歯科と『感染症』のかかわり
2021年4月29日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
春が来て、季節は巡っていきます。
緊急事態宣言で大騒ぎでした昨年度の3-4月頃からほぼ1年が経ちました。
コロナの第4波が来ている今、一度歯科と『感染症』というものを考えてみようと思います。
菌が体に入ってから感染症を起こすまで
家庭の医学であるメルクマニュアルを参考にすると、体内に侵入した微生物が感染症を引き起こすには、まず増殖しなければなりません。
生物が増殖を始めると、以下の3つのパターンのどれかが起こります。
- 微生物が増え続けて人体の防御機構に打ち勝ってしまう。
- 均衡状態に達して、慢性感染の状態になる。
- 人体の免疫機能により、またときに治療の効果も加わって、侵入した微生物が排除される。
ウィルス性疾患で熱が出た、というのが①の状態ですね。
歯科に関係する、う蝕(虫歯)に関しては、もともとが口の中にいる常在菌なので、②または③になります。
また感染の重症度がどのくらいになるかは、次のような因子によって決まります。
- その微生物が毒素や酵素といった物質を作るかどうか
- その微生物に抗菌薬に対する耐性ができるかどうか
- その微生物が人体の防御機構を妨げるかどうか
- 免疫系が十分に機能しているか。
虫歯菌はひ弱なのに、やっかいな理由
虫歯の原因菌であるミュータンス菌は、意外なことに非常にひ弱な菌で、抗菌薬でかなりいなくなります。
そして、もともと常在菌ですので、歯以外の部分には、ものすごく免疫が弱っていない限り影響していません。
「虫歯菌が弱い菌!?虫歯予防がこんなに大変なのに!?」
と思った人もいるかもしれません。
虫歯菌が作る「糊(のり)」=菌体外多糖(きんたいがいたとう)
虫歯菌は、糖(特に砂糖)から酸と菌体外多糖という「糊(のり)」のような物質を作ります。
「糊」は、まるでバリアのように菌を守ります。
そのため、抗菌薬や消毒薬が効きにくくなります。
また、菌は「糊」を使って歯にひっつきます。
そのため、ウガイくらいでは取れなくなります。
虫歯予防のために、うがいだけではなく、歯磨きが必要な理由です。
以上より、虫歯菌は菌単独では弱いくせに、歯に対しては虫歯という病気をつくったり、完全に口腔内から撲滅することが難しかったりするんですね。
COVID19がやっかいな理由
コロナに関しては、専門外なので僕なりの理解なのですが、このウイルス(COVID19)は細胞に侵入する能力がこれまでになく異常に高いようです。
COVID19はACE-II受容体という人間の細胞の器官を足掛かりに侵入するのですが、人間の咽頭など喉の部分の細胞には、これが常に発現しています。
COVID19に感染しても、多くの人は喉風邪程度の軽症で済むのですが、悪化すると肺に近いところまで炎症症状がでます。
炎症がある時・部位では、ACE-II受容体が多くなり、これを足掛かりにウイルスが侵入し、肺炎になるようです。
一度COVID19の侵入を深く許してしまうと、b~dの要素が大変に強いため、重症化してしまうケースが多いそうです。
COVID19の感染予防と重症化予防には、口腔ケアが有効
我々にできる対処法で、最も簡単なものはは免疫力をしっかりと保つこと、そしてしっかりと感染予防(手洗い、消毒、歯磨き)を行うことでしょう。
以前のブログでもお話しましたが、歯垢(プラーク)はほっておくと病原性が高くなる性質があり、喉や肺にも炎症を引き起こします。
COVID19の感染予防と重症化予防に口腔ケアは有効ですが、逆に言えば、口の中が汚れていたり、歯周病が進んでいると、COVID19の重症化リスクも上がるということです。
日々の口腔ケアと歯科医院での定期的な清掃が最も効果的で、インフルエンザでも口腔ケアの重要性が報告されています。
ぜひ口腔ケアを一緒にがんばっていきましょう!
まとめ
いかがでしたか?
- 感染症の面からみると、ミュータンス菌は大変弱い菌ですが、毎日の口腔ケアが必要です。
- COVID19予防のために、口腔ケアをみんなでがんばっていきましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。