山口県岩国市の歯科保健の現状と今後の目標|虫歯減少と歯周病増加から見える課題
2026年3月28日
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。
前々回は世界の歯科保健、前回は日本の歯科保健についてお話ししました。
今回は、山口県や岩国市における歯科保健の現状と目標について解説します。
参考リンク
- https://tsuboidental.com/blogs/archives/8038
海外の小児歯科事情について― 日本との違いから見えてくる「予防」と「矯正」 ―
- https://tsuboidental.com/blogs/archives/8118
日本の口腔保健(小児歯科を含む)の目指すもの
1.山口県と岩国市の虫歯の現状|この20年で大きく改善
ここ10年で、全国的にこどもの虫歯は大きく減少しています。
山口県のデータでは、
- ・3歳児:平均むし歯数 0.53本/有病率 15.8%
- ・12歳児:平均むし歯数 0.6本/有病率 30%
20年前、DMF歯数(むし歯経験歯数)が「1を切った」と大きな話題になりましたが、そこからさらに半減しています。
また山口県全体で見ると、
- 平成元年:4.3本 → 現在:0.6本
と大幅に減少しています。
さらに岩国市では、平成30年時点で平均0.46本と、県内でも良好な水準です。
こうした背景から、今後10年の目標はさらに高く設定されています。
- ・3歳児で「むし歯4本以上」→ 0%
- ・12歳児で「むし歯なし」→ 90%
乳幼児や小学生のむし歯予防教育が行き届いている中で、より高いレベルを目指す段階に入っています。
2. 8020達成率|急速に改善している指標

「80歳で20本の歯を残す」という8020運動は、日本の歯科医療の大きな目標です。
「80歳で20本の歯がある人は、要介護になりにくい」という研究結果から、国や歯科医師会などが掲げる国民運動として「8020運動」が推進されてきました。
平成元年からのことですから、実に37年間、ずっと取り組み続けてきたことになります。
山口県では、
- ・2016年:約20%
- ・2022年:45%
と、この6年間で大きく向上しています。
高齢になっても自分の歯で食事ができる人が増えていることは、非常に良い変化といえます。
3.歯周病|唯一悪化している重要な課題

一方で、問題となっているのが歯周病です。
- ・40代:進行した歯周病は約40%で横ばい
- ・60代以上:42% → 64%へ増加

この背景には、
- ・「総入れ歯の人が減ったこと」
- ・「高齢者でも歯が多く残るようになったこと」
が関係しています。
歯が残ること自体は非常に良いことですが、その分、歯周病に罹患する歯も増えやすいという側面があります。
また、歯周病によってぐらついている歯をあえて残しているケースも増えており、その結果として、硬いものが噛みにくくなっている人が増えていると考えられます。
さらに、「しっかり噛める人(咀嚼良好者)」も
- ・2015年:73% → 2022年:63%
と低下しています。

4.今後の方向性|「噛める力」をどう守るか
4-1) 虫歯予防の取り組みは大成功!ただし、まだ減らせる
これまでの取り組みは成功していると言えます。
一方で、12歳で約30%のむし歯有病率に対し、17歳ではむし歯経験者が約50%まで増加します。
この背景には、
- ・部活動や受験などで生活リズムが乱れやすい
- ・間食や清涼飲料の摂取機会が増える
- ・保護者による仕上げ磨きがなくなる
- ・定期検診から離れる時期である
といった思春期特有の生活変化があります。
つまり、小児期の予防が成功していても、その後の数年間でむし歯が増えてしまう層が一定数存在します。
この点を踏まえると、現在の状況は「過去と比べて改善はした、しかしまだ余地がある」とも言えると思います。今後は、思春期まで含めた継続的な予防歯科の浸透が求められています。
4-2)最大の課題は「しっかり噛めること」

噛む力には、歯や歯ぐきだけでなく、舌・頬などの筋肉の働きも関わります。
そのため、現在は
- ・子ども:口腔機能発達不全症
- ・高齢者:口腔機能低下症
として、お口の機能をつかさどる筋肉の働きが弱い場合は治療対象となりました。
- ・口腔体操
- ・食育指導
などの取り組みを通して、筋肉量を整える/増加させることが試みられています。
口腔機能低下症と小児口腔機能発達不全症については、下記のリンクから詳細な解説をお読みいただけます。ご興味がおありの方は、ぜひお読みくださいね。
参考リンク:高齢者の口腔機能低下症について
-
老いは口から始まる。歯医者が教える要介護にならないためのポイント!
-
むせる、飲み込みにくい、舌がもつれる…オーラルフレイルの自己チェックをしてみよう!
-
参考リンク:子どもの口腔機能発達不全症について
-
筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
-
「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
-
お口の機能発達は10歳までが勝負!
-
お口ポカンの影響と直し方について
-
口呼吸とアレルギー、アデノイド
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矯正手法とMFTについて
-
舌癖と歯列不正のメカニズムについて
-
「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える
-
「下唇を噛む癖」咬唇癖ついて考える
-
かみ合わせのずれとその原因:正中のずれを考える
-
リハビリの考え方でアプローチするMFTの実践方法
-
5.検診の重要性|歯周病は「歯石除去の期間が空きすぎる」ことがリスクになる

歯周病は、症状が少ないままゆっくり進行し、気づいたときには一気に悪化していることがあります。
臨床の実感としても、「4〜5年検診を受けていない」という患者さんは、急激な進行を示すケースが少なくありません。
これは、歯周病が
- ・細菌感染
- ・生活習慣
- ・免疫状態
といった要因の影響を受けながら、長期間にわたり静かに進行する病気であるためです。
一方で、保険診療の中でも歯周病の管理間隔は明確に設定されています。
- SPT(歯周病安定期治療):重症例では月1回程度の管理
- 歯周病重症化予防治療:3か月に1回程度
つまり、医療として歯周病の管理間隔は「1〜3か月」とされていることが多いのです。
それに対して、数年単位で受診が途絶えると、
- ・炎症の進行
- ・歯の動揺
- ・咬合の崩壊
が一気に進んでしまうリスクが高くなります。

こうした受診間隔の問題を改善するために、
- ・企業検診
- ・節目年齢検診
といった仕組みが整備されています。
岩国市の場合、「いい歯おとなの歯科健診」は、20〜70歳の節目年齢(5歳刻み)の市民を対象に、歯周病や虫歯の無料検診券が郵送され、市内の歯科医院で受診可能です。

6.山口県の取り組み「健口スマイル運動」

これらの課題に対して、山口県では「第2次やまぐち歯・口腔の健康づくり推進計画~健口スマイル運動推進プラン~」が策定されています。
「健口スマイル運動」という言葉、新聞やミニコミ誌などで見かけたことがある方もいるかもしれません。
参考リンク:健口スマイル推進事業ホームページ
この事業は、
- 学校から家庭、職場まで一貫して口腔ケアの意識を定着させること
- かかりつけ歯科医院を持ち、定期検診を受ける習慣を広げること
を目的として、県の条例に基づいて進められています。
実際には、さまざまな形で地域の取り組みを支えています。
例えば、保育士さんや介護関係者など、歯科以外の専門職の方への口腔ケア勉強会を催したり、
やまぐち健口フェスタのような、一般の方向けの啓発イベントを開催したり、
ロッテやライオン、サンスターといった企業と協賛して官・民協働による歯・口腔の健康づくり施策を展開したりしています。
「良い歯おとなの歯科健診(節目歯科健診)」で配布される歯ブラシなども、この健口スマイル推進事業の一環として、歯科医院に委託されているものです。
つまり、あなたの身近にある歯科イベントや検診の多くは、この県の取り組みとつながっています。
これまで見てきたように、
- 歯周病は通院間隔で大きく差が出る病気であり
- 思春期以降も虫歯は増える可能性がある
という現状があります。
そのため、「検診の機会があるかどうか」ではなく、「用意されている機会をどう使うか」が重要になります。
すでに、かかりつけの歯科医院があり、定期通院の習慣がある方は、そのまま継続していけば大きな問題はありません。
一方で、
- しばらく歯科にかかっていない
- 痛くなったときだけ受診している
という方にとっては、こうした検診やイベントが「最初の一歩」になります。
歯科検診のお知らせは、職場や学校、自治体など、さまざまな形で届きます。
そのときに、「今回はいいか」と流すのか、「せっかくだから受けておこう」と動くのかで、数年後のお口の状態は大きく変わります。
まずは一度、チェックする機会を作ること。そこからすべてが始まります。
案内が届いたときは、ぜひ活用してみてください。

7.まとめ
いかがでしたか?
- ・山口県では小児の虫歯は大きく減少し、予防は成功している
- ・8020達成率はこの数年で急速に向上している
- ・高齢者は歯が残る一方で歯周病罹患歯も増加している
- ・高齢者の口腔機能低下症、子どもの小児口腔機能発達不全症への対策が重視されている
- ・思春期で虫歯が増える傾向があり継続的予防が重要
- ・「健口スマイル運動」という組織横断的な運動で、山口県では様々な検診やイベントが行われている
日常生活の中で「お口をチェックする機会」を持つことが、これからますます重要になります。
検診や地域の取り組みに、ぜひ積極的に参加してみてください。






