践者を増やす
  • ・歯肉炎・歯周炎のある人を減らす
  • ・喫煙・受動喫煙を減らす

ここに喫煙・受動喫煙が入っているのは、タバコは歯周病の原因になるためです。

ニコチンが毛細血管を収縮させることで、歯茎の血行が悪くなることで歯周炎になりやすくなってしまうのです。

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2-2)よく噛んで食べられる人の増加と、その格差の縮小

  • ・むし歯のない人の割合を増やす
  • ・60歳で24歯以上残っている人を増やす
  • ・40歳以上で19歯以下の人を減らす
  • ・口腔機能が低下している人を減らす

2-3)歯科検診を受ける人の増加と、その格差の縮小

  • ・歯科健診を実施する事業所を増やす
  • ・「健康経営」に歯科を取り入れる企業を増やす
  • ・妊産婦歯科健診を行う市町村を増やす
  • ・歯周病検診を行う市町村を増やす

(厚生労働省資料より)

 

3)どのくらい達成できているの?

前述のような目標に向かって、行政も歯科医師会も頑張ってきたわけですが、では、これらの目標はどの程度達成されているのでしょうか?

3-1)高齢者の目標について

特に注目されている指標が「8020達成率」です。

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80歳で20本以上の歯を保つ人は、要介護になることが少ないことから、1989年(平成元年)に、厚生省(現在の 厚生労働省)と 日本歯科医師会 が提唱した国民運動です。

  • ・現在80歳で20本以上の歯を保つ人の割合は約61%
  • ・2016年に「8020達成者率を50%に」という目標をしました。
  • ・現在は新目標「8020達成者率を85%」に向けて新たな取り組みがなされています。
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3-2)歯科受診率の目標について

・1年以内に歯科を受診した経験がある人は約6割に増え、年々増加。

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3-3)小児歯科における数値目標

3歳児

  • ・3歳児のむし歯経験なし率:目標80%以上(健康日本21)

    → 2021年の現状値では、「3歳で4本以上の虫歯がある子供の割合」は4%(出典:地域保健・健康増進事業報告)

  • ・日本における 3 歳児のむし歯有病率(1 本以上むし歯を持つ割合) は、長期的に大幅に低下

    →1989 年頃:約 55.8%(むし歯がある割合)

    →2010〜2020 年代:10〜20% 台前後 の割合に低下(研究・市区町村データによる)

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12歳児

  • ・12歳児(1人平均永久歯むし歯数(DMF)が1.0未満である都道府県を増やす)(健康日本21)

    →1998〜2000年前後:2〜3 本台に低下(学校保健統計など)

    →2018〜2020 年代:0.7 本台へ減少(学校保健統計)

    →令和 4 年度(2022〜2023):0.56 本(過去最低更新)という報告あり

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こうして見ると、日本は予防意識の向上と制度整備により、着実に改善を重ねてきたことが分かります。

一方で、いわゆる「二極化問題」、

多くのお子さんの歯が虫歯にならずに予防できているのに対し、口腔崩壊というレベルで虫歯になっているお子さんも見かける…という問題があります。

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  • ・ほとんどむし歯がないお子さん
  • ・たくさんの虫歯により、口腔内の問題がたくさんあるお子さん

背景には生活習慣や家庭環境など、さまざまな事情があります。

 

行政の改善も、学校からの関りも、各家庭での生活習慣の見直しなども、
最終的には「一人ひとりの改善」の積み重ねです。

行政や学校も、口腔崩壊の状態にあるお子さんにどうアプローチすべきか、議論を重ねています。

そういったケースでは、歯科受診さえしていただければ、そのお子さんに最もあっている方針を個別に考えますので、まずはご相談いただければと思います。

3-4)切れ目のない検診機会の確保

近年、厚生労働省が特に力を入れているのが「切れ目のない検診機会の確保」です。

岩国市 歯科 検診

子供のうちは

  • 「1歳半検診」
  • 「3歳児検診」
  • 「学校歯科健診」

と切れ間なくある歯科健診も、社会人になったあとは途切れてしまう問題です。

岩国市 歯科 検診

現在、成人の節目検診は市区町村が実施主体で、実際の実施年齢や回数は 各自治体の裁量 です。

ちなみに岩国市では「いい歯おとなの歯科健診」という自治体の無料歯科健診があり、

20歳 25歳 30歳 35歳 40歳 50歳 60歳 70歳 +妊婦(年齢問わず)

が対象となっています。

現在の受診率は約53.6%(全国平均の58%より低い)で、

一方で「歯科健診を受けたことがない」と答える人が20.8%もいることが問題視されています。

健康日本21(第3次)では、歯科受診率95%という高い目標も掲げられています。

「特別なときだけ、トラブルがあったときだけ」ではなく、「習慣として通う」ことが求められているのです。

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4)まとめ

いかがでしたか?

  • ・この20年で、日本の歯科保健は数値目標を明確にし、国民の健康レベルは大きく前進してきました。
  • ・最終的にお口の健康を守るのは制度ではなく、ご家庭での習慣と選択です。
  • ・「何か問題がある時だけ歯科受診する」ではなく、「習慣として通う」こと重要です。
  • ・お口の中の問題でお困りごとがありましたら、歯科医院で個別に治療や習慣の見直しなどを相談するのがおススメです。
  • 岩国市 歯科 検診

気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!

海外の小児歯科事情について― 日本との違いから見えてくる「予防」と「矯正」 ―

2026年1月30日

こんにちは。岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正 副院長の吉村です。

当院は米軍基地が近いこともあり、海外で歯科治療を受けてこられた患者さんも、多く来院されます。

治療の跡を見て「日本と同じだな」と感じることもあれば、「これは少し考え方が違うな」と思うことも少なくありません。

前回は

「世界と日本の口腔健康に対する考え方の違い」

についてご紹介しました。

今回はその続きとして、

「虫歯予防」や「矯正治療」などの小児歯科事情を中心に、日本と海外の違いを分かりやすく解説していきたいと思います。

岩国市 歯科 予防

▼前回の記事はこちら

虫歯は減ったのに、なぜ口の病気は世界最大級の健康課題なのかhttps://tsuboidental.com/blogs/archives/7931

1)フッ素の使い方と定期健診の考え方 ― 海外と日本の違い ―

フッ素の使い方には、国ごとに明確な「戦略の違い」があります。

1-1)海外:水道水フロリデーションという考え方

岩国市 歯科 予防

アメリカやオーストラリアでは、水道水にフッ素を添加している地域が多くあります。

毎日飲む水にフッ素が含まれているため、特別な意識をしなくても虫歯予防ができる、いわば「パッシブ(受動的)な予防」です。

1-2)日本・北欧:個人の選択を重視

一方、日本や北欧諸国では、水道水へのフッ素添加は行われていません。

(一度採用した国でも改めてやめている国も多いです。ちなみに日本では全国一律で実施されたことはなく、過去に京都府山科地区、沖縄県、三重県朝日町などで試験的に行われたのみです。)

