キレイにしゃべる ~子どもの滑舌(かつぜつ)のためにできること~
2020年12月3日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
再び新型コロナの波が大きくなってきてしまいましたね。
資料を見ると、コロナについてもインフルエンザ同様、1日3回~4回歯磨きすると、感染予防になるようです。新しい生活様式の一つに歯磨きも入れていきましょう。
お子さんの定期健診の時に、滑舌などのしゃべる機能について質問を受けることがあります。今回は滑舌をテーマにお話していきます。
人間は赤ちゃんの時はみんな上手にしゃべれませんが、大きくなっていくにしたがって、上手にしゃべれるようになっていきます。
当然、その程度には個人差があります。中には滑舌トレーニングによって、発達を手助けしてあげた方がいい場合もあります。
1)上手にしゃべるってどういうこと?
上手にしゃべるということは、以下の定義ができます。
- 『あいうえお、あかさたな』とひとつひとつの音がはっきりしていて、一定のテンポを保ちながら発音ができる
- 言葉がつまる、噛んでしまうことがない
歯科で判断できるのは、特に発音についてです。
歯科では特に『さしすせそ、たちつてと』が気になります。
この2行の音については、舌がお口の中の正しいスタート場所(スポット、と言います)にあり、上手に舌を動かさないときれいに聞こえません。
口で呼吸する癖があったりすると、舌の筋肉が鍛えられず、この「スポット」に舌を当てることが難しくなってしまうことがあります。
すると、滑舌が悪くなってしまうのです。
こうした場合は、トレーニングによって舌の動きを改善してあげる必要があります。
2)舌の正しい動きとは?
舌の正しい動きはまずスタートポイント(スポット)に舌があることから始まります。
そもそも歯は、舌と唇に押されて、バランスが取れる位置に並びます。
舌の位置が正しい位置にないと歯は前に溢れだします。
骨格の影響もかなりありますが、前に歯が溢れだすと出っ歯さんや開咬(口を閉じても前歯が上下で当たらない咬み合わせ)になり、
舌がやや下よりに押し出すと受け口さんになります。
3)お口のトレーニングで鍛えたらどうなる?逆に、鍛えないとどうなるの?
牛タンなどを食べたことがある人なら良くわかると思いますが、舌は細かな、柔らかめの筋肉の集合体です。
舌のトレーニングとは、舌の筋トレです。
筋トレには筋力をつける(強い力を出せるようにする)ことと、機能を向上させる(動きを良くする)両面がありますが、舌、口周囲ではトレーニングすると機能がまず向上します。
また、機能が一定以上のレベルに達すると、舌や口の周りの筋力のバランスが取れて舌、口の周囲が「キュ!」とコンパクトにまとまります。
一方、筋力が足りない場合は、他の体のパーツでもそうですが、弱い一部分が大きく変形していきます。これが歯列不正の主たる原因です。
口輪筋(こうりんきん)という、口を閉じる筋肉の力が弱ければ、歯は前に飛び出て出っ歯さんとなってしまいます。
また、噛む筋肉が弱ければ、開咬(かいこう)といって、口を閉じても前歯が咬まない(奥歯しか咬めない状態)になってしまうのです。
参考リンク 歯並びが悪いのは遺伝ですか?その2 出っ歯編②お口ポカンについて
歯並びが悪いのは遺伝ですか?その2 出っ歯編②お口ポカンについて
4)口と口の周囲の筋トレをしようと決意しました!まずできることは?
簡単にできるトレーニングは3つです。
- 『イー、ウー』音を繰り替えすような体操
- 大きめなボタンを唇で挟み唇を鍛えるボタンプル
- 割りばしなどを噛んで大きく発音する割りばしトレーニングなど
人間は縄文時代には、1回の食事で4000回噛んでいました。
しかし現代では、1回の食事あたり噛む回数は600回程度と劇的に減少しています。
噛む回数の減少が、このような筋肉や機能の減退をひきおこし、様々なトラブルを起こしているのは間違いないです。
よく噛むこと、筋肉をトレーニングすることを意識していきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
- 上手にしゃべるということは、ひとつひとつの音がしっかり一定のテンポを保ちながら発音ができること、言葉がつまる、噛んでしまうことがない、と定義できます。歯科で判断できるのは、特に発音についてです。
- 舌の正しい動きはまずスタートポイントに舌があることから始まります。舌もしくは口周囲の筋がバランスよくないと、不正咬合が生じます。
- 現代になって食事の時の噛む回数が劇的に減少したことが、こういった不正咬合を引き起こしています。噛むことだけでなく、口周囲の筋肉をトレーニングすることも意識しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
プラーク(歯垢)とは?病原性とその対策方法について
2020年11月14日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
かなり秋も深くなってきました。今年は昨年の暖冬とは異なり、寒い日も多くなるようです。コロナ対策のおかげで、インフルエンザの流行が小さいといううわさもありますが、いずれにしてもいつもの冬とは違います。気持ちを切らさずやっていけるといいですね。
つぼい歯科クリニックでは、治療計画を立てたり、患者さんへのご説明のために、口腔内カメラをよく使っています。
実際、写真に残すといろいろなものが見えてきて、皆さん改めて口の状態に関心を持たれます。
最近患者さんから、健診の時にプラークの成り立ちや色などについて聞かれることがありました。
虫歯や歯周病は生活習慣病な面があるので、日々の生活が変われば、プラークの状態は変化していきます。今回はプラークとプラークの成り立ちについて説明しようと思います。
実は僕は大学院生時代に虫歯の原因菌やプラークを中心に研究しておりました。気をつけますが、今回は少しマニアックになるかも。。
1)口と大腸、細菌数が多いのはどっち?
