インビザライン治療の料金が複数ある理由
2026年2月4日
― コンプリヘンシブ/モデレート/ライトのパッケージの違いを歯科医が解説 ―

こんにちは、岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
「インビザライン矯正って、医院によって値段が違いすぎませんか?」
「同じ医院なのに、40万円〜80万円と幅があるのはなぜ?」
カウンセリングの現場で、患者さんから非常に多くいただく質問です。
今回はインビザライン矯正の種類と治療費用に関する内容をご説明します。

インビザラインは、アメリカのアライン・テクノロジー社が提供する、世界的に標準化されたマウスピース矯正システムです。そのため「どこの歯科医院でやっても同じ治療なのでは?」と思われがちですが、実は”選択する治療パッケージ”によって、中身もコストも大きく変わります。
この記事を読むことで、以下の内容を理解することができます。
- なぜインビザライン治療の費用に幅があるのか
- 費用の異なるインビザライン治療パッケージの具体的な違い
- どのパッケージがどんな人に向いているのか
1) インビザラインは「治療パッケージ」を選ぶシステム
まず大前提として知っておいていただきたいのは、
インビザラインというのは、1種類の治療ではないという点です。
インビザラインには複数の「治療オプション(パッケージ)」があり、
- 使用できるアライナー(マウスピース)の枚数
- 追加アライナー(作り直し)の回数
- 治療期間の上限
- 使用できる診断・計画ツール
がパッケージごとに明確に決められています。
つまり、
40万円のインビザラインと80万円のインビザラインは、そもそも”同じ内容の治療ではない”
ということです。

2) インビザライン矯正の最高峰:コンプリヘンシブパッケージ
~インビザラインで最も自由度が高く、完成度を追求できる安心のプラン~
コンプリヘンシブパッケージは、インビザラインの中で最上位の治療オプションです。
特徴
- アライナー枚数:制限なし
- 5年間、追加アライナーの回数制限なし
- CTデータとの重ね合わせが可能
- 複雑な歯の移動・仕上げの微調整まで対応可能
- 費用はワイヤーの全顎矯正と同程度(当院の場合は80万円+税)
特に重要なのが、CTとの重ね合わせができる点です。
歯は「歯ぐきの中の骨(歯槽骨)」の範囲内でしか安全に動かせません。
CTを用いて歯根と骨の位置関係を確認しながら治療計画を立てることで、
- 前歯を大きく下げる
- 抜歯後のスペースをしっかり閉じる
- 歯肉退縮(リセッション)のリスクを最小限に抑える
といった、安全性と完成度を両立した矯正が可能になります。
また、治療期間の5年間は追加アライナーを作成できるので、出産や受験などで「もしかすると治療の中断が必要になるかもしれないケース」でも安心です。
こんな方に向いています
- 抜歯を伴う矯正治療
- 前歯をしっかり引っ込めたい人
- 噛み合わせまで含めて長期的に整えたい人
- 歯列のガタガタが大き目の人
- 受験や部活、出産など「もしかしたら中断するかもしれない」可能性がある人



3) 軽度の歯列不正の場合に選べることも:モデレートパッケージ
~ 軽度の歯並び改善に向いた現実的な選択肢~
モデレートパッケージは「軽度の歯列不正の方限定」ではありますが、非常にコストパフォーマンスの良いプランです。
特徴
- アライナーは26枚以内
- 3年間、追加アライナーは2回まで
- CTとの重ね合わせは不可
- 軽度歯列不正の方に向け
- コストパフォーマンスが良い(当院の場合は60万円+税)
歯並びのガタつきが「26枚以内でも十分に改善できるケース」に限定されます。
どのような歯並びの人でも選択できるわけではありませんが、適応症例の方にはおススメです。
中等度~重度の歯列不正を無理にモデレートパッケージで治療しようとすると
CTを重ねた精密な歯根・骨評価ができないため、歯肉退縮したり、
歯をフレアアウトさせて並べるためにガタガタは取れたけれども、前歯がかえって出っ歯になったりなど、
「思った治療と違った…」ということになることも。
運が良く、インビザライン担当医から「あなたはモデレートでもOKですよ」と言われた場合のみ、可能なプランという位置づけです。
こんな方に向いています
- 軽度叢生(ガタガタ)
- 抜歯をしない矯正
- 前歯を「少し整えたい」ケース
- 費用と治療内容のバランスを重視したい方


4) 軽度の部分矯正専用プラン:ライトパッケージ/インビザラインGo
~名称は違いますが、ほぼ同じ「軽度部分矯正プラン」~
ライトパッケージ/インビザラインGoは、適応範囲がかなり限定されます。
特徴
- アライナーは14枚以内
- 2年間、追加アライナーは1回まで
- CTとの重ね合わせ不可
- 微調整の余地が少ない
- 奥歯の矯正には不向き
- 3~6か月で終わる
- 動かす歯が少ないため費用はお手頃(当院の場合は40万円+税)
アライナー14枚というのは、歯の移動量としてはごくわずかです。
アライナーが1枚1週間で交換する場合、14週間(3か月半)で1セットが終了する、終了できる範囲の矯正治療ということになります。
そのため、顎全体の治療ではなく、気になる部分のワンポイント矯正に限定されます。
こんな方に向いています
- 後戻りの軽微な修正
- 前歯の隙間を閉じたい/1歯のねじれを治したい など
- 見た目の微調整が目的の方