これは

「飲料水に何かを加えるかどうかは、個人の選択に委ねるべき」

という哲学的な考え方に基づいています。

どちらが正しい、という話ではありません。

ただし日本では、虫歯を防ぐために

「子どもの頃から歯科医院や自宅でフッ素塗布を行う習慣」を、保護者の方が積極的に作ってあげなくてはなりません(積極的な予防)。

1-3)日本で推奨されているフッ素の使い方(2023年改訂)

2023年、日本小児歯科学会など4つの専門学会が、フッ素使用の推奨量を見直しました。

現在の考え方は、「高濃度・微量使用」 です。

虫歯予防効果の高い1,000ppmF前後の高濃度フッ素配合歯磨剤を、ごく少量だけ使うという方法が推奨されています。

使用量の目安は以下の通りです。

  • ・歯の萌出直後から使用開始
  • ・フッ素濃度:900~1,000ppmF
  • 年齢別の使用量
  • ・2歳まで:米粒程度(1~2mm)
  • ・3~5歳:グリーンピース程度(約5mm)
  • ・6歳以上:歯ブラシの幅程度(この年代では1,450ppmFが推奨されます)

「歯が生えたらすぐに、効果の高いフッ素を安全な量で使い始める」

これが、現在の学会が示しているフッ素利用の基本的な考え方です。

ちなみに海外では、5,000ppmFの高濃度フッ素歯磨剤が、老年期の根面う蝕に推奨されています。

日本では低年齢児には危険と判断され、市販されていませんが、

世界的な潮流としては

「高濃度を、必要最小限で使う」

という方向に進んでいます。

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2)治療的予防という考え方 ― アメリカと日本の違い ―

現在アメリカ(米国歯科医師会:ADAや米国小児歯科学会:AAPD)では、「穴があく一歩手前の、初期むし歯」に対しても、シーラントをすることを強く推奨しています。

2-1)フィッシャーシーラントとは

虫歯になりやすい奥歯の溝を、樹脂であらかじめ封鎖する処置です。

多くの場合、歯を削らずに行え、子どもの虫歯予防として広く使われています。

日本でも、15歳以下の小児に対しては保険診療で実施可能です。

2-2)「予防」から「初期虫歯の管理」へ

システマティックレビュー(多くの研究を統合評価する手法)により、初期虫歯の上からシーラントで物理的に封鎖することで、虫歯の進行を抑えられることが確認されています。

つまりシーラントは、従来の「虫歯予防」に加えて「初期虫歯の管理・治療」という役割も担うようになってきているのです。

※進行した虫歯には適応できないため、正確な診断が重要です。

2-3)アメリカのスクール・シーラント・プログラム(SSP)

アメリカでは、CDC(疾病予防管理センター)がスクール・シーラント・プログラム(SSP)を強力に推進しています。(J Am Dent Assoc.153(10):970-978.e4.)

これは歯科専門家が学校に出向き、シーラントを実施する取り組みです。

背景には、所得による医療格差という社会問題があります。

その結果、「4本のシーラント処置を行うことで、統計的に1本の大臼歯の虫歯発生を防げた(placing 4 sealants would prevent caries in 1 molar)」と報告されています。

虫歯を

「個人の努力の問題」ではなく

「社会全体で解決すべき課題」

として捉えている点が、アメリカの大きな特徴です。

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2-4)日本の現状

一方、日本の状況はどうでしょうか。

文部科学省「学校保健統計調査(令和5年度)」によると、全国の12歳児のむし歯保有者率(虫歯経験者割合)は約35%。

子どもの虫歯罹患率は、この数十年で多く低下していますが

「虫歯を克服した」と言える数字ではありません。

一方で、学校歯科医と自治体が連携してシーラント予防を進めている地域は減少しています。


補足:日本も過去には自治体主導のシーラント事業があった

1980~1990年代、12歳児のむし歯保有者率(虫歯経験者割合)は約94%と高水準だった時代には、シーラントやフッ化物応用を公的に導入する議論が盛んに行われました。

一部自治体では、学校歯科健診後に特定学年(6歳臼歯)へシーラントを行う事業もありましたが、全国制度としては定着せず、現在は受診勧告が中心となっています。

ここにも、

「予防は各家庭の選択に委ねる」

という日本の考え方が色濃く反映されています。

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2-5)日本とアメリカ、予防に対する価値観の違い

フッ素もシーラントも、疫学的に「虫歯予防に非常に有効」であることが立証されています。

その虫歯予防をアメリカなどは

「社会の課題として、家庭環境によらず子ども全員が受けることができる」

とし、一方日本では、

「各家庭の課題として、各家庭の裁量に任せられるべき」

としているということですね。

どちらが正しいということはありません。

価値観の違いです。

しかし、専業主婦が多かった1990年代と比べて、共働き家庭が多くなった2026年の日本では、

「学校で自動的に虫歯予防しておいてくれたら助かるのに~」という保護者の方は、増えているのではないかな…とは感じています。

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3)日本と世界の「歯列矯正」の現状 ― 保険適用を中心に ―

3-1)日本の矯正治療の保険適応範囲

日本では、原則として矯正治療は保険適用外です。

ただし、以下のような国が定めた疾患に該当する場合は、保険診療が認められています。

  • ・顎変形症(外科手術を伴うもの)
  • ・先天性疾患に起因する咬合異常(口唇裂・口蓋裂、厚労省告示で指定された疾患)
  • ・6歯以上の永久歯先天欠如で機能障害を認める場合

これらは、特定の医療機関(大学病院、またそれに準ずる医療機関)において健康保険の認可が得られています。

年間の顎変形症手術件数は約4,000~5,000件と推計されており、日本で矯正治療を受ける人のうち、保険適用となるのは約7%と言われています。

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3-2)海外の矯正治療の保険適応範囲

海外では、

  • ・放っておくと将来大変になる骨格性の受け口
  • ・開咬(前歯が噛み合わない)
  • ・成長期を逃すと治療が難しくなる症例

などで、保険や公費が適用されるケースが多く見られます。


スウェーデンの例

子どもの歯科治療が基本的に無料のスウェーデンでは、

矯正治療の必要性(重症度) によって公費負担が決まります。

IOTN(治療必要度指数)が一定以上で、

機能的問題があると判断された場合、全額公費(無料)となります。

用語: IOTN(Index of Orthodontic Treatment Need:治療必要度指数)

歯科矯正が必要かどうかを、「歯の健康(機能)」と「見た目(審美)」の両面から客観的に判定するための指標。医学的・機能的な問題(噛み合わせが何mmズレているか、など)審美的な問題(見た目)の2軸で評価します。

公費(無料)で治療が受けられるのは、原則として「医学的・機能的な必要性が非常に高い(Grade 4, 5)」と判断された子だけです。

例えば、「出っ歯が9mm以上ある」(Grade 5)や「反対咬合(受け口)が3.5mm以上ある」(Grade 4)といった、明確な基準があります。

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3-3)日本と海外の矯正治療の保険適応の違い

では、歯並びを保険(公費)で治療できる割合は、日本と海外、どちらが多いのでしょうか?

