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知覚過敏は市販薬で治る?歯科医が“本当に効果がある対策”を徹底解説

2025年12月22日

こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。

水道水が冷たくなってくる季節になると、毎年必ず増えるのが「歯がしみる」 というご相談です。

  • ・冷たい水を口に含んだ瞬間にキーンと痛む
  • ・歯ブラシが当たるだけでピリッとする
  • ・歯がしみるので食事がつらい

こうした症状の多くは 「知覚過敏」 と呼ばれる状態です。

ドラッグストアには知覚過敏用の歯磨き粉が数多く並んでいるため、「市販薬で治る?」「歯医者に行くべき?」と迷われる患者さんが少なくありません。

この記事では、知覚過敏がなぜ起こるのか、どこまで市販薬で改善できるのか、そして歯科医院で行う“本当に効果のある治療”は何かを、臨床の視点から分かりやすく解説します。

1)知覚過敏とは?

「象牙質が露出し、刺激が神経に伝わる状態」

正しくは「象牙質が露出し、象牙細管を通じて刺激が神経に到達する状態」です。

1-1)象牙質と象牙細管とは?

歯の内部には「象牙質」という層があり、その中に「象牙細管(ぞうげさいかん)」という無数の細い管が通っています。この管が歯髄(神経)とつながっています。
岩国市 歯科 知覚過敏

冷たい水・歯ブラシ・甘いものなどの刺激は、この細管を伝って神経に届くため、「キーン」とした痛みを感じます。
岩国市 歯科 知覚過敏

1-2)象牙質が露出する原因・しみる原因
岩国市 歯科 知覚過敏

  • ・強すぎるブラッシングによるエナメル質の摩耗
  • ・酸性飲料によるエナメル質の溶解
  • ・歯周病による歯肉退縮
  • ・食いしばりによる摩耗
  • ・ホワイトニング後の一時的な感受性亢進
  • ・かぶせ物の段差・不適合

知覚過敏は、結果として象牙質が露出している状態であり、必ず背景に原因があります。

逆に言えば、背景となる原因を取り除くだけで改善するケースも少なくありません。

具体的には

  • ・ブラッシング圧を適正化する(優しい力で丁寧に磨く、電動歯ブラシは特に注意)
  • ・酸性飲料(水・牛乳・お茶・焼酎以外の多くの飲み物)を避ける、摂取頻度を少なくする
  • ・歯周病の治療をする(進行させない)
  • ・食いしばりに気を付ける、歯が摩耗しないようマウスピースを使用する
  • ・ホワイトニングをお休みする
  • ・かぶせ物の段差がある場合には、治療を行う

などです。

重要なのは、歯がしみる原因となっていることを取り除くことですから、何が原因か分からない場合は、歯科医院に相談してみることをおススメします。

2)市販薬で治る知覚過敏と治らない知覚過敏

ドラッグストアで手に入る知覚過敏ケア商品は、症状を和らげることはできますが、根本的に原因を治すものではありません。

2-1)市販薬に含まれる知覚過敏ケア成分

  • ・硝酸カリウム:神経の興奮を抑える
  • ・乳酸アルミニウム:象牙細管を“塞ぐ”
  • ・フッ化物:エナメル質を強化する

市販薬は象牙細管の表面を少しずつ閉鎖し、2〜4週間で症状改善が期待できます。

ただし、知覚過敏の原因を治すものではないので、時間がある時に歯科医院で相談することをおススメします。

2-2)市販薬では治らないケース

以下に当てはまる場合、市販薬だけでは改善しません。

  • ・温かいものでも痛む(神経の炎症)
  • ・ズキズキ痛む(虫歯・神経の問題)
  • ・噛むと響く(歯のヒビ)
  • ・歯が欠けて象牙質が露出している
  • ・楔状欠損(くさびじょうけっそん)がある
  • ・かぶせ物や詰め物の段差・不適合
  • ・歯周病による大きな歯肉退縮

こうした“構造的な問題”は、市販薬では対処できません。
岩国市 歯科 知覚過敏

3)歯科医院で行う知覚過敏治療

ここからは、当院で実際に行う知覚過敏治療を原因別に紹介します。

3-1) コーティング剤による象牙質の封鎖(即効性が高い)

象牙細管の近くをレジン系のコーティング剤・ボンディング材で封鎖する方法です。

特徴

  • ・その場で痛みが大幅に軽減することも多い
  • ・1回で症状が改善する例も多い
  • ・市販薬より即効性が高い
  • ・歯に優しく、歯へのダメージが無い

