心臓に疾患がある方の歯科診療の話
2020年4月10日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
今年はインフルエンザの流行時期も早かったですし、新型コロナウイルスも流行っており、病気の流行もなにかいつもと違います。
こういう時は何が起こるかわかりませんので、いつも以上に積極的に予防(手洗い、うがい、歯磨き)しましょう。特に、基礎疾患のある方は、要注意です。
当院にも、基礎疾患をお持ちのご高齢の方はもちろん、心臓に疾患のあるお子さんなどもご通院されています。
基礎疾患、特に心臓病をお持ちの方の歯科治療に関しては、大阪大学などの研究であらたに判明したこともあるので、それも踏まえて診療上の注意点など整理してみることにしました。
口の中の細菌は、心臓の病気の原因になることがある
人間も含めたすべての動物は、菌と共に生きています。
口腔を含めた消化管には、大量の細菌が棲んでいます。
血管の中までは細菌はあまり入りませんが、入ってしまった場合、脾臓、肝臓などで細菌がすみやかに除去されるメカニズムがあります。
ただ、血管内に傷や弱い部分があった場合、血管の表面に菌とフィブリン(血中の繊維成分)のかたまりを作ってしまうことがあります。
それが最も起きやすいのが心臓であり、感染性心内膜炎と言います。
感染性心内膜炎
感染性心内膜炎は全患者の4分の1以上が、60歳以上の高齢者が発症し、男性が女性の全ての年齢層において2倍です。
お子さんでこのような症状が起きる方は、先天的に弁奇形などの心臓疾患があり、血流に何らかのよどみや弱い部分がある方です。
成人の方でも、心臓手術をした人やステントなどの人工物が入った人は、そうでない人と比べてリスクが高いです。
感染性心内膜炎と口の中のかかわり
菌が塊を造って歯の表面にくっつく、これは歯科医師にとってはおなじみの虫歯をおこすプラークの構造です。
心内膜炎に口腔連鎖球菌が関わっているという研究は昔からありましたが、大阪大学小児歯科の最近の研究結果で、ある特定のミュータンス菌(虫歯原因菌)の一群が心内膜炎と大きな関りを持つことが明らかになりました。
ですので、心内膜炎の予防対策としては、
- 口腔内洗浄
- 定期的な歯科受診
- 正しい口腔ケアの知識を得ること
が必要と言われています。
膿が出るような状態の虫歯になることが、心臓にとって最も良くない事態ですから、まずは虫歯の予防が最も重要です。
驚くべきことに、歯磨きだけでも23%の人が菌血症(細菌が血流に入り込む状態)になるようです。
歯科での外科処置(抜歯、切開など)が関わると当然100%になってしまいますので、そうならないのが大事です。
心内膜炎の歯科診療のガイドライン
心内膜炎は治療のガイドラインがあり、歯科に関係する指示もたくさんあります。具体的には抗生物質の予防投与で、治療前に抗生物質をたくさん摂取する必要が述べられています。
最近の改変は2017年で、以前よりも少し緩和されました。
以前はリスクのある患者さん全員が適用でしたが、現在では、経過観察中の軽度の異常(心臓に縮小傾向の穴がある程度)であれば、よっぽどのことがない限り何もしなくても大丈夫となっています。
ただ、医科でハイリスクと診断された患者さん(弁置換や心臓―肺に関わるオペ、心内膜炎などの既往がある方)は抗生剤の事前投与が必要となりましたので注意が必要です。
予防投与においてはアモキシリンという抗生物質を他の疾患の時の処方量よりも大量に飲みます。成人で2g、小児であれば体重1kgに対して50mgです。2gは錠剤8錠分ですので、ほとんどの患者さんはその量にびっくりされます。大変ですが、必要と診断されたら必ず服用してくださいね。
錠剤が飲めないお子さんの場合は、「この粉の量を、どうやって飲ませれば良いのですか…!?」とお母さんに聞かれることがあります。
小さなお子さんの場合、最終手段として粉薬の抗生剤をチョコアイスに混ぜてしまうと、無理なく飲めることが多いようです。
ただ、チョコアイスにはお砂糖がたくさん入っていますので、後で歯磨きをお忘れなく!
まとめ
- 歯科に関わる心臓疾患として、感染性心内膜炎があげられます。
- 心内膜炎をおこす原因菌として、虫歯の原因菌が挙げられています。したがって基本的な対策としては、虫歯予防と日ごろのケアが最も重要です。
- 心内膜炎のガイドラインは最近少し緩められましたが、ハイリスクの患者さんに対してはより厳しい抗生物質の予防投与が求められています。量も多いですが、必要ならばしっかり服用しましょう。
ご不明の点があれば、お気軽に当院スタッフまでお尋ねください。
原点にもどって歯磨きの話
2020年2月27日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
本年度最初のブログ記事なので、原点に立ち返って歯磨きや歯垢染色液について説明していきたいと思います。
1)歯磨きをする前に
「歯磨き、完璧です!」という方は少ないと思います。
習得するのはなかなか難しいですね。
そもそもプラーク(歯垢)は、食べ残しというわけではなく、口腔内の虫歯の原因菌を含む常在菌が、食べ物(特に糖分)を分解・代謝して歯の表面に作った菌と代謝物のかたまりです。
想像してみてください。
甘いものを食べると、古いプラークの上に新しいプラークが雪だるま式に増えていくイメージです。
表面と内側の古いプラークは酸性度などの性質も異なり、古いプラークの下では虫歯がおきています。
ですので、基本的にはまず「質の悪い虫歯になるプラークを増やさない!」というのが最初の戦略となります。
具体的には、糖分の摂取量を減らす、これが大前提です。
実際3歳までは、「虫歯の原因は歯磨きよりも食生活習慣の影響が大きい」という調査結果がいくつも出ています。
2)歯ブラシを選ぶ前に
歯磨きというのは結局のところ、質の悪い古いプラークを取り除くことに尽きます。
「小さめの歯ブラシで丁寧に時間をかけて」、と、我々歯科医師は患者さんにお伝えしますが、きちんとできる人は少ないです。
最近特に思うのは、口頭での説明だけでは、プラークの付きやすい位置はわかりづらく、こちらの危機感はなかなか伝わらないなあ、ということです(特にお子さん)。
