永久歯(6歳臼歯と前歯)のエナメル質形成不全が増えている!?その原因とは?
2019年8月10日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
暑い日が続きますね。
最近書いた記事で、一番反響があったのが、エナメル質形成不全症についてでした。
参考記事:エナメル質とその形成不全について~治療と原因~
気にされておられる方が多いことがよくわかりましたので、最近の学会での傾向や知見などを改めてまとめてみることにしました。
エナメル質形成不全とは?
エナメル質形成不全症とは、人体で最も硬く頑丈なエナメル質が、エナメル質石灰化不全の状態で生えてくることを言います。
そういった歯は、通常のエナメル質より軟らかく、色も白い歯に比べてクリームやブラウンがかったようであり、また表面も輝きがなく実際ボソボソとして柔らかいです。
原因は遺伝子に関連があるものと、関連がないもの(全身的な原因のものと部分的な原因のもの)に分けられます。
最近注目されているエナメル質形成不全「MIH」とは?
最近そのエナメル質形成不全にかかわることで、話題になっているのが、第一大臼歯(Molar)と前歯(Incisor)に限って発生するエナメル質形成不全症(Hypomineralization)で、頭文字を略して、MIHと言われるものです。
MIHは、大臼歯・前歯のエナメル部分に、境界がはっきりした色のエナメル質形成不全部分(透明感のないクリーム色やキャラメル色)が見られます。
前歯と、第一大臼歯によく起こるのですが、臨床でよく問題になるのは奥歯である、第一大臼歯の形成不全です。
生える途中の大臼歯は、歯茎に中途半端に覆われており、何もなくても炎症が起きやすく(≒いたくなり易く)、汚れが溜まりやすい(≒虫歯になり易い)です。
エナメル質が脆いと、大人の知覚過敏のように食事や歯磨き時に凍みる、みたいな感じで痛むことがあります。
そうなると、子供は自然に痛いところは避けるので、弱い歯がさらに磨かれないという悪循環に入ってしまいます。
また、生えたての歯は歯の頭(歯冠)部分が出来ていても、根が出来ていません。
そのため、治療はまず神経の治療にならないようにセメントもしくは必要に応じて歯冠全体を覆う既成の被せ(いわゆる銀歯)をすることが多いです。
不幸にして一部もしくは全体の神経の処置になれば、生えたての歯の神経の治療は痛みも激烈ですし予後も悪いため、歯医者にとっても本当に困難です。(本音ではしたくありません…)
MIHの子どもが増えている!?
MIHは、2001年のから言われた新しい概念で、それまでは実際虫歯になっていたことも多く、虫歯としてみなされていた様です。
2012年頃から日本小児歯科学会を中心に研究が盛んになりましたが、その報告からすると子供の11%~20%の頻度でMIHがみられると報告されています。
これは5人~10人に一人の割合であり、歯科医師からするとかなりの頻度であると言えます。
MIHの原因とは?
では最後に、MIHの原因についてです。
いまだに、特定の原因は明らかになっていませんが、関連が疑われているものは下のように色々と挙げられています。
*International journal of Clinical Pediatric Dentistry, Sep-Dec 2012;5(3):190-196 から主に抜粋
- 呼吸系アシドーシス;呼吸不全により二酸化酸素が体内に蓄積し過ぎて体液が酸性に傾く状態
- 妊娠中の高熱・糖尿
- 長く続く悪阻や体調不良
- 周産期における、様々な薬剤(子宮筋弛緩薬など)によりもたらされる低カルシウム血症や低酸素症
- 早産
- 乳児期における、中耳炎・肺炎・喘息・尿路感染・水疱瘡などによる抗生剤投与
- 母乳を介してのダイオキシン汚染
この論文以外では、最近増えてきている、くる病との関連が指摘され、ビタミンDや日光との関連も指摘されています。
つまりは、第一大臼歯のエナメル部分が形成され始める、出産前28週と出産後10日の間の何かもしくは複合要因ではないかと言われていますが、現在研究中としか言えない状態です。
MIHを含むエナメル質の形成不全は人によって程度の差が大きく、処置内容もそれによって大きく異なります。
まずは精査が重要ですので、気になった方は、悪化する前にお気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 最近言われるMIHといわれるエナメル質の形成不全では、大臼歯・前歯に、境界がはっきりした色の変化部分(透明感のないクリーム色・キャラメル色)が見られる。
- 第一大臼歯では部位非対称な形成不全であることが多く、程度にも差がある
- 知覚過敏のようなしみる痛みが出やすく、痛みにも過敏であるため、完全な沈静化は困難である
- 急速な虫歯の進行がみられることがあり、特に注意が必要である。
- 原因は複合的で不明であるが、5-10人に一人程度とかなり頻度が高い
気になることがあれば、まずは一度ご相談ください。
授乳や卒乳の方法や時期で、子どもの口呼吸を引き起こしてしまう!?
