歯科と『感染症』のかかわり
2021年4月29日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
春が来て、季節は巡っていきます。
緊急事態宣言で大騒ぎでした昨年度の3-4月頃からほぼ1年が経ちました。
コロナの第4波が来ている今、一度歯科と『感染症』というものを考えてみようと思います。
菌が体に入ってから感染症を起こすまで
家庭の医学であるメルクマニュアルを参考にすると、体内に侵入した微生物が感染症を引き起こすには、まず増殖しなければなりません。
生物が増殖を始めると、以下の3つのパターンのどれかが起こります。
- 微生物が増え続けて人体の防御機構に打ち勝ってしまう。
- 均衡状態に達して、慢性感染の状態になる。
- 人体の免疫機能により、またときに治療の効果も加わって、侵入した微生物が排除される。
ウィルス性疾患で熱が出た、というのが①の状態ですね。
歯科に関係する、う蝕(虫歯)に関しては、もともとが口の中にいる常在菌なので、②または③になります。
また感染の重症度がどのくらいになるかは、次のような因子によって決まります。
- その微生物が毒素や酵素といった物質を作るかどうか
- その微生物に抗菌薬に対する耐性ができるかどうか
- その微生物が人体の防御機構を妨げるかどうか
- 免疫系が十分に機能しているか。
虫歯菌はひ弱なのに、やっかいな理由
虫歯の原因菌であるミュータンス菌は、意外なことに非常にひ弱な菌で、抗菌薬でかなりいなくなります。
そして、もともと常在菌ですので、歯以外の部分には、ものすごく免疫が弱っていない限り影響していません。
「虫歯菌が弱い菌!?虫歯予防がこんなに大変なのに!?」
と思った人もいるかもしれません。
虫歯菌が作る「糊(のり)」=菌体外多糖(きんたいがいたとう)
虫歯菌は、糖(特に砂糖)から酸と菌体外多糖という「糊(のり)」のような物質を作ります。
「糊」は、まるでバリアのように菌を守ります。
そのため、抗菌薬や消毒薬が効きにくくなります。
また、菌は「糊」を使って歯にひっつきます。
そのため、ウガイくらいでは取れなくなります。
虫歯予防のために、うがいだけではなく、歯磨きが必要な理由です。
以上より、虫歯菌は菌単独では弱いくせに、歯に対しては虫歯という病気をつくったり、完全に口腔内から撲滅することが難しかったりするんですね。
COVID19がやっかいな理由
コロナに関しては、専門外なので僕なりの理解なのですが、このウイルス(COVID19)は細胞に侵入する能力がこれまでになく異常に高いようです。
COVID19はACE-II受容体という人間の細胞の器官を足掛かりに侵入するのですが、人間の咽頭など喉の部分の細胞には、これが常に発現しています。
COVID19に感染しても、多くの人は喉風邪程度の軽症で済むのですが、悪化すると肺に近いところまで炎症症状がでます。
炎症がある時・部位では、ACE-II受容体が多くなり、これを足掛かりにウイルスが侵入し、肺炎になるようです。
一度COVID19の侵入を深く許してしまうと、b~dの要素が大変に強いため、重症化してしまうケースが多いそうです。
COVID19の感染予防と重症化予防には、口腔ケアが有効
我々にできる対処法で、最も簡単なものはは免疫力をしっかりと保つこと、そしてしっかりと感染予防(手洗い、消毒、歯磨き)を行うことでしょう。
以前のブログでもお話しましたが、歯垢(プラーク)はほっておくと病原性が高くなる性質があり、喉や肺にも炎症を引き起こします。
COVID19の感染予防と重症化予防に口腔ケアは有効ですが、逆に言えば、口の中が汚れていたり、歯周病が進んでいると、COVID19の重症化リスクも上がるということです。
日々の口腔ケアと歯科医院での定期的な清掃が最も効果的で、インフルエンザでも口腔ケアの重要性が報告されています。
ぜひ口腔ケアを一緒にがんばっていきましょう!
まとめ
いかがでしたか?
- 感染症の面からみると、ミュータンス菌は大変弱い菌ですが、毎日の口腔ケアが必要です。
- COVID19予防のために、口腔ケアをみんなでがんばっていきましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯磨き時の飛沫は、コロナウィルスの感染源となる?感染リスクを下げるちょっとしたコツ
2021年4月24日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井です。
COVID-19感染症も最初の緊急事態宣言が出されてから、もう1年になりますね。
今春は待望のワクチン接種が始まったりしましたが、一般人までワクチンが回ってくるまでにはもう少しかかりそうですね。
歯磨きする時のソーシャルディスタンス
去年は学校や幼稚園での歯磨きが自粛されたりしていたところが多かったと聞きますが、現在では多くの学校や幼稚園で、食後の歯磨きが再開されています。
歯磨きをすると、唾液の飛沫が約2メートルも飛ぶと言われいます。
よって、学校などでの歯磨きは、換気の良いスペースで2メートル離れて行うことが勧められています。
歯磨きペーストは消毒成分が配合されたものがおススメ
歯磨きペーストに含まれる成分で、消毒成分CPCや界面活性剤の成分が、新型コロナウィルスを不活化するとの報告があります。
消毒剤や石鹸手洗いでウィルスを消毒できるのですから、そうした成分が配合されている歯磨きペーストがコロナウィルスに有効、というのは、納得ですね。
歯磨きペーストに配合されていると嬉しい、おススメ消毒成分 CPC
CPC(セチルピリジニウム塩化物水和物)については、米国疾病予防管理センターも、新型コロナウイルス感染拡大期における歯科医院向け暫定歯科対応要綱の中で、口腔内や飛沫中の微生物量を減らせる、と報告しています。
また、口腔化粧品メーカーのサンスターは(あくまで試験管内の実験結果ではありますが) CPC を配合した液体製剤が新型コロナウイルスを 99.9%不活化(感染性消失)したと報告しています。
CPCはコロナ流行期にあわせて出てきた消毒成分ではありません。
もともとは歯周病菌に対する殺菌効果がある商品として、以前から販売されていました。
つまり、新型コロナ対策だけでなく、歯周病予防効果も同時にできるので、おススメです。
歯磨きペーストやデンタルリンスを買う時には、CPCが配合されているものかどうかチェックしてみてはどうでしょうか。
パッケージの成分表に「CPC」と書いてありますが、わからない方はかかりつけの歯科医院で聞いてみてくださいね。
多くの歯科医院の窓口販売で取り扱いがあると思います。
歯ブラシの管理には気を付けましょう!
