いびきと睡眠時無呼吸症候群の治療・改善法について
2017年4月22日
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
突然ですが、質問です。
いびきをかかずに眠れるとしたら、どうですか?
同じ部屋に寝ている家族もぐっすり眠れたり、目覚ましを使わなくてもいつもより自然と目が覚めるかもしれません。
明るい日差しが目に入って起きたり、小鳥のさえずりが聞こえて目がさめたり、気持ちの良い朝の空気を感じられるかも…
そうなったら素敵ですね♪
前回はイビキの仕組みと睡眠の質についてのお話をしました。
いびきの原因って?~音が鳴るメカニズム~
寝ている時は下顎と舌が気道を圧迫します。
太ったり歳をとったりすると寝ている時に気道がさらに狭くなりやすく、イビキが出やすい、という内容でした。
寝ている時に気道が狭くなり、睡眠中の呼吸が十分にできないため眠りが浅くなり、日常生活に支障をきたす病気として、睡眠時無呼吸症候群があります。
睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)とは?
眠っている間(7時間)に10秒以上の無呼吸が30回以上ある状態を睡眠時無呼吸症候群と言います。
気道が狭くなっているために睡眠中の呼吸が十分にできずに眠りが極端に浅くなり、日常生活に支障が出る可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群になると起こる症状
- 眠りが浅くなって疲れが取れない
- 集中力が低下
- 昼間に眠くなる/昼間に居眠りしてしまう
この病気が社会的に注目されるようになったきっかけは、2003年の山陽新幹線での運転手の居眠り運転だったと記憶しています。
睡眠時無呼吸症候群によって昼間に集中力が低下した結果、運転手さんが居眠り運転してしまった事件ですね。
事件が大きく報道された直後、私の父も病院で睡眠時無呼吸症候群の診断を受けたので、我が家にとっても大きなできごとでした。
父のイビキがとても大きいことはもちろん知っていましたが、生真面目で仕事熱心な父は日中に眠そうなそぶりを見せなかったので、それが病気のサインであるとは家族の誰も気づかなかったのです。
報道を見た父に「この病気かもしれないから、夜中に呼吸が止まってるか見ててくれない?」と頼まれ、寝ずの番で父の無呼吸の回数を数えた翌朝に病院受診を勧めた記憶があります。
ちなみに、寝ずの番で無呼吸の回数を家族が数えなくても、内科や耳鼻科などの病院に受診すればちゃんと検査で調べてもらえますので、もしかして睡眠時無呼吸症候群かも?と思ったら病院・診療所への受診をお勧めします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の改善法
1.痩せる
太っていてSASがある方は、痩せて気道を圧迫する脂肪の量が減ると、症状の軽減がみられる場合があります。
「私は睡眠時無呼吸症候群かも!?でも、病院に行く時間しばらく作れないなぁ…」と思った方で、スリムでない方は試してみる価値があるでしょう。
2.寝酒や、夕食後の深酒を避ける
舌は筋肉の塊で、筋力低下により舌根沈下(ぜっこんちんか)が起きやすくなるというお話を前回しました。
加齢による筋力低下の他に、舌の筋力低下を起こすもう一つの原因になるもの…それはお酒です。
お酒を飲むと、ちょっと力が入りにくくなりますよね。
舌の筋肉も同じように力が入りにくくなり、重力に引っ張られて気道を押しつぶしやすくなってしまいます。
寝酒や夕食後の深酒は睡眠時無呼吸症候群を悪化させやすいので、日常的な習慣としては避けた方が良いでしょう。
3.物理的に鼻に加圧した空気を送り込む(CPAP シーパップ)
CPAP(シーパップ)は、気道が閉塞していても物理的に加圧した空気を送り込んで呼吸させる方法で、最も一般的な睡眠時無呼吸症候群の治療法ともいえるでしょう。
こちらは鼻にマスクを固定して寝ます。
画像 日本呼吸器学会 https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/
後ほどご説明する、歯科で作成する睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースを口に装具を入れるのと、「どっちが楽ですか?」と聞かれることも多いのですが…
どっちもどっち、でしょうか。
私の父はこちらを使用していますが、慣れるまでは「寝るために装置をつけているのに、装置が気になって寝れない…」と嘆いておりました。
ですが、人工呼吸器のように空気を送り込んでくれる装置なので、確実性では最も優れた治療法と言えるでしょう。
長所:確実性が高い。
短所:
- CPAPを購入する場合と、レンタルする場合があるが、いずれも口腔内装具より高額。
- 慣れるまで不快感がある。
- 装置が大きいので、旅行などの時に持ち運びが大変。
4.口腔内装具(マウスピース)で舌根沈下を防ぐ
歯科で舌根沈下を防ぐための口腔内装具(マウスピース)をオーダーメイドで作ることができます。
内科などの病院・診療所の診断書を書いてもらってから歯科で口腔内装具を作る場合、健康保険適応になります。
まずは医科(睡眠外来、呼吸器科、循環器科、耳鼻科など)への受診をお勧めします。
口腔内装具の作成費用は3割負担で型取りと噛み合わせの記録に1600円程度、装具に5500~7000円程度です。
歯科で作る睡眠時無呼吸症候群用の口腔内装具(マウスピース)
- 装置が小さいので持ち運びに便利。2回の受診で装置が完成する。
- CPAP(シーパップ、睡眠時無呼吸症候群用の空気を送るマスクのこと)より安価。
短所:
- 慣れるまでは不快感がある。
- 慣れないうちは睡眠中に外れることがある。
「入院なんて時間的に無理!手っ取り早く装具が欲しい!」という方は、当院では自由診療(保険診療の10割負担にはなりますが)でお引き受けしておりますので、気になる方はご相談ください。
ちなみに不快感の程度は下顎を前に出す量と、個人の感じ方によるかと思います。
イビキ軽減の目的で使用する場合は上下の前歯を突き合わせで噛む程度で良いでしょうが、気道をしっかり広げるため下顎を上顎より前にまで持っていく必要があるときなどは慣れるまではそれなりに不快感があるかと思います。
私の母はイビキ防止と快眠のために、下顎を少し前に出したこの装具を使用しておりますが、初日から不快感は特になかったそうです。
まとめ
- イビキがあり、眠りが浅くなっている方は睡眠時無呼吸症候群の可能性がある
- 睡眠時無呼吸症候群の人は、痩せたり寝酒を避けたりすることで改善の可能性もある
- マウスピースやCPAPなどの治療法で、睡眠中の呼吸をサポートすることができる
治療法もいろいろありますが「もしかして自分は睡眠時無呼吸症候群かも?」と思われた方は、まずは医科または歯科にてご相談されてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。