日本の口腔保健(小児歯科を含む)の目指すもの
2026年2月13日
日本の口腔保健(小児歯科を含む)の目指すもの
こんにちは、岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。
前回は、日本と海外の「予防歯科」の考え方の違いについて解説しました。
医療で何を重視するかは国によって異なりますが、日本の特徴は次の2点でした。
- ・日本は予防よりも治療に重きを置いている
- ・予防については個人の価値観が重視され、学校や自治体の関与は比較的少ない
これは良い・悪いという話ではなく、医療に対する考え方の違いによるものです。現在の日本の保健行政も、この前提に基づいて計画が立てられています。
1)日本は「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」を目指している
日本では2024年に策定された「健康日本21」歯科版の「歯・口腔の健康づくりプラン」に基づき、「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」を大きな目標として医療行政が進められています。
具体的な取り組みとしては、
- ・学校での歯科検診
- ・学校での歯みがき実施や歯科保健教育
- ・フッ素の活用
- ・ライフコースアプローチの推進
などが挙げられます。
ライフコースアプローチとは、幼少期、場合によっては胎児期からの生活習慣や健康状態が、成人期・高齢期の健康にまで影響するという考え方です。
「子どものころの習慣が一生を左右する」という視点に立った健康づくりです。
次の章から、具体的な目標について解説していきましょう。

2)日本が健康寿命を延ばすために目指している「目標」

2-1)歯周病を有する人の減少と、その格差の縮小
- ・正しいセルフケア(歯みがき・歯間清掃)の実践者を増やす
- ・歯肉炎・歯周炎のある人を減らす
- ・喫煙・受動喫煙を減らす
ここに喫煙・受動喫煙が入っているのは、タバコは歯周病の原因になるためです。
ニコチンが毛細血管を収縮させることで、歯茎の血行が悪くなることで歯周炎になりやすくなってしまうのです。

2-2)よく噛んで食べられる人の増加と、その格差の縮小
- ・むし歯のない人の割合を増やす
- ・60歳で24歯以上残っている人を増やす
- ・40歳以上で19歯以下の人を減らす
- ・口腔機能が低下している人を減らす
2-3)歯科検診を受ける人の増加と、その格差の縮小
- ・歯科健診を実施する事業所を増やす
- ・「健康経営」に歯科を取り入れる企業を増やす
- ・妊産婦歯科健診を行う市町村を増やす
- ・歯周病検診を行う市町村を増やす
(厚生労働省資料より)
3)どのくらい達成できているの?
前述のような目標に向かって、行政も歯科医師会も頑張ってきたわけですが、では、これらの目標はどの程度達成されているのでしょうか?
3-1)高齢者の目標について
特に注目されている指標が「8020達成率」です。

80歳で20本以上の歯を保つ人は、要介護になることが少ないことから、1989年(平成元年)に、厚生省(現在の 厚生労働省)と 日本歯科医師会 が提唱した国民運動です。
- ・現在80歳で20本以上の歯を保つ人の割合は約61%
- ・2016年に「8020達成者率を50%に」という目標をしました。
- ・現在は新目標「8020達成者率を85%」に向けて新たな取り組みがなされています。

3-2)歯科受診率の目標について
・1年以内に歯科を受診した経験がある人は約6割に増え、年々増加。

3-3)小児歯科における数値目標
3歳児
- ・3歳児のむし歯経験なし率:目標80%以上(健康日本21)
→ 2021年の現状値では、「3歳で4本以上の虫歯がある子供の割合」は4%(出典:地域保健・健康増進事業報告)
- ・日本における 3 歳児のむし歯有病率(1 本以上むし歯を持つ割合) は、長期的に大幅に低下
→1989 年頃:約 55.8%(むし歯がある割合)
→2010〜2020 年代:10〜20% 台前後 の割合に低下(研究・市区町村データによる)

12歳児
- ・12歳児(1人平均永久歯むし歯数(DMF)が1.0未満である都道府県を増やす)(健康日本21)
→1998〜2000年前後:2〜3 本台に低下(学校保健統計など)
→2018〜2020 年代:0.7 本台へ減少(学校保健統計)
→令和 4 年度(2022〜2023):0.56 本(過去最低更新)という報告あり

こうして見ると、日本は予防意識の向上と制度整備により、着実に改善を重ねてきたことが分かります。
一方で、いわゆる「二極化問題」、
多くのお子さんの歯が虫歯にならずに予防できているのに対し、口腔崩壊というレベルで虫歯になっているお子さんも見かける…という問題があります。

- ・ほとんどむし歯がないお子さん
- ・たくさんの虫歯により、口腔内の問題がたくさんあるお子さん
背景には生活習慣や家庭環境など、さまざまな事情があります。
行政の改善も、学校からの関りも、各家庭での生活習慣の見直しなども、
最終的には「一人ひとりの改善」の積み重ねです。
行政や学校も、口腔崩壊の状態にあるお子さんにどうアプローチすべきか、議論を重ねています。
そういったケースでは、歯科受診さえしていただければ、そのお子さんに最もあっている方針を個別に考えますので、まずはご相談いただければと思います。
3-4)切れ目のない検診機会の確保
近年、厚生労働省が特に力を入れているのが「切れ目のない検診機会の確保」です。

子供のうちは
と切れ間なくある歯科健診も、社会人になったあとは途切れてしまう問題です。

現在、成人の節目検診は市区町村が実施主体で、実際の実施年齢や回数は 各自治体の裁量 です。
ちなみに岩国市では「いい歯おとなの歯科健診」という自治体の無料歯科健診があり、
20歳 25歳 30歳 35歳 40歳 50歳 60歳 70歳 +妊婦(年齢問わず)
が対象となっています。
現在の受診率は約53.6%(全国平均の58%より低い)で、
一方で「歯科健診を受けたことがない」と答える人が20.8%もいることが問題視されています。
健康日本21(第3次)では、歯科受診率95%という高い目標も掲げられています。
「特別なときだけ、トラブルがあったときだけ」ではなく、「習慣として通う」ことが求められているのです。

4)まとめ
いかがでしたか?
- ・この20年で、日本の歯科保健は数値目標を明確にし、国民の健康レベルは大きく前進してきました。
- ・最終的にお口の健康を守るのは制度ではなく、ご家庭での習慣と選択です。
- ・「何か問題がある時だけ歯科受診する」ではなく、「習慣として通う」こと重要です。
- ・お口の中の問題でお困りごとがありましたら、歯科医院で個別に治療や習慣の見直しなどを相談するのがおススメです。

気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
海外の小児歯科事情について― 日本との違いから見えてくる「予防」と「矯正」 ―
2026年1月30日
こんにちは。岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正 副院長の吉村です。
当院は米軍基地が近いこともあり、海外で歯科治療を受けてこられた患者さんも、多く来院されます。
治療の跡を見て「日本と同じだな」と感じることもあれば、「これは少し考え方が違うな」と思うことも少なくありません。
前回は
「世界と日本の口腔健康に対する考え方の違い」
についてご紹介しました。
今回はその続きとして、
「虫歯予防」や「矯正治療」などの小児歯科事情を中心に、日本と海外の違いを分かりやすく解説していきたいと思います。

▼前回の記事はこちら
虫歯は減ったのに、なぜ口の病気は世界最大級の健康課題なのかhttps://tsuboidental.com/blogs/archives/7931
1)フッ素の使い方と定期健診の考え方 ― 海外と日本の違い ―
フッ素の使い方には、国ごとに明確な「戦略の違い」があります。
1-1)海外:水道水フロリデーションという考え方

アメリカやオーストラリアでは、水道水にフッ素を添加している地域が多くあります。
毎日飲む水にフッ素が含まれているため、特別な意識をしなくても虫歯予防ができる、いわば「パッシブ(受動的)な予防」です。
1-2)日本・北欧:個人の選択を重視
一方、日本や北欧諸国では、水道水へのフッ素添加は行われていません。
(一度採用した国でも改めてやめている国も多いです。ちなみに日本では全国一律で実施されたことはなく、過去に京都府山科地区、沖縄県、三重県朝日町などで試験的に行われたのみです。)
これは
「飲料水に何かを加えるかどうかは、個人の選択に委ねるべき」
という哲学的な考え方に基づいています。
どちらが正しい、という話ではありません。
ただし日本では、虫歯を防ぐために
「子どもの頃から歯科医院や自宅でフッ素塗布を行う習慣」を、保護者の方が積極的に作ってあげなくてはなりません(積極的な予防)。
1-3)日本で推奨されているフッ素の使い方(2023年改訂)
2023年、日本小児歯科学会など4つの専門学会が、フッ素使用の推奨量を見直しました。
現在の考え方は、「高濃度・微量使用」 です。
虫歯予防効果の高い1,000ppmF前後の高濃度フッ素配合歯磨剤を、ごく少量だけ使うという方法が推奨されています。
使用量の目安は以下の通りです。
- ・歯の萌出直後から使用開始
- ・フッ素濃度:900~1,000ppmF
- 年齢別の使用量
- ・2歳まで:米粒程度(1~2mm)
- ・3~5歳:グリーンピース程度(約5mm)
- ・6歳以上:歯ブラシの幅程度(この年代では1,450ppmFが推奨されます)
「歯が生えたらすぐに、効果の高いフッ素を安全な量で使い始める」
これが、現在の学会が示しているフッ素利用の基本的な考え方です。
ちなみに海外では、5,000ppmFの高濃度フッ素歯磨剤が、老年期の根面う蝕に推奨されています。
日本では低年齢児には危険と判断され、市販されていませんが、
世界的な潮流としては
「高濃度を、必要最小限で使う」
という方向に進んでいます。