  • ・デンマーク:18歳以下は矯正治療も含めて全額が公費負担(100%無料)
  • ・スウェーデン、イギリス、ドイツなど「重症を救う」:疾患名に関わらず、ガタガタの度合い(IOTN)が基準を超えれば一律無料・公費カバー率20~30%
  • ・フランス・アメリカなど「民間保険・公的支援混合型」:民間と公的な保険の混合により、自費負担を軽減する方式です。フランスは16歳未満なら公費カバー率30%以上、アメリカは民間保険のプランによる、という感じです。
  • ・日本、イタリア、ブラジルなど「自費中心型」:矯正は「個人の審美」と捉えられる傾向が強く、特定の病気(先天性疾患など)以外の公費サポートはありません。

日本において医療保険は「病気を治す」という価値観が強く、顎変形症などの重度症例に対しては世界でも稀なほど手厚いサポートがありますが、一般的な不正咬合までを含めた『広い意味での医学的必要性』へのカバー範囲は、他の先進国より限定的であると言えるでしょう。

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もっと踏み込んでいえば、日本は

「その不正咬合による将来的なリスクを予防する」

という点よりも

「今、すでにある疾患を治療する」

という点が重視されています。

「病気の予防は自費で」

「すでに発症した疾患の治療は保険で」

これが日本の医療保険制度です。

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そのため、癌や脳血管障害といった重大な病気にかかった際には、誰もが高度な医療を安価に受けられるという、世界に誇るべき安心な体制が整っています。しかしその反面、「病気を未然に防ぐ予防」については、自己負担(自費)が原則です。

「病気になってから治す」ことへの手厚いサポートがある一方で、

「病気にならないための投資」が個人の判断に委ねられているのです。

これは、小児歯科医としての個人的意見にはなりますが、

「悪くなってから治す」ばかりでなく、

「悪くなりそうだと分かっている症例」「安価な費用で予防可能な病気」にはもう少し、公費サポートの範囲を広げても良いのではないかとも感じています。

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コラム: 日本では「保険適応疾患」ではない「不正咬合」が起こすリスクのある疾患

日本の保険制度では「見た目の問題」とされがちな不正咬合ですが、放置することで以下のような全身の健康を脅かす「疾患」のリスクを高めてしまいます。

虫歯・歯周病(慢性炎症)

複雑な歯並びはブラッシングが困難な箇所を生み、細菌の温床となって歯を失う最大の原因を作ります。

上顎前突(出っ歯)による口呼吸

唇が閉じにくくなることで口腔内が乾燥し、自浄作用の低下や免疫力の減退を引き起こします。

低位舌(ていいぜつ)

口呼吸が習慣化すると舌の位置が下がり、歯列のさらなる悪化や顔貌の変化、発音障害を招きます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

低位舌によって就寝時に気道が塞がりやすくなり、脳や心臓に負担をかける深刻な睡眠障害の原因となります。

咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)

一部の歯に過度な負担がかかる状態が長年継続すると、健康な歯であっても、周囲の骨が溶けたりすることがあります。

咀嚼障害(そしゃくしょうがい)

効率よく食べ物を噛み砕けなくなることで消化器官への負担が増し、栄養吸収の効率を下げてしまいます。

老年期の嚥下障害(えんげしょうがい)

若い頃からの不正咬合や早期の抜歯は、高齢期の「飲み込む力」を低下させ、誤嚥性肺炎のリスクを高めます。

4)日本の歯科保険は「世界に誇れる」

今回は色々と海外の事例の紹介を行いました。

日本には、

  • ・国民皆保険
  • ・乳幼児健診
  • ・学校歯科健診
  • ・母子健康手帳/妊婦検診
  • ・自治体の節目歯科検診

といった、世界に誇る充実したシステムがあります。

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日本の予防・治療の意識、知識は決して低いわけではありません。

早期発見、早期受診勧告の仕組みは十分に整備されているのです。

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一方、日本では

「予防は自費」

「予防は各家庭に任せる」

という考えが根底にあるため、

既に疾患としてあるものの治療には手厚い公的サポートがある一方で、

未病(病気になるリスクが高い状態、病気一歩手前の状態)に対するサポートは少ないことがお分かりいただけたと思います。

だからこそ、歯科検診で早期発見・早期受診勧告を受けたら、早めに歯科医院に受診されることをおススメします。

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5)まとめ

いかがでしたか?

  • ・日本では水道水にフッ素が入っていないため、家庭での積極的なフッ素使用が重要
  • ・現在のフッ素使用は「高濃度・微量」が基本
  • ・日本の医療制度は「治療重視・予防は自助」が特徴
  • ・早期発見・受診勧告の仕組みは整っているため、指摘を受けたら早めの受診を

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

お口のケアで感染症対策。歯磨き習慣とインフルエンザ予防

2026年1月4日

こんにちは。
岩国のつぼい歯科クリニック おとなこども矯正歯科、院長の坪井です。

冬になると毎年話題になるインフルエンザ。
今年も猛威を振るっていますね。

岩国地区でも、学級閉鎖などが頻繁に起きているようです。

インフルエンザ予防と言えば、「手洗い・うがい・マスク・ワクチン」は、多くの方が意識されていることでしょう。

岩国市 歯科 インフルエンザ予防

実は、歯科の立場から強調したい予防策があります。

それが 歯みがきと鼻呼吸(お口ポカン防止) です。

 

今回は

①なぜ歯みがきや歯科ケアがインフルエンザ予防につながるのか?

②口呼吸が感染症にかかるリスクを上げてしまう理由とは?

③おススメの歯磨き・口呼吸を予防するトレーニングはどんなもの?

の3本立てでお話します。

ぜひ最後まで見て、この冬を一緒に快適に乗り切って行きましょう。

1 歯みがき・口腔ケアがインフルエンザ予防につながる理由

1-1)口腔内を清潔に保つことで、インフルエンザの発症リスクが下がる

特に注目されているのが、

• 歯や歯周ポケットに存在する歯周病菌

• それらが形成するバイオフィルム(細菌の膜)

です。

歯周病菌が多い状態では、インフルエンザウィルスが細胞に感染しやすくなってしまうためです。

歯垢(プラーク)は単なる「汚れ」ではなく、複数の細菌、最近が分泌した構造体などの複合体です。

歯垢には、歯周病菌をはじめとした、病原菌が生活しやすいよう、悪い環境を作る性質があります。

岩国市 歯科 インフルエンザ予防

歯垢が作る悪い環境

・うがいなどで洗い流すだけでは除去できない

・薬剤抵抗性を示す(ウガイ薬、飲み薬では除去できない)

これがインフルエンザウィルスにとっても感染の土台となる環境として機能してしまうのです。

歯垢(プラーク・バイオフィルム)に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

https://tsuboidental.com/blogs/archives/7425

1-2)歯みがき+歯科のプロケアで、インフルエンザ発症が「約10分の1」になった

岩国市 歯科 インフルエンザ予防

日本歯科医学会誌に掲載された内容で、口腔内環境を清浄に保つ(歯科衛生士などによる専門的口腔ケアを含む)ことで、インフルエンザ発症率が約10分の1に抑えられたという報告があります。

これは高齢者施設での研究ですので、一般の健康な成人や小児で同じ倍率で予防できると断言はできませんが、歯磨きがインフルエンザに効果的であることは間違いないと言えます。

参考文献

• 日本歯科医学会誌 Vol.25(2006)p.27–33

• Abe S, et al. Professional oral care reduces influenza infection in elderly. Arch Gerontol Geriatr. 2006

2 歯周病の予防は、コロナ感染予防・重症化予防にもなる

他のウィルス性感染症の場合はどうでしょうか?