象牙細管への刺激伝達がブロックされるため、非常に効果的な治療です。
岩国市 歯科 知覚過敏

3-2) レーザーによる象牙細管の閉鎖(即効性が高い)

レーザーを象牙質表面に照射し、熱によって象牙細管の表面を変性・縮小させて封鎖する方法です。

コーティング剤単独では効果が不十分な時に、追加処置として行うことが多いです。

特徴

  • ・その場で痛みが大幅に軽減することも多い
  • ・即効性が高い
  • ・コーティング剤より効果が高く、コーティング剤と併用も可能
  • ・熱によって歯の質をわずかに変性させるため、わずかに外来性色素が付きやすくなる

3-3)CR(コンポジットレジン)による楔状欠損の充填

知覚過敏が改善しない理由の中で特に多いのが「楔状欠損(くさびじょうけっそん)」です。

3‐3‐1)楔状欠損(くさびじょうけっそん)とは?

歯の付け根部分(歯頸部)がV字型に削れたり欠けたりした状態です。

原因

  • ・長期間の横磨き
  • ・食いしばりで応力が集中(アブフラクション)
  • ・酸蝕症(さんしょくしょう:酸性の飲料を大量に飲む人がなりやすい)によるエナメル質の弱体化

楔状欠損(くさびじょうけっそん)では象牙質が大きく露出しているため、市販薬での改善はほぼ不可能です。

くさび状欠損についてはこちらのブログでくわしく説明しています。

https://tsuboidental.com/blogs/archives/7403

3‐3‐2) CR修復の特徴
  • ・欠けた部分をレジンで補うため、象牙細管を完全に封鎖できる
  • ・見た目が自然で効果が高い
  • ・一度の治療でしみにくさが改善
  • ・再発率が低い
  • ・CRは経年劣化しやすいため、劣化していないかどうか定期チェックが必要
  • ・CRは経年劣化で変色しやすい

CRの最大の短所は「経年劣化しやすい材料である」ことです。そのためCRで欠損部を補わなくても大丈夫な程度の、小さな楔状欠損ならばコーティング剤やレーザーのみで済ますこともあります。

3-4) 食いしばり・歯ぎしりがある場合はナイトガードの使用も

食いしばりや歯ぎしりは知覚過敏の隠れた大原因です。

ナイトガードのメリット
  • ・歯の摩耗(まもう:すり減り)を防ぐ
  • ・楔状欠損(くさびじょうけっそん)の進行を抑える
  • ・歯への負担を大幅に軽減
  • ・保険適用で安価(約5,000円前後)

就寝中の癖は自分では止められないため、ナイトガードが最も確実です。
岩国市 歯科 ナイトガード

4)今日からできる「知覚過敏予防」

前述の「象牙質が露出する原因・しみる原因」を避ける他に「安静にする」ことも大切です。

冷水うがいや氷入りの飲み物を控え、歯磨きもぬるま湯で行なってみてください。

「しみる」というのは、軽度の炎症を起こした状態です。

想像してみてください

  • 蚊に刺された部分を掻くと、もっと痒くなる(炎症が増悪する)
  • 捻挫した足で運動すると、もっと痛くなる(炎症が増悪する)

歯の神経も同じなのです。

  • しみる歯に氷水を当てると、もっとしみるようになる(炎症が増悪する)

しみる歯には強い刺激を与えずに、なるべく安静に過ごしていただくと、より早く症状が楽になることが多いです。

5)軽度であれば自然治癒することもある

象牙質が口腔内に露出しても、唾液が象牙細管を閉鎖する働きをしますので、知覚過敏は軽度であれば自然に治癒することもあります。

しかし、中等度~重度であればなかなか治癒しませんし、その間は毎日の食事が辛くなってしまいます。

我慢しなくても、1回で多くの方が症状改善する方法(コーティング剤やレーザーなど)もあるので、まずは正しい診断と適切な治療を行うために、歯科医院にご相談ください。

また、歯科医院になかなか受診できないために市販薬を使う場合も、2週間を超えて継続使用しても効果がない場合は歯科受診をお考えください。

ただの知覚過敏ではなく他の疾患が隠れている場合があるためです。
岩国市 歯科 知覚過敏

6)まとめ

いかがでしたか?

