低年齢の受け口治療 ~目立たない装置で、短期間で改善する!~
2025年1月9日
低年齢の受け口治療 ~目立たない装置で、短期間で改善する~
こんにちは、岩国のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
下の写真は、同一人物の口腔内です。

実は矯正装置を装着しています。どこにあるか、分かりますか?

答えは上顎の内側でした!
この患者さんは固定式の矯正装置で前歯の受け口を治療しました。
写真の症例について
- 治療期間: 11カ月
- 通院頻度: 月に1回
- 治療方法: SLAの装着
- 治療費用: 26万9500円(税込)
- リスク・副作用: 特に無し
以前、マウスピース(ムーシールド)で反対咬合を治療した記事を投稿しました。
ムーシールドの治療期間は半年です。
参考リンク:インスタグラム
https://www.instagram.com/p/C7lcuIAPfgq/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
「受け口の治療って結構、短期間で終わるんだな」と思われませんか?
これが早期治療のすごさです!
今日は、受け口の早期治療のことを、詳しくお話させていただこうと思います。
1. 低年齢児の受け口治療
3~5歳くらいまでの低年齢児の矯正治療がおススメな症例と、そうでない症例があります。
詳しくは、こちらの記事をご参照ください。
参考リンク:矯正の早期治療(3歳~)がおススメな症例とは?
2. 3歳前後に開始するのがおススメな症例
- 受け口
- 交差咬合(斜めに噛んでる)
- 下の前歯が上の前歯に完全に隠れて見えない(過蓋咬合)
- 歯が並ぶスペースが足りないのは明白という症例
この中でも、特に①②は、そのまま放置してしまうと顎がゆがんで発育してしまうケースが非常に多いため、早期治療がおススメです。
3. 受け口の自然治癒率
受け口は自然と治るケースもあります。
その確率は6~12%と、報告によってまちまちですが、いずれも低い確率である思われます。
自然治癒するケースは、
- ・受け口の程度が軽いもの
- ・反対に噛んでいる歯が4歯未満であること
- ・家族に同様の症状を持つ人がいないこと
などの特徴があるそうです。
つまり「ごく軽度の受け口」で「遺伝要因が無い」場合以外は、だいたい自然には治癒しないということなのです。
4. 受け口を早期治療するメリット
1. 成人の受け口治療と比較して、治療期間が短い
- ・多くの場合、成長期の半年~1年程度で治療効果が現れます。
- ・ただし、成長に伴う後戻りの可能性があるため、経過観察が必要です。
2. 顎の成長をガイドできる
成長期の顎の発達を適切な方向へ導くことができます。
3. 将来的な下顎骨の変形、上顎骨の劣成長を予防できる
- ・顎の成長が適切にガイドされることにより、骨格的な受け口を予防することができます。(遺伝性の場合は、この限りではありません)
- ・将来的に手術で受け口を治さなければいけないリスクを低くすることができます。
4. 口腔機能の適切な発達を促せる
受け口の場合、多くは低位舌を伴うことが多く、その場合は舌を挙上する動きが苦手であることが多いです。早期に矯正治療を行うことで口腔機能の発達不全を改善することができます。
5. バランスのとれた顔立ちになりやすい
口腔機能の発達不全や、骨格的な問題を予防することにより、バランスの取れた顔立ちになりやすい。
6. 心理的負担の軽減
思春期や成人になってから見た目のことで悩んだり、目立つ矯正器具を使わずに済む、という利点があります。
5. 受け口を早期治療するデメリット
1. 後戻りのリスク
ご家族・ご親族に受け口の方がいる場合は、遺伝性の可能性が高く、思春期成長の時期に後戻りすることが多いです。
2. 遺伝性の場合は追加治療の必要性がある
後戻りした場合でも、小児矯正をしないよりは軽症となることが多いですが、成人治療を追加で受けなくてはいけないケースが多いです。
3. お子様が嫌がることがある
本人は歯並びや容貌について、特に何も感じない時期なので、目的意識を持ちにくい側面があります。マウスピース型矯正の場合、モチベーションを維持できずに使用時間を守れないと、矯正の効果が発揮されないことがあります。
*ページ上部の写真のように、固定式装置で治療するなどの対策もあるので、マウスピース矯正は性格に合わない場合でも、対策は可能です。
6. まとめ
いかがでしたか?
- ・3~5歳児の受け口の早期治療は、短期間で効果が現れやすく、将来的な複雑な治療を回避できる可能性が高いです。
- ・大人になってからの受け口の治療は、長期化や外科的処置が必要になることがあるなど、大変です。
- ・10歳以上になると、小児矯正の治療効果が十分に期待できなくなるため、成人矯正のみで治療することをおススメすることも多いです。
お子様の成長期は、心も体も大きく変化しています。その中で、歯並びや顎の成長を正しくサポートすることは、健康な口腔環境・適切な口腔機能の発達、そして自信に満ちた笑顔や生活の質にもつながります。
「うちの子は、受け口っぽいけど大丈夫かな?」
「この程度はほっておいても、自然になおるかな?」
「治療が必要かどうかが分からない」
など、お子様の歯列について疑問がございましたら、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
MFT特集 その10「かみ合わせのずれとその原因:正中のずれを考える
2025年1月2日
MFT特集 その10 「かみ合わせのずれとその原因:正中のずれを考える」
こんにちは!岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 小児歯科専門医の吉村です。
今回はMFT(口腔筋機能療法)関連の第10回として、「正中のずれ」について考察します。
かみ合わせのずれや偏咀嚼など、いわゆる「ずれ」の原因を探り、その対応方法について解説します。
正中のずれの原因は大きく分けて以下の2つに分類されます。
正中とは?
正中(せいちゅう)とは、歯科においては、主に上下の歯の中心を指し、特に前歯の中心線を意味します。
正中のずれの原因は?
1.構造の問題(萌出や顎の成長などの問題)
2.機能の問題(偏咀嚼や舌癖などの問題)
それぞれの原因に応じた対応方法も異なるため、まずは正中線のずれを確認し、次に上顎と下顎のどちらに問題があるのかを観察することが重要です。
1.構造の問題
1-1 交差咬合
乳犬歯や犬歯のかみ合わせがずれている場合、下顎が偏位することがあります。
上下顎のバランスが悪い場合に多く、特に下顎が大きい(下顎前突傾向)ケースで見られます。
このような場合、上顎を拡大する矯正治療を行うことで改善が期待できます。

