保険適応の入れ歯(義歯) ~総入れ歯の場合~
2025年2月10日
保険適応の入れ歯(義歯) ~総入れ歯の場合~
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
今回は「保険の入れ歯」についての話題です。
日本では、歯を失った場合に保険で入れ歯を作ることができます。 入れ歯が合わなくなってしまっても、入れ歯を作ってから半年経てば新しい入れ歯を保険で作れる…という、世界的に見ても本当に恵まれた制度です。 しかし、保険で作れる入れ歯には、実はそれなりの制限もあります。 今日は、保険で作れる入れ歯にはどんな種類があるのか、どういった制限があるのかについて、詳しくお話ししたいと思います。
1 保険でカバーされる医療は、治療の選択肢の一部だけ

インプラントや歯列矯正が保険でカバーされないことは、よく知られています。 (正確には、癌で顎骨を除去した場合のインプラントや、唇顎口蓋裂や骨変形症の歯列矯正は保険でカバーされます)
保険治療は、使用可能な材料や決められた作り方、形態などが、非常に細かく決まっています。 詳しくは過去の記事をご覧ください。
保険も「入れ歯全体のうちの一部」が保険でカバーされています。
2 保険でカバーされる入れ歯ってどんなもの?
では、どんな入れ歯が保険でカバーされているのでしょうか? 今回は総入れ歯の実物の写真をご覧いただきます。

総入れ歯(左:保険の入れ歯 右:自由診療の入れ歯)
保険でカバーされる総入れ歯は、すべてが樹脂製のものです。
保険でカバーされない総入れ歯の代表的なものに、金属床義歯という、見えない部分が金属の板になっているものがあります。
一見、「金属使ってない方が良いんじゃないの?」と思われるかもしれません。
では、樹脂か金属かで、総入れ歯がどう変わるか、くわしく解説します。
樹脂か金属かで総入れ歯がどう変わるか ~上顎を覆う入れ歯の床部分の厚みが違う~

総入れ歯の床部分(上:保険の入れ歯 下:自由診療の入れ歯) 樹脂より金属の方が強度があります。
強度が高い分、薄く作ることができます。
薄い方が一般的に、装着した時の違和感が少ないです。
3.保険(樹脂)と自由診療(金属)の総入れ歯の違い
保険の総入れ歯の良い点
- ・樹脂製なので金属アレルギーの人でも安心して使用できる
- ・保険適応あり
- ・壊れても院内での修理がしやすい/その場で修理してもらえることも多い
保険の総入れ歯の残念な点
- ・金属に比べて強度に劣る
- ・床部分が分厚く、人によっては違和感が強い
- ・分厚い樹脂が食事の温度を感じにくくさせてしまう
自由診療の総入れ歯(金属床義歯)の良い点
- ・薄くて強度があるため、壊れにくい
- ・薄いため、違和感が小さい
- ・薄い金属は温度を良く通すので、熱いものは熱々のまま、冷たいものは冷えたまま味わえる
自由診療の総入れ歯(金属床義歯)の残念な点
- ・金属アレルギーの方にはおススメできない
- ・保険でカバーされない
- ・壊れにくいが、壊れた場合は預かり修理になることも多い
私の臨床上の経験では、「小さな総入れ歯を使いたい」とか、「熱々のラーメンや、キンキンに冷えたビールを、入れ歯になる前のように楽しみたい」という方が、金属床義歯を希望されます。
一般的に、入れ歯は小さいほうが違和感が少ないです。
4.金属床義歯以外の自由診療の入れ歯
4-1)インプラントオーバーデンチャー(インプラントで固定する入れ歯)
全ての歯をインプラントにするより、インプラントの埋入本数を減らすことができるため、総インプラントよりは治療費用を減らすことができます。
片顎2~4本のインプラントに、入れ歯を装着して用います。
*通常のインプラント治療の場合は片顎4~8本のインプラントを埋入する必要があります。
4-2)シリコンデンチャー(歯茎に触れる部分にシリコンクッションが入っている入れ歯)
痛みが少なく、安定感が高いのが特徴です。ただし、シリコン部分は他の樹脂部分(多くはアクリル樹脂)に比べて劣化しやすく、お手入れは必須です。
4-3)メッシュデンチャー(金属床部分にミクロの穴が無数にある入れ歯)
通常の金属床よりも味や温度が、さらに感じやすくなっている義歯です。
ただし、メッシュの入った金属床の強度は、通常の金属床義歯より劣ります。
これらの治療法は、保険の入れ歯に比べて自然な見た目、痛みがない、安定感があるなどのメリットがあります。
ちなみに当院では、自費の総義歯では金属床義歯を希望される方がほとんどです。
インプラントオーバーデンチャーは、部分入れ歯では「バネをなくしたい」というご要望で作ったり、既存のインプラントを再利用する形で作成することの方が多く、総入れ歯でのご希望は少ない印象です。
5.初めて総入れ歯を作るとき、保険か自費か、迷った時には?
少ない本数であったとしても自分の歯で食事をしていた人。
歯はぐらぐら揺れていたけれども、自分の歯で食事をしていた人。
このような人が、初めての総入れ歯を作る場合は、以下のような確認をされることをオススメします。
確認せずに入れ歯を作ってしまった場合、「違和感がすごい」「こんなに大変だと思わなかった」「思っていたのと違う」などの理由で、後悔をする人がたまにいます。
まずは、実際に触ってみて確認する
入れ歯を作る前に、入れ歯の模型を実際に触ってみて、厚さ、重さ、大きさなどを確認して、どの入れ歯だったらこれから使っていけそうかを考えてください。
そのうえで、まだ迷ってしまう場合は、特別な事情がなければ最初の1個は保険の入れ歯を選択しましょう。
保険の入れ歯の使用感に満足できないときに、改めて自由診療を考えれば良いと思います。
保険の入れ歯と自費の入れ歯では、上顎を覆う床の厚さ、精度、持ちの良さ、安定感、温度を感じられるかどうかなど、いくつもの違いはあります。
しかし、「保険の入れ歯でも我慢できる程度のものかどうか」は、実際に使用してみないと分かりません。
まず、保険の入れ歯で良いので、噛める入れ歯を作ってみることをおすすめします。
ちなみに、保険で入れ歯を製作して、気に入らなかったからと別の医院に行って、保険で入れ歯2個目をすぐに製作することはできません。
転院しても、新しい入れ歯を作るのは半年以上期間を開けないといけない、という保険のルールがあるからです。
まとめ
いかがでしたか?
- ・保険の総入れ歯は、経済的な負担を軽減する素晴らしい選択肢です。
- ・保険の総入れ歯は、治療の選択肢の一部であり、使用材料や製作方法に制限があります。
- ・保険の総入れ歯は強度や厚み、温度の感じやすさなどにおいて、金属床義歯に劣る点があります。
- ・保険の入れ歯か自由診療の入れ歯か迷ったら、まずは模型で確認してみると良いでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
当院の入れ歯治療
歯科助手のお仕事とその魅力~コンプライアンスを守って、安心安全な医療を。~患者さんへも自分たちにも〜
2025年1月20日
歯科助手のお仕事とその魅力~コンプライアンスを守って、安心安全な医療を。~患者さんへも自分たちにも〜
こんにちは!岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
今回は、歯科助手の仕事についてご紹介します。
歯科助手の役割や魅力、歯科衛生士との職務の違いなどをお伝えしたいと思います!
1.歯科助手の主な仕事内容
歯科助手は、患者さんが安心して治療を受けられる環境を整える、重要な役割です。
「国家資格が必要になる業務」以外のすべて業務のうち、それぞれの歯科医院で、お任せする業務を決めて行っています。よって、その業務はさまざまで、医院ごとにかなり差があります。
代表的な業務は以下の10個です。
1-1. 診療準備
患者さんの治療をスムーズに行えるように、治療に必要な器具や材料を事前に準備します。
当院は受付配属と診療室配属を完全に分けていますが、受付と診療室業務を兼任している歯科医院の方が多数派です。
1-2. 診療介助
歯科医師がスムーズに治療を行えるように、必要な器具や材料をチェアサイドに随時用意したり、患者さんの口腔内を吸引器で吸引したりします。
また、型を採るための印象材を練ったり、型に石膏を流し込んだりすることもあります。
1-3. 機材と物品の管理
治療に使用する器具や材料が、いつでも使用できるように管理することも重要な業務です。
器具の滅菌や保管、使用済み器具の洗浄、修理依頼、在庫管理や発注などを担当します。
小規模から中規模の歯科医院では、受付配属メンバーが滅菌消毒業務も兼任しているところも多いです。
当院は、受付配属メンバーは受付業務を専任で行っています。
1-4. 歯科医師のサポート業務
治療スケジュールの管理、カルテの整理、診療記録の入力を行います。
また、診療室や受付で、患者さんからの質問や相談もされることがあります。
その場でわかる範囲でお答えしたり、わからないことは歯科医師に確認してからお答えします。
1-5. 電話応対業務
患者さんからのお電話でのご予約のお申し込みや、変更に対応します。
診療内容やオペレーションを理解している歯科助手さんは、診療について理解していない受付専任の歯科助手さんと比べると、患者さんを可能な限り多く診療ができて、診療室スタッフに無理や危険が起こらない、上手な予約の取り方ができます。
当院は、電話業務は受付と診療室が分担して行っています。
1-6. 受付
窓口業務です。診察券や保険証の確認、問診票の記入補助、診療室への案内、会計業務などを行います。
保険診療を行う場合、保険証やマイナンバーの番号や期限の管理や、基礎的な保険診療のルールを知っておく必要があります。本格的な医療事務を目指す場合は、より深く保険のルールを学ぶ必要があります。
小規模の歯科医院では、診療介助業務と受付業務を兼任しているところの方が多いです。
1-7. 患者さんへのカウンセリングや治療の説明業務
歯科医師が行う医療面接とは別に、トリートメントコーディネーターやカスタマーサクセスとして、患者さんの価値観や治療の希望などを聞き取りしたり、相談相手になったりする業務です。
中規模以上の医療法人では、歯科助手の上位職種として、トリートメントコーディネーターやカスタマーサクセスを目指す人も多いです。
当院の場合は、数年の研鑽を積んだ、専任のマスタートリートメントコーディネーターが在籍しています。
トリートメントコーディネーターは、1日で認定資格が取れる協会もあれば、半年以上の研鑽が必要な協会もあり、レベル差が大きい資格です。
将来的に、診療室配属歯科助手・受付・保育士の上位職として、当院基準のトリートメントコーディネーターよりは、かなりチャレンジしていただきやすい、カスタマーサクセスを増やしていく予定です。
1-8. 院内環境の整備
清潔で快適な院内環境を保つため、掃除や備品の補充を行います。
1-9. 医療事務
保険算定の確認や修正を行う業務です。
医院によって求められるレベルが違います。
受付スタッフを医療事務と呼んでいるところもあれば、保険のルールに精通して、算定について歯科医師に意見ができる人を、医療事務と定義しているところもあります。
できることによって、収入も大幅に違っています。
当院の医療事務メンバーは、専門職を目指してトレーニングをしてもらっています。
1-10. MFT(筋機能療法)指導業務
歯科衛生士や保育士、管理栄養士が担当することも多いですが、歯科助手が担当する場合もあります。
お口の体操や、食事の姿勢などを指導する業務です。
当院では、保育士メンバーが行っていますが、ベテランの歯科助手メンバーは指導もできるようにトレーニングをしています。
2.歯科助手と仕事を分担する職種
歯科医院によって、受付・診療室業務すべてを行っているところもあれば、受付+滅菌、受付+医療事務、滅菌+準備+MFTを行っているところなど、組み合わせはさまざまです。
現在当院では、診療室配属歯科助手さんは、診療介助+物品管理+滅菌+診療準備をしています。
MFTは保育士さんが、受付は専任の受付配属歯科助手の人が、医療事務業務も専任の医療事務担当の人が行っています。
歯科助手は国家資格が不要です。
当院は未経験での入職大歓迎です。入職したメンバーの9割が、未経験からチャレンジしています。