  • ・知覚過敏は象牙質露出が原因で、背景要因の除去が重要です。
  • ・市販薬は症状緩和までと思ってください。原因治療は歯科医院で行いましょう。
  • ・歯科医院では、コーティングやレーザー治療など即効性のある治療が可能です。
  • ・忙しくて歯科医院に受診出来ない場合でも、市販薬を使用して2週間しても症状が緩和しない場合は歯科受診をご検討ください。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!

虫歯は減ったのに、なぜ口の病気は世界最大級の健康課題なのか~歯科保健行政が目指しているもの~

2025年12月18日

1) 「虫歯は減った」と言われる時代に、あらためて口腔の健康を考える

こんにちは。岩国市の医療法人つぼい歯科クリニック おとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。

「昔に比べて、虫歯は減ったらしいよね」という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

実際、国が行っている歯科疾患実態調査を見ても、むし歯の罹患状況は全体として大きく改善してきていることが分かっています。

参考リンク:歯科疾患実態調査:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000176912.html

しかし一方で、口腔の病気が社会全体にどの程度の影響を与えているのか、他の病気と比べてどう位置づけられているのかについては、あまり知られていないのが現状です。

そこで今回は、行政を中心とした口腔の健康へのアプローチについて、世界、そして日本の行政がどのように考え、どんな方向性を示しているのかを調べ、その内容を分かりやすく解説していきたいと思います。

2) 世界から見た口腔疾患の現状 ― 虫歯は「最も多い病気」

近年、「世界疾病負担研究(GBD)」という、さまざまな病気の負担を横並びで比較する研究が行われました。その結果、永久歯の未処置う蝕(むし歯)は、300以上の疾患の中で最も多い疾患であると報告されています。

世界疾病負担研究のデータグラフ

また、2022年に公表されたWHO(世界保健機関)のレポートでは、う蝕、歯周病、歯の喪失などの口腔疾患を有する人は約34億7000万人とされました。これは、精神疾患(約9億7000万人)や循環器疾患(約5億2200万人)などと比べても、桁違いに多い数字です。

WHOレポートによる疾患別患者数の比較

この結果から、「虫歯は減っている」というイメージとは裏腹に、口腔疾患は世界規模では依然として最も身近で、最も患者数の多い疾患群であることが明らかになっています。

3)WHOの歴史的決議 ― 口腔疾患は「社会の課題」へ

こうした背景を受け、2021年にWHO第74回保健総会において、「口腔の健康に関する決議」が採択されました。

歯科分野が単独でこのような決議の対象となることは非常に珍しく、歴史的な出来事といわれています。

この決議が目指す方向性は、

「2030年に向けたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)および非感染性疾患(NCD)対策の一環として、より良い口腔保健を達成する」

というものです。

つまり、むし歯や歯周病を単なる感染症として捉えるのではなく、生活習慣や社会環境と深く関わる疾患=生活習慣病に近い存在として位置づけ、社会全体で取り組むべき健康課題として扱おう、という考え方です。

WHO決議の概念図

4)日本の行政の方向性 ―「健康日本21」と歯・口腔の健康づくりプラン

このWHOの流れを受け、日本では2024年に「健康日本21」の歯科分野として、「歯・口腔の健康づくりプラン」が策定されました。

このプランの最上位目標は、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」です。

健康日本21の目標概念図

具体的な取り組みとしては、

  • 学校歯科健診
  • 日常的な歯みがきの実施
  • 歯科保健教育
  • フッ化物の活用
  • ライフコースアプローチ

といった内容が示されています。

ライフコースアプローチとは、乳幼児期、場合によっては胎児期の健康や生活習慣が、成人期・高齢期の健康にまで影響するという考え方です。

5)実は重要な「お子さんへの教育的アプローチ」

こうした背景を踏まえ、歯科医院は(治療をしっかり行うことは当然として)、教育的なアプローチが強く求められていると感じています。

教育的アプローチのイメージ

歯科医院での歯垢の染め出しや食生活指導は、患者さんからすると「少しうるさい」「面倒」と感じられるかもしれません。

実際、これまでの診療の中で、お子さんが日常的にグミやアイス、飴などを口にする習慣があるご家庭の患者さんに対して、食習慣の改善についてお話すると、「言っていることは分かるが、しつこく飴やグミをやめろと言われるのが嫌なので、担当の先生を変えてください」と言われてしまったことも、一度や二度ではありません。

