家庭用超音波スケーラーは歯をかえって傷つけてしまう危険性がある
2017年12月25日
こんにちは、つぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
昨今、ドラッグストアや家電量販店のオーラルケアコーナーは充実していますね~。
幅広い品ぞろえで、それだけ多くの方がオーラルケアに熱心でいらっしゃるのだと嬉しく思っています。
当院にも、定期的に歯石を取ったり、歯茎の状態をチェックしたり、茶渋やヤニ取りにいらっしゃる、お口と全身の健康を大切に考えて来院される患者さまが多くいらっしゃいます。
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予防歯科の考え方が広まり、様々なオーラルケア製品が近所で入手できるようになったのは嬉しい限りです。
しかし一方で「これ、大丈夫なの!?」と心配になるようなオーラルケア用品が登場しているようです。
大丈夫なの!?とっても心配「家庭用超音波スケーラー」
H29年12月現在、家電量販店やAmazonで「家庭用超音波スケーラー」と銘打たれた商品が2万円前後で並んでいます。
楽天では「家庭用超音波スケーラー」は無く、ペット用と本物の医療用が出品されています。
医療用の超音波スケーラーは、現在はほとんどピエゾ型と呼ばれる一定方向に振動するタイプになります。
一定方向に縦振動するチップの先を歯に添わせるように当てることで汚れや歯石を取ることができます。
振動方向が一方向だけなので、ハイパワーで硬い歯石も取ることができます。
毎秒3万回も振動しますから、摩擦熱が生じます。
それを水で冷却しながら振動の衝撃で歯石を破壊するのですが、同時に歯周ポケット内の歯周病菌(嫌気性菌と呼ばれる、酸素を嫌う菌)に酸素を送り届けて弱らせる働きをします。
一方、「家庭用」と銘打たれた商品は、医療用としてはあまり見かけなくなった「マグネット式」と呼ばれる超音波スケーラーであると予想されます。チップの先端が楕円に回転するように動きます。
このあたりを詳しく知りたい方は、医療用スケーラーチップ屋さんのホームページに分かりやすい解説がありますので、読んでみて下さい。プロ向けのページなのですが、とても分かりやすいです。
さてさて、「家庭用超音波スケーラー」と銘打った商品のお話に戻ります。
なぜこれが心配かと申しますと、楕円に動くチップの先端を歯に当てる場合以外、つまりチップの側面が歯にあたると「秒速3万回の勢いで歯を叩く」状態になってしまうのです。
本人のセルフケアでチップの側面が全く歯に当たらないように…というのは、かなり難しいと思います。
ずっとでないにしても作業中、お掃除をしている歯の隣の歯などにチップの側面が当たってしまって…ということはかなりの頻度で起こることが予想されます。
また、パワーがさほど強くないタイプで「注水不要、しっかり見てヤニが取れる」を謳っている商品もありますが、超音波スケーラーは基本的に「歯が濡れた状態」で使うものです。
眼鏡やアクセサリー用の超音波洗浄器をイメージしてください。お水を中に入れて使いますよね?
渇いた状態で振動させると、超音波洗浄器と触れた部分に細かな傷がたくさんついてしまいます。
秒速3万回で物理的に擦れるわけですから、当然ですよね。
「注水不要」を謳っている商品の説明書をよく読むと、小さく「口内が渇いているときはご使用を控えてください」「口内が渇いたときにはお水で口内をすすいでからご使用ください」と書いてあるようなのですが…
ただでさえ自分の口の中ですから見えにくく、秒速3万振動により多少なり摩擦熱が発生する中で無注水とは…
歯医者の視点から申しますと「ちょっと危ない」と言わざるを得ません。
ちなみに、歯科医院でのスケーリング(超音波や手用器具を用いて歯石を取る行為)は歯科医師と歯科衛生士という国家資格所有者以外はやっちゃダメということになっています。
プロは、歯の形を歯茎に覆われている部分まで頭に入っていて、どこが歯石の付きやすいポイントで、どう器具を動かせば歯石を効率的に取れるか、ちゃんと理論で理解していて、かつ明るいライトの元、しっかり見えるよう患者様の頭の位置を椅子の高さや角度で調節して施術します。
あまり良く見えない自分の口の中を、薄暗い洗面台の前で、無注水で、自分の歯を傷つけないように超音波スケーラーを当てられるか…と言われると、歯科医師の私もちょっと自信はありません。
セルフオーラルケア熱が盛り上がるのは良いのですが、セルフケアを頑張って自分の歯を傷つけてしまった…とならないように、皆さまお気をつけくださいね。
「こんなセルフケアの道具あるんだけど、いいの?」と思ったら、とりあえず使ってみる前に歯科医師または歯科衛生士にご質問ください。
まとめ
- 「家庭用超音波スケーラー」は、歯を傷つけるリスクが高いように思われる
- 便利そうなお口のお手入れの道具を見かけたら、使う前にお気軽にご相談ください
最後までお読みいただき、ありがとうございました。