未経験の方にとって仕事を覚えやすい環境づくりとして、できるだけ最初に担当する業務には集中して学んでいただけるようにしています。
診療室の業務を一通りマスターできたら、次のキャリアアップとして、受付・患者さんへの説明業務・MFT(口呼吸を鼻呼吸に改善するためのパーソナルトレーニング)・インプラント手術の介助業務・顕微鏡を使用した精密治療の介助業務、など担当範囲を広げていただくようにしています。
3.歯科衛生士と歯科助手の業務の違い
歯科助手は「国家資格が必要な診療業務」を行うことができません。
「相対的歯科医行為」と言われる仮の蓋を入れたり外したり、歯周病検査や歯石除去をしたり、といったことはできません。
また、これは法律で決まったことではなく、あくまで学会のガイドラインに過ぎないのですが、泣いて暴れるお子さんの虫歯治療をする際に、安全のために道具を使って抑えないといけないような場面では、歯科衛生士か歯科医師が(治療担当の歯科医師とは別に)1名、治療の安全確保のために必要とされています。
大学病院などでは、若い歯科医師や研修医が暴れるお子さんを抑える役をすることもありますが、一般開業医ではまず歯科衛生士が同伴することになります。
4.歯科助手を守る「コンプライアンス」
4-1. 法律と規則の遵守
業務範囲を正しく理解し、法令を遵守することが重要です。
4-2. 感染対策の徹底
器具の滅菌や院内の衛生管理を徹底することで、患者さんとスタッフの安全を守ります。
コロナ流行期に、飲食店ではクラスターが多数発生したのに、歯科医院ではクラスターはほとんど発生しませんでした。
歯科医院の日頃の感染対策があったからだと思います。
当院でも、最新の感染対策ガイドラインに基づき、定期的な研修を実施しています。
4-3. 働きやすい職場環境の提供
スタッフが安心して働ける環境を整えることも、コンプライアンスの一環です。
当院では、労働基準法を遵守し、残業ゼロに向けての取り組み、産休・育休取得支援などを行っています。

5.歯科助手として働く魅力
歯科助手の仕事は、患者さんの笑顔を支えるやりがいのある職種です。
以下のような魅力があります:
- ・未経験からでも始められる
- ・専門性の高いスキルが身につく/資格取得できる
- ・「ありがとう」と言ってもらえる仕事
5-1. 未経験からでも始められる
特別な資格が不要なため、未経験でも挑戦しやすい職種です。
5-2. 専門性の高いスキルが身につく/資格取得できる
日本に6万8713軒もある歯科医院・病院口腔外科の多くで、歯科助手経験者は優遇採用されます。
歯科の医療用語、印象材や石膏の扱い、吸引の技能、保険や滅菌の知識と経験が重視されるためです。
5-3. 「ありがとう」と言ってもらえる仕事
歯科助手という仕事は、医療現場の中でも特に患者さんとの距離が近く、直接「ありがとう」という感謝の言葉をいただける機会が多い職業です。
歯科治療に不安を抱える患者さんに寄り添い、優しく声をかけたり、治療の流れを丁寧に説明したりすることで、患者さんの緊張を和らげることができます。

6.歯科助手の仕事の「大変な部分」も正直にお伝えします
6-1. 立ち時間が長い
歯科助手の仕事は、基本的に立ち仕事が多いです。
6-2. 覚えることが多い
歯科助手の仕事では、治療器具の名前や専門用語を覚える必要があります。
7.まとめ:歯科助手を目指す方へ
歯科助手は診療補助、器具管理、受付業務などさまざまな業務で歯科医院で活躍しています。
未経験からでも始められ、国家資格は不要ですが、専門性の高いスキルや知識を身につけることでキャリアアップが可能です。
もし歯科助手の仕事に興味を持っている方がいれば、ぜひ一度チャレンジしてみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
低年齢の受け口治療 ~目立たない装置で、短期間で改善する!~
2025年1月9日
低年齢の受け口治療 ~目立たない装置で、短期間で改善する~
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
下の写真は、同一人物の口腔内です。

実は矯正装置を装着しています。どこにあるか、分かりますか?

