妊婦健診には、どうして歯科の健診もあるの?
2020年11月12日
歯周病と妊娠について
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
新型コロナも5月ごろと比較すると落ち着いてきた印象ですね。
最近になってやっと妊婦健診に来院される方が、コロナ禍が来る前と同じくらいになりました。
当院も、いっそう気を引き締めて安全な歯科医療の提供を続けていきたいと思います!
さて、今日は妊婦健診と妊婦さん、そして歯周病の話題です。
妊婦健診で、歯科の検査項目があるのは何故?
歯周病はいろいろと全身的に影響を及ぼすということが明らかとなってきています。
参考リンク:
歯科と糖尿病、脳血管障害、要介護度は関係が深い!?あれこれ関わっているお口の病気
特に今回は妊娠と歯周病との関係について考えてみようと思います。
妊娠すると、歯肉炎といって歯ぐきが腫れやすくなります。
これを妊娠性歯肉炎と言います。
妊娠が歯周病を悪化させるワケ
歯肉炎の状態が進む(悪化する)と歯周病と呼ばれる状態へと移行していきます。
これは原因として妊娠によってホルモンバランスが変化することによって起こるようです。
女性ホルモンであるエストロゲン(聞いたことあるのでは?)やプロゲステロンなどの影響によります。
エストロゲンは歯周病細菌の増殖を引き起こすホルモンです。
そしてプロゲステロンは炎症作用と関係のあるホルモンであります。
これらのホルモンは妊娠時に増えていきます。
妊娠後期には、月経時の10~30倍にもなったりします。
ですので、妊娠後期にかけて歯肉炎が悪化することがあるようです。
そうはいっても歯肉炎の直接の原因は歯周病菌であり、お口の中に歯周病菌が少ない状態(きれいに歯磨きが出来ている状態)ですと、歯肉炎も起こらないか、軽度で済みます。
お母さんの歯周病と、お腹の赤ちゃんの関係

お母さんが歯周病になっていると、低体重児の出産、早産のリスクが高まります。
特に早産については、歯周病のお母さんはそうでないお母さんの7.5倍もリスクが高くなってしまうと言われています。7.5倍というと、ちょっとギョッとする数字ですよね。
歯周病というのは、細菌が歯の周りに存在し、細菌が血中に供給されている状態であると言えます。
さらには、血流に乗り胎盤をも通過し胎児に感染するのではないかと考えられているようです。
歯周病により炎症が広がると、炎症な関連してプロスタグランジンという物質が作られます。
プロスタグランジンという物質は、通常、出産が近くなると分泌され、それがきっかけとなり子宮の収縮が起こり陣痛、出産へとつながっていきます。
娠中のリスクファクターと言えば、喫煙、アルコールなどがあげられますが、歯周病の危険度はそれらをはるかに凌ぎます。
こうした理由から、赤ちゃんとお母さんの健康のために妊婦健診に歯科健診が含まれているんですね。
妊婦健診を活用しましょう!
妊娠に対して、歯周病が大きなリスクであることは明らかであると思います。
もちろん、まずは歯周病にならないことが重要です。
歯の周りの汚れ、歯石などをキレイに取り除くことが基本となります。
とはいえ、歯科医師や歯科衛生士でさえ、セルフケアだけで歯石がつくことを完全に防ぐことはできません。
セルフケアと、定期的なプロフェッショナルケアの両方をうまく活用して防ぐのがベストだと思います。
妊婦さんに対して、妊婦健診の案内もあるかと思います。
歯科をしっかりと活用して、不必要なリスクを減らしましょう!
まとめ
いかがでしたか?
- 妊娠すると「妊娠性歯周炎」になりやすい
- 妊娠性歯周炎はホルモンバランスの変化によって起きる
- 妊婦健診を活用しましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
上下の歯が触れる時間が1日20分以上あると、○○になってしまう!?
2020年10月14日
あなたはTCHという言葉を聞いたことはありますか?
「初めて聞いた」という方もいれば、ここ数年、歯科関係のブログやコラムでもよく見かける言葉なので、「あ!聞いたことある」「知ってる!」という方もいるかもしれません。
では、なぜTCHがよく言われるようになったのか?
TCHとはそもそもどんな症状で、どんな良くないことを将来引き起こしていくのか。
今回はTCHをテーマにお話していきます。
TCH(歯列接触癖)だとなぜ良くないのか?
1日20分以上、上下の歯が触れ合っている習慣を持っている人は、歯がしみたり、痛みが出たり、顎関節症のような症状を引き起こしてしまうことがあります。
TCH(歯列接触癖)とは?