2)治療的予防という考え方 ― アメリカと日本の違い ―
現在アメリカ(米国歯科医師会:ADAや米国小児歯科学会:AAPD)では、「穴があく一歩手前の、初期むし歯」に対しても、シーラントをすることを強く推奨しています。
2-1)フィッシャーシーラントとは
虫歯になりやすい奥歯の溝を、樹脂であらかじめ封鎖する処置です。
多くの場合、歯を削らずに行え、子どもの虫歯予防として広く使われています。
日本でも、15歳以下の小児に対しては保険診療で実施可能です。
2-2)「予防」から「初期虫歯の管理」へ
システマティックレビュー(多くの研究を統合評価する手法)により、初期虫歯の上からシーラントで物理的に封鎖することで、虫歯の進行を抑えられることが確認されています。
つまりシーラントは、従来の「虫歯予防」に加えて「初期虫歯の管理・治療」という役割も担うようになってきているのです。
※進行した虫歯には適応できないため、正確な診断が重要です。
2-3)アメリカのスクール・シーラント・プログラム(SSP)
アメリカでは、CDC(疾病予防管理センター)がスクール・シーラント・プログラム(SSP)を強力に推進しています。(J Am Dent Assoc.153(10):970-978.e4.)
これは歯科専門家が学校に出向き、シーラントを実施する取り組みです。
背景には、所得による医療格差という社会問題があります。
その結果、「4本のシーラント処置を行うことで、統計的に1本の大臼歯の虫歯発生を防げた(placing 4 sealants would prevent caries in 1 molar)」と報告されています。
虫歯を
「個人の努力の問題」ではなく
「社会全体で解決すべき課題」
として捉えている点が、アメリカの大きな特徴です。

2-4)日本の現状
一方、日本の状況はどうでしょうか。
文部科学省「学校保健統計調査(令和5年度)」によると、全国の12歳児のむし歯保有者率(虫歯経験者割合)は約35%。
子どもの虫歯罹患率は、この数十年で多く低下していますが
「虫歯を克服した」と言える数字ではありません。
一方で、学校歯科医と自治体が連携してシーラント予防を進めている地域は減少しています。
補足:日本も過去には自治体主導のシーラント事業があった
1980~1990年代、12歳児のむし歯保有者率(虫歯経験者割合)は約94%と高水準だった時代には、シーラントやフッ化物応用を公的に導入する議論が盛んに行われました。
一部自治体では、学校歯科健診後に特定学年(6歳臼歯)へシーラントを行う事業もありましたが、全国制度としては定着せず、現在は受診勧告が中心となっています。
ここにも、
「予防は各家庭の選択に委ねる」
という日本の考え方が色濃く反映されています。

2-5)日本とアメリカ、予防に対する価値観の違い
フッ素もシーラントも、疫学的に「虫歯予防に非常に有効」であることが立証されています。
その虫歯予防をアメリカなどは
「社会の課題として、家庭環境によらず子ども全員が受けることができる」
とし、一方日本では、
「各家庭の課題として、各家庭の裁量に任せられるべき」
としているということですね。
どちらが正しいということはありません。
価値観の違いです。
しかし、専業主婦が多かった1990年代と比べて、共働き家庭が多くなった2026年の日本では、
「学校で自動的に虫歯予防しておいてくれたら助かるのに~」という保護者の方は、増えているのではないかな…とは感じています。

3)日本と世界の「歯列矯正」の現状 ― 保険適用を中心に ―
3-1)日本の矯正治療の保険適応範囲
日本では、原則として矯正治療は保険適用外です。
ただし、以下のような国が定めた疾患に該当する場合は、保険診療が認められています。
- ・顎変形症(外科手術を伴うもの)
- ・先天性疾患に起因する咬合異常(口唇裂・口蓋裂、厚労省告示で指定された疾患)
- ・6歯以上の永久歯先天欠如で機能障害を認める場合
これらは、特定の医療機関(大学病院、またそれに準ずる医療機関)において健康保険の認可が得られています。
年間の顎変形症手術件数は約4,000~5,000件と推計されており、日本で矯正治療を受ける人のうち、保険適用となるのは約7%と言われています。

3-2)海外の矯正治療の保険適応範囲
海外では、
- ・放っておくと将来大変になる骨格性の受け口
- ・開咬(前歯が噛み合わない)
- ・成長期を逃すと治療が難しくなる症例
などで、保険や公費が適用されるケースが多く見られます。
スウェーデンの例
子どもの歯科治療が基本的に無料のスウェーデンでは、
矯正治療の必要性(重症度) によって公費負担が決まります。
IOTN(治療必要度指数)が一定以上で、
機能的問題があると判断された場合、全額公費(無料)となります。
用語: IOTN(Index of Orthodontic Treatment Need:治療必要度指数)
歯科矯正が必要かどうかを、「歯の健康(機能)」と「見た目(審美)」の両面から客観的に判定するための指標。医学的・機能的な問題(噛み合わせが何mmズレているか、など)審美的な問題(見た目)の2軸で評価します。
公費(無料)で治療が受けられるのは、原則として「医学的・機能的な必要性が非常に高い(Grade 4, 5)」と判断された子だけです。
例えば、「出っ歯が9mm以上ある」(Grade 5)や「反対咬合(受け口)が3.5mm以上ある」(Grade 4)といった、明確な基準があります。

3-3)日本と海外の矯正治療の保険適応の違い
では、歯並びを保険(公費)で治療できる割合は、日本と海外、どちらが多いのでしょうか?
- ・デンマーク:18歳以下は矯正治療も含めて全額が公費負担(100%無料)
- ・スウェーデン、イギリス、ドイツなど「重症を救う」:疾患名に関わらず、ガタガタの度合い(IOTN)が基準を超えれば一律無料・公費カバー率20~30%
- ・フランス・アメリカなど「民間保険・公的支援混合型」:民間と公的な保険の混合により、自費負担を軽減する方式です。フランスは16歳未満なら公費カバー率30%以上、アメリカは民間保険のプランによる、という感じです。
- ・日本、イタリア、ブラジルなど「自費中心型」:矯正は「個人の審美」と捉えられる傾向が強く、特定の病気(先天性疾患など)以外の公費サポートはありません。
日本において医療保険は「病気を治す」という価値観が強く、顎変形症などの重度症例に対しては世界でも稀なほど手厚いサポートがありますが、一般的な不正咬合までを含めた『広い意味での医学的必要性』へのカバー範囲は、他の先進国より限定的であると言えるでしょう。

もっと踏み込んでいえば、日本は
「その不正咬合による将来的なリスクを予防する」
という点よりも
「今、すでにある疾患を治療する」
という点が重視されています。
「病気の予防は自費で」
「すでに発症した疾患の治療は保険で」
これが日本の医療保険制度です。

そのため、癌や脳血管障害といった重大な病気にかかった際には、誰もが高度な医療を安価に受けられるという、世界に誇るべき安心な体制が整っています。しかしその反面、「病気を未然に防ぐ予防」については、自己負担(自費)が原則です。
「病気になってから治す」ことへの手厚いサポートがある一方で、
「病気にならないための投資」が個人の判断に委ねられているのです。
これは、小児歯科医としての個人的意見にはなりますが、
「悪くなってから治す」ばかりでなく、
「悪くなりそうだと分かっている症例」「安価な費用で予防可能な病気」にはもう少し、公費サポートの範囲を広げても良いのではないかとも感じています。

コラム: 日本では「保険適応疾患」ではない「不正咬合」が起こすリスクのある疾患
日本の保険制度では「見た目の問題」とされがちな不正咬合ですが、放置することで以下のような全身の健康を脅かす「疾患」のリスクを高めてしまいます。
虫歯・歯周病(慢性炎症)
複雑な歯並びはブラッシングが困難な箇所を生み、細菌の温床となって歯を失う最大の原因を作ります。
上顎前突(出っ歯)による口呼吸
唇が閉じにくくなることで口腔内が乾燥し、自浄作用の低下や免疫力の減退を引き起こします。
低位舌(ていいぜつ)
口呼吸が習慣化すると舌の位置が下がり、歯列のさらなる悪化や顔貌の変化、発音障害を招きます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
低位舌によって就寝時に気道が塞がりやすくなり、脳や心臓に負担をかける深刻な睡眠障害の原因となります。
咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)
一部の歯に過度な負担がかかる状態が長年継続すると、健康な歯であっても、周囲の骨が溶けたりすることがあります。
咀嚼障害(そしゃくしょうがい)
効率よく食べ物を噛み砕けなくなることで消化器官への負担が増し、栄養吸収の効率を下げてしまいます。
老年期の嚥下障害(えんげしょうがい)
若い頃からの不正咬合や早期の抜歯は、高齢期の「飲み込む力」を低下させ、誤嚥性肺炎のリスクを高めます。
4)日本の歯科保険は「世界に誇れる」
今回は色々と海外の事例の紹介を行いました。
日本には、
- ・国民皆保険
- ・乳幼児健診
- ・学校歯科健診
- ・母子健康手帳/妊婦検診
- ・自治体の節目歯科検診
といった、世界に誇る充実したシステムがあります。