インフルエンザと並ぶ、流行性ウィルス感染症の新型コロナウィルスについて、解説します。

2-1)新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るっていた時期、歯科医院ではクラスターがほぼ発生しなかった

新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るっていた時期、意外な事実が注目を集めました。
それは、「全国約6.6万軒におよぶ歯科医院において、診療室での集団感染(クラスター)の報告がゼロだった」という点です。

当時、大阪府の吉村知事も、大阪府内の約5500軒の歯科医院で新型コロナウィルスのクラスター(集団感染)が1件も発生していないことに着目し、「感染対策の賜物だと思うが、何かある。
何か?」とツイッターに投稿したことが話題になりました。

 たしかに、もともと歯科業界では、HIVや肝炎ウィルスなどの「ウィルスの水平感染」を防ぐため、非常に厳しい滅菌・消毒の基準を日常的に守り続けてきました。

加えて当時、(当院もですが)換気基準を満たすため換気設備の更新や、スタッフルームの整備をしてランチを「個食」出来るようにした医院も多かったです。

しかし、全国で6.6万軒ある歯科医院のうち院長が60歳以上である歯科医院は46.8%(3万医院以上)、院長が70歳以上である歯科医院が13%(約8600医院)もあり、大規模な設備投資をしなかった医院も多かったはずなのです。

にもかかわらず、診療室でもスタッフルーム(ランチの場所)でも、ほぼクラスターが発生しなかったのは、「患者さんもスタッフも、歯磨き+プロケアがちゃんと出来ていた」からではないか…と、個人的には思っています。

2-2)歯周病になっている人は、コロナウィルスにかかりやすい

岩国市 歯科 インフルエンザ予防

歯周病がある場合、新型コロナへの感染確率は 約 2.8 倍 高まるという報告があります。

歯周ポケット内には、ウイルスが細胞に侵入する際に利用する受容体(ACE2)や酵素(TMPRSS2)が多く発現しており、歯周ポケットが「ウイルスの貯蔵庫(リザーバー)」として機能してしまうと言われています。

また、歯周病菌が持つ「プロテアーゼ」という酵素が、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を切り分け、細胞に侵入しやすくしてしまいます。

岩国市 歯科 インフルエンザ予防

*この感染機序はインフルエンザウィルスとも非常によく似ています。

歯科医院で勤務するスタッフが新型コロナ流行期に感染しにくかったのは、単にマスクをしていたからではなく、『お口の中にウイルスを呼び込む隙(歯周病)を作っていなかったから』とも言えるのです。

3 うがい以上に歯みがきが大切

この考え方を、一般の方にも非常に分かりやすく解説しているのが

日本歯科医師会 8020テレビ の動画です。

日本歯科医師会 8020テレビ「インフルエンザ予防と歯周病菌」https://www.youtube.com/watch?v=Nh71xJ2EovE

この動画では、大阪大学大学院歯学研究科・予防歯科学分野の第一人者である

天野敦雄 教授 が解説されています。

動画の内容をざっくりとご説明すると、以下の通りです。
(詳しくは動画をご覧ください)

• うがいだけでは、歯や歯周ポケットの歯周病菌は十分に除去できない

• 歯周病菌が多いと、インフルエンザウィルスの感染力が高まる可能性がある

• だからこそ、歯みがき・口腔清掃が重要

つまり、歯みがきは

「口の中をきれいにする行為」というより「ウィルスの感染リスクや歯周病菌による炎症のリスクを下げる行為」なのです。

岩国市 歯科 インフルエンザ予防

岩国市 歯科 インフルエンザ予防

4 もう一つの重要ポイント「口呼吸」

ウィルス性感染症の予防を考えるうえで、もう一つ見逃せないのが 口呼吸 です。

「口呼吸をしているとインフルエンザになる」と断定できる研究はありません。

ただし、口呼吸には次のような不利な条件が重なります。

口呼吸が鼻呼吸より感染リスクが高くなる理由
岩国市 歯科 鼻呼吸

• 口腔・咽頭が乾燥しやすい

• 鼻の加湿・加温・ろ過機能が使えない

• 吸い込んだ粒子(ウイルスを含む)が気道に入りやすい

これらは、感染症全般において防御機能が低下しやすい状態と考えられています。

参考リンク:良くない口の習慣、「口呼吸」 ~風邪をひきやすく、虫歯・歯周病・口臭・出っ歯の原因にもなる~

https://tsuboidental.com/blogs/archives/5023

4-1)「私、口呼吸している?」自覚しにくい人のための簡易チェック

口呼吸は、本人に自覚がないケースがとても多いのが特徴です。

次の項目に心当たりはありませんか?

• 冬になると鼻が詰まりやすく、気づけば口で息をしている

• 朝起きたとき、口の中が強く乾燥している

• 寝起きに喉が痛い、イガイガする

• 唇が乾燥で切れやすい

• 口角炎を繰り返す

• 日中、無意識に口が半開きになっている

• いびきを指摘されたことがある

一つでも当てはまる方は、口呼吸が習慣化している可能性があります。

4-2)あいうべ体操は「鼻呼吸に戻すための練習」

あいうべ体操は、

• 舌や口周りの筋肉を動かす

• 口唇閉鎖を意識しやすくする

ことで、鼻呼吸を促すことを目的とした体操です。

簡単で道具も必要ないため、幼稚園や小学校などでインフルエンザ予防のために取り入れられたりしているので、聞いたことがある方もいるかもしれません。

医学的な厳密な比較試験(RCT)はまだ発展途上の分野ですが、福岡県の小学校などの事例では、あいうべ体操を導入した学校において、導入していない学校よりもインフルエンザの発症率が劇的に下がったという報告があります。

これは、口呼吸が鼻呼吸に変わることで、鼻の加湿・加温・除菌フィルター機能が働いた結果と考えられています。

🌟あいうべ体操🌟

岩国市 歯科 あいうべ体操

動き ポイント

①「あー」 口を大きく「楕円形」に開くイメージで!

②「いー」 前歯がしっかり見えるように、口を横に思い切り広げる!

③「うー」 唇を思い切り前に突き出す!

④「べー」 舌をあごの先まで伸ばすつもりで、下に突き出す!