TCHとは、Tooth Contacting Habitの略です。
日本語でいうと、歯列接触癖といいます。
口の癖として、上下の歯と歯が当たっているというものです。
上下の歯が触れている時間は1日20分までが良い
食事をしている時、緊張している時、力を込めている時などには上下の歯は当たっていますね。
何かに集中している時なんかも当たっているかもしれません。
その他の時間は上下の歯は当たっていない状態が正常です
リラックスしている状態では上下の歯は、2~3mm離れた状態になっています。
これを安静空隙(あんせいくうげき)と言います。
『1日のうちで上下の歯が接触している時間のトータルでも20分以下にしないといけない』と、患者さんにお伝えすると、
「え!そうなんですか?歯と歯が触れているのが普通の状態だと思っていました」と言われる方も多いです。
TCHによって、どんなことが起こってしまうのか
「1日20分以上歯を触れ合わせてはいけないということはわかった。
でも、TCHによってどんな悪いことが起こるだろう?」と思われる方もいるかもしれません。
具体的には、
- 歯がしみる
- 歯が痛む
- 詰め物が壊れる
- 顎が痛む
- 歯周病が悪化する
- 歯が揺れてくる
- 歯並びが悪くなる
などの症状を引き起こすことがあります。
TCHは、噛む力の強さは関係ない
噛む力は弱くても、時間が長ければTCHに該当します。
弱い力でも長時間当たっているということによって影響が起きてしまうんです。
歯ぎしりは歯に良くないというのは聞いたことがあるかと思いますし、イメージもしやすいですね。
ギリギリと大きな音がなる歯ぎしりは、いかにも歯や顎に悪そうです。
しかし、噛む力が弱くても、長時間やれば悪い影響が出てしまう。
実は歯ぎしりと同じような影響が起こるんです。
歯がすり減ってしまったり、それに伴って起こる今までに治療した歯の詰め物や被せなどに起こる不具合が起きたり、歯が欠けたり割れたり、知覚過敏を起こしてしまったり。
他にも、歯並びに影響がでてしまったり、骨隆起という顎骨にボコボコができてしまったり。
イラスト:骨隆起

歯だけでなく、頭痛、肩こりといった首回りの症状を引き起こしてしまうこともあるようですね。
私も顎関節症なのでTCHがあるかもしれない、思っています。
TCHが増えてきた原因
一つはスマートフォンやゲームなどで、うつむいている時間が増えたことが原因かもしれないと言っている人もいます。
また、歯ぎしりや食いしばりにも共通しますが、ストレスが原因とも言われています。
リモートワークなどでパソコンの時間が増えた人など、ご自分がTCHでないか一度チェックしてみることも、ご提案します。
TCHの治し方
では、どうするかというと、当たらないようにするしかないんですよね。
癖なので、治すのはなかなか大変です。
爪噛みなどと同じで、「これをやればすぐ治ります!」という方法は、残念ながら現在のところありません。
対策として、歯を離すことを意識したり、作業の時の姿勢に意識したりするのも良いかと思います。
改善方については、こちらのブログページもありますので、ぜひ参考にしてください。
参考リンク:https://tsuboidental.com/2020/03/28/incho-69/#TCH-3
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
定期健診の意義と間隔について
2020年10月13日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
当院の場合、多くの患者さんに定期健診でご来院いただいているのですが、『痛くなってから歯医者に行く、僕の小さいころとは違うなあ』と言われる場合があります。今回は定期健診の意義と間隔についてまとめてみました。
学校検診と歯科医院、結果が違った!これって見逃し!?
検診と健診はそもそも対象が異なります。
検診は、学校、職場など、大きな集団の健康を維持することを目的にしている
どんな集団でも状態がいい人と悪い人が存在します。検診は大きな集団では特に悪い人の検出して、その方に「医療機関へ受診された方が良いですよ」とご案内することを目的にしているのです。
学校検診や職場の検診では、歯医者さんは勉強用のスタンドライトや、懐中電灯、ペンライト、日光などの明かりで口の中を診ます。当然、小さい虫歯は見えないこともあります。しかし、集団の中で重症の方や、早く歯科医院へ受診された方が良い方を検出することが目的ですから、問題とされません。
健診は個々の患者さんの健康増進を目的にしている
診療室での健診は、無影灯という特別に明るいライトで口の中を照らし、また唾液や歯垢で見えない部分があれば器具を用いて歯が良く見える状態にして、チェックしますし、必要があればレントゲン検査や、透照診といって光を透かして歯を検査したり、歯の揺れぐあいなどを検査したりします。学校検診や職場の検診とは、まったく違うものなのです。
健診申し込み期間の目安が「3か月」と言われることが多いワケ
1960~1970年代のスウェーデンでの研究がベースになっています。
1960年より前のスウェーデンは世界でも有数の砂糖消費国でした。
午後のおやつの習慣はイギリスがイメージ強いですが、北欧各国にもその習慣があり、虫歯も非常に多かったそうです。
そこで、スウェーデンでは1960年代に虫歯とそのリスク因子について大々的な調査が行われ、「虫歯を減らす政策」を実行したのでした。
その時に健診の期間についての議論がなされ、主に歯周病の観点で「健診は3か月間隔」とされました。
現在では、スウェーデンは予防歯科先進国として、80歳の平均の歯の数は21本(スウェーデンは2015年の報告データ。ちなみに日本は、2017年のデータで、80歳で13本が平均)という、非常に素晴らしい結果を出しています。
日本では、このスウェーデンの成果を参考に、3か月間隔がおススメされることが多いのです。ちなみに小児に関しては、その後の研究で、おおむねそれに準ずる期間が勧められています。
歯科健診が必要なワケ
子供の虫歯は進行が速い
虫歯には、慢性のものと、急性のものがあります。
慢性う蝕はその名の通り、数年単位で進行するもので、壮年期に多くみられます。
一方、急性う蝕は数か月~半年単位で進むもので、乳歯や弱若永久歯など、小児期に多くみられます。したがって、子供の虫歯は進行がとても早いのです。
う蝕を確定診断するのはレントゲン検査が必要ですが、数か月で治療の必要が出てくるようなものは間違いなく急性う蝕です。
急性う蝕は
- 歯が生えたてで弱い時期である
- 歯の質に問題がある
- 菌の活性状態(当然食生活が大きく影響します)に問題がある
などの条件があれば発生しやすいです。
詰め物も長持ちする
つぼい歯科クリニックでは、虫歯の治療の場合、虫歯を残さず取りきれるように、ただし削りすぎないように、う蝕検知液を用いています。
虫歯の部分だけが染まる染色液に、虫歯を染めながら治療するんですね。
ただ、虫歯を取り切った場合でも、詰め物の維持できる期間は、その後の口腔衛生状態によります。
歯と詰め物が完全に同じ硬さ、完全に同じ弾性を持つ…ということは無く、違う素材をくっつけている以上、継ぎ目が傷みやすいという性質があります。
継ぎ目がわずかに傷んだあと、いつも磨き残しが少ない口と、いつも磨き残しが多い口では、詰め物の状態が変わってしまうんです。
定期健診を行った場合、岡山大学の研究結果では乳歯の場合も、大幅に詰め物を良い状態に保てた期間が延びたという研究結果が出ています。
歯科医院専用フッ素を定期的に塗った方が良い
フッ素は1900年代にアメリカで有効性が確認された薬物です。薬物といっても、じゃがいもや海藻、牛肉などにも含まれる成分ですが、人工的に薬物として一定以上の濃度を精製している以上、当然いい面と悪い面があるんです。
良い面…虫歯予防効果が高い!