大人の人で300~700種類、よく磨けている人の口の中には1000億~2000億個、あまり磨かない人、磨けていない人には4000億~6000億個、ほとんど磨かない人には1兆個もの細菌がいるとされています。一方、大腸には1gあたり100万個ほどの菌しか存在しておりません。
種類が異なるので、一概に比較はできませんが、お口の方が圧倒的に多いです。また、口腔内のほうが、砂糖の量などの食べ物の内容によって、プラークが増加しやすいなど環境の影響が表れやすいという特徴があります。
2)口の細菌がインフルエンザや新型コロナウイルスを重症化させる!?
プラークに含まれる菌を善玉菌と悪玉菌に分けるのは、人間の都合でしかないのですが、歯の表面にまず付着するのはいわゆる善玉菌です。その善玉菌を足掛かりにして、次々に菌が接着していきます。それらの菌は糖分を材料にして菌体外多糖という、のり状物質を産生し、プラークの内部がいわゆる酸欠状態になります。
酸欠状態になって最も活性化するのが、歯周病原因菌やう蝕原因菌です。そしてさらに増殖することにより、菌数と病原性が強くなっていきます。
病原性が強い菌の塊はそれだけで危険です。菌の塊が体内に入ると発熱等体調悪化の原因となる可能性が高まり、インフルエンザ等の罹患率も高めていると言われています。きちんとしたデータはなだないですが、コロナウイルスでも同様だと言われています。
3)プラーク(歯垢)を落とすには?
とにもかくにも人間にとって悪影響を及ぼすプラークの破壊しかありません。病原性が低いうちは破壊も簡単なので、歯磨き程度でどうにかなります。
しかし固く固着したものは丁寧にはがしていく必要があります。
これが皆さんのイメージする歯科医院でのクリーニングです。
僕は大学時代に、子供に多いオレンジ色のプラークの組成を調べたことがあります。
オレンジ色のプラークの下は脱灰(虫歯になりかけ)していることが多く、少し厄介です。
ただ、調べてみると、そこに存在している菌はあまり病原性の強くないS.sanguinisと言われる常在菌が多かったです。
虫歯になる人は、歯質にもよりますが、ここからさらにねっとりした感じの白いプラークが多くなります。
一方、黒い色素状のプラークがつく人もいます。
目立つのでよく質問を受けますが、砂糖との関連はないようで、どうも病原性もあまりない様です。
しかし、ある程度歯周病が心配な年齢(40歳以上くらい)になってくると、歯肉の中から黒い塊となった歯石が取れてきます。
タバコを吸っておられる場合、特に付着が多いです。
こちらは色合いや雰囲気も凶悪な感じですし、実際病原性の強い歯周病細菌が多くおります。
いずれにしても、敵(プラーク)を知り、また自分の歯の性質などの状態を知ることが個々人の対策を考える上で最も重要です。
歯科医院では、その方の口の状態に合わせたケアの方法、使う薬剤、歯周病の重症化予防処置の間隔などもお伝えしております。
お気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 口腔内には、大人の人で300~700種類、よく磨けている人の口の中でも1000億~2000億個、ほとんど磨かない人には1兆個もの細菌がいます。
- プラークはいわゆる善玉菌の歯への付着に始まり、時間および環境の悪化によって菌数や病原性が強くなっていきます。病原性が強い菌の塊はそれだけで危険です。
- プラークのリスクに応じた予防が重要で、その対策方法(薬剤、来院期間)も異なってきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
妊婦健診には、どうして歯科の健診もあるの?
2020年11月12日
歯周病と妊娠について
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
新型コロナも5月ごろと比較すると落ち着いてきた印象ですね。
最近になってやっと妊婦健診に来院される方が、コロナ禍が来る前と同じくらいになりました。
当院も、いっそう気を引き締めて安全な歯科医療の提供を続けていきたいと思います!
さて、今日は妊婦健診と妊婦さん、そして歯周病の話題です。
妊婦健診で、歯科の検査項目があるのは何故?
歯周病はいろいろと全身的に影響を及ぼすということが明らかとなってきています。
参考リンク:
歯科と糖尿病、脳血管障害、要介護度は関係が深い!?あれこれ関わっているお口の病気
特に今回は妊娠と歯周病との関係について考えてみようと思います。
妊娠すると、歯肉炎といって歯ぐきが腫れやすくなります。
これを妊娠性歯肉炎と言います。
妊娠が歯周病を悪化させるワケ
歯肉炎の状態が進む(悪化する)と歯周病と呼ばれる状態へと移行していきます。
これは原因として妊娠によってホルモンバランスが変化することによって起こるようです。
女性ホルモンであるエストロゲン(聞いたことあるのでは?)やプロゲステロンなどの影響によります。
エストロゲンは歯周病細菌の増殖を引き起こすホルモンです。
そしてプロゲステロンは炎症作用と関係のあるホルモンであります。
これらのホルモンは妊娠時に増えていきます。
妊娠後期には、月経時の10~30倍にもなったりします。
ですので、妊娠後期にかけて歯肉炎が悪化することがあるようです。
そうはいっても歯肉炎の直接の原因は歯周病菌であり、お口の中に歯周病菌が少ない状態(きれいに歯磨きが出来ている状態)ですと、歯肉炎も起こらないか、軽度で済みます。
お母さんの歯周病と、お腹の赤ちゃんの関係
お母さんが歯周病になっていると、低体重児の出産、早産のリスクが高まります。
特に早産については、歯周病のお母さんはそうでないお母さんの7.5倍もリスクが高くなってしまうと言われています。7.5倍というと、ちょっとギョッとする数字ですよね。
歯周病というのは、細菌が歯の周りに存在し、細菌が血中に供給されている状態であると言えます。
さらには、血流に乗り胎盤をも通過し胎児に感染するのではないかと考えられているようです。
歯周病により炎症が広がると、炎症な関連してプロスタグランジンという物質が作られます。
プロスタグランジンという物質は、通常、出産が近くなると分泌され、それがきっかけとなり子宮の収縮が起こり陣痛、出産へとつながっていきます。
娠中のリスクファクターと言えば、喫煙、アルコールなどがあげられますが、歯周病の危険度はそれらをはるかに凌ぎます。
こうした理由から、赤ちゃんとお母さんの健康のために妊婦健診に歯科健診が含まれているんですね。
妊婦健診を活用しましょう!
妊娠に対して、歯周病が大きなリスクであることは明らかであると思います。
もちろん、まずは歯周病にならないことが重要です。
歯の周りの汚れ、歯石などをキレイに取り除くことが基本となります。
とはいえ、歯科医師や歯科衛生士でさえ、セルフケアだけで歯石がつくことを完全に防ぐことはできません。
セルフケアと、定期的なプロフェッショナルケアの両方をうまく活用して防ぐのがベストだと思います。
妊婦さんに対して、妊婦健診の案内もあるかと思います。
歯科をしっかりと活用して、不必要なリスクを減らしましょう!
まとめ
いかがでしたか?
- 妊娠すると「妊娠性歯周炎」になりやすい
- 妊娠性歯周炎はホルモンバランスの変化によって起きる
- 妊婦健診を活用しましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
院内研修会
2020年10月30日
こんにちは!つぼい歯科クリニック スタッフの、みゆさんです。
10月に、NDLより先生をお招きして、SRPミドルセミナーに参加しました。
今回は、少し難易度の高い、分岐部を中心に、SRPの理論と実践を先生に教えていただきました。
教えていただいたことを実践して、より、患者さまに安心して、喜んでいただけるSRPを目指していきたいです。
上下の歯が触れる時間が1日20分以上あると、○○になってしまう!?
2020年10月14日
あなたはTCHという言葉を聞いたことはありますか?
「初めて聞いた」という方もいれば、ここ数年、歯科関係のブログやコラムでもよく見かける言葉なので、「あ!聞いたことある」「知ってる!」という方もいるかもしれません。
では、なぜTCHがよく言われるようになったのか?
TCHとはそもそもどんな症状で、どんな良くないことを将来引き起こしていくのか。
今回はTCHをテーマにお話していきます。
TCH(歯列接触癖)だとなぜ良くないのか?
