大人の歯の本数が足りない?!そんな時はどうすれば良いの?
2021年8月16日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
どうなるかと思っていた東京オリンピックが、無事に終わりましたね。
最近、診療室で生まれつき永久歯の本数が足りない、という症例について患者さんにご説明をすることがよくあります。
永久歯の歯の数のトラブルについては、一度ブログでも書いたことがあります。
参考リンク
永久歯の本数のトラブル(先天性欠損歯や過剰歯)について
今回は、歯の本数が少なかった時の対処法などについてのお話です。
人間の歯は退化している!
歯は人間の歴史においては退化傾向にあります。
縄文時代人の歯を見ると、親知らずと言われる第3大臼歯までしっかり咬んでいます。
しかも現代人より歯のサイズも顎のサイズも、全体的に大きいです。
旧人類に近いほど歯の山の部分(咬頭)が多く、大きく、複雑な形をしています。
現代人では親知らずがある人でも咬頭が少なく、小さくなっていく傾向(5咬頭→3→1に減少)にあります。
また、親知らず自体が生まれつきない人もいます。
それ以外では、前から2番目の前歯、5番目の小臼歯の欠損が多いです。
そして、上顎よりも下顎が先天性欠損は多い傾向にあります(2010年の日本小児歯科学会の調査による)。
画像引用 朝日新聞(2011年3月7日)
同調査によりますと、何らかの形で1本以上の歯がないお子様は現在10人に1人程度の比率となっています。
2018-19年に僕が当院で調べた時も、比率は同様でした。
10人に1人ですから、クラスに数人は歯の先天性欠損のお子さんがいる感じですね。
実際僕の近しい肉親にも永久歯が欠損している人がいます。
なので、歯の退化傾向をまさに実感しています。
原因は基本的にはわかりません。
遺伝、薬物(抗がん剤などの強力なもの)、栄養状態などが考えられています。
歯の先天性欠損の治療法や考え方(部位や本数別に)
1)乳歯の本数が足りない場合
乳歯でも先天性欠損はたまに見かけますが、基本的には様子を見ます。
顎は歯が押し合いながら大きくなっていきます。
よって、欠損があった場合、欠損がある側の顎が小さくなる傾向が確認されています。
2)永久歯の本数が足りない場合
・下顎の2番目の歯の場合
下顎の前歯の場合は、上下で顎の正中が合わなくなる、という欠点はあります。
しかし、そこまで目立たないということもあり、経過を観察する場合が多いです。
・上顎の2番目の歯の場合
上顎前歯は正中が合わないと、やや目立ちます。
矯正をおすすめすることが多いと思います。
・上下の5番目の歯の場合
小臼歯の欠損の場合は、先行乳歯が抜けないように保存することが大切です。
虫歯にさえならなければ、乳歯といえども根がしっかりしているので、30代ぐらいまではもつ場合が多いです。
歯並びが悪い場合は、残った乳歯を抜歯して、歯並びを整えることもあります。
ただし、歯並びが良い場合は、乳歯が抜けて出来たスペースを矯正で埋めきることが難しいこともあります。
・6本以上、歯の数が不足する場合
6本以上の多数歯欠損の場合、大学病院などに代表される、国の指定医療機関であれば矯正を行います。
2020年からはインプラントも条件によっては保険治療が可能となりました。
しかし、これだけの多数歯であれば矯正+補綴の治療を効率よく組み合わせる必要があります。
また、インプラントも矯正も子どものうちは出来ない治療です。
ある程度の年齢になるまで乳歯を使って、そのうえで長期的な治療プランを立てることになります。
「乳歯を使う」という選択肢が無くならないように、先天性欠損の場合は最終的な治療が出来るようになるまで乳歯を無傷で残す努力が必要です。
誰にでも起こりうる事態ですので「乳歯は生え変わるから」と軽く考えずに、赤ちゃんの頃から大事にしていきましょう。
・大人になってから永久歯の代わりに使っていた乳歯が抜けた場合
虫歯や歯周病で歯を失った場合と同じようにブリッジ、インプラント、義歯の治療を行うことになります。
まとめ
いかがでしたか?
- 永久歯の先天性欠損は近年増加傾向にあります。
10人に1人ぐらいは観察されています。その治療法や考え方は歯のない部位(欠損部)で異なります。
- 乳歯は大事に使えば長くもつ場合もあります。
また、多数歯がない場合は保険がきく症例も稀にあります(指定医療機関に限る)。
各個人の状況・時期によりベストな治療法が異なります。
歯が生え変わらない理由には、他にも「ただ単に生え変わりが非常にゆっくりなだけ」というケースもあります。
気になる場合は歯科医院で相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
子どもの発音、発声について
2021年6月5日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
最近診療時に、保護者の方から、お子さんの発音・発声などについて相談を受けることが多くなってきました。
発音、発声は「構音=目的の語音を出すためのメカニズム」によって可能になります。
今回は、お子さんの「構音」についてお話していきます。
どうして乳幼児の発音は舌足らずなの?それって問題ないの?