悪い面…一度に大量に摂取すると、中毒になることもある。
フッ素については、こちらに詳しく書いていますので、よろしければ読んでくださいね。
参考 ドクターズブログ:
フッ素は危険?3歳~6歳ぐらいの子どものフッ素についての話
中毒と聞いてびっくりされた方もいると思いますが、市販のフッ素ジェルは濃度が低く作ってありますので、めったな量では中毒にはなりません。
ただ、歯科医院用のフッ素ジェルの場合、歯科医師や歯科衛生士が「安全性の高い量」を患者さんに使うことが出来るため、ずっと高濃度になっています。
「フッ素は家庭用ジェルだけじゃダメなの?」
ダメということは無いのですが、歯科医院用と家庭用のフッ素ジェルを併用した方が、効果が高いので、併用をおススメしています。
実は、同じフッ素ジェルでも、家庭用と歯科医院用では作用機序が異なります。
高濃度の歯科医院用フッ素は「弱い虫歯予防効果が、長時間続く」
歯科医院用の高濃度フッ素は、濃度が高いためにいきなり歯に入っていかずに、歯のあちこちに「フッ化カルシウム」という形で沈着します。
このフッ化カルシウムが、口の中が酸性に傾いた時(虫歯になりやすい環境の時)に再度溶けて、低濃度のフッ素イオンが作られ、そのフッ素イオンが歯を修復します。
低濃度の家庭用フッ素は「強い虫歯予防効果が、ジェルを口にいれたその時間だけ発揮される」
家庭用の低濃度フッ素は、口の中でフッ素イオンに分離して歯を直接修復しますが、歯の表面に留まらないため、効果は一瞬で終わります。
予防効果は高い方が、もちろん良いですが、家庭用フッ素を1日に何度も塗りますか?
さすがに摂取しすぎになってしまいますし、現実的でもありません。
歯科医院用の「長く効く」フッ素に1日歯を守って貰って、就寝前の歯磨き後に家庭用フッ素で「その日の歯のダメージをリセット」するのが効果的だと思います。
定期的に歯磨きの悪い癖を見直す
お子さんの場合、ある程度の年齢になると、自分でしっかり磨けるように歯科医院でも歯磨き指導をしていきます。
実をいうと、この観点では定期健診の間隔は全く足りない気がします。
お子さんの習い事の多くは1回1時間以上でだいたい毎週ありますよね?
その意味では年4回ぐらいでは軽い刺激ぐらいにしかなっていません。
キチンとした歯磨きを習得するなら毎月、いや毎週でも指導する必要がありますが…そのペースでの歯科医院通いは現実的ではありませんよね。
ですから保護者の方には、ご家庭での復習や仕上げ磨きをぜひ、頑張っていただけたらと思います。
まとめ
- 学校などで状態の悪い人を見出す検診と個人の健康を診査する健診は、目的が違います。個人の健康維持には定期的な健診が重要です。
- 1960年頃の研究結果から、3か月に1回の定期健診が勧められています。小児では急性う蝕が多い事、またフッ素の使用の観点から、そのくらいの時間での検診が最も妥当だと思われます。
- 歯科医院でも指導しますが、定期健診のみの間隔では歯磨きテクニックの習得はなかなか大変です。家庭でも復習、仕上げ磨きをお願い致します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「歯ぎしり・食いしばり」のいろいろ
2020年9月24日
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
今日は、ブラキシズムのお話です。
ブラキシズムって聞いたことはありますか?
ブラキシズムとは、睡眠時や覚醒時を問わずに歯を動的、または静的にすり合せたり、噛み締めたりする癖のことを指します。
簡単に言えば、「歯ぎしり・食いしばり」のことですね。
原因としては、ストレスなどの複合的な要因とされています。
ブラキシズムは無意識に行われる癖であり、動作が行われる際には筋肉の異常緊張と、それに伴って、歯および歯の周りの組織への炎症性破壊、更には顎の関節に異常な負荷がかかってしまいます。
ブラキシズムの種類
ブラキシズムは、その動作形態により3つの型に分類されています。
グラインディング

上下の歯を臼の如くすり合わせる運動(臼磨運動)を行う癖を指します。
ギシギシと音を立て、歯に異常な力が働くので、歯質の崩壊を招きやすいようです。
睡眠時に多く、一般に呼ばれる「歯ぎしり」はグラインディングを指す事が多いとのこと。
クレンチング

上下の歯を静的に強く噛み合わせる動作のことです。
起きている時に無意識にやってしまっていることが多く、自覚症状はもちろん、他覚症状もほとんど無いために発見が遅れがちです。
タッピング

上下の歯を動的にカチカチと噛み合わせる動作のことです。
頻度としては夜間の出現頻度は8~16%、昼間も含めると8~34%と報告されています。
ブラキシズム(歯ぎしり・くいしばり)の治療法
ブラキシズムの治療法としては咬合調整、マウスピース療法、ストレスマネージメント療法などがあります。
マウスピースを使う
第一選択は、取り外しのできるマウスピース療法(スプリント療法)でしょうか。
咬合調整(かみ合わせを削ったり、盛ったりして調節する治療)は、歯を削ってしまったら戻りませんから、まずはマウスピースから始めることが多いです。
もっとも、削る必要が無く、盛る一択の咬合調整が必要な場合は、そちらから始めることもあります。この2つの治療法は、あくまで対症療法です。
マウスピースは短期的にブラキシズム抑制に効果があるようです。
ですが、すべての患者さんに有効ということでもないようです。しかし、歯を守るという点では効果が期待できる治療です。
歯より先にマウスピースが削れてくれますから、歯が保護されるんです。
あとは顎の関節への負担軽減にも役立ちますね。
ストレスマネージメント療法を行う
ストレスマネージメント療法については…「ストレス」が原因で起こることが多いブラキシズムですから、その元になるストレスを軽減させることができたら、もちろん一番良いとは思います。
が、そんなに簡単にストレスを減らせるなら、苦労は無いんですよね。
原因療法としては、あまり効果的な治療法は見受けられないようです。
ブラキシズムとは異なるのですが、TCHという考え方が近年注目されています。
TCHとは?

TCHというのは上下歯列接触癖の英語の頭文字をとったもので、
一日のうち上下の歯の接触している総時間が増えてしまう習癖を指します。
参考リンク
歯医者で「歯ぎしりか食いしばりがありそうですね」と言われたけれど、
思い当たる節がない…それは、TCH(歯列接触癖)かも!?
