保険の効く歯科治療と効かない歯科治療 その2
2016年10月18日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
今回は前回に引き続き、保険が効く治療と効かない治療のお話です。
前回、日本の保険制度、金銀パラジウム合金と金に関してお話をしました。
今回は、保険適応がされるものとされないものの基準について説明していきたいと思います。
最先端すぎる/研究的側面がある医療
最先端すぎる医療、研究的側面のある医療とは、まだ効果が十分に立証されていなかったり、論文が少なかったりする治療のことです。
私が広島大学病院の職員だった時、
「がんの治療前、治療中、治療後の患者さんの口腔管理をすることは、患者さんの上気道炎予防や口内炎予防に非常に効果的である」
と体感していた歯科医師は大勢いました。
しかし、本当に効果的であるという論文が少なかったので、がん患者さんの口腔管理に保険は適応されていませんでした。
そこで、複数の研究チームがこの問題を研究し、実際に効果的であるという論文が揃った結果、「周術期口腔機能管理」として健康保険が適応されるようになりました。
この、「体感では効果を感じるけれど、根拠となる論文が無い・少ない」状態の医療というのは本当にたくさんあります。
大学病院では各医局が新しい医療技術の開発を目指して行っています。しかしこれは、医療保険ではなく大学などの「科学研究費」で行うべき、というのが国の立場です。
民間の病院や医院でも、患者さんの同意のもと「自由診療」でこうした最先端・研究的治療を行っているところは多いです。
歯科領域ですと、歯周内科(抗生剤で歯周病を治す)などがこれにあたります。
他にも、アメリカで盛んにおこなわれている治療でも日本では実績が少ない治療法を自由診療で、なんてパターンもありますね。
審美的側面が強い医療(見た目の改善が主目的)
代表格は見た目を良くするための矯正治療です。
顎が手術が必要なほど変形している方は「顎変形症」、
生まれつき鼻と口がつながっているお子様は「唇顎口蓋裂」として、
保険で矯正治療を受けることができます。
他にも、いくつかの遺伝病などでは保険で矯正治療を受けることができます。
例外はありますが、「手術が必要なレベルか、そうでないか」が一つの基準と考えて頂いて良いかもしれません。
この基準では
「歯が前に出すぎていて口を閉じても歯が見えてしまう、ただし骨の手術をするほどではない」
のは、病気ではないことになってしまうので、自由診療となります。
他にも、別に虫歯ではないけれど前歯がガタガタしているのが気になるので、被せ物で綺麗に整えたい、というような「背景になる病気が無い治療」もこれにあたります。
より安価な方法で代用が効く医療
多くの「綺麗な詰め物・被せ物」がこれにあたります。
綺麗な詰め物・被せ物は審美的側面が強いから自由診療じゃないの?と思われる方もいらっしゃるとは思いますが、そうではありません。
例えば、奥歯の小さな虫歯に白い歯科用プラスチック(コンポジットレジンといいます)を詰める場合。
コンポジットレジンは白くて綺麗ですが、保険が効きます(ただし、適応症例を選びます)。
写真は本人の同意を得て使用しています。
また、横の歯(前から4番目と5番目の歯です)にCAD/CAM冠という、非常に綺麗な白い被せ物を保険で入れることができます。
白くて綺麗でも「安価なら」保険が効くのです・・・
http://www.tsubasadental.jp/
逆に、金の詰め物や被せ物など、虫歯の再発予防という点では他の追随を許さない非常に優れた材質のものでも、高価な材料は保険が効きません。
白い金属とも呼ばれるジルコニアは非常につるつるした素材です。
http://blog.livedoor.jp/abedentalclinic/
ジルコニアは硬いながらも、ツルツルすぎてお向かいの歯に咬耗(コウモウ:咬むことでお向かいの歯が削れてしまう状態)を起こさず、歯垢が付着しにくい性質があります。
よって、虫歯の再発が起きにくいという特性がありますが、やはり高価なので保険が効きません。
「金銀パラジウム合金」の詰め物で代用が効くとされています。
ここで「代用が効く」というのは、機能回復(咬めるようになる、食べられるようになる、など)に主眼が置かれています。
金・ジルコニアなど材料には
- 長期的に歯を守る特性
- 虫歯の再発が起こりにくい特性
- 白くて綺麗という特性
・・・それぞれの治療法・材料にはいろんな特性がありますが、その特徴の互換性は金銀パラジウムにはありません。
もちろん、保険の治療=良くない治療、というわけではありません。
安価であることも立派な特性・長所と言えますし、小さい虫歯などでは自由診療の材料と長期予後でも差が出ないこともあります
(奥歯の噛み合わせの溝だけにできた小さな虫歯の場合などでは、歯医者も自分の家族に保険材料のコンポジットレジンを詰めることも多いでしょう)。
大事なのは、治療や材料による特性を理解した上で、患者様ご本人が選ぶことなのではないかと思います。
当院では、ご希望の患者様には詰め物・被せ物の治療計画全体と、どういった材質・治療法が選べるのかについてカウンセリングを実施しております。
ご希望の方はお気軽にお申し出ください。
まとめ
保険が効かない治療は以下の通りです。
- 先進的でデータがまだ少ない治療
- 見た目を良くする目的の歯列矯正
- 機能を回復するために、安い代用療法がある
いかがでしたでしょうか?
次回は、当院で扱っている詰め物・被せ物の種類と、それぞれの特徴についてご説明いたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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