2019年7月22日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
暑い日が続きますね。
今回はお子様のお口ポカンと授乳・卒乳・離乳食の関係について、お話したいと思います。
唇を閉じられない子どもが増えている
最近、診療を通して「唇の力が弱いな」と感じるお子さまも増えています。
また、保護者の方の以下のようなお悩みをよく聞きます。
「この子、本当にすぐ風邪をもらっちゃうんです」
「食べるのが本当に遅くて…家族の全員が食べ終わっても、この子だけ食べてるんです」
「よく飲み物を口からこぼすんです」
「食が細くて、あまり食べてくれません。でもお菓子なら完食するんです。」
「うちの子、何か、食べ方が変なんです。飲み込む時に上を向いたり…舌を出したり…」
「お箸の握り方がおかしいんです。どうしても、親指をうまく使えなくて、小指を器用に使って…」
どれも保護者の方にとっては、とても心配ですよね。
このような症状は、
お子様の発達に合わせた授乳・離乳をうまくできなかったことが原因になっていることもあると言われています。
特に「お口ポカン」=口呼吸は、当ブログでも何度も取り上げてきました。
関連記事
歯並びが悪いのは遺伝ですか?その2 出っ歯編②お口ポカンについて
口呼吸は、出っ歯になってしまったり、風邪をひきやすくなる原因にもなります。
平成27年の日本歯科医学会の「子供の食の問題に関する調査」によると、最近のお母さんの心配事、困り事の上位は以下の通りです。
子どもの食に関する保護者の悩み
- 偏食する
- 食べるのが遅い
- 子どもの食べやすい食事の作り方が分からない
- 忙しくて手をかけてあげられない
共働き家庭が増える中、「子どもの食になかなか時間をかけてあげられない…」という悩みは、珍しくありません。
しかし、その結果、「子どもの口や喉の機能がスムーズに発達できていないケースが増えているのでは?」とも思います。
発達時期に合わせた食事(食べさせ方・食形態・食具)の大切さ
離乳期に保護者がスプーンで口の中に食事を入れると、捕食ができなくなる
捕食とは
摂食嚥下(せっしょくえんげ)は、捕食(ほしょく)⇒咀嚼(そしゃく)⇒嚥下(えんげ)の流れで行われます。
捕食とは食べ物を認識し、口に入れる段階です。
この時は、唇と歯を用います。
食べ物を口に入れたら、唇をしっかり閉じることで咀嚼が始まります。
離乳期にしっかり、唇の力を鍛えてあげるためには「スプーンを口に入れない」ことが大事と言われています。
つまり、
口の中にスプーンを差し込んで、食べ物を口の中に流し込んであげてしまうことは良くないということです。
赤ちゃんの口の中にスプーンを入れて食べ物をあげるリスク
- 唇の発達が遅れる
- 接触過敏症といって唇への刺激を嫌がってしまう
- 舌の運動機能の発達が遅れる
離乳期に口の中に食べ物を流し込んであげてしまい、
そのため唇を閉じることを覚えることができなければ、どうなるでしょうか?
唇をちゃんと閉じることができなければ、舌を上顎に押し付けて飲み込む「成人嚥下」を獲得できません。
すると、授乳期の飲み込み方である、舌を前に突き出して飲み込む「幼児嚥下」がその後も残ってしまうのです。
舌を前に突き出して飲み込む癖を残してしまうと、出っ歯になってしまいます。
また、舌の運動機能の発達が遅れます。
食べ物を喉の方に送りこむことが難しいので、上を向いて、食べ物を重力で喉側に移動させたり、食べるのが遅くなったりすることがあります。
こうした「間違った嚥下法」を誤学習してしまった後で矯正するのは、大変です。
具体的には、嚥下と呼吸を矯正する装置(マイオブレイスやチューイングブラシなど)を用いてトレーニングしないといけない場合もあります。
そうなればお金も手間もかかってしまいます。
最初から正しい発達ができるよう「予防」してあげることが重要です。
チューイングブラシについてはこちらの記事も参考にしてください。
赤ちゃんの捕食能力を育てる食べさせ方
①口の前にスプーンを差し出す
②上唇の内側をスプーンで軽く刺激する
③赤ちゃんが自分からパクッとスプーンに食いつくように食べさせる
「つかみ食べ」の時期には
「大人のこぶし大の大根の水煮」「大き目の人参やブロッコリーの煮たもの」などもおススメです。
赤ちゃんがつかみ食べするとき、とても散らかしますので、片付けやすいようにマットを敷いてあげると良いでしょう。
大きな大根の水煮がよいワケ
赤ちゃんが大きな大根の水煮をかじる時、以下のトレーニングができます。
口を大きく開ける⇒
唇で食べ物をしっかり認識する⇒
大きく口をあける⇒
かじりついた後、唇を閉じて捕食・嚥下
離乳期に唇をしっかり閉じることや、飲み込む瞬間に舌を上顎にぐっと押し付けることをトレーニングすることで、正常な飲み込みができるようになっていきます。
また、この時期にお野菜の水煮などをつかみ食べさせてあげると、食に積極的になったり、偏食を予防しやすいと言われています。
もっとも、最初はポイ!とされてしまうことも多いと思います。
興味のあるものはどんどん口に運ぶ時期。
歯ぐきでつぶせる硬さに煮た、大き目のお野菜をかじらせてあげることがおすすめです。
手づかみ食べはいつから始めて、いつからスプーンにしたらいいの?
手づかみ食べは生後9か月くらいから2~3歳ころまで、スプーンと手づかみの両方で食事させてあげる方が、お子様の発達には良いと言われています。
スプーン⇒フォーク⇒お箸の順に覚えさせる
お箸は「鉛筆持ち」ができるようになった3歳以降で十分!
離乳食は「手づかみ食べ」と「赤ちゃん用のスプーン」からスタートしましょう。
忙しいお母さんが、スプーンをとばして、フォークをお子様に使わせるケースが最近は増えているそうです。
フォークは「すくう」「刺す」ができてしまいます。
フォークはスプーンより食べ物が先端にあります。
スプーンで捕食機能が十分に身についてから挑戦した方が良いでしょう。
また、お箸のスタートは「もっと後」。
人の手の指は、小指から順に発達してきます。
親指が十分に発達していない時期にお箸を覚えさせると、その子の握りやすい形で、お箸を使い始めてしまいます。
大抵、小指を上手に使って、親指をあまり使わなくても食べられるように「誤学習」してしまうのです。
お箸のスタートはいつから?