答えは上顎の内側でした!
この患者さんは固定式の矯正装置で前歯の受け口を治療しました。
写真の症例について
- 治療期間: 11カ月
- 通院頻度: 月に1回
- 治療方法: SLAの装着
- 治療費用: 26万9500円(税込)
- リスク・副作用: 特に無し
以前、マウスピース(ムーシールド)で反対咬合を治療した記事を投稿しました。
ムーシールドの治療期間は半年です。
参考リンク:インスタグラム
https://www.instagram.com/p/C7lcuIAPfgq/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
「受け口の治療って結構、短期間で終わるんだな」と思われませんか?
これが早期治療のすごさです!
今日は、受け口の早期治療のことを、詳しくお話させていただこうと思います。
1. 低年齢児の受け口治療
3~5歳くらいまでの低年齢児の矯正治療がおススメな症例と、そうでない症例があります。
詳しくは、こちらの記事をご参照ください。
参考リンク:矯正の早期治療(3歳~)がおススメな症例とは?
2. 3歳前後に開始するのがおススメな症例
- 受け口
- 交差咬合(斜めに噛んでる)
- 下の前歯が上の前歯に完全に隠れて見えない(過蓋咬合)
- 歯が並ぶスペースが足りないのは明白という症例
この中でも、特に①②は、そのまま放置してしまうと顎がゆがんで発育してしまうケースが非常に多いため、早期治療がおススメです。
3. 受け口の自然治癒率
受け口は自然と治るケースもあります。
その確率は6~12%と、報告によってまちまちですが、いずれも低い確率である思われます。
自然治癒するケースは、
- ・受け口の程度が軽いもの
- ・反対に噛んでいる歯が4歯未満であること
- ・家族に同様の症状を持つ人がいないこと
などの特徴があるそうです。
つまり「ごく軽度の受け口」で「遺伝要因が無い」場合以外は、だいたい自然には治癒しないということなのです。
4. 受け口を早期治療するメリット
1. 成人の受け口治療と比較して、治療期間が短い
- ・多くの場合、成長期の半年~1年程度で治療効果が現れます。
- ・ただし、成長に伴う後戻りの可能性があるため、経過観察が必要です。
2. 顎の成長をガイドできる
成長期の顎の発達を適切な方向へ導くことができます。
3. 将来的な下顎骨の変形、上顎骨の劣成長を予防できる
- ・顎の成長が適切にガイドされることにより、骨格的な受け口を予防することができます。(遺伝性の場合は、この限りではありません)
- ・将来的に手術で受け口を治さなければいけないリスクを低くすることができます。
4. 口腔機能の適切な発達を促せる
受け口の場合、多くは低位舌を伴うことが多く、その場合は舌を挙上する動きが苦手であることが多いです。早期に矯正治療を行うことで口腔機能の発達不全を改善することができます。
5. バランスのとれた顔立ちになりやすい
口腔機能の発達不全や、骨格的な問題を予防することにより、バランスの取れた顔立ちになりやすい。
6. 心理的負担の軽減
思春期や成人になってから見た目のことで悩んだり、目立つ矯正器具を使わずに済む、という利点があります。
5. 受け口を早期治療するデメリット
1. 後戻りのリスク
ご家族・ご親族に受け口の方がいる場合は、遺伝性の可能性が高く、思春期成長の時期に後戻りすることが多いです。
2. 遺伝性の場合は追加治療の必要性がある
後戻りした場合でも、小児矯正をしないよりは軽症となることが多いですが、成人治療を追加で受けなくてはいけないケースが多いです。
3. お子様が嫌がることがある
本人は歯並びや容貌について、特に何も感じない時期なので、目的意識を持ちにくい側面があります。マウスピース型矯正の場合、モチベーションを維持できずに使用時間を守れないと、矯正の効果が発揮されないことがあります。
*ページ上部の写真のように、固定式装置で治療するなどの対策もあるので、マウスピース矯正は性格に合わない場合でも、対策は可能です。
6. まとめ
いかがでしたか?
- ・3~5歳児の受け口の早期治療は、短期間で効果が現れやすく、将来的な複雑な治療を回避できる可能性が高いです。
- ・大人になってからの受け口の治療は、長期化や外科的処置が必要になることがあるなど、大変です。
- ・10歳以上になると、小児矯正の治療効果が十分に期待できなくなるため、成人矯正のみで治療することをおススメすることも多いです。
お子様の成長期は、心も体も大きく変化しています。その中で、歯並びや顎の成長を正しくサポートすることは、健康な口腔環境・適切な口腔機能の発達、そして自信に満ちた笑顔や生活の質にもつながります。
「うちの子は、受け口っぽいけど大丈夫かな?」
「この程度はほっておいても、自然になおるかな?」
「治療が必要かどうかが分からない」
など、お子様の歯列について疑問がございましたら、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
歯科医師と歯科衛生士の業務範囲って、どうちがうの?
2024年12月16日
「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」
こんにちは!医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。今日は歯科衛生士と歯科医師の業務範囲の違いについての話題です。

1.現在の歯科医院には多くの専門職が在籍する
昔々は、歯科医院にいる専門職といえば「歯科医師」だけでした。1960~1970年代の多くの歯科医院では、歯の詰め物や被せ物、入れ歯などを自作していたので、15~16時で外来診療は終わり、その後の時間で院長先生が自分で技工物を作っていました。
1970年代に入ると、歯科衛生士が多くの医院に勤務するようになります(資格そのものは1948年にはありましたが、一般的な医院に歯科衛生士が勤務するようになるのには、少しタイムラグがあったようです)。1989年に歯科保健指導が歯科衛生士の業務に追加されると、歯科医院における歯科衛生士の役割はますます重要になっていきました。
そうした歴史的背景から、歯科医院の専門職と言えば「歯科医師」「歯科衛生士」と思われる方が多いと思います。
現在では、もっと多くの職種のメンバーが歯科医院に在籍しています。例えば当院では、国家資格者だけでも歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士のほかに、薬剤師・保育士・管理栄養士が在籍しています。国家資格以外の職種に、歯科助手・受付・医療事務のメンバーも在籍していて、いずれも専門性が高い業務を担っています。
今日はそんな「歯科医院の色んなお仕事」の中でも、歯科医師と歯科衛生士の業務について解説していきます。
2.歯科治療には「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の区別がある。
- ・絶対的歯科医行為:歯科医師のみが行うことができる医療行為のこと
- ・相対的歯科医行為:歯科医師の監督下であれば歯科衛生士も行うことができる医療行為のこと
具体的な絶対的歯科医行為(歯科医師だけが行うこと)
- ・治療計画の作成
- ・歯や神経の抜歯
- ・歯の切削
- ・歯茎の切開
- ・詰め物の充填
- ・被せ物の装着
- ・注射による麻酔(歯石除去のための麻酔以外)
- ・レントゲン撮影
具体的な相対的歯科医行為(歯科医師の指導下で歯科衛生士も行えること)
- ・歯周病検査
- ・歯石や歯の着色の除去
- ・ホワイトニング
- ・表面麻酔の塗布
- ・歯列矯正のワイヤー交換や装着
- ・仮歯の調整と仮着
- ・適切な教育が行われた場合に限り、歯石除去の麻酔は可能
3.法的にはどうなっているの?
絶対的歯科医行為と相対的歯科医行為の境界線は、実は曖昧です。厚生労働省の審議会などでも、ある特定のラインはある(人の体を切ったり削ったりするような)ものの、注射・麻酔・印象といった「特定行為(教育や実習を経て歯科衛生士による実施が可能となる行為)」というグレーゾーンがあって、その下に「歯科衛生士でもできる、明確な相対的歯科医行為」があるイメージです。ですから、歯科衛生士の業務は医院によって異なる(歯科医師の裁量による)ことも多いのです。