日本の予防・治療の意識、知識は決して低いわけではありません。
早期発見、早期受診勧告の仕組みは十分に整備されているのです。

一方、日本では
「予防は自費」
「予防は各家庭に任せる」
という考えが根底にあるため、
既に疾患としてあるものの治療には手厚い公的サポートがある一方で、
未病(病気になるリスクが高い状態、病気一歩手前の状態)に対するサポートは少ないことがお分かりいただけたと思います。
だからこそ、歯科検診で早期発見・早期受診勧告を受けたら、早めに歯科医院に受診されることをおススメします。

5)まとめ
いかがでしたか?
- ・日本では水道水にフッ素が入っていないため、家庭での積極的なフッ素使用が重要
- ・現在のフッ素使用は「高濃度・微量」が基本
- ・日本の医療制度は「治療重視・予防は自助」が特徴
- ・早期発見・受診勧告の仕組みは整っているため、指摘を受けたら早めの受診を
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
お口のケアで感染症対策。歯磨き習慣とインフルエンザ予防
2026年1月4日
こんにちは。
岩国のつぼい歯科クリニック おとなこども矯正歯科、院長の坪井です。
冬になると毎年話題になるインフルエンザ。
今年も猛威を振るっていますね。
岩国地区でも、学級閉鎖などが頻繁に起きているようです。
インフルエンザ予防と言えば、「手洗い・うがい・マスク・ワクチン」は、多くの方が意識されていることでしょう。

実は、歯科の立場から強調したい予防策があります。
それが 歯みがきと鼻呼吸(お口ポカン防止) です。
今回は
①なぜ歯みがきや歯科ケアがインフルエンザ予防につながるのか?
②口呼吸が感染症にかかるリスクを上げてしまう理由とは?
③おススメの歯磨き・口呼吸を予防するトレーニングはどんなもの?
の3本立てでお話します。
ぜひ最後まで見て、この冬を一緒に快適に乗り切って行きましょう。
1 歯みがき・口腔ケアがインフルエンザ予防につながる理由
1-1)口腔内を清潔に保つことで、インフルエンザの発症リスクが下がる
特に注目されているのが、
• 歯や歯周ポケットに存在する歯周病菌
• それらが形成するバイオフィルム(細菌の膜)
です。
歯周病菌が多い状態では、インフルエンザウィルスが細胞に感染しやすくなってしまうためです。
歯垢(プラーク)は単なる「汚れ」ではなく、複数の細菌、最近が分泌した構造体などの複合体です。
歯垢には、歯周病菌をはじめとした、病原菌が生活しやすいよう、悪い環境を作る性質があります。

歯垢が作る悪い環境
・うがいなどで洗い流すだけでは除去できない
・薬剤抵抗性を示す(ウガイ薬、飲み薬では除去できない)
これがインフルエンザウィルスにとっても感染の土台となる環境として機能してしまうのです。
歯垢(プラーク・バイオフィルム)に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
https://tsuboidental.com/blogs/archives/7425
1-2)歯みがき+歯科のプロケアで、インフルエンザ発症が「約10分の1」になった

日本歯科医学会誌に掲載された内容で、口腔内環境を清浄に保つ(歯科衛生士などによる専門的口腔ケアを含む)ことで、インフルエンザ発症率が約10分の1に抑えられたという報告があります。
これは高齢者施設での研究ですので、一般の健康な成人や小児で同じ倍率で予防できると断言はできませんが、歯磨きがインフルエンザに効果的であることは間違いないと言えます。
参考文献
• 日本歯科医学会誌 Vol.25(2006)p.27–33
• Abe S, et al. Professional oral care reduces influenza infection in elderly. Arch Gerontol Geriatr. 2006
2 歯周病の予防は、コロナ感染予防・重症化予防にもなる
他のウィルス性感染症の場合はどうでしょうか?
インフルエンザと並ぶ、流行性ウィルス感染症の新型コロナウィルスについて、解説します。
2-1)新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るっていた時期、歯科医院ではクラスターがほぼ発生しなかった
新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るっていた時期、意外な事実が注目を集めました。
それは、「全国約6.6万軒におよぶ歯科医院において、診療室での集団感染(クラスター)の報告がゼロだった」という点です。
当時、大阪府の吉村知事も、大阪府内の約5500軒の歯科医院で新型コロナウィルスのクラスター(集団感染)が1件も発生していないことに着目し、「感染対策の賜物だと思うが、何かある。
何か?」とツイッターに投稿したことが話題になりました。
たしかに、もともと歯科業界では、HIVや肝炎ウィルスなどの「ウィルスの水平感染」を防ぐため、非常に厳しい滅菌・消毒の基準を日常的に守り続けてきました。
加えて当時、(当院もですが)換気基準を満たすため換気設備の更新や、スタッフルームの整備をしてランチを「個食」出来るようにした医院も多かったです。
しかし、全国で6.6万軒ある歯科医院のうち院長が60歳以上である歯科医院は46.8%(3万医院以上)、院長が70歳以上である歯科医院が13%(約8600医院)もあり、大規模な設備投資をしなかった医院も多かったはずなのです。
にもかかわらず、診療室でもスタッフルーム(ランチの場所)でも、ほぼクラスターが発生しなかったのは、「患者さんもスタッフも、歯磨き+プロケアがちゃんと出来ていた」からではないか…と、個人的には思っています。
2-2)歯周病になっている人は、コロナウィルスにかかりやすい

歯周病がある場合、新型コロナへの感染確率は 約 2.8 倍 高まるという報告があります。
歯周ポケット内には、ウイルスが細胞に侵入する際に利用する受容体(ACE2)や酵素(TMPRSS2)が多く発現しており、歯周ポケットが「ウイルスの貯蔵庫(リザーバー)」として機能してしまうと言われています。
また、歯周病菌が持つ「プロテアーゼ」という酵素が、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を切り分け、細胞に侵入しやすくしてしまいます。

*この感染機序はインフルエンザウィルスとも非常によく似ています。
歯科医院で勤務するスタッフが新型コロナ流行期に感染しにくかったのは、単にマスクをしていたからではなく、『お口の中にウイルスを呼び込む隙(歯周病)を作っていなかったから』とも言えるのです。
3 うがい以上に歯みがきが大切
この考え方を、一般の方にも非常に分かりやすく解説しているのが
日本歯科医師会 8020テレビ の動画です。
日本歯科医師会 8020テレビ「インフルエンザ予防と歯周病菌」https://www.youtube.com/watch?v=Nh71xJ2EovE
この動画では、大阪大学大学院歯学研究科・予防歯科学分野の第一人者である
天野敦雄 教授 が解説されています。
動画の内容をざっくりとご説明すると、以下の通りです。
(詳しくは動画をご覧ください)
• うがいだけでは、歯や歯周ポケットの歯周病菌は十分に除去できない
• 歯周病菌が多いと、インフルエンザウィルスの感染力が高まる可能性がある
• だからこそ、歯みがき・口腔清掃が重要
つまり、歯みがきは
「口の中をきれいにする行為」というより「ウィルスの感染リスクや歯周病菌による炎症のリスクを下げる行為」なのです。


4 もう一つの重要ポイント「口呼吸」
ウィルス性感染症の予防を考えるうえで、もう一つ見逃せないのが 口呼吸 です。
「口呼吸をしているとインフルエンザになる」と断定できる研究はありません。
ただし、口呼吸には次のような不利な条件が重なります。
口呼吸が鼻呼吸より感染リスクが高くなる理由

• 口腔・咽頭が乾燥しやすい
• 鼻の加湿・加温・ろ過機能が使えない
• 吸い込んだ粒子(ウイルスを含む)が気道に入りやすい
これらは、感染症全般において防御機能が低下しやすい状態と考えられています。
参考リンク:良くない口の習慣、「口呼吸」 ~風邪をひきやすく、虫歯・歯周病・口臭・出っ歯の原因にもなる~
https://tsuboidental.com/blogs/archives/5023
4-1)「私、口呼吸している?」自覚しにくい人のための簡易チェック
口呼吸は、本人に自覚がないケースがとても多いのが特徴です。
次の項目に心当たりはありませんか?
• 冬になると鼻が詰まりやすく、気づけば口で息をしている
• 朝起きたとき、口の中が強く乾燥している
• 寝起きに喉が痛い、イガイガする
• 唇が乾燥で切れやすい
• 口角炎を繰り返す
• 日中、無意識に口が半開きになっている
• いびきを指摘されたことがある
一つでも当てはまる方は、口呼吸が習慣化している可能性があります。
4-2)あいうべ体操は「鼻呼吸に戻すための練習」
あいうべ体操は、
• 舌や口周りの筋肉を動かす
• 口唇閉鎖を意識しやすくする
ことで、鼻呼吸を促すことを目的とした体操です。
簡単で道具も必要ないため、幼稚園や小学校などでインフルエンザ予防のために取り入れられたりしているので、聞いたことがある方もいるかもしれません。
医学的な厳密な比較試験(RCT)はまだ発展途上の分野ですが、福岡県の小学校などの事例では、あいうべ体操を導入した学校において、導入していない学校よりもインフルエンザの発症率が劇的に下がったという報告があります。
これは、口呼吸が鼻呼吸に変わることで、鼻の加湿・加温・除菌フィルター機能が働いた結果と考えられています。
🌟あいうべ体操🌟