単調に「あいうべ~、あいうべ~」とやっても良いのですが、お気に入りの歌を「あいうべ~」で替え歌にして歌っても、楽しいですよ。

♪あ~あ、いっい~、うっう~べ~ぇ あ~ぁい~う~べ~(水戸黄門のメロディ)

♪あ~あ~い~い~う~う~べ~(キラキラ星のメロディ)

のように、自由に「あいうべアレンジ」をして、毎日2曲歌えば、かなりのトレーニングになるはずです。
コツとしては、歌の練習ではなく筋トレですので、発声よりも、筋肉を大きく動かすことを意識すると良いでしょう。

岩国市 歯科 あいうべ体操

5 まとめ:インフルエンザ対策は「口の中」から始まる

いかがでしたか?

インフルエンザ対策というと、どうしても外からの予防に目が向きがちです。

しかし、内側から防御力を高めることも、とても効果的です。

• 毎日の歯みがき

• 定期的な歯科でのプロケア

• 口呼吸に気づき、鼻呼吸を意識する

こうした日常の積み重ねが、体を守る力につながります。

「毎年インフルエンザが心配」

「冬は体調を崩しやすい」

という方は、ぜひ一度、お口の状態と呼吸のクセを見直してみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

全体の参考文献・資料

• 日本歯科医学会誌 Vol.25(2006)

• Abe S, et al. Professional oral care reduces influenza infection in elderly.

• 日本歯科医師会 8020テレビ「インフルエンザ予防と歯周病菌」

虫歯は減ったのに、なぜ口の病気は世界最大級の健康課題なのか~歯科保健行政が目指しているもの~

2025年12月18日

1) 「虫歯は減った」と言われる時代に、あらためて口腔の健康を考える

こんにちは。岩国市の医療法人つぼい歯科クリニック おとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。

「昔に比べて、虫歯は減ったらしいよね」という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

実際、国が行っている歯科疾患実態調査を見ても、むし歯の罹患状況は全体として大きく改善してきていることが分かっています。

参考リンク:歯科疾患実態調査:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000176912.html

しかし一方で、口腔の病気が社会全体にどの程度の影響を与えているのか、他の病気と比べてどう位置づけられているのかについては、あまり知られていないのが現状です。

そこで今回は、行政を中心とした口腔の健康へのアプローチについて、世界、そして日本の行政がどのように考え、どんな方向性を示しているのかを調べ、その内容を分かりやすく解説していきたいと思います。

2) 世界から見た口腔疾患の現状 ― 虫歯は「最も多い病気」

近年、「世界疾病負担研究(GBD)」という、さまざまな病気の負担を横並びで比較する研究が行われました。その結果、永久歯の未処置う蝕(むし歯)は、300以上の疾患の中で最も多い疾患であると報告されています。

世界疾病負担研究のデータグラフ

また、2022年に公表されたWHO(世界保健機関)のレポートでは、う蝕、歯周病、歯の喪失などの口腔疾患を有する人は約34億7000万人とされました。これは、精神疾患(約9億7000万人)や循環器疾患(約5億2200万人)などと比べても、桁違いに多い数字です。

WHOレポートによる疾患別患者数の比較

この結果から、「虫歯は減っている」というイメージとは裏腹に、口腔疾患は世界規模では依然として最も身近で、最も患者数の多い疾患群であることが明らかになっています。

3)WHOの歴史的決議 ― 口腔疾患は「社会の課題」へ

こうした背景を受け、2021年にWHO第74回保健総会において、「口腔の健康に関する決議」が採択されました。

歯科分野が単独でこのような決議の対象となることは非常に珍しく、歴史的な出来事といわれています。

この決議が目指す方向性は、

「2030年に向けたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)および非感染性疾患(NCD)対策の一環として、より良い口腔保健を達成する」

というものです。

つまり、むし歯や歯周病を単なる感染症として捉えるのではなく、生活習慣や社会環境と深く関わる疾患=生活習慣病に近い存在として位置づけ、社会全体で取り組むべき健康課題として扱おう、という考え方です。

WHO決議の概念図

4)日本の行政の方向性 ―「健康日本21」と歯・口腔の健康づくりプラン

このWHOの流れを受け、日本では2024年に「健康日本21」の歯科分野として、「歯・口腔の健康づくりプラン」が策定されました。

このプランの最上位目標は、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」です。

健康日本21の目標概念図

具体的な取り組みとしては、

  • 学校歯科健診
  • 日常的な歯みがきの実施
  • 歯科保健教育
  • フッ化物の活用
  • ライフコースアプローチ

といった内容が示されています。

ライフコースアプローチとは、乳幼児期、場合によっては胎児期の健康や生活習慣が、成人期・高齢期の健康にまで影響するという考え方です。

5)実は重要な「お子さんへの教育的アプローチ」

こうした背景を踏まえ、歯科医院は(治療をしっかり行うことは当然として)、教育的なアプローチが強く求められていると感じています。

教育的アプローチのイメージ

歯科医院での歯垢の染め出しや食生活指導は、患者さんからすると「少しうるさい」「面倒」と感じられるかもしれません。

実際、これまでの診療の中で、お子さんが日常的にグミやアイス、飴などを口にする習慣があるご家庭の患者さんに対して、食習慣の改善についてお話すると、「言っていることは分かるが、しつこく飴やグミをやめろと言われるのが嫌なので、担当の先生を変えてください」と言われてしまったことも、一度や二度ではありません。

飴やグミなどのお菓子が完全に生活習慣の一部になっている場合や、大袋のお菓子を与えている間はお母さんが家事や育児から一時的に解放される、といった事情がある場合など、「やめられない理由」があることは理解できます。

たばこや過食と同じで、「良くないことは分かっているけれど、やめるのが大変」なんですよね。

そのうえで、それでもなお、お子さんの人生全体を考えたときに「お砂糖たっぷりの市販菓子を日常的に食べることはやめた方が良い」とお伝えするべきだと考えています。

短期的には煙たがられてしまうことがあったとしても、将来の口腔の健康、ひいては全身の健康につながる重要な部分だからこそ、避けて通れない歯科医院の役割だと思っています。

歯科医院の役割イメージ

6) 口腔機能の「貯筋」

小児期にマイオファンクショナルセラピー(MFT:口腔筋機能訓練)によって口腔筋機能を高めることも、正しい嚥下の獲得や歯列・咬合の改善につながるだけでなく、将来的な嚥下機能低下の予防にも寄与すると考えられています。

乳幼児期・学童期に適切な口腔機能を獲得できたかどうかが、成人期・高齢期の口腔機能に大きく影響するためです。

これは、筋肉を若いうちから鍛えて蓄えておくことが老年期の健康寿命を延ばす「貯筋」という考え方と非常によく似ており、口腔機能における“貯筋”と言えるでしょう。

口腔機能の貯筋イメージ

7) フッ素と予防 ― 研究が示す「子どもの頃からの積み重ね」の大切さ

フッ化物の使用も虫歯予防の観点からは非常に効率の良い方法であり、WHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病予防管理センター)、そのほか多くの国際歯科・公衆衛生機関が使用を推奨しています。