他の人の歯ブラシと自分の歯ブラシを接触させないことが大切
最後に、一番大事なことです。
学校や幼稚園、高齢者施設などでの歯ブラシの管理は注意してください。
複数の人の歯ブラシを一か所に集めてしまうと、歯ブラシ同士が接触して感染リスクが高くなってしまいます。
家庭内でも、歯ブラシ立てで歯ブラシ同士が接触すると家庭内感染のリスクが高くなってしまいますので、接触しない距離で管理するようにしましょう。
歯磨きには、ウィルス感染症の予防効果がある!
インフルエンザや新型コロナウィルス感染症といったウィルス感染症の予防効果があると言われています。
食後の歯磨きをする小学校と、食後の歯磨きをしない小学校で比較した報告があります。
インフルエンザ流行期による学級閉鎖の率が、前者は45%、後者が80%と大きな差が出たことが知られています。
お口の中をしっかりケアして、感染症に負けない体を作りましょう!
まとめ
いかがでしたか?
- 歯磨きは2メートル人と離れてしましょう
- CPC配合の歯磨きペーストがおススメです
- 歯ブラシ同士が触れないように管理しましょう
- しっかり歯磨きで、感染症に負けない体を作りましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。
糖尿病で、お薬を飲んでいても血糖値が安定しない…それは歯石のせいかもしれません。
2021年3月15日
歯周病と糖尿病の関係
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
歯周病と全身疾患の関係について耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。
今回は糖尿病との関係について考えていきたいと思います。
参考リンク
認知症と歯周病
歯科と糖尿病、脳血管障害、要介護度は関係が深い!?あれこれ関わっているお口の病気
糖尿病とは?
糖尿病というのは、インスリンの作用不足で慢性的な高血糖状態になり、それが原因でさまざまな合併症を引き起こしてしまう疾患を言います。
糖尿病と歯周病は関係が深い
糖尿病になると、歯周病になりやすく、歯周病があると糖尿病が悪化しやすいことがわかっています。
糖尿病があると歯周病になりやすいのは、なぜ?
- 毛細血管が切れて、血行が悪くなる
- 血行が悪いので細菌感染が起きても白血球による迎撃が十分にできない
- 細菌を抑える力が弱まるので、歯周病になりやすい
- 組織の修復能も下がるので、歯周病になりやすい
糖尿病のコントロールの指標としてHbA1cというものがあります。
このコントロールが良くないと、歯槽骨(歯を支えている骨)の吸収がコントロールが良い人と比べて多いという研究データもあります。
糖尿病が改善したら、歯周病も治る?
糖尿病が無い人でも、歯周病にはなります。
日本人の約8割が歯周病などの歯茎に炎症をもっているという統計もありますから(日本では成人の80%、約8000万人が罹患していると言われています)、糖尿病がなおったからといって歯周病が治るとは限りません。
ただ、糖尿病が改善する前よりは、歯周病も軽度になることが多いと言われています。
糖尿病の有無に関わらず、歯石をとったり、定期的に歯科を受診して悪くなっているところがないかチェックすることは重要です。
歯周病があると、糖尿病が悪化しやすいのはなぜ?
歯周病は慢性の炎症性疾患です。
炎症によって産生された物質は体の中でインスリンを効きにくくしてしまう作用があります。
さらに、歯周病菌の出す内毒素とよばれる物質にもインスリンの働きを妨げてしまう作用があります。
その結果、歯周病を放置すると、糖尿病を悪化させてしまうことが多いのです。
さらには、糖尿病の合併症である心血管病変や腎症の進行に対しても影響を及ぼしてしまう可能性があります。
歯周病を治療すると糖尿病が良くなることが多い?
歯周病が無い状態、もしくは非常に安定した状態で保たれると、血糖値が改善することが多いと報告されています。
「血糖値がなかなか安定しない…」という方は、まずは歯科で、歯周病が無いかチェックしてみることをおススメします。
まとめ
いかがでしたか?
- 糖尿病と歯周病はどちらかが改善すると、もう片方も改善する可能性がある
- 糖尿病と歯周病は、どちらかが悪化すると、もう片方も悪化する可能性がある。
- 糖尿病で血糖値が安定しないとお悩みの方は、歯科治療もぜひ検討してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯磨き粉を使う人は使わない人より歯がちゃんと磨けていないことがある!?~歯磨き粉のいろいろ~
2021年2月22日
岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦和則です。
今回は歯磨き粉についてお話していきます。
歯磨き粉のメリット・デメリット
みなさん、歯磨き粉はどんな目的で使いますか?
使うと口の中がスッキリするため
汚れをよく落とすため
口臭予防
歯を白くするため
などなど・・・
歯磨き粉を使う場合と使わない場合、どっちが汚れがよく落ちるの?