5) 同じインビザラインでも料金が違う本当の理由
ここまで読むと分かる通り、料金差の背景には
- メーカーに支払うパッケージ費用が違う
- 使えるアライナー枚数・期間・再製作回数が違う
- 治療期間・受診回数が違う
- 安全性(CT評価)と完成度が違う
- 動かせる歯の本数や移動量が違う
これらの違いが、そのまま治療費に反映されています。
「コストや治療期間については考えず、医学的にベストなプラン」
「コストや治療期間と仕上がりについてバランスをとった患者さん本人にとってベターなプラン」
などを、しっかりと検討する必要があります。
インビザライン矯正は、治療前にシュミレーションで「このように治す予定です」という3D画像を確認していただくことができる矯正治療です。
当院でも、こうした3D画像を確認していただき、患者さんのイメージと最終的な矯正の仕上がりイメージのすり合わせを行ってから、治療に入るようにしています。
ただ、このような歯並びのシュミレーションを見ていただいていても、実際に治療が進んでくると
「あれ?もっと前歯引っ込まないのかな?」
「3Dイメージを見た時は、十分だと思ったけど、今はもっとこうしたい」
という希望が出てくる場合もあります。
矯正を始める前よりも、毎日矯正治療に取りくむことで、歯並びの審美眼がレベルアップして、元々は「ここだけ治れば良いや」と思っていた気持ちが変わってしまう、ということはよくあります。
当院にも、他院でインビザライン モデレートパッケージで治療を受けているけれども
- 治療が進むにつれ口が閉じにくくなって不安
- かえって上の前歯が目立つようになったと感じている
というご相談を受けることもあります。
おそらくはコンプリヘンシブ・パッケージで抜歯により前歯を引っ込める矯正治療をした方が、口元がスッキリしただろうという症例を、コスト重視でモデレートで治療した結果、前歯がフレアアウト(外側に動いてしまった)したのではないかな?と思われます。

矯正治療にコスパを求めてしまうお気持ちは本当によく分かるのですが、
「自分の症例にあったパッケージを選択する」ことが、結果的に満足度の高い矯正治療につながります。
6) 価格ではなく「自分の歯並びに合った選択」をすることが、治療の満足につながる
インビザライン矯正は、
- どのパッケージを選ぶか
- そのパッケージが自分の歯並びに適しているか
で、結果の満足度が大きく変わる治療です。
「一番安いからライト」
「とりあえずモデレート」
「いくら以内に収めたい」
「とにかく安い医院で治療したい」
ではなく、
その歯並びを、安全に・確実に治すには、どの選択肢が最適かを歯科医と一緒に考えることが、後悔しない矯正治療につながると考えます。
今は多くの歯科医院で矯正相談を受けられると思うので、治療を決められる前に、複数の歯科医院で実際に相談してみるのも良いと思います。

7) よくある質問(FAQ)
最後に矯正相談でよくいただく質問をまとめます。
Q1. 安いパッケージから始めて、途中で変更できますか?
インビザラインの場合、途中でパッケージ変更はできません。
インビザラインは治療開始時点で、メーカー(アライン・テクノロジー社)にどのパッケージで契約するかを確定させます。
そのため、
「最初はライトで、ダメならコンプリヘンシブに」
という使い方はできません。
Q2. モデレートやライトでも、きれいに並びますか?
症例を正しく選べば、きれいに並びます。
ただし、
- 歯を大きく動かす必要がある
- 前歯をしっかり下げたい
- 噛み合わせの調整が重要
といったケースでは、
パッケージの制限が仕上がりの限界になることがあります。
Q3. CTを使わないと、そんなに危険なのですか?
必ず危険、というわけではありません。
しかし、
- 前歯の後方移動量が大きい
- 歯槽骨の厚みがもともと薄い
といった条件がある場合、CT評価なしでの矯正は歯肉退縮リスクが高まることが分かっています。
そのため当院では、リスクが高いと判断した症例に対してCTが使えないパッケージを無理に勧めることはありません。
Q4. 他院で「40万円でできます」と言われましたが、同じですか?
同じ「マウスピース矯正」という言葉でも、
- インビザライン・ライト
- 別メーカーのアライナー矯正
- 追加調整が有料のシステム
など、中身はまったく異なることがあります。
金額だけで比較せず、
- アライナー枚数
- 追加調整の可否
- 治療期間
- 適応範囲
を必ず確認することをおすすめします。
Q5. どのパッケージが自分に合っているか分かりません
それが普通です。
インビザライン治療は
「患者さんがパッケージを選ぶ治療」ではなく、
「歯並びに合ったパッケージを提案される治療」です。
矯正相談では、
- 歯並びの状態
- 骨・歯根の条件
- どこまで改善したいか
を踏まえて、
無理のない、後悔しにくい選択肢をご説明します。

Q6 ライトパッケージで治療して、思った仕上がりにならなかった場合、どうすれば良いですか?
そのような「イメージ違い」にならないよう、事前にシュミレーションをしっかり確認していただくことが最も重要です。
ただし、その上で「矯正治療のゴールを変更したい(前歯をもっと下げたい)」などのご要望があった場合、当院ではワイヤー矯正への切り替えであれば追加料金で申し受けております。インビザラインのパッケージ変更はアライン社の仕様上、お引き受けすることができません(最初からの費用負担となってしまいます)。
8) まとめ

いかがでしたか?
- インビザライン矯正には、複数のパッケージが存在します
- 価格が違う場合、提供される治療の内容もことなることがあります
- 最終的な治療終了のイメージをしっかりと歯科医師と擦り合わせることが重要です
- 安さだけを比較せず、治療内容を確認し、ご自身にとってのベストな治療プランを考えることがおすすめです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