いろいろな影響を生じてしまう状態であり、顎関節症などへの原因となったりするようです。
これについては、また後日詳しくお伝えしてみようと思います。
まとめ
いかがでしたか?
- ブラキシズム(歯ぎしり・くいしばり)には、グライディング、クレンチング、タッピングの3種類がある。
- 治療法としては、マウスピースやストレスマネージメント療法などがある。
- はぎしりまでしていなくても、TCHといって上下の歯が接触する時間が長いだけでも、はぎしりと同じような、歯がしみたり痛みが出たり、顎関節症のような症状が出ることもある。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯医者さんで子どもさんの治療がはじまるまでに ~確認すること、約束すること~
2020年9月14日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。朝晩は少し涼しくなってきましたね。
最近つぼい歯科の小児歯科部門では、虫歯で来院されるお子さんが多くなってきました。
そこで今回は、歯科医院で、小さなお子さんの歯科治療の際に、特に気をつけているポイントについてお話ししようと思います。
言うまでもないことですが、歯科医院で歯を削る時…とくに幼いお子さんの歯を削らねばならないとき、悲しい気持ちになるものです。
やはり、予防が一番大事です。
お子さんの虫歯予防で一番大事なことは…よろしければ、過去の記事をお読みいただけたら嬉しいです。
参考リンク:乳児の虫歯予防のポイントは?歯磨きは何歳からがんばればいいの?
乳児の虫歯予防のポイントは?歯磨きは何歳からがんばればいいの?
要は、「食生活管理とフッ素と歯磨きを頑張りましょうね」というお話です。
優先順位は食生活管理が最優先です。
予防がテーマの記事は今までも沢山書いてきたので、
今回は治療をすると決まってから、問診票などを含め、歯科医師が見ている確認事項、保護者の方に注意して頂きたい事についてまとめます。
3歳未満のお子さんの場合、緊急性が無い場合は、成長をまってから治療したい。
2~3歳と4歳は治療への理解度・乳歯の治療予後は大きくちがう
発達において、2~3歳と4歳は大きく違います。
3歳はまだいやいや期ですが、4歳になるとある程度自制心がつきます。
これが歯科治療を我慢できることにつながります。
自分の気持ちも言える言語能力も付くため、まだまだ失敗することも多いですが、4歳以降は上手に歯科受診できる可能性があります。
また、歯根の完成度の問題(2~3歳の頃は、まだ乳歯が完成していなくて、神経の治療となってしまうような大きな虫歯の場合は予後が良くないことがあるのです)もあるので、歯科治療は少なくとも3歳、可能であれば4歳以降に行いたいと歯科医師は考えています。
2)アレルギーと持病の有無
お子さんに限りませんが、治療の前に確認すべきことに、アレルギーと持病があります。
大人と違い、アレルギー症状は非常に強く出る場合が多く、また持病も心臓疾患など重症なものを見かける場合が多いです。
また、大人は気分が悪くなったりアレルギー症状が出たときに、自分の身に何が起きているのか訴えることができます。
しかし、子ども、特に治療が怖くてパニックを起こして号泣しているお子さん場合、アレルギーによる気分不良かどうか、まず分かりません。
歯科医院におけるお子さんの死亡事故の場合、
「泣いて、泣きつかれて寝たのかな?」
と思ったら(アレルギー症状もしくは異物による窒息で)意識レベルが下がっていた、というケースが目立ちます。
したがって、これら2点は、子どもの場合は、生命の問題に直結する可能性があるので、とても重要です。
ちなみに4歳を超えると、パニックで号泣するケースは少なくなっていきます。泣くのですが「嫌だよ、やめさせてよ!」と保護者に訴えるための号泣が多くなります。
治療の必要性をお子さんご本人が理解し、協力してくれるようになれば、もし何かあった時でも「あれ?治療中だけど、いつもと様子が違う!?」と歯科医師や保護者の方が気づくこともできるのです。
3)苦手な部分をはっきりさせる
大人は、苦手なこと、止めてほしいことを、言葉で伝えることができます。
歯科治療に納得していないお子さんの場合は、何か特定の、特に嫌なことがあって、それを止めて欲しい場合でも「いや~~~やめて~~~」という表現になってしまうことも、少なくありません。
しかし、実は苦手な部分が、下記のどれかに偏っていることも多いのです。
触られるのが苦手な子、音が苦手な子、光が苦手な子
歯科治療においては、道具を多く使います。
体に多く触れたりするもの、振動が多い機械や、音がうるさい機械、術野を明るく照らすための光、どれもあります。
結局どれも使うのですが、その使用頻度は歯科医師がコントロールできます。
また、どれが苦手なのかは、保護者の方との会話の中で、ヒントを見つけられる場合が多くあります。
4)理解と約束
恐怖の多くは理解不足、知識不足からきます。
何がされるか分からないから、怖いのです。
例えば、
お化け屋敷も、明るくて良く見えて、どのタイミングで何が来るか分かっていたら、そんなに怖くないですよね?
それと同じです。
つぼい歯科では、最初の1回はトレーニングに充てています。
TSD法(テル・ショウ・ドゥー法 Tell Show Do=言って 見せて やらせてみる)という手法です。
系統的に経験させることで「理解させ」ることで、怖い気持ちにさせにくくする狙いがあります。
参考リンク:お子さんの歯医者さんトレーニングってどんなことをするの?
お子さんの歯医者さんトレーニングってどんなことをするの?
一度体験するとできることも多くありますし、できたことを保護者、歯科医師側(術者)の両方から褒められて、達成感を得て、次回もがんばる自信をつけさせるのです。
この達成感と自信が、次回につながります。
また、「子どもに嘘をつかない」声掛けを意識することも大切です。
『痛くないよ』などの声掛けは、少しでも「痛い」とお子さんが感じてしまった場合、術者との信頼関係が失われます。
麻酔などはどうしても最初は少し痛いので、100%痛くしないのは無理です。
つぼい歯科では、あらかじめその点を説明し、同意を得てから治療しています。歯科治療への理解と、これらの約束事が、次へつながります。
何卒ご理解をよろしくお願いいたします。
5)一回限りの治療で終わりではない。予防こそが大事。
虫歯になりやすいハイリスクの時期は、
- 離乳食の終了する3歳ごろ
- 第一大臼歯の生える6歳ごろ
- 永久歯に生え変わった後
の3回くらいです。
3-4歳で咬み合わせの面の虫歯を治したお子さんは、生活習慣が変わらなければ、5-6歳で、歯と歯の間の様子を見ていた部分が虫歯になるケースも多いです。
また、その時期に虫歯を進行させずにすんだとしても、中~高校性になって、部活でスポーツドリンクを飲んだりし始めて、急に虫歯を作ってしまうこともあります。
以上により、予防のためには、定期的なチェックとフッ素塗布が欠かせません。
ぜひ、むし歯ゼロで大人になるために、早期治療と、その後の管理(メンテナンス)を心掛けていただけると嬉しいです!