歯磨き粉を使用して磨いた場合と、そうでない場合を比べると、使わないよりも使ったほうが汚れはよく落とせるといった実験結果が出ているようです。
さらには、汚れを落とす効果に加えて、汚れが付きにくくなる効果もあるようです。
同じ歯磨きをするにしても、歯磨き粉を使っているほうが歯垢(プラーク)の付着量に差異が認められるようです。
歯磨き粉自体にも香りがついていますが、歯垢(プラーク)が少ない状態をキープすることでも口臭防止効果があります。
歯の着色対策の歯磨き粉は有効。しかし研磨剤が含まれているタイプのものは注意も必要
歯の着色に関しても、それに特化した商品もあり、たばこやコーヒー、紅茶などををよく摂取するような場合には助かりますね。
着色を取り除こうと思うと、研磨剤配合のものということになるかもしれません。
研磨剤に関して言うと、歯面を傷つけるということに変わりはないので、ブラッシング圧などは注意が必要です。また、歯がしみるという方は、症状が悪化することがあります。
フッ素配合の歯磨き粉
ほとんどの歯磨き粉にはフッ素が配合されています。
歯質強化の作用も期待されます。
フッ素の効果については、歯磨き粉の一番の効果と言ってもいいかもしれませんね。最近はフッ素の濃度が高い商品も見られるようになりました。
使用できる年齢に制限はあるのですが、高濃度による効果は期待できると思います。
歯科医院で塗るフッ素と歯磨き粉のフッ素は併用しても大丈夫?
歯科医院で塗るフッ素は市販では売られていない高い濃度です。
3ヶ月に一回くらいの頻度で歯に塗っておくと、低濃度のフッ素がずっと口の中にあり、歯が少し強くなります。
自宅で使うフッ素入りの歯磨き粉は、歯科医院で塗ったフッ素によって、口の中にあるフッ素濃度よりも高い濃度です。
しかし、歯磨きで歯に触れる時間は非常に短いので全く問題ありません。
歯科医院のフッ素と家でのフッ素のダブル効果を狙っていくのもおすすめです。
歯磨き粉のデメリットとは?
ここまで歯磨き粉の良い点をお話してきました。
デメリットはなんでしょうか?
歯科医院でよく言われているのは、
「磨けてないのに磨いた気持ちになってしまう」という点です。
歯磨き粉は、あわあわになって、泡をうがいしたらサッパリしたり、強い香りで口臭がわからなくなってスッキリしたりしますよね。
これが曲者で、ちゃんと歯ブラシを当てて歯垢(プラーク)が落とせていないけど、磨けた気分になってしまうんですね。
磨けてないけど磨いた気分になってしまうのを防ぐためにも、特に夕食後は丁寧に時間をかけて磨くことを意識してもらえらればと思います。
その他機能に特化した色々な歯磨き粉もある
いろいろと近年では機能特化したものも多くでていますね。
歯周病、ホワイトニングなどなど。
さらには、ホワイトニングに関しても、歯に優しくホワイトニングなどの商品もありますね。知覚過敏に対する歯磨き粉も機能特化と言えますね。
発砲作用が少ないようなものもあり、他にも、虫歯予防をしながら歯を白くしたい、歯周病や口臭が気になるなどに対応した商品もありますので、気軽に質問していただけたらなと思います。
まとめ
- 歯磨き粉には汚れを落としたり、汚れがつきにくくなる成分も入っています。
- 着色対策の歯磨き粉は研磨剤が入っているので注意も必要です。
- 歯科医院のフッ素と歯磨き粉のフッ素でダブル効果を狙うのがオススメです。
- 歯磨き粉のさっぱり感と香りで磨けた気分になってしまうので、夕食後は特に丁寧に時間をかけて歯磨きをしてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
プラークってなんだろう?~歯磨き粉や歯ブラシのCMでおなじみの、あの言葉~
2021年1月24日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
みなさん、プラークと言う言葉を聞いたことはありませんか?
歯ブラシや歯磨き粉のテレビCMで、良く聞きますよね。
プラークは別名、歯垢ともいいます。
プラーク=細菌と、細菌の分泌物と、細菌の死骸で出来たネバネバ
プラークとは歯の表面に付着している細菌の寄り集まりのようなものです。
色的には白や乳白色といった感じでしょうか、古くなってくると黄色やオレンジっぽくなってきます。
プラーク(歯垢)はバイオフィルムの1種です。
またカタカナ語が出てきましたね。
バイオフォルムも、テレビCMで聞く言葉です。主にパイプ除菌などの商品のCMで耳にするはずです。
バイオフィルム=微生物と微生物の分泌物などで作られた膜
プラークの他には、排水溝などのぬめりなどもこれにあたります。
バイオフィルムは、漂白剤でも使わない限り、物理的に磨き落とすしかない!
「歯磨きが面倒だから、マウスウォッシュだけで綺麗になったら良いのに」
「最近、細かいものが見えにくいから、磨き残しを溶かして落としてくれるお薬があれば良いのに」
と、思ったことはありませんか?
ハイプや排水溝は塩素系の漂白剤で綺麗になりますが、口の中にそんな劇薬を使うわけにはいきません。
酸素系漂白剤としても用いられるオキシドールで、排水溝のぬめりが取れないように、弱い薬剤のみでプラークを完全に溶かすことはできません。
どうしても、物理的に磨き落とす必要があるのです。
バイオフィルムって、なんでそんなに落としにくいの?