日本語の発音
日本語の発音は、母音(あいうえお)と、子音(カ行以降)の組み合わせで構成されます。
母音(あいうえお)の発音の舌の位置と、息をあてる位置
画像出典:https://field-music.com/vocal/2019-10-05
母音は舌の位置(前か後)によって、発音しています。
子音の発音
子音は声道に様々な強い狭めや閉鎖などの構音様式を母音と組み合わせて作られます。
画像出典: https://www.onecareer.jp/articles/2428
これらの構音様式の獲得の順序はおおよそ決まっています。
構音様式の獲得の順番
母音に近い音から習得していきます。
サ行・ザ行、タ行の中ではツ、ヅなどは発音が難しく、4歳以降に習得します。
それまではサ行などは近い別の音で発声します。
例えば、『ウサギ』が『ウタギ』などに聞こえます。
舌足らずに聞こえますが、発達の順番が正常であれば問題ありません。
3~4歳になると、しりとりゲームなどの言葉遊びによって自分で発音の違いに気づき、正しい発音に置き換えていきます。
発達障害か、口腔機能発達不全症か
発音の発達に問題があるのか、言語能力やコミュニケーション能力に問題があるのか
発音を気にする前に、言葉やモノに対する興味やコミュニケーション能力が正常な発達しているかが重要なポイントになります。
そのため、歯科以外の専門家にも、よく相談する必要があります。
コミュニケーション能力に問題が無く、お口の機能だけに問題があるお子さんの場合、口腔機能発達不全症である可能性があります。
その名の通り、口腔の機能が十分に発達していなかったり、発達が遅れていたりする状態です。
口腔機能発達不全症の場合に、よく見るべき3つの項目
1.口唇閉鎖不全(唇をしっかり閉じることが難しい状態)
口唇閉鎖不全には
- なんとなく、口がぽか~んと開いている場合(習慣性のもの)
- 上の歯並びが出っ歯さんで、唇が閉じにくいのが原因の場合(歯列不正によるもの)
- 鼻づまりで口呼吸をすることが原因の場合(鼻閉によるもの)
の3パターンがあります。
口唇閉鎖不全があると、起きること
- パ、バ、マの音が不明瞭になる
- 習慣性や鼻閉による口唇閉鎖不全でも、歯列不正につながりやすい
- ウィルス性疾患などにかかりやすい
口唇閉鎖不全の治療
- 歯並びを治す(唇を閉じれる位置まで前歯を移動させる。歯列矯正する。)
- 口回りの筋肉が正常に動くように、筋トレする(筋機能訓練:MFTを行う)
*MFTの最も簡単なものに「あいうべ体操」があります。
参考リンク:あいうべ体操
2.舌小帯の異常
舌小帯とは、舌の下の中央にあるヒダのことです。
舌小帯短縮症 (舌小帯が短い)
舌が自由に動ける範囲が小さくなり、タ、ダ、ナ、サ、ザ、ラなどの音が不明確になります。
ただ、舌は大きな筋肉であるため、代償的な発達がよくおこります。
そのため舌小帯に問題があっても、発音に問題がない場合もあります。
3.口腔悪習癖
口の悪い癖のことです。中でも、構音に特に関係あるのは舌突出癖です。
全体的に舌が前に出るために、構音の不明瞭さや審美的な問題が起きる場合があります。
口唇閉鎖不全、舌小帯異常、口腔悪習癖の3つは相互に関係している
人によって割合が異なりますが、上記の3つはお互いに関係していることが多いです。
治療法は、
- 矯正治療や舌小帯延長術で「原因を取り除く」
- 筋機能訓練で「正しい機能を得る」
正しい機能を得るための訓練は、発達段階にある10代前半までが獲得しやすいと言われています。
Withコロナ時代のマスク事情と口腔機能発達不全症
新型コロナ感染症予防のために、幼い頃からマスクをしている今時のちびっ子達。
マスクをしていると、より口呼吸になりやすいと言われています。
新潟大学の行った大規模な全国疫学調査があります。
日本人の子どもたち(3~12歳)のお口ぽかん率は30.7%であったという論文が、2021年1月に発表されました。
ひと昔前より、お口をぽか~んと開けてしまう子どもたちが増えたと言われています。
これらの症状は、成長とともに自然と改善することは少ないです。
気になることがありましたら、お気軽ご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 日本語は舌の位置と口唇などで構成される母音と、様々な閉鎖部を作ること(構音)によって音が決まる子音を組み合わせることにより構成されます。その発達の順序はおおむね決まっています。
- 構音の問題がお口にある場合、その原因として指摘されるのは口唇閉鎖不全、舌小帯の異常、口腔悪習癖などです。これらは相互に関係している場合が多く、正しい構音の獲得のためには、形の獲得(歯科矯正など)とともに、機能の獲得(トレーニング)が重要になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
子どものいびきについて
2021年5月20日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
5月中旬、気持ちのいい季節になりましたね。
ただ、この時期は朝晩の気温差が大きく、また黄砂が多い時期で、鼻炎・鼻づまりになりやすい時期でもあります。
今回は、鼻炎になりやすい季節によくある「いびき」の悩みについてお話していきます。
どうして「いびき」が出るの?
起きているとき、大人も子どもも呼吸音は出ません。
これは気道の確保が十分にできていることの表れです。
ところが、睡眠時は舌が重力によって気道を押し、気道が狭くなってしまいます。
気道が狭くなってしまうと、喉の部分でホイッスルのように音が出てしまいます。
これが「いびき」で、大人も子どもも音が発するメカニズムに違いはありません。
参考リンク)いびきの原因って?~音が鳴るメカニズム~
いびきの原因って?~音が鳴るメカニズム~
いびきには、様子を見ても問題ない「いびき」と、気にしないといけない「いびき」があります。
気にしなくて良い「いびき」、要注意な「いびき」
日本人は顎が小さく、体格的にいびきが起きやすいと言われています。
特に子供においては近年増加傾向にあり、習慣的にいびきをする割合が10%程度あると言われています。
気にしなくて良い「いびき」
要注意な「いびき」
- やや高い音
- 不規則なもの(たまに途切れるなど)
- 寝起きが悪い、日中眠気を覚える
要注意な「いびき」とは、睡眠時無呼吸症候群や、その予備軍のサインであることが多いです。
体内に十分な酸素が入っていっていないことが考えられます。
子どものいびきの原因は、アレルギー性の鼻炎、もしくはアデノイド・扁桃腺の肥大が多いです。
アデノイドは免疫を獲得する6-7歳で最も大きくなります。
通常であれば問題ないですが、免疫が過敏な子どもでは腫れあがり、いびきにつながることがあります。
アデノイドと歯並びの関係
アデノイドが腫れている子どもは、歯列不正が起きやすいと言われています。
面長(ロングフェイス)や下顎が小さく引っ込んだ顔を総称してアデノイド顔貌と言い、上顎前突(出っ歯)や叢生(歯並びがガタガタしている)が非常に起きやすくなっています。
アデノイド顔貌はここ10年ぐらいで、特に増えたと言われています。
その他の症状としては、アデノイドは耳管も閉塞するため、中耳炎が起きやすかったりします。
また、多くはないのですが、子供でも睡眠時無呼吸症候群が起きている場合があります。
子供の睡眠時無呼吸症候群
子供の睡眠時無呼吸症候群の発生率は1-2%程度と言われています。
1時間の中で、5回程度10秒以上の呼吸が停止している場合に、診断がつきます。
睡眠時無呼吸症候群外来や、小児の場合は小児科で検査することになります。
子供の睡眠時無呼吸症候群の問題点
- 日中も眠く、フラフラしてしまう
- 成長ホルモンの分泌が阻害され、発達や身長の伸びなどに問題が出る場合がある
このような状態でのいびきは大変に危険です。早めにご相談下さい。
まとめ
いかがでしたか?
- 日本人は骨格的にいびきをかきやすく、子どもにおいては増加傾向です。
- 10%程度の子どもがいびきをかいており、1-2%は特に重症の睡眠時無呼吸症候群を併発している場合があります。
- アデノイド、扁桃腺の腫脹が原因で起きるいびきでは、歯列不正を伴う場合が多いです。
- 睡眠時無呼吸を伴ういびきの場合、成長発達までかかわる重症な場合があり、注意が必要です。
思い当たることが…という方は、お気軽にご相談ください。
ご飯を食べる時にくちゃくちゃ音が出てしまうお子さんの話
2021年3月26日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
春ですね。春といえば花粉症です。前回も書きましたが、今年は大変です。ついつい口呼吸になっちゃいますね。
最近小児歯科学会のホームページを見ていると、お子さんの鼻の発達が悪くなってきた、口呼吸が増えたことが問題視されています。
背景に、マスクの使用があると言われています。
マスクを着用すると、どうしても口呼吸になってしまう方が増えてしまうんです。
口呼吸になってしまった結果、食べる時にくちゃくちゃ音が出る子が増えています。
「くちゃくちゃ」と唇を閉じずに食事する癖がついてしまうと、大人になってからマナー的な面で会食時に困ったり、コンプレックスになったりしてしまうかもしれません。
コロナ禍の現在、感染予防対策の面からも問題なので(口呼吸は免疫力低下の原因にもなってしまいます)学会としても注意喚起ポスターを配ったりしています。
今回は、口呼吸の原因と対策をまとめてみました。
口呼吸の原因と対策
1)歯並びが良くない
歯並びのバランスが良くないと、食事をする際に噛みやすい部分に歯を自然とずらしてしまうことになります。
また、かみ合わせた時に隙間があると食べ物を捕らえ辛く、同じように噛み合わせを自然にずらす際に口を開ける必要があり、音が出やすくなると思われます。
特に上顎前突と開咬でよく音が出やすいようです。
対策はやはり矯正することですが、併せて口周囲の筋肉を鍛えることが重要です。
上顎前突
開咬
2)鼻づまりによる口呼吸
口呼吸が主だと、ご飯を食べる時に大忙しです。
呼吸をしながら、咀嚼し、嚥下する。
実は、どれも同時にはできない構造になっています。
試しに、口で呼吸しながら唾を飲み込もうとしてみてください。
絶対に、できないんです。飲み込むその瞬間は、呼吸が止まります。
鼻が詰まった状態で食事をしようとすると、すべてが中途半端になり、結果的に音がたくさん発生します。
空気を飲み込む量も多い様です。
鼻呼吸が自然にできない人は、鼻、咽頭、喉や首、舌、唇の筋肉も弱い傾向にあります。
口呼吸を獲得するためには、鼻炎を治す治療をした上で、鼻で呼吸をするトレーニングも大事です。
有名な「あいうべ体操」や、夜間に鼻呼吸で睡眠するように口を軽くテープで止める方法などがあります。
参考リンク
あいうべ体操
https://tsuboidental.com/2019/04/20/incho-61/#i-6
3)ご飯に集中していない、食べる音をわざと立てて楽しんでいる
これは難しい問題を含んでいますが、ご飯の孤食も原因にあるようです。
子供はご飯の食べ方などは、周りの兄弟や大人を見ることで、適切な時期に「見て覚え」ます。
コロナも相まって、孤食が多い場合は、ご飯の食べ方が下手な子が多いようです。
具体的には、一口量が多い、スプーンやフォークなどの持ち方が正しくない、など。
また、食卓にご飯以外にテレビやスマホなどがあると、当然集中できておらず、「正しい食べ方を学習する」機会を失ってしまう原因になります。
一度、苦手意識ができるとわざと音を立てる子も出てくるため、悪循環が起きてしまいます。
基本的には昔ながらのやり方、つまり食卓のご家族で囲んで、家庭でのルール、マナーを再確認することが重要です。
学会からも、口呼吸や不正咬合などの個人の状態の問題と、孤食をしない、テレビを見ながら食べないなど、家族・家庭での問題を分けて考えるべきとされています。
まとめ
いかがでしたか?