フッ素予防の重要性イメージ

イギリスの研究では、「子どもの頃に水道水フロリデーション(注1)によるむし歯予防を受けた年数が長いほど、高齢期に残っている歯の本数が多い」ことが示されています。

(注1)水道水フロリデーション:水道水に虫歯予防を目的に自治体がフッ素を添加すること

ちなみに日本では水道水フロリデーションは行われていません。

実は日本でも、第二次世界大戦後のGHQ占領下において、試験的に水道水フロリデーションが行われていました。

しかし1960~1970年ころ、水俣病・イタイイタイ病などの公害や、環境汚染による化学物質への強い不信感が国民レベルで強くなり、水道水フロリデーションに対しても「化学物質を添加するべきではない」という反対運動が起こりました。

その結果、フッ素は個人責任のもと、学校や歯科医院で個別に対応すべきということになった歴史的背景があります。

ですから日本では、虫歯を効果的に予防するために「子どもの頃から歯科医院や自宅でフッ素塗布を行う習慣」を、保護者の方が作ってあげなくてはならないのです。

また、歯磨き習慣についても「子供のころからの積み重ね」は重要です。

ニュージーランドの研究では、「子どもの頃のプラーク付着状況から、成人期のプラーク状況を予測できる」ことが報告されています。

これらの研究からも、小児期からのフッ素習慣や口腔衛生習慣が、将来の口腔健康に明確に寄与していることが分かります。

8) 当院の取り組みと、歯科定期受診の意味

当院では、これまでも

  • 歯みがきなどの教育的指導
  • フッ素塗布
  • MFT(筋機能訓練)

といった、長期的な歯科疾患の予防につながる取り組みを行ってきました。

これらの取り組みには学術的な裏付けがあり、成人期・老年期の口腔健康にまでつながっているということを、ご理解いただけたのではないかと思います。

継続した歯科定期健診は、将来の口腔健康への『投資』です。

ぜひ歯科定期健診をご利用くださいね。

定期健診の案内イメージ

9) まとめ 口腔の健康は「今」だけでなく「将来」をつくる

いかがでしたか?

  • 虫歯は減少傾向にありますが、口腔疾患を有する人数は他の疾患と比べて依然として非常に多い
  • WHOの歴史的決議を受け、日本でも「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を目標とした歯科保健の指針が策定された
  • 「歯みがき指導」「フッ素」「MFT」をライフコースアプローチで行うことが重要
  • 定期健診は、成人・老後の口腔健康につながるので、ぜひ継続してください

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考文献 「歯科保健教育の推進」 日本学校歯科医会会誌 第137号(令和7年度 No1)

感覚が過敏な人のしくみと、その世界観に対する対策

2025年11月27日

小さなお子さんや発達がゆっくりなお子さんで、受診時や毎日の歯磨きの際に口を開けることを拒んだり、体を動かして嫌がることはありませんか?
こんにちは、医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。
ここ3回ほど、歯科での痛みや麻酔、歯科への怖い気持ちから起こる体の反応などについて特集してきました。

参考リンク

今回は、なぜ「歯医者・歯磨き=苦手」になりやすいのかの理由を、「感覚の偏り(過敏/鈍麻)」という観点から掘り下げていきます。

「歯医者さん、嫌だな、怖いな」
「どうしても歯医者に行く勇気が持てない」
「自閉傾向がある子供が、歯医者で極端に嫌がるため困っている」

そんな方にこそ、最後までお読みいただきたいです。

▼▼この記事の概要を図解▼▼

岩国市 歯科 怖くない

1.優位感覚の4タイプ

人は五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)を通じて情報を得ていますが、どの感覚に心と頭が反応しやすいかは人によって異なります。
この「感覚優位性」は、視覚・聴覚・体感覚の3つに分類され、最近では言語優位タイプもあると言われています。
優位感覚とは、その人が無意識に多く使う「脳のクセ」のようなもので、同じ出来事でも感じ方やインプット・アウトプットが異なります。

1)視覚優位タイプ

  • 目から入る情報で物事を認識しやすい
  • 絵・図・フローチャートで理解するのが得意
  • 「空間」「色」「明るさ」など視覚的な表現を好む
  • 目からの刺激に反応しがちで、気持ちがあちこちに飛びやすい
  • 言葉だけの指示は覚えにくく、メモして視覚化すると理解しやすい
  • 話の展開が早く、早口で主語が抜けやすい傾向

2)聴覚優位タイプ

  • 音で物事を捉えるのが得意で、声の変化にも敏感
  • 聞いて学習するのが得意で、音声コンテンツが効果的
  • 「騒がしさ」「聞こえる音」など聴覚的な表現を好む
  • 言葉で伝えられたことを理解し、そのまま繰り返せる
  • 騒音があると集中しにくく、静かな環境が必要
  • 論理的で、手順や分析を重視するタイプ

3)身体感覚優位タイプ

  • 体験したこと、触れたことを記憶しやすい
  • 体験・ロールプレイ・リズム・身体を動かす学習が定着しやすい
  • 身振り手振りが多く、「温度」「肌ざわり」などの表現を好む
  • 一つのことをじっくり味わうのが好き
  • 早口だと処理が追いつかず、ゆっくりした話し方が合っている
  • 見聞きしたことを身体で受け止めてから反応するタイプ

4)言語感覚優位タイプ

  • 誰かと話したり、メモを取ったり、文章にまとめることで理解が深まる
  • 自分なりのまとめ方やノート術が効果的
  • 例え話やストーリーと関連づけて記憶するのが得意

2.感覚の偏りとその影響

1)感覚の偏り

「ふわふわの手触りが好き」「熱がり/寒がり」など、感覚の受け取り方は人それぞれです。

優位感覚が均等であるという方は意外に少なく、例えば以下のようなケースは良くみられるパターンです。

  • 子供のころから眼鏡をかけている人は視覚からの感覚が弱く、聴覚・身体感覚を強く感じる
  • 目が良い人は視覚からの感覚が強く、聴覚からの感覚が弱め

中でも、自閉症/自閉傾向がある方では、聴覚と触覚に偏りが出やすいとされています。
自閉症の診断基準にも「感覚刺激に対する過敏または鈍感、もしくは環境の感覚的側面への特異な興味」が含まれています。

定型発達の人の場合、会話は鮮明に聞こえ、背景音(エアコン、風、車の音といった環境音)は意識しないと聞き逃してしまうものなのですが、自閉症・自閉傾向のある方は“すべての音を均等に拾ってしまう”ことがあります。
以上により

  • 「音がうるさい」
  • 「逆に会話が聞こえにくい」

という状態になることがあります。
環境音と会話が同じように聞こえてしまうために、会話が聞こえにくくなってしまうんですね。

自閉症の方の場合は、触覚でも同じようなこだわりや偏りが見られます。

岩国市 歯科 怖くない

 