細菌が集まって菌体外多糖というネバネバした分泌物で周りを固めたものがバイオフィルムです。
このネバネバがバリアとして働いて、抗生物質や免疫細胞による貪食(細菌を免疫細胞が殺す働き)から細菌を守ります。
お口の中では、虫歯原因菌のミュータンス連鎖球菌が出す菌体外多糖(ムタン=グルカン)がプラークを歯にしっかりと引っ付ける作用をしています。
ちなみに「ミュータンスレンサ球菌」という名前は、ムタンを産生する細菌ということからきている説があります(*他の説もあります)。
参考:外部サイト(日本細菌学会)
http://jsbac.org/youkoso/mutansStreptococci.html
虫歯菌と歯周病菌
ミュータンス菌は砂糖(ショ糖)を原料としてムタンを産生します。これによって他の口腔内細菌とともにプラークとして成熟して行きます。
プラークは細菌の寄り集まりと書きましたが、プラーク1mg中には1~2億もの細菌が存在しているようです。
種類としても600種類ほどの細菌が寄り集まっています。
歯の表面にいる筋の多くは「酸素が好き」な好気性菌と言われる菌です。
しかし、成熟したプラークの中には酸素は届きませんから、分厚いプラークの奥の方には、「酸素が嫌い」な嫌気性菌が増えていきます。
口の中の代表的な嫌気性菌に、歯周病菌もいます。
プラークが古くなる=長いこと落とせずにいるプラークが出来ると、歯周病菌が増えていってしまうんです。
プラークは、むし歯、歯周病のどちらにも関係しています。
先ほどにも書いたのですが、プラークには防御力が備わっています。
しかも時間がたつほど歯にしっかりとこびりついていきます。
うがい程度では除去できませんから、歯みがきで落とすしかありません。
さらに長い間歯面にプラークが存在していると、唾液に含まれるカルシウムなどによって石灰化してしまいます。
これが歯石と呼ばれるもので、灰白色や黒褐色の石灰化物です。
この歯石も、歯周病を引き起こす毒素を出して、歯周病を悪化させていきます。
歯石はさらに除去が困難となるため、歯科医院での歯石取りは定期的に行う必要があるということになりますね。
完全に溶かすことは出来ないのに、マウスウォッシュは何のために使うの?
マウスウォッシュには、大まかに分けて以下の4種類があります。
- 口腔の保湿を目的としたもの(バイオティーンなど)…口腔乾燥症の方向け
- プラークを落とした上で、歯ぐきの炎症を抑えることを目的としたもの(コンクール、リステリンなど)…歯周病の方向け
- プラークを落とした上で、フッ素による再石灰化を目的としたもの(ミラノールなど)…歯周病の心配の少ないお子様向け
- タンパク分解作用、消毒作用によりプラークの表面の菌を殺したり、プラークが溶けやすい状態にする目的のもの(POICウォーターなど)…プラークそのものを攻撃するタイプなので、歯周病・虫歯予防両用です。ただし、口腔乾燥症の方には向きません。
プラークを完全に溶かすことはできないけれど、たんぱく質を分解することで取れやすくするウガイ薬はあります。
ご興味のある方は、お気軽にお尋ねください。
インプラント術後の方、矯正装置が口の中に入っていて磨きにくい方、歯並びのガタガタのため磨きにくいところがある方には、特におススメです。
まとめ
- プラークが硬い歯石になる前に歯磨きで出来るだけ落としましょう。
- 磨き残しがどうしても歯石になってしまうので、定期的に歯科医院で取り除く必要があります。
- ウガイ薬だけでプラークを取り除くことはできませんが、取れやすくするものはあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
口の中が汚れていると、熱を出しやすくなってしまう!?「誤嚥性肺炎」のおはなし
2020年8月9日
こんにちは!つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
突然ですが、お口の中に少し唾液を溜めて、上を向いてみてください。
むせた方…それは「誤嚥」です!
誤嚥って何?
食べ物や飲み物でむせた経験は、あなたにもきっとあると思います。
人間の喉は、途中で食道(食べ物や飲み物を胃に送る道)と気道(空気を肺に送る道)に枝分かれしています。
喉頭蓋という、可動式のフタのような器官が「食べ物が食道に行くように、気道をふさぐ」ために、気管に食べ物や飲み物が行かないのです。
「むせる」とは、食道ではなく気道の方に、食べ物や飲み物が入ってしまったときに、気道から食道にむけて追い出そうとして起こる反応です。
「むせる」ことが出来るので、気管や肺に異物が入り込まないで済むんですね。
では、「むせる」ことが出来ないと、どうなるでしょうか?
気道に異物が入っても、「むせる」ことが上手にできなければ、肺炎になってしまう
高齢者になると、喉の筋力が低下して上手にむせることが出来なくなってしまう方も少なくありません。
肺炎は、高齢者ほど多く、さらに重大な結果を引き起こしてしまいます。
高齢者の肺炎のうち1/3程度が誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)と言われていますから、ご高齢の方にとってはとても身近な病気です。
人間が2足歩行に進化したために「誤嚥(ごえん)」するようになった
「そもそも、どうして食道と気道が合流しているの?」
「ほかの動物がむせているところ、そういえば見たことない…」
そうなんです。
誤嚥は人間が2足歩行となった弊害といえます。
2足歩行によって食べ物と、呼気が同じ所を通るように変化してしまった結果、人間の喉はとても複雑な作りになってしまっているのです。
自分でもできる「誤嚥性肺炎」予防法!
誤嚥(ごえん)により、口腔内細菌などが肺に入ることで起こる肺炎を、誤嚥性肺炎といいます。
歯垢(しこう、プラーク)の中には、大量の細菌が棲息していて、唾や食べ物・飲み物などを誤嚥することで、口腔内の細菌が肺に運ばれてしまうのです。
自分でも出来る「誤嚥性肺炎予防」というと、やはり口腔内の細菌数を減らすことが一番ではないでしょうか。
歯周病なども、口腔内の細菌感染です。
歯を残すことは、もちろんとても大事なのですが(80歳で20本以上の歯が残っている人の、要介護度は低いことがわかっています。
歯を減らさずにおくことは、健康寿命を伸ばすためにも、とても重要です!)
参考リンク:歯科と糖尿病、脳血管障害、要介護度は関係が深い!?あれこれ関わっているお口の病気
一方で、歯が多く残っているということは、しっかりとしたケアをしないと、汚れやすい環境を作りやすいと言うことでもあります。
1)誤嚥性肺炎予防は、歯磨きが基本です!
歯磨きの方法、苦手な部分に対する対処方法などを、歯科医院においてレクチャーを受けてみる、というのもおススメです。
歯磨きは子どもの頃からやっていますから、簡単に思っている人は多いのではないでしょうか?
では、あなたのまわりに「虫歯も歯周病も、1本もない!経験したこともない!」という方はおられるでしょうか?