ですので、最近は家庭でも歯垢染色液の使用をおすすめしています。
歯垢染色液は食紅等の染色液を溶かしただけの単純なものですが、液体歯みがき剤と歯垢染色液が一体化したものが特におすすめです。歯科医院で使用する歯垢染色剤より染まった色は薄めなのですが、その分、お母さんの洗面台のお掃除が楽です。
もし、うがいの後で赤い色があちこちに飛び散っても、濡れた布やティッシュでサッと一拭きするだけで色が落ちます。
受診時に染色液で染めてから歯磨きしてもらうと、お子さんでもすぐに汚れが取り除けます。見える化は大事ですね。
3)歯磨き粉を選ぶ前に
昭和の頃の歯磨きは、粉(研磨剤)を多くして歯垢を取り除く効率を上げようという戦略が小児でもとられていました。
しかし現在は、薬効成分を多く含む、粉を含まないゲルのものにほとんど変わっています。
薬効成分の代表的なものがフッ素です。
ブラッシング後、一定時間、一定濃度以上のフッ素をお口の中に残しておくことがポイントです。
ですので、仕上げのうがいはほとんどしなくてよいです。
フッ素の濃度が有効性に関連しますが、ブラッシング時に通常量使う場合、400ppm未満は虫歯予防効果が期待できないというデータがあります。
最近の商品は500ppm~1450ppmの範囲となっており、年齢が上がるにしたがって濃度も高い製品をお勧めしています。
最近、乳酸菌入りの歯磨き剤も出ていますが、虫歯があったり、なりかけている状態でに対しての効果は不十分です。
たしかに乳酸菌を使うことで、虫歯の原因となるミュータンス菌が歯に定着するのを防ぐ効果はあります。
しかし、そもそも、再定着を防ことができるのは、虫歯を作る部位である溝や小窩、歯と歯の間の隣接面からミュータンス菌を完全に取り除けた場合にのみという報告があります。
乳酸菌を虫歯にならないくらい効率よく歯に定着させるためには、歯科医院で使っている器具レベルで細かいところの除菌が必要そうです。(まあ、そこまでしたらそもそも虫歯にならないかも。。)
あまり現実的ではないかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか?
- 歯磨きを頑張る前に、まず食生活習慣を見直しましょう。
- 歯磨きの前に、まず取り除くべき歯垢の確認、磨かないといけない場所をよく知りましょう。
- 歯磨き粉は薬効性が多いもの(代表的にはフッ素)を使いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お子さんの歯医者さんトレーニングってどんなことをするの?
2020年1月11日
~おうちで出来る、TSD法(Tell言ってShow見せてDoやらせて 段階的に慣れさせる方法)~
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニック 院長の坪井です。
今日はお子さんの歯医者さんトレーニングについてのお話です。
歯医者さんが怖いお子さん、…多いですよね。
理想は、もちろん最初から虫歯を作らないことです。
虫歯予防に関しては、過去にもブログでご紹介しています。
まだ読まれていない方はぜひお読みください。
★基本にして王道の「お子さんの虫歯予防法」★
(参考リンク:こどもの口の中の虫歯菌はどこからくるの?)
(参考リンク:卒乳が遅くなると、こどもが虫歯になりやすいと聞きました。本当ですか?)
(参考リンク:虫歯になりやすいオヤツがあると聞きました。どんなものに注意すればいいですか?(食事管理 前編))
(参考リンク:こどもが歯磨きを嫌がってさせてくれません。どうすれば良いでしょうか?)
(参考リンク:フッ素は危険?3歳~6歳ぐらいの子どものフッ素についての話)
(参考リンク:フッ素入りの歯みがき粉や洗口剤などについて)
既に虫歯がある場合は、治療するしかありません。
また、定期検診に来られた時に「虫歯にならないように検診に来ているけど、泣いてしまってかわいそう…!」と思われることもあるかもしれません。
3歳が「歯科治療を理解できる」年齢
結論から言うと、治療のためのトレーニングは3歳以上が対象となります。
(治療のトレーニングに関してです。歯みがきトレーニングとは異なります。)
なぜなら、3歳未満のお子さんの場合、歯科治療についてあまり理解できません。
そのため、3歳未満のお子さんには、歯科医師は治療時間が1秒でも短くて済むように、短時間でコンパクトな治療を心がけます。
早熟な女の子の場合は2歳半くらいから歯科治療が理解できる場合もあります。しかし、一般的に、3歳未満のお子さんには、歯医者さんトレーニングは、あまり効果がないと言われています。
(参考リンク:低年齢児の大きな虫歯治療は、お子さま、保護者の方、歯科スタッフの全員にとって大変!!)
3歳を過ぎるとお子さんも歯科治療が理解できるようになってきます。
治療や検診よりも先にトレーニングをおすすめするケース
- 虫歯がない方、またはすぐに治療が必要でないくらいの虫歯の方
- 予防と検診で歯科受診を希望される方
- 歯みがきでも泣いてしまう方
歯医者さんトレーニングを行うのが良い理由
想像してみてください。
「歯医者さん怖い!嫌!」で終始「恐怖と怒り」の中で号泣するお子さん。
そして、
「歯医者さん怖い!…でも、頑張ったら褒めてもらえるし、ご褒美ももらえる。お父さんやお母さんも、とっても嬉しそうにしてくれる。練習では頑張れたから、治療でも…」と、怖い気持ちとがんばる気持ちで揺れ動きながら治療に入るお子さん。
どちらがお子さんにとって「楽」でしょうか?
後者の子どもは、泣いていても、周囲を冷静に観察しています。
そして、
「あれ?動かないなら、押えられないんだ」
「上手にできたら、みんなに褒められる」
と気づき、少しずつ治療を受けられるようになります。
やがて、「自分は歯医者さんを頑張れる子だ」と自信をつけていきます。
この際の保護者のかたの声掛けのコツなどもあります。
ご興味のある方は、以下のページをご覧ください。
(参考リンク:お子さんを泣かせず上手に歯科医院に通わせるコツとは?)
