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なるべく削らない、抜かない治療を目指して ②

2017年1月5日

岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。

前回、接着技術の進歩とともに「MI=Minimal Intervention ミニマルインターベンション」つまり、「なるべく削らずに歯を残したい!」を実現する治療が進歩してきた、というお話をしました。

なるべく削らない、抜かない治療を目指して①

接着技術の進歩で「保持形態」とよばれる、詰め物が外れにくくなる形を余分に削ることは少なくなりました。(まったく必要なくなったわけではありません)。

しかし、それはMI:ミニマルインターベンションの「入り口」。

もっと根本的に削らずに済む方法について一緒に考えていきましょう。

その1 神経に近いところまで進行したむし歯でも、神経をなるべく残す治療を試みること

歯の神経は、刺激を受けると「二次象牙質(にじぞうげしつ)」と呼ばれる歯の質を作って、虫歯などの刺激の原因から逃げる性質があります。

人間がまだ野生動物だったころは、生の食べ物をガリガリがじって歯が「咬耗(こうもう:噛むことによって歯が摩耗してしまうこと)」することが珍しくありませんでした。

しかし、歯の神経が刺激を受けて歯の質を作って逃げることで、歯が咬耗により削れても、歯の神経がむき出しにならずに食事ができたのです。

この「刺激により神経を逃がす」ことは、薬品を用いて人工的に行うことができます。

詳しくは以前の記事をご覧ください。

神経に近いところまで進行してしまった虫歯 歯の神経を残す方法♪

神経を温存する、これも立派なMIです。

 その2 削る量を最小限にするための詰め物の材質を選ぶこと

 削る量を最小にするため材質を選ぶ上で考えないといけないことは、以下の2点になります。

  1. 強度が弱い材質の詰め物を使う場合
    ⇒詰め物が割れないように多めに削って詰め物に厚みをもたせなければならない
  2. 歯と比べて詰め物が硬すぎると、歯が割れやすくなる

以前の記事でもお話しましたが、

参考 保険の効く歯科治療と効かない歯科治療 その2

  • 見た目や費用を気にしない場合
  • 歯を傷つけない
  • むし歯が再発しにくい
  • 詰め物が割れるリスクのために必要以上に歯を削らなくて良い

という点では金が最も優れています。
ただ、金の欠点…保険が効かない、非常に目立つという側面もあります。

以下、他の素材の詰め物の特徴を上げていきます。

CR(コンポジットレジン)

  • 保険が効く
  • 症例を選びますが、あてはまる症例ならとても良い

金銀パラジウム合金

  • 保険が効く
  • 硬すぎて歯を傷つけてしまいやすい
  • 色も銀色で目立つ

e-MAX(セラミックの詰め物)

  • もっとも歯の色に近く非常に美しい
  • 強度が弱いために「詰め物が割れない厚みを得るために」多くを削る必要がある
  • 保険が効かない

ジルコニア

  • e-MAXほどではないが色は白くて美しい
  • 強度があるので多めに歯を削らずに済む
  • むし歯の再発を起こしにくい材料
  • 保険が効かない

それぞれ、一長一短の特徴があるので、これを選んでおけば間違いは無い!という全ての症例に最適な材料というのは存在しません。
ですから、見た目やむし歯再発のしやすさ、強度や費用などを考慮して、個別に患者さまご本人に選んでいただくのが良いと思います。

その3 初期むし歯はあえて削らず、食習慣・歯磨き習慣の改善とフッ素で修復させること

穴が開く前の、ごく初期の虫歯は実は削らずに治すことが可能です。

参考 削らなくても治る虫歯があるって本当?
削らずに治せる虫歯は削らない、これもMIの基本になります。

その4 そもそもむし歯にしないようにする=予防歯科こそが究極のMI!

 「うちの家系は虫歯が多くって・・・虫歯って遺伝するんですか?」

ときおり、診療室で患者さまから訊かれる質問です。
答えはNOです。

虫歯は生活習慣病であり、遺伝要因は非常にまれです。
虫歯になりやすい生活習慣、食習慣、歯磨き習慣の積み重ねで虫歯になってしまうんです。

自分なりに頑張って歯磨きをしているつもりでも、虫歯がすぐに出来てしまうなら、磨き方の癖や食習慣に問題があるのかもしれません。
もしくは、歯ぎしりや口呼吸など、良くない癖のために詰め物が痛んだり、虫歯になりやすくなっていたりする場合もあるでしょう。

定期的に歯科医院で詰め物が悪くなっている場所がないか、初期虫歯ができていないかチェックして、歯磨きの悪い癖や、磨き足りない場所があれば歯磨き指導を受ける、必要あればフッ素を塗り、歯石も取って歯周病も予防する・・・

これこそが、究極のMIと言えます。

実際、歯の定期健診の習慣がある人が90%もあるスウェーデンでは、80歳の歯の平均数が25本、定期健診に行く人が80%のアメリカでは80歳の歯の平均数が17本、定期健診に行く人が10%未満の日本では8.8本と、歯を失う数と定期健診の受診率には相関性があります

 

「でも、育児に仕事に忙しい中で、痛くもない歯のために時間を作るのは難しいなぁ~」

・・・よく、お気持ちはわかります。

↑のように思われた方のために、次回は「予防しなきゃ怖い!歯科疾患 ~糖尿病、脳血管障害、要介護度まで あれこれ関わっているお口の病気~」をお送りします。

 

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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