おそらく、めったに居ないはずなのです。
統計上、日本人の8割以上の方が歯肉炎・歯周病を持っていることが分かっています。虫歯を経験した人も入れると、ほぼ100%に近くなると思います。
これらの病気にならないための歯磨きは、大人にとっても、とても難しいのです。
2)細菌数を減らす消毒成分を持つうがい薬もおススメです。
当院では、POICウォーターという次亜塩素酸水や、ネオステリングリーンというベンゼトニウム塩化物製剤のうがい薬を、よく使っていただいております。
3)管理の不十分な入れ歯も、誤嚥性肺炎のリスクとなります。
入れ歯の表面にも、細菌がカビはたくさん繁殖します。
適切なケア、手入れが必要です。
義歯ブラシでの洗浄と、義歯洗浄剤での消毒など、ちゃんとしたお手入れ方法があります。
もし、不安がある方はお気軽にご質問くださいね。
自分で出来ない場合は、プロ(歯科衛生士)に頼む!
介護が必要な方など、自力でのお手入れや、ご家族によるお手入れが難しい場合は歯科医師・歯科衛生士による訪問歯科診療をご利用いただくと良いでしょう。
口腔ケアのあるなしで、誤嚥性肺炎のリスクに違いがあるようです。
お口の中の専門家として、お手伝いできることもあると思いますので、気軽にご相談くださいね。
まとめ
- ご高齢の方の場合、口の中が汚れていると誤嚥性肺炎になりやすいです。
- 口腔ケアにより、誤嚥性肺炎のリスクを下げることができます。
- 歯磨き、うがい薬、入れ歯のケアなどが、口腔内の細菌数を減らすのに有効です。
- 自力での口腔ケアが難しい場合は、訪問歯科診療をご利用いただくのも良いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お子さんの歯並びと8020(ハチマルニイマル)
2020年7月22日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
新型コロナウイルスの流行期、マスクをする時間が増えた方が多いのではないでしょうか?
マスクをしていると、口呼吸になりやすい
「マスクをすると口呼吸になりやすい」とよく言われています。
子どもの頃からこんなに長期間、マスクをする羽目になってしまった今のお子さん達が心配です。
顎や頭の骨が成長している最中の子どもが、口呼吸の癖をつけてしまうと、鼻(正確に言えば「副鼻腔」という、鼻と連結した空洞です)が十分に発達しません。
そのため、上顎が横に成長することができなくなり、
その結果、歯が前にあふれてしまう…。
つまり出っ歯さんになりやすくなってしまうのです。
歯並びが悪いと何が起こるのか、矯正のタイミングなどの質問にお答えします!
1)年をとった時に、自分の歯を残せない歯並びとは?
みなさんは8020(ハチマルニイマル)という標語はご存じですか?
「80歳で20本の歯を残しましょう!」という意味の言葉です。
なぜ80歳の時に20本歯が残っているのが良いのか?
80歳で20本の歯が残っている人は、そうでない人と比べて、要介護度が低く、高齢でも自活できる人の割合が高いと言われています。
東北大学の研究で、80歳で歯が20本以上ある人と0本の人を比較すると、寿命だけでなく、健康寿命を比較しても、男性で92日、女性で70日の差が出ました。
健康寿命というのは、寝たきりなどにならずに、自分の力で日常制限を受けずに生活できる寿命です。
また、20本歯が残っていれば、たいていのものを食べることができると言われています。
8020を達成しにくい歯並び
8020を達成しにくい歯並びの人がいることがわかっています。
反対咬合・開咬
2000年の東京文京区と千葉市の結果ですが、
反対咬合(はんたいこうごう:受け口)と開咬(かいこう:前歯が咬んでいない咬み合わせ)の人の8020達成率は驚異的に低く、ほぼ0%です。
反対咬合
開咬
共通しているのは、
奥歯で、すべての咬合力をほぼ支える咬み合わせであるという事です。
奥歯が抜けると徐々に前に…という負のスパイラルを生じやすいのです。
叢生
次点で問題のある咬み合わせは、
いわゆる叢生(そうせい:ガタガタの歯並び)です。
叢生は虫歯リスクの高さと関係があるようですが、個人差も大きい印象です。
叢生
2)お口ポカンを防ぎたい!噛み合わせを鍛える時期とは?
お口ポカンはなぜ悪い?