自宅での歯医者さんトレーニングの方法
小児歯科では系統的に、少しずつ歯科の道具や治療に慣れてもらう方法をよく用います。
代表的な方法に「TSD法」(Tell言って、Show見せて、Doやらせて慣れさせる方法)があります。
ご自宅でも出来る方法なので、ぜひ試してみてください。
TSDの例
- Tell 「●●ちゃん、お口の中を見せて。鏡さんを、お口の中に入れさせて。」
- Show「見てごらん、お道具はこれだよ。鏡だね。●●ちゃんのお顔が写ってるね?ほら、見てみて!」
- Do「鏡さん、自分で持ってごらん?そうそう、上手!じゃあ、自分でその鏡をお口に入れてごらん?ぱくーって、お口に入れてごらん?わぁ!上手だね!」
歯科治療と予防管理は、まずは口の中を見ることから始まります。
最初の歯医者さんトレーニングは、歯科用ミラーを口の中に入れ、上手に大きく口を開けられることです。
歯科用ミラーを口に入れて大きく口を開けるトレーニング
歯科用ミラーを、
- 「口の中に鏡を入れる」と『言って』
- 鏡を実際に『見せて』
- お子さんが『自分で鏡を口の中に入れるように』指示します。
POINT
3の段階で「お母さんにお口の中を見せて」と言ってはいけません。
あくまで主役はお子さん。
お子さんが、自分で自分の口に鏡を入れるように指示しましょう。
お子さんができたら、大げさなくらいに喜んで、褒めてあげてください。
本人が嬉しそうに、何度も鏡を口に入れて見せては「さぁ、褒めて!」という視線をくれるようになったら、次の段階に進みます。
3の段階で「●●ちゃん、本当にすごい~~!!ママにもちょっと持たせて!いい?ちょっとだけだから!」と、本人が持っている鏡に指を添え、すぐに離して「すごい!ママに持たせてくれた!ママ嬉しい!!」と褒めてあげます。
すると徐々に、お子さんは保護者の方が鏡で口の中を見ることを許してくれるようになっていきます。
基本的にはこの繰り返しです。
歯科用ミラーができるようになったら、歯科用ハンドピース(ドリルや回転ブラシを取り付ける道具)に挑戦します。
もちろん、ドリルはつけずに、本物の滅菌済みハンドピースを鏡の代わりに口に入れます。
保護者の方がハンドピースを口に入れて、口の中を覗き込んでも、お子さんが大きく口を開けて待っていられるようになれば、自宅でのトレーニングは完了です!
当院での取り組み
その1 保育士さんと一緒にトレーニング
アンパンマンベッドの部屋で保育士と一緒にトレーニング
つぼい歯科クリニックでのTSD法の取り組みは、保育士さんとアンパンマンベッドの部屋でTSD法をトレーニングを行います。(1枠20分。完全予約制)
お母さん、お父さんにも一緒にお部屋に入っていただき、ご自宅でもトレーニングできるように、保育士さんのやり方を見て学習していただきます。
歯医者さんトレーニングセットをレンタル(無料)
保育士さんとトレーニングした「歯医者さんトレーニングセット」をそのままレンタルして、ご自宅で練習していただきます。
「歯医者さんトレーニングセット」は、滅菌済み使い捨て歯科用ミラーと、本物の滅菌済み歯科用ハンドピース、トレーニング表のセットです。
次回受診時、または期日を設けて歯科用ハンドピースのみ返却していただきます。ハンドピースは動かない物を、トレーニング用に洗浄・滅菌して用います。
その2 ご自宅でトレーニング
次回のご予約日まで、トレーニングをしてトレーニング表にチェックをお願いします。
その3 自宅トレーニングが終わったら、再び医院でのトレーニング
自宅トレーニング用ハンドピースからは水は出ません。
また、ご自宅には水を吸うバキュームもありません。
「水」と「音」と「注射」が、お子さんが怖がる歯科医院の嫌われ3トップです。
注射だけは練習できませんが、「水」と「音」は練習できます。
「水」「音」のトレーニングも、基本的には上の①~③を、歯科医院の治療椅子で行う形になります。
具体的には、水を吸うバキュームを言って見せて触らせて、自分で自分の口に入れさせ、次に術者が入れるのを大きく口を開けてじっとできるか見ます。
バキュームの音を怖がる場合は、
手や頬をバキュームで吸って、「面白いねー!」としばらく遊んでから口に入れさせます。
本人の警戒心が強くて、手や頬を吸われるのを怖がる場合は、術者が同伴の保護者の手をバキュームで吸って、「怖くない、面白いよ!」と伝えます。
バキュームが問題なくクリアできたら、次はハンドピース(今度は水も出るし動くもの)に回転ブラシをつけて、水を出しながら歯のクリーニングを行います。
ここをクリアできたら、チェアに動かず横になり、口を開け、水が出てくる回転器具を口に入れ、同時に水をバキュームで吸われ、音が怖いのを我慢する、ということができたことになります。
ここまで泣かずに頑張れたら、治療もほとんど問題なく受けられるようになるお子さんも多いです。
お子さんが上手に治療を受けられるよう、必要な方はぜひ、試していただければと思います。
まとめ
- 歯科の治療トレーニングの対象年齢は3歳以上です。
- 緊急の治療が必要ない3歳以上のお子さんは、トレーニングから入ると、少しずつ抵抗なく治療を受けられるようになりやすいです。
- TSD法を使用して、お子さんと保護者の方がクリニックで学び、自宅でトレーニングして、段階的にできることを増やしていく方法もおすすめです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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普通だけれども普通に見えない・・醜いアヒルの子の時期? ~子どもの前歯の隙間~
2019年12月12日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
寒いですね。すっかり冬になりました。
最近保護者の方からのご相談で多い、お子さんの状態で正常だけれどもそうは見えにくく、不安を思われているケースがいくつかありましたので、お話していきたいと思います。
1)前歯がすきっ歯に見えます。
永久歯、特に上の前歯は顎の狭いところに折り重なって控えているので、乳歯と比べ、やや八の字で生えてきます。
そのため、前歯部ではすきっ歯な感じで生えてきます。
その後、2番目の前歯(側切歯)、犬歯が生える時に、前歯を押し込む方向に力が働くので、気が付けばきれいな歯並びになっていきます。
この時期は焦らず、歯が生えるのを待ってみましょう。
小児歯科ではugly dukling stage『みにくいアヒルの子の時期』と言います。
画像引用:医歯薬出版 デンタルハイジーン別冊コミュニケーションから歯科処置までを”つかむ”
いずれは白鳥になるっていう意味ですが、考えた先生は洒落がきいてますね。
ちなみに、アヒル、ガチョウにはすごい歯(歯ではないが髭の一部らしいです。構造学的には。)があります。
なかなか衝撃的ですので、興味がある人は動物園とかで見てみてください。
画像引用:buzzfeed
2)下の前歯がかなり奥(乳歯の後ろ)から生えてきてます
下の前歯は一番最初に揺れはじめて、最初に永久歯に生え変わりますが、ここだけ他の歯とは異なる特徴があります。
ここもやはり後継永久歯の控えるスペースがないため、永久歯は乳歯のやや後ろに位置しており、生えてくるのは乳歯のやや後ろである場合が多くあります。
これは『エスカレーター式交換』といいます。
この時期も焦らず待っておくと、生えてきた歯が舌に押されて前にいき、唇と舌の筋肉の圧が折り合うところに落ち着きます(図参照)。
両方とも、乳歯よりも1.5倍程度も大きな永久歯が、出生前後の小さな頭蓋骨の時期に形作られるために体が作った巧妙な仕組みです。
最初の乳歯の生え変わり時期に起こることなので、心配になりますが、状態をよく見ながら経過を観察してください。
うまくいかない場合もまれにあり、その場合は抜歯や矯正等必要になる場合があります。
まとめ
いかがでしたか?