まとめ
いかがでしたか?
- 2-3歳と4歳は、発達状態や歯根の完成度などの大事な因子が大きく異なります。可能であれば4歳以降の歯科治療の方が良いです。
- 子どもの場合、アレルギーの有無と持病の状態は、生命の問題に直結する場合があり、大変重要です。
- お子さんによって苦手な領域は異なります。その因子を少し減らせば何とか治療を達成できる場合があります。
- 子どもの歯科治療は術者との信頼関係が重要です。その構築のために、歯科への理解と約束事があり、説明させていただいております。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
- 虫歯のピークは一つではありません。生活が変わらなかった場合、様子を見ていた部分が虫歯になることがあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
口の中が汚れていると、熱を出しやすくなってしまう!?「誤嚥性肺炎」のおはなし
2020年8月9日
こんにちは!つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
突然ですが、お口の中に少し唾液を溜めて、上を向いてみてください。
むせた方…それは「誤嚥」です!
誤嚥って何?
食べ物や飲み物でむせた経験は、あなたにもきっとあると思います。
人間の喉は、途中で食道(食べ物や飲み物を胃に送る道)と気道(空気を肺に送る道)に枝分かれしています。
喉頭蓋という、可動式のフタのような器官が「食べ物が食道に行くように、気道をふさぐ」ために、気管に食べ物や飲み物が行かないのです。
「むせる」とは、食道ではなく気道の方に、食べ物や飲み物が入ってしまったときに、気道から食道にむけて追い出そうとして起こる反応です。
「むせる」ことが出来るので、気管や肺に異物が入り込まないで済むんですね。
では、「むせる」ことが出来ないと、どうなるでしょうか?
気道に異物が入っても、「むせる」ことが上手にできなければ、肺炎になってしまう
高齢者になると、喉の筋力が低下して上手にむせることが出来なくなってしまう方も少なくありません。

肺炎は、高齢者ほど多く、さらに重大な結果を引き起こしてしまいます。
高齢者の肺炎のうち1/3程度が誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)と言われていますから、ご高齢の方にとってはとても身近な病気です。
人間が2足歩行に進化したために「誤嚥(ごえん)」するようになった
「そもそも、どうして食道と気道が合流しているの?」
「ほかの動物がむせているところ、そういえば見たことない…」
そうなんです。
誤嚥は人間が2足歩行となった弊害といえます。
2足歩行によって食べ物と、呼気が同じ所を通るように変化してしまった結果、人間の喉はとても複雑な作りになってしまっているのです。
自分でもできる「誤嚥性肺炎」予防法!
誤嚥(ごえん)により、口腔内細菌などが肺に入ることで起こる肺炎を、誤嚥性肺炎といいます。
歯垢(しこう、プラーク)の中には、大量の細菌が棲息していて、唾や食べ物・飲み物などを誤嚥することで、口腔内の細菌が肺に運ばれてしまうのです。
自分でも出来る「誤嚥性肺炎予防」というと、やはり口腔内の細菌数を減らすことが一番ではないでしょうか。
歯周病なども、口腔内の細菌感染です。
歯を残すことは、もちろんとても大事なのですが(80歳で20本以上の歯が残っている人の、要介護度は低いことがわかっています。
歯を減らさずにおくことは、健康寿命を伸ばすためにも、とても重要です!)
参考リンク:歯科と糖尿病、脳血管障害、要介護度は関係が深い!?あれこれ関わっているお口の病気
一方で、歯が多く残っているということは、しっかりとしたケアをしないと、汚れやすい環境を作りやすいと言うことでもあります。
1)誤嚥性肺炎予防は、歯磨きが基本です!
歯磨きの方法、苦手な部分に対する対処方法などを、歯科医院においてレクチャーを受けてみる、というのもおススメです。
歯磨きは子どもの頃からやっていますから、簡単に思っている人は多いのではないでしょうか?
では、あなたのまわりに「虫歯も歯周病も、1本もない!経験したこともない!」という方はおられるでしょうか?
おそらく、めったに居ないはずなのです。
統計上、日本人の8割以上の方が歯肉炎・歯周病を持っていることが分かっています。虫歯を経験した人も入れると、ほぼ100%に近くなると思います。
これらの病気にならないための歯磨きは、大人にとっても、とても難しいのです。
2)細菌数を減らす消毒成分を持つうがい薬もおススメです。
当院では、POICウォーターという次亜塩素酸水や、ネオステリングリーンというベンゼトニウム塩化物製剤のうがい薬を、よく使っていただいております。
3)管理の不十分な入れ歯も、誤嚥性肺炎のリスクとなります。
入れ歯の表面にも、細菌がカビはたくさん繁殖します。
適切なケア、手入れが必要です。
義歯ブラシでの洗浄と、義歯洗浄剤での消毒など、ちゃんとしたお手入れ方法があります。
もし、不安がある方はお気軽にご質問くださいね。
自分で出来ない場合は、プロ(歯科衛生士)に頼む!
介護が必要な方など、自力でのお手入れや、ご家族によるお手入れが難しい場合は歯科医師・歯科衛生士による訪問歯科診療をご利用いただくと良いでしょう。
口腔ケアのあるなしで、誤嚥性肺炎のリスクに違いがあるようです。
お口の中の専門家として、お手伝いできることもあると思いますので、気軽にご相談くださいね。
まとめ
- ご高齢の方の場合、口の中が汚れていると誤嚥性肺炎になりやすいです。
- 口腔ケアにより、誤嚥性肺炎のリスクを下げることができます。
- 歯磨き、うがい薬、入れ歯のケアなどが、口腔内の細菌数を減らすのに有効です。
- 自力での口腔ケアが難しい場合は、訪問歯科診療をご利用いただくのも良いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
永久歯が生えてこない原因は?