近年、お口がよく開いているお子さんが増えています。
お口がポカンと開きっぱなしになっていても、口呼吸になってしまいます。
また、歯並びが崩れてしまいます。
「お口ポカン」も、防ぎたい「悪い口の癖」と言えます。
前回の小児歯科学会学術大会でも、そのような報告が多くされています。
お口ポカンの原因は口輪筋の発達不全
お口周りの筋(口輪筋:こうりんきん)の強さが、その能力に大きく関係していると言われています。
研究によると、
口輪筋の強さは、3歳児では3ニュートン(N)、6歳児で6N、11歳で8Nまで上がりますが、12歳では8.5Nで、それ以降はあまり伸びていかないことが報告されています。
つまりは口輪筋の発達は、3歳から6歳が最も旺盛で、11歳ぐらいでその成長は落ち着いてしまうということです。その成長のピークに合わしてトレーニングするのが最も効率的と言われています。
口輪筋を鍛えてお口ポカンを改善する
お口ポカンを防ぐトレーニングについては、過去の記事をご覧くださいね。
あいうべ体操
3)子供時代に口腔機能の能力をしっかり高めて、高齢になっても機能低下しにくい口をつくっておく
口腔機能は乳幼児期で一気に発達し、成人期では変化が少なく、高齢期で低下します。
よって、まずすべきことは、
小児期(3歳~6歳、遅くとも11歳)ぐらいまでに口腔機能をできるだけ鍛え、ピークを上げることです。
将来的に問題が出やすい咬み合わせ(反対咬合、開咬、叢生)の治療も、そのころまでに治しておくことが、正常な発達の上で重要です。
高齢期で機能を落とさないやり方はいくつかありますが、最も大事なことは、歯と筋肉をなくさない、これに尽きます。
できるだけピークを上げて、成人期~高齢期ではメンテナンスを行い、機能を落とさないようにしていきましょう。
まとめ
- 口腔機能を保つためには、まず発達時期に適切に機能を発達させることと、そのピークを落とさないことが重要です。
- お子さんの口の機能の発達は、3歳から6歳までが最も旺盛で、11歳ぐらいまでは成長がみられますが、そこからは変化が少なくなります。
- 8020を達成しにくい咬み合わせは、奥歯で多くの負担をかけている開咬と反対咬合です。可能であれば11歳ぐらいまでに治療を行いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
原点にもどって歯磨きの話
2020年2月27日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
本年度最初のブログ記事なので、原点に立ち返って歯磨きや歯垢染色液について説明していきたいと思います。
1)歯磨きをする前に
「歯磨き、完璧です!」という方は少ないと思います。
習得するのはなかなか難しいですね。
そもそもプラーク(歯垢)は、食べ残しというわけではなく、口腔内の虫歯の原因菌を含む常在菌が、食べ物(特に糖分)を分解・代謝して歯の表面に作った菌と代謝物のかたまりです。
想像してみてください。
甘いものを食べると、古いプラークの上に新しいプラークが雪だるま式に増えていくイメージです。
表面と内側の古いプラークは酸性度などの性質も異なり、古いプラークの下では虫歯がおきています。
ですので、基本的にはまず「質の悪い虫歯になるプラークを増やさない!」というのが最初の戦略となります。
具体的には、糖分の摂取量を減らす、これが大前提です。
実際3歳までは、「虫歯の原因は歯磨きよりも食生活習慣の影響が大きい」という調査結果がいくつも出ています。
2)歯ブラシを選ぶ前に
歯磨きというのは結局のところ、質の悪い古いプラークを取り除くことに尽きます。
「小さめの歯ブラシで丁寧に時間をかけて」、と、我々歯科医師は患者さんにお伝えしますが、きちんとできる人は少ないです。
最近特に思うのは、口頭での説明だけでは、プラークの付きやすい位置はわかりづらく、こちらの危機感はなかなか伝わらないなあ、ということです(特にお子さん)。
ですので、最近は家庭でも歯垢染色液の使用をおすすめしています。
歯垢染色液は食紅等の染色液を溶かしただけの単純なものですが、液体歯みがき剤と歯垢染色液が一体化したものが特におすすめです。歯科医院で使用する歯垢染色剤より染まった色は薄めなのですが、その分、お母さんの洗面台のお掃除が楽です。
もし、うがいの後で赤い色があちこちに飛び散っても、濡れた布やティッシュでサッと一拭きするだけで色が落ちます。
受診時に染色液で染めてから歯磨きしてもらうと、お子さんでもすぐに汚れが取り除けます。見える化は大事ですね。
3)歯磨き粉を選ぶ前に
昭和の頃の歯磨きは、粉(研磨剤)を多くして歯垢を取り除く効率を上げようという戦略が小児でもとられていました。
しかし現在は、薬効成分を多く含む、粉を含まないゲルのものにほとんど変わっています。
薬効成分の代表的なものがフッ素です。
ブラッシング後、一定時間、一定濃度以上のフッ素をお口の中に残しておくことがポイントです。
ですので、仕上げのうがいはほとんどしなくてよいです。
フッ素の濃度が有効性に関連しますが、ブラッシング時に通常量使う場合、400ppm未満は虫歯予防効果が期待できないというデータがあります。
最近の商品は500ppm~1450ppmの範囲となっており、年齢が上がるにしたがって濃度も高い製品をお勧めしています。
最近、乳酸菌入りの歯磨き剤も出ていますが、虫歯があったり、なりかけている状態でに対しての効果は不十分です。
たしかに乳酸菌を使うことで、虫歯の原因となるミュータンス菌が歯に定着するのを防ぐ効果はあります。
しかし、そもそも、再定着を防ことができるのは、虫歯を作る部位である溝や小窩、歯と歯の間の隣接面からミュータンス菌を完全に取り除けた場合にのみという報告があります。
乳酸菌を虫歯にならないくらい効率よく歯に定着させるためには、歯科医院で使っている器具レベルで細かいところの除菌が必要そうです。(まあ、そこまでしたらそもそも虫歯にならないかも。。)
あまり現実的ではないかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか?
- 歯磨きを頑張る前に、まず食生活習慣を見直しましょう。
- 歯磨きの前に、まず取り除くべき歯垢の確認、磨かないといけない場所をよく知りましょう。
- 歯磨き粉は薬効性が多いもの(代表的にはフッ素)を使いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
良くない口の習慣、「口呼吸」 ~風邪をひきやすく、虫歯・歯周病・口臭・出っ歯の原因にもなる~
2020年1月31日
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
あなたは、口呼吸と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?
対する言葉としては、鼻呼吸です。
鼻で呼吸するということはどういうことでしょうか?
鼻には体を守る色々な作用が備わっています。
加湿作用や、粘膜によるウイルス、細菌に対する防御作用などです。
口呼吸のデメリットはよく言われているように思います。
口で呼吸するので、鼻での作用の恩恵が受けられませんから、当然ながら感染しやすかったり、乾燥の原因となったりするようです。
口呼吸のデメリット…その1 口の乾燥
口の乾燥も、色々なリスクとなります。
虫歯ができやすくなる
唾液にはカルシウムが豊富に含まれ、口の中が虫歯になりやすい環境になったときに、歯を補修する働きがあります。
参考リンク:削らなくても治る虫歯があるって本当?