動き ポイント
①「あー」 口を大きく「楕円形」に開くイメージで!
②「いー」 前歯がしっかり見えるように、口を横に思い切り広げる!
③「うー」 唇を思い切り前に突き出す!
④「べー」 舌をあごの先まで伸ばすつもりで、下に突き出す!
単調に「あいうべ~、あいうべ~」とやっても良いのですが、お気に入りの歌を「あいうべ~」で替え歌にして歌っても、楽しいですよ。
♪あ~あ、いっい~、うっう~べ~ぇ あ~ぁい~う~べ~(水戸黄門のメロディ)
♪あ~あ~い~い~う~う~べ~(キラキラ星のメロディ)
のように、自由に「あいうべアレンジ」をして、毎日2曲歌えば、かなりのトレーニングになるはずです。
コツとしては、歌の練習ではなく筋トレですので、発声よりも、筋肉を大きく動かすことを意識すると良いでしょう。

5 まとめ:インフルエンザ対策は「口の中」から始まる
いかがでしたか?
インフルエンザ対策というと、どうしても外からの予防に目が向きがちです。
しかし、内側から防御力を高めることも、とても効果的です。
• 毎日の歯みがき
• 定期的な歯科でのプロケア
• 口呼吸に気づき、鼻呼吸を意識する
こうした日常の積み重ねが、体を守る力につながります。
「毎年インフルエンザが心配」
「冬は体調を崩しやすい」
という方は、ぜひ一度、お口の状態と呼吸のクセを見直してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
全体の参考文献・資料
• 日本歯科医学会誌 Vol.25(2006)
• Abe S, et al. Professional oral care reduces influenza infection in elderly.
• 日本歯科医師会 8020テレビ「インフルエンザ予防と歯周病菌」
虫歯は減ったのに、なぜ口の病気は世界最大級の健康課題なのか~歯科保健行政が目指しているもの~
2025年12月18日
1) 「虫歯は減った」と言われる時代に、あらためて口腔の健康を考える
こんにちは。岩国市の医療法人つぼい歯科クリニック おとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。
「昔に比べて、虫歯は減ったらしいよね」という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
実際、国が行っている歯科疾患実態調査を見ても、むし歯の罹患状況は全体として大きく改善してきていることが分かっています。
参考リンク:歯科疾患実態調査:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000176912.html
しかし一方で、口腔の病気が社会全体にどの程度の影響を与えているのか、他の病気と比べてどう位置づけられているのかについては、あまり知られていないのが現状です。
そこで今回は、行政を中心とした口腔の健康へのアプローチについて、世界、そして日本の行政がどのように考え、どんな方向性を示しているのかを調べ、その内容を分かりやすく解説していきたいと思います。
2) 世界から見た口腔疾患の現状 ― 虫歯は「最も多い病気」
近年、「世界疾病負担研究(GBD)」という、さまざまな病気の負担を横並びで比較する研究が行われました。その結果、永久歯の未処置う蝕(むし歯)は、300以上の疾患の中で最も多い疾患であると報告されています。
また、2022年に公表されたWHO(世界保健機関)のレポートでは、う蝕、歯周病、歯の喪失などの口腔疾患を有する人は約34億7000万人とされました。これは、精神疾患(約9億7000万人)や循環器疾患(約5億2200万人)などと比べても、桁違いに多い数字です。
この結果から、「虫歯は減っている」というイメージとは裏腹に、口腔疾患は世界規模では依然として最も身近で、最も患者数の多い疾患群であることが明らかになっています。
3)WHOの歴史的決議 ― 口腔疾患は「社会の課題」へ
こうした背景を受け、2021年にWHO第74回保健総会において、「口腔の健康に関する決議」が採択されました。
歯科分野が単独でこのような決議の対象となることは非常に珍しく、歴史的な出来事といわれています。
この決議が目指す方向性は、
「2030年に向けたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)および非感染性疾患(NCD)対策の一環として、より良い口腔保健を達成する」
というものです。
つまり、むし歯や歯周病を単なる感染症として捉えるのではなく、生活習慣や社会環境と深く関わる疾患=生活習慣病に近い存在として位置づけ、社会全体で取り組むべき健康課題として扱おう、という考え方です。
4)日本の行政の方向性 ―「健康日本21」と歯・口腔の健康づくりプラン
このWHOの流れを受け、日本では2024年に「健康日本21」の歯科分野として、「歯・口腔の健康づくりプラン」が策定されました。
このプランの最上位目標は、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」です。
具体的な取り組みとしては、
- 学校歯科健診
- 日常的な歯みがきの実施
- 歯科保健教育
- フッ化物の活用
- ライフコースアプローチ
といった内容が示されています。
ライフコースアプローチとは、乳幼児期、場合によっては胎児期の健康や生活習慣が、成人期・高齢期の健康にまで影響するという考え方です。
5)実は重要な「お子さんへの教育的アプローチ」
こうした背景を踏まえ、歯科医院は(治療をしっかり行うことは当然として)、教育的なアプローチが強く求められていると感じています。
歯科医院での歯垢の染め出しや食生活指導は、患者さんからすると「少しうるさい」「面倒」と感じられるかもしれません。
実際、これまでの診療の中で、お子さんが日常的にグミやアイス、飴などを口にする習慣があるご家庭の患者さんに対して、食習慣の改善についてお話すると、「言っていることは分かるが、しつこく飴やグミをやめろと言われるのが嫌なので、担当の先生を変えてください」と言われてしまったことも、一度や二度ではありません。
飴やグミなどのお菓子が完全に生活習慣の一部になっている場合や、大袋のお菓子を与えている間はお母さんが家事や育児から一時的に解放される、といった事情がある場合など、「やめられない理由」があることは理解できます。
たばこや過食と同じで、「良くないことは分かっているけれど、やめるのが大変」なんですよね。
そのうえで、それでもなお、お子さんの人生全体を考えたときに「お砂糖たっぷりの市販菓子を日常的に食べることはやめた方が良い」とお伝えするべきだと考えています。
短期的には煙たがられてしまうことがあったとしても、将来の口腔の健康、ひいては全身の健康につながる重要な部分だからこそ、避けて通れない歯科医院の役割だと思っています。
6) 口腔機能の「貯筋」
小児期にマイオファンクショナルセラピー(MFT:口腔筋機能訓練)によって口腔筋機能を高めることも、正しい嚥下の獲得や歯列・咬合の改善につながるだけでなく、将来的な嚥下機能低下の予防にも寄与すると考えられています。
乳幼児期・学童期に適切な口腔機能を獲得できたかどうかが、成人期・高齢期の口腔機能に大きく影響するためです。
これは、筋肉を若いうちから鍛えて蓄えておくことが老年期の健康寿命を延ばす「貯筋」という考え方と非常によく似ており、口腔機能における“貯筋”と言えるでしょう。
7) フッ素と予防 ― 研究が示す「子どもの頃からの積み重ね」の大切さ
フッ化物の使用も虫歯予防の観点からは非常に効率の良い方法であり、WHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病予防管理センター)、そのほか多くの国際歯科・公衆衛生機関が使用を推奨しています。
イギリスの研究では、「子どもの頃に水道水フロリデーション(注1)によるむし歯予防を受けた年数が長いほど、高齢期に残っている歯の本数が多い」ことが示されています。
(注1)水道水フロリデーション:水道水に虫歯予防を目的に自治体がフッ素を添加すること
ちなみに日本では水道水フロリデーションは行われていません。
実は日本でも、第二次世界大戦後のGHQ占領下において、試験的に水道水フロリデーションが行われていました。
しかし1960~1970年ころ、水俣病・イタイイタイ病などの公害や、環境汚染による化学物質への強い不信感が国民レベルで強くなり、水道水フロリデーションに対しても「化学物質を添加するべきではない」という反対運動が起こりました。
その結果、フッ素は個人責任のもと、学校や歯科医院で個別に対応すべきということになった歴史的背景があります。
ですから日本では、虫歯を効果的に予防するために「子どもの頃から歯科医院や自宅でフッ素塗布を行う習慣」を、保護者の方が作ってあげなくてはならないのです。
また、歯磨き習慣についても「子供のころからの積み重ね」は重要です。
ニュージーランドの研究では、「子どもの頃のプラーク付着状況から、成人期のプラーク状況を予測できる」ことが報告されています。
これらの研究からも、小児期からのフッ素習慣や口腔衛生習慣が、将来の口腔健康に明確に寄与していることが分かります。
8) 当院の取り組みと、歯科定期受診の意味
当院では、これまでも
- 歯みがきなどの教育的指導
- フッ素塗布
- MFT(筋機能訓練)
といった、長期的な歯科疾患の予防につながる取り組みを行ってきました。
これらの取り組みには学術的な裏付けがあり、成人期・老年期の口腔健康にまでつながっているということを、ご理解いただけたのではないかと思います。
継続した歯科定期健診は、将来の口腔健康への『投資』です。
ぜひ歯科定期健診をご利用くださいね。
9) まとめ 口腔の健康は「今」だけでなく「将来」をつくる
いかがでしたか?
- 虫歯は減少傾向にありますが、口腔疾患を有する人数は他の疾患と比べて依然として非常に多い
- WHOの歴史的決議を受け、日本でも「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を目標とした歯科保健の指針が策定された
- 「歯みがき指導」「フッ素」「MFT」をライフコースアプローチで行うことが重要
- 定期健診は、成人・老後の口腔健康につながるので、ぜひ継続してください
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
感覚が過敏な人のしくみと、その世界観に対する対策
2025年11月27日
小さなお子さんや発達がゆっくりなお子さんで、受診時や毎日の歯磨きの際に口を開けることを拒んだり、体を動かして嫌がることはありませんか?
こんにちは、医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。
ここ3回ほど、歯科での痛みや麻酔、歯科への怖い気持ちから起こる体の反応などについて特集してきました。
参考リンク
今回は、なぜ「歯医者・歯磨き=苦手」になりやすいのかの理由を、「感覚の偏り(過敏/鈍麻)」という観点から掘り下げていきます。
「歯医者さん、嫌だな、怖いな」
「どうしても歯医者に行く勇気が持てない」
「自閉傾向がある子供が、歯医者で極端に嫌がるため困っている」
そんな方にこそ、最後までお読みいただきたいです。
▼▼この記事の概要を図解▼▼