2020年8月8日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
夏ですね。これまでは「キンチョウの夏」といえば風情ある蚊取り線香を連想しましたが、今年はコロナ禍による「緊張(きんちょう)の夏」です…。
本当に、いつ終わるのでしょう…。
最近、『歯が生えない』などの相談をいただくことがあります。
レントゲンで調べてみると「もうすぐ生えそうです」という場合の方が多いです。
しかし、自力で歯が生えてくるには難しい状況のお子さんもいます。
歯が自力で生え変わる場合と、そうでない場合は、どう違うのでしょうか?
今回は、歯(特に永久歯)の生えない原因と対策について、お話していきます。
永久歯が生えてこない原因
そもそも歯の生えるスピードが遅い
歯は体の生理的な年齢を表すようなところがあり、第二次性徴の時期などに大きな影響を受けます。
背が伸びるのが早い子とゆっくりな子がいるように、単純に生えてくるスピードがゆっくりである、というケースです。
全体のレントゲンを撮影し、左右対称に観察して差がなければ、歯がなかなか生えてこなくても心配ない場合がほとんどです。
先行乳歯が早く抜けている
乳歯はダメージを受けた場合、早く抜けてしまいます。
特に大きな虫歯や怪我などにより神経の処置をした場合、うまくいっても一年程度早く抜けてしまう場合があります。
乳歯が早く抜けた部分は、骨(歯槽骨)も粘膜も治癒します。
しかし、これが生えてこようとする永久歯にとっては「少し硬め」であり「生えるために溶かすのに苦労する」という側面があります。
通常の生え替わりの場合、揺れている乳歯の下は、粘膜や骨があまりありません。
そして、乳歯の根っこが溶けてできたスペースに生えようとしている永久歯が収まっています。
それに比べて、「ちゃんと治癒した」粘膜や骨は、しっかり厚みもあります。
よって、永久歯にとっては溶かして生えるのが大変なのです。
このような場合は、自力で生えることを期待して様子を見る場合が多いです。
歯肉が邪魔をしている場合は、少し切れ目を入れて永久歯が生えやすくしてあげる処置をすることがあります。
永久歯が生えるスペースがない
「乳歯のうちはスキッ歯が普通」と、聞いたことはありませんか?
スキッ歯(空隙歯列弓)
実はこの隙間は、とても大事なスペースなのです。
乳歯に比べ永久歯は1.2~1.5倍も大きいため、この隙間を利用して永久歯と乳歯が生え変わっていきます。
ただし、スペースが足りなくなってしまう場合もあります。
それは大きく分けて、下の3つです。
- 乳歯のうちから「隙間がまったく無い(閉鎖歯列弓)」
- 「すでに歯が重なって生えている(叢生)」
- 永久歯が平均よりずっと大きiい場合など
その場合、スペース不足のひずみは犬歯の生えるスペースに偏り、八重歯となってしまうことがあります。
犬歯の頬側は骨の厚みがあり、歯も移動しながら生えるため、八重歯になりそうな場合は、生えるのが遅れることも少なくありません。
この場合、矯正も視野に入りますので、歯科での相談が必要です。
隣や近隣の歯に異常がある
隣の歯が矮小歯など、歯の成熟度や大きさに異常がある場合、隣の歯の萌出も遅れる場合があります。
どうして歯の萌出が遅れるのか、そのメカニズムは分かっていません。
また、過剰歯や歯牙腫など、異常な構造物がある場合、永久歯はすぐに生えることができなくなってしまいます。
この場合、手術を伴う矯正治療が必要となる場合が多いですので、歯科での相談が必要です。
「永久歯が生える」ということはかなり繊細
永久歯は、乳歯が早く抜けて骨がしっかりある、あるいは乳歯をケガしたことがある、などの「過去の出来事」でも生えにくくなったりします。
また、邪魔な構造物があってもダメ、顎骨の異常(弱い部分)があるとすぐに生える向き(萌出方向)を変えてしまう…と、とても繊細です。
気になりだして一般的に3か月~半年で生えないと、上に示したような異常が見つかる場合が多いです。
永久歯の自然に生える力があるのは、歯が生え始めて1年~2年ぐらいです。
そのタイミングを生かして、抜歯なり手術こみの矯正なりをすることが重要です。
手術や矯正などをお子さんが嫌がっているので、本来生え変わらないといけない時期になっている乳歯をいつまでも大事にする…、
ということも、小児歯科専門医として「あまり好ましくない」と感じています。
いずれにしても個別のケース分析が重要です。
定期的な歯科受診を受けることで、本来生え替わる時期に入っている乳歯が無いか、その乳歯は自力で永久歯に生え変わってくれるのか、管理することが重要だと考えます。
まとめ
いかがでしたか?
- 永久歯が生えない原因はいくつかあります。
原因に応じた処置が必要なので、生え代わりがスムーズに起きていない場合は、歯科医院で定期管理を受けましょう。
- あまり心配する必要がないものは、そもそも歯の生えるスピードが遅い、先行乳歯が早く抜けている場合で、レントゲン診査の結果様子を見る場合がほとんどです。
- 歯科での分析、外科や矯正などの処置が必要なのは、スペースがない場合と、隣や近隣の歯に異常がある場合です。
近隣の歯の異常は影響が大きい場合があります。
- 永久歯の萌出はかなり繊細で、邪魔な構造物があったりするとすぐに生えなくなり、顎骨の異常(弱い部分)があるとすぐに向きを変えます。
- 歯の萌出時期の半年~1,2年が非常に重要です。
タイミングを逃さず歯科医院にご相談下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お子さんの歯並びと8020(ハチマルニイマル)
2020年7月22日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
新型コロナウイルスの流行期、マスクをする時間が増えた方が多いのではないでしょうか?
マスクをしていると、口呼吸になりやすい
「マスクをすると口呼吸になりやすい」とよく言われています。
子どもの頃からこんなに長期間、マスクをする羽目になってしまった今のお子さん達が心配です。
顎や頭の骨が成長している最中の子どもが、口呼吸の癖をつけてしまうと、鼻(正確に言えば「副鼻腔」という、鼻と連結した空洞です)が十分に発達しません。
そのため、上顎が横に成長することができなくなり、
その結果、歯が前にあふれてしまう…。
つまり出っ歯さんになりやすくなってしまうのです。
歯並びが悪いと何が起こるのか、矯正のタイミングなどの質問にお答えします!