- 生え変わりの時期(特に初期)には、正常であっても歯並びが心配に見える時期があります。
- 上の前歯ではすきっ歯に見える時期があり、下の前歯では乳歯の後ろから生えて歯並びが悪く見えるのが典型的です。
- 経過観察してるとよくなることが多いですが、本当に歯列不正の場合もあり、抜歯や矯正が必要になる場合があります。
「うちの子は大丈夫かな?」とご心配の方は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
したはうえに(舌は上に)!
2019年11月21日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
朝晩はもはや寒い感じになり、秋も深まってきておりますね。季節の変わり目は風邪などを引きやすく、今年はインフルエンザが早めに流行しているらしいので、注意しましょう。
最近気になった患者さんの相談に、お口がポカンとよく空いている、前歯が噛めていないというものがありました。実際にお口をみると前歯が噛めていない状態で、舌がチロチロと見え、いわゆる開咬(かいこう)といわれるものでした。最近よく相談を受ける不正咬合の一つでもありますので、今回はその原因と対策についてお話していきます。
1)開咬(かいこう)の原因は?
開咬の原因は大きく2つに分けられ、指、爪、ものしゃぶりなどの『モノ』を常にお口に入れることによって発生するものと、口呼吸、舌小帯(舌の下の筋)の付着が原因となって、舌が低位になることにより生ずる『舌癖(ぜつへき)』でおきるものがあります。その両方が並行して起きている場合もよくあります。
2)指しゃぶり、ものしゃぶりの場合
指しゃぶり、ものしゃぶりは不安や緊張を和らげる心理作用があると言われ、1歳半から2歳ぐらいまではある程度しょうがないものです。ただ、3歳以上ではその後の歯並びに影響するといわれておりますので、そのあたりまでには中止できるようにしましょう。
指しゃぶり、ものしゃぶりの対策とは?
対策としては、ある程度周囲の話が分かるようになったら話して聞かし、眠い時に指が入るのであれば、手をつないで眠るとか、手にテーピングしたり、ミトンをはめたりして、物理的に入れにくくするなどの地道な対策が有効です。ただ、心理的な面の影響も強いので、その子の性格や発達状態によっては、スムーズに中止するのが難しい場合もあります。おしゃぶりは指よりも柔らかいので、影響はやや少なめにはなりますが、お勧めはできない習慣です。
3)舌癖の場合
上下の歯の間に舌を押し付けるような習慣を舌癖と言います。本来の正しい舌の位置は上顎の前歯の後ろから、口蓋(口の天井)に舌全体を軽く押し付けているのが正しい姿勢です(したはうえに(舌は上に)!)。その位置にないと、舌の姿勢が悪いということになります。その結果、歯並びに影響したり、発音(サ行、タ行)の発音がおかしくなる場合があります(例:サクラがさいた→タクラガタイタに聞こえる)。
舌癖の原因とは?
原因としては、指しゃぶりなどの残存、卒乳の遅れ、舌小帯が強いこと、口呼吸などがあります。指しゃぶりは(2)で説明した通りです。母乳の摂取は舌を使って搾り取る、幼児嚥下の典型ですので、2歳以降では悪影響の面が強くなります。
口呼吸は、舌小帯が強いことと表裏の関係です。呼吸に用いる筋肉、つまりは舌を含めた口周囲の筋肉が発達していないことによって生じます。筋肉ですので、トレーニング次第によっては発達する可能性もありますが(したはうえに(舌は上に)!)、一度も経験していないところに、舌を意識的に持っていくのは難しいと思います。
ある程度、矯正器具を用いることも必要ですし、呼吸筋のトレーニングのために、お口にテープなどを軽く張って、鼻呼吸を意識させることも効果的です。
また、舌や上唇の小帯が強そうな場合は、付着部分を少し切除し、筋トレを頑張ることが結果的には最も効果的です。
いずれにしても、お口の状態はいろいろと診査してみないとわかりません。そのうえで、メニューや矯正装置を選択しますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 開咬(かいこう)の原因は指しゃぶりなどの『モノ』を常にお口に入れることによって発生するものと、『舌癖(ぜつへき)』でおきるものがある。また、両方併発している場合も多い。
- 指しゃぶりなどの場合は、3歳ぐらいまでに中止できたら、影響は少なめであると言われている。
- 舌癖の場合は、原因を追究したうえで、その改善と舌の姿勢の改善(お口の筋トレ)の併用が重要。
具体的にお子さまの状態などが気になる、という保護者の方は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
妊婦さんと歯について。妊娠中は口の中の環境が変わるので要注意!
2019年9月20日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
当院には、小さなお子さまをお預かりできるベテラン保育士が在籍しておりますので、若いお母さん方がたくさんいらっしゃいます。
また、岩国市の行っている妊婦健診も月に3~4人ペースで来院されています。
今回は授乳期のお母さんや、妊婦さんのお口の中の変化について、お話したいと思います。
妊娠による口の変化
妊娠すると様々な変化が起こっていきます。
それによって、口の中でもいろいろな変化が起こっていきます。
つわりによる変化
つわりにより、ニオイに敏感になったり、特定の食事が苦手になったり、あるいは甘いものや酸っぱいものと好むようになったりすることがあります。
奥歯の方に歯ブラシを入れると吐き気をもよおす場合は、お口の清掃状態が悪化することもあるようです。
ホルモンバランスによる変化
妊娠中はホルモンバランスに変化が起こります。
女性ホルモンを餌に増殖するタイプの歯周病菌が活性化するので、妊娠期間~授乳中まで、歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。
これを妊娠性歯周炎といいます。
なので、妊婦健診に歯科の項目があるんですね。
唾液の量も減ることがあるみたいで、これも虫歯のリスクをあげてしまう原因となります。
妊婦の歯科治療の時期はいつまで?