飴やグミなどのお菓子が完全に生活習慣の一部になっている場合や、大袋のお菓子を与えている間はお母さんが家事や育児から一時的に解放される、といった事情がある場合など、「やめられない理由」があることは理解できます。

たばこや過食と同じで、「良くないことは分かっているけれど、やめるのが大変」なんですよね。

そのうえで、それでもなお、お子さんの人生全体を考えたときに「お砂糖たっぷりの市販菓子を日常的に食べることはやめた方が良い」とお伝えするべきだと考えています。

短期的には煙たがられてしまうことがあったとしても、将来の口腔の健康、ひいては全身の健康につながる重要な部分だからこそ、避けて通れない歯科医院の役割だと思っています。

歯科医院の役割イメージ

6) 口腔機能の「貯筋」

小児期にマイオファンクショナルセラピー(MFT:口腔筋機能訓練)によって口腔筋機能を高めることも、正しい嚥下の獲得や歯列・咬合の改善につながるだけでなく、将来的な嚥下機能低下の予防にも寄与すると考えられています。

乳幼児期・学童期に適切な口腔機能を獲得できたかどうかが、成人期・高齢期の口腔機能に大きく影響するためです。

これは、筋肉を若いうちから鍛えて蓄えておくことが老年期の健康寿命を延ばす「貯筋」という考え方と非常によく似ており、口腔機能における“貯筋”と言えるでしょう。

口腔機能の貯筋イメージ

7) フッ素と予防 ― 研究が示す「子どもの頃からの積み重ね」の大切さ

フッ化物の使用も虫歯予防の観点からは非常に効率の良い方法であり、WHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病予防管理センター)、そのほか多くの国際歯科・公衆衛生機関が使用を推奨しています。

フッ素予防の重要性イメージ

イギリスの研究では、「子どもの頃に水道水フロリデーション(注1)によるむし歯予防を受けた年数が長いほど、高齢期に残っている歯の本数が多い」ことが示されています。

(注1)水道水フロリデーション:水道水に虫歯予防を目的に自治体がフッ素を添加すること

ちなみに日本では水道水フロリデーションは行われていません。

実は日本でも、第二次世界大戦後のGHQ占領下において、試験的に水道水フロリデーションが行われていました。

しかし1960~1970年ころ、水俣病・イタイイタイ病などの公害や、環境汚染による化学物質への強い不信感が国民レベルで強くなり、水道水フロリデーションに対しても「化学物質を添加するべきではない」という反対運動が起こりました。

その結果、フッ素は個人責任のもと、学校や歯科医院で個別に対応すべきということになった歴史的背景があります。

ですから日本では、虫歯を効果的に予防するために「子どもの頃から歯科医院や自宅でフッ素塗布を行う習慣」を、保護者の方が作ってあげなくてはならないのです。

また、歯磨き習慣についても「子供のころからの積み重ね」は重要です。

ニュージーランドの研究では、「子どもの頃のプラーク付着状況から、成人期のプラーク状況を予測できる」ことが報告されています。

これらの研究からも、小児期からのフッ素習慣や口腔衛生習慣が、将来の口腔健康に明確に寄与していることが分かります。

8) 当院の取り組みと、歯科定期受診の意味

当院では、これまでも

  • 歯みがきなどの教育的指導
  • フッ素塗布
  • MFT(筋機能訓練)

といった、長期的な歯科疾患の予防につながる取り組みを行ってきました。

これらの取り組みには学術的な裏付けがあり、成人期・老年期の口腔健康にまでつながっているということを、ご理解いただけたのではないかと思います。

継続した歯科定期健診は、将来の口腔健康への『投資』です。

ぜひ歯科定期健診をご利用くださいね。

定期健診の案内イメージ

9) まとめ 口腔の健康は「今」だけでなく「将来」をつくる

いかがでしたか?

  • 虫歯は減少傾向にありますが、口腔疾患を有する人数は他の疾患と比べて依然として非常に多い
  • WHOの歴史的決議を受け、日本でも「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を目標とした歯科保健の指針が策定された
  • 「歯みがき指導」「フッ素」「MFT」をライフコースアプローチで行うことが重要
  • 定期健診は、成人・老後の口腔健康につながるので、ぜひ継続してください

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考文献 「歯科保健教育の推進」 日本学校歯科医会会誌 第137号(令和7年度 No1)

初診「個別」相談へのご案内

当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。ご興味がある方は下記からお問い合わせください。

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