1)年をとった時に、自分の歯を残せない歯並びとは?
みなさんは8020(ハチマルニイマル)という標語はご存じですか?
「80歳で20本の歯を残しましょう!」という意味の言葉です。
なぜ80歳の時に20本歯が残っているのが良いのか?
80歳で20本の歯が残っている人は、そうでない人と比べて、要介護度が低く、高齢でも自活できる人の割合が高いと言われています。
東北大学の研究で、80歳で歯が20本以上ある人と0本の人を比較すると、寿命だけでなく、健康寿命を比較しても、男性で92日、女性で70日の差が出ました。
健康寿命というのは、寝たきりなどにならずに、自分の力で日常制限を受けずに生活できる寿命です。
また、20本歯が残っていれば、たいていのものを食べることができると言われています。
8020を達成しにくい歯並び
8020を達成しにくい歯並びの人がいることがわかっています。
反対咬合・開咬
2000年の東京文京区と千葉市の結果ですが、
反対咬合(はんたいこうごう:受け口)と開咬(かいこう:前歯が咬んでいない咬み合わせ)の人の8020達成率は驚異的に低く、ほぼ0%です。
反対咬合
開咬

共通しているのは、
奥歯で、すべての咬合力をほぼ支える咬み合わせであるという事です。
奥歯が抜けると徐々に前に…という負のスパイラルを生じやすいのです。
叢生
次点で問題のある咬み合わせは、
いわゆる叢生(そうせい:ガタガタの歯並び)です。
叢生は虫歯リスクの高さと関係があるようですが、個人差も大きい印象です。
叢生

2)お口ポカンを防ぎたい!噛み合わせを鍛える時期とは?
お口ポカンはなぜ悪い?
近年、お口がよく開いているお子さんが増えています。
お口がポカンと開きっぱなしになっていても、口呼吸になってしまいます。
また、歯並びが崩れてしまいます。
「お口ポカン」も、防ぎたい「悪い口の癖」と言えます。
前回の小児歯科学会学術大会でも、そのような報告が多くされています。
お口ポカンの原因は口輪筋の発達不全
お口周りの筋(口輪筋:こうりんきん)の強さが、その能力に大きく関係していると言われています。
研究によると、
口輪筋の強さは、3歳児では3ニュートン(N)、6歳児で6N、11歳で8Nまで上がりますが、12歳では8.5Nで、それ以降はあまり伸びていかないことが報告されています。
つまりは口輪筋の発達は、3歳から6歳が最も旺盛で、11歳ぐらいでその成長は落ち着いてしまうということです。その成長のピークに合わしてトレーニングするのが最も効率的と言われています。
口輪筋を鍛えてお口ポカンを改善する
お口ポカンを防ぐトレーニングについては、過去の記事をご覧くださいね。
あいうべ体操
3)子供時代に口腔機能の能力をしっかり高めて、高齢になっても機能低下しにくい口をつくっておく
口腔機能は乳幼児期で一気に発達し、成人期では変化が少なく、高齢期で低下します。
よって、まずすべきことは、
小児期(3歳~6歳、遅くとも11歳)ぐらいまでに口腔機能をできるだけ鍛え、ピークを上げることです。
将来的に問題が出やすい咬み合わせ(反対咬合、開咬、叢生)の治療も、そのころまでに治しておくことが、正常な発達の上で重要です。
高齢期で機能を落とさないやり方はいくつかありますが、最も大事なことは、歯と筋肉をなくさない、これに尽きます。
できるだけピークを上げて、成人期~高齢期ではメンテナンスを行い、機能を落とさないようにしていきましょう。
まとめ
- 口腔機能を保つためには、まず発達時期に適切に機能を発達させることと、そのピークを落とさないことが重要です。
- お子さんの口の機能の発達は、3歳から6歳までが最も旺盛で、11歳ぐらいまでは成長がみられますが、そこからは変化が少なくなります。
- 8020を達成しにくい咬み合わせは、奥歯で多くの負担をかけている開咬と反対咬合です。可能であれば11歳ぐらいまでに治療を行いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
保護者の方に知ってもらいたいこどもの歯科治療で注意すべきポイント
2020年6月20日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
新型コロナ禍の第一波もひと段落してきましたね。
しかし、油断は禁物です。
歯科業界では講習会や勉強会、研修会、学会にいたるまで、まだすべてオンラインになっています。
先日、小児口腔外科学会というオンライン学会に参加して、お子さんと歯科治療(特に外科的な事)についていろいろと新しい情報に触れました。
学会で旧知の先生方にお会いしたり、ディスカッションしたりする楽しみも捨てがたいですが、自宅でリモート学会に参加できるのも、地方在住の歯科医師としてはありがたいことです。
話がそれましたが、
今回はお子さんと歯科治療のお話について、ざっくばらんなお話をさせていただきます。
歯科におけるお子さんの処置で重要なこと
お子さんの処置にあたっては重要とされている鉄則がいくつかあります。
1) お子さんは処置後の治癒も早いですが、怪我や病気が悪化する際は、大人よりも早く、症状が強めに出ます。
例えば神経の処置などが当てはまります。
乳歯は永久歯と異なり、神経を悪い一部分だけ取り除く生活歯髄切断法というのがあります。
大人の場合、神経に一部でも感染が起きてしまうと、神経全てを取らないと腫れてしまうのですが、小児の場合は、神経の生命力が非常に強いので「悪いところだけ取る」ができるのです。
その位、乳歯の神経の生活力は強いのですが、虫歯が悪化した場合、大人よりも顔面の腫脹、発熱などの症状が強く出てしまいます。
2)症状がないけれど、発育上問題となる疾患もある
お子さんの40人に1人ぐらい(クラスに一人ぐらいのイメージ)で、上の前歯の根っこの間に過剰な歯が埋まっていたり、永久歯の萌出不全(生えるべき歯が生えてこない)などのトラブルが発生します。
痛みがない、けれども放置すると歯が生えてこなかったりする原因となる過剰歯や永久歯萌出不全。
「本来、歯が生える時期」を過ぎて放置してしまうと、治療が難しくなってしまいます。
このような場合は、過剰歯なり、萌出不全歯なりの状態の判定が最も大事です。
このままでも、ゆっくりながらでも自力で生えてきそうなのか、
積極的に歯が生える手伝いをしてあげないといけないか、
埋まっている歯の位置や、歯根の完成の程度を判定しないといけません。
つぼい歯科クリニックでは、まずは通常の歯科用レントゲンで歯の状態・位置を確認した後、必要に応じてCT(コンピューター断層写真)を撮影することもあります。
3次元的に位置を把握し、向きや場所、歯や神経との関係性をつかむことにより最短、最小の侵襲での処置を計画することが可能になります。
3) 適切な時期に適切な処置をすることが重要です。
(2)にも関わりますが、過剰歯などは年齢を重ねるにつれ、少しずつ移動していきます(=手術が難しくなります)。
したがって、自然に永久歯が移動する時期や、根の完成状態などから、成長を阻害せずにお子さんの自然治癒力が最も発揮されるバランスの良い時期を考えて処置することが重要です。
また「どこまで治療するか」も重要です。
特に萌出不全の場合は、歯列矯正でひっぱりあげないと自力で生えてくることが難しい場合があります。
歯茎に穴を開けるまでは保険で行うことが出来ますが、歯列矯正で引っ張るならば自由診療の範疇になってしまいます。
「いつまでに」「どこまで」治療するか。
診断と説明がなければ保護者の方も判断が難しいことでしょう。
以上のようにお子さんの場合、乳歯の特徴や成長発育、乳歯・永久歯の位置など検討すべき事項が多岐にわたります。
まとめ
いかがでしたか?
