プレオルソでこどもの受け口は治せる?
2026年9月16日

こんにちは。医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。
今回は、プレオルソを使ったこどもの反対咬合(はんたいこうごう:下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせ)の矯正治療についてお話しします。反対咬合は『受け口』とも呼ばれ、下顎前突(かがくぜんとつ:下顎が上顎より前方に出ている状態)を伴うこともあります。
先に結論を知りたい方へ
プレオルソで改善を目指せる受け口もあります。ただし、すべての反対咬合に適しているわけではありません。
歯の傾き、顎の骨格や成長方向、舌の使い方などを確認したうえで、治療方法を判断します。
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※掲載する症例は、患者さんと保護者の方の同意を得たうえで、個人が特定されないよう配慮しています。治療結果には個人差があります。
1)反対咬合(受け口・下顎前突)は遺伝的な要因が関係することがあります
反対咬合(下顎前突)は、不正咬合(ふせいこうごう:歯並びや噛み合わせに問題がある状態)の中でも遺伝的な要因が関係しやすいと考えられています。
親子や兄弟姉妹など、同じ家族の中に反対咬合の人がいることは珍しくありません。ご両親に受け口がなくても、祖父母や親戚に同じような骨格的特徴がみられることもあります。
反対咬合の家族性を説明するとき、歴史上の有名な例として挙げられるのが、ヨーロッパの王家であるハプスブルク家です。
ハプスブルク家の人々を描いた肖像画には、下唇や下顎が前方へ出て見える特徴的な顔立ちが、何世代にもわたって描かれています。この特徴は、歴史的に「ハプスブルク家の顎(Habsburg jaw)」と呼ばれてきました。

ハプスブルク家では、王家の血統や領土を維持するため、血縁関係の近い人同士の結婚が繰り返されました。その結果、顎や顔立ちに関する遺伝的な特徴が、家系内で現れやすくなった可能性があると考えられています。実際に、ハプスブルク家15名を描いた66点の肖像画を、複数の顎顔面外科医が評価した研究があります。この研究では、『ハプスブルク家の顎』には下顎前突だけでなく、上顎の成長不足も関係している可能性が示されています。
参考文献:Vilas R, et al. Is the “Habsburg jaw” related to inbreeding? Annals of Human Biology. 2019.
2)反対咬合には、舌の位置や使い方も関係します
多くの反対咬合のお子さんを診察していると、骨格や歯の傾きだけでなく、舌の位置や動かし方にも特徴がみられます。
舌は何もしていないとき、先端が上の前歯のすぐ後ろ付近にあり、舌全体が上顎の内側へ軽く触れている状態が望ましいとされています。
正常

一方、受け口のお子さんでは、舌が低い位置にあり、下の前歯を前方へ押すような動きをしていることがあります。
低位舌(ていいぜつ:舌が本来より低い位置にある状態)

また、話し方や食べ方、飲み込み方は、幼少期に家庭内で身につけていくものでもあります。
顎や舌の形といった遺伝的な要素に、家庭内で身につく発音や食べ方などの環境的な要素が重なることで、兄弟姉妹に似た口の使い方や噛み合わせが現れる可能性があります。
ただし、舌の位置だけが反対咬合の原因とは限りません。骨格や噛み合わせの影響で、結果として舌が低い位置(低位舌)になっていることもあります。
そのため当院では、歯並びだけでなく、舌の位置や動き、飲み込み方、発音なども確認します。必要に応じて、MFT(口腔筋機能訓練)を行っています。