交差咬合:上顎の拡大で改善します。
1-2 乳犬歯の早期喪失
顎が歯に対して小さく、歯が並ぶスペースが不足しているお子さんでは、前歯の生え変わりにともない、乳犬歯が早期に抜けてしまうことがあります。
顎が小さなお子さんの場合、下顎側切歯(前から2番目の歯)が生えるときに、本来ならば乳側切歯という、乳歯の前から2番目の歯とだけ入れ替わらなければならないところ、乳犬歯の根っこも同時に溶かしてしまうことが多いのです。
すると、下顎側切歯が生えてくる7歳前後に、乳犬歯を早期に失ってしまうのです。
乳犬歯が早期に抜けると、永久歯の犬歯が生えるスペースを失ってしまい、結果的に犬歯が八重歯になることがあります。

八重歯(犬歯低位唇側傾斜):矯正治療で改善します。
この場合は、軽度であれば小児矯正によって顎を拡大して歯の生えるスペースを確保したり、重度であれば抜歯による成人歯列矯正による改善が必要になります。
2.機能の問題
2-1 偏咀嚼
歯の位置に問題がなくても、舌癖や歯の喪失が原因で偏咀嚼が起こることがあります。
また、歯の痛みや萌出時の早期接触も偏咀嚼の原因となります。
改善方法としては、以下のようなトレーニングが有効です。
- 普段あまり噛んでいない側(非咀嚼側)での咀嚼トレーニング
- 鏡を見ながら正中を合わせるトレーニング
これらを繰り返すことで、少しずつ癖を改善することが可能です。
チューイングガムを用いたトレーニングがおススメです。
2-2 普段の姿勢
頬杖やうつ伏せ寝など、日常の姿勢もかみ合わせのずれに影響を与えます。
特に、片側だけで頬杖をつくなどの悪習癖がある場合、かみ合わせだけでなく筋肉の付き方にも歪みが生じます。このような場合、以下の対応が重要です。
- 悪い癖を治す
- 周囲の筋肉を正しく鍛える
- 体幹を鍛えるトレーニング
これにより、悪い状態に戻らないよう予防することができます。
MFT(筋機能療法)ではこうした姿勢の矯正なども行っていきます。
当院の筋機能療法(MFT)
まとめ
いかがでしたか?
- 正中のずれの原因は、構造の問題(交差咬合や乳犬歯の早期喪失)と機能の問題(偏咀嚼や姿勢の悪さ)に分けられます。
- 交差咬合や乳犬歯の早期喪失など、構造の問題の場合はMFTよりも矯正治療がより有効です。
- 舌癖や普段の姿勢など、機能の問題の場合はMFTのトレーニングや姿勢改善が効果的です。
偏咀嚼や姿勢の悪さが原因の場合、MFTのガムトレーニングや体幹を意識した筋肉トレーニングを取り入れることで改善が期待できます。
正中のずれを改善するためには、原因を正確に把握し、それに応じた適切な対応を行うことが大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
歯科医師と歯科衛生士の業務範囲って、どうちがうの?
2024年12月16日
「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」
こんにちは!医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。今日は歯科衛生士と歯科医師の業務範囲の違いについての話題です。

1.現在の歯科医院には多くの専門職が在籍する
昔々は、歯科医院にいる専門職といえば「歯科医師」だけでした。1960~1970年代の多くの歯科医院では、歯の詰め物や被せ物、入れ歯などを自作していたので、15~16時で外来診療は終わり、その後の時間で院長先生が自分で技工物を作っていました。
1970年代に入ると、歯科衛生士が多くの医院に勤務するようになります(資格そのものは1948年にはありましたが、一般的な医院に歯科衛生士が勤務するようになるのには、少しタイムラグがあったようです)。1989年に歯科保健指導が歯科衛生士の業務に追加されると、歯科医院における歯科衛生士の役割はますます重要になっていきました。
そうした歴史的背景から、歯科医院の専門職と言えば「歯科医師」「歯科衛生士」と思われる方が多いと思います。
現在では、もっと多くの職種のメンバーが歯科医院に在籍しています。例えば当院では、国家資格者だけでも歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士のほかに、薬剤師・保育士・管理栄養士が在籍しています。国家資格以外の職種に、歯科助手・受付・医療事務のメンバーも在籍していて、いずれも専門性が高い業務を担っています。
今日はそんな「歯科医院の色んなお仕事」の中でも、歯科医師と歯科衛生士の業務について解説していきます。
2.歯科治療には「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の区別がある。
- ・絶対的歯科医行為:歯科医師のみが行うことができる医療行為のこと
- ・相対的歯科医行為:歯科医師の監督下であれば歯科衛生士も行うことができる医療行為のこと
具体的な絶対的歯科医行為(歯科医師だけが行うこと)
- ・治療計画の作成
- ・歯や神経の抜歯
- ・歯の切削
- ・歯茎の切開
- ・詰め物の充填
- ・被せ物の装着
- ・注射による麻酔(歯石除去のための麻酔以外)
- ・レントゲン撮影
具体的な相対的歯科医行為(歯科医師の指導下で歯科衛生士も行えること)
- ・歯周病検査
- ・歯石や歯の着色の除去
- ・ホワイトニング
- ・表面麻酔の塗布
- ・歯列矯正のワイヤー交換や装着
- ・仮歯の調整と仮着
- ・適切な教育が行われた場合に限り、歯石除去の麻酔は可能
3.法的にはどうなっているの?
絶対的歯科医行為と相対的歯科医行為の境界線は、実は曖昧です。厚生労働省の審議会などでも、ある特定のラインはある(人の体を切ったり削ったりするような)ものの、注射・麻酔・印象といった「特定行為(教育や実習を経て歯科衛生士による実施が可能となる行為)」というグレーゾーンがあって、その下に「歯科衛生士でもできる、明確な相対的歯科医行為」があるイメージです。ですから、歯科衛生士の業務は医院によって異なる(歯科医師の裁量による)ことも多いのです。