出典:厚生労働省審議会資料 医行為分類の枠組み(修正案)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002npzo-att/2r9852000002nq4x.pdf
4.相対的医行為のなかの「特定行為」 ~特に麻酔について~
歯科の世界で代表的な「特定行為」は麻酔ではないかと思います。
よく「歯科衛生士の麻酔はSRP時に限る」と言われますが、実際は法律にそういったことが明言されているわけではなく、特定の条件を満たした歯科衛生士が採血を行って、裁判で無罪になったケースもあります。麻酔では無く「採血」での無罪判決ですから「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の境界線がいかに曖昧かということが良く分かりますね。
5.当院の立場と考え
当院では歯科衛生士が麻酔を行うことはありません。
歯科衛生士が麻酔を行うことに反対の立場でそうしているのではなく、当院においては、運用上必要がないためです。
- ・当院には歯科医師が複数名在籍しているので、歯科医師が局所麻酔をしにチェアサイドにいくことが、さほど大変でもない
- ・エムラクリームという強力な表面麻酔を用いることで、SRP時に浸潤麻酔が必要となることが激減した。
そのうえで、歯科衛生士の麻酔についてどう考えているかと申しますと、
- ・歯科衛生士が麻酔できると、臨床のオペレーションがスムーズという事情は理解できる。
- ・歯科衛生士専門学校で麻酔についての教育がほぼ皆無である現状で、敢えて歯科衛生士が麻酔をする必要は無いのではないか。
- ・少なくとも一定の研修を受けたという資格は必要と考える。
という立場です。
実際、同じ立場の歯科医師は多くいます。
・「臨床歯科麻酔認定歯科衛生士(民間資格)」など必要な研修・教育を経て取得できる。
(民間資格なので、この資格がないと麻酔できない、というものではありません)。
・日本歯科麻酔学会と日本歯周病学会が連名で公開した「歯科衛生士による局所麻酔行為による見解」でも、「浸潤麻酔全般を現時点で歯科衛生士の業務とすることは困難であると考えます(中略)浸潤麻酔行為を含む歯科治療に積極的に関わろうとする歯科衛生士の活動は支援する」とされている。
よって、必要な教育・実習を経て、歯科医師の指導下で安全に処置する体制があれば、歯科衛生士のSRP時の浸潤麻酔はOKなのかもしれません。
個人的には、歯科衛生士の学校教育に麻酔が盛り込まれると、より安心かなと思います。
歯科医療の現場では、歯科医師と歯科衛生士がそれぞれの専門性を活かしながら協力することで、より質の高い医療を提供することができます。
「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」という境界線はありますが、それぞれの職種が互いの専門性を尊重し、補完し合うことが大切です。
当院では、このようなチーム医療の理念を大切にしながら、患者さんの健康を守るために日々努力しています。
現在、歯科医師および歯科衛生士の方を募集しております。
私たちと一緒に、患者さんの笑顔のために働きませんか?
ご興味をお持ちの方は、ぜひ当院の求人情報をご覧ください。
ご応募をお待ちしております。
つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 求人採用サイト
6.「絶対的歯科医行為」を行って歯科衛生士が逮捕されたケースはあるの?
調べた限りでは、歯科衛生士が絶対的歯科医行為を行って逮捕されたケースはみつかりませんでした。
一方で、歯科助手が絶対的歯科医行為や相対的歯科医行為を行ったとして逮捕された事例は、実際に存在します。
- ・歯科助手がスケーリングやSRPを行って書類送検されたケース
- ・歯科助手がレントゲン撮影を行って書類送検されたケース
- ・院長の妻(歯科助手)が形成を行って書類送検されたケース
- ・歯科助手が仮歯の装着および、診療報酬の水増し請求をしたとして逮捕されたケース
これらの行為は歯科医師法第17条に抵触します。
7.歯科業界のコンプライアンス
20年くらい前、私がまだ歯学生の時代は、今ほどコンプライアンスが重視されておらず、歯科助手がレントゲンボタンを押す…ようなことは、しばしば耳にする話でした。
しかし歯科医療の世界も、時代とともに進化し、法令遵守の意識が高まってきました。
無資格者による医療行為も、今では見られなくなりました。
しかし、歯科医療における行為の境界線は、依然として微妙な部分があります。
転職サイトなどで見かける情報の中には、求職者の不安を煽り転職を促す目的で、あえて誇張や誤解を招く表現を散りばめているものも散見します。
次回は「歯科助手のお仕事 ~コンプラ重視の歯科助手の職務とは~」というテーマで、より詳しく解説していきます。
この記事を最後までお読みくださった方は、歯科業界の方、歯科業界にご興味をお持ちの方だと思います。
歯科医療の世界で、法令を遵守しながら、患者さんのために最善を尽くす方法を考える機会になれば幸いです!
8.まとめ
いかがでしたか?
- ・歯科医療の専門性と役割分担が進化し、現在では多様な職種が協働してチーム医療を実践しています。
- ・歯科医師と歯科衛生士の業務範囲には「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の区別があるが、その境界線は曖昧な部分もあります。
- ・歯科衛生士による特定行為(例:麻酔)については、適切な教育と研修を経た上での実施が望ましいと思います。
- ・歯科業界は法令遵守の意識が高くなり、いまではコンプライアンス違反の話はほぼ耳にしなくなりました。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
「30代入れ歯女子」 その入れ歯治療は正しい?
2024年11月11日
「30代入れ歯女子」 その入れ歯治療は正しい?
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
最近、「30代入れ歯女子」というキーワードを耳にすることが増えてきました。
「30代で入れ歯かぁ…お気の毒に。いっぱい虫歯を作ってしまったのかな?30代で重度歯周病でも無いだろうし…」と思って、どんなことが検索されているのか調べてみました。
なんと驚くべきことに、「歯並びや歯の形が悪いのを、入れ歯で手早く綺麗に」というニュアンスの記事も多いんですね。
もちろん、ご自身の体験や、歯科医院の症例紹介などでは「ああ、これは抜歯も仕方なかったんだろうな」という症例も多いです。
しかし、「審美目的で」安易な抜歯を前提にしていると思われるコメントも散見されるため、今回は啓発の気持ちも込めて「その抜歯→入れ歯治療は正しいか、正しいとは言えないか」というお話をさせていただきたいと思います。
1. そもそも正しい歯科治療とは?
その人の健康寿命を延ばす治療であることが重要です。
抜歯は、歯の状態が悪く保存が難しい状態である場合や、目指すかみ合わせ・歯並びを達成するために止むを得ない場合のみに行うものです。


画像は同意を得て使用しております。
例えば、上記のような、骨に埋まっている部分が少なすぎて、手で触っても抜けそうなくらい揺れている歯は抜くしかありません。
いつ抜けるか分からない状態の歯を残すと、最終的な入れ歯やインプラントなどの「失った歯の代わりに入る補綴物」を新しく入れた直後に、残っていた歯を失う…ということになってしまうことがあります。そんなことになれば、せっかく作った補綴物が無駄になってしまいます。
こうした「もう助けられる状態を過ぎてしまった歯」を抜歯して、新たに「長く持つ、噛める入れ歯やインプラント」を入れることで、しっかり食事が出来るようにすることは、医学的に理にかなっています。
また、歯並びが悪くて、歯が並ぶスペースが無い場合、抜歯してスペースを作るしかない場合もあります。歯を間引くことでスペースをつくり、そのスペースで綺麗な歯並びにすることで、口を閉じることが出来るようになったり、虫歯や歯周病のリスクを下げることができたり、笑顔に自信が持てるようになったります。

画像は許可を得て使用しております。
もちろん抜歯せずに綺麗な歯並びにできるなら、抜歯すべきではありません。
歯を抜くデメリットと、歯を抜いた結果得られるメリットを十分に検討して、歯を抜いた方が予後良好と判断されるときのみ、抜歯矯正を行うことになります。
2.入れ歯を検討するときに抜歯が必要になる歯
- ・虫歯や歯周病が進行し、治療が困難な場合
- ・歯根が破折している場合
- ・歯の根が排膿していて、治療困難な場合
多くの歯科医院では、機能している歯はできるだけ残す、と言う方針で治療を提案していると思います。
3. 入れ歯と天然歯の「噛む力」の差
義歯の咬合力は天然歯と比較して大幅に低下します。
部分床義歯
天然歯の30~50%程度の咬合力
総義歯(総入れ歯)
天然歯の10~20%程度の咬合力
入れ歯は天然の歯よりは噛む力は弱いです。
しかし、ぐらぐらしている歯や、割れている歯に比べると咬みやすい、それが入れ歯。
ちなみにインプラントは天然歯の100%の咬合力(噛む力が変わらない)と言われています。
見た目の改善だけのために健康な歯を抜いて、入れ歯にすることは、「見た目は綺麗になって、食事も今までと変わらず」…ではない、ということです。
ちなみに、総入れ歯の高齢者の「よくある悩み」に、
- ・家族と同じものが食べられない
- ・旅先で食べれるものがあるか不安なので旅行を躊躇する
というものがあります。
合う入れ歯を作ること、定期的にメンテナンスを行うことで解決可能な悩みではあると思います。
しかし、それでも「お餅」「たくあん」などは、食べにくいとおっしゃる方が多いです。
4. 歯がないと、歳をとってから苦労する
80歳で歯が20本無い人は、ある人に比べて
- ・要介護になる可能性が9.9倍も高い
- ・認知症になる可能性が1.9倍も高い
- ・転倒リスクが2.5倍も高い
- ・健康寿命が短い
私達は人生100年時代に生きています。
今、手っ取り早く、安く見た目を綺麗にするより、将来にわたって豊かな暮らしを維持できるよう、歯を大事にすることをおススメします。
5.「歯や歯並びの見た目を綺麗にしたい」なら矯正治療や審美補綴(セラミック矯正)を選ぼう
歯列矯正(ワイヤー矯正・マウスピース矯正)
歯列不正を改善するための第一選択としておススメです。
歯のガタガタや出っ歯の程度が大きい場合は抜歯が必要になることもありますが、残った歯への負荷が小さく、仕上がりも綺麗です。
ただ、治療期間が長いこと、費用が高くなりやすいデメリットがあります。
審美補綴(セラミック矯正)
被せ物で見た目を改善する方法です。
歯を削るため、矯正治療よりは歯に負荷がかかります。
歯の根の位置は変えられないため、仕上がりは矯正治療より劣ります。
しかし、3つメリットがあります。
矯正治療より短期間で治療が終わります。
治療中も仮歯を使用することで見た目や食事はいつも通りで過ごせます。
費用が矯正治療よりは安価です。
6. 健康な歯の安易な抜歯は避けましょう
歯は一生もの。
自然な歯を大切にし、健康的な状態で保つことが理想です。
入れ歯は、自然な歯を失った後の選択肢ではありますが、できれば入れ歯を使わなくて済むようにしたいものです。
せっかくの健康な歯を抜いて、入れ歯にしてしまうのは止めましょう!
確かにお手軽に見た目は綺麗になるかもしれませんが、その後の健康や機能面でのデメリットがあまりに大きすぎるのです。
7.まとめ
いかがでしたか?
- ・抜歯は必要最小限に留めるべきです
- ・入れ歯の咬合力は天然歯より弱いです
- ・歯の喪失は将来の健康リスクを高めます
- ・審美目的なら矯正や審美補綴を検討しましょう
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
歯並びが治れば滑舌が改善する!?~滑舌と歯並びの関係~
2024年9月19日
歯並びと滑舌の関係
1. はじめに
こんにちは、つぼい歯科クリニックの院長 坪井です。
お子さんの滑舌が悪いことで悩んでいるお母さま方へ、今回は歯並びと滑舌の関係についてお話しします。
現代のお子さんの多くが、口唇や舌を正しく使えていないと言われています。
一般的に3割程度のお子さんが、舌や口唇を上手に動かすことが苦手な「口腔機能発達不全症」と言われていますが、小児歯科の臨床に携わる歯科医師の体感としては3割どころではなく、5~7割と感じています。
- 滑舌が悪い
- 舌の可動域が小さい
- 舌を挙上するのが苦手
- 風船を膨らますことができない
- 蝋燭を吹き消せない
- 普段から口が開いている
- 食事がとても時間がかかる
今回は、こうした「小児口腔機能発達不全症」の症状のうち、滑舌と歯並びの関係に焦点を当ててお話しようと思います。
2. 子供の滑舌と歯並び
歯並びが滑舌に与える影響は非常に大きいです。
歯の位置がずれていると、舌が正しい位置に動かず、発音が難しくなります。
例えば、歯並びの横幅が狭く、口蓋(上顎のお椀のような形態)が深い場合、舌を上に持ち上げて上顎に触れさせることが難しくなることがあります。すると「タ行」の発音が難しくなることがあります。
また、上の前歯が前に出っ歯となっていて、下の前歯との距離が大きく空いている場合、舌を上の前歯に擦って音を出す「サ行」が言いにくくなることもあります。
滑舌が悪いと、友達とのコミュニケーションに支障をきたしたり、コンプレックスになったりすることがあるため、可能ならば低年齢のうちに改善したいところです。
3. 歯列矯正の効果
横幅が狭く出っ歯型の歯並びと、正常な歯並びを見比べてみましょう。

横幅が狭く、出っ歯型の歯並び

正常な歯並び
横幅が狭くなってしまった場合、上顎が深くなってしまい、舌を当てるのが難しくなってしまいます。
こうして舌を正常に動かすことが難しい場合、ちょっと籠ったような発音になることが多いです(口蓋化構音)。
歯列矯正治療では前歯を引っ込めたり、(10歳以下の小児の場合は)急速拡大装置と呼ばれる、上顎の横幅をしっかり広げる治療などで、構音が難しくなってしまう原因を治療することができます。

急速拡大装置
4. MFTや言語聴覚士によるトレーニングの併用
歯列矯正だけでなく、筋機能療法(MFT)や言語聴覚士によるトレーニングも有効です。
当院は、口腔機能発達不全症のお子様が矯正治療を行う場合、ほぼMFTも併用しています。
*ただし、お子様の年齢が10歳以上の場合で治療効果が薄いと判断した場合は、ご自宅での簡単なトレーニングの指導のみとさせていただいています。
MFTについては、こちらの記事もご覧ください。
参考リンク:お口の機能発達は10歳までが勝負!
参考リンク:当院のMFTの様子(インスタグラム)
*インスタグラムは音がでますのでご注意ください
5. まとめ
いかがでしたか?
・滑舌と悪い歯並びには関係があり、歯並びを治すことで滑舌が改善することがあります。
・特に「タ行」「サ行」で特に改善が見られます。
・MFTや言語聴覚士によるトレーニングを併用した方が効果的です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
矯正治療は何歳から始めるのが一番良い?
2024年9月3日
矯正治療は何歳から始めるのが一番良い?

こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井文です。
今日は「矯正治療は何歳から始めるのが一番良い?」という話題です。
当院には、2~3歳のお子様から、60代くらいまでの方が矯正治療に通院されています。
大人になってからでも、多くの場合は治療可能です。
しかし、悪い歯並びは子供のうちに治してしまう方がメリットが大きいのも、事実です。
1)小児矯正の重要性
まず、小児矯正についてお話ししましょう。
10歳前後までの時期が対象の小児矯正を行う理由は、成長期を利用して顎の骨を正しい位置に導くことができるからです。
この時期に矯正を行うことで、将来的に抜歯を避けることができる場合もあります。
小児矯正の詳細については、別の記事で詳しく書いていますので、ご興味がある方はぜひ読んでみてくださいね。
★参考リンク★
成長を利用して治す小児矯正で「非抜歯矯正」!
2)小児矯正のデメリット
一方で、小児矯正にはデメリットも存在します。
例えば、治療期間が長くなることや、装置の管理が難しいことがあります。
また、子供自身が治療に対して積極的でない場合、治療がうまく進まないこともあります。
3)12~13歳以上の矯正治療
では、小児矯正の時期を逃してしまった12~13歳以上の方の場合はどうでしょうか?
人間の頭蓋は10歳前後で成長をほぼ終えるので、「矯正治療で顎を育てることができる」時期は終わっています。
しかし実は、「顎を育てる時期が終わっている12~13歳」でも、早めに治療した方が良い理由があるんです。
今回は、その理由を5つご紹介します。
4)早めに歯列矯正を行うことのメリット
4-1)治療期間が短い・歯が良く動く
思春期の成長期にある12~13歳の段階では、骨や歯が柔らかく、治療に対する反応が良いです。
この時期に矯正治療を開始することで、治療期間を短縮し、歯の動きを促進することが期待できます。
4-2)痛み・違和感が少ない
若い時期に治療を始めると、歯や口腔の状態がまだ柔らかいため、痛みや違和感が少なく、患者が治療に対して快適に適応できます。
4-3)社会生活への影響が小さい
思春期は学業や友情など、社会的な関係が形成される時期です。
この時期に治療を始めると、社会生活への影響が少なく、同世代との交流や自己表現がしやすくなります。
成人後に治療を始めると、仕事や社会生活において制約を受ける可能性があります。
特に飲食業や営業など、外見や口元が重要な職業に従事する場合、治療が難しくなることがあります。
4-4)加速矯正を行える
近年では加速矯正技術が進歩しており、治療期間をより短縮することが可能です。
思春期に始めることで、このような新しい技術を駆使し、より迅速かつ効果的な治療が行えます。
4-5)高校デビュー・大学デビュー・社会人デビューの時には綺麗な歯並びでいられる
思春期に治療を終えると、高校や大学、社会人としての新たなステージに綺麗な歯並びで臨むことができます。
「失った時間は取り戻せない」ため、思春期に治療を受けることで、将来の自分に自信を持って臨むことができます。
5)私の体験談:思春期の思い出を変える矯正治療
5-1)私の生まれつきの歯並びの問題
私は生まれつき、上の2番目の前歯が2本生えていました。
本来1本のところに2本生えているため、その部分の歯並びが乱れていました。
小学生2年生のころ、母に連れられて矯正相談に行ったことを覚えています。
母は矯正治療が保険適用外であることから、治療を受けさせるべきかどうか、非常に悩んでいました。
母は私に「文ちゃん、歯並び、気になる?治したい?」と尋ねました。
当時の私は小学2年生で、外見や歯並びについて何も気にしていない年齢でしたので、
「全然!このままでいいよ!」と答えました。
母が、ホッとした表情をしたのを、よく覚えています。
5-2)思春期の変化
しかし、思春期に入ると外見がそれなりに気になるようになりました。
笑ったときに上の前歯の歯並びが乱れていることがコンプレックスとなって、口元を隠すことが増えました。
小学生のころは、歯を見せて笑っている写真が多く残っていますが、中学生~高校生の頃の写真では、歯を見せて笑っている写真はほとんどありません。
5-3)矯正治療の決断
大学生になった私は矯正治療を受けたいと、強く思うようになりました。
毎日鏡で自分の顔を見るたび、歯並びが気になる…と思うのを辛く感じるようになっていましたし、
歯磨きを頑張っても、歯並びが乱れて歯が重なっている部分には虫歯ができてしまいました。
両親も私の気持ちを汲んで、
「もっと早くに矯正させてあげたら良かった」
と言ってくれて、晴れて歯並びを治療を受けることが出来ました。
5-4)もっと早くにしておけば良かった
治療が終わったとき、私は自分の笑顔に自信を持てるようになりました。
ただ、矯正治療をする前に虫歯になってしまった歯は元には戻りませんし、
口元を隠して過ごした思春期の時間も戻りません。
矯正治療は何歳からでもできますが、どうせやるなら、確かに早めが良かったなと個人的には思っています。
6)矯正治療を考えている方へ
矯正治療は何歳からでも始められます。
しかし、矯正をされる方の多くが、子供か、若い方です。
「どうせやるなら早いうちに始める方が、メリットが大きい」からです。
小児期から始めれば、抜歯を回避できる可能性が高くなり、
思春期から始めれば、治療期間を短縮し、痛みや違和感を軽減することができます。
大学時代から始めれば、社会生活への影響も少なく、将来の自分に自信を持つことができます。
迷っていらっしゃる方は、当院でも無料矯正相談会を毎月開催しておりますので、よろしければ一度相談に知らしてくださいね。
まとめ
いかがでしたか?
・矯正治療は何歳からでも始めることができますが、早めに始めることで多くのメリットがあります。
・治療期間が短縮されます。
・痛みや違和感が軽減されます。
・社会生活への影響が少ないです。
・将来の自分に自信を持つことができます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
歯科用CTで出来ること ~根管治療でCTって必要なの?~
2024年6月6日
歯科用CTで出来ること
~根管治療でCTって必要なの?~
こんにちは、医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
唐突ですが、歯科医院で使用するX線検査に関するクイズです!
CTが100とすると
デンタルレントゲンが55
パノラマレントゲンが28
さて、これは何を比較した数字でしょうか!?

答えは「歯の根尖病巣の検出力」
歯の根っこの先に、膿が溜まったりしてできる根尖病巣ですが、X線撮影の種類で検出力に大きな差があるんです。
根尖病巣や根管治療に関しては、こちらの記事をご参考になさってください。
さてさて、最近は歯医者さんでも、ときどき目にする「CT(コンピュータ断層撮影)」
歯科医院においての普及率(導入率)は10~20%と言われています。
CTという単語はご存じでも、
・実際に撮影を経験したことは無い
・医科では撮影したことあるけれど歯科では撮影したことが無い、
という方が多いのではないでしょうか?
今は歯科領域でも根管治療(歯の根っこの治療)や親知らずの抜歯、小児の歯の萌出不全、矯正治療、インプラント治療など、幅広い分野で活用されています。
今回は聞いたことはあるけれど撮影する機会はそれほどない、歯科用CTのお話です。
1)CTは何がすごいの?
CTはX線を使用して体の断層画像を撮影し、コンピューターを使ってそれらの画像を合成して立体的な画像を作成します。
CT画像は、骨や歯、血管や膿瘍などの内部構造を非常に詳細に観察することができます。
従来のレントゲンは3D(立体)のものを2D(平面)で見る、いわば影絵です。
CTは3Dのものを3Dで見ることができるため、病巣の位置や大きさなどを正確に把握することができるのです。
だからCTは
小さなフィルムで歯を数本単位で撮影するデンタルレントゲンの約2倍、
顎全体を検査して全体を把握するのに用いるパノラマレントゲンの約3倍もの
診断能力を持つんですね。
2)CTとレントゲンの、実際の見え方の違い
まず、パノラマレントゲンでの見え方です。
黄色で囲った部分と、青で囲った部分に注目してください。
黄色の方は、歯医者の目で見ても「もしかして根っこの先に根尖病巣があるかも…でも良く分からないな?」という感じ。青の方は、「問題無さそう」に見えます。

ではCTではどのように見えるでしょうか?


写真は本人の使用許可を頂いています
黄色も青も、どちらにも根尖に透過像(骨の密度が薄くなっている、もしくは骨が無くなっている像)が確認できます。
特に青の方は、病巣が歯の裏側(舌側側)に重なって存在しているため、パノラマレントゲンではまったく分からない、CTでないと検出できない病巣になります。
3)どうしてCTは他のレントゲンより詳細に分かるの?
CT以外のレントゲンは、いわば「影絵」。
被写体の厚みや詳細な形は分からないんです。

歯科医師は、歯の解剖学的な形が頭に入っているので、2Dのレントゲンを見たら「こういう像が写っているということは、きっとこんな感じになっていると思う」という感じで、経験則と統計データをもとに、本来の形を想像しながら治療をしていきます。
しかし影絵は影絵です。
たとえば、下記のような影絵を見た場合はどうでしょうか?

影絵だけを見た場合、
「シルエットからして、テディ・ベアかな?首に何かつけているようだな。テディ・ベアの首についている飾りだから、経験的にチョーカーかリボンかもしれないとは思うけれど。」
くらいは言えるでしょう。
しかし、リボンが蝶々結びされている、と見えているわけではありません。
まさにこれが、CTと他のレントゲンとの「見え方の差」なんです。
4)CT、デンタルレントゲン、パノラマレントゲンの違い
では、歯科領域のどんな病気もCTで撮影すべきか!?…というと、そんなことはありません。
それぞれの良い点、悪い点があり、歯科医師は症例によって使い分けています。
4-1)被ばく量とリスク
- 歯科用CT: 歯科用CTは、一般的なX線撮影よりも被ばく量が高くなります。とはいえ、医科用CTの被ばく量の1/10程度の0.04mSv程度。1年間に自然放射線で受ける被ばく量(平均2.4mSv)の数百分の1の線量になります。
- パノラマレントゲン: パノラマレントゲンの被ばく線量は、約0.005~0.03mSv程度。
- デンタルレントゲン: デンタルレントゲンの被ばく線量は、約0.005~0.01μSv(0.000005~0.00001mSv)程度です。非常に低い被ばく量です。
4-2)情報の正確さや情報量
- 歯科用CT: 歯や顎の詳細な構造を観察することができます。骨の密度や厚さ、歯の位置関係、根尖病巣の詳細は状態、歯にヒビや割れが無いかなど、より詳細な情報を得ることができます。
- パノラマレントゲン: パノラマレントゲンは全体の歯や口腔の構造を一度に撮影するため、全体像を把握することに適していますが、詳細な情報は得られません。根尖病変もある程度大きさが無いと判定できません。
- デンタルレントゲン: デンタルレントゲンは特定の歯や歯周組織を詳しく見ることができますが、X線の影絵である以上、CTよりは得られる情報は少ないです。
4-3)被写体の範囲
- 歯科用CT: 歯を数本だけ、顎骨全体、頭部や咽頭部までと、撮影したい範囲を選ぶことができます。
- パノラマレントゲン: パノラマレントゲンは口腔内全体~顎骨~顎関節までを撮影することができます。
- デンタルレントゲン: デンタルレントゲンは特定の歯や歯周組織を対象としており、口腔内の局所的な領域を撮影します。
4-4)保険診療で使用可能かどうか
- 歯科用CT: 保険診療では「3根管以上の複雑な根管を持つ歯」にCTを撮影して良いとされています。前歯の根っこの治療の場合、基本的には保険でCTを撮影することはできません。
- パノラマレントゲン:3部位以上の撮影部位があるときに撮影します。
- デンタルレントゲン:根管治療時に、もっとも一般的に使用されます。
パノラマレントゲンで顎の骨の状態や、虫歯や根尖病巣が無いかを全体的に確認して、
虫歯や根尖病巣を見つけたら、その部分だけデンタルレントゲンで再確認して、
デンタルレントゲンでも分かりにくい3根管の奥歯では必要に応じてCTを撮影する、
というパターンが多いです。
保険診療では、パノラマレントゲンやデンタルレントゲンで分からない場合にCTを撮影するので、最初からCTのみを撮影する、というやり方は認められていません。
5)CT、マイクロスコープ、Ni-Tiファイルは「根管治療の三種の神器」
*私が勝手にそう言っているだけです
影絵を経験則で補いながら治療するのと、実際に「見える」のでは、診断力に差がでます。
最近は、CT、マイクロスコープ、Ni-Tiファイルなどの先進機器が保険診療でも導入され、治療成績を上げてきています。
その他にもバイオセラミックスセメントにバイオアクティブガラス配合シーラーにと(日本で保険診療では使用できないものも含めて)どんどん技術・材料が進歩しています。
次回は根管治療とマイクロスコープについて、解説していこうと思います。
6)まとめ
いかがでしたか?
- CTは他のレントゲンに比べて、根尖病巣の検出精度が高いです。
- CTは被ばく量が他のレントゲンと比較すると多いです。
- 歯科用CTは医科用CTの1/10程度の被ばく量です。
- CT、パノラマレントゲン、デンタルレントゲンは症例に応じて歯科医師が使い分けています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
インビザラインのアライナー(マウスピース)の交換頻度は「7日」が基本
2024年3月5日
インビザラインのアライナー(マウスピース)の交換頻度は「7日」が基本
~4日・5日・7日・10日のバリエーションと、その理由~