- ご飯を食べる時にくちゃくちゃ音が出る子には、鼻が詰まって口呼吸が多い場合や、歯並びが悪い場合など、口及び口周囲の機能に問題がある場合があります。必要であれば矯正も考えます。
- 口の周囲の筋力の問題もあるので、鼻呼吸を獲得するための筋トレとして「あいうべ体操」がおススメです。
- 適切な時期に摂食が上手くならなかったことにより、ご飯の食べ方に苦手意識がある子もいます。家庭での食事時の状態を、生活の面からも見直すことも重要です。
歯科医院として治療が必要であれば支援していきますので、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯ぐきの色の話~赤・白・黒 この色、大丈夫なの!?~
2021年1月31日
あけましておめでとうございます。本年1回目のブログです。岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
最近患者さんから、歯茎の着色やほくろ状の黒点など、歯以外の粘膜の色や着色について質問を受けました。そこで今回は、歯以外の組織の色についてお話していきます。
歯茎や口腔粘膜の赤や白い「できもの」「潰瘍」「腫れ」などは、炎症に関係するものが多い
皮膚・粘膜の赤みが気になる時
皮膚・粘膜は充血したら赤くなります。
大きな虫歯や、歯をぶつけて怪我をすることで、歯茎の炎症がおこる場合があります。お子さんの場合は皮膚、粘膜の赤みと共に腫れや痛み、発熱などを伴う場合が多いです。
大人に関しては虫歯や怪我では基本的に同じですが、それ以外にも歯周病が進行しても、赤黒いブヨブヨした歯肉になります。
白いものの場合には、口内炎、歯の膿が原因の場合も
口内炎については、下記リンクの記事をご覧ください。
白い潰瘍が出来ます。
口内炎が多発している場合は麻疹などのウイルス感染の場合があります。
参考記事:口内炎の話。
口内炎の話
フィステル(歯根の先に溜まった膿が排出された出口=排膿路)といわれるものも、よく見られます。
その他に、珍しい「白い粘膜疾患」も
白板症
前癌病変と言われ、悪化すると癌化することがあります。
歯医者がメンテナンス通院されている患者さんの口腔をチェックするとき、こうした「良くない粘膜疾患」が無いかどうかもチェックしています。
口腔扁平苔癬
両頰に現れる白いレース状の慢性炎症性病変です。
40代の女性に多く、潰瘍などを伴うこともあります。
口腔カンジダ症
舌や上顎の内側などに、白いフワフワしたものが付着してくることがあります。この白いフワフワは「カンジダ菌」というカビの一種で、拭うと取ることが出来ます。お口の中の清掃と、お薬で治療します。
以上のように、
赤と白の場合は炎症などに伴う場合が多いので、口腔内と共に全身の状態をよくチェックして、歯科医院や病院など適切な医療機関を受診しましょう。
黒色には色んな原因が!
黒いものには、面積が狭い場合と、広い場合があります。
粘膜の黒い部分の面積が小さい場合
ホクロ
口の中の皮膚にも、ホクロはあります。
メラニン色素の沈着が原因で、ほとんどの場合は放置して問題ありません。
悪性黒色腫(メラノーマ)
「あれ?口の中の黒いホクロが大きくなってきた…?」と感じたら、すぐに歯科医院もしくは病院口腔外科に受診してください。
癌の一種である、悪性黒色腫の可能性があります。
平成26年の資料では、口の中の悪性黒色腫の5年生存率は20%以下と非常に低く、早期の専門治療が必要となります。
メタルタトゥー
歯科治療に用いる金属が溶けだして、金属イオンによって歯茎に入れ墨のような着色が起きてしまうことがあります。
メタルタトゥーは、銀とアマルガム(水銀化合物)によって起こることが多く、金属アレルギーの原因となることもあります。
見た目が問題にならない場合は、治療をしないことが多いです。
血豆
頬を噛んでしまったり、歯茎を強くぶつけたりすることで出来ます。
基本、手足の血豆と同じく、特に治療せずに治癒を待ちます。
粘膜の黒い部分の面積が広い場合
喫煙などによる着色
喫煙している場合、歯茎や粘膜は確実に黒くなります。また家族が喫煙している場合、副流煙などの影響があって黒くなる場合があると考えられています。
メラニン色素の沈着
メラニン色素の場合は肌の色に比例して黒い場合や、口呼吸に伴ってお口を開けてる時間が長く、粘膜も日焼けしているなどの原因が多い様です。
子供の歯茎や歯肉が黒いのは時々見られ、上記の様な日焼け、口呼吸、たばこの副流煙などの要素が影響しているのは感じます。
しかし、大学病院時代の同僚の先生の研究でも、完全な原因の特定までは至りませんでした。複合的に影響している可能性があると考えます。
黒い歯茎を治したい場合は?
悪性黒色腫は抗がん治療を病院口腔外科などで行うことになります。
その他の「色素が沈着しただけ」の場合には、いくつかの方法があります。
いずれも保険適応はされていない「審美目的」の治療の範疇になっています。
レーザーや薬品によって歯肉を変性させて、組織を再生させることにより脱色する
ホクロなどのメラニン色素沈着の場合は、口腔粘膜の浅い部分に位置しているので比較的簡単にきれいにできるようです。
女性の方で、美容皮膚科のレーザーによるホクロの除去を行った方は分かると思いますが、レーザーをパチパチと照射して、一過性にカサブタのようなものが出来て、それが自然と取れたら色が抜けている感じです。
一方、メタルタトゥーの場合は歯茎の深い部分まで入りこんでいる場合が多いので、除去できるかは状態によります。
子どもの歯肉の脱色治療はできますか?
おススメしません。
お子さんの場合、生活環境の変化や成長によって、口腔内の状態や粘膜の色まで変化していくので、着色も自然と減少する場合もあるからです。
物理的には可能です。
口内炎の痛みを取るためや、外科処置のためにお子さんにレーザーを使用することもありますから、医学的に禁忌であるという訳ではありません。
しかし、自然と消える可能性があるので、あまりオススメしません。
歯肉・歯茎の着色は、色と種類によって原因や状態が大きく異なります。
レアケースな場合も含め、口の粘膜の病気は上に書いた以外にも多くあります。
「これ、前からあったっけ?」
「これ、放っておいても大丈夫なモノ?」
と疑問を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
- 歯茎の一部が赤や白は、炎症や病的な状態に伴うものが多いので要注意です。
- 歯茎が黒い場合は、大きさや色合いによって原因が大きく異なります。メラニンの沈着や歯科金属のメタルタトゥーの場合は治療できる場合があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
キレイにしゃべる ~子どもの滑舌(かつぜつ)のためにできること~
2020年12月3日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
再び新型コロナの波が大きくなってきてしまいましたね。
資料を見ると、コロナについてもインフルエンザ同様、1日3回~4回歯磨きすると、感染予防になるようです。新しい生活様式の一つに歯磨きも入れていきましょう。
お子さんの定期健診の時に、滑舌などのしゃべる機能について質問を受けることがあります。今回は滑舌をテーマにお話していきます。
人間は赤ちゃんの時はみんな上手にしゃべれませんが、大きくなっていくにしたがって、上手にしゃべれるようになっていきます。
当然、その程度には個人差があります。中には滑舌トレーニングによって、発達を手助けしてあげた方がいい場合もあります。
1)上手にしゃべるってどういうこと?
上手にしゃべるということは、以下の定義ができます。
- 『あいうえお、あかさたな』とひとつひとつの音がはっきりしていて、一定のテンポを保ちながら発音ができる
- 言葉がつまる、噛んでしまうことがない
歯科で判断できるのは、特に発音についてです。
歯科では特に『さしすせそ、たちつてと』が気になります。
この2行の音については、舌がお口の中の正しいスタート場所(スポット、と言います)にあり、上手に舌を動かさないときれいに聞こえません。
口で呼吸する癖があったりすると、舌の筋肉が鍛えられず、この「スポット」に舌を当てることが難しくなってしまうことがあります。
すると、滑舌が悪くなってしまうのです。
こうした場合は、トレーニングによって舌の動きを改善してあげる必要があります。
2)舌の正しい動きとは?
舌の正しい動きはまずスタートポイント(スポット)に舌があることから始まります。
そもそも歯は、舌と唇に押されて、バランスが取れる位置に並びます。
舌の位置が正しい位置にないと歯は前に溢れだします。
骨格の影響もかなりありますが、前に歯が溢れだすと出っ歯さんや開咬(口を閉じても前歯が上下で当たらない咬み合わせ)になり、
舌がやや下よりに押し出すと受け口さんになります。
3)お口のトレーニングで鍛えたらどうなる?逆に、鍛えないとどうなるの?
牛タンなどを食べたことがある人なら良くわかると思いますが、舌は細かな、柔らかめの筋肉の集合体です。
舌のトレーニングとは、舌の筋トレです。
筋トレには筋力をつける(強い力を出せるようにする)ことと、機能を向上させる(動きを良くする)両面がありますが、舌、口周囲ではトレーニングすると機能がまず向上します。
また、機能が一定以上のレベルに達すると、舌や口の周りの筋力のバランスが取れて舌、口の周囲が「キュ!」とコンパクトにまとまります。
一方、筋力が足りない場合は、他の体のパーツでもそうですが、弱い一部分が大きく変形していきます。これが歯列不正の主たる原因です。
口輪筋(こうりんきん)という、口を閉じる筋肉の力が弱ければ、歯は前に飛び出て出っ歯さんとなってしまいます。
また、噛む筋肉が弱ければ、開咬(かいこう)といって、口を閉じても前歯が咬まない(奥歯しか咬めない状態)になってしまうのです。
参考リンク 歯並びが悪いのは遺伝ですか?その2 出っ歯編②お口ポカンについて
歯並びが悪いのは遺伝ですか?その2 出っ歯編②お口ポカンについて
4)口と口の周囲の筋トレをしようと決意しました!まずできることは?
簡単にできるトレーニングは3つです。
- 『イー、ウー』音を繰り替えすような体操
- 大きめなボタンを唇で挟み唇を鍛えるボタンプル
- 割りばしなどを噛んで大きく発音する割りばしトレーニングなど
人間は縄文時代には、1回の食事で4000回噛んでいました。
しかし現代では、1回の食事あたり噛む回数は600回程度と劇的に減少しています。
噛む回数の減少が、このような筋肉や機能の減退をひきおこし、様々なトラブルを起こしているのは間違いないです。
よく噛むこと、筋肉をトレーニングすることを意識していきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
- 上手にしゃべるということは、ひとつひとつの音がしっかり一定のテンポを保ちながら発音ができること、言葉がつまる、噛んでしまうことがない、と定義できます。歯科で判断できるのは、特に発音についてです。
- 舌の正しい動きはまずスタートポイントに舌があることから始まります。舌もしくは口周囲の筋がバランスよくないと、不正咬合が生じます。
- 現代になって食事の時の噛む回数が劇的に減少したことが、こういった不正咬合を引き起こしています。噛むことだけでなく、口周囲の筋肉をトレーニングすることも意識しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
永久歯が生えてこない原因は?
2020年8月8日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
夏ですね。これまでは「キンチョウの夏」といえば風情ある蚊取り線香を連想しましたが、今年はコロナ禍による「緊張(きんちょう)の夏」です…。
本当に、いつ終わるのでしょう…。
最近、『歯が生えない』などの相談をいただくことがあります。
レントゲンで調べてみると「もうすぐ生えそうです」という場合の方が多いです。
しかし、自力で歯が生えてくるには難しい状況のお子さんもいます。
歯が自力で生え変わる場合と、そうでない場合は、どう違うのでしょうか?
今回は、歯(特に永久歯)の生えない原因と対策について、お話していきます。
永久歯が生えてこない原因
そもそも歯の生えるスピードが遅い
歯は体の生理的な年齢を表すようなところがあり、第二次性徴の時期などに大きな影響を受けます。
背が伸びるのが早い子とゆっくりな子がいるように、単純に生えてくるスピードがゆっくりである、というケースです。
全体のレントゲンを撮影し、左右対称に観察して差がなければ、歯がなかなか生えてこなくても心配ない場合がほとんどです。
先行乳歯が早く抜けている
乳歯はダメージを受けた場合、早く抜けてしまいます。
特に大きな虫歯や怪我などにより神経の処置をした場合、うまくいっても一年程度早く抜けてしまう場合があります。
乳歯が早く抜けた部分は、骨(歯槽骨)も粘膜も治癒します。
しかし、これが生えてこようとする永久歯にとっては「少し硬め」であり「生えるために溶かすのに苦労する」という側面があります。
通常の生え替わりの場合、揺れている乳歯の下は、粘膜や骨があまりありません。
そして、乳歯の根っこが溶けてできたスペースに生えようとしている永久歯が収まっています。
それに比べて、「ちゃんと治癒した」粘膜や骨は、しっかり厚みもあります。
よって、永久歯にとっては溶かして生えるのが大変なのです。
このような場合は、自力で生えることを期待して様子を見る場合が多いです。
歯肉が邪魔をしている場合は、少し切れ目を入れて永久歯が生えやすくしてあげる処置をすることがあります。
永久歯が生えるスペースがない
「乳歯のうちはスキッ歯が普通」と、聞いたことはありませんか?
スキッ歯(空隙歯列弓)
実はこの隙間は、とても大事なスペースなのです。
乳歯に比べ永久歯は1.2~1.5倍も大きいため、この隙間を利用して永久歯と乳歯が生え変わっていきます。
ただし、スペースが足りなくなってしまう場合もあります。
それは大きく分けて、下の3つです。
- 乳歯のうちから「隙間がまったく無い(閉鎖歯列弓)」
- 「すでに歯が重なって生えている(叢生)」
- 永久歯が平均よりずっと大きiい場合など
その場合、スペース不足のひずみは犬歯の生えるスペースに偏り、八重歯となってしまうことがあります。
犬歯の頬側は骨の厚みがあり、歯も移動しながら生えるため、八重歯になりそうな場合は、生えるのが遅れることも少なくありません。
この場合、矯正も視野に入りますので、歯科での相談が必要です。
隣や近隣の歯に異常がある
隣の歯が矮小歯など、歯の成熟度や大きさに異常がある場合、隣の歯の萌出も遅れる場合があります。
どうして歯の萌出が遅れるのか、そのメカニズムは分かっていません。
また、過剰歯や歯牙腫など、異常な構造物がある場合、永久歯はすぐに生えることができなくなってしまいます。
この場合、手術を伴う矯正治療が必要となる場合が多いですので、歯科での相談が必要です。
「永久歯が生える」ということはかなり繊細
永久歯は、乳歯が早く抜けて骨がしっかりある、あるいは乳歯をケガしたことがある、などの「過去の出来事」でも生えにくくなったりします。
また、邪魔な構造物があってもダメ、顎骨の異常(弱い部分)があるとすぐに生える向き(萌出方向)を変えてしまう…と、とても繊細です。
気になりだして一般的に3か月~半年で生えないと、上に示したような異常が見つかる場合が多いです。
永久歯の自然に生える力があるのは、歯が生え始めて1年~2年ぐらいです。
そのタイミングを生かして、抜歯なり手術こみの矯正なりをすることが重要です。
手術や矯正などをお子さんが嫌がっているので、本来生え変わらないといけない時期になっている乳歯をいつまでも大事にする…、
ということも、小児歯科専門医として「あまり好ましくない」と感じています。
いずれにしても個別のケース分析が重要です。
定期的な歯科受診を受けることで、本来生え替わる時期に入っている乳歯が無いか、その乳歯は自力で永久歯に生え変わってくれるのか、管理することが重要だと考えます。
まとめ
いかがでしたか?
- 永久歯が生えない原因はいくつかあります。
原因に応じた処置が必要なので、生え代わりがスムーズに起きていない場合は、歯科医院で定期管理を受けましょう。
- あまり心配する必要がないものは、そもそも歯の生えるスピードが遅い、先行乳歯が早く抜けている場合で、レントゲン診査の結果様子を見る場合がほとんどです。
- 歯科での分析、外科や矯正などの処置が必要なのは、スペースがない場合と、隣や近隣の歯に異常がある場合です。
近隣の歯の異常は影響が大きい場合があります。
- 永久歯の萌出はかなり繊細で、邪魔な構造物があったりするとすぐに生えなくなり、顎骨の異常(弱い部分)があるとすぐに向きを変えます。
- 歯の萌出時期の半年~1,2年が非常に重要です。
タイミングを逃さず歯科医院にご相談下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お子さんの歯並びと8020(ハチマルニイマル)
2020年7月22日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
新型コロナウイルスの流行期、マスクをする時間が増えた方が多いのではないでしょうか?
マスクをしていると、口呼吸になりやすい
「マスクをすると口呼吸になりやすい」とよく言われています。
子どもの頃からこんなに長期間、マスクをする羽目になってしまった今のお子さん達が心配です。
顎や頭の骨が成長している最中の子どもが、口呼吸の癖をつけてしまうと、鼻(正確に言えば「副鼻腔」という、鼻と連結した空洞です)が十分に発達しません。
そのため、上顎が横に成長することができなくなり、
その結果、歯が前にあふれてしまう…。
つまり出っ歯さんになりやすくなってしまうのです。
歯並びが悪いと何が起こるのか、矯正のタイミングなどの質問にお答えします!
1)年をとった時に、自分の歯を残せない歯並びとは?
みなさんは8020(ハチマルニイマル)という標語はご存じですか?
「80歳で20本の歯を残しましょう!」という意味の言葉です。
なぜ80歳の時に20本歯が残っているのが良いのか?
80歳で20本の歯が残っている人は、そうでない人と比べて、要介護度が低く、高齢でも自活できる人の割合が高いと言われています。
東北大学の研究で、80歳で歯が20本以上ある人と0本の人を比較すると、寿命だけでなく、健康寿命を比較しても、男性で92日、女性で70日の差が出ました。
健康寿命というのは、寝たきりなどにならずに、自分の力で日常制限を受けずに生活できる寿命です。
また、20本歯が残っていれば、たいていのものを食べることができると言われています。
8020を達成しにくい歯並び
8020を達成しにくい歯並びの人がいることがわかっています。
反対咬合・開咬
2000年の東京文京区と千葉市の結果ですが、
反対咬合(はんたいこうごう:受け口)と開咬(かいこう:前歯が咬んでいない咬み合わせ)の人の8020達成率は驚異的に低く、ほぼ0%です。
反対咬合
開咬
共通しているのは、
奥歯で、すべての咬合力をほぼ支える咬み合わせであるという事です。
奥歯が抜けると徐々に前に…という負のスパイラルを生じやすいのです。
叢生
次点で問題のある咬み合わせは、
いわゆる叢生(そうせい:ガタガタの歯並び)です。
叢生は虫歯リスクの高さと関係があるようですが、個人差も大きい印象です。
叢生
2)お口ポカンを防ぎたい!噛み合わせを鍛える時期とは?
お口ポカンはなぜ悪い?
近年、お口がよく開いているお子さんが増えています。
お口がポカンと開きっぱなしになっていても、口呼吸になってしまいます。
また、歯並びが崩れてしまいます。
「お口ポカン」も、防ぎたい「悪い口の癖」と言えます。
前回の小児歯科学会学術大会でも、そのような報告が多くされています。
お口ポカンの原因は口輪筋の発達不全
お口周りの筋(口輪筋:こうりんきん)の強さが、その能力に大きく関係していると言われています。
研究によると、
口輪筋の強さは、3歳児では3ニュートン(N)、6歳児で6N、11歳で8Nまで上がりますが、12歳では8.5Nで、それ以降はあまり伸びていかないことが報告されています。
つまりは口輪筋の発達は、3歳から6歳が最も旺盛で、11歳ぐらいでその成長は落ち着いてしまうということです。その成長のピークに合わしてトレーニングするのが最も効率的と言われています。
口輪筋を鍛えてお口ポカンを改善する
お口ポカンを防ぐトレーニングについては、過去の記事をご覧くださいね。
あいうべ体操
3)子供時代に口腔機能の能力をしっかり高めて、高齢になっても機能低下しにくい口をつくっておく
口腔機能は乳幼児期で一気に発達し、成人期では変化が少なく、高齢期で低下します。
よって、まずすべきことは、
小児期(3歳~6歳、遅くとも11歳)ぐらいまでに口腔機能をできるだけ鍛え、ピークを上げることです。
将来的に問題が出やすい咬み合わせ(反対咬合、開咬、叢生)の治療も、そのころまでに治しておくことが、正常な発達の上で重要です。
高齢期で機能を落とさないやり方はいくつかありますが、最も大事なことは、歯と筋肉をなくさない、これに尽きます。
できるだけピークを上げて、成人期~高齢期ではメンテナンスを行い、機能を落とさないようにしていきましょう。
まとめ
- 口腔機能を保つためには、まず発達時期に適切に機能を発達させることと、そのピークを落とさないことが重要です。
- お子さんの口の機能の発達は、3歳から6歳までが最も旺盛で、11歳ぐらいまでは成長がみられますが、そこからは変化が少なくなります。
- 8020を達成しにくい咬み合わせは、奥歯で多くの負担をかけている開咬と反対咬合です。可能であれば11歳ぐらいまでに治療を行いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
保護者の方に知ってもらいたいこどもの歯科治療で注意すべきポイント
2020年6月20日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
新型コロナ禍の第一波もひと段落してきましたね。
しかし、油断は禁物です。
歯科業界では講習会や勉強会、研修会、学会にいたるまで、まだすべてオンラインになっています。
先日、小児口腔外科学会というオンライン学会に参加して、お子さんと歯科治療(特に外科的な事)についていろいろと新しい情報に触れました。
学会で旧知の先生方にお会いしたり、ディスカッションしたりする楽しみも捨てがたいですが、自宅でリモート学会に参加できるのも、地方在住の歯科医師としてはありがたいことです。
話がそれましたが、
今回はお子さんと歯科治療のお話について、ざっくばらんなお話をさせていただきます。
歯科におけるお子さんの処置で重要なこと
お子さんの処置にあたっては重要とされている鉄則がいくつかあります。
1) お子さんは処置後の治癒も早いですが、怪我や病気が悪化する際は、大人よりも早く、症状が強めに出ます。
例えば神経の処置などが当てはまります。
乳歯は永久歯と異なり、神経を悪い一部分だけ取り除く生活歯髄切断法というのがあります。
大人の場合、神経に一部でも感染が起きてしまうと、神経全てを取らないと腫れてしまうのですが、小児の場合は、神経の生命力が非常に強いので「悪いところだけ取る」ができるのです。
その位、乳歯の神経の生活力は強いのですが、虫歯が悪化した場合、大人よりも顔面の腫脹、発熱などの症状が強く出てしまいます。
2)症状がないけれど、発育上問題となる疾患もある
お子さんの40人に1人ぐらい(クラスに一人ぐらいのイメージ)で、上の前歯の根っこの間に過剰な歯が埋まっていたり、永久歯の萌出不全(生えるべき歯が生えてこない)などのトラブルが発生します。
痛みがない、けれども放置すると歯が生えてこなかったりする原因となる過剰歯や永久歯萌出不全。
「本来、歯が生える時期」を過ぎて放置してしまうと、治療が難しくなってしまいます。
このような場合は、過剰歯なり、萌出不全歯なりの状態の判定が最も大事です。
このままでも、ゆっくりながらでも自力で生えてきそうなのか、
積極的に歯が生える手伝いをしてあげないといけないか、
埋まっている歯の位置や、歯根の完成の程度を判定しないといけません。
つぼい歯科クリニックでは、まずは通常の歯科用レントゲンで歯の状態・位置を確認した後、必要に応じてCT(コンピューター断層写真)を撮影することもあります。
3次元的に位置を把握し、向きや場所、歯や神経との関係性をつかむことにより最短、最小の侵襲での処置を計画することが可能になります。
3) 適切な時期に適切な処置をすることが重要です。
(2)にも関わりますが、過剰歯などは年齢を重ねるにつれ、少しずつ移動していきます(=手術が難しくなります)。
したがって、自然に永久歯が移動する時期や、根の完成状態などから、成長を阻害せずにお子さんの自然治癒力が最も発揮されるバランスの良い時期を考えて処置することが重要です。
また「どこまで治療するか」も重要です。
特に萌出不全の場合は、歯列矯正でひっぱりあげないと自力で生えてくることが難しい場合があります。
歯茎に穴を開けるまでは保険で行うことが出来ますが、歯列矯正で引っ張るならば自由診療の範疇になってしまいます。
「いつまでに」「どこまで」治療するか。
診断と説明がなければ保護者の方も判断が難しいことでしょう。
以上のようにお子さんの場合、乳歯の特徴や成長発育、乳歯・永久歯の位置など検討すべき事項が多岐にわたります。
まとめ
いかがでしたか?