親指がしっかり使えるようになっていることが前提になります。
「スプーンをペングリップ(鉛筆持ち)で握ることができ、親指・人差し指・中指の3本で逆手持ちできるようになってから(多くは3歳以後)」が目安とされています。
食事マナーはいつから覚えさせる?
手づかみ食べを「いつやめる」かは、諸説あります。
いつまでと目標を決めずに自然と止めるのを待つ説
幼稚園や保育園などの集団生活を機にやめる説
多くの人は、3歳を過ぎたころから、それぞれのタイミングで食事マナーを覚えながら卒業していくようです。
まとめ
いかがでしたか?
「離乳食の大事さはよくわかったけど、手づかみ食べって片付け大変じゃないですか…。そんなに手をかけてあげられない…」と思われた方も多いのではないでしょうか。
本当に、ごもっともだと思います。
しかし、想像してみてください。
お子様が食に関する何かの問題が出てしまったとしたら。
それを治すには、もっと手間と時間がかかってしまいます。
お子様の食についてお悩みの方の参考になれば、幸いです。
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2歳と4歳ではどう違うの?年齢に合わせた虫歯や歯並び対策
2019年7月19日
こんにちは、つぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
前回は2歳くらいまでの虫歯予防についての話をしてみました。
乳児の虫歯予防のポイントは?歯磨きは何歳からがんばればいいの?
今回はその続きとなる年齢について考えていこうと思います。
2歳半くらい~3歳
お口の中には全ての乳歯が生えて、いわゆる乳歯列が完成してくる時期になります。
早い子だと、お菓子デビュー、甘いものデビューしている子もいるでしょうね。
2~3歳の虫歯予防ポイント
食生活管理>フッ素による歯の強化
歯磨きは習慣づけをする重要な時期ではありますが、虫歯との関連が低い時期でもあります。
こちらの記事もぜひ参考にしてください。
卒乳が遅くなると、こどもが虫歯になりやすいと聞きました。本当ですか?
2歳くらいの子どもの歯と食事の関係
2歳半ぐらいの子どもの食事、おやつと噛むことのかかわり
3歳ぐらいの子どもとフッ素とキシリトールについて
乳歯は虫歯に対する防御力が永久歯に比べると弱く、お菓子などをだらだらと食べてしまうと、非常に虫歯リスクが高くなってしまいます。
フッ素で溶けにくい歯をつくっていきましょう。
ホームケア用のフッ素を毎日使用することは効果的です。
歯磨きの習慣を定着させるためには重要な時期です。
自分でなんでもやってみたいお子さんもいますね。
まずは自分で磨いてみて、その後に保護者の方が仕上げ磨きをしていきましょう。
この時期は、奥歯の咬む面が虫歯になりやすいです。
定期的に歯科医院にて虫歯チェックと、濃度の高いフッ素でしっかりと歯を守りましょう。
4歳~6歳
乳歯が生えそろって安定したお口のなかの状態が続いています。
骨の中では静かに永久歯が成長してきて、乳歯から永久歯への生え変わりが近づいてきています。
奥歯の歯と歯の間が虫歯の危険地帯です。
可能であれば、保護者の方がデンタルフロスで奥歯の間のお掃除をするのが望ましいです。
なかなか毎日フロスまでするのは難しいとは思うのですが、歯ブラシでは届かないような部分が危ないんですよね…。
乳歯は前歯に隙間がある「空隙歯列」のお子様が多いので、一般に奥歯よりは虫歯リスクが低くなります。
もっとも、歯と歯の間に隙間のない「閉鎖歯列」のお子様は奥歯同様に前歯も虫歯リスクがあります。
この「閉鎖歯列」のお子さまは、将来的に歯並びがガタガタになりやすいとことが多いです。
というのは、永久歯の前歯は、乳歯の前歯よりかなりサイズが大きいので、乳歯のときに隙間が十分にないと、永久歯が綺麗に並ぶスペースが無いことがほとんどなのです。
虫歯チェックのついでに、歯科医院で歯並びチェックも受けることが好ましいでしょう。
6歳~小学校
6歳臼歯という大人の奥歯と、下の前歯が生えてくる時期になります。
歯は生え始めから完成まで約3年かかることが多く、6歳臼歯もとてもゆっくりと、歯肉から出てきます。
この、生えてくる途中は汚れが溜まりやすく注意が必要です。
保護者の方による仕上げ磨きは小学校低学年のうちは必須です。
可能であれば10歳くらいまでは続けていただきたいのですが、独立心の強いお子様の場合は難しいかもしれませんね。
歯の汚れに色をつける染色液(歯垢染色液)や液体歯磨きなどもおススメです。
当院も、受付で歯垢が染まる液体歯磨きを扱っておりますので、ご興味がおありの方はスタッフまでおたずね下さい。
汚れを視覚的に見てどこが磨けているか磨けていないか親子でチェックしてみるのもいい方法かと思います。
中学校~
永久歯が生えそろう時期となります。
保護者の方の仕上げ磨きがなくなる時期になり、虫歯が増えることも多いです。
部活動などでスポーツドリンクを頻繁に飲むような環境では、虫歯リスクがうんと高くなってしまうので注意が必要です。
https://tsuboidental.com/2018/07/28/dr-14/
部活に塾にと何かと忙しくなってくるでしょうから、定期的に受診するのが難しいとは思いますが、虫歯が増える時期でもあります。
なんとか受診して頂けたら歯科医師としては嬉しく思います。
まとめ
いかがでしたか?
2回に分けて、乳幼児~中学生までの虫歯予防のポイントをお話させていただきました。
どの年齢も、痛みがなくても定期健診をおススメします。
定期健診を行うことで、虫歯チェックも磨き残しの癖や、歯並びのチェックなど、重症になる前に予防できます。
虫歯も生活習慣病の一つです。
生涯通して、しっかりと虫歯を予防していきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました
子供にホワイトニングさせたいんですけど・・・
2019年6月29日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
雨の日も少しずつ周期的になっていき、梅雨入りなどのキーワードが出てきましたね。
こういう時は夏風邪も流行ったりして、体調も崩しやすいので、皆さんお気をつけください。
子どもにホワイトニングをさせたいんですけど
最近患者さんからご相談を受けて、気になったのが上のご質問です。
つぼい歯科クリニックでは、大人のご希望の方には、自宅でのマウスピースを使った歯の漂白(ホームホワイトニング)を行っています。
このご質問は、当院でのホワイトニングに、ご満足いただいた保護者の方からのものです。
日本では未成年に、歯科医院でのホワイトニングはできない?
最近流行のセルフホワイトニングと異なり、歯科医院でのホワイトニングは漂白です。
歯科医院でのホワイトニングは、サロンやエステでは扱えない薬剤を使用します。
そのため、セルフホワイトニングとは別物で、効果が高いものとなっています。
日本では歯科医院で使用する、ホワイトニングの薬剤は、基本的に18歳未満の方には使用できないことになっています。
なぜでしょうか?
日本で未成年に歯科医院でのホワイトニングが推奨されないワケ
1)そもそも生えたての永久歯は黄色く見えます。
実は、乳歯と永久歯は色合いが違います。
乳歯は青白色と言われており、少し青っぽい色をしています。
一方、永久歯は黄色っぽい色をしています。
これは歯の中の象牙質が、薄いエナメル質(表面)から透けて見えているからです。
ただ、永久歯の歯の色は他の乳歯も永久歯に生え変わることによって、お口全体の全体の色調が統一され、気にならなく(≒白く見えるように)なります。
2)日本人は歯が黄色い?
正解です。
日本人を含めた黄色人種は、白人や黒人の方と比べてエナメル質がやや薄く、柔らかく、透明感が強いという特徴があります。
従って、日本人では象牙質の黄色みが透けて見えやすく、歯が黄色く見えます。
これは「虫歯が進行しやすい」という特徴とも重なりますので、ぜひ覚えておいてください。
3)歯はいつ頃成熟するの?
永久歯は生え始めてから何年かかけて徐々に表面が成熟し、固くなっていきます。
しかし、萌出時期や成熟の早さは個人差があり、成熟の確定診断は難しいと言われています。
ホワイトニングは歯質を少し弱めて、薬を入り込ませて脱色するのですが、未成熟な歯での安全性は確率していません。
そのため未成年でのホワイトニングは適応外とされています。
4)そもそもホワイトニングの適応症とは?着色している歯とは?
そもそもホワイトニングの適応症は、加齢による黄ばみ、軽度のテトラサイクリン変色歯、失活歯などの変色歯です。
これに当てはまる未成年者は、あまりいません。
多くの小児の場合、ほとんどの着色は外来性のものが多いです(麦茶や色の濃いお菓子など)。
この場合においては、歯面は研磨において十分キレイになりますので、それで十分だと考えます。
従って小児の場合、基本的にはホワイトニングよりも、健康な歯肉と歯を獲得することを目標とした定期健診、歯面研磨などの口腔ケアの方が大事です。
ただ外傷等によって歯の色が変わってしまった場合、お子さんが思春期などに、ひどく悩まれる場合があります。
歯科医師としてはこの場合、上記の様な原則にこだわることなく解決する努力をいたしますので、なにかあれば個別にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 日本では18歳未満の方へ、歯科医院での薬物を用いたホワイトニングは適応ではありません。
- 日本人の生えたての永久歯はエナメルが薄いため、少し黄色みががかっています。
- 多くのお子さんにおける歯の着色は、外来性の色素である場合が多いです。
- 基本的には定期健診と、その時に行う歯面清掃によってキレイな状態を保つのがおススメです。
気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。
乳児の虫歯予防のポイントは?歯磨きは何歳からがんばればいいの?
2019年6月6日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦和則です。
虫歯予防は生涯にわたって必要なことですが、今回は特に低年齢の虫歯予防について話を進めて行ってみようと思います。
第一回の今回は、乳幼児期についてです。
年齢別虫歯の予防方法について
乳児(0歳児)期
歯みがきより食生活が大事
この時期は、歯磨きよりもフッ素や食生活管理のほうが、確かな予防効果があります。
授乳、卒乳の影響も大きいとされています。
卒乳が遅いと虫歯になりやすいということが、疫学的に分かっています。
食生活管理がちゃんとできていれば、この時期に虫歯になることはあまりありません。
ですから、この時期の歯磨きは「習慣づけ」の側面が大きいと言えます。
保護者の方が、赤ちゃんの口に指を入れて、お口の中をしっかり見ることが出来るよう、慣らしてあげましょう。
「どうしても泣いてしまって難しい」と言う場合は、歯磨きシートで代用することも可能ですが、少しずつ歯磨きトレーニングは始めて行きましょう。
また、低濃度フッ素の活用も効果的です。
赤ちゃん用のフッ素スプレーやジェルもありますので、ご興味がおありの方はお試しください。
離乳食が始まると、ミルクの飲ませ方が大事になる
虫歯というのは、お口の中の細菌の作用によって、「歯が溶ける」ということです。
母乳には乳糖という、糖の一種が含まれていますが、母乳の乳糖濃度のみでは虫歯はできないと言われています。
野生の動物の赤ちゃんが、母乳で虫歯にならないのと同じですね。
ただ、離乳食が始まれば話は別です。
離乳食に含まれる糖分と母乳の糖分が合わせ技で、虫歯をつくってしまうことは、珍しくありません。
母乳はお母さんと赤ちゃんの大切なスキンシップです。
しかし、離乳食が始まったあとは「だらだら飲み」になりやすく、特に、夜間授乳は非常に虫歯のリスクを高くしてしまうことで知られています。
また、1歳半を超えての夜間授乳は、歯科医師としては
「難しいのは承知ですが、それでも、できれば避けてください」と申し上げたいところです。
遅くなれば遅くなるほど、虫歯のリスクが上がってしまいます。
そして、4歳未満で虫歯を作ってしまうと、生涯を通して虫歯リスクが(乳歯が永久歯に生えかわった後も)高いままであることが、研究で分かっています。
でも、今日からすぐに卒乳は無理ですよね。
そんな時は、「歯を強くする、虫歯ができにくい環境をつくる」ということが、重要だと思います。
具体的には2つです。
- 赤ちゃん用のフッ素を使う
- 食事やおやつ、飲み物からの砂糖の量に気を配ること
ぜひお試しください。
1歳半~2歳
歯みがきトレーニングをしましょう
お口の中には前歯と横の歯あわせて16本程度の乳歯が生えてくる時期になります。
1歳半~2歳にかけての虫歯は上の前歯がほとんどです。
歯磨きに慣れながら虫歯予防をすすめていきましょう。
虫歯菌は、常在菌といって、お口のなかに定着している菌のひとつです。
3歳までに80%のお子さんで虫歯菌の定着がおこってしまいます。
虫歯菌の定着は遅いほうが虫歯予防には有利なので、保護者の方とお子様が1本のスプーンを共有して、お食事されるようなことは、避けた方が良いでしょう。
参考:院長ブログ こどもの虫歯菌はどこから来るの?
この時期も、まだ歯磨き(仕上げ磨き)より飲食習慣の管理の方が重要であるとされています。
お兄ちゃん、お姉ちゃんが甘いおやつを既に食べる時期になっていて、1~2歳の下のお子様が、上のお子様のおやつを欲しがるようになり、低年齢でアイスやチョコや飴を口にし始める…というケースもありますので、要注意です。
参考:末っ子は虫歯が多い!? 兄弟がいるお子様にありがちな虫歯のできる理由
この時期に市販のお砂糖たっぷりのオヤツを食べると、あっという間に虫歯になってしまいます。
「おやつは上のお子様が、下のお子様に合わせる」ようにすると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
- 低年齢では、歯磨きより食生活管理が大事
- 離乳食が始まると、夜間授乳による虫歯リスクが高くなります
- 赤ちゃんと保護者の方のスプーンは分けましょう
次回は、3歳以上のお子様の虫歯予防について、お話していく予定です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
永久歯の本数のトラブル(先天性欠損歯や過剰歯)について
2019年6月1日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
長い連休が終わり、今は暑くもなく寒くもなく丁度良い季節ですね。
5月は幼稚園、小学校などでも検診が行われ、皆さんから歯並びの相談などを受けることがあります。
その中で、最近増えているのが、歯の数の問題です。
今回は永久歯の本数によるトラブルをテーマにお話ししていきます。
歯数の問題には、永久歯の歯の数が足りない先天性欠損と、余分な歯の芽である過剰歯が存在するという大きく二つが挙げられます。
1)永久歯が生えてこない!?先天性欠損歯について
先天性欠損歯については、2010年に日本小児歯科学会の大規模な調査が行われました。
その調査では10%、つまり10人に1人ぐらいに一本以上の先天性欠損(欠損歯)が存在することが明らかになりました。
10人に1人は歯科医師としてはかなり多い頻度に思います。
先日、つぼい歯科クリニックでも、学会の研究協力の一環で、当院における先天性欠損歯の頻度を調べました。
結果は、やはり日本小児歯科学会の大規模な調査と変わらない頻度(7%)でした。
欠損部位について
欠損部位としてよくあるのは、下の前歯(前から1-2番目)と小臼歯(前から4-5番目)です。
下の前歯が少ないと、下顎の前方部の成長が少し悪くなるので、咬み合わせが深い歯並び=出っ歯になることが多いです。
また、上下の歯の真ん中(正中)が少しずれますが、気になるほど目立つことはあまりありません。
小臼歯がない部位で乳歯が抜けると、大臼歯(6番目)が倒れる場合が多くなります。時間の経過とともに咬み合わせが低くなり、顎関節症をおこす原因にもなり得るので、何らかの矯正治療か補綴治療(歯列の隙間を冠やブリッジ、入れ歯などでうめる治療)が望ましいです。
その一方で、虫歯でない場合、乳歯も意外と維持できる(30~40代まで)ので、抜けるまで様子を見るケースもあります。
2)過剰歯について
過剰歯は近年まだ決定的な調査はなされてはおりませんが、2-5%の頻度であると言われています。
当院でも先日併せて調査を行いましたが、2%ぐらいでした。