- 怪我や病気は、お子さんの場合は治癒も早いですが、状態が悪化する際には、症状が強く出ます。
- 近年のレントゲン撮影法の進化により、病気の部分を三次元的にとらえられるようになりました。そのような検査を用いて、最短の時間、侵襲での処置方法を考えることができます。
- お子さんの外科的な処置は、適切な時期に適切な処置をすることが最も重要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
むし歯の治し方について
2020年6月15日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
今回はむし歯をどうやって治していくかについてお話をしてみようと思います。むし歯は大きさによって治し方、治療法が異なってきます。
初期虫歯
まずは、小さいものから、穴も開いていないような、初期う蝕と呼ばれる状態があります。
歯の表面や間など白く濁ったような色合いになっている感じです。
参考リンク:削らなくても治る虫歯があるって本当?
この段階では、削って治すということは、しないことが多いです。
はみがきのアドバイスやフッ素塗布などで、むし歯の進行を妨げ、表面性状を正常化させることを目的とした治療を行います。
CR(コンポジットレジン)充填
次の段階の治療となると、CR充填と呼ばれるものとなります。
多くの場合、エナメル質の内側の象牙質と呼ばれる部分にむし歯が進行しているので、麻酔をしていきます。
その後にむし歯となっている部分を削っていきます。
基本的には、むし歯となっている部分はすべて削ります。
むし歯を削り終えているかの判定には、う蝕検知液(うしょくけんちえき)というものを用います。
う蝕検知液はすぐれもので、むし歯の部分が残ってないか確認したい部分に塗って水洗します。むし歯になっている部分のみに色が残るので、視覚的にむし歯の部分が残っていないか確認できるんです。
しっかりと確認した後で、削った部分を埋めていきます。
CR(コンポジットレジン)は歯科用のプラスチック樹脂に、フィラーと呼ばれるセラミック粒子などを混ぜたもので、特殊な光を当てることによって硬化が始まるようになっています。
それを削った穴に詰めていくというのがCR充填です。
こういった歯科治療の大敵となるのが、水分です。
患部を防湿処置して歯面の表面処理後にCRを詰めていきます。
形を整えて、光を当てて固めます。
硬化後に噛み合わせ、形態修正等を行い終了となります。
1日で治療が終わるので、前歯の小さな虫歯などには、CR充填が治療の第一選択になることが多いです。
インレー修復
もう少し大きいむし歯、詰め物のやり替えなどは、CR充填では心もとないことが多く、型を取って作る詰め物(インレー)で治療するケースが多いです。
インレーには、材質によっていろいろ種類があります。
当院の場合では、しっかりと説明させていただいて、患者さんの価値観に合わせて選んでいただいています。
インレー修復の流れ
治療の流れとしては、むし歯を取り除くとこまではCR充填と同じです。
虫歯が大きい場合は、神経を保護する処置をすることもあります。
そして、詰め物の必要とされる形態に歯を整えます。
被せ物やインレーの種類によって削る形が異なります。
形態が整いましたら、型採りをします。
インレーや被せ物は歯科医師が作るのではなく、専門職である歯科技工士さんがきっちりと作ってくれます。
修復物ができるまでの間は、仮歯や、仮の蓋をして待っていただくことになります。
修復物ができると、それを調整し接着して治療完了となります。
多くの場合、削って型採り→詰め物を装着する、の計2回で治療が終了します。
むし歯が大きくなるほどステップも増え治療回数も増えることになります。
歯冠補綴(被せ物)
さらに大きなむし歯だと、被せ物を作ることになることもあります。
被せ物と言っても、セラミック・銀・金・プラスチック・ジルコニア・金属+セラミックなど、様々な種類があります。
見た目の綺麗さ、自然さ、劣化しやすさ、汚れの付きやすさ、虫歯の再発しやすさ、アレルギーの起しやすさなど、材質によって特徴が異なります。
この辺りは、治療の際に直接説明を聞いたり、選んだりされると良いでしょう。
さらに、虫歯が大きいと神経を取らないとならないこともあります。
その話はまた次回以降にしてみようかと思います。
まとめ
- 初期むし歯は削らず、フッ素塗布や歯ブラシ指導が行わられることが多い。
- 小さなむし歯、特に前歯の小さなむし歯はCR充填が行われることが多い。
- 虫歯が大きくなってくると、型どりをして詰め物(インレー)を入れる治療になることが多い。
- さらに虫歯が大きくなると、型どりして被せ物(クラウン)が入る治療になることが多い。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。