お口のケアで感染症対策。歯磨き習慣とインフルエンザ予防
2026年1月4日
こんにちは。
岩国のつぼい歯科クリニック おとなこども矯正歯科、院長の坪井です。
冬になると毎年話題になるインフルエンザ。
今年も猛威を振るっていますね。
岩国地区でも、学級閉鎖などが頻繁に起きているようです。
インフルエンザ予防と言えば、「手洗い・うがい・マスク・ワクチン」は、多くの方が意識されていることでしょう。

実は、歯科の立場から強調したい予防策があります。
それが 歯みがきと鼻呼吸(お口ポカン防止) です。
今回は
①なぜ歯みがきや歯科ケアがインフルエンザ予防につながるのか?
②口呼吸が感染症にかかるリスクを上げてしまう理由とは?
③おススメの歯磨き・口呼吸を予防するトレーニングはどんなもの?
の3本立てでお話します。
ぜひ最後まで見て、この冬を一緒に快適に乗り切って行きましょう。
1 歯みがき・口腔ケアがインフルエンザ予防につながる理由
1-1)口腔内を清潔に保つことで、インフルエンザの発症リスクが下がる
特に注目されているのが、
• 歯や歯周ポケットに存在する歯周病菌
• それらが形成するバイオフィルム(細菌の膜)
です。
歯周病菌が多い状態では、インフルエンザウィルスが細胞に感染しやすくなってしまうためです。
歯垢(プラーク)は単なる「汚れ」ではなく、複数の細菌、最近が分泌した構造体などの複合体です。
歯垢には、歯周病菌をはじめとした、病原菌が生活しやすいよう、悪い環境を作る性質があります。

歯垢が作る悪い環境
・うがいなどで洗い流すだけでは除去できない
・薬剤抵抗性を示す(ウガイ薬、飲み薬では除去できない)
これがインフルエンザウィルスにとっても感染の土台となる環境として機能してしまうのです。
歯垢(プラーク・バイオフィルム)に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
https://tsuboidental.com/blogs/archives/7425
1-2)歯みがき+歯科のプロケアで、インフルエンザ発症が「約10分の1」になった

日本歯科医学会誌に掲載された内容で、口腔内環境を清浄に保つ(歯科衛生士などによる専門的口腔ケアを含む)ことで、インフルエンザ発症率が約10分の1に抑えられたという報告があります。
これは高齢者施設での研究ですので、一般の健康な成人や小児で同じ倍率で予防できると断言はできませんが、歯磨きがインフルエンザに効果的であることは間違いないと言えます。
参考文献
• 日本歯科医学会誌 Vol.25(2006)p.27–33
• Abe S, et al. Professional oral care reduces influenza infection in elderly. Arch Gerontol Geriatr. 2006
2 歯周病の予防は、コロナ感染予防・重症化予防にもなる
他のウィルス性感染症の場合はどうでしょうか?
インフルエンザと並ぶ、流行性ウィルス感染症の新型コロナウィルスについて、解説します。
2-1)新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るっていた時期、歯科医院ではクラスターがほぼ発生しなかった
新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るっていた時期、意外な事実が注目を集めました。
それは、「全国約6.6万軒におよぶ歯科医院において、診療室での集団感染(クラスター)の報告がゼロだった」という点です。
当時、大阪府の吉村知事も、大阪府内の約5500軒の歯科医院で新型コロナウィルスのクラスター(集団感染)が1件も発生していないことに着目し、「感染対策の賜物だと思うが、何かある。
何か?」とツイッターに投稿したことが話題になりました。
たしかに、もともと歯科業界では、HIVや肝炎ウィルスなどの「ウィルスの水平感染」を防ぐため、非常に厳しい滅菌・消毒の基準を日常的に守り続けてきました。
加えて当時、(当院もですが)換気基準を満たすため換気設備の更新や、スタッフルームの整備をしてランチを「個食」出来るようにした医院も多かったです。
しかし、全国で6.6万軒ある歯科医院のうち院長が60歳以上である歯科医院は46.8%(3万医院以上)、院長が70歳以上である歯科医院が13%(約8600医院)もあり、大規模な設備投資をしなかった医院も多かったはずなのです。
にもかかわらず、診療室でもスタッフルーム(ランチの場所)でも、ほぼクラスターが発生しなかったのは、「患者さんもスタッフも、歯磨き+プロケアがちゃんと出来ていた」からではないか…と、個人的には思っています。
2-2)歯周病になっている人は、コロナウィルスにかかりやすい

歯周病がある場合、新型コロナへの感染確率は 約 2.8 倍 高まるという報告があります。
歯周ポケット内には、ウイルスが細胞に侵入する際に利用する受容体(ACE2)や酵素(TMPRSS2)が多く発現しており、歯周ポケットが「ウイルスの貯蔵庫(リザーバー)」として機能してしまうと言われています。
また、歯周病菌が持つ「プロテアーゼ」という酵素が、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を切り分け、細胞に侵入しやすくしてしまいます。