関連記事 MFT特集その7 舌癖と歯列不正のメカニズムについて
3)反対咬合は思春期に悪化することがあります
反対咬合には、思春期に身長や手足が伸びる時期とともに、下顎の成長が目立ってくることがあるという特徴があります。
そのため、思春期を迎える前に前歯の反対咬合を一度改善し、上顎や永久歯が正常に成長しやすい環境を整えておくことは、将来の噛み合わせを考えるうえで大切です。
上下の前歯の噛み合わせがいったん正常になれば、噛むことそのものが「上の歯が下顎を引っ込め、下の歯が上の歯を外側に押す」という矯正力として働くためです。
その後の思春期成長で、反対咬合が再発したとしても、小児期に一度も治療しなかった場合とくらべて軽症で済む可能性が高いのです。その結果、将来的に顎の骨を手術で動かす外科的矯正治療を避けられる場合もあります。
もちろん、幼少期に治療を行えば、将来の骨切り手術(顎の骨を手術で動かす外科的矯正治療)を絶対に回避できるわけではありません。下顎の成長そのものを完全に止めることはできないため、早期に反対咬合が改善しても、思春期以降まで経過を確認する必要があります。
それでも、将来の悪化を少しでも抑えるため、成長期の治療は大切な選択肢だと考えています。
4)反対咬合の特徴をおさらい
反対咬合には、主に次のような要因が関係します。
- ・上の前歯が内側へ傾いている
- ・下の前歯が外側へ傾いている
- ・上顎の成長が小さい
- ・下顎の成長が強い
- ・噛み合わせによって下顎が前方へ誘導されている
- ・舌の位置や口周りの筋肉の使い方に偏りがある
実際には、1つの要因だけでなく、複数の要因が重なっていることもあります。
歯の傾きが中心となっている反対咬合と、上下の顎の骨格差が大きい反対咬合とでは、治療方法も将来の見通しも異なります。そのため、「受け口だから同じ装置で治療する」のではなく、原因を見極めるための診断が重要です。
5)プレオルソとは?

プレオルソは、主に成長期のこどもに使用する、やわらかい素材でできたマウスピース型の矯正装置です。
歯を1本ずつ細かく動かす成人用のマウスピース型矯正装置とは、役割が異なります。プレオルソは、口周りの筋肉や舌の使い方を整えながら、噛み合わせや歯並びの改善を目指します。
一般的には、日中の1〜2時間と寝ている間に装着します。ただし、必要な装着時間や使用期間は、お子さんの年齢、症状、使用する装置によって異なります。
また、プレオルソだけですべての反対咬合を治療できるわけではありません。前歯をより積極的に動かす必要がある場合や、歯列の形を整える必要がある場合には、固定式の装置を併用することがあります。当院でも、プレオルソに加えて、歯の裏側に装着する固定式装置のリンガルアーチや、上顎の歯列を横に広げる固定式装置のクワドヘリックス、MFT(口腔筋機能訓練)を症状に応じて組み合わせることで、より良い成果を上げています。

6)プレオルソと相性のよい反対咬合とは?
顔や顎の成長方向には個人差があります。
矯正歯科では、顔が縦方向に成長する傾向を『ドリコフェイシャル』、横方向の幅があり、噛む力が強く、深い噛み合わせになりやすい傾向を『ブラキフェイシャル』と呼ぶことがあります。
ドリコフェイシャル傾向
- ・顔が縦長になりやすい
- ・噛み合わせが浅い、または前歯が噛み合わない開咬になりやすい
- ・歯が並ぶスペースが不足しやすい
- ・治療によって噛み合わせの高さが増えすぎないよう注意が必要
ブラキフェイシャル傾向
- ・顔の横幅が比較的広い
- ・噛む力が強い傾向がある
- ・噛み合わせが深くなりやすい
- ・顎関節や歯に強い力が加わることがある
プレオルソを含むマウスピース型の装置は、深い噛み合わせを浅くすることが得意です。つまり、お子さんがブラキフェイシャル傾向の場合、プレオルソとの相性が良いのです。

