顎関節症って?どれぐらいで受診したらいいの?
2020年1月1日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。みなさんは顎関節症という言葉を聞いたことがありますか?
顎関節症の症状
顎関節症は、耳の下あたりの顎の関節に痛みがあったり、口が開きにくかったり、音が鳴る、口を開けるときにまっすぐ口が開かない、などの症状が出ることがあります。
僕自身も顎関節症患者のひとりです。年に1~2度、数日間ですが顎の関節が痛くなります。
僕の場合は口を大きく開けたり、かたいもの、コシのあるようなものを食べたりすると、痛みが出ることが多いです。
フランスパンみたいなものは、つらいですね…。
口を開け閉めしたときに顎の音が鳴る症状に関して言えば、常時その状態です。
顎関節症といってもいろいろなパターンがあります。
①あごを開け閉めするとカクカク、ポコポコと軽い音が鳴るケース
僕の場合は、左の顎がカクカクなります。調子にのって無理をすると痛くなってきます。
痛いときも、痛くない時もカクカクといった音は鳴ります。
音に関して言えば、治すことはほぼ不可能であり、ずっと付き合っていく症状と言えるでしょう。
痛みがないなら、特に治療する必要はありませんが、そもそも顎関節症になってしまった原因となる習慣があるようなら、その習慣を止めるよう心掛けることは必要でしょう。
顎関節症を起こす習慣
顎関節症の原因として有名なものには、頬杖や食いしばり、ストレス、かみ合わせや寝る体勢(横寝・うつ伏せ寝)などがあります。
関節雑音についてもう少し詳しく言うと、顎の関節には関節円板って言う線維性の組織が骨と骨の間にあるんです。
顎を開け閉めするとき骨の動きに伴って関節円板も動くのですが、この動きが悪いと関節からずれてしまうことがあります。この、顎の骨から関節円板がずれたり戻ったりするときに音が鳴るんです。
②顎を開け閉めすると、ジャリジャリと音が鳴るケース
ずれたままになっていると関節の音がジャリジャリ、もしくはプチプチという音に変わってくることがあります。
捻髪音 (ねんぱつおん )って言うのですが、関節円板がずれたまま戻らなくなって、顎関節の骨と骨が擦れる音に変わるんです。①のケースが重症化した状態です。
またまた自分の話になりますが、たまに夜中に寝ていて関節円板がずれて戻らなくなる時もあったりします。
①から②へ重症化するのは、ある日を境にいきなり…というより、悪化したり良くなったりを繰り返す境界の時期があるんです。
僕は歯科医師なので、重症化した時に何をすれば良いか分かりますが…それでも、スパッと治癒!とならないのが、顎関節症のやっかいなところです。
関節炎版がずれたまま戻らない状態をクローズドロックと言います。
クローズドロックの状態で治療せずに放置すると、骨の変形が起きるなど、より重症化しやすいと言われていますので、心当たりのある方は歯科医院で相談してくださいね。
重症化しないように予防することが大事
顎関節症の症状が出やすい方には、夜中に食いしばったりして症状を悪化させてしまうケースが良くみられます。
朝起きて顎の調子が悪い、顎がダルい・痛いようでしたら、マウスピース(スプリント)を作ってもいいのかなと思います。
顎関節用マウスピース治療
マウスピース(スプリント)は顎の関節をストレスのかかりにくい状態にする装置です。
慣れるのにも時間がかかることもあるのですが、顎関節症に対しての根本的な治療法が無いので、こうした「顎関節を安静にさせる道具」を用いて症状を緩和させます。
軽症のうちに重症化予防することも大事だと思います。
そして、横寝・うつぶせ寝、頬杖、片方だけの歯で噛むなどの悪い癖に心当たりがある場合は、早めに癖を止めるように心がけましょう。
受診のタイミング
顎の痛みがだんだん強くなる場合は、一度専門家にご相談した方がよい場合もあります。
朝起きてすぐ痛みを感じる場合はマウスピースで改善することもあります。
口を開けられないなど、すでに重症な場合は受診した方がよいかと思います。
まとめ
- 顎の音が鳴る症状は、基本的には治せません。
- 顎関節症を起こす、悪化させる癖は早めに止めるよう心がけましょう。
- 顎関節症の症状がある方は、マウスピースを使用した方が良いことがあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
普通だけれども普通に見えない・・醜いアヒルの子の時期? ~子どもの前歯の隙間~
2019年12月12日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
寒いですね。すっかり冬になりました。
最近保護者の方からのご相談で多い、お子さんの状態で正常だけれどもそうは見えにくく、不安を思われているケースがいくつかありましたので、お話していきたいと思います。
1)前歯がすきっ歯に見えます。
永久歯、特に上の前歯は顎の狭いところに折り重なって控えているので、乳歯と比べ、やや八の字で生えてきます。
そのため、前歯部ではすきっ歯な感じで生えてきます。
その後、2番目の前歯(側切歯)、犬歯が生える時に、前歯を押し込む方向に力が働くので、気が付けばきれいな歯並びになっていきます。
この時期は焦らず、歯が生えるのを待ってみましょう。
小児歯科ではugly dukling stage『みにくいアヒルの子の時期』と言います。

画像引用:医歯薬出版 デンタルハイジーン別冊コミュニケーションから歯科処置までを”つかむ”
いずれは白鳥になるっていう意味ですが、考えた先生は洒落がきいてますね。
ちなみに、アヒル、ガチョウにはすごい歯(歯ではないが髭の一部らしいです。構造学的には。)があります。
なかなか衝撃的ですので、興味がある人は動物園とかで見てみてください。

画像引用:buzzfeed
2)下の前歯がかなり奥(乳歯の後ろ)から生えてきてます
下の前歯は一番最初に揺れはじめて、最初に永久歯に生え変わりますが、ここだけ他の歯とは異なる特徴があります。
ここもやはり後継永久歯の控えるスペースがないため、永久歯は乳歯のやや後ろに位置しており、生えてくるのは乳歯のやや後ろである場合が多くあります。
これは『エスカレーター式交換』といいます。
この時期も焦らず待っておくと、生えてきた歯が舌に押されて前にいき、唇と舌の筋肉の圧が折り合うところに落ち着きます(図参照)。

両方とも、乳歯よりも1.5倍程度も大きな永久歯が、出生前後の小さな頭蓋骨の時期に形作られるために体が作った巧妙な仕組みです。
最初の乳歯の生え変わり時期に起こることなので、心配になりますが、状態をよく見ながら経過を観察してください。
うまくいかない場合もまれにあり、その場合は抜歯や矯正等必要になる場合があります。
まとめ
いかがでしたか?