1.優位感覚の4タイプ
人は五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)を通じて情報を得ていますが、どの感覚に心と頭が反応しやすいかは人によって異なります。
この「感覚優位性」は、視覚・聴覚・体感覚の3つに分類され、最近では言語優位タイプもあると言われています。
優位感覚とは、その人が無意識に多く使う「脳のクセ」のようなもので、同じ出来事でも感じ方やインプット・アウトプットが異なります。
1)視覚優位タイプ
- 目から入る情報で物事を認識しやすい
- 絵・図・フローチャートで理解するのが得意
- 「空間」「色」「明るさ」など視覚的な表現を好む
- 目からの刺激に反応しがちで、気持ちがあちこちに飛びやすい
- 言葉だけの指示は覚えにくく、メモして視覚化すると理解しやすい
- 話の展開が早く、早口で主語が抜けやすい傾向
2)聴覚優位タイプ
- 音で物事を捉えるのが得意で、声の変化にも敏感
- 聞いて学習するのが得意で、音声コンテンツが効果的
- 「騒がしさ」「聞こえる音」など聴覚的な表現を好む
- 言葉で伝えられたことを理解し、そのまま繰り返せる
- 騒音があると集中しにくく、静かな環境が必要
- 論理的で、手順や分析を重視するタイプ
3)身体感覚優位タイプ
- 体験したこと、触れたことを記憶しやすい
- 体験・ロールプレイ・リズム・身体を動かす学習が定着しやすい
- 身振り手振りが多く、「温度」「肌ざわり」などの表現を好む
- 一つのことをじっくり味わうのが好き
- 早口だと処理が追いつかず、ゆっくりした話し方が合っている
- 見聞きしたことを身体で受け止めてから反応するタイプ
4)言語感覚優位タイプ
- 誰かと話したり、メモを取ったり、文章にまとめることで理解が深まる
- 自分なりのまとめ方やノート術が効果的
- 例え話やストーリーと関連づけて記憶するのが得意
2.感覚の偏りとその影響
1)感覚の偏り
「ふわふわの手触りが好き」「熱がり/寒がり」など、感覚の受け取り方は人それぞれです。
優位感覚が均等であるという方は意外に少なく、例えば以下のようなケースは良くみられるパターンです。
- 子供のころから眼鏡をかけている人は視覚からの感覚が弱く、聴覚・身体感覚を強く感じる
- 目が良い人は視覚からの感覚が強く、聴覚からの感覚が弱め
中でも、自閉症/自閉傾向がある方では、聴覚と触覚に偏りが出やすいとされています。
自閉症の診断基準にも「感覚刺激に対する過敏または鈍感、もしくは環境の感覚的側面への特異な興味」が含まれています。
定型発達の人の場合、会話は鮮明に聞こえ、背景音(エアコン、風、車の音といった環境音)は意識しないと聞き逃してしまうものなのですが、自閉症・自閉傾向のある方は“すべての音を均等に拾ってしまう”ことがあります。
以上により
という状態になることがあります。
環境音と会話が同じように聞こえてしまうために、会話が聞こえにくくなってしまうんですね。
自閉症の方の場合は、触覚でも同じようなこだわりや偏りが見られます。

2)感覚の偏りがあると、強いストレスを感じてしまうことがある
歯科医院には、こうした「感覚の偏り」があると、苦手に感じる刺激がたくさんあります。
- 歯科医院独特の臭い(義歯材料のレジン、根治用薬剤などの臭い)
- 歯科医院独特の音(チュイーン!という歯を削る音)
- 口の中を照らすための強いライトの光
- バキュームで口の中を吸われる感覚
- 歯を削られるときの振動
一般の方でも、「嫌だな…」と感じる方も多いこうした刺激は、「感覚の偏り」がある場合、特に強いストレスとなってしまうことがあります。それが強い恐怖心・苦手意識・拒否感につながってしまう…というわけです。

3.簡単な工夫でストレスを軽減できることも
ちょっとした配慮で、困りごとや疲れ方を軽減できる場合があります。
できることから、試してみていただけたら嬉しいです。
- ライトの光が苦手・気になる → アイマスクを使う
- 大きな音や特定の音が苦手 → イヤーマフやイヤホンの使用
- 背もたれが倒れる感覚が怖い → 先に背もたれを倒しておく
- わずかな振動・接触でも強い痛みに感じる → 弱い刺激から慣らす
- 痛みや熱に鈍感(ケガやむし歯に気づかない) → 定期健診でフォロー
- 歯医者の臭いが苦手 → 事前に歯科側に相談する(個室対応、アロマオイルを使用するなど)
- (発達障害があり)気になるものがあると触ろうとする → 気になるものを隠す
患者さんが思っている以上に、歯科を怖いと感じている人は多いです。
我々歯科医師・歯科スタッフの多くは、「歯医者が怖い方」に慣れています。
「自分だけ恥ずかしい」と思わずに、まずは怖い・苦手だと感じているものについて歯科スタッフにご相談ください。
4.小児歯科・障害者歯科で治療が難しい理由
患者さんの歯科への苦手意識から治療が困難になるケースはあります。
多くは、ストレスや理解できない刺激によりパニックが起き、気持ちが折れてしまうことがきっかけです。
歯科医師は、そのとき「何が問題だったのか」を振り返りつつ、嫌なこととその受け取り方が人によって異なる点を踏まえ、個人に合わせた治療のやり方を組み立てます。
- 虫歯の大きさと治療法
- 精神的な配慮
- 落ち着いて治療を受けられる環境を用意できるか
などを考慮します。
5.感覚過敏と心理的拒否の違いと対応
患者さんが「感覚の偏り(過敏)」によって治療に強いストレスを感じているのか、恐怖心によって心理的に治療を拒否しているのか、はたまた両社が混在している状態なのか、他の要因も重なっているケースなのか。
上記のどれに該当するかで、歯科医師の対応も変わります。
1)感覚過敏が主なストレス源となっている場合
どんな刺激でも口や身体に触れた直後から力が入って拒否する場合、触れられることに少しずつ慣れていく“過敏の除去”が必要です。
口から遠い場所(肩など)から触れて、マッサージなどをしながら徐々に口に近づいていくように触れる方法や、いきなり歯を削らずに、バキュームだけ、水だけ、など刺激が小さいものから慣らしていく方法などがあります。
2)心理的拒否
優しい声かけや丁寧な関わりで、これまでの歯科診療や歯磨きのイメージを修正します。
笑気の使用などで「これならできる」という自信がつくと、行動が変化することもあります。
笑気についての参考リンク
6.まとめ
いかがでしたか?
- 感覚の受け取り方は一人ひとり違い、歯科が苦手になる理由にもつながります。
- 優位感覚を理解すると、お子さんの感じ方や行動の理由が見えやすくなります。
- 自閉症では聴覚・触覚に偏りが出やすく、強い疲労や拒否反応が起こりやすいです。
- アイマスクやイヤーマフなど、家庭でできる小さな工夫でも負担軽減に役立ちます。
- 感覚過敏と心理的拒否は別で、丁寧な対応や慣らしで改善することが多いです。
- 困りごとは一人で抱えず、歯科医に相談することで適した対応策を一緒に探せます。
お困りごとがある場合は、可能なところから一緒に検討できますので、まずはご相談ください。
参考文献
「学校における発達障害のある児童・生徒への対応」
日本学校歯科医会会誌 第138号(令和7年度 No.2)
歯科麻酔2 歯科医院での麻酔のしくみ
2025年9月20日
こんにちは。岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村剛です。
歯科医院で一番の関門と患者さんからよく言われるもの、それは麻酔です。
僕の治療でも毎日使用しています。
先日、僕の口の中の詰め物が脱離し、患者として同僚の先生に治療していただいた際にも麻酔を受けました。
僕自身もあの麻酔の感覚は、どうやっても好きにはなれないものです。
今回は痛くない麻酔にするための工夫と、麻酔が効きにくい場合の対策についてお話します。
参考リンク
歯科麻酔シリーズ1: 歯科麻酔 なるべく無痛に近い歯科治療の実現のために
1)世界一の麻酔の名手は「蚊」

蚊は人間に気づかれないように刺してきます。
そう!針を刺されているのに、気づかない。
では、蚊はどんな工夫をしているのでしょうか?
・極細の注射針を使う
・時間をかけてゆっくり注入する
・表面を軽く麻酔して感じさせにくくする
これらが蚊のテクニックとされています。
なんかかゆくなってきましたが、歯科医院での麻酔はこのテクニックを模す形で進化しています。
細かく見ていきましょう!
1―1)表面麻酔

• 歯茎の表面に麻酔薬を塗布して感覚を麻痺させる
• 針を刺す際の痛みを軽減
1-2)電動注射器
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• コンピュータ制御で麻酔液をゆっくりと注入する
• 圧力変化による痛みを抑えやすい
1-3)極細針
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• 皮膚や歯茎への侵入時の刺激を小さくする
(点滴などは0.4-0.5mm、歯科麻酔は0.26mmぐらい、約半分、痛みは3割減!)
このような工夫を組み合わせることにより、麻酔処置時の痛みを軽減できるようになっています。
実際、昔よりも痛くなくなったと患者さんに言われることも多いです。
2)麻酔が効きにくい!?どういう場合にそうなるの?
歯科医師は無痛に近い歯科治療を目指していますが、残念ながら「麻酔が効きにくい」というケースは確かにあります。
どのようなことが原因なのでしょうか。
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2-1)炎症が起きている
歯や歯茎に強い炎症がある場合、通常よりも麻酔が効きにくくなることがあります。
炎症によって血流が増加し、麻酔薬が拡散してしまいやすくなり、薬の効果が十分に発揮されないためです。
また、炎症が進行していると患部のpHが低下し、麻酔薬の作用が弱まるという現象があります。
そのため、特に急性の歯の痛みや膿を伴う感染症がある場合には、通常より麻酔が効きにくくなることがあります。
従って、激しい痛みがある場合は治療前に、抗生剤の投薬などを行って炎症を抑えることが有効です。
2-2)飲酒や服薬の影響
治療前にアルコールを摂取していたり、普段から特定の薬を服用していたりすると、麻酔の効果が弱まることがあります。
アルコールは血流を促進する作用があり、効果の持続時間が短くなったり、効きが悪くなったりします。
また、向精神薬や一部の鎮痛剤など常用している薬が影響する場合もあります。
たばこも麻酔が効きにくくなります。
2-3)体質・体調による個人差、部位による効きやすさ
体質やその日の体調による個人差も、麻酔の効果に関わります。
もともと麻酔薬の代謝が早い体質の人もいます。
また、下顎の大臼歯部(奥歯)は麻酔が効きにくい神経の走行であるため、麻酔が効きにくい場合があります。
2-4)強い緊張やストレスを感じている
強い緊張やストレスを感じていると、緊張によって交感神経が活性化し、血流や代謝が変化するため、麻酔が効きにくくなる(と感じる)ケースもあります。
また、緊張していると通常よりも痛みに敏感になり、わずかな刺激でも強く感じてしまいます。
特に怖がりの方やお子さんでは、怖い気持ちが風船のように膨らんでおり、少しの気持ちで爆発してしまい、治療どころではなくなる場合があります。
実際、終わってしまって落ち着けばよく考えたら、
「痛みはたいしたことなかったけど、怖かった…」
という感想はよくあります。
また、気持ちの問題は治療が続くかぎり再現性をもって毎回発生しますので、対策が必要です。
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3)麻酔しても痛い!怖い!そんな時に痛みを感じにくくする方法
「痛い!」「怖い!」と緊張していると、麻酔していても痛みを感じやすくなってしまいます。
痛みをやわらげるためにも、リラックスが最も重要です。
3-1)緊張を和らげる、自力でできる注意ポイント
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・鼻呼吸をする
口で呼吸してしまうと、治療中の水や唾液によって息苦しくなり、より緊張してしまうことがあります。
鼻で大きく息をするようにした方が楽に治療を受けられます。
・目を閉じない/家族や術者の話しかけに耳を傾ける
目や耳からの情報が減ると、体で感じる刺激に集中して痛みが強く感じられるという現象が起きます。
通常、治療中に水しぶきがかからないように、顔にタオルをかけさせていただくことが多いです。
しかし麻酔の効きが不十分な場合は、あえてタオルをかけずに目を開けて治療に臨んでいただくこともあります。
・歯科のチュイーンという音が苦手な場合は、ノイズキャンセリングヘッドホンをつけたり、個室で治療を受ける
痛みの直接的な引き金ではなくても、歯科の音やニオイが原因で、恐怖心・緊張が高まる人がいます。
その場合は、ノイズキャンセリングヘッドホンを用いて音楽を聴きながら治療を受ける、あるいは個室診療室で音やニオイがない状態で治療を受けたりすることも有効です。
当院は防音個室治療室もあるので、ご希望の場合はお気軽にご相談ください(予約制)。
3-2)自力では難しい場合には「鎮静」
・笑気鎮静法(しょうきちんせいほう)
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笑気ガスを吸入することで、リラックス効果を得ながら治療を受けることができる方法です。
意識を保ったままでありながら、不安や恐怖心を和らげる効果や、痛みを感じにくくなる効果があります。
歯科治療に対する恐怖心が強い患者さんや、嘔吐反射が強くて歯科治療が苦手という方におススメです。
笑気鎮静法のメリットとしては、治療開始前に鼻からガスを吸入し、数分程度でリラックスした状態になることが多く、身体への負担が少ない点があげられます。
また薬の効果が切れるのも早いため、治療後は比較的すぐに日常生活に戻れます。
当院の場合は、床下換気システムを設置した個室(2部屋)で笑気鎮静治療を行うことが可能です。
ただし、笑気鎮静法が適していない人もいます。
それは鼻呼吸できない人です。
笑気鎮静法が向かない人
・鼻炎などで鼻呼吸ができない人
・泣いて鼻水が出てしまっている状態の小児
・静脈内鎮静法
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静脈内鎮静法は、静脈に点滴で薬剤を投与し、半分眠ったようなリラックス状態で治療を受けられる方法です。
緊張や恐怖心が大幅に軽減され、痛みに対しても非常に鈍感な状態になるため、治療への不安がとても強い患者さんにも向いています。
歯科麻酔の専門家が在籍する医院や病院などで受けることができます。
静脈鎮静が向かない人
・暴れてしまう小児(点滴のルート確保が難しい)
4)低年齢で泣いて暴れてしまう/知的障害などのために治療困難な場合は「全身麻酔」
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全身麻酔は、眠った状態で治療を受けられる麻酔方法です。
意識もなく、覚醒した時にはすべてが終了しています。
このように聞くと、一般の方でも「それ良いですね!歯医者苦手だから、やってみたい!」と思われるかもしれませんが、実際はそんな簡単なお話ではありません。
全身麻酔での歯科治療のリスク・デメリット
・身体への負担が大きい
局所麻酔や静脈内鎮静に比べ、循環・呼吸に対する影響が強い。
・入院や高度な設備が必要
手術室、麻酔器、人工呼吸管理などの設備が必要で、一般的な歯科医院では対応できません。
・治療に制約がある
全身麻酔は頻繁には行えないため、処置をまとめて1回で行う必要がある。
一般の歯科医院の外来ではどうしても治療が難しい方向けの方法と思ってください。
5)お子様も含めて多くの方が、外来で治療できています
静脈内鎮静や全身麻酔まで行わず、笑気鎮静を使った治療を行うことだけでも、歯科治療で泣いてしまうお子さんを含めてかなりの方が、なんとか治療できたというケースは多いです。
当院でも、外来での治療は危険と判断する場合は大学病院にご紹介させていただいていますが、大多数の方は外来で治療ができています。
特に笑気鎮静は、強いストレスや恐怖に対しては有効だと考えています。
歯科恐怖症などで治療が困難な患者さんには、お薬手帳の内容や現在の通院状況などをお伺いして、必要な情報をもとにオーダーメイドな方法を検討しています。
お気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
・歯科麻酔は、表面麻酔、電動コントロール、極細針を使うことで、痛みが大幅に軽減されます。
・麻酔が効きにくいシチュエーションは確かにあり、患部の炎症、飲酒や服薬の影響、個人差や部位の違いが考えられます。
また、麻酔に強いストレスがある場合も特別な配慮が必要であると考えます。
・リラックスすることが一番大事ですが、物理的、精神的に難しい場合、笑気麻酔などの対応策があります。
最後までお読みいただきありがとうございました!
虫歯のしくみ 感染症として考える
2025年6月24日
岩国市のつぼい歯科クリニック 副院長の吉村剛です。
当院では、スタッフ全員が同じ基準で動ける“わかりやすい職場”をめざし、日々の業務を「仕組み化」しています。
仕組み化とは――
A)問題を言語化して、焦点をはっきりさせる
B)解決策を言語化する
C)解決策を行動手順に分解し、実践する
というシンプルなプロセスです。

この考え方は、虫歯や歯周病などの口腔トラブルの予防・解決にもそのまま応用できます。
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世の中に数多くあるエビデンス(根拠)や病因論を分かりやすくご紹介することで、あなたのお口のトラブル予防「仕組化」のお役に立てたらうれしいです!
1)虫歯(う蝕)のしくみ 感染症として考える
1-1)う蝕は「三要因感染症」
う蝕は、歯のカルシウム成分が菌などの産生する酸によって脱灰(溶け出し)、エナメル質、象牙質、歯髄など歯の内部の構造を破壊していく感染症です。
すべての感染症は、「感染症に罹患(りかん)するか否か,罹患した場合に重症化・難治化するか否かは,微生物,宿主,環境の3つの要因によって規定されます」(小児感染免疫,Vol.35No.1,31)。