一方、縦方向への成長が強いお子さんでは、噛み合わせがさらに浅くなったり、顔の縦方向の成長が強くなったりしないか、慎重に確認しながら使用する必要があります。
装置がお口の状況に適しているかどうかの選択は、見た目だけでは判断できません。当院では、お口の中の診査やレントゲン検査、必要に応じたセファロ分析(頭部のレントゲン写真を使って、顎の大きさや位置、成長方向などを調べる検査)などをもとに治療方法を検討します。
7)この記事のまとめ
- ・反対咬合は、下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせです。
- ・反対咬合には、歯の傾き、顎の骨格、遺伝、舌の使い方などが関係します。
- ・プレオルソだけでなく、リンガルアーチやMFTを組み合わせる必要がある場合があります。
- ・早期治療には、前歯の噛み合わせや顎の成長環境を整える目的があります。
- ・治療後も思春期の下顎成長を確認するため、長期的な経過観察が必要です。
8)よくある質問
Q1.こどもの受け口は、自然に治ることがありますか?
乳歯の生え方や噛む位置によって一時的に反対咬合に見えるケースでは、成長や歯の生え変わりに伴って改善することがあります。
しかし、自然に改善するかどうかを家庭で判断するのは困難です。骨格的な要因がある場合や、下顎を前方へずらして噛む習慣がある場合には、早めに診断を受けることをおすすめします。
Q2.何歳から相談するのがいいですか?
乳歯が生えそろい、反対咬合が確認できる3〜5歳頃からご相談いただけます。
ただし、診断を受けたら必ずすぐに装置を使用するわけではありません。お子さんの成長、症状、装置を使用できるかどうかを確認し、治療開始時期を検討します。
Q3.プレオルソだけで受け口を治せますか?
プレオルソだけで改善を目指せる症例もありますが、すべての反対咬合に対応できるわけではありません。
前歯を積極的に動かす必要がある場合には、リンガルアーチなどの固定式装置を併用することがあります。骨格的な問題が大きい場合には、別の治療方法を検討します。
Q4.プレオルソは1日に何時間使用しますか?
一般的には、日中の1〜2時間と寝ている間に使用します。
ただし、具体的な装着時間は、お子さんの症状や治療計画によって異なります。当院では、診断後に使用方法をご説明します。
Q5.治療期間はどのくらいですか?
前歯の反対咬合の改善には、半年〜1年程度かかることがあります。ただし、症状や成長の状態、装置の使用状況によって治療期間は異なります。
前歯の噛み合わせが改善した後も、永久歯への生え変わりや思春期の成長を確認するため、長期的な経過観察が必要です。
Q6.プレオルソの治療は痛いですか?
装置を使い始めた直後には、締めつけられる感じや歯や顎の違和感が生じることがあります。また、唾液が増えたり、話しにくくなったりすることもあります。
通常は使用に慣れるにつれて軽減しますが、強い痛みや粘膜の傷がある場合には、装置の調整が必要です。
Q7.MFTとは何をする治療ですか?
MFTは「口腔筋機能訓練」といい、舌、唇、頬などの筋肉を適切に使うためのトレーニングです。
お子さんの正常な発達を促すために、舌の安静時の位置、飲み込み方、口の閉じ方などを、さまざまなトレーニングを通して身につけていくプログラムです4歳~12歳の間であれば、口呼吸を鼻呼吸に改善したり、矯正の後戻りを引き起こす良くない舌癖などの改善をめざすことができます。MFTだけで骨格的な反対咬合を治すものではなく、必要に応じて矯正装置と組み合わせて行います。
Q8.両親が受け口でなくても、こどもが受け口になることはありますか?
あります。
顎や歯並びに関係する特徴は、両親だけでなく祖父母などから受け継ぐことがあります。また、遺伝以外にも、歯の生え方、顎の成長、舌や口周りの筋肉の使い方などが関係します。
Q9.早く治療すれば、将来の手術を避けられますか?
早期治療によって現在の噛み合わせを改善し、顎が成長しやすい環境を整えることはできますが、将来の外科手術を絶対に避けられるわけではありません。
下顎の成長が非常に強い場合や、上下の顎の骨格差が大きい場合には、成長終了後に外科的矯正治療が必要になることがあります。
Q10.治療後に受け口へ戻ることはありますか?
あります。
とくに骨格的な下顎前突では、思春期の下顎成長によって反対咬合が再び現れることがあります。そのため、前歯の噛み合わせが改善しても、成長終了まで定期的な確認が必要です。
9)お子さんの受け口が気になる方へ
反対咬合は、見た目だけで自然に改善するか、早めに治療を検討した方がよいかを判断することは困難です。
また、同じ受け口でも、プレオルソが適しているお子さんもいれば、別の装置や経過観察が適しているお子さんもいます。
当院では、歯並びだけでなく、顎の成長方向、永久歯の状態、舌や口周りの筋肉の使い方まで確認したうえで、治療の必要性や開始時期をご説明します。
「乳歯だから、まだ様子を見てよいのか分からない」
「家族に受け口の人がいるので心配」
「プレオルソがこどもに合うか知りたい」
このような場合は、まずは無料矯正相談をご利用ください。
無料矯正相談について詳しく見る https://tsuboikyousei.com/soudankai/
当院の小児矯正について詳しく見る https://tsuboidental.com/pediatric/
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
次回は、実際にプレオルソで反対咬合を改善した3症例について、解説します。
ぜひ、次回の記事もご覧ください。