- 生え変わりの時期(特に初期)には、正常であっても歯並びが心配に見える時期があります。
- 上の前歯ではすきっ歯に見える時期があり、下の前歯では乳歯の後ろから生えて歯並びが悪く見えるのが典型的です。
- 経過観察してるとよくなることが多いですが、本当に歯列不正の場合もあり、抜歯や矯正が必要になる場合があります。
「うちの子は大丈夫かな?」とご心配の方は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
したはうえに(舌は上に)!
2019年11月21日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
朝晩はもはや寒い感じになり、秋も深まってきておりますね。季節の変わり目は風邪などを引きやすく、今年はインフルエンザが早めに流行しているらしいので、注意しましょう。
最近気になった患者さんの相談に、お口がポカンとよく空いている、前歯が噛めていないというものがありました。実際にお口をみると前歯が噛めていない状態で、舌がチロチロと見え、いわゆる開咬(かいこう)といわれるものでした。最近よく相談を受ける不正咬合の一つでもありますので、今回はその原因と対策についてお話していきます。
1)開咬(かいこう)の原因は?

開咬の原因は大きく2つに分けられ、指、爪、ものしゃぶりなどの『モノ』を常にお口に入れることによって発生するものと、口呼吸、舌小帯(舌の下の筋)の付着が原因となって、舌が低位になることにより生ずる『舌癖(ぜつへき)』でおきるものがあります。その両方が並行して起きている場合もよくあります。
2)指しゃぶり、ものしゃぶりの場合
指しゃぶり、ものしゃぶりは不安や緊張を和らげる心理作用があると言われ、1歳半から2歳ぐらいまではある程度しょうがないものです。ただ、3歳以上ではその後の歯並びに影響するといわれておりますので、そのあたりまでには中止できるようにしましょう。
指しゃぶり、ものしゃぶりの対策とは?
対策としては、ある程度周囲の話が分かるようになったら話して聞かし、眠い時に指が入るのであれば、手をつないで眠るとか、手にテーピングしたり、ミトンをはめたりして、物理的に入れにくくするなどの地道な対策が有効です。ただ、心理的な面の影響も強いので、その子の性格や発達状態によっては、スムーズに中止するのが難しい場合もあります。おしゃぶりは指よりも柔らかいので、影響はやや少なめにはなりますが、お勧めはできない習慣です。
3)舌癖の場合
上下の歯の間に舌を押し付けるような習慣を舌癖と言います。本来の正しい舌の位置は上顎の前歯の後ろから、口蓋(口の天井)に舌全体を軽く押し付けているのが正しい姿勢です(したはうえに(舌は上に)!)。その位置にないと、舌の姿勢が悪いということになります。その結果、歯並びに影響したり、発音(サ行、タ行)の発音がおかしくなる場合があります(例:サクラがさいた→タクラガタイタに聞こえる)。
舌癖の原因とは?