出典:厚生労働省審議会資料 医行為分類の枠組み(修正案)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002npzo-att/2r9852000002nq4x.pdf
4.相対的医行為のなかの「特定行為」 ~特に麻酔について~
歯科の世界で代表的な「特定行為」は麻酔ではないかと思います。
よく「歯科衛生士の麻酔はSRP時に限る」と言われますが、実際は法律にそういったことが明言されているわけではなく、特定の条件を満たした歯科衛生士が採血を行って、裁判で無罪になったケースもあります。麻酔では無く「採血」での無罪判決ですから「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の境界線がいかに曖昧かということが良く分かりますね。
5.当院の立場と考え
当院では歯科衛生士が麻酔を行うことはありません。
歯科衛生士が麻酔を行うことに反対の立場でそうしているのではなく、当院においては、運用上必要がないためです。
- ・当院には歯科医師が複数名在籍しているので、歯科医師が局所麻酔をしにチェアサイドにいくことが、さほど大変でもない
- ・エムラクリームという強力な表面麻酔を用いることで、SRP時に浸潤麻酔が必要となることが激減した。
そのうえで、歯科衛生士の麻酔についてどう考えているかと申しますと、
- ・歯科衛生士が麻酔できると、臨床のオペレーションがスムーズという事情は理解できる。
- ・歯科衛生士専門学校で麻酔についての教育がほぼ皆無である現状で、敢えて歯科衛生士が麻酔をする必要は無いのではないか。
- ・少なくとも一定の研修を受けたという資格は必要と考える。
という立場です。
実際、同じ立場の歯科医師は多くいます。
・「臨床歯科麻酔認定歯科衛生士(民間資格)」など必要な研修・教育を経て取得できる。
(民間資格なので、この資格がないと麻酔できない、というものではありません)。
・日本歯科麻酔学会と日本歯周病学会が連名で公開した「歯科衛生士による局所麻酔行為による見解」でも、「浸潤麻酔全般を現時点で歯科衛生士の業務とすることは困難であると考えます(中略)浸潤麻酔行為を含む歯科治療に積極的に関わろうとする歯科衛生士の活動は支援する」とされている。
よって、必要な教育・実習を経て、歯科医師の指導下で安全に処置する体制があれば、歯科衛生士のSRP時の浸潤麻酔はOKなのかもしれません。
個人的には、歯科衛生士の学校教育に麻酔が盛り込まれると、より安心かなと思います。
歯科医療の現場では、歯科医師と歯科衛生士がそれぞれの専門性を活かしながら協力することで、より質の高い医療を提供することができます。
「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」という境界線はありますが、それぞれの職種が互いの専門性を尊重し、補完し合うことが大切です。
当院では、このようなチーム医療の理念を大切にしながら、患者さんの健康を守るために日々努力しています。
現在、歯科医師および歯科衛生士の方を募集しております。
私たちと一緒に、患者さんの笑顔のために働きませんか?
ご興味をお持ちの方は、ぜひ当院の求人情報をご覧ください。
ご応募をお待ちしております。
つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 求人採用サイト
6.「絶対的歯科医行為」を行って歯科衛生士が逮捕されたケースはあるの?
調べた限りでは、歯科衛生士が絶対的歯科医行為を行って逮捕されたケースはみつかりませんでした。
一方で、歯科助手が絶対的歯科医行為や相対的歯科医行為を行ったとして逮捕された事例は、実際に存在します。
- ・歯科助手がスケーリングやSRPを行って書類送検されたケース
- ・歯科助手がレントゲン撮影を行って書類送検されたケース
- ・院長の妻(歯科助手)が形成を行って書類送検されたケース
- ・歯科助手が仮歯の装着および、診療報酬の水増し請求をしたとして逮捕されたケース
これらの行為は歯科医師法第17条に抵触します。
7.歯科業界のコンプライアンス
20年くらい前、私がまだ歯学生の時代は、今ほどコンプライアンスが重視されておらず、歯科助手がレントゲンボタンを押す…ようなことは、しばしば耳にする話でした。
しかし歯科医療の世界も、時代とともに進化し、法令遵守の意識が高まってきました。
無資格者による医療行為も、今では見られなくなりました。
しかし、歯科医療における行為の境界線は、依然として微妙な部分があります。
転職サイトなどで見かける情報の中には、求職者の不安を煽り転職を促す目的で、あえて誇張や誤解を招く表現を散りばめているものも散見します。
次回は「歯科助手のお仕事 ~コンプラ重視の歯科助手の職務とは~」というテーマで、より詳しく解説していきます。
この記事を最後までお読みくださった方は、歯科業界の方、歯科業界にご興味をお持ちの方だと思います。
歯科医療の世界で、法令を遵守しながら、患者さんのために最善を尽くす方法を考える機会になれば幸いです!
8.まとめ
いかがでしたか?
- ・歯科医療の専門性と役割分担が進化し、現在では多様な職種が協働してチーム医療を実践しています。
- ・歯科医師と歯科衛生士の業務範囲には「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の区別があるが、その境界線は曖昧な部分もあります。
- ・歯科衛生士による特定行為(例:麻酔)については、適切な教育と研修を経た上での実施が望ましいと思います。
- ・歯科業界は法令遵守の意識が高くなり、いまではコンプライアンス違反の話はほぼ耳にしなくなりました。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
MFT特集 その9 「下唇を噛む癖」咬唇癖ついて考える
2024年11月25日
MFT特集 その9 「下唇を噛む癖」咬唇癖ついて考える
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
MFT関連の第9回である今回は、「咬唇癖」について考えてみようと思います。
これは第8回で触れました深いかみ合わせ(deep bite)に随伴する症状です。
日本人は顔の構造の特徴から、Deep biteな上顎前突の顔の人が増加しているようです。

*画像は同意を得て掲載しています*
MTF特集1~8はこちら(クリックすると、ページに移動します)
1.咬唇癖とは?
口唇癖は上顎前歯の裏に下口唇を咬む癖で、挟み込まれた下口唇が上顎前歯を唇側に押すため、上顎前歯がさらに前突していきます。

出っ歯だから唇を咬み、唇を咬むから出っ歯が悪化するという、悪循環です。
2.咬唇癖を予防するには「3歳未満で止めること」が重要
乳歯列期に唇にあとが残るほど「下唇を吸う」子供がいