神経を取った後の歯が噛めるようになるまで
2018年2月23日
神経のない歯が割れやすいってホント? その2
その1はこちら
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック 院長の坪井文です。
前回は虫歯を放置すると歯が痛みだし、さらに放置すると歯の根っこだけの状態になってしまう…というお話をしました。
この、神経まで虫歯が到達してしまった歯の治療を「歯内療法(歯の根っこの治療)」といいます。
週1で通院しても1か月以上かかることも珍しくない、「歯医者って通院長い」と言われる代表格の治療なんです。
他の病気と同じように虫歯も重症化してからではなく早期発見・早期治療して、軽症のうちに治した方が通院回数も少なく、治療費用も安くなるんですね。
さて、今回は「歯内療法」が終わった後、根っこだけになってしまったがちゃんとまた噛めるようになるために、どんなことをするのか…というお話をしていきたいと思います。
歯内療法が終わった後にする治療とは?
歯の根っこだけになってしまった歯に「歯内療法」を行って、根っこの中を綺麗にして痛みが出ないようにした状態
上は歯の根っこだけになってしまった歯に「歯内療法」を行って、根っこの中を綺麗にして痛みが出ないようにした状態です。痛くは無くなったけれど、これではまだ噛めませんね。
この根っこだけの歯に、土台を入れた状態
この根っこだけの歯に、土台を入れます。
土台のことを「コア」と呼びます。歯の芯になるものですね。
材料は歯科用のプラスチックや、金属(銀合金や金銀パラジウム合金、保険は効きませんが金なども用いられます)、グラスファイバーと呼ばれる棒高跳びの選手の棒に使われる材料など、色々な種類のものがあります。
治療の際に「土台の材質は何にしますか?」と聞く歯科医師はほとんど居ないのですが、実は材質によって様々な特性があります。
これは次回、詳しくご説明しますね。
コアの上に冠をかぶせた状態
コアが入ったら、その上から冠を被せて治療終了です。
昔はコアと冠が一体型の「ポストクラウン=差し歯」と呼ばれるものが主流でしたが、歯を残せる量が減る問題があり、今ではほとんど見られなくなりました。
(余談ですが、歯を抜いた後に「差し歯にはできんの?」と聞かれる患者さんは少なくないのですが、差し歯は歯の根っこが残っていないと出来ない治療なんですヨ)
根っこの治療を途中放置するとどうなってしまうの?
歯内療法をしてコアを作って型をとって冠をつけてで、合計5回前後の通院が必要となります。
回数が多いので通うのは大変です。
しかし、通うのが大変だからといって、途中で中断するのは良くありません。
歯内療法を終えて、仮の蓋のまま放置してしまうと、仮の蓋が痛んで歯内療法からやり直しになってしまったり、冠が入らないまま放置することで歯並びが崩れてしまったりすることがあるからです。
お仕事やご家庭の事情で少し治療の間隔をあけたい場合は、長持ちする仮歯をつけるなどの方法もありますので、早めに歯科医師にご相談いただく方が良いでしょう。
ここまでがんばって通院し、根っこだった歯が噛めるようにまでなりました。
でもここで注意が一つ。神経がある歯と比べて神経をとってしまった歯は硬くて脆くなり「割れやすい」のです。
「神経をとった歯は割れやすい」のはどうして?
突然ですが、木の若枝を想像してください。
若枝はしなりますね。生きている木の枝は水分をたっぷり含んでいますから柔らかくしなる特性を持ちます。
力を加えても、しなることで折れにくいです。
では、枯れ枝を想像してください。
硬くて脆く、あまりしなりません。力を加えるとポキっと折れてしまいやすいです。
実は歯も神経をとってもしまうと、同じ現象が起こるのです。
歯の血流は、歯髄(歯の神経)にしかないので、取り除いてしまうと歯が硬く脆くなってしまう
一般に「歯の神経」と言われているものは、医療用語で「歯髄 しずい」という、神経線維や血管を多く含んだ組織を指します。
歯髄には神経だけでなく、血管があることで血流があるんですね。
歯は歯髄以外は血流が無い臓器です。
歯髄を取り除いてしまうと、歯への血流が途絶えてしまい、歯が硬く脆くなってしまうのです。
ですから、歯の根っこの治療をした後、いかに歯が割れないようにするか、神経のない歯に優しい素材の追求が多くの研究者や歯科医師の間でなされてきました。
少し長くなってしまいましたので、今回はここまでにしたいと思います。
まとめ
- 歯内療法が終わったら、土台を立ててかぶせ物をかぶせ、初めて噛めるようになる
- 治療を途中で中断すると、初めからやり直しになったり、歯並びが崩れてしまうことがある
- 歯の神経を取ると血流がなくなるので、歯が割れやすくなる
最後までお読みいただきありがとうございました。