簡単に言うと、虫歯は「歯の質」も関係しますが、日ごろのケアや食生活で重症化します、ということです。
1-2)虫歯菌
虫歯の原因菌はS.mutans とよばれる口腔内常在菌とされています。
S.mutans は 1 歳頃の萌出歯へ母子感染することが多く、初期定着菌を減らせば生涯う蝕リスクを下げることができる と報告されています(Caries Res 54:297-305, 2020)。
一方で、最終的な虫歯リスクは、S.mutansを含めた口腔常在菌の総合体(バイオフィルム)の性質で決まると言われています。
虫歯菌は自分の体の外に、菌体外多糖という「糊(のり)」を作る機能があります。
細菌には、糊を作って自分の身を守るタイプの菌と、糊を作らないタイプの菌があります。
キッチンの三角コーナーのヌルヌルを想像してみてください。

この「糊」を大量に作ることができる虫歯菌がたっぷり含まれているプラークは、歯の表面に引っ付く力が非常に強く、さらに「自力では歯に引っ付くことができない他の病原菌まで歯に定着させてしまう」という性質があります。
その結果、病原性の高いバイオフィルム(菌の集合体)が作られ、虫歯になってしまうのです(Dental Diamond 29(1):30-58, 2024)。
排水溝や三角コーナーのぬめりは、普通の食器用洗剤をかけただけではなかなか落とすことはできず、ハイターのような強力で人体に有害な殺菌剤を使うか、スポンジで擦って洗うかしないとヌルヌルを落とすことができない、という経験をしたことがある人は多いでしょう。
食後、お口の中では、排水溝や三角コーナーのぬめりと同じようなことが起こっています。
お口の中にハイターのような有害な殺菌剤は使えませんから、当然、擦り洗い(歯磨き)が必要になります。
2)虫歯という感染症を予防する方法
2-1)虫歯菌の感染経路を減らす
生まれたばかりの時、赤ちゃんの口に虫歯菌はいません。
では、最初のスタートとなる菌は、どこから来るのでしょうか?
虫歯菌の感染経路は
6割:お母さん
3割:お父さん
1割:その他
とされています。

この菌(初期定着菌)の性質や量も重要です。
主たる養育者(多くは母親)の口の中の細菌レベルを下げることで、う蝕経験が減少するという報告があります(Dental Diamond Vol.29No.1,30-58)。
お母さん・お父さんの口の中の虫歯を治療したり、歯石や歯垢を除去して口腔内を綺麗にすると、赤ちゃんへの虫歯菌の感染を減らすことができる、ということです。
2-2)感染してしまったら、虫歯菌の増殖を防ぐ
虫歯菌の感染経路を減らす努力をすることで、虫歯菌の感染の確率を下げることはできます。
しかし、虫歯菌の感染をゼロにできるわけではありません。
虫歯菌の感染があったとしても、虫歯菌の増殖を防ぐ取り組みも併用しましょう!
最も効果的な虫歯菌の増殖予防方法は「砂糖の摂取量を減らす」ことです。
砂糖の商品化と共に虫歯のパンデミックが広がったという世界的な経緯があります(う蝕の分子生物学,第1章)。

また、小児期(5歳ぐらいまで)においては虫歯の経験指数は砂糖の摂取量に比例するという報告があり(Cor van Loveren,Caries Res, 53; 168-175, 2019.)、砂糖の摂取量が最も大きくう蝕に影響しているのは間違いありません。
2-3)フッ素で虫歯に抵抗力のある歯を作る
日本人を含むアジア人は、他の人種と比較してエナメル質が薄いとの報告があります(歯の解剖学、p22-24)。

エナメル質は歯の一番表面にある、虫歯に抵抗性がある表面素材です。
エナメル質が薄い場合、エナメル質が厚い場合に比べて虫歯のリスクは高くなります。
つまり、日本人は先天的に虫歯リスクが高い歯を持っていると言えるのです。
そのため、フッ素を用いて歯の耐酸性を強化するなどの対策が必要です。
よくある保護者の方からの質問「フッ素は何歳からやった方がいいんですか?」
フッ素は、何歳からでも歯の強化には有効です。
より効果的に虫歯の罹患(りかん)率を下げるために、特に虫歯になりやすい時期に重点的に対策するのがおすすめです。
虫歯の罹患率が高くなる時期(Dental Diamond Vol.29No.1,30-58)
・3~4歳ごろ:歯の生えた直後の乳歯
・6歳ごろ:第一大臼歯の生えた直後
・12歳ごろ:第二大臼歯が生えた直後

年齢別総人口は総務省「人口推計」(2021年10月)
虫歯有病率は、3歳児は厚生労働省「乳幼児歯科健診結果」(2020年度)
5~17歳は文部科学省「学校保健統計調査」(令和3年度、未処置う歯のある者の割合)
生えた直後の歯は、生えてから時間がたった後の歯よりも虫歯への抵抗性が低いです。
フッ素塗布の他に、シーラントという「虫歯になる前に予防的に溝をフッ素徐放レジンで埋める(予防填塞:よぼうてんそく)」処置も有効です。
2-4)物理的に虫歯菌を除去する(減らす)
日ごろの歯磨き習慣や、歯科医院で歯磨きだけでは難しい取り残したプラークを専門的にに清掃してもらうことを定期的に行うなど、物理的な虫歯菌の除去も効果的です。
古い歯垢・歯石の中は酸性度が高いことも多いためです。
3)歯科医院で検査、チェックすることから始めましょう!
以上により、虫歯のリスクと対策を簡単に説明しました。
免疫状態や生活環境などにより、個人差が大きく、対策ポイントの優先順位は千差万別です。
よって、患者さんお一人お一人のオーダーメイドな対策が大事になってきます。
まずは一度、歯科医院で検査、チェックすることから始めることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?
・虫歯を含む感染症は微生物,宿主,環境の3つの要因によって規定されます。
・S.mutans菌は主たる保育者などから伝播し、保育者のう蝕リスクも子供のう蝕リスクに影響します。
・砂糖の摂取量がう蝕リスクに大きく影響します。
・う蝕の罹患率は萌出直後に最も高まります。
各個人でのオーダーメイドな対策が大事です。
歯科医院で検査、チェックすることから始めましょう。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
MFT特集 その11 リハビリの考え方でアプローチするMFTの実践方法
2025年1月21日
MFT特集 その11 リハビリの考え方でアプローチするMFTの実践方法
こんにちは、つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT特集その11 MFTの実際とその考え方をまとめです。
MFT(筋機能療法)や、小児口腔機能発達不全症について詳しく知りたい方は、ぜひ過去の記事もご覧ください。
MTF特集 全リンク(クリックすると、ページに移動します)
当院の筋機能療法(MFT)
1.MFTはリハビリの考え方と似ている
リハビリでは、体の機能がうまく働かなくなったとき、ただ障害された部分を治すだけではなく、他の部分を使って障害された機能を補うことを考えます。
たとえば、私自身の話ですが、よく背中が痛くなることがありました。
症状ケース1
- ・症状 背中が痛い
- ・原因 軽度ヘルニア+姿勢や背中の筋肉と腹筋のバランスが悪い
- ・トレーニング 首の牽引、懸垂運動、背中の筋を意識しながらの運動、腹筋運動などのリハビリ
このように、具体的な動き(トレーニング)を通して体を改善していくのがリハビリの基本です。
リハビリは英語でrehabilitationと言います。
Re(再び)+ habilitate(適応させる、能力を与える)+ion(~すること)で、元は持っていた機能を回復させること、という意味です。
一方でMFTは「ハビリテーションhabilitation」、まだ獲得されていない機能を新たに習得させます。

元あった機能か、まだ獲得されていない機能かの違いで、トレーニングの基本的な考え方は似ているんです。

2.滑舌の問題もリハビリと同じアプローチで
実は、滑舌の問題もリハビリと似た考え方で改善できます。たとえば、「カ行がうまく言えない」という悩みはよくあります。
症状ケース2
- ・症状 カ行の発音が難しい
- ・原因 舌の奥を持ち上げる力が弱い
- ・トレーニング MFT:口腔筋機能療法(舌挙上トレーニング)
トレーニング例
こうした練習を通して、舌の動きを改善し、滑舌を良くしていきます。ただ「舌の奥を鍛えましょう」と言われても難しいですが、具体的な方法を取り入れることで、自然とできるようになるのです。
3.リハビリとMFTの共通点
リハビリの基本は次の5つです:
リハビリの基本
- ・できないことをできるまで練習する
- ・方法を変えて反復練習する
- ・環境を整える
- ・補助具を使う
- ・できない部分を他の人や道具で補う
これらはMFTにも当てはまります。
たとえば、1~3はMFTの練習そのものですし、4や5は矯正装置を使って歯列を整えることが該当します。
4.MFTの明るい未来
MFTがリハビリよりも希望を感じられるのは、練習を頑張れば、できるようになるお子さんが多いことです。神経や脳の障害で動かなくなった部分を改善するリハビリに比べると、MFTは「コツ」をつかむことが重要です。そのコツさえ伝われば、あとは一気にできるようになることが多いのです。
ただし、お子さんの場合、その「コツ」を伝えるのが少し大変だったりします。
私たちクリニックを挙げて取り組んでいますので、みんなで一緒に頑張っていきましょう!
当院の筋機能療法(MFT)
5.まとめ
いかがでしたか?
- ・MFTはリハビリの考え方と同じ方法を用います。
- ・ただ「ここが問題です」と指摘されるだけでは、誰もすぐに改善できるわけではありません。トレーニングを通じて、少しずつ正しい機能を身につけていきます。
- ・トレーニングを繰り返し行いながら、歯並びを整える矯正治療を組み合わせることで、後戻りが少なく、機能がしっかり整った歯科矯正を実現することができます。
今回でMFT特集は完結です!
長い間お付き合いありがとうございました。
低年齢の受け口治療 ~目立たない装置で、短期間で改善する!~
2025年1月9日
低年齢の受け口治療 ~目立たない装置で、短期間で改善する~
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
下の写真は、同一人物の口腔内です。

実は矯正装置を装着しています。どこにあるか、分かりますか?