2)感覚の偏りがあると、強いストレスを感じてしまうことがある

歯科医院には、こうした「感覚の偏り」があると、苦手に感じる刺激がたくさんあります。

  • 歯科医院独特の臭い(義歯材料のレジン、根治用薬剤などの臭い)
  • 歯科医院独特の音(チュイーン!という歯を削る音)
  • 口の中を照らすための強いライトの光
  • バキュームで口の中を吸われる感覚
  • 歯を削られるときの振動

一般の方でも、「嫌だな…」と感じる方も多いこうした刺激は、「感覚の偏り」がある場合、特に強いストレスとなってしまうことがあります。それが強い恐怖心・苦手意識・拒否感につながってしまう…というわけです。

岩国市 歯科 怖くない

3.簡単な工夫でストレスを軽減できることも

ちょっとした配慮で、困りごとや疲れ方を軽減できる場合があります。
できることから、試してみていただけたら嬉しいです。

  • ライトの光が苦手・気になる → アイマスクを使う
  • 大きな音や特定の音が苦手 → イヤーマフやイヤホンの使用
  • 背もたれが倒れる感覚が怖い → 先に背もたれを倒しておく
  • わずかな振動・接触でも強い痛みに感じる → 弱い刺激から慣らす
  • 痛みや熱に鈍感(ケガやむし歯に気づかない) → 定期健診でフォロー
  • 歯医者の臭いが苦手 → 事前に歯科側に相談する(個室対応、アロマオイルを使用するなど)
  • (発達障害があり)気になるものがあると触ろうとする → 気になるものを隠す

患者さんが思っている以上に、歯科を怖いと感じている人は多いです。
我々歯科医師・歯科スタッフの多くは、「歯医者が怖い方」に慣れています。

「自分だけ恥ずかしい」と思わずに、まずは怖い・苦手だと感じているものについて歯科スタッフにご相談ください。

4.小児歯科・障害者歯科で治療が難しい理由

患者さんの歯科への苦手意識から治療が困難になるケースはあります。
多くは、ストレスや理解できない刺激によりパニックが起き、気持ちが折れてしまうことがきっかけです。

歯科医師は、そのとき「何が問題だったのか」を振り返りつつ、嫌なこととその受け取り方が人によって異なる点を踏まえ、個人に合わせた治療のやり方を組み立てます。

  • 虫歯の大きさと治療法
  • 精神的な配慮
  • 落ち着いて治療を受けられる環境を用意できるか

などを考慮します。

5.感覚過敏と心理的拒否の違いと対応

患者さんが「感覚の偏り(過敏)」によって治療に強いストレスを感じているのか、恐怖心によって心理的に治療を拒否しているのか、はたまた両社が混在している状態なのか、他の要因も重なっているケースなのか。
上記のどれに該当するかで、歯科医師の対応も変わります。

1)感覚過敏が主なストレス源となっている場合

どんな刺激でも口や身体に触れた直後から力が入って拒否する場合、触れられることに少しずつ慣れていく“過敏の除去”が必要です。

口から遠い場所(肩など)から触れて、マッサージなどをしながら徐々に口に近づいていくように触れる方法や、いきなり歯を削らずに、バキュームだけ、水だけ、など刺激が小さいものから慣らしていく方法などがあります。

2)心理的拒否

優しい声かけや丁寧な関わりで、これまでの歯科診療や歯磨きのイメージを修正します。
笑気の使用などで「これならできる」という自信がつくと、行動が変化することもあります。

笑気についての参考リンク

6.まとめ

いかがでしたか?

  • 感覚の受け取り方は一人ひとり違い、歯科が苦手になる理由にもつながります。
  • 優位感覚を理解すると、お子さんの感じ方や行動の理由が見えやすくなります。
  • 自閉症では聴覚・触覚に偏りが出やすく、強い疲労や拒否反応が起こりやすいです。
  • アイマスクやイヤーマフなど、家庭でできる小さな工夫でも負担軽減に役立ちます。
  • 感覚過敏と心理的拒否は別で、丁寧な対応や慣らしで改善することが多いです。
  • 困りごとは一人で抱えず、歯科医に相談することで適した対応策を一緒に探せます。

お困りごとがある場合は、可能なところから一緒に検討できますので、まずはご相談ください。


参考文献
「学校における発達障害のある児童・生徒への対応」
日本学校歯科医会会誌 第138号(令和7年度 No.2)

歯科麻酔2 歯科医院での麻酔のしくみ 

2025年9月20日

こんにちは。岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村剛です。

歯科医院で一番の関門と患者さんからよく言われるもの、それは麻酔です。

僕の治療でも毎日使用しています。

先日、僕の口の中の詰め物が脱離し、患者として同僚の先生に治療していただいた際にも麻酔を受けました。

僕自身もあの麻酔の感覚は、どうやっても好きにはなれないものです。

今回は痛くない麻酔にするための工夫と、麻酔が効きにくい場合の対策についてお話します。

 

 

参考リンク

歯科麻酔シリーズ1: 歯科麻酔 なるべく無痛に近い歯科治療の実現のために

 


1)世界一の麻酔の名手は「蚊」

岩国市 歯科 麻酔

蚊は人間に気づかれないように刺してきます。

そう!針を刺されているのに、気づかない。

では、蚊はどんな工夫をしているのでしょうか?

 

・極細の注射針を使う

・時間をかけてゆっくり注入する

・表面を軽く麻酔して感じさせにくくする

これらが蚊のテクニックとされています。

なんかかゆくなってきましたが、歯科医院での麻酔はこのテクニックを模す形で進化しています。

細かく見ていきましょう!

1―1)表面麻酔

岩国 歯科 麻酔

• 歯茎の表面に麻酔薬を塗布して感覚を麻痺させる

• 針を刺す際の痛みを軽減

1-2)電動注射器

岩国 歯科 麻酔

• コンピュータ制御で麻酔液をゆっくりと注入する

• 圧力変化による痛みを抑えやすい

1-3)極細針

岩国 歯科 麻酔

• 皮膚や歯茎への侵入時の刺激を小さくする

(点滴などは0.4-0.5mm、歯科麻酔は0.26mmぐらい、約半分、痛みは3割減!)

 

このような工夫を組み合わせることにより、麻酔処置時の痛みを軽減できるようになっています。
実際、昔よりも痛くなくなったと患者さんに言われることも多いです。

 


 

2)麻酔が効きにくい!?どういう場合にそうなるの?