妊娠初期~4ヶ月
この時期はお腹の中の赤ちゃんの発育にとって大切な時期になります。
市販薬を含め、お薬の服用は極力控えたいところです。
ただし、お熱があったり、あまりにも強い痛みがある時は、ママさんが我慢するストレスが赤ちゃんに与えしまうストレスもあります。
限界まで我慢する前に医療機関にご相談ください。
また、つわりがある場合もあり、あまり積極的な歯科治療は行いにくい時期です。
歯科検診やクリーニングなどは可能ですので、妊婦健診はぜひ受けましょう。
ご自身のお口の中の問題点や、妊娠中のこれからの変化について、知っておくようにしましょう。
関連記事 院長ブログ 歯科の妊婦健診や、おとなの歯科健診って何のためにあるの?
院長ブログ 妊婦さんが歯周病や虫歯を予防した方がいい3つの理由
妊娠中期
安定期に入ると状況が変わってきます。
ほぼ全ての歯科治療が可能となります。
お薬に関してはやはり注意は必要ですが、比較的安心して使えるお薬もあるため大きな問題とはなりません。
なので、虫歯の治療などはこの時期に行うのが良いとされています。
なので、この時期までには虫歯治療にメドをつけておきたいですね。
妊娠後期
9ヶ月以降となると、治療が難しくなってくることもあります。
麻酔の種類にもよるのですが子宮の収縮を誘発したりするのもあるようです(当院は血管収縮剤不添加の、子宮の収縮を誘発しないタイプの麻酔を使用しております)。
体調的にもお腹にハリが出たり、仰向けになったときに、お腹の中の赤ちゃんの重さによって、血管が押し付けられ血圧に変化が起こってしまうこともあります。
また、痛み止めの服用も、妊娠後期から末期は赤ちゃんにとって、あまり良くないと言われています。
以上により、1回の治療が長時間に渡る処置は難しいかなと思います。
出産後
授乳が開始され、まだまだ女性ホルモンの分泌量も多く、歯ぐきが腫れやすい時期が続きます。
ただ、出産直後は、なかなか来院が難しい期間となるのではないかと思います。
出産後数か月は、お母さんは皆さん、お忙しいですからね。
最後に、お子さんの虫歯を減らすために家族全員で歯科健診を
お子さんが虫歯にならないようにはお父さん、お母さんのお口の中の環境が整っていることが重要です。
虫歯は虫歯菌が引き起こす感染症です。お子さんの虫歯菌への感染経路は母親が50%、父親が30%と言われています。
お父さんお母さんのお口に虫歯がないことが、お子さんの虫歯菌感染リスクをさげることに有効だと、研究により分かっています。
妊婦健診だけでなく、お父さんもご一緒に歯科医院でチェックを受けられるのが、お子さんのためにもより良いと言えます。
関連記事 院長ブログ こどもの虫歯はどこから来るの?
まとめ
- 妊娠初期に妊婦健診を受けるのがベストです。
- 妊婦検診で、治療が必要な部位はないか、もし治療が必要な場合は、安定期に治療を終えられるように計画するとスムーズです。
- ママさんが妊娠中に、ご家族全員の健診と口の中の細菌数を減らしておいて、赤ちゃんにとって良い環境づくりをすることをおすすめします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
母乳やミルクと虫歯の関係。寝る前や夜中にミルクをあげても良いのはいつまで?
2019年8月20日
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
今日は、母乳と虫歯の関係についてお話したいと思います。
卒乳が遅いと虫歯が多いことは疫学的には明らかであるとされています。
関連記事:院長ブログ 卒乳が遅くなると、こどもが虫歯になりやすいと聞きました。本当ですか?
母乳で虫歯になるの?
ちなみに、母乳単独では虫歯にならないことが分かっています。
虫歯というのは、口の中の細菌が「糖を分解して酸を作る」ことで、歯が溶ける現象です。
母乳には、乳糖という糖の一種が含まれていて、口の中の細菌の作用によって、歯を溶かす材料となります。
しかし、母乳に含まれている乳糖のみの場合は、濃度が低いために虫歯にはならないのです。
離乳食と母乳、両方を口にするようになると、虫歯のリスクが上がってしまいます。
よって、離乳食が始まったら食生活管理が大事になります。
子どもが1歳半を超えているけど、まだ卒乳できていない…
「1歳半を超えているけど、まだ卒乳できていない!どうしよう…。」という方もいらっしゃるかもしれません。
できるだけ早く卒乳に向かってチャレンジすることが、虫歯リスクを小さくすることは言うまでもありませんが、「食生活管理」のポイントを覚えていくことも重要です。
関連記事:ドクターズブログ 2歳くらいの子どもの歯と食事の関係
食生活管理のポイント 夜間授乳
子どもが夜泣きするので、夜間授乳がやめられない
母乳と虫歯の関係性としては、不規則な授乳や夜間授乳が不規則な食生活に結び付きやすく、それにともなって虫歯を作ってしまうのではと言われています。
特に、夜間授乳は非常に虫歯リスクが高いことで知られています。
関連記事 院長ブログ 1歳半頃に卒乳と言われますが、子供が泣くので心が折れそうです。どうしたらいいですか?
「でも、夜泣きがすごくて、そうも言っていられないんです」というお母さん。
わかります。現実問題として、すごく大変ですよね。
でも、いつかは卒乳しなければいけませんし、卒乳が遅れると虫歯になりやすくなります。
低年齢での虫歯治療は、泣いて暴れるのを抑えての治療になってしまいがちです。
また、泣いて暴れるお子さんの治療を行う場合、安全に治療するために介助スタッフが大勢必要となるため、大学病院をはじめ、多くの歯科医院で順番待ちがおきています。
当院も含め、3か月待ちというケースも少なくないのが現状です。
…それではかえって可哀そうですよね?
しかも4歳以下で虫歯になってしまったら、その後永久歯に全て生え変わっても、生涯虫歯リスクは(虫歯を低年齢で作らなかった人と比べて)高いままになってしまうと言われています。
「今日、いますぐ卒乳が難しい」と思われても、1歳を越えたら卒乳に向けて準備を始めていただくことをおススメします。
卒乳がまだだけど、離乳食が始まっている…どうしたらいいの?
