虫歯のなりやすさと体質について
2022年1月14日
岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
現在、当院には虫歯予防に努力してくださっている方が多く通院してくださっています。
とてもうれしく思っています。
以前に作ってしまった、削るほどではない初期虫歯を管理するのも、我々歯科医師の重要な役目です。
参考リンク:削らなくても治る虫歯があるって本当?
しかし、残念ながら、虫歯ができてしまう方もおられます。
そこで今回は、お子さんの虫歯のなりやすさと体質を中心にお話していきます。
大人はまた少し違うので、またいつか解説します。
1)虫歯のなりやすさを左右する因子
キースの輪
歯科医師が大学で最初に習う、キースの輪と呼ばれる虫歯の原因因子同士の重なりを示すものがあります。
画像参照https://www.apagard.com/oralpedia/oralcare/details/Vcms4_00000101.html
細菌、歯質、糖分、時間の重なりで、多く重なるとリスクが高まります。
最近の統計学的なアプローチで検討している論文では、虫歯の原因因子の重要度ランキングでは
1位 唾液量
2位 乳歯う蝕の経験歯数
3位 菌の量
4位 プラーク(歯垢)量
5位 飲食回数
6位 フッ素使用頻度
という順でした。
個人的な感覚にはなりますが、この他に虫歯の重症度(大きさ)なども、重要だと考えています。
2)小児と唾液について
イグノーベル賞という、人々を笑わせ、考えさせられるユニークな研究などに贈られる賞があります。
2019年のイグノーベル賞に、小児の一日唾液量を研究した、という明海大の渡部教授の研究がありました。
専門外の方にとっては、『なぜ小児の一日の唾液量を知りたいと思ったのか』が笑いポイントなのでしょうが、歯科医師、特に小児歯科医師にとっては「知りたかった!」という重要な研究です。
それによると、小児(6歳児)の唾液量は500mlで、成人よりも若干少ないという結果でした。
大学病院勤務時代、小児がんなどのため、抗がん剤を投薬されていたお子さんたちの口腔内を診察する機会がありました。
唾液量や唾液の緩衝能(虫歯を防ぐ効果です)などが低く、虫歯リスクはどうやっても高いままでした。
抗がん剤ほどではありませんが、多くの薬で、唾液量の減少が見られることが知られています。
薬を常用している場合は注意が必要です。
3)歯質と虫歯リスクについて
学校健診などでは、細菌が原因でなくても歯の状態が悪ければ、う蝕と診断されます。
特にエナメル質形成不全は虫歯と診断され、最近よく見かけます。
エナメル質形成不全についてはこちら
参考リンク:エナメル質とその形成不全について~治療と原因~
ちなみに近年の発表では、エナメル質形成不全の歯が一本でも見られる人の発生率は20-25%にも昇るようです。
4-5人に1人はそういう歯をお持ちの割合になります。
また、黄色人種はそのほかの人種に比べてエナメル質が薄い傾向にあり、虫歯が進行しやすく注意が必要です。
まとめ
- 細菌、歯質、糖分、時間のリスクが重なり、虫歯ができます。
- 虫歯の原因因子は、唾液量、乳歯う蝕の経験歯数、菌の量、プラーク量、飲食回数、フッ素使用頻度などがあります。
- 唾液量、歯質などは個人差が大きいですが、総じて日本人は歯が強くない傾向にあります。
以上のような要素を考えながら、予防対策を行うことが重要です。
診療室では、虫歯に最もなりやすい人に対しても、なりにくい方法を考えます。
そして、その対策を説明しています。
「チョコ止めましょう」
「グミやめましょう」
「そろそろ卒乳が必要です」
など、飲食習慣の改善も含めたお話になることもあります。
そのため、少し厳しく聞こえる場合もあるかもしれません。
しかし、個人の体質や虫歯リスクに対して、最も効果的な予防や処置を行うことが重要と思っています。
ご不明な点や、虫歯予防について話が聞きたい場合は、お気軽におたずねください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。