40-50人に一人、つまりはクラスに1人ぐらいの割合ですね。
過剰歯の場合、圧倒的に上の前歯の間に存在します(70%程度)。
過剰歯には上向き、水平、下向きの3パターンが存在し、上向きの場合、生えてくることがあります。
過剰歯はイメージとして、上顎の真ん中に釘が刺さっているようなもので、前歯の永久歯はそれを避けて生えようとします。
そのため、歯並びが相当悪化する場合があります。
歯並びに影響する場合、過剰歯の抜歯は必須ですし、矯正もかなりの確率で必要です。
3)それら以外の歯の萌出障害
その他にも何らかの原因で、歯の萌出障害(生えてこない・傾いて生えてきた等)を生ずる場合があります。
多いのは、上顎前歯と犬歯(前から3番目)です。
原因によっては、手術込みの矯正治療が必要となる場合があります。
4)治療について
先天性欠損歯は、基本的に今ある乳歯や永久歯を維持し、咬み合わせを保っていく、いわゆる「待ち」の状態で考えます。
一方、過剰歯・萌出障害は処置のタイミングが大事で、手術込みの矯正を行う場合があります。
どちらにしても詳しい診査が必要ですので、歯の数について何かお気づきのことがありましたら、早めにご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
- 永久歯の本数についてのトラブルには、先天性欠損歯や過剰歯が挙げられます。
- 先天性欠損歯は10%、過剰歯は2-5%と、頻度は意外と高く、最近よく相談をうける問題です。
- 先天性欠損歯の場合、基本的には今ある乳歯や永久歯を維持し、咬み合わせを保っていくことが重要です。
- 過剰歯や、萌出障害の場合、手術込みの矯正が必要となる場合が多く、タイミングが重要で、詳しい精査が必要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
フッ素入りの歯みがき粉や洗口剤などについて
2019年5月17日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 歯科医師の松浦です。
そろそろ企業や学校の歯科健診のシーズンですね。
今回はむし歯予防のための、フッ素についてお話していきます。
フッ素について
フッ素といえば、テレビCMなどでも、虫歯予防の代名詞のように言われていますね。
実際、フッ素は虫歯予防に対して、しっかりとした効果が得られることが明らかになっています。
参考 ドクターズブログ:フッ素は危険?3歳~6歳ぐらいの子どものフッ素についての話
フッ素が歯を丈夫にするメカニズム
フッ素の作用としては、歯の表面構造を丈夫で安定なフルオロアパタイトという構造に変化させて溶けにくい歯、虫歯に強い歯にするというものです。
虫歯を予防するという点からすると、欠かせない存在であることは確かです。
フッ素は食品にも含まれており、紅茶などにも含まれています。
参考 院長ブログ:お母さんが妊娠中に赤ちゃんの歯を丈夫にできる食べ物とは?
歯みがき粉とフッ素
フッ素はほとんどの歯磨き粉に配合されています。
市販品の約9割がフッ素配合みたいです。
逆に、フッ素入りではない歯磨き粉を探す方が困難なようです。
高濃度フッ素含有の歯みがき粉について
フッ素濃度が950ppm程度である歯磨き粉がほとんどでしたが、最近では高濃度フッ素と言われる1450ppm程度まで認可されました。
濃度が高い方が虫歯の予防効果は高いです。
しかし、注意も必要です。
高濃度のフッ素による副作用リスクもあるため、6歳未満のお子さまへは使用させない、また、保管も6歳未満のお子さんの手の届かないところにするように、厚生労働省より各歯科医院に通知が来ています。
小さなお子様がいるご家庭では、注意してご使用ください。
歯みがき後うがいをするとフッ素が洗い流されます。
フッ素入りであることを意識するのであれば、歯磨き後のうがいはほどほどにして、お口の中にフッ素が残る方が効果的です。
もっと確実な方法として、歯磨き後普通にしっかりうがいをして、唾液の分泌の少ない寝る前にフッ素入りのジェル歯に塗って寝るという方法もおススメです。
歯科医院でのフッ素塗布と自宅でのフッ素を併用しても大丈夫なの?
作用機序が違うので、併用して問題ありません。
歯科医院で使用しているフッ素の濃度は9000ppmです。
毎日ご自宅でフッ素で虫歯予防をして、あとは定期的に歯科医院で高濃度のフッ素を用いて予防を行っていくのがベストではないかと思います。
フッ素入りの洗口剤について
他にも洗口剤と言ったうがい薬のようなものによるフッ素の応用もオススメです。
洗口剤は歯磨き粉やフッ素入りジェルよりも細かい部分にフッ素が入り込んで虫歯を予防してくれるので、予防効果が高いです。
つぼい歯科クリニックではミラノールという洗口剤をおすすめしています。
就寝前にうがいをします。
お口の中にフッ素が残っている状態において、歯の表面構造が変化していきます。
先ほどの歯磨きの後のうがいもそうですが、お口の中にフッ素が残っているということが重要なんです。
寝る前洗口剤でうがいをして、そのまま寝るというのは理にかなっているように思います。
年齢やお口の中の状態によっても、より良いフッ素の使い方が異なりますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
- フッ素とは歯の表面に作用し、歯を丈夫にします。
- 高含有量のフッ素入り歯磨き粉が発売されましたが、6歳未満のお子さまのいるご家庭では注意が必要です。
- フッ素はお口の中に長時間残っていることが大事なので、寝る前にフッ素入り洗口剤の使用がおススメです。
幼稚園、小学生のこどもの成長に合わせた自宅での歯みがきポイントとは?
2019年4月28日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
まだまだ肌寒い日もありますが、季節は確実に変わっていきますね。
また、先日は、新しい年号の発表もあり、僕は季節だけでなく、時代の変わり目まで感じてしまいました。
お子さんもそれぞれ進学、進級され、新たな目標を立てたりされていると思います。
つぼい歯科クリニックでは、定期健診時に、個々のお子さまに合った歯磨きの指導をしています。
今回は、お子さまの成長ステージに合わせた、ホームケアの目標をテーマにお話していきます。
お子さまの成長ステージに合わせたホームケアの目標
1)赤ちゃんや未就園児について
ポイント 食習慣
この時期は、歯磨き習慣よりも、食生活習慣が虫歯に影響する割合が多いです。
母乳に対する対応や、食生活に対する指導が中心です。
参考:卒乳が遅くなると、こどもが虫歯になりやすいと聞きました。本当ですか?
2歳くらいの子どもの歯と食事の関係
2歳半ぐらいの子どもの食事、おやつと噛むことのかかわり
3歳ぐらいの子どもとフッ素とキシリトールについて
歯磨きも自分でやりたがるお子さんも多いと思いますが、歯ブラシを本人用に持たせることはあっても、歯磨きの主体は保護者による仕上げ磨きです。
参考:こどもが歯磨きを嫌がってさせてくれません。どうすれば良いでしょうか?
また適宜、フッ素を使用することも重要です。
2)幼稚園児
ポイント 食生活+仕上げ磨き+フッ素
幼稚園児では、食生活も重要ですが歯磨きの重要性も増してきます。
乳歯が生えそろうと、乳歯は歯と歯が面でくっついているので、保護者の方によるフロスの使用が効果的です。
また、年長ぐらいになると6歳臼歯など永久歯が生えてきます。
そのため、個別にしっかり磨くと共に、フッ素を効果的に使用することが望まれます。
3)小学生低学年(2年生まで)
ポイント 歯みがき+仕上げ磨き+フッ素
この頃になると、永久歯も前歯と6歳臼歯がだいたい生えそろいます。
6歳臼歯が萌出したり、乳歯が生え変わる時期では歯茎が痛いなど、いろいろなことがありますが、
ほとんどは不潔性の歯肉炎の状態であることが多いです。
少し痛くてもしっかり磨く事が重要ですので、永久歯の磨き方をしっかり指導します。
また本人のみで磨きたいなどの発言も増えますが、歯質の面からも7-8歳までは保護者様に仕上げ磨きをしていただきたいのが、歯科医の本音です。
4)小学校中学年(4年生頃まで)
ポイント 歯みがき+フッ素
このころになると、乳歯がだいぶ抜け出します。
また、6年生でしっかり自分でコントロール=自律的に磨いていくのを目標とした場合、急に自分で磨く事が重要になってくる時期です。
お子さんもまだ思春期前で、素直な面もありますので、歯垢染色液などを定期的に使用して、自分で苦手な部分の磨き方を習得できるよう、指導します。
フロスも時間はかかりますが、自分でできる子もいます。あきらめずにチャレンジさせてみましょう。
5)小学校高学年(6年生頃まで)
ポイント 自律的な歯みがき+フッ素
小学校も高学年ともなりますと、思春期の入りかけです。このころになると、自分でできる自律的な歯磨きが大事になります。
『お口を開けて』なんて言っても、嫌がられる場合もありますので、かえって第三者の目=歯科医院での指導が大事になる時期です。
僕も5年生の娘がいますが、声掛けには悩みます。
実際、この時期に幼若永久歯での大きな虫歯が見つかる方も多くいます。
この時期に大きな虫歯になると、お子さまが将来30~40代になった時に、厳しい状態になるケースが多いです。
また、本格的な矯正なども視野に入る時期ですので、歯科医院をしっかり利用して適切な指導をするのが重要であると考えます。
お子さまの乳歯が虫歯だらけで心配、という保護者の方へ
たとえ乳歯で虫歯が多くても、生え変わりでリセットがかかります。
永久歯の萌出直後の弱い時期を上手に乗り越えれば、その後の虫歯リスクはかなり低くなります。
小学生の時期は状態も心も大きく変わるので、保護者の方、歯科スタッフともに、お子さまへの声かけ・かかわり方が重要です。
保護者の皆様、ご自宅でも、お子さまへの適切な声掛けや指導をよろしくお願いします!
まとめ
いかがでしたか?
- 子どもの年齢、時期によって、歯磨きにおいても、目標が違ってきます。
- 小学校高学年での自律的な歯磨きを目指して、段階的に指導するのが重要です。
- 永久歯での健全な口腔内状況を目指した、適切な指導とフッ素等の使用が大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
エナメル質とその形成不全について~治療と原因~
2019年3月25日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
卒業式・入学式のシーズンですね。
桜の話題もちらほら出だしましたが、暖かい日もあれば、まだまだ寒い日もあります。
季節の変わり目ですので、皆さん体調管理には気をつけてくださいね。
さて、つぼい歯科クリニックでは、歯のエナメル質の状態を口腔内カメラなどでご説明することがあります。
また、エナメル質の形成不全を見かけることもよくあります。
今回は、エナメル質とその形成不全をテーマにお話ししていきます。
1)エナメル質とは?
そもそもエナメル質とはなんでしょうか?