では、卒乳が出来ていないけれど離乳食が始まったという時期は、どうすればよいでしょうか?
結論から言うと、歯を強くする、虫歯ができにくい環境をつくっていくことが必要です。
具体的には、フッ素の応用、虫歯の直接的原因となる砂糖の摂り方に注意するのが良いのではないかと思います。
母乳と虫歯の関係以外に、乳児期に注意しないといけないこと
離乳期は虫歯以外にも、舌の使い方が変わっていくことで、飲み込み方を学習していくとても重要な時期です。
おっぱいを飲むことと、固形物を食べることでは、舌の使い方が異なるからです。
赤ちゃんがおっぱいを飲む時、舌の動きとしては前後方向の動きが主体となり、舌の位置も口の中で低い位置にあります。
この飲み込み方を「幼児型嚥下」と言います。
赤ちゃんが離乳食を食べるようになると、舌を上顎に押し付けて飲み込む「成人型嚥下」を始めます。
しかし、乳児期~離乳期にかけて「正しい呼吸と嚥下」を獲得できず、「幼児型嚥下」がいつまでも残ってしまうことがあります。
幼児型嚥下が長く続くと、出っ歯になってしまいやすくなると言われています。
舌の使い方は、歯並びにも影響を及ぼしてしまうこともあるんです。
関連記事 院長ブログ 授乳や卒乳の方法や時期で、子どもの口呼吸を引き起こしてしまう!?
舌の使い方や、指しゃぶり、ぽかんとあいた口、…こうした「お口の悪い癖」は、一度身に付けてしまうとトレーニングしないとなかなか取り除けない、歯並びの難敵です。
卒乳しても、飲み込む時に舌を前に突き出してゴックンしていると気づかれたら、年齢に合わせた、「呼吸と嚥下を正常にする」トレーニングがあります。不安な方やご興味のある方は歯科医院でご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 母乳だけ飲んでいる時は虫歯になりにくいが、離乳食が始まったら要注意
- 卒乳は1歳半までをめざした方が良い
- 夜間授乳は虫歯をつくりやすい
- 虫歯だけでなく、卒乳時期は歯並びにも影響を及ぼすことがある
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
永久歯(6歳臼歯と前歯)のエナメル質形成不全が増えている!?その原因とは?
2019年8月10日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
暑い日が続きますね。
最近書いた記事で、一番反響があったのが、エナメル質形成不全症についてでした。
参考記事:エナメル質とその形成不全について~治療と原因~
気にされておられる方が多いことがよくわかりましたので、最近の学会での傾向や知見などを改めてまとめてみることにしました。
エナメル質形成不全とは?
エナメル質形成不全症とは、人体で最も硬く頑丈なエナメル質が、エナメル質石灰化不全の状態で生えてくることを言います。
そういった歯は、通常のエナメル質より軟らかく、色も白い歯に比べてクリームやブラウンがかったようであり、また表面も輝きがなく実際ボソボソとして柔らかいです。
原因は遺伝子に関連があるものと、関連がないもの(全身的な原因のものと部分的な原因のもの)に分けられます。
最近注目されているエナメル質形成不全「MIH」とは?
最近そのエナメル質形成不全にかかわることで、話題になっているのが、第一大臼歯(Molar)と前歯(Incisor)に限って発生するエナメル質形成不全症(Hypomineralization)で、頭文字を略して、MIHと言われるものです。
MIHは、大臼歯・前歯のエナメル部分に、境界がはっきりした色のエナメル質形成不全部分(透明感のないクリーム色やキャラメル色)が見られます。
前歯と、第一大臼歯によく起こるのですが、臨床でよく問題になるのは奥歯である、第一大臼歯の形成不全です。
生える途中の大臼歯は、歯茎に中途半端に覆われており、何もなくても炎症が起きやすく(≒いたくなり易く)、汚れが溜まりやすい(≒虫歯になり易い)です。
エナメル質が脆いと、大人の知覚過敏のように食事や歯磨き時に凍みる、みたいな感じで痛むことがあります。
そうなると、子供は自然に痛いところは避けるので、弱い歯がさらに磨かれないという悪循環に入ってしまいます。
また、生えたての歯は歯の頭(歯冠)部分が出来ていても、根が出来ていません。
そのため、治療はまず神経の治療にならないようにセメントもしくは必要に応じて歯冠全体を覆う既成の被せ(いわゆる銀歯)をすることが多いです。
不幸にして一部もしくは全体の神経の処置になれば、生えたての歯の神経の治療は痛みも激烈ですし予後も悪いため、歯医者にとっても本当に困難です。(本音ではしたくありません…)
MIHの子どもが増えている!?
MIHは、2001年のから言われた新しい概念で、それまでは実際虫歯になっていたことも多く、虫歯としてみなされていた様です。
2012年頃から日本小児歯科学会を中心に研究が盛んになりましたが、その報告からすると子供の11%~20%の頻度でMIHがみられると報告されています。
これは5人~10人に一人の割合であり、歯科医師からするとかなりの頻度であると言えます。
MIHの原因とは?
では最後に、MIHの原因についてです。
いまだに、特定の原因は明らかになっていませんが、関連が疑われているものは下のように色々と挙げられています。
*International journal of Clinical Pediatric Dentistry, Sep-Dec 2012;5(3):190-196 から主に抜粋
- 呼吸系アシドーシス;呼吸不全により二酸化酸素が体内に蓄積し過ぎて体液が酸性に傾く状態
- 妊娠中の高熱・糖尿
- 長く続く悪阻や体調不良
- 周産期における、様々な薬剤(子宮筋弛緩薬など)によりもたらされる低カルシウム血症や低酸素症
- 早産
- 乳児期における、中耳炎・肺炎・喘息・尿路感染・水疱瘡などによる抗生剤投与
- 母乳を介してのダイオキシン汚染
この論文以外では、最近増えてきている、くる病との関連が指摘され、ビタミンDや日光との関連も指摘されています。
つまりは、第一大臼歯のエナメル部分が形成され始める、出産前28週と出産後10日の間の何かもしくは複合要因ではないかと言われていますが、現在研究中としか言えない状態です。
MIHを含むエナメル質の形成不全は人によって程度の差が大きく、処置内容もそれによって大きく異なります。
まずは精査が重要ですので、気になった方は、悪化する前にお気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 最近言われるMIHといわれるエナメル質の形成不全では、大臼歯・前歯に、境界がはっきりした色の変化部分(透明感のないクリーム色・キャラメル色)が見られる。
- 第一大臼歯では部位非対称な形成不全であることが多く、程度にも差がある
- 知覚過敏のようなしみる痛みが出やすく、痛みにも過敏であるため、完全な沈静化は困難である
- 急速な虫歯の進行がみられることがあり、特に注意が必要である。
- 原因は複合的で不明であるが、5-10人に一人程度とかなり頻度が高い
気になることがあれば、まずは一度ご相談ください。
授乳や卒乳の方法や時期で、子どもの口呼吸を引き起こしてしまう!?
2019年7月22日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
暑い日が続きますね。
今回はお子様のお口ポカンと授乳・卒乳・離乳食の関係について、お話したいと思います。
唇を閉じられない子どもが増えている
最近、診療を通して「唇の力が弱いな」と感じるお子さまも増えています。
また、保護者の方の以下のようなお悩みをよく聞きます。
「この子、本当にすぐ風邪をもらっちゃうんです」
「食べるのが本当に遅くて…家族の全員が食べ終わっても、この子だけ食べてるんです」
「よく飲み物を口からこぼすんです」
「食が細くて、あまり食べてくれません。でもお菓子なら完食するんです。」
「うちの子、何か、食べ方が変なんです。飲み込む時に上を向いたり…舌を出したり…」
「お箸の握り方がおかしいんです。どうしても、親指をうまく使えなくて、小指を器用に使って…」
どれも保護者の方にとっては、とても心配ですよね。
このような症状は、
お子様の発達に合わせた授乳・離乳をうまくできなかったことが原因になっていることもあると言われています。
特に「お口ポカン」=口呼吸は、当ブログでも何度も取り上げてきました。
関連記事
歯並びが悪いのは遺伝ですか?その2 出っ歯編②お口ポカンについて
口呼吸は、出っ歯になってしまったり、風邪をひきやすくなる原因にもなります。
平成27年の日本歯科医学会の「子供の食の問題に関する調査」によると、最近のお母さんの心配事、困り事の上位は以下の通りです。
子どもの食に関する保護者の悩み
- 偏食する
- 食べるのが遅い
- 子どもの食べやすい食事の作り方が分からない
- 忙しくて手をかけてあげられない
共働き家庭が増える中、「子どもの食になかなか時間をかけてあげられない…」という悩みは、珍しくありません。
しかし、その結果、「子どもの口や喉の機能がスムーズに発達できていないケースが増えているのでは?」とも思います。
発達時期に合わせた食事(食べさせ方・食形態・食具)の大切さ
離乳期に保護者がスプーンで口の中に食事を入れると、捕食ができなくなる
捕食とは
摂食嚥下(せっしょくえんげ)は、捕食(ほしょく)⇒咀嚼(そしゃく)⇒嚥下(えんげ)の流れで行われます。
捕食とは食べ物を認識し、口に入れる段階です。
この時は、唇と歯を用います。
食べ物を口に入れたら、唇をしっかり閉じることで咀嚼が始まります。
離乳期にしっかり、唇の力を鍛えてあげるためには「スプーンを口に入れない」ことが大事と言われています。
つまり、
口の中にスプーンを差し込んで、食べ物を口の中に流し込んであげてしまうことは良くないということです。
赤ちゃんの口の中にスプーンを入れて食べ物をあげるリスク
- 唇の発達が遅れる
- 接触過敏症といって唇への刺激を嫌がってしまう
- 舌の運動機能の発達が遅れる
離乳期に口の中に食べ物を流し込んであげてしまい、
そのため唇を閉じることを覚えることができなければ、どうなるでしょうか?
唇をちゃんと閉じることができなければ、舌を上顎に押し付けて飲み込む「成人嚥下」を獲得できません。
すると、授乳期の飲み込み方である、舌を前に突き出して飲み込む「幼児嚥下」がその後も残ってしまうのです。
舌を前に突き出して飲み込む癖を残してしまうと、出っ歯になってしまいます。
また、舌の運動機能の発達が遅れます。
食べ物を喉の方に送りこむことが難しいので、上を向いて、食べ物を重力で喉側に移動させたり、食べるのが遅くなったりすることがあります。
こうした「間違った嚥下法」を誤学習してしまった後で矯正するのは、大変です。
具体的には、嚥下と呼吸を矯正する装置(マイオブレイスやチューイングブラシなど)を用いてトレーニングしないといけない場合もあります。
そうなればお金も手間もかかってしまいます。
最初から正しい発達ができるよう「予防」してあげることが重要です。
チューイングブラシについてはこちらの記事も参考にしてください。
赤ちゃんの捕食能力を育てる食べさせ方
①口の前にスプーンを差し出す
②上唇の内側をスプーンで軽く刺激する
③赤ちゃんが自分からパクッとスプーンに食いつくように食べさせる
「つかみ食べ」の時期には
「大人のこぶし大の大根の水煮」「大き目の人参やブロッコリーの煮たもの」などもおススメです。
赤ちゃんがつかみ食べするとき、とても散らかしますので、片付けやすいようにマットを敷いてあげると良いでしょう。
大きな大根の水煮がよいワケ
赤ちゃんが大きな大根の水煮をかじる時、以下のトレーニングができます。
口を大きく開ける⇒
唇で食べ物をしっかり認識する⇒
大きく口をあける⇒
かじりついた後、唇を閉じて捕食・嚥下
離乳期に唇をしっかり閉じることや、飲み込む瞬間に舌を上顎にぐっと押し付けることをトレーニングすることで、正常な飲み込みができるようになっていきます。
また、この時期にお野菜の水煮などをつかみ食べさせてあげると、食に積極的になったり、偏食を予防しやすいと言われています。
もっとも、最初はポイ!とされてしまうことも多いと思います。
興味のあるものはどんどん口に運ぶ時期。
歯ぐきでつぶせる硬さに煮た、大き目のお野菜をかじらせてあげることがおすすめです。
手づかみ食べはいつから始めて、いつからスプーンにしたらいいの?
手づかみ食べは生後9か月くらいから2~3歳ころまで、スプーンと手づかみの両方で食事させてあげる方が、お子様の発達には良いと言われています。
スプーン⇒フォーク⇒お箸の順に覚えさせる
お箸は「鉛筆持ち」ができるようになった3歳以降で十分!