1日20分以上、上下の歯が触れ合っている習慣を持っている人は、歯がしみたり、痛みが出たり、顎関節症のような症状を引き起こしてしまうことがあります。
TCH(歯列接触癖)とは?
TCHとは、Tooth Contacting Habitの略です。
日本語でいうと、歯列接触癖といいます。
口の癖として、上下の歯と歯が当たっているというものです。
上下の歯が触れている時間は1日20分までが良い
食事をしている時、緊張している時、力を込めている時などには上下の歯は当たっていますね。
何かに集中している時なんかも当たっているかもしれません。
その他の時間は上下の歯は当たっていない状態が正常です
リラックスしている状態では上下の歯は、2~3mm離れた状態になっています。
これを安静空隙(あんせいくうげき)と言います。
『1日のうちで上下の歯が接触している時間のトータルでも20分以下にしないといけない』と、患者さんにお伝えすると、
「え!そうなんですか?歯と歯が触れているのが普通の状態だと思っていました」と言われる方も多いです。
TCHによって、どんなことが起こってしまうのか
「1日20分以上歯を触れ合わせてはいけないということはわかった。
でも、TCHによってどんな悪いことが起こるだろう?」と思われる方もいるかもしれません。
具体的には、
- 歯がしみる
- 歯が痛む
- 詰め物が壊れる
- 顎が痛む
- 歯周病が悪化する
- 歯が揺れてくる
- 歯並びが悪くなる
などの症状を引き起こすことがあります。
TCHは、噛む力の強さは関係ない
噛む力は弱くても、時間が長ければTCHに該当します。
弱い力でも長時間当たっているということによって影響が起きてしまうんです。
歯ぎしりは歯に良くないというのは聞いたことがあるかと思いますし、イメージもしやすいですね。
ギリギリと大きな音がなる歯ぎしりは、いかにも歯や顎に悪そうです。
しかし、噛む力が弱くても、長時間やれば悪い影響が出てしまう。
実は歯ぎしりと同じような影響が起こるんです。
歯がすり減ってしまったり、それに伴って起こる今までに治療した歯の詰め物や被せなどに起こる不具合が起きたり、歯が欠けたり割れたり、知覚過敏を起こしてしまったり。
他にも、歯並びに影響がでてしまったり、骨隆起という顎骨にボコボコができてしまったり。
イラスト:骨隆起
歯だけでなく、頭痛、肩こりといった首回りの症状を引き起こしてしまうこともあるようですね。
私も顎関節症なのでTCHがあるかもしれない、思っています。
TCHが増えてきた原因
一つはスマートフォンやゲームなどで、うつむいている時間が増えたことが原因かもしれないと言っている人もいます。
また、歯ぎしりや食いしばりにも共通しますが、ストレスが原因とも言われています。
リモートワークなどでパソコンの時間が増えた人など、ご自分がTCHでないか一度チェックしてみることも、ご提案します。
TCHの治し方
では、どうするかというと、当たらないようにするしかないんですよね。
癖なので、治すのはなかなか大変です。
爪噛みなどと同じで、「これをやればすぐ治ります!」という方法は、残念ながら現在のところありません。
対策として、歯を離すことを意識したり、作業の時の姿勢に意識したりするのも良いかと思います。
改善方については、こちらのブログページもありますので、ぜひ参考にしてください。
参考リンク:https://tsuboidental.com/2020/03/28/incho-69/#TCH-3
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
定期健診の意義と間隔について
2020年10月13日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
当院の場合、多くの患者さんに定期健診でご来院いただいているのですが、『痛くなってから歯医者に行く、僕の小さいころとは違うなあ』と言われる場合があります。今回は定期健診の意義と間隔についてまとめてみました。
学校検診と歯科医院、結果が違った!これって見逃し!?
検診と健診はそもそも対象が異なります。
検診は、学校、職場など、大きな集団の健康を維持することを目的にしている
どんな集団でも状態がいい人と悪い人が存在します。検診は大きな集団では特に悪い人の検出して、その方に「医療機関へ受診された方が良いですよ」とご案内することを目的にしているのです。
学校検診や職場の検診では、歯医者さんは勉強用のスタンドライトや、懐中電灯、ペンライト、日光などの明かりで口の中を診ます。当然、小さい虫歯は見えないこともあります。しかし、集団の中で重症の方や、早く歯科医院へ受診された方が良い方を検出することが目的ですから、問題とされません。
健診は個々の患者さんの健康増進を目的にしている
診療室での健診は、無影灯という特別に明るいライトで口の中を照らし、また唾液や歯垢で見えない部分があれば器具を用いて歯が良く見える状態にして、チェックしますし、必要があればレントゲン検査や、透照診といって光を透かして歯を検査したり、歯の揺れぐあいなどを検査したりします。学校検診や職場の検診とは、まったく違うものなのです。
健診申し込み期間の目安が「3か月」と言われることが多いワケ
1960~1970年代のスウェーデンでの研究がベースになっています。
1960年より前のスウェーデンは世界でも有数の砂糖消費国でした。
午後のおやつの習慣はイギリスがイメージ強いですが、北欧各国にもその習慣があり、虫歯も非常に多かったそうです。
そこで、スウェーデンでは1960年代に虫歯とそのリスク因子について大々的な調査が行われ、「虫歯を減らす政策」を実行したのでした。
その時に健診の期間についての議論がなされ、主に歯周病の観点で「健診は3か月間隔」とされました。
現在では、スウェーデンは予防歯科先進国として、80歳の平均の歯の数は21本(スウェーデンは2015年の報告データ。ちなみに日本は、2017年のデータで、80歳で13本が平均)という、非常に素晴らしい結果を出しています。
日本では、このスウェーデンの成果を参考に、3か月間隔がおススメされることが多いのです。ちなみに小児に関しては、その後の研究で、おおむねそれに準ずる期間が勧められています。
歯科健診が必要なワケ
子供の虫歯は進行が速い
虫歯には、慢性のものと、急性のものがあります。
慢性う蝕はその名の通り、数年単位で進行するもので、壮年期に多くみられます。
一方、急性う蝕は数か月~半年単位で進むもので、乳歯や弱若永久歯など、小児期に多くみられます。したがって、子供の虫歯は進行がとても早いのです。
う蝕を確定診断するのはレントゲン検査が必要ですが、数か月で治療の必要が出てくるようなものは間違いなく急性う蝕です。
急性う蝕は
- 歯が生えたてで弱い時期である
- 歯の質に問題がある
- 菌の活性状態(当然食生活が大きく影響します)に問題がある
などの条件があれば発生しやすいです。
詰め物も長持ちする
つぼい歯科クリニックでは、虫歯の治療の場合、虫歯を残さず取りきれるように、ただし削りすぎないように、う蝕検知液を用いています。
虫歯の部分だけが染まる染色液に、虫歯を染めながら治療するんですね。
ただ、虫歯を取り切った場合でも、詰め物の維持できる期間は、その後の口腔衛生状態によります。
歯と詰め物が完全に同じ硬さ、完全に同じ弾性を持つ…ということは無く、違う素材をくっつけている以上、継ぎ目が傷みやすいという性質があります。
継ぎ目がわずかに傷んだあと、いつも磨き残しが少ない口と、いつも磨き残しが多い口では、詰め物の状態が変わってしまうんです。
定期健診を行った場合、岡山大学の研究結果では乳歯の場合も、大幅に詰め物を良い状態に保てた期間が延びたという研究結果が出ています。
歯科医院専用フッ素を定期的に塗った方が良い
フッ素は1900年代にアメリカで有効性が確認された薬物です。薬物といっても、じゃがいもや海藻、牛肉などにも含まれる成分ですが、人工的に薬物として一定以上の濃度を精製している以上、当然いい面と悪い面があるんです。
良い面…虫歯予防効果が高い!
悪い面…一度に大量に摂取すると、中毒になることもある。
フッ素については、こちらに詳しく書いていますので、よろしければ読んでくださいね。
参考 ドクターズブログ:
フッ素は危険?3歳~6歳ぐらいの子どものフッ素についての話
中毒と聞いてびっくりされた方もいると思いますが、市販のフッ素ジェルは濃度が低く作ってありますので、めったな量では中毒にはなりません。
ただ、歯科医院用のフッ素ジェルの場合、歯科医師や歯科衛生士が「安全性の高い量」を患者さんに使うことが出来るため、ずっと高濃度になっています。
「フッ素は家庭用ジェルだけじゃダメなの?」
ダメということは無いのですが、歯科医院用と家庭用のフッ素ジェルを併用した方が、効果が高いので、併用をおススメしています。
実は、同じフッ素ジェルでも、家庭用と歯科医院用では作用機序が異なります。
高濃度の歯科医院用フッ素は「弱い虫歯予防効果が、長時間続く」
歯科医院用の高濃度フッ素は、濃度が高いためにいきなり歯に入っていかずに、歯のあちこちに「フッ化カルシウム」という形で沈着します。
このフッ化カルシウムが、口の中が酸性に傾いた時(虫歯になりやすい環境の時)に再度溶けて、低濃度のフッ素イオンが作られ、そのフッ素イオンが歯を修復します。
低濃度の家庭用フッ素は「強い虫歯予防効果が、ジェルを口にいれたその時間だけ発揮される」
家庭用の低濃度フッ素は、口の中でフッ素イオンに分離して歯を直接修復しますが、歯の表面に留まらないため、効果は一瞬で終わります。
予防効果は高い方が、もちろん良いですが、家庭用フッ素を1日に何度も塗りますか?
さすがに摂取しすぎになってしまいますし、現実的でもありません。
歯科医院用の「長く効く」フッ素に1日歯を守って貰って、就寝前の歯磨き後に家庭用フッ素で「その日の歯のダメージをリセット」するのが効果的だと思います。
定期的に歯磨きの悪い癖を見直す
お子さんの場合、ある程度の年齢になると、自分でしっかり磨けるように歯科医院でも歯磨き指導をしていきます。
実をいうと、この観点では定期健診の間隔は全く足りない気がします。
お子さんの習い事の多くは1回1時間以上でだいたい毎週ありますよね?
その意味では年4回ぐらいでは軽い刺激ぐらいにしかなっていません。
キチンとした歯磨きを習得するなら毎月、いや毎週でも指導する必要がありますが…そのペースでの歯科医院通いは現実的ではありませんよね。
ですから保護者の方には、ご家庭での復習や仕上げ磨きをぜひ、頑張っていただけたらと思います。
まとめ
- 学校などで状態の悪い人を見出す検診と個人の健康を診査する健診は、目的が違います。個人の健康維持には定期的な健診が重要です。
- 1960年頃の研究結果から、3か月に1回の定期健診が勧められています。小児では急性う蝕が多い事、またフッ素の使用の観点から、そのくらいの時間での検診が最も妥当だと思われます。
- 歯科医院でも指導しますが、定期健診のみの間隔では歯磨きテクニックの習得はなかなか大変です。家庭でも復習、仕上げ磨きをお願い致します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
9月のお誕生日会
2020年9月30日
こんにちは!スタッフのみやぴーです。
(ブログを書いていたのですが、手違いでアップロードができていませんでした)
当院では、9月の誕生日の人が多いです。
今回は、りょうさんとめぐさんと、キバちゃんとみほさんの4人でした!
ケーキはラポルトルージュさんで。
しほさんが「大人買い楽しい~♪」と言いながら買ってきてくれました。
今回もラポルトルージュさんには、ケーキを個包装+付箋をしていただきまして、本当にありがとうございました。
ケーキも秋のケーキになっていて、とってもおいしかったです!
4人とも、お誕生日おめでとうございます♪
「歯ぎしり・食いしばり」のいろいろ
2020年9月24日
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
今日は、ブラキシズムのお話です。
ブラキシズムって聞いたことはありますか?
ブラキシズムとは、睡眠時や覚醒時を問わずに歯を動的、または静的にすり合せたり、噛み締めたりする癖のことを指します。
簡単に言えば、「歯ぎしり・食いしばり」のことですね。
原因としては、ストレスなどの複合的な要因とされています。
ブラキシズムは無意識に行われる癖であり、動作が行われる際には筋肉の異常緊張と、それに伴って、歯および歯の周りの組織への炎症性破壊、更には顎の関節に異常な負荷がかかってしまいます。
ブラキシズムの種類
ブラキシズムは、その動作形態により3つの型に分類されています。
グラインディング
上下の歯を臼の如くすり合わせる運動(臼磨運動)を行う癖を指します。
ギシギシと音を立て、歯に異常な力が働くので、歯質の崩壊を招きやすいようです。
睡眠時に多く、一般に呼ばれる「歯ぎしり」はグラインディングを指す事が多いとのこと。
クレンチング
上下の歯を静的に強く噛み合わせる動作のことです。
起きている時に無意識にやってしまっていることが多く、自覚症状はもちろん、他覚症状もほとんど無いために発見が遅れがちです。
タッピング
上下の歯を動的にカチカチと噛み合わせる動作のことです。
頻度としては夜間の出現頻度は8~16%、昼間も含めると8~34%と報告されています。
ブラキシズム(歯ぎしり・くいしばり)の治療法
ブラキシズムの治療法としては咬合調整、マウスピース療法、ストレスマネージメント療法などがあります。
マウスピースを使う
第一選択は、取り外しのできるマウスピース療法(スプリント療法)でしょうか。
咬合調整(かみ合わせを削ったり、盛ったりして調節する治療)は、歯を削ってしまったら戻りませんから、まずはマウスピースから始めることが多いです。
もっとも、削る必要が無く、盛る一択の咬合調整が必要な場合は、そちらから始めることもあります。この2つの治療法は、あくまで対症療法です。
マウスピースは短期的にブラキシズム抑制に効果があるようです。
ですが、すべての患者さんに有効ということでもないようです。しかし、歯を守るという点では効果が期待できる治療です。
歯より先にマウスピースが削れてくれますから、歯が保護されるんです。
あとは顎の関節への負担軽減にも役立ちますね。
ストレスマネージメント療法を行う
ストレスマネージメント療法については…「ストレス」が原因で起こることが多いブラキシズムですから、その元になるストレスを軽減させることができたら、もちろん一番良いとは思います。
が、そんなに簡単にストレスを減らせるなら、苦労は無いんですよね。
原因療法としては、あまり効果的な治療法は見受けられないようです。
ブラキシズムとは異なるのですが、TCHという考え方が近年注目されています。
TCHとは?