答えは上顎の内側でした!
この患者さんは固定式の矯正装置で前歯の受け口を治療しました。
写真の症例について
- 治療期間: 11カ月
- 通院頻度: 月に1回
- 治療方法: SLAの装着
- 治療費用: 26万9500円(税込)
- リスク・副作用: 特に無し
以前、マウスピース(ムーシールド)で反対咬合を治療した記事を投稿しました。
ムーシールドの治療期間は半年です。
参考リンク:インスタグラム
https://www.instagram.com/p/C7lcuIAPfgq/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
「受け口の治療って結構、短期間で終わるんだな」と思われませんか?
これが早期治療のすごさです!
今日は、受け口の早期治療のことを、詳しくお話させていただこうと思います。
1. 低年齢児の受け口治療
3~5歳くらいまでの低年齢児の矯正治療がおススメな症例と、そうでない症例があります。
詳しくは、こちらの記事をご参照ください。
参考リンク:矯正の早期治療(3歳~)がおススメな症例とは?
2. 3歳前後に開始するのがおススメな症例
- 受け口
- 交差咬合(斜めに噛んでる)
- 下の前歯が上の前歯に完全に隠れて見えない(過蓋咬合)
- 歯が並ぶスペースが足りないのは明白という症例
この中でも、特に①②は、そのまま放置してしまうと顎がゆがんで発育してしまうケースが非常に多いため、早期治療がおススメです。
3. 受け口の自然治癒率
受け口は自然と治るケースもあります。
その確率は6~12%と、報告によってまちまちですが、いずれも低い確率である思われます。
自然治癒するケースは、
- ・受け口の程度が軽いもの
- ・反対に噛んでいる歯が4歯未満であること
- ・家族に同様の症状を持つ人がいないこと
などの特徴があるそうです。
つまり「ごく軽度の受け口」で「遺伝要因が無い」場合以外は、だいたい自然には治癒しないということなのです。
4. 受け口を早期治療するメリット
1. 成人の受け口治療と比較して、治療期間が短い
- ・多くの場合、成長期の半年~1年程度で治療効果が現れます。
- ・ただし、成長に伴う後戻りの可能性があるため、経過観察が必要です。
2. 顎の成長をガイドできる
成長期の顎の発達を適切な方向へ導くことができます。
3. 将来的な下顎骨の変形、上顎骨の劣成長を予防できる
- ・顎の成長が適切にガイドされることにより、骨格的な受け口を予防することができます。(遺伝性の場合は、この限りではありません)
- ・将来的に手術で受け口を治さなければいけないリスクを低くすることができます。
4. 口腔機能の適切な発達を促せる
受け口の場合、多くは低位舌を伴うことが多く、その場合は舌を挙上する動きが苦手であることが多いです。早期に矯正治療を行うことで口腔機能の発達不全を改善することができます。
5. バランスのとれた顔立ちになりやすい
口腔機能の発達不全や、骨格的な問題を予防することにより、バランスの取れた顔立ちになりやすい。
6. 心理的負担の軽減
思春期や成人になってから見た目のことで悩んだり、目立つ矯正器具を使わずに済む、という利点があります。
5. 受け口を早期治療するデメリット
1. 後戻りのリスク
ご家族・ご親族に受け口の方がいる場合は、遺伝性の可能性が高く、思春期成長の時期に後戻りすることが多いです。
2. 遺伝性の場合は追加治療の必要性がある
後戻りした場合でも、小児矯正をしないよりは軽症となることが多いですが、成人治療を追加で受けなくてはいけないケースが多いです。
3. お子様が嫌がることがある
本人は歯並びや容貌について、特に何も感じない時期なので、目的意識を持ちにくい側面があります。マウスピース型矯正の場合、モチベーションを維持できずに使用時間を守れないと、矯正の効果が発揮されないことがあります。
*ページ上部の写真のように、固定式装置で治療するなどの対策もあるので、マウスピース矯正は性格に合わない場合でも、対策は可能です。
6. まとめ
いかがでしたか?
- ・3~5歳児の受け口の早期治療は、短期間で効果が現れやすく、将来的な複雑な治療を回避できる可能性が高いです。
- ・大人になってからの受け口の治療は、長期化や外科的処置が必要になることがあるなど、大変です。
- ・10歳以上になると、小児矯正の治療効果が十分に期待できなくなるため、成人矯正のみで治療することをおススメすることも多いです。
お子様の成長期は、心も体も大きく変化しています。その中で、歯並びや顎の成長を正しくサポートすることは、健康な口腔環境・適切な口腔機能の発達、そして自信に満ちた笑顔や生活の質にもつながります。
「うちの子は、受け口っぽいけど大丈夫かな?」
「この程度はほっておいても、自然になおるかな?」
「治療が必要かどうかが分からない」
など、お子様の歯列について疑問がございましたら、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
MFT特集 その10「かみ合わせのずれとその原因:正中のずれを考える
2025年1月2日
MFT特集 その10 「かみ合わせのずれとその原因:正中のずれを考える」
こんにちは!岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT(口腔筋機能療法)関連の第10回として、「正中のずれ」について考察します。
かみ合わせのずれや偏咀嚼など、いわゆる「ずれ」の原因を探り、その対応方法について解説します。
正中のずれの原因は大きく分けて以下の2つに分類されます。
正中とは?
正中(せいちゅう)とは、歯科においては、主に上下の歯の中心を指し、特に前歯の中心線を意味します。
正中のずれの原因は?
1.構造の問題(萌出や顎の成長などの問題)
2.機能の問題(偏咀嚼や舌癖などの問題)
それぞれの原因に応じた対応方法も異なるため、まずは正中線のずれを確認し、次に上顎と下顎のどちらに問題があるのかを観察することが重要です。
1.構造の問題
1-1 交差咬合
乳犬歯や犬歯のかみ合わせがずれている場合、下顎が偏位することがあります。
上下顎のバランスが悪い場合に多く、特に下顎が大きい(下顎前突傾向)ケースで見られます。
このような場合、上顎を拡大する矯正治療を行うことで改善が期待できます。

交差咬合:上顎の拡大で改善します。
1-2 乳犬歯の早期喪失
顎が歯に対して小さく、歯が並ぶスペースが不足しているお子さんでは、前歯の生え変わりにともない、乳犬歯が早期に抜けてしまうことがあります。
顎が小さなお子さんの場合、下顎側切歯(前から2番目の歯)が生えるときに、本来ならば乳側切歯という、乳歯の前から2番目の歯とだけ入れ替わらなければならないところ、乳犬歯の根っこも同時に溶かしてしまうことが多いのです。
すると、下顎側切歯が生えてくる7歳前後に、乳犬歯を早期に失ってしまうのです。
乳犬歯が早期に抜けると、永久歯の犬歯が生えるスペースを失ってしまい、結果的に犬歯が八重歯になることがあります。

八重歯(犬歯低位唇側傾斜):矯正治療で改善します。
この場合は、軽度であれば小児矯正によって顎を拡大して歯の生えるスペースを確保したり、重度であれば抜歯による成人歯列矯正による改善が必要になります。
2.機能の問題
2-1 偏咀嚼
歯の位置に問題がなくても、舌癖や歯の喪失が原因で偏咀嚼が起こることがあります。
また、歯の痛みや萌出時の早期接触も偏咀嚼の原因となります。
改善方法としては、以下のようなトレーニングが有効です。
- 普段あまり噛んでいない側(非咀嚼側)での咀嚼トレーニング
- 鏡を見ながら正中を合わせるトレーニング
これらを繰り返すことで、少しずつ癖を改善することが可能です。
チューイングガムを用いたトレーニングがおススメです。
2-2 普段の姿勢
頬杖やうつ伏せ寝など、日常の姿勢もかみ合わせのずれに影響を与えます。
特に、片側だけで頬杖をつくなどの悪習癖がある場合、かみ合わせだけでなく筋肉の付き方にも歪みが生じます。このような場合、以下の対応が重要です。
- 悪い癖を治す
- 周囲の筋肉を正しく鍛える
- 体幹を鍛えるトレーニング
これにより、悪い状態に戻らないよう予防することができます。
MFT(筋機能療法)ではこうした姿勢の矯正なども行っていきます。
当院の筋機能療法(MFT)
まとめ
いかがでしたか?
- 正中のずれの原因は、構造の問題(交差咬合や乳犬歯の早期喪失)と機能の問題(偏咀嚼や姿勢の悪さ)に分けられます。
- 交差咬合や乳犬歯の早期喪失など、構造の問題の場合はMFTよりも矯正治療がより有効です。
- 舌癖や普段の姿勢など、機能の問題の場合はMFTのトレーニングや姿勢改善が効果的です。
偏咀嚼や姿勢の悪さが原因の場合、MFTのガムトレーニングや体幹を意識した筋肉トレーニングを取り入れることで改善が期待できます。
正中のずれを改善するためには、原因を正確に把握し、それに応じた適切な対応を行うことが大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!