歯ぐきの色の話~赤・白・黒 この色、大丈夫なの!?~
2021年1月31日
あけましておめでとうございます。本年1回目のブログです。岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
最近患者さんから、歯茎の着色やほくろ状の黒点など、歯以外の粘膜の色や着色について質問を受けました。そこで今回は、歯以外の組織の色についてお話していきます。
歯茎や口腔粘膜の赤や白い「できもの」「潰瘍」「腫れ」などは、炎症に関係するものが多い
皮膚・粘膜の赤みが気になる時
皮膚・粘膜は充血したら赤くなります。
大きな虫歯や、歯をぶつけて怪我をすることで、歯茎の炎症がおこる場合があります。お子さんの場合は皮膚、粘膜の赤みと共に腫れや痛み、発熱などを伴う場合が多いです。
大人に関しては虫歯や怪我では基本的に同じですが、それ以外にも歯周病が進行しても、赤黒いブヨブヨした歯肉になります。
白いものの場合には、口内炎、歯の膿が原因の場合も
口内炎については、下記リンクの記事をご覧ください。
白い潰瘍が出来ます。
口内炎が多発している場合は麻疹などのウイルス感染の場合があります。
参考記事:口内炎の話。
口内炎の話
フィステル(歯根の先に溜まった膿が排出された出口=排膿路)といわれるものも、よく見られます。
その他に、珍しい「白い粘膜疾患」も
白板症
前癌病変と言われ、悪化すると癌化することがあります。
歯医者がメンテナンス通院されている患者さんの口腔をチェックするとき、こうした「良くない粘膜疾患」が無いかどうかもチェックしています。
口腔扁平苔癬
両頰に現れる白いレース状の慢性炎症性病変です。
40代の女性に多く、潰瘍などを伴うこともあります。
口腔カンジダ症
舌や上顎の内側などに、白いフワフワしたものが付着してくることがあります。この白いフワフワは「カンジダ菌」というカビの一種で、拭うと取ることが出来ます。お口の中の清掃と、お薬で治療します。
以上のように、
赤と白の場合は炎症などに伴う場合が多いので、口腔内と共に全身の状態をよくチェックして、歯科医院や病院など適切な医療機関を受診しましょう。
黒色には色んな原因が!
黒いものには、面積が狭い場合と、広い場合があります。
粘膜の黒い部分の面積が小さい場合
ホクロ
口の中の皮膚にも、ホクロはあります。
メラニン色素の沈着が原因で、ほとんどの場合は放置して問題ありません。
悪性黒色腫(メラノーマ)
「あれ?口の中の黒いホクロが大きくなってきた…?」と感じたら、すぐに歯科医院もしくは病院口腔外科に受診してください。
癌の一種である、悪性黒色腫の可能性があります。
平成26年の資料では、口の中の悪性黒色腫の5年生存率は20%以下と非常に低く、早期の専門治療が必要となります。
メタルタトゥー
歯科治療に用いる金属が溶けだして、金属イオンによって歯茎に入れ墨のような着色が起きてしまうことがあります。
メタルタトゥーは、銀とアマルガム(水銀化合物)によって起こることが多く、金属アレルギーの原因となることもあります。
見た目が問題にならない場合は、治療をしないことが多いです。
血豆
頬を噛んでしまったり、歯茎を強くぶつけたりすることで出来ます。
基本、手足の血豆と同じく、特に治療せずに治癒を待ちます。
粘膜の黒い部分の面積が広い場合
喫煙などによる着色
喫煙している場合、歯茎や粘膜は確実に黒くなります。また家族が喫煙している場合、副流煙などの影響があって黒くなる場合があると考えられています。
メラニン色素の沈着
メラニン色素の場合は肌の色に比例して黒い場合や、口呼吸に伴ってお口を開けてる時間が長く、粘膜も日焼けしているなどの原因が多い様です。
子供の歯茎や歯肉が黒いのは時々見られ、上記の様な日焼け、口呼吸、たばこの副流煙などの要素が影響しているのは感じます。
しかし、大学病院時代の同僚の先生の研究でも、完全な原因の特定までは至りませんでした。複合的に影響している可能性があると考えます。
黒い歯茎を治したい場合は?
悪性黒色腫は抗がん治療を病院口腔外科などで行うことになります。
その他の「色素が沈着しただけ」の場合には、いくつかの方法があります。
いずれも保険適応はされていない「審美目的」の治療の範疇になっています。
レーザーや薬品によって歯肉を変性させて、組織を再生させることにより脱色する
ホクロなどのメラニン色素沈着の場合は、口腔粘膜の浅い部分に位置しているので比較的簡単にきれいにできるようです。
女性の方で、美容皮膚科のレーザーによるホクロの除去を行った方は分かると思いますが、レーザーをパチパチと照射して、一過性にカサブタのようなものが出来て、それが自然と取れたら色が抜けている感じです。
一方、メタルタトゥーの場合は歯茎の深い部分まで入りこんでいる場合が多いので、除去できるかは状態によります。
子どもの歯肉の脱色治療はできますか?
おススメしません。
お子さんの場合、生活環境の変化や成長によって、口腔内の状態や粘膜の色まで変化していくので、着色も自然と減少する場合もあるからです。
物理的には可能です。
口内炎の痛みを取るためや、外科処置のためにお子さんにレーザーを使用することもありますから、医学的に禁忌であるという訳ではありません。
しかし、自然と消える可能性があるので、あまりオススメしません。
歯肉・歯茎の着色は、色と種類によって原因や状態が大きく異なります。
レアケースな場合も含め、口の粘膜の病気は上に書いた以外にも多くあります。
「これ、前からあったっけ?」
「これ、放っておいても大丈夫なモノ?」
と疑問を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
- 歯茎の一部が赤や白は、炎症や病的な状態に伴うものが多いので要注意です。
- 歯茎が黒い場合は、大きさや色合いによって原因が大きく異なります。メラニンの沈着や歯科金属のメタルタトゥーの場合は治療できる場合があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。