*この感染機序はインフルエンザウィルスとも非常によく似ています。
歯科医院で勤務するスタッフが新型コロナ流行期に感染しにくかったのは、単にマスクをしていたからではなく、『お口の中にウイルスを呼び込む隙(歯周病)を作っていなかったから』とも言えるのです。
3 うがい以上に歯みがきが大切
この考え方を、一般の方にも非常に分かりやすく解説しているのが
日本歯科医師会 8020テレビ の動画です。
日本歯科医師会 8020テレビ「インフルエンザ予防と歯周病菌」https://www.youtube.com/watch?v=Nh71xJ2EovE
この動画では、大阪大学大学院歯学研究科・予防歯科学分野の第一人者である
天野敦雄 教授 が解説されています。
動画の内容をざっくりとご説明すると、以下の通りです。
(詳しくは動画をご覧ください)
• うがいだけでは、歯や歯周ポケットの歯周病菌は十分に除去できない
• 歯周病菌が多いと、インフルエンザウィルスの感染力が高まる可能性がある
• だからこそ、歯みがき・口腔清掃が重要
つまり、歯みがきは
「口の中をきれいにする行為」というより「ウィルスの感染リスクや歯周病菌による炎症のリスクを下げる行為」なのです。


4 もう一つの重要ポイント「口呼吸」
ウィルス性感染症の予防を考えるうえで、もう一つ見逃せないのが 口呼吸 です。
「口呼吸をしているとインフルエンザになる」と断定できる研究はありません。
ただし、口呼吸には次のような不利な条件が重なります。
口呼吸が鼻呼吸より感染リスクが高くなる理由

• 口腔・咽頭が乾燥しやすい
• 鼻の加湿・加温・ろ過機能が使えない
• 吸い込んだ粒子(ウイルスを含む)が気道に入りやすい
これらは、感染症全般において防御機能が低下しやすい状態と考えられています。
参考リンク:良くない口の習慣、「口呼吸」 ~風邪をひきやすく、虫歯・歯周病・口臭・出っ歯の原因にもなる~
https://tsuboidental.com/blogs/archives/5023
4-1)「私、口呼吸している?」自覚しにくい人のための簡易チェック
口呼吸は、本人に自覚がないケースがとても多いのが特徴です。
次の項目に心当たりはありませんか?
• 冬になると鼻が詰まりやすく、気づけば口で息をしている
• 朝起きたとき、口の中が強く乾燥している
• 寝起きに喉が痛い、イガイガする
• 唇が乾燥で切れやすい
• 口角炎を繰り返す
• 日中、無意識に口が半開きになっている
• いびきを指摘されたことがある
一つでも当てはまる方は、口呼吸が習慣化している可能性があります。
4-2)あいうべ体操は「鼻呼吸に戻すための練習」
あいうべ体操は、
• 舌や口周りの筋肉を動かす
• 口唇閉鎖を意識しやすくする
ことで、鼻呼吸を促すことを目的とした体操です。
簡単で道具も必要ないため、幼稚園や小学校などでインフルエンザ予防のために取り入れられたりしているので、聞いたことがある方もいるかもしれません。
医学的な厳密な比較試験(RCT)はまだ発展途上の分野ですが、福岡県の小学校などの事例では、あいうべ体操を導入した学校において、導入していない学校よりもインフルエンザの発症率が劇的に下がったという報告があります。
これは、口呼吸が鼻呼吸に変わることで、鼻の加湿・加温・除菌フィルター機能が働いた結果と考えられています。
🌟あいうべ体操🌟

動き ポイント
①「あー」 口を大きく「楕円形」に開くイメージで!
②「いー」 前歯がしっかり見えるように、口を横に思い切り広げる!
③「うー」 唇を思い切り前に突き出す!
④「べー」 舌をあごの先まで伸ばすつもりで、下に突き出す!
単調に「あいうべ~、あいうべ~」とやっても良いのですが、お気に入りの歌を「あいうべ~」で替え歌にして歌っても、楽しいですよ。
♪あ~あ、いっい~、うっう~べ~ぇ あ~ぁい~う~べ~(水戸黄門のメロディ)
♪あ~あ~い~い~う~う~べ~(キラキラ星のメロディ)
のように、自由に「あいうべアレンジ」をして、毎日2曲歌えば、かなりのトレーニングになるはずです。
コツとしては、歌の練習ではなく筋トレですので、発声よりも、筋肉を大きく動かすことを意識すると良いでしょう。

5 まとめ:インフルエンザ対策は「口の中」から始まる
いかがでしたか?
インフルエンザ対策というと、どうしても外からの予防に目が向きがちです。
しかし、内側から防御力を高めることも、とても効果的です。
• 毎日の歯みがき
• 定期的な歯科でのプロケア
• 口呼吸に気づき、鼻呼吸を意識する
こうした日常の積み重ねが、体を守る力につながります。
「毎年インフルエンザが心配」
「冬は体調を崩しやすい」
という方は、ぜひ一度、お口の状態と呼吸のクセを見直してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
全体の参考文献・資料
• 日本歯科医学会誌 Vol.25(2006)
• Abe S, et al. Professional oral care reduces influenza infection in elderly.
• 日本歯科医師会 8020テレビ「インフルエンザ予防と歯周病菌」