唾液が少なくなると、むし歯ができやすくなるのですが、同じように口呼吸による乾燥でもむし歯になりやすくなります。
歯周病になりやすくなる
歯周病も感染症です。唾液の抗菌作用が、口の乾燥によって低下してしまうので歯周病の危険が増してしまいます。
口臭が出やすくなる
口臭についても乾燥の影響で強くなってしまうようです。
参考リンク ドライマウス(口腔乾燥症)の原因と自分での治し方
歯への着色が起こりやすい
口呼吸をされる方は、ちょうど前歯の唇が当たらない部分に、着色が起こりやすいです。
唾液の作用っていろいろな面に作用していて大きいのです。
口呼吸のデメリット…その2:歯並びが悪くなる
口呼吸は、歯ならびにも関係してきます。
口で呼吸しているということは、当然ながら口は開いているんですよね。
口を閉じるのは口の周りの筋肉(口輪筋)の作用ですので、この力が弱いのです。
舌の位置についても鼻で呼吸するのとは違い、口で呼吸しやすい位置に舌が移動してしまいます。
参考リンク:いつでもお口がポカンと開いている「口呼吸」
歯ならび、歯列というのは外からの力、頬や唇ですね。それと内からの力、舌の力のバランスによって大きく影響を受けます。
つまり、口で呼吸しているというのは、歯ならびが悪くなるリスクになるのです。
矯正治療をする場合でも「後戻り」の大きなリスクとなることがあります。
長い期間をかけて歯並びをキレイに整えて行くのが矯正治療ですが、歯に(骨に)力をかけることで歯が動いていきます。
矯正治療が終わった後でも、歯に力がかかっていると、当然歯は動いてしまいます。つまり、後戻りのリスクがあるとも言えます(後戻りのリスクが高いと判断される場合は、後戻り防止装置が外せないこともあります)。
力のバランスが取れていないと、治療した歯並びが変化してしまうということが起こってしまうのです。
鼻呼吸で、感染や歯並びのリスクを予防しましょう!
口で呼吸することにはデメリットがいっぱい。
可能であれば意識して鼻で呼吸するようにしていきましょう。
テレビを見るときなど、ボーッとしていてもお口はつむっているようにしていただくことが大事です。とはいえ…夢中になっている時に、意識できない…という声もあるかと思います。
口の周りの筋肉(口輪筋)が十分に発達していないと、口を閉じ続けるのが難しいことがあるのです。そんなときは、「口の周りの筋肉の筋トレ」が必要です。
参考リンク:口呼吸を改善する!「あいうべ体操」
筋トレなので、すぐに効果が出るわけではありませんが、「インフルエンザ予防に効果がある」として、取り入れている小学校も多い体操です。
歯科医師としてもおススメです!
まとめ
- 口呼吸は、デメリットが多いので止めましょう
- 口呼吸のデメリットとして、風邪をひきやすくなる、虫歯・歯周病・着色・口臭などの原因となることがあります。
- 口呼吸は、出っ歯や矯正治療後の後戻りの原因となることがあります。
- 鼻呼吸トレーニングとして「あいうべ体操」がおススメです。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お子さんの歯医者さんトレーニングってどんなことをするの?
2020年1月11日
~おうちで出来る、TSD法(Tell言ってShow見せてDoやらせて 段階的に慣れさせる方法)~
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニック 院長の坪井です。
今日はお子さんの歯医者さんトレーニングについてのお話です。
歯医者さんが怖いお子さん、…多いですよね。
理想は、もちろん最初から虫歯を作らないことです。
虫歯予防に関しては、過去にもブログでご紹介しています。
まだ読まれていない方はぜひお読みください。
★基本にして王道の「お子さんの虫歯予防法」★
(参考リンク:こどもの口の中の虫歯菌はどこからくるの?)
(参考リンク:卒乳が遅くなると、こどもが虫歯になりやすいと聞きました。本当ですか?)
(参考リンク:虫歯になりやすいオヤツがあると聞きました。どんなものに注意すればいいですか?(食事管理 前編))
(参考リンク:こどもが歯磨きを嫌がってさせてくれません。どうすれば良いでしょうか?)
(参考リンク:フッ素は危険?3歳~6歳ぐらいの子どものフッ素についての話)
(参考リンク:フッ素入りの歯みがき粉や洗口剤などについて)
既に虫歯がある場合は、治療するしかありません。
また、定期検診に来られた時に「虫歯にならないように検診に来ているけど、泣いてしまってかわいそう…!」と思われることもあるかもしれません。
3歳が「歯科治療を理解できる」年齢
結論から言うと、治療のためのトレーニングは3歳以上が対象となります。
(治療のトレーニングに関してです。歯みがきトレーニングとは異なります。)
なぜなら、3歳未満のお子さんの場合、歯科治療についてあまり理解できません。
そのため、3歳未満のお子さんには、歯科医師は治療時間が1秒でも短くて済むように、短時間でコンパクトな治療を心がけます。
早熟な女の子の場合は2歳半くらいから歯科治療が理解できる場合もあります。しかし、一般的に、3歳未満のお子さんには、歯医者さんトレーニングは、あまり効果がないと言われています。
(参考リンク:低年齢児の大きな虫歯治療は、お子さま、保護者の方、歯科スタッフの全員にとって大変!!)
3歳を過ぎるとお子さんも歯科治療が理解できるようになってきます。
治療や検診よりも先にトレーニングをおすすめするケース
- 虫歯がない方、またはすぐに治療が必要でないくらいの虫歯の方
- 予防と検診で歯科受診を希望される方
- 歯みがきでも泣いてしまう方
歯医者さんトレーニングを行うのが良い理由
想像してみてください。
「歯医者さん怖い!嫌!」で終始「恐怖と怒り」の中で号泣するお子さん。
そして、
「歯医者さん怖い!…でも、頑張ったら褒めてもらえるし、ご褒美ももらえる。お父さんやお母さんも、とっても嬉しそうにしてくれる。練習では頑張れたから、治療でも…」と、怖い気持ちとがんばる気持ちで揺れ動きながら治療に入るお子さん。
どちらがお子さんにとって「楽」でしょうか?