歯科医師は無痛に近い歯科治療を目指していますが、残念ながら「麻酔が効きにくい」というケースは確かにあります。
どのようなことが原因なのでしょうか。

岩国市 歯科 麻酔

 

2-1)炎症が起きている

歯や歯茎に強い炎症がある場合、通常よりも麻酔が効きにくくなることがあります。

炎症によって血流が増加し、麻酔薬が拡散してしまいやすくなり、薬の効果が十分に発揮されないためです。

また、炎症が進行していると患部のpHが低下し、麻酔薬の作用が弱まるという現象があります。
そのため、特に急性の歯の痛みや膿を伴う感染症がある場合には、通常より麻酔が効きにくくなることがあります。

従って、激しい痛みがある場合は治療前に、抗生剤の投薬などを行って炎症を抑えることが有効です。

2-2)飲酒や服薬の影響

治療前にアルコールを摂取していたり、普段から特定の薬を服用していたりすると、麻酔の効果が弱まることがあります。

アルコールは血流を促進する作用があり、効果の持続時間が短くなったり、効きが悪くなったりします。

また、向精神薬や一部の鎮痛剤など常用している薬が影響する場合もあります。

たばこも麻酔が効きにくくなります。

2-3)体質・体調による個人差、部位による効きやすさ

体質やその日の体調による個人差も、麻酔の効果に関わります。

もともと麻酔薬の代謝が早い体質の人もいます。

また、下顎の大臼歯部(奥歯)は麻酔が効きにくい神経の走行であるため、麻酔が効きにくい場合があります。

2-4)強い緊張やストレスを感じている

強い緊張やストレスを感じていると、緊張によって交感神経が活性化し、血流や代謝が変化するため、麻酔が効きにくくなる(と感じる)ケースもあります。

また、緊張していると通常よりも痛みに敏感になり、わずかな刺激でも強く感じてしまいます。

特に怖がりの方やお子さんでは、怖い気持ちが風船のように膨らんでおり、少しの気持ちで爆発してしまい、治療どころではなくなる場合があります。

実際、終わってしまって落ち着けばよく考えたら、

「痛みはたいしたことなかったけど、怖かった…」

という感想はよくあります。

また、気持ちの問題は治療が続くかぎり再現性をもって毎回発生しますので、対策が必要です。

岩国 歯科 麻酔


 

3)麻酔しても痛い!怖い!そんな時に痛みを感じにくくする方法

「痛い!」「怖い!」と緊張していると、麻酔していても痛みを感じやすくなってしまいます。

痛みをやわらげるためにも、リラックスが最も重要です。

3-1)緊張を和らげる、自力でできる注意ポイント

岩国市 歯科 麻酔

 

・鼻呼吸をする

 口で呼吸してしまうと、治療中の水や唾液によって息苦しくなり、より緊張してしまうことがあります。
鼻で大きく息をするようにした方が楽に治療を受けられます。

・目を閉じない/家族や術者の話しかけに耳を傾ける

目や耳からの情報が減ると、体で感じる刺激に集中して痛みが強く感じられるという現象が起きます。
通常、治療中に水しぶきがかからないように、顔にタオルをかけさせていただくことが多いです。

しかし麻酔の効きが不十分な場合は、あえてタオルをかけずに目を開けて治療に臨んでいただくこともあります。

・歯科のチュイーンという音が苦手な場合は、ノイズキャンセリングヘッドホンをつけたり、個室で治療を受ける

痛みの直接的な引き金ではなくても、歯科の音やニオイが原因で、恐怖心・緊張が高まる人がいます。
その場合は、ノイズキャンセリングヘッドホンを用いて音楽を聴きながら治療を受ける、あるいは個室診療室で音やニオイがない状態で治療を受けたりすることも有効です。

当院は防音個室治療室もあるので、ご希望の場合はお気軽にご相談ください(予約制)。

3-2)自力では難しい場合には「鎮静」

・笑気鎮静法(しょうきちんせいほう)

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笑気ガスを吸入することで、リラックス効果を得ながら治療を受けることができる方法です。

意識を保ったままでありながら、不安や恐怖心を和らげる効果や、痛みを感じにくくなる効果があります。
歯科治療に対する恐怖心が強い患者さんや、嘔吐反射が強くて歯科治療が苦手という方におススメです。

笑気鎮静法のメリットとしては、治療開始前に鼻からガスを吸入し、数分程度でリラックスした状態になることが多く、身体への負担が少ない点があげられます。

また薬の効果が切れるのも早いため、治療後は比較的すぐに日常生活に戻れます。

当院の場合は、床下換気システムを設置した個室(2部屋)で笑気鎮静治療を行うことが可能です。

ただし、笑気鎮静法が適していない人もいます。
それは鼻呼吸できない人です。

笑気鎮静法が向かない人

・鼻炎などで鼻呼吸ができない人

・泣いて鼻水が出てしまっている状態の小児

 

 

・静脈内鎮静法

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静脈内鎮静法は、静脈に点滴で薬剤を投与し、半分眠ったようなリラックス状態で治療を受けられる方法です。

緊張や恐怖心が大幅に軽減され、痛みに対しても非常に鈍感な状態になるため、治療への不安がとても強い患者さんにも向いています。

歯科麻酔の専門家が在籍する医院や病院などで受けることができます。

静脈鎮静が向かない人

・暴れてしまう小児(点滴のルート確保が難しい)


 

4)低年齢で泣いて暴れてしまう/知的障害などのために治療困難な場合は「全身麻酔」

岩国市 歯科 麻酔

全身麻酔は、眠った状態で治療を受けられる麻酔方法です。
意識もなく、覚醒した時にはすべてが終了しています。

このように聞くと、一般の方でも「それ良いですね!歯医者苦手だから、やってみたい!」と思われるかもしれませんが、実際はそんな簡単なお話ではありません。

全身麻酔での歯科治療のリスク・デメリット

・身体への負担が大きい

局所麻酔や静脈内鎮静に比べ、循環・呼吸に対する影響が強い。

・入院や高度な設備が必要

手術室、麻酔器、人工呼吸管理などの設備が必要で、一般的な歯科医院では対応できません。

・治療に制約がある

全身麻酔は頻繁には行えないため、処置をまとめて1回で行う必要がある。

 

一般の歯科医院の外来ではどうしても治療が難しい方向けの方法と思ってください。

 


 

5)お子様も含めて多くの方が、外来で治療できています

静脈内鎮静や全身麻酔まで行わず、笑気鎮静を使った治療を行うことだけでも、歯科治療で泣いてしまうお子さんを含めてかなりの方が、なんとか治療できたというケースは多いです。

当院でも、外来での治療は危険と判断する場合は大学病院にご紹介させていただいていますが、大多数の方は外来で治療ができています。
特に笑気鎮静は、強いストレスや恐怖に対しては有効だと考えています。

歯科恐怖症などで治療が困難な患者さんには、お薬手帳の内容や現在の通院状況などをお伺いして、必要な情報をもとにオーダーメイドな方法を検討しています。
お気軽にご相談ください。

 


まとめ

いかがでしたか?

・歯科麻酔は、表面麻酔、電動コントロール、極細針を使うことで、痛みが大幅に軽減されます。

・麻酔が効きにくいシチュエーションは確かにあり、患部の炎症、飲酒や服薬の影響、個人差や部位の違いが考えられます。
また、麻酔に強いストレスがある場合も特別な配慮が必要であると考えます。

・リラックスすることが一番大事ですが、物理的、精神的に難しい場合、笑気麻酔などの対応策があります。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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