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保険適応の入れ歯(義歯) ~総入れ歯の場合~

2025年2月10日

保険適応の入れ歯(義歯) ~総入れ歯の場合~

こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
今回は「保険の入れ歯」についての話題です。

日本では、歯を失った場合に保険で入れ歯を作ることができます。 入れ歯が合わなくなってしまっても、入れ歯を作ってから半年経てば新しい入れ歯を保険で作れる…という、世界的に見ても本当に恵まれた制度です。 しかし、保険で作れる入れ歯には、実はそれなりの制限もあります。 今日は、保険で作れる入れ歯にはどんな種類があるのか、どういった制限があるのかについて、詳しくお話ししたいと思います。

1 保険でカバーされる医療は、治療の選択肢の一部だけ

すべての治療の中に、一部として保険診療があることを示した概念図

インプラントや歯列矯正が保険でカバーされないことは、よく知られています。 (正確には、癌で顎骨を除去した場合のインプラントや、唇顎口蓋裂や骨変形症の歯列矯正は保険でカバーされます)

保険治療は、使用可能な材料や決められた作り方、形態などが、非常に細かく決まっています。 詳しくは過去の記事をご覧ください。

参考リンク
保険の効く歯科治療と効かない歯科治療その違いは?
保険の効く歯科治療と効かない歯科治療 その2

保険も「入れ歯全体のうちの一部」が保険でカバーされています。

2 保険でカバーされる入れ歯ってどんなもの?

では、どんな入れ歯が保険でカバーされているのでしょうか? 今回は総入れ歯の実物の写真をご覧いただきます。

保険総義歯と金属床義歯の画像

総入れ歯(左:保険の入れ歯 右:自由診療の入れ歯)

保険でカバーされる総入れ歯は、すべてが樹脂製のものです。
保険でカバーされない総入れ歯の代表的なものに、金属床義歯という、見えない部分が金属の板になっているものがあります。
一見、「金属使ってない方が良いんじゃないの?」と思われるかもしれません。
では、樹脂か金属かで、総入れ歯がどう変わるか、くわしく解説します。

樹脂か金属かで総入れ歯がどう変わるか ~上顎を覆う入れ歯の床部分の厚みが違う~

保険義歯と金属床義歯の厚みを比較した画像

総入れ歯の床部分(上:保険の入れ歯 下:自由診療の入れ歯) 樹脂より金属の方が強度があります。
強度が高い分、薄く作ることができます。
薄い方が一般的に、装着した時の違和感が少ないです。

3.保険(樹脂)と自由診療(金属)の総入れ歯の違い

保険の総入れ歯の良い点

  • ・樹脂製なので金属アレルギーの人でも安心して使用できる
  • ・保険適応あり
  • ・壊れても院内での修理がしやすい/その場で修理してもらえることも多い

保険の総入れ歯の残念な点

  • ・金属に比べて強度に劣る
  • ・床部分が分厚く、人によっては違和感が強い
  • ・分厚い樹脂が食事の温度を感じにくくさせてしまう

自由診療の総入れ歯(金属床義歯)の良い点

  • ・薄くて強度があるため、壊れにくい
  • ・薄いため、違和感が小さい
  • ・薄い金属は温度を良く通すので、熱いものは熱々のまま、冷たいものは冷えたまま味わえる

自由診療の総入れ歯(金属床義歯)の残念な点

  • ・金属アレルギーの方にはおススメできない
  • ・保険でカバーされない
  • ・壊れにくいが、壊れた場合は預かり修理になることも多い

私の臨床上の経験では、「小さな総入れ歯を使いたい」とか、「熱々のラーメンや、キンキンに冷えたビールを、入れ歯になる前のように楽しみたい」という方が、金属床義歯を希望されます。
一般的に、入れ歯は小さいほうが違和感が少ないです。

4.金属床義歯以外の自由診療の入れ歯

4-1)インプラントオーバーデンチャー(インプラントで固定する入れ歯)

全ての歯をインプラントにするより、インプラントの埋入本数を減らすことができるため、総インプラントよりは治療費用を減らすことができます。
片顎2~4本のインプラントに、入れ歯を装着して用います。
*通常のインプラント治療の場合は片顎4~8本のインプラントを埋入する必要があります。

4-2)シリコンデンチャー(歯茎に触れる部分にシリコンクッションが入っている入れ歯)

痛みが少なく、安定感が高いのが特徴です。ただし、シリコン部分は他の樹脂部分(多くはアクリル樹脂)に比べて劣化しやすく、お手入れは必須です。

4-3)メッシュデンチャー(金属床部分にミクロの穴が無数にある入れ歯)

通常の金属床よりも味や温度が、さらに感じやすくなっている義歯です。
ただし、メッシュの入った金属床の強度は、通常の金属床義歯より劣ります。

これらの治療法は、保険の入れ歯に比べて自然な見た目、痛みがない、安定感があるなどのメリットがあります。

ちなみに当院では、自費の総義歯では金属床義歯を希望される方がほとんどです。

インプラントオーバーデンチャーは、部分入れ歯では「バネをなくしたい」というご要望で作ったり、既存のインプラントを再利用する形で作成することの方が多く、総入れ歯でのご希望は少ない印象です。

5.初めて総入れ歯を作るとき、保険か自費か、迷った時には?

少ない本数であったとしても自分の歯で食事をしていた人。
歯はぐらぐら揺れていたけれども、自分の歯で食事をしていた人。
このような人が、初めての総入れ歯を作る場合は、以下のような確認をされることをオススメします。

確認せずに入れ歯を作ってしまった場合、「違和感がすごい」「こんなに大変だと思わなかった」「思っていたのと違う」などの理由で、後悔をする人がたまにいます。

まずは、実際に触ってみて確認する

入れ歯を作る前に、入れ歯の模型を実際に触ってみて、厚さ、重さ、大きさなどを確認して、どの入れ歯だったらこれから使っていけそうかを考えてください

そのうえで、まだ迷ってしまう場合は、特別な事情がなければ最初の1個は保険の入れ歯を選択しましょう。
保険の入れ歯の使用感に満足できないときに、改めて自由診療を考えれば良いと思います。

保険の入れ歯と自費の入れ歯では、上顎を覆う床の厚さ、精度、持ちの良さ、安定感、温度を感じられるかどうかなど、いくつもの違いはあります。

しかし、「保険の入れ歯でも我慢できる程度のものかどうか」は、実際に使用してみないと分かりません。
まず、保険の入れ歯で良いので、噛める入れ歯を作ってみることをおすすめします。

ちなみに、保険で入れ歯を製作して、気に入らなかったからと別の医院に行って、保険で入れ歯2個目をすぐに製作することはできません。
転院しても、新しい入れ歯を作るのは半年以上期間を開けないといけない、という保険のルールがあるからです。

まとめ

いかがでしたか?

  • ・保険の総入れ歯は、経済的な負担を軽減する素晴らしい選択肢です。
  • ・保険の総入れ歯は、治療の選択肢の一部であり、使用材料や製作方法に制限があります。
  • ・保険の総入れ歯は強度や厚み、温度の感じやすさなどにおいて、金属床義歯に劣る点があります。
  • ・保険の入れ歯か自由診療の入れ歯か迷ったら、まずは模型で確認してみると良いでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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