離乳食は「手づかみ食べ」と「赤ちゃん用のスプーン」からスタートしましょう。
忙しいお母さんが、スプーンをとばして、フォークをお子様に使わせるケースが最近は増えているそうです。
フォークは「すくう」「刺す」ができてしまいます。
フォークはスプーンより食べ物が先端にあります。
スプーンで捕食機能が十分に身についてから挑戦した方が良いでしょう。
また、お箸のスタートは「もっと後」。
人の手の指は、小指から順に発達してきます。
親指が十分に発達していない時期にお箸を覚えさせると、その子の握りやすい形で、お箸を使い始めてしまいます。
大抵、小指を上手に使って、親指をあまり使わなくても食べられるように「誤学習」してしまうのです。
お箸のスタートはいつから?
親指がしっかり使えるようになっていることが前提になります。
「スプーンをペングリップ(鉛筆持ち)で握ることができ、親指・人差し指・中指の3本で逆手持ちできるようになってから(多くは3歳以後)」が目安とされています。
食事マナーはいつから覚えさせる?
手づかみ食べを「いつやめる」かは、諸説あります。
いつまでと目標を決めずに自然と止めるのを待つ説
幼稚園や保育園などの集団生活を機にやめる説
多くの人は、3歳を過ぎたころから、それぞれのタイミングで食事マナーを覚えながら卒業していくようです。
まとめ
いかがでしたか?
「離乳食の大事さはよくわかったけど、手づかみ食べって片付け大変じゃないですか…。そんなに手をかけてあげられない…」と思われた方も多いのではないでしょうか。
本当に、ごもっともだと思います。
しかし、想像してみてください。
お子様が食に関する何かの問題が出てしまったとしたら。
それを治すには、もっと手間と時間がかかってしまいます。
お子様の食についてお悩みの方の参考になれば、幸いです。
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2歳と4歳ではどう違うの?年齢に合わせた虫歯や歯並び対策
2019年7月19日
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
前回は2歳くらいまでの虫歯予防についての話をしてみました。
乳児の虫歯予防のポイントは?歯磨きは何歳からがんばればいいの?
今回はその続きとなる年齢について考えていこうと思います。
2歳半くらい~3歳
お口の中には全ての乳歯が生えて、いわゆる乳歯列が完成してくる時期になります。
早い子だと、お菓子デビュー、甘いものデビューしている子もいるでしょうね。
2~3歳の虫歯予防ポイント
食生活管理>フッ素による歯の強化
歯磨きは習慣づけをする重要な時期ではありますが、虫歯との関連が低い時期でもあります。
こちらの記事もぜひ参考にしてください。
卒乳が遅くなると、こどもが虫歯になりやすいと聞きました。本当ですか?
2歳くらいの子どもの歯と食事の関係
2歳半ぐらいの子どもの食事、おやつと噛むことのかかわり
3歳ぐらいの子どもとフッ素とキシリトールについて
乳歯は虫歯に対する防御力が永久歯に比べると弱く、お菓子などをだらだらと食べてしまうと、非常に虫歯リスクが高くなってしまいます。
フッ素で溶けにくい歯をつくっていきましょう。
ホームケア用のフッ素を毎日使用することは効果的です。
歯磨きの習慣を定着させるためには重要な時期です。
自分でなんでもやってみたいお子さんもいますね。
まずは自分で磨いてみて、その後に保護者の方が仕上げ磨きをしていきましょう。
この時期は、奥歯の咬む面が虫歯になりやすいです。
定期的に歯科医院にて虫歯チェックと、濃度の高いフッ素でしっかりと歯を守りましょう。
4歳~6歳
乳歯が生えそろって安定したお口のなかの状態が続いています。
骨の中では静かに永久歯が成長してきて、乳歯から永久歯への生え変わりが近づいてきています。
奥歯の歯と歯の間が虫歯の危険地帯です。
可能であれば、保護者の方がデンタルフロスで奥歯の間のお掃除をするのが望ましいです。
なかなか毎日フロスまでするのは難しいとは思うのですが、歯ブラシでは届かないような部分が危ないんですよね…。
乳歯は前歯に隙間がある「空隙歯列」のお子様が多いので、一般に奥歯よりは虫歯リスクが低くなります。
もっとも、歯と歯の間に隙間のない「閉鎖歯列」のお子様は奥歯同様に前歯も虫歯リスクがあります。
この「閉鎖歯列」のお子さまは、将来的に歯並びがガタガタになりやすいとことが多いです。
というのは、永久歯の前歯は、乳歯の前歯よりかなりサイズが大きいので、乳歯のときに隙間が十分にないと、永久歯が綺麗に並ぶスペースが無いことがほとんどなのです。
虫歯チェックのついでに、歯科医院で歯並びチェックも受けることが好ましいでしょう。
6歳~小学校
6歳臼歯という大人の奥歯と、下の前歯が生えてくる時期になります。
歯は生え始めから完成まで約3年かかることが多く、6歳臼歯もとてもゆっくりと、歯肉から出てきます。
この、生えてくる途中は汚れが溜まりやすく注意が必要です。
保護者の方による仕上げ磨きは小学校低学年のうちは必須です。
可能であれば10歳くらいまでは続けていただきたいのですが、独立心の強いお子様の場合は難しいかもしれませんね。
歯の汚れに色をつける染色液(歯垢染色液)や液体歯磨きなどもおススメです。
当院も、受付で歯垢が染まる液体歯磨きを扱っておりますので、ご興味がおありの方はスタッフまでおたずね下さい。
汚れを視覚的に見てどこが磨けているか磨けていないか親子でチェックしてみるのもいい方法かと思います。
中学校~
永久歯が生えそろう時期となります。
保護者の方の仕上げ磨きがなくなる時期になり、虫歯が増えることも多いです。
部活動などでスポーツドリンクを頻繁に飲むような環境では、虫歯リスクがうんと高くなってしまうので注意が必要です。
https://tsuboidental.com/2018/07/28/dr-14/
部活に塾にと何かと忙しくなってくるでしょうから、定期的に受診するのが難しいとは思いますが、虫歯が増える時期でもあります。
なんとか受診して頂けたら歯科医師としては嬉しく思います。
まとめ
いかがでしたか?
2回に分けて、乳幼児~中学生までの虫歯予防のポイントをお話させていただきました。
どの年齢も、痛みがなくても定期健診をおススメします。
定期健診を行うことで、虫歯チェックも磨き残しの癖や、歯並びのチェックなど、重症になる前に予防できます。
虫歯も生活習慣病の一つです。
生涯通して、しっかりと虫歯を予防していきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました