乳歯の虫歯を予防するために気を付けたい3つのこと
2017年5月16日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
口の中の細菌数はどれくらいかご存知ですか?
お口の中の細菌数は一兆個!?
大人のお口では300-400種類、虫歯の少ない人で2000億個、
口腔ケアのできてない人で、1兆個もの細菌がいるといわれています。
では、お子さんのお口の細菌数はどうでしょうか?
お子さんは個人差、年代差が大きく、細菌数は単純に比べられません。
しかし、お子さんの口の中の細菌の種類は大人と比べて、歯周病の原因となる菌の比率が少ないのですが、虫歯が多い子は大量のむし歯菌がいるといわれています。
私は広島大学で、日々の診療を行いながら口腔細菌の研究も行っておりました。
その時、診療で診るお子さま口の細菌数と虫歯の多さに相関性を感じていました。
むし歯は一種類の菌だけで作られるのではない
虫歯の原因菌はミュータンス連鎖球菌(みゅーたんすれんさきゅうきん)と言われていますが、実はその菌だけでは虫歯を作る力はそんなに強くありません。
けれども、近年ミュータンス菌以外の菌にも感染することで、より大きな虫歯を作ることがわかってきました。
- ミュータンス菌+ソブライナス菌(ソブリヌス菌)⇒歯と歯の間の虫歯が多くなる
- ミュータンス菌+ソブライナス菌+乳酸桿菌⇒真っ黒や茶色の、いわゆる大きな虫歯になる
菌もさまざまな種類の菌と協力して、虫歯を作る強力な菌の塊(=歯垢・プラーク)になっているのですね。
むし歯を治して、お口の菌を減らしてもむし歯菌がいなくなるわけではない
虫歯を治して、菌の量をへらしても、一度定着した菌の種類をかえることは難しく、どうしてもある一定の割合では残るといわれています。
つまり虫歯の原因菌の構成は残っているので、そこで少し気を緩めて、たくさん甘いものを食べてしかも磨かないと、再びむし歯菌が増殖してしまい、大きな虫歯を作っちゃうのです。
お口の細菌は家族にうつる
また、お口の細菌は家族にうつっていくといわれています。
歯の萌出と共に、口腔の細菌も定着しだすのですが、その由来は6割がお母さん、2-3割がお父さん等の家族と言われています。
ご家族に虫歯が無ければ、うつってくる細菌も虫歯になりにくい菌の構成になります。
ご家族にたくさんの虫歯があれば、すぐに虫歯になりやすいお口になってしまうのです!
参考 院長ブログ こどもの口の中の虫歯菌はどこからくるの?
むし歯になったら、その後の予防はホント大変
虫歯がゼロの方は、その後のむし歯予防は楽チンで今の生活を維持するだけでいいのですが、
虫歯が多い方は、むし歯ができた原因を取り除く、色々なむし歯予防が必要になります。
たとえば、虫歯になりやすい食生活の改善やハミガキ方法、使用する道具を工夫するなど色々とがんばらなければいけません。
それくらいがんばらないと細菌の構成は変わらないのです!
虫歯になったら、その後の予防がより難しく、大変になるのですね。
まとめ
いかがでしたか?
虫歯予防するために保護者の方が気をつけたい3つのこと
・ まだ虫歯が小さく、菌が少ないうちに、しっかり治療してきめ細かい予防をしましょう
・ お口の細菌は、人によって構成が異なるので、むし歯菌への予防対策は家族全員でしましょう
・ 生え始めの弱いむし歯や永久歯は、できる限りむし歯にしないようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
乳歯は生え変わるのに、なぜ治療が必要なの?
2017年4月28日
皆さんこんにちは。岩国のつぼい歯科に新たに加わりました、歯科医師の吉村剛です。
小児歯科の専門医の資格を持っていますので、時々お子様の治療などで登場します。
よろしくお願いいたします。
最近皆さんから、お子様の歯の治療や歯並びについて多くの質問が寄せられております。
お子様も成長するにつれ、お口の中もどんどん変化していきます。
歯科でもお子様の成長に応じて、その時に最適な治療の考え方や内容が変わっていくことが多くあります。
これからその時期に応じた、歯や治療について解説していこうと考えておりますので、よろしくお願いします。
そもそも乳歯ってなんでしょう?
歯は、生え変わるという特徴を持つ唯一の組織です。
しかし、すべての動物がそうなのでしょうか?
いえ、大きく3つに分けられます
①サメや魚
サメや魚は、たくさん歯があり、狩りなどで一部が簡単に抜けてしまいますが、またすぐに生え変わります。
なおその際には、歯だけでなく、歯並びごと生え変わります。
これらを多換歯性(たかんしせい)といいます。
魚類は体も永遠に大きくなっていくので、顎の大きさにあわせて歯が増えていきます。
うろこみたいなイメージですが、そもそも歯はうろこから進化した組織なのです。
②ネズミやリス
ネズミやリスなどの前歯は一生に一回しか生えませんが、永遠に延びていきます。
これを1生歯性(いっせいしせい)といいます。
前歯は硬いものを噛んで、少しずつ削れていき、長さを保っています。
爪みたいなイメージです。
③ヒトなどを含む多くの哺乳類(ほにゅうるい)
人間を含む多くの哺乳類は二生歯性(にせいしせい)です。
新生児の小さな顎(歯槽)には、どう折りたたんでも、乳歯のサイズの歯しか折りたたんでいれておけません。
また、成長するといっても子供の顎の大きさには限界があり、歯胚(歯の芽)のサイズは歯よりもずいぶん小さいのですが、それでも1回生え変わる個数分(28本~32本)のしか入れておけません。
そのため生え変わりも1回です。
つまり、そもそも乳歯のサイズと歯の生えかわりは、顎のサイズ調整のため決まっているのですね。
進化にともなって歯は大きく、複雑な形になりましたが、人類になってからは、体のサイズ、脳のサイズのために調整を受けることとなり、先天的に親知らずなどが無い人もいます。
動物においては、寿命=歯の存在であることが多く、ライオンなどは歯がなくなると死んでしまいます。
人間は食事に工夫が出来るため、死にこそしませんが、お子さんの脳の発育や老化の防止には歯から来る刺激が欠かせないため、歯がなくなると認知症等の問題が生じやすいといわれています。
人間が糖分を多く摂取し、虫歯になるようになったのはここ2000年ぐらいで、最近のことです。
動物としては、人間も歯を失うことを想定して進化していないのですね。
ただし、色々工夫して失った歯の代替手段を考えたのも、やはり人間だけです。
結局のところ乳歯でも永久歯でもオリジナルの自分の歯が一番なので、予防が一番なのですが、なくなってしまった場合はその修復(治療)を精いっぱいやっていきます。お口の健康維持を歯医者さんとやっていきましょう!よろしくお願いいたします。
まとめ
いかがでしたか?
- 歯は生え変わるが、動物によって生え変わる回数がちがう
- 人間を含む多くの哺乳類は1回生え変わる(乳歯から永久歯)
- そもそも乳歯のサイズや生え変わりの回数は、顎のサイズによってきまった
- 人間も虫歯になるようになったのはここ2000年ぐらいのことで、乳歯も永久歯も失うことは想定されていない
- だから乳歯も永久歯も早くに失うと健康にさまざまな影響を生ずることがある
最後までお読みいただきありがとうございました。