インビザライン(Invisalign)は、歯列矯正を行う際に用いられる透明なマウスピース型の装置です。
従来の矯正装置であるブラケットやワイヤーと比べて目立たず、日常生活に支障をきたしにくいという利点があります。
インビザライン矯正の特徴については、こちらの記事もぜひお読みください。
参考リンク:マウスピース型矯正とワイヤー矯正の違いとは?
参考リンク:インビザライン矯正の魅力 便宜抜歯を回避できる
アライナー(マウスピース)を使用した矯正治療は、患者さんにとって利便性が高いため、とても人気です。
アライナーを効果的に使用するためには、適切な頻度でアライナーを交換することが重要です。
今回は、インビザライン矯正に関する「よくある疑問」として、アライナーの交換頻度について解説します。
1)アライナー(マウスピース)の交換頻度の基本は7日
一般的に、アライナーの交換頻度は7日間を基準としています。
7日交換の場合、4日間使用して歯を動かし、その後3日間は装着したまま歯を安定させるための期間として機能します。このサイクルを繰り返すことで、徐々に歯並びを整えていきます。
2)加速装置を用いて4~5日交換にできることも!
矯正加速装置は、アライナーを使用する際に歯をより速く動かすための装置です。
症例によっては、この装置を用いて4~5日で交換できることもあります。
矯正加速装置は元はインプラントが顎骨と早く結合させるために開発された機械で、骨のリモデリング(吸収と再生)を特殊な光や振動で活性化させます。
この装置を用いて4日交換で40代の方の矯正治療ができたという症例報告もあります。
ただし、若年者と比べて、30代以上の方はやはり歯が動く速度が遅くなる傾向があり、当院では30歳以上の方にはあまりおススメしておりません。
*30歳以上の方でも、7日交換で使用していただくことは良くあります。
*4日交換できなくても、加速装置を用いることでアライナーの浮き上がりなどが減った結果、トータルの治療期間が短くなることは多いです。
3)症例によっては10日交換となることもある
症例によっては歯をゆっくりと動かした方が良い場合もあります。
そのような場合は、アライナーの交換頻度を10日間に1回に設定することもあります。
以下は、10日交換となる可能性が高い症例の特徴です。
3-1)大きな歯の移動が必要な場合
歯並びを大幅に変える必要がある場合、ゆっくりとした動きが歯を過度に負担から守る必要があることがあります。
3-2)歯の傾きや回転が多い場合
特に、歯肉退縮しやすい症例(前歯をわずかに唇側に拡大しなければならない症例など)で、歯の元の傾きが大きい場合はゆっくり歯を動かす必要があることがあります。
3-3)歯茎や歯槽骨の健康状態が悪い場合
歯茎や歯槽骨の状態が良くない場合、ゆっくりとした動きをすることで、歯を健康に保ちながら歯列を改善することがあります。
これはあくまで当院の話ではありますが、10代~30代の方で10日交換をすることはほぼありません。
4)それ以外に交換頻度が変わることはある?
インビザラインなどのアライナー矯正では、IPR(歯と歯の間をわずかにトリミングすること)を行うタイミングが決まっています。
また、アタッチメントという、歯と同じ色の装置を歯に接着して歯を動かすのですが、何枚目でこのアタッチメントを新たに付ける、というタイミングも最初から決まっています。
この「タイミング」は「アライナー●枚目に交換する前」というタイミングです。
*何枚目でIPRやアタッチメント装着するかは、症例により異なります。
ただ、そのタイミングきっちりに歯医者さんに受診できるかというと…
・通院できるのは土曜だけ
・平日は18時以降しか通院できない
となると、IPRやアタッチメント装着のタイミングの前でアライナー交換が出来ずに、結果として交換頻度が下がってしまうことがあります。
ただ、アライナー矯正は始めた日から全日程が決まっている治療でもあります。
数回先の予定を確認して、複数回の予約をとったり、受診予定日のスケジュール管理をしっかりすることで、7日交換を維持することが出来ます。
IPRの頻度が多い症例の場合、こうした「受診スケジュールの管理」が治療期間を大きく左右することもあるんです。
アライナー矯正は「スケジュール管理」で結果的に治療期間を短くすることができるんです。
5)まとめ
いかがでしたか?
・アライナーの交換頻度は7日が基本です。
・加速装置を用いることで4~5日交換に出来ることもあります。
・症例によっては10日交換となることもあります。
・スケジュール管理をしっかり行うことで、矯正治療を早く終えることができます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
インビザライン矯正のよくある「後悔」と、そのリカバー法
2024年2月20日
インビザライン矯正のよくある「後悔」と、そのリカバー法
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
今日は「インビザライン矯正をやってみて後悔したこと」をご紹介しようと思います。
よくある後悔と、それに対する対策もありますから、ぜひ最後までお読みくださいね!
1)インビザライン(Invisalign)矯正の特徴
透明なプラスチック製のマウスピース(アライナー)を使って歯並びを調整する方法です。
従来の矯正治療と異なり、歯に金属のワイヤーや複雑な形態の装置が付かない、
食事と歯磨きの際はマウスピースを外せることが特徴です。
インビザラインの利点(長所)
・治療中の見た目が良い
・矯正していることを気づかれないことも多い
・装置が外れたなどで急患受診しなければいけないことが少ない
・マウスピースを外して歯磨きできるので、衛生的
・マウスピースを外して食事ができるので、食事制限が無い
・奥歯を動かすので、抜歯を回避できることも多い
マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いについては
こちらでも解説しています。
マウスピース型矯正とワイヤー矯正の違いとは?
ぜひお読みくださいね✨
しかし、インビザラインがすべての面でワイヤー矯正より優れているというわけではありません。
マウスピース矯正特有の、課題・短所もあります。
以下では、よくある後悔について詳しく説明します。
2)インビザライン矯正の「よくある後悔」

2-1) マウスピースの使用時間が長い
インビザライン矯正において、マウスピースの使用時間は「1日20~22時間」。
使用時間が長いというより、食事と歯磨き中だけ外せるって感じです。
使っていない時間は、歯が動かない時間ではなく「歯が後戻りする時間」です。
それもそのはず、従来のワイヤー矯正は「そもそも自分では外せない」のですから、
外せない、装置が付いている状態が「矯正中の標準の状態」なんです。
それを「食事中と歯磨き中だけは外せるようになった、画期的な矯正法」がインビザラインです。
食事中と歯磨きの時に外せる=「装置が取れにくい」「食事制限が無い」「歯磨きがしやすい」
ですから、矯正中の不快感は非常に少なくなりますし、
装置が外れたことによって急患来院しなくてはいけない回数もかなり減らすことができました。
一方で「装置をサボることが出来てしまう」という欠点も生まれました。
「寝る時だけつけてれば良いんでしょ?」
「1日の半分以上使っていれば十分長い時間頑張ってると思う」
みたいな感じで使ってしまうと、歯は動きません。
インビザラインのよくある失敗談に「装着時間が足りない」というパターンがあります。
お仕事でお料理の味見や、会食の機会が多い方に、この失敗パターンが多い印象があります。
当院でも、料理人の方にはワイヤー矯正の方をおススメしたりしています。
★対処方法
・お仕事で味見などが多い職種の場合は、最初からワイヤー矯正にする。
・外食や会食の機会が多い場合も、何時間もだらだら食事せずに、出来る範囲で食べる時間をコンパクトにする。
・矯正加速装置を併用することで、治療期間そのものを短くする。
★矯正加速装置とは?
歯に振動や光を与えることで、歯の周囲の骨のリモデリング(骨の吸収と再生)を活発化させる装置です。
元はインプラントが骨に結合するのを加速させる目的で開発されました。
若年者の場合は、7日交換のマウスピースを、4日交換にできるほど、矯正が加速されます。
この装置を使えば、1日のマウスピースの使用時間が短くなるわけではありません。
しかし、治療期間を短くすることができますから、「この期間だけは頑張ろう」と予定を立てやすくなります。
2-2) 前歯が思うほど下がらなかった
インビザライン矯正は、前歯を傾斜移動させることで歯並びを整えるため、前歯を後ろに引っ込める量には限界があります。
とはいえ、4㎜程度(条件があえばもっと)は前歯を下げることが可能です。
また、下顎のかみ合わせを前に動かすことで、上下の前歯の差を減らすことで、7~8㎜前歯が引っ込んだように見えます。
ただ、それでもワイヤー矯正よりは歯の移動の自由度が低いというのも事実です。
ですから、インビザライン矯正を行う場合は事前に前歯を引っ込める量をシュミレーションで確認していただいてから、治療を開始することとなります。
当院でもシミュレーションを見た上で「もっと、前歯が下がりませんか?」とおっしゃる患者さんには、便宜抜歯(矯正治療のために歯を抜く)をしたり、より自由度が高いワイヤー矯正に切り替えたりして、患者さんが最終的に目指したいゴールへ到達できる治療方法を選択していただいています。
しかし、PCでシミュレーションを見たときは「こんなに前歯が引っ込むなんて、素敵!」と思ったのに、いざ、治療が進むと「もうちょっと前歯を下げたかった」と後悔してしまう方も稀にいます。
「シュミレーションを見たときは、このくらい治るなら、見た目の悪いワイヤー矯正より目立たないマウスピースが良いと思ったけれど、やっぱり、もっと前歯が下がるプランにしておけばよかった」
せっかく頑張ってきたのだから、後悔は無いようにしたいですよね。
大丈夫です。
対処方法はありますので安心してください。
★対処方法
・ワイヤー矯正(便宜抜歯あり)に切り替える
当院ではこうした場合、目指したいゴール(前歯をどれだけ下げたいか、など)について改めて相談の場を設け、ご希望があれば便宜抜歯(横の歯を間引いく)ありのワイヤー矯正への切り替えをさせていただいております。
3)まとめ
いかがでしたか?
インビザラインは沢山の長所がありますが、
・マウスピース装着時間が長い(20~22時間)こと
・前歯を引っ込めることができる量が、ワイヤー矯正と比べると小さい
という側面があります。
十分な説明やシミュレーションを見て検討した上で治療開始しても
「もっと●●なハズだった」という後悔してしまうことも、無いとは言い切れません。
最初から後悔が無い選択をすることが最も大事ではありますが、
もし「思っていたのと違う」と感じた場合は、当院ではワイヤー矯正への切り替えをおススメしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。