- 怪我や病気は、お子さんの場合は治癒も早いですが、状態が悪化する際には、症状が強く出ます。
- 近年のレントゲン撮影法の進化により、病気の部分を三次元的にとらえられるようになりました。そのような検査を用いて、最短の時間、侵襲での処置方法を考えることができます。
- お子さんの外科的な処置は、適切な時期に適切な処置をすることが最も重要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
触れることと咀嚼・嚥下~歯科的な見方から~
2020年6月13日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
皆さん、元気に過ごされていますか?
「4歳になるのに、子供が歯磨きをいつまでも嫌がる」
「特定の場所を触ると嫌がる」
「肌ざわりが悪いと猛烈に嫌がる」
「食感が苦手で食べないものがある」
これ、すべて「触覚過敏」によるものだって、ご存じでしたか?
今日は、幼児の発育と「触覚過敏」と、体のこわばりについてのお話です。
触覚過敏と体のこわばり
1) 体のこわばりと、感覚器
人間の体には、感覚をつかさどる感覚器と、運動機能をつかさどる筋肉があり、この2つがバランスを取って体の仕組みを作っています。
感覚が鈍くなると筋肉を動かすことが難しくなり、
また敏感すぎると筋肉がこわばってこれもまた動かなくなります。
この仕組みは体の発育と共に育っていきます。
感覚器である目、鼻、口が集中する中心部分の感覚が最も鋭敏です。
またその機能も中心から(末端に向けて)順番に発達していくなどの一定のルールがあります。
2)頸部の筋肉のこわばりと、嚥下とむせ
食事や飲み物を飲むとき、あるいは唾をむせたりすることがあります。
「むせ」というのは、液体が胃に向かう食道ではなく、肺に向かう気道の方に迷い込んでしまうことで起きます。
どうして迷い込んでしまうかというと、
高齢者については、
一般に「飲み込みに関する筋肉の衰え」が原因であると言われています。
ただ、小児や障碍者の「むせ」は筋肉の衰えより「過敏による筋肉のこわばり」が原因であることも多いようです。
したがって、体を均等に刺激して筋肉と感覚を整えることが重要です。
3)体のこわばりの原因となる「過敏」を取り除く方法
~系統的脱感作法~
体のこわばりの原因になる「感覚過敏」は、どうやったら取り除けるでしょうか?
すごくシンプルに言うと
「弱い刺激から与えて、慣れさせる」という方法が有効です。
専門用語でいえば「系統的脱感作法」と言います。
具体的には感覚の鈍い手足部分から体の中心(顔)に向けて、ゆっくりとさすっていきます。
さする力(圧)が一定でも、感覚が鈍い場所から、顔などの敏感な場所にむけて触ることで、刺激を「弱い→強い」と、変えることができるんです。
これは歯磨やきを行う前の準備体操としても有効です。
4)べろタッチ法、ガムラビング法
系統的脱感作法とは逆に、感覚器である口にある程度の刺激を与える方法です。
べろタッチ法
べろタッチは舌の横面と縦面に、歯ブラシなどで10秒程度軽くトントンと刺激する方法です。
嘔吐反射の激しいお子さんは、べろタッチを歯みがきの後に毎日行うことで、改善できるケースもあるようです。
ガムラビング法
ガムラビング法は歯茎部を中心に刺激を入れていく方法です。
小さなお子さんの、一口目のむせや誤嚥が減少する効果があります。
5)触れると出るハッピーホルモン
人間の体は触れあうことで、あるホルモンが出ます。
自律神経系に働き、脳に安らぎをもたらすので、ハッピーホルモンと言われるオキシトシンです。
「痛いの痛いの飛んでいけ~!」でお子さんが泣き止むのも、このオキシトシンが関係しているのかもしれませんね。
治りにくい痛みなどが、さすっただけで軽減するなどの効果もあるようで、歯科関連での記載は少なかったのですが、今回説明した方法は触れることで体の機能を整える方法です。
今回書いたような方法は、お父さんやお母さんがお子さんの体を触れることで、体の機能を整える方法です。
やった場合と、やらない場合の比較研究が難しい側面がありますが、多くのプラス効果が報告されています。
お子さんの仕上げ磨きは、歯が生えたらやっていただきたいことです。
家族のスキンシップとして、その際にでも発育を促す方法の一つとしてやってみましょう。
まとめ
いかがでしたか?
- 体の発達は、感覚と機能(筋肉)が両輪の輪として発達します。
その順番は、感覚器が多い体の中心から末端にむけてなど、ルールがあります。
- 食事において、問題となるのはむせや誤嚥です。
小児や障碍者では、過敏による筋肉のこわばりが原因であることも多いです。
- 体を均等に刺激して筋肉と感覚を整えることは、体の機能を最大限生かす基本的な戦略です。
系統的脱感作法、べろタッチ法、ガムラビング法などがあります。
今回ご紹介した方法は、他人が体を触れることで体の機能を整える方法です。
お子さんの仕上げ磨きの際にでも家族のスキンシップとして、ぜひやってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。