歯の表面に厚いところで2ミリぐらいある、人間で最も硬い組織です。
硬さは、水晶並みですが、その代わりに脆く、割れやすい特徴があります。
エナメル質は皮膚と同じ外胚葉由来で、中胚葉由来の象牙質や歯髄とは性質が異なります。
2)エナメル質の破壊について—虫歯
エナメル質は大変硬い、強い組織ですが、いくつかの弱点があります。
その一つが酸に弱いこと、つまりは虫歯です。
虫歯はCの0-4までの5段階で評価されますが、大きな虫歯はC2以上となり、エナメル質内に限るものをC1、エナメル表面の異常(脱灰:白濁、粗造、褐色変化)をC0もしくはCeと表記します。
院内や当院の院長・ドクターブログでは「初期むし歯」とご説明しております。
特にC0段階であれば、フッ素塗布によって治ることがあります。
ですので、
つぼい歯科クリニックではこの段階の患者さまには、積極的に院内でのフッ素塗布やご自宅でのフッ素入り口腔ケアグッズの使用をおススメしています。
写真を撮って説明しているのもこの段階です。
3)エナメル質の破壊について—エナメル質の形成不全
次によくあるのが、エナメル質の形成不全です。
エナメル質形成不全になると、生えてきた歯には様々な異常が見られます。
エナメル質形成不全が起きている歯の特徴
- 濃い白色の部分がある
- 茶色くなっている
- 表面にくぼみや穴がある
特に歯がしみる場合は、エナメル質がすごく薄くなっていることがあり、注意が必要です。
エナメル質形成不全が起こる原因
局所的なものの場合
- 虫歯によって乳歯の根っこに異常がある
- 転倒などによって乳歯をぶつけて損傷した
その後に生えてくる永久歯がエナメル質形成不全を起こす場合があります。
全体的なものの場合
- 全身的な疾患
- 遺伝性
- 外胚葉異形成症や表皮水泡症など、由来が一緒の皮膚にも異常があるもの
遺伝や疾患が原因のものは比率としては1万人に1人ぐらいの頻度です。
また、早産や栄養不良などが原因でエナメル質に形成不全があるものもあります。
4)治療について
エナメル質形成不全の治療も虫歯の治療とほとんど同じです。
程度の軽いものは、フッ素塗布を主体とした経過観察で様子を見る場合が多いです。
程度の重いものは、セメントや樹脂でのコーティングが重要です。
しみてる歯はかなりエナメル質が薄く、生えたての歯は神経が太いです。
よって、修復物が取れやすくなるデメリットはありますが、できる限り歯を削る量を少なくして、エナメル質の代わりになるものを足していくことが大事であると考えます。
まとめ
いかがでしたか?
- エナメル質は歯の表面を覆う、人体で最も硬い組織です。
- エナメル質に異常をおこすものとして、虫歯とエナメル質形成不全症があります。
- エナメル質の形成不全症には部分的なものと全身的な要因が原因のものがあります。
- 治療法は、虫歯治療とほぼ同じで、フッ素塗布や樹脂でコーティングを行います。
気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
5-6歳のお子さんの自宅でできる歯並び矯正とは?
2019年3月3日
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村です。
まだまだ寒い日もありますが、暦の上では春になり、花粉情報なんかも出始めましたね…。
アレルギー性鼻炎のある僕も、つらいシーズンです。
最近、歯並び相談などを受ける際によく聞かれるのが「家庭でできることないですか」というのがあります。
ご家庭でできること・・実はたくさんあるんです。
歯並びは歯列(しれつ)と咬合(こうごう)に分けられます。
1)歯並びは歯列と咬合(咬み合わせ)に分けられます。
歯列とは
叢生(そうせい)や八重歯など
咬合とは
歯の咬み合わせ(出っ歯や受け口、開咬、噛み合わせのズレ(交差交合))など
特に咬合に問題がある場合は、口の機能全体に影響が出る場合があります。
2)歯並びを治療するには順番がある
歯科医が歯並びを治療するには、鉄則ともいえる順番があります。
- 機能的な異常の問題
- 前後的な問題
- 上下的な問題
- 幅の問題
まず、手をつけなければいけないのはお口の機能的な問題です。
Ⅰ.機能的な問題(お口の悪い癖)
指しゃぶり、頬杖、舌の動きの異常、左右の咬み合わせが違う交差交合、鼻詰まり(口呼吸)などがあげられます。
Ⅱ.前後的な問題・上下的な問題
出っ歯や受け口と言われる前後的な問題、咬み合わせが深い過蓋咬合(かがいこうごう)などの上下的な問題を治療することとなります。
※開咬(かいこう)は機能的な問題の要素が多いので、そちらに含まれます。※
幅の問題は(叢生〔そうせい〕や八重歯などの歯列)は最後です。
3)機能的な異常の治療は、家庭でも治せるものもある
機能的な問題の中には、先ほど挙げた指しゃぶり、頬杖、鼻詰まり(口呼吸)などが含まれます。
頬杖
家庭で正しい姿勢で過ごすことなどや座り方などで改善することがあります。
指しゃぶり
精神的な要素が多く、歯科のみでは改善しません。
また鼻詰まりもアレルギー体質であれば難しい問題であり、耳鼻科で治療する必要があります。
4)スマホで歯並びも悪くなる?
また最近多くみられるのが、お口が開いてるお子さんです。
この場合、原因はいくつか考えられます。
鼻が悪い、舌が下の歯に当たっている(低位舌)。
そういった問題がある子もいますが、関係あるのがスマホの見過ぎです。
ゲームすると下を見るためにストレートネックとなり、首が前に落ち込み、舌も下に落ち込み、その結果お口が開いている…
お子さんはそんなことになっていませんか?
5)結局は体も心もバランスが大事です。
僕も姿勢が悪く、歯並びも矯正して直しましたので、大きなことは言えませんが、最近特に、歯並びと姿勢には深い関連性が示されています。
また指しゃぶりや癖には心の動きが関連しており、歯科だけでは治せない問題が多く含まれます。お子さんの歯並び以外に問題がないか、歯並びを見る際に少し考えてみませんか?
まとめ
いかがでしたか?
- 歯並びは歯列と咬合に分けられる。
- 歯並びを治すには順番があり、まず機能的な異常が問題となる。
- 機能的な問題の中には、癖や習慣などは家庭で注意すれば解決できることもある
「うちの子はどうかな…?」と思われる方は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。