原因としては、指しゃぶりなどの残存、卒乳の遅れ、舌小帯が強いこと、口呼吸などがあります。指しゃぶりは(2)で説明した通りです。母乳の摂取は舌を使って搾り取る、幼児嚥下の典型ですので、2歳以降では悪影響の面が強くなります。
口呼吸は、舌小帯が強いことと表裏の関係です。呼吸に用いる筋肉、つまりは舌を含めた口周囲の筋肉が発達していないことによって生じます。筋肉ですので、トレーニング次第によっては発達する可能性もありますが(したはうえに(舌は上に)!)、一度も経験していないところに、舌を意識的に持っていくのは難しいと思います。
ある程度、矯正器具を用いることも必要ですし、呼吸筋のトレーニングのために、お口にテープなどを軽く張って、鼻呼吸を意識させることも効果的です。
また、舌や上唇の小帯が強そうな場合は、付着部分を少し切除し、筋トレを頑張ることが結果的には最も効果的です。
いずれにしても、お口の状態はいろいろと診査してみないとわかりません。そのうえで、メニューや矯正装置を選択しますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 開咬(かいこう)の原因は指しゃぶりなどの『モノ』を常にお口に入れることによって発生するものと、『舌癖(ぜつへき)』でおきるものがある。また、両方併発している場合も多い。
- 指しゃぶりなどの場合は、3歳ぐらいまでに中止できたら、影響は少なめであると言われている。
- 舌癖の場合は、原因を追究したうえで、その改善と舌の姿勢の改善(お口の筋トレ)の併用が重要。
具体的にお子さまの状態などが気になる、という保護者の方は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯を失ってしまった場合の治療について ~その2~ブリッジ
2019年11月7日
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
前回は歯を失ってしまった場合の治療法について「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」という治療法があることをご説明しました。
特に「入れ歯」について詳しくお話しましたので、ご興味がある方は、ぜひ読んでみてくださいね。
参考 歯を失ってしまった場合の治療法について その1
今回はブリッジによる治療について、詳しくお伝えしていこうと思います。
ブリッジについて
ブリッジというのは、「被せ物」の一種で、失ってしまった歯の前後の歯に被せ物をして、失ってしまった歯の部分を補うダミーの歯と、前後の被せ物をつなげた形をしています。
前後の歯とダミーの歯で、橋のような形をしていますので、ブリッジと呼ばれます。

入れ歯が取り外しができるのに対して、ブリッジは歯に接着するので取り外しはできません。
<ブリッジの良い点>
- 歯にしっかりと固定するので、揺れにくく、噛み心地が天然の歯に近い。
- 出し入れしなくて済むので、入れ歯を出し入れするところを人に見られる心配がない(入れ歯を出し入れする姿を人に見られたくないと言う方、多いですよね…)。
- 入れ歯のように、留め具や金属の棒など、邪魔になるパーツが口の中に無い。
- 歯があったときと同じ配置でダミーの歯が配置されるので、パーツが舌に触って話しにくいということがない。
(ただし、ダミーの歯の場所によっては息が若干もれる、ダミーの歯と歯茎のスキマが気になる、などのケースもあります)
- お手入れ方法が歯磨き、歯間ブラシと、歯があった時と同じ方法のまま。
- 金属のバネが見えるなど「あ、入れ歯だ」を見てわかるパーツが無い。見た目は入れ歯よりも良い。
<ブリッジの良くない点>
- 前後の歯を大きく削る。
すでに前後の歯が神経を取った歯であったり、すでに被せ物をしてある歯であれば、それほどのデメリットではないかもしれませんが、
むし歯になったことのない歯であっても削らないとならないので、この場合はかなりのデメリットであると言えます。
- 失った歯の位置や本数によって、ブリッジが選べないことがある。
どの治療もそうなのですが、力のバランスもしっかり考えないと、土台の歯への負担が大きくなってしまいます。
ダミーの歯の分まで、前後の歯で噛む力を負担するわけなので、無理な設計をすると歯が折れてしまうためです。
また、前後の歯を土台にするので、前後に歯がないと出来ないことも多いです。
前後に歯があっても失った歯の本数によっては土台の負担が大きすぎる構成となるため、出来ないこともあります。
無理な設計は保険治療では保険が通らないようになっていますし、自由診療でも(歯が折れてしまうリスクが高いと最初から分かっているので)お断りすることになります。
また、保険で「この設計ならブリッジにしても良いよ」と決まっている設計でも、噛む力が強い方や、歯ぎしり・食いしばりがある方、土台となる前後の歯が「神経を取ってしまった後、太い金属の土台(メタルコア)が入っている」ケースなどでは、土台の歯が折れてしまうこともあります。
参考:神経を取った歯が割れやすいって本当?
リスクの度合いは「土台となる歯の状態」「設計」「歯ぎしり・食いしばりなどの癖」などによりますので、詳しくは担当医にご質問くださいね。
・お手入れの難易度が部分入れ歯より難しい。
お手入れ方法は歯磨き・歯間ブラシと今までと同じなのですが、取り外して洗浄できる部分入れ歯より、難易度は高いです。特にダミーの歯と、土台の歯の被せ物がつながっている部分はお手入れが足りないと虫歯になりやすいので要注意です。
歯科医院で定期的に、虫歯ができていないか、ちゃんとお手入れできているかチェックを受けた方が良いでしょう。
色々デメリットもありますが、部分入れ歯と比べると噛むということに関しては、ブリッジのほうが有利かなぁと個人的には思っています。
まとめ
・個人的には、しゃべりやすさ、見た目、噛み心地の面では、入れ歯よりブリッジがおすすめです。
・ブリッジは前後の歯を大きく削ること、お手入れが不足すると前後の歯が虫歯になるなどしやすい短所もあります。
・ブリッジがそもそもできない症例も少なくありません。
インプラントによる治療については、また今度の機会にさせて頂ければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯を失ってしまった場合の治療について
2019年10月20日
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
今日は、残念ながらながら歯を抜かなければならなくなった、失ってしまった場合の治療についてのお話をしていこうと思います。
歯を抜けたままにしておくと、反対側の歯が伸びたり、周りの歯が倒れてきたり、その結果、かみ合わせが変わることもあり、かみ合わせが変わることで顎の痛みなどの症状を起こしてしまったり、噛む能力も低下したり、色々と健康にとって良くないです。
よって、抜けた部分に何かは入れる必要があります。
基本的には、3パターンの治療法が挙げられると思います。
①入れ歯
まずは入れ歯。義歯ですね。
まだ自分の歯が残っている人に入れる部分入れ歯と、完全に自分の歯がない人用の総入れ歯があります。
部分入れ歯
部分入れ歯では留め金などで自分の歯に入れ歯をひっかけて、入れ歯を動きにくくしたり沈みにくくします。
総入れ歯
総入れ歯では、口の中の粘膜で入れ歯を支えます。
②ブリッジ
次に、残った歯を用いて、無くなった歯の部分を支える治療です。
ダミーの歯の両サイドに、土台になる歯がくる形が「橋」に似ていますね。
ブリッジとは、両サイドの歯を削って土台にし、歯がない部分に入れる偽物の歯と土台の歯に被せる被せ物を連結させることで、偽物の歯を固定します 。
③インプラント
もう一つがインプラント治療。
人工の土台を骨に埋め込んで差し歯を入れるといったものですね。
①②③それぞれ利点、欠点があります。
入れ歯について
今回は入れ歯、義歯による治療について、少しくわしくお話をしてみようと思います。
<良い点>
- 歯を失ったほとんどのケースに治療が可能
入れ歯による治療はあらゆるケースに対応、失った歯の本数、部位など様々なケースに対応可能な治療法と言えると思います。 - 健康な歯を削らなくて良い
ブリッジによる治療と比べると、残った歯を削る量は少ないという良い点もあります。
取り外しができるので入れ歯に関して言えば手入れは容易と言えるかもしれません。
<良くない点>
- 留め具をかけた自分の歯に負担がかかり、抜ける原因になりうる
入れ歯は、留め金のようなものを残った歯にかけて入れ歯の動きを抑制するので、その歯への負担がかかります。
力のバランスなどには注意して作らないといけないのですが、歯の残った部位や、ご本人の希望により、そうも言っていられないケースもあるのも事実ですね…。
歯を失った部分の骨などは減っていく傾向にあります。
入れ歯を入れると年間ほんの少しずつ骨が下がります。
口の中の粘膜も徐々に変化していくので、定期的な調整をしなければ必ず合わなくなってきます。
入れ歯自体もすり減っていくので消耗品と考えてもらう方が正しいかもしれません。
入れ歯を使う場合、慣れが必要であることも、デメリットかもしれません。
入れ歯の患者さんが診療中よく言われる言葉にこんなものがあります。
『「違和感がある」「合わない」から今は入れ歯を使っていない』
『食事の時だけ入れ歯を入れている』
上記のことを仰る患者さんは、足に力が入りにくく、転倒・寝たきりのリスクも高くなります。
他の治療も慣れは必要ではありますが、入れ歯は特に慣れてもらうこと、きちんと使用してもらうことが重要になります。
入れ歯に口を合わせることはできませんから、入れ歯を使いながら、入れ歯を口に合わせていく必要があります。
よって、新しく作った入れ歯を徐々に調整していって、問題なく使えるようにしていくという作業が必要です。
歯科医院で新しい入れ歯を渡された時、「入れ歯治療が終わった」と思われる患者さんが多いのですが、新しい入れ歯を渡された時は「入れ歯トレーニングが始まった」時なのです。
咬む能力や咬み心地という点では、ブリッジやインプラント治療に軍配が上がるかもしれません。
他の治療もメリット、デメリットはやはりありますので、またお伝えしていこうと思います。
まとめ
いかがでしたか?
- 歯は抜けたままにしておくと健康に良くない
- 抜けた部分には、入れ歯、ブリッジ、インプラントの選択肢があり、それぞれメリットデメリットがある
- 義歯は作って終わりではなく、義歯に慣れることが大事
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
一番虫歯になりやすい糖はどれ?
2019年10月10日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
まだまだ暑い日もありますが、秋らしくなってきましたね。僕にとっては食欲の秋でもあります。
秋は果物等にも旬の物が多く、美味しい時期ですね。
つぼい歯科ではお子様のお口の状態や食生活に合わせて、生活習慣に関する話をよくさせていただいています。
その結果、「じゃあ結局なにがおススメですか?」という話になります。
虫歯の原因は圧倒的に砂糖(ショ糖)が含まれるお菓子なのですが、糖にもいろいろな種類がありますので、一度調べてみることにしました。
僕は歯科に関する知識はありますが、食べ物や栄養に関する知識は専門外ですので、やや偏っているかもしれません。
その道の専門の方はご容赦くださいませ。
糖類にはなにがあるの?

糖は甘み成分を意味する漠然とした概念で、砂糖(ショ糖)などは糖類とよばれています。
単糖とよばれる環構造が最小単位で、ブドウ糖と果糖があります。
ブドウ糖と果糖がくっついたものがショ糖です。
それが3~10程度つながったものがオリゴ糖、大量に繋がったものが多糖と呼ばれます(図参照)。
糖と虫歯菌の関係は?
やっぱりダントツでショ糖が虫歯を作る
人間にとっても大事な糖ですが、虫歯菌にとっても重要な材料となります。
ミュータンス菌はブドウ糖から歯垢(歯の汚れ)の元である不溶性グルカンを作り、果糖からは歯を溶かす酸を作るのです。
両方の機能を助けてしまうショ糖は圧倒的に虫歯のリスクを高めてしまいます。
従って、ショ糖が分解されたブドウ糖と果糖は、ショ糖よりやや虫歯リスクが低いのですが(実験によっては20~30%減)、虫歯の原因になることが確認されています。
オリゴ糖になると相当リスクは下がります。
多糖であるデンプンぐらいまでなると、虫歯のリスクはほぼ気にしないでいいレベルになるようです。
一方、冠構造が少し異なる糖アルコールは菌が分解できないため、虫歯のリスクは完全に無いといえます。
食べ物に含まれる糖
ブドウ糖や果糖はその名の通り果物に多く含まれます。
果物は甘いのですが、特に果物に多く含まれる果糖は相当水に溶けやすく、また果物は繊維が多いので、虫歯にはなりにくいと言われています。
ただ、ドライフルーツなど加工したものは歯にねばりつき、ショ糖の濃度も高まるため、虫歯リスクは高いとの報告があります。
はちみつは果糖やブドウ糖が多く含まれるので、ショ糖を使うよりもリスクは相当低くなるようですが、粘り気もあり、多少リスクはあるようです。
また加工されたはちみつはショ糖が添加されている場合が多く、リスクは当然高まります。
糖アルコールは完全に虫歯リスクはなくなりますが、キシリトールは食べすぎるとお腹を下しやすく、それ以外のものはいわゆる人工甘味料なので、いろいろなデメリットも報告されています。
食品表示のラベルをみよう!
結局のところ経済性や安全性の面で、ショ糖(砂糖)を使わなくなることはありません。
ただ、ショ糖の量と虫歯は完全に相関関係が示されています。
食品表示は含まれる材料の多い順に書くことが決まっています。
おやつなどを選ぶ際には、最初に「砂糖」と書いてないものを選ぶだけでも、摂取量は大きく減少します。
食欲の秋です。美味しいものを上手に食べて、虫歯を予防していきましょう!
まとめ
いかがでしたか?
- 糖類にはブドウ糖、果糖などの単糖、ショ糖に代表される二糖類、冠構造の数によってオリゴ糖、多糖と分けられる。また冠構造が少し異なる糖アルコールも含まれる。
- 虫歯の原因菌は、ブドウ糖からネバネバの歯の汚れの元となるグルカンを作り、果糖から酸を作る。その両方をもつショ糖(砂糖)は最も虫歯リスクが高い。
- 自然界の食べ物には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖が様々な割合で含まれるが、加工して甘みを強くしなければ、リスクはさほど高くないと言われている。
- ショ糖は、その摂取量と虫歯が完全に比例する。食品表示のラベルなどを確認しながら摂取量を減らすと良い。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
妊婦さんと歯について。妊娠中は口の中の環境が変わるので要注意!
2019年9月20日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
当院には、小さなお子さまをお預かりできるベテラン保育士が在籍しておりますので、若いお母さん方がたくさんいらっしゃいます。
また、岩国市の行っている妊婦健診も月に3~4人ペースで来院されています。
今回は授乳期のお母さんや、妊婦さんのお口の中の変化について、お話したいと思います。
妊娠による口の変化
妊娠すると様々な変化が起こっていきます。
それによって、口の中でもいろいろな変化が起こっていきます。
つわりによる変化
つわりにより、ニオイに敏感になったり、特定の食事が苦手になったり、あるいは甘いものや酸っぱいものと好むようになったりすることがあります。
奥歯の方に歯ブラシを入れると吐き気をもよおす場合は、お口の清掃状態が悪化することもあるようです。
ホルモンバランスによる変化
妊娠中はホルモンバランスに変化が起こります。
女性ホルモンを餌に増殖するタイプの歯周病菌が活性化するので、妊娠期間~授乳中まで、歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。
これを妊娠性歯周炎といいます。
なので、妊婦健診に歯科の項目があるんですね。
唾液の量も減ることがあるみたいで、これも虫歯のリスクをあげてしまう原因となります。
妊婦の歯科治療の時期はいつまで?
妊娠初期~4ヶ月
この時期はお腹の中の赤ちゃんの発育にとって大切な時期になります。
市販薬を含め、お薬の服用は極力控えたいところです。
ただし、お熱があったり、あまりにも強い痛みがある時は、ママさんが我慢するストレスが赤ちゃんに与えしまうストレスもあります。
限界まで我慢する前に医療機関にご相談ください。
また、つわりがある場合もあり、あまり積極的な歯科治療は行いにくい時期です。
歯科検診やクリーニングなどは可能ですので、妊婦健診はぜひ受けましょう。
ご自身のお口の中の問題点や、妊娠中のこれからの変化について、知っておくようにしましょう。
関連記事 院長ブログ 歯科の妊婦健診や、おとなの歯科健診って何のためにあるの?
院長ブログ 妊婦さんが歯周病や虫歯を予防した方がいい3つの理由
妊娠中期
安定期に入ると状況が変わってきます。
ほぼ全ての歯科治療が可能となります。
お薬に関してはやはり注意は必要ですが、比較的安心して使えるお薬もあるため大きな問題とはなりません。
なので、虫歯の治療などはこの時期に行うのが良いとされています。
なので、この時期までには虫歯治療にメドをつけておきたいですね。
妊娠後期
9ヶ月以降となると、治療が難しくなってくることもあります。
麻酔の種類にもよるのですが子宮の収縮を誘発したりするのもあるようです(当院は血管収縮剤不添加の、子宮の収縮を誘発しないタイプの麻酔を使用しております)。
体調的にもお腹にハリが出たり、仰向けになったときに、お腹の中の赤ちゃんの重さによって、血管が押し付けられ血圧に変化が起こってしまうこともあります。
また、痛み止めの服用も、妊娠後期から末期は赤ちゃんにとって、あまり良くないと言われています。
以上により、1回の治療が長時間に渡る処置は難しいかなと思います。
出産後
授乳が開始され、まだまだ女性ホルモンの分泌量も多く、歯ぐきが腫れやすい時期が続きます。
ただ、出産直後は、なかなか来院が難しい期間となるのではないかと思います。
出産後数か月は、お母さんは皆さん、お忙しいですからね。
最後に、お子さんの虫歯を減らすために家族全員で歯科健診を
お子さんが虫歯にならないようにはお父さん、お母さんのお口の中の環境が整っていることが重要です。
虫歯は虫歯菌が引き起こす感染症です。お子さんの虫歯菌への感染経路は母親が50%、父親が30%と言われています。
お父さんお母さんのお口に虫歯がないことが、お子さんの虫歯菌感染リスクをさげることに有効だと、研究により分かっています。
妊婦健診だけでなく、お父さんもご一緒に歯科医院でチェックを受けられるのが、お子さんのためにもより良いと言えます。
関連記事 院長ブログ こどもの虫歯はどこから来るの?
まとめ
- 妊娠初期に妊婦健診を受けるのがベストです。
- 妊婦検診で、治療が必要な部位はないか、もし治療が必要な場合は、安定期に治療を終えられるように計画するとスムーズです。
- ママさんが妊娠中に、ご家族全員の健診と口の中の細菌数を減らしておいて、赤ちゃんにとって良い環境づくりをすることをおすすめします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
子どもの歯ぐきから出血が!?原因は何があるの?
2019年9月10日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
先日、とあるイベントに子供と参加した際に、イベントの一環として、獣医さんの最近の気になる疾患について聞く機会がありました。
それが偶然にも犬の歯周病に関するものでした。
犬も高齢化や食事内容の変化から、歯肉炎から歯周病に移行することが多いそうです。
犬の歯周病は処置も大変で、大きな問題となる場合がありるそうです。
「犬の歯周病の予防にも、ブラッシングと動物病院での本格的な掃除が重要である」という話でした。
考えたら、あり得る話ですが、知らなかったなあ。個人的には興味深かったです。
関連記事 院長ブログ 犬の口臭い原因!ペットも歯周病になるの?ケアの方法は?
最近受けたご相談に、「歯茎からの出血が心配です。」というのがありました。
人間でも壮年期を過ぎた場合の歯ぐきからの出血の原因のほとんどが歯周病です。
お子さんの場合は、歯茎からの出血はいくつかのパターンがありますので、解説していこうと思います。
子どもの歯ぐきからの出血の原因
歯肉炎

最も多いのが、歯磨きの不足による歯肉炎です。
歯と歯の間の歯肉は本来三角なのですが、炎症があるとその先端が丸く発赤し、簡単に出血します。
適切な歯磨きにより改善します。
また、プラーク(歯垢)を取り除く時の軽度の出血は気にしなくて大丈夫です。
適切な歯みがきがわからない時は、歯科医院に指導を受けにいらしてくださいね。
ヘルペス性歯肉炎
その次によくあるのがヘルペス性の歯肉炎です。
口腔内症状の出る2-3日前に、38-39度ぐらいのやや高熱が出て、かなり歯肉の発赤があり、お口全体が真っ赤という雰囲気になります。
また、口唇、舌に小水疱ができることもあります。
歯科ではなく、小児科での治療となります。
手足口病はこの夏にも大流行しましたが、原因となるウイルスは異なり、典型的な症状は口腔内や手足の水疱です。
けれども、歯肉の発赤や口内炎を伴う事も多く、ヘルペスと似たような症状になることがあります。
つまりは夏風邪の口腔内症状を伴うイメージですね。
萌出性(ほうしゅつせい)歯肉炎
歯磨きをしていても生ずるものに、歯の萌出に伴う萌出性歯肉炎があります。
これは萌出してきた歯と歯肉の間が不潔となり、炎症が起きることによっておこります。
乳臼歯の萌出時、大臼歯の萌出時におきます。
永久歯萌出時の方が痛みを伴う事が多く、体質によっては結構腫れて、膿が出る場合もあります。
その場合には少し外科的に切り取ってしまいます。
上記以外
本当にめったにありませんが、血液・造血器疾患つまりは白血病などの重篤な疾患の症状で歯肉の出血がみられることがあります。
夏風邪の歯肉の炎症がいつまでも治らない感じです。
歯肉の出血は、ほとんどが歯みがきが十分にできていない、仕上げ磨きが足りない、などの不潔性のものです。
しかし、それ以外にも子どもの全身状態を示すサインでもあります。
想定外の病気の症状であることもありますので、よく注意してください。
夏風邪の場合は、他のお子さまへの感染リスクが大きいので、小児科から受診していただけると嬉しいです。
まとめ
いかがでしたか?
- お子さんの歯肉からの出血の多くは不潔性の歯肉炎です。
- 歯磨きの指導と実践により、ほとんどの場合改善します。
- ヘルペス性の歯肉炎では、かなり広範囲の歯肉炎となる場合があります。
- 萌出性の歯肉炎は体質によって程度が異なりますが、一か月ぐらい頑張って歯磨きすれば収まります。
- それ以外にも想定外の大きな病気の症状である場合があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
母乳やミルクと虫歯の関係。寝る前や夜中にミルクをあげても良いのはいつまで?
2019年8月20日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
今日は、母乳と虫歯の関係についてお話したいと思います。
卒乳が遅いと虫歯が多いことは疫学的には明らかであるとされています。
関連記事:院長ブログ 卒乳が遅くなると、こどもが虫歯になりやすいと聞きました。本当ですか?
母乳で虫歯になるの?
ちなみに、母乳単独では虫歯にならないことが分かっています。
虫歯というのは、口の中の細菌が「糖を分解して酸を作る」ことで、歯が溶ける現象です。
母乳には、乳糖という糖の一種が含まれていて、口の中の細菌の作用によって、歯を溶かす材料となります。
しかし、母乳に含まれている乳糖のみの場合は、濃度が低いために虫歯にはならないのです。
離乳食と母乳、両方を口にするようになると、虫歯のリスクが上がってしまいます。
よって、離乳食が始まったら食生活管理が大事になります。
子どもが1歳半を超えているけど、まだ卒乳できていない…
「1歳半を超えているけど、まだ卒乳できていない!どうしよう…。」という方もいらっしゃるかもしれません。
できるだけ早く卒乳に向かってチャレンジすることが、虫歯リスクを小さくすることは言うまでもありませんが、「食生活管理」のポイントを覚えていくことも重要です。
関連記事:ドクターズブログ 2歳くらいの子どもの歯と食事の関係
食生活管理のポイント 夜間授乳
子どもが夜泣きするので、夜間授乳がやめられない
母乳と虫歯の関係性としては、不規則な授乳や夜間授乳が不規則な食生活に結び付きやすく、それにともなって虫歯を作ってしまうのではと言われています。
特に、夜間授乳は非常に虫歯リスクが高いことで知られています。
関連記事 院長ブログ 1歳半頃に卒乳と言われますが、子供が泣くので心が折れそうです。どうしたらいいですか?
「でも、夜泣きがすごくて、そうも言っていられないんです」というお母さん。
わかります。現実問題として、すごく大変ですよね。
でも、いつかは卒乳しなければいけませんし、卒乳が遅れると虫歯になりやすくなります。
低年齢での虫歯治療は、泣いて暴れるのを抑えての治療になってしまいがちです。
また、泣いて暴れるお子さんの治療を行う場合、安全に治療するために介助スタッフが大勢必要となるため、大学病院をはじめ、多くの歯科医院で順番待ちがおきています。
当院も含め、3か月待ちというケースも少なくないのが現状です。
…それではかえって可哀そうですよね?
しかも4歳以下で虫歯になってしまったら、その後永久歯に全て生え変わっても、生涯虫歯リスクは(虫歯を低年齢で作らなかった人と比べて)高いままになってしまうと言われています。
「今日、いますぐ卒乳が難しい」と思われても、1歳を越えたら卒乳に向けて準備を始めていただくことをおススメします。
卒乳がまだだけど、離乳食が始まっている…どうしたらいいの?
では、卒乳が出来ていないけれど離乳食が始まったという時期は、どうすればよいでしょうか?
結論から言うと、歯を強くする、虫歯ができにくい環境をつくっていくことが必要です。
具体的には、フッ素の応用、虫歯の直接的原因となる砂糖の摂り方に注意するのが良いのではないかと思います。
母乳と虫歯の関係以外に、乳児期に注意しないといけないこと
離乳期は虫歯以外にも、舌の使い方が変わっていくことで、飲み込み方を学習していくとても重要な時期です。
おっぱいを飲むことと、固形物を食べることでは、舌の使い方が異なるからです。
赤ちゃんがおっぱいを飲む時、舌の動きとしては前後方向の動きが主体となり、舌の位置も口の中で低い位置にあります。
この飲み込み方を「幼児型嚥下」と言います。
赤ちゃんが離乳食を食べるようになると、舌を上顎に押し付けて飲み込む「成人型嚥下」を始めます。
しかし、乳児期~離乳期にかけて「正しい呼吸と嚥下」を獲得できず、「幼児型嚥下」がいつまでも残ってしまうことがあります。
幼児型嚥下が長く続くと、出っ歯になってしまいやすくなると言われています。
舌の使い方は、歯並びにも影響を及ぼしてしまうこともあるんです。
関連記事 院長ブログ 授乳や卒乳の方法や時期で、子どもの口呼吸を引き起こしてしまう!?
舌の使い方や、指しゃぶり、ぽかんとあいた口、…こうした「お口の悪い癖」は、一度身に付けてしまうとトレーニングしないとなかなか取り除けない、歯並びの難敵です。
卒乳しても、飲み込む時に舌を前に突き出してゴックンしていると気づかれたら、年齢に合わせた、「呼吸と嚥下を正常にする」トレーニングがあります。不安な方やご興味のある方は歯科医院でご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 母乳だけ飲んでいる時は虫歯になりにくいが、離乳食が始まったら要注意
- 卒乳は1歳半までをめざした方が良い
- 夜間授乳は虫歯をつくりやすい
- 虫歯だけでなく、卒乳時期は歯並びにも影響を及ぼすことがある
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
永久歯(6歳臼歯と前歯)のエナメル質形成不全が増えている!?その原因とは?
2019年8月10日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
暑い日が続きますね。
最近書いた記事で、一番反響があったのが、エナメル質形成不全症についてでした。
参考記事:エナメル質とその形成不全について~治療と原因~
気にされておられる方が多いことがよくわかりましたので、最近の学会での傾向や知見などを改めてまとめてみることにしました。
エナメル質形成不全とは?
エナメル質形成不全症とは、人体で最も硬く頑丈なエナメル質が、エナメル質石灰化不全の状態で生えてくることを言います。
そういった歯は、通常のエナメル質より軟らかく、色も白い歯に比べてクリームやブラウンがかったようであり、また表面も輝きがなく実際ボソボソとして柔らかいです。
原因は遺伝子に関連があるものと、関連がないもの(全身的な原因のものと部分的な原因のもの)に分けられます。
最近注目されているエナメル質形成不全「MIH」とは?
最近そのエナメル質形成不全にかかわることで、話題になっているのが、第一大臼歯(Molar)と前歯(Incisor)に限って発生するエナメル質形成不全症(Hypomineralization)で、頭文字を略して、MIHと言われるものです。
MIHは、大臼歯・前歯のエナメル部分に、境界がはっきりした色のエナメル質形成不全部分(透明感のないクリーム色やキャラメル色)が見られます。
前歯と、第一大臼歯によく起こるのですが、臨床でよく問題になるのは奥歯である、第一大臼歯の形成不全です。
生える途中の大臼歯は、歯茎に中途半端に覆われており、何もなくても炎症が起きやすく(≒いたくなり易く)、汚れが溜まりやすい(≒虫歯になり易い)です。
エナメル質が脆いと、大人の知覚過敏のように食事や歯磨き時に凍みる、みたいな感じで痛むことがあります。
そうなると、子供は自然に痛いところは避けるので、弱い歯がさらに磨かれないという悪循環に入ってしまいます。
また、生えたての歯は歯の頭(歯冠)部分が出来ていても、根が出来ていません。
そのため、治療はまず神経の治療にならないようにセメントもしくは必要に応じて歯冠全体を覆う既成の被せ(いわゆる銀歯)をすることが多いです。
不幸にして一部もしくは全体の神経の処置になれば、生えたての歯の神経の治療は痛みも激烈ですし予後も悪いため、歯医者にとっても本当に困難です。(本音ではしたくありません…)
MIHの子どもが増えている!?
MIHは、2001年のから言われた新しい概念で、それまでは実際虫歯になっていたことも多く、虫歯としてみなされていた様です。
2012年頃から日本小児歯科学会を中心に研究が盛んになりましたが、その報告からすると子供の11%~20%の頻度でMIHがみられると報告されています。
これは5人~10人に一人の割合であり、歯科医師からするとかなりの頻度であると言えます。
MIHの原因とは?
では最後に、MIHの原因についてです。
いまだに、特定の原因は明らかになっていませんが、関連が疑われているものは下のように色々と挙げられています。
*International journal of Clinical Pediatric Dentistry, Sep-Dec 2012;5(3):190-196 から主に抜粋
- 呼吸系アシドーシス;呼吸不全により二酸化酸素が体内に蓄積し過ぎて体液が酸性に傾く状態
- 妊娠中の高熱・糖尿
- 長く続く悪阻や体調不良
- 周産期における、様々な薬剤(子宮筋弛緩薬など)によりもたらされる低カルシウム血症や低酸素症
- 早産
- 乳児期における、中耳炎・肺炎・喘息・尿路感染・水疱瘡などによる抗生剤投与
- 母乳を介してのダイオキシン汚染
この論文以外では、最近増えてきている、くる病との関連が指摘され、ビタミンDや日光との関連も指摘されています。
つまりは、第一大臼歯のエナメル部分が形成され始める、出産前28週と出産後10日の間の何かもしくは複合要因ではないかと言われていますが、現在研究中としか言えない状態です。
MIHを含むエナメル質の形成不全は人によって程度の差が大きく、処置内容もそれによって大きく異なります。
まずは精査が重要ですので、気になった方は、悪化する前にお気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 最近言われるMIHといわれるエナメル質の形成不全では、大臼歯・前歯に、境界がはっきりした色の変化部分(透明感のないクリーム色・キャラメル色)が見られる。
- 第一大臼歯では部位非対称な形成不全であることが多く、程度にも差がある
- 知覚過敏のようなしみる痛みが出やすく、痛みにも過敏であるため、完全な沈静化は困難である
- 急速な虫歯の進行がみられることがあり、特に注意が必要である。
- 原因は複合的で不明であるが、5-10人に一人程度とかなり頻度が高い
気になることがあれば、まずは一度ご相談ください。