TCHというのは上下歯列接触癖の英語の頭文字をとったもので、
一日のうち上下の歯の接触している総時間が増えてしまう習癖を指します。
参考リンク
歯医者で「歯ぎしりか食いしばりがありそうですね」と言われたけれど、
思い当たる節がない…それは、TCH(歯列接触癖)かも!?
いろいろな影響を生じてしまう状態であり、顎関節症などへの原因となったりするようです。
これについては、また後日詳しくお伝えしてみようと思います。
まとめ
いかがでしたか?
- ブラキシズム(歯ぎしり・くいしばり)には、グライディング、クレンチング、タッピングの3種類がある。
- 治療法としては、マウスピースやストレスマネージメント療法などがある。
- はぎしりまでしていなくても、TCHといって上下の歯が接触する時間が長いだけでも、はぎしりと同じような、歯がしみたり痛みが出たり、顎関節症のような症状が出ることもある。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯医者さんで子どもさんの治療がはじまるまでに ~確認すること、約束すること~
2020年9月14日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。朝晩は少し涼しくなってきましたね。
最近つぼい歯科の小児歯科部門では、虫歯で来院されるお子さんが多くなってきました。
そこで今回は、歯科医院で、小さなお子さんの歯科治療の際に、特に気をつけているポイントについてお話ししようと思います。
言うまでもないことですが、歯科医院で歯を削る時…とくに幼いお子さんの歯を削らねばならないとき、悲しい気持ちになるものです。
やはり、予防が一番大事です。
お子さんの虫歯予防で一番大事なことは…よろしければ、過去の記事をお読みいただけたら嬉しいです。
参考リンク:乳児の虫歯予防のポイントは?歯磨きは何歳からがんばればいいの?
乳児の虫歯予防のポイントは?歯磨きは何歳からがんばればいいの?
要は、「食生活管理とフッ素と歯磨きを頑張りましょうね」というお話です。
優先順位は食生活管理が最優先です。
予防がテーマの記事は今までも沢山書いてきたので、
今回は治療をすると決まってから、問診票などを含め、歯科医師が見ている確認事項、保護者の方に注意して頂きたい事についてまとめます。
3歳未満のお子さんの場合、緊急性が無い場合は、成長をまってから治療したい。
2~3歳と4歳は治療への理解度・乳歯の治療予後は大きくちがう
発達において、2~3歳と4歳は大きく違います。
3歳はまだいやいや期ですが、4歳になるとある程度自制心がつきます。
これが歯科治療を我慢できることにつながります。
自分の気持ちも言える言語能力も付くため、まだまだ失敗することも多いですが、4歳以降は上手に歯科受診できる可能性があります。
また、歯根の完成度の問題(2~3歳の頃は、まだ乳歯が完成していなくて、神経の治療となってしまうような大きな虫歯の場合は予後が良くないことがあるのです)もあるので、歯科治療は少なくとも3歳、可能であれば4歳以降に行いたいと歯科医師は考えています。
2)アレルギーと持病の有無
お子さんに限りませんが、治療の前に確認すべきことに、アレルギーと持病があります。
大人と違い、アレルギー症状は非常に強く出る場合が多く、また持病も心臓疾患など重症なものを見かける場合が多いです。
また、大人は気分が悪くなったりアレルギー症状が出たときに、自分の身に何が起きているのか訴えることができます。
しかし、子ども、特に治療が怖くてパニックを起こして号泣しているお子さん場合、アレルギーによる気分不良かどうか、まず分かりません。
歯科医院におけるお子さんの死亡事故の場合、
「泣いて、泣きつかれて寝たのかな?」
と思ったら(アレルギー症状もしくは異物による窒息で)意識レベルが下がっていた、というケースが目立ちます。
したがって、これら2点は、子どもの場合は、生命の問題に直結する可能性があるので、とても重要です。
ちなみに4歳を超えると、パニックで号泣するケースは少なくなっていきます。泣くのですが「嫌だよ、やめさせてよ!」と保護者に訴えるための号泣が多くなります。
治療の必要性をお子さんご本人が理解し、協力してくれるようになれば、もし何かあった時でも「あれ?治療中だけど、いつもと様子が違う!?」と歯科医師や保護者の方が気づくこともできるのです。
3)苦手な部分をはっきりさせる
大人は、苦手なこと、止めてほしいことを、言葉で伝えることができます。
歯科治療に納得していないお子さんの場合は、何か特定の、特に嫌なことがあって、それを止めて欲しい場合でも「いや~~~やめて~~~」という表現になってしまうことも、少なくありません。
しかし、実は苦手な部分が、下記のどれかに偏っていることも多いのです。
触られるのが苦手な子、音が苦手な子、光が苦手な子
歯科治療においては、道具を多く使います。
体に多く触れたりするもの、振動が多い機械や、音がうるさい機械、術野を明るく照らすための光、どれもあります。
結局どれも使うのですが、その使用頻度は歯科医師がコントロールできます。
また、どれが苦手なのかは、保護者の方との会話の中で、ヒントを見つけられる場合が多くあります。
4)理解と約束
恐怖の多くは理解不足、知識不足からきます。
何がされるか分からないから、怖いのです。
例えば、
お化け屋敷も、明るくて良く見えて、どのタイミングで何が来るか分かっていたら、そんなに怖くないですよね?