後者の子どもは、泣いていても、周囲を冷静に観察しています。
そして、
「あれ?動かないなら、押えられないんだ」
「上手にできたら、みんなに褒められる」
と気づき、少しずつ治療を受けられるようになります。
やがて、「自分は歯医者さんを頑張れる子だ」と自信をつけていきます。
この際の保護者のかたの声掛けのコツなどもあります。
ご興味のある方は、以下のページをご覧ください。
(参考リンク:お子さんを泣かせず上手に歯科医院に通わせるコツとは?)
自宅での歯医者さんトレーニングの方法
小児歯科では系統的に、少しずつ歯科の道具や治療に慣れてもらう方法をよく用います。
代表的な方法に「TSD法」(Tell言って、Show見せて、Doやらせて慣れさせる方法)があります。
ご自宅でも出来る方法なので、ぜひ試してみてください。
TSDの例
- Tell 「●●ちゃん、お口の中を見せて。鏡さんを、お口の中に入れさせて。」
- Show「見てごらん、お道具はこれだよ。鏡だね。●●ちゃんのお顔が写ってるね?ほら、見てみて!」
- Do「鏡さん、自分で持ってごらん?そうそう、上手!じゃあ、自分でその鏡をお口に入れてごらん?ぱくーって、お口に入れてごらん?わぁ!上手だね!」
歯科治療と予防管理は、まずは口の中を見ることから始まります。
最初の歯医者さんトレーニングは、歯科用ミラーを口の中に入れ、上手に大きく口を開けられることです。
歯科用ミラーを口に入れて大きく口を開けるトレーニング
歯科用ミラーを、
- 「口の中に鏡を入れる」と『言って』
- 鏡を実際に『見せて』
- お子さんが『自分で鏡を口の中に入れるように』指示します。
POINT
3の段階で「お母さんにお口の中を見せて」と言ってはいけません。
あくまで主役はお子さん。
お子さんが、自分で自分の口に鏡を入れるように指示しましょう。
お子さんができたら、大げさなくらいに喜んで、褒めてあげてください。
本人が嬉しそうに、何度も鏡を口に入れて見せては「さぁ、褒めて!」という視線をくれるようになったら、次の段階に進みます。
3の段階で「●●ちゃん、本当にすごい~~!!ママにもちょっと持たせて!いい?ちょっとだけだから!」と、本人が持っている鏡に指を添え、すぐに離して「すごい!ママに持たせてくれた!ママ嬉しい!!」と褒めてあげます。
すると徐々に、お子さんは保護者の方が鏡で口の中を見ることを許してくれるようになっていきます。
基本的にはこの繰り返しです。
歯科用ミラーができるようになったら、歯科用ハンドピース(ドリルや回転ブラシを取り付ける道具)に挑戦します。
もちろん、ドリルはつけずに、本物の滅菌済みハンドピースを鏡の代わりに口に入れます。
保護者の方がハンドピースを口に入れて、口の中を覗き込んでも、お子さんが大きく口を開けて待っていられるようになれば、自宅でのトレーニングは完了です!
当院での取り組み
その1 保育士さんと一緒にトレーニング
アンパンマンベッドの部屋で保育士と一緒にトレーニング
つぼい歯科クリニックでのTSD法の取り組みは、保育士さんとアンパンマンベッドの部屋でTSD法をトレーニングを行います。(1枠20分。完全予約制)
お母さん、お父さんにも一緒にお部屋に入っていただき、ご自宅でもトレーニングできるように、保育士さんのやり方を見て学習していただきます。
歯医者さんトレーニングセットをレンタル(無料)
保育士さんとトレーニングした「歯医者さんトレーニングセット」をそのままレンタルして、ご自宅で練習していただきます。
「歯医者さんトレーニングセット」は、滅菌済み使い捨て歯科用ミラーと、本物の滅菌済み歯科用ハンドピース、トレーニング表のセットです。
次回受診時、または期日を設けて歯科用ハンドピースのみ返却していただきます。ハンドピースは動かない物を、トレーニング用に洗浄・滅菌して用います。
その2 ご自宅でトレーニング
次回のご予約日まで、トレーニングをしてトレーニング表にチェックをお願いします。
その3 自宅トレーニングが終わったら、再び医院でのトレーニング
自宅トレーニング用ハンドピースからは水は出ません。
また、ご自宅には水を吸うバキュームもありません。
「水」と「音」と「注射」が、お子さんが怖がる歯科医院の嫌われ3トップです。
注射だけは練習できませんが、「水」と「音」は練習できます。
「水」「音」のトレーニングも、基本的には上の①~③を、歯科医院の治療椅子で行う形になります。
具体的には、水を吸うバキュームを言って見せて触らせて、自分で自分の口に入れさせ、次に術者が入れるのを大きく口を開けてじっとできるか見ます。
バキュームの音を怖がる場合は、
手や頬をバキュームで吸って、「面白いねー!」としばらく遊んでから口に入れさせます。
本人の警戒心が強くて、手や頬を吸われるのを怖がる場合は、術者が同伴の保護者の手をバキュームで吸って、「怖くない、面白いよ!」と伝えます。
バキュームが問題なくクリアできたら、次はハンドピース(今度は水も出るし動くもの)に回転ブラシをつけて、水を出しながら歯のクリーニングを行います。
ここをクリアできたら、チェアに動かず横になり、口を開け、水が出てくる回転器具を口に入れ、同時に水をバキュームで吸われ、音が怖いのを我慢する、ということができたことになります。
ここまで泣かずに頑張れたら、治療もほとんど問題なく受けられるようになるお子さんも多いです。
お子さんが上手に治療を受けられるよう、必要な方はぜひ、試していただければと思います。
まとめ
- 歯科の治療トレーニングの対象年齢は3歳以上です。
- 緊急の治療が必要ない3歳以上のお子さんは、トレーニングから入ると、少しずつ抵抗なく治療を受けられるようになりやすいです。
- TSD法を使用して、お子さんと保護者の方がクリニックで学び、自宅でトレーニングして、段階的にできることを増やしていく方法もおすすめです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
院長ブログ一覧はこちら