歯科治療中に、オエっとなりやすい!~嘔吐反射~
2021年3月2日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
少しずつ春らしくなってきましたね。
最近、当院でよくある要望として、「オエっとなりやすいので配慮してほしい」という患者さんが、大人の方にもお子様にも増えています。
そこで、「オエっとなる」嘔吐反射のメカニズムや、歯科医院で可能な対処法についてまとめました。
嘔吐反射とは?
オエッとなる症状を嘔吐反射と言います。
嘔吐反射は、口腔内を触られたときに吐き気を起こす現象で、専門的には「異常絞扼反射(いじょうこうやくはんしゃ)」と言います。
嘔吐反射が極端に強い人では、のどの奥以外の、ごく浅い部分でも、口腔内を触られたり、物が入ったりすると強い吐き気を覚えてしまいます。
ただ、不思議なことに食物では、どんな喉の奥であっても吐き気もなく飲み込めるわけで、この点から嘔吐反射は心理学的な原因が強いと考えられています。
また、口呼吸が強く、口で息をしている場合、水が口に溢れると息ができなくなります。したがって、そのような人は「息が出来なくなるかも」という不安から、嘔吐反射が強めである場合も多いです。
歯科治療の場での嘔吐反射への対処法
1)嘔吐反射が起きやすい、トリガーポイントとなる部分の把握
歯の萌出に伴い、えずくポイントはだんだん喉の奥になっていきます。
また、人によって、この浅さなら大丈夫とか、ここを触られるのが苦手、というのがあります。
僕は嘔吐反射が強い患者さんの場合、そうしたポイントを確認するようにしています。
2)「天突」というツボを押す
のど仏の下の、鎖骨と鎖骨の間のくぼみにある「天突(てんとつ)」というツボを指で数秒間押し続けることで、ひどかった嘔吐反射が和らぐ事があります。
小児歯科医としての経験上、実際にやってみると、結構効果がある方が多いと思っています。試してみる価値はありますよ。
3)口呼吸がある場合は、鼻呼吸になる訓練を日頃からする
口呼吸は嘔吐反射を引き起こすリスクが大変高まりますので、鼻で息ができる訓練を日ごろから行うことが重要です。
口呼吸は、いろんなリスクを伴う悪い癖なので、歯科治療の必要が無い方でも、直すトレーニングをされることをおススメします。
参考リンク
4)物理に的に水が喉の奥に溢れないようにする配慮を行う
ラバーダムと呼ばれる治療する歯以外を覆ってしまうシートを使うと、物理的に水を排除できます。
5)鎮静を行う
それでもなお、嘔吐反射が強く治療が難しい場合は、リラックスすることを目的とした薬物を用いることもあります。
当院では最も安全性が高い鎮静薬物として、笑気ガスを鼻から吸入して治療を受けることが可能です。
笑気ガスによる鎮静効果でウトウトとまどろむ中で、治療を受けることができます。
参考リンク
ただ、お子様の場合、笑気ガス程度の弱い鎮静であれば『イヤなものは嫌!!』という感情は残っています。
特に、歯科治療が嫌で部屋に入る前から号泣している…というお子様の場合は、鼻水も出ていて、鼻からの吸入も困難となり、鎮静効果が十分に発揮されないこともあります。
笑気ガスよりも鎮静効果が高いものとしては、静脈内鎮静法と全身麻酔法がありますが、専門性が必要なため、当院では実施しておりません。
嘔吐反射が強い人は(もちろん、そうでない方もですが)最初から虫歯を作らないように予防することが何よりも大切だと思います。
そして、いざ、虫歯を作ってしまったけれど嘔吐反射が…という方は、まずはあきらめずに、色々な方法を歯科医師、歯科医院と共にトライしていきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
- 嘔吐反射は心理学的な原因が強いと考えられています。また、口呼吸が反射を増強している場合があります
- 嘔吐反射への対応としては、トリガーポイントの把握、水を喉に行かさない配慮、リラックス効果を高める薬物の使用などが考えられます。
- う蝕は進行性の病変です。あきらめずに治療可能な方法を検討していきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。