それと同じです。
つぼい歯科では、最初の1回はトレーニングに充てています。
TSD法(テル・ショウ・ドゥー法 Tell Show Do=言って 見せて やらせてみる)という手法です。
系統的に経験させることで「理解させ」ることで、怖い気持ちにさせにくくする狙いがあります。
参考リンク:お子さんの歯医者さんトレーニングってどんなことをするの?
お子さんの歯医者さんトレーニングってどんなことをするの?
一度体験するとできることも多くありますし、できたことを保護者、歯科医師側(術者)の両方から褒められて、達成感を得て、次回もがんばる自信をつけさせるのです。
この達成感と自信が、次回につながります。
また、「子どもに嘘をつかない」声掛けを意識することも大切です。
『痛くないよ』などの声掛けは、少しでも「痛い」とお子さんが感じてしまった場合、術者との信頼関係が失われます。
麻酔などはどうしても最初は少し痛いので、100%痛くしないのは無理です。
つぼい歯科では、あらかじめその点を説明し、同意を得てから治療しています。歯科治療への理解と、これらの約束事が、次へつながります。
何卒ご理解をよろしくお願いいたします。
5)一回限りの治療で終わりではない。予防こそが大事。
虫歯になりやすいハイリスクの時期は、
- 離乳食の終了する3歳ごろ
- 第一大臼歯の生える6歳ごろ
- 永久歯に生え変わった後
の3回くらいです。
3-4歳で咬み合わせの面の虫歯を治したお子さんは、生活習慣が変わらなければ、5-6歳で、歯と歯の間の様子を見ていた部分が虫歯になるケースも多いです。
また、その時期に虫歯を進行させずにすんだとしても、中~高校性になって、部活でスポーツドリンクを飲んだりし始めて、急に虫歯を作ってしまうこともあります。
以上により、予防のためには、定期的なチェックとフッ素塗布が欠かせません。
ぜひ、むし歯ゼロで大人になるために、早期治療と、その後の管理(メンテナンス)を心掛けていただけると嬉しいです!
まとめ
いかがでしたか?
- 2-3歳と4歳は、発達状態や歯根の完成度などの大事な因子が大きく異なります。可能であれば4歳以降の歯科治療の方が良いです。
- 子どもの場合、アレルギーの有無と持病の状態は、生命の問題に直結する場合があり、大変重要です。
- お子さんによって苦手な領域は異なります。その因子を少し減らせば何とか治療を達成できる場合があります。
- 子どもの歯科治療は術者との信頼関係が重要です。その構築のために、歯科への理解と約束事があり、説明させていただいております。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
- 虫歯のピークは一つではありません。生活が変わらなかった場合、様子を見ていた部分が虫歯になることがあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
8月のお誕生日会☆
2020年8月31日
こんにちは!つぼい歯科クリニック スタッフのしほさんです。
8月25日に、河口ドクターと前田チーフのお誕生日会を行いました!
今回もケーキはラポルトルージュさんで。
毎回ケーキを一つずつ箱に詰めてくださって、本当にありがとうございます。
今回は「外からでもなんのケーキがわかるようにしておきましょうか?」と言ってくださいまして、箱に詰めるだけでも大変なのに、一つずつケーキの名前を付箋でつけてくださいました。
スタッフみんなで「私はこれがいいな~」と、ケーキ選びで盛り上がりました!
もちろんケーキはとってもおいしかったです。
河口先生、前田チーフ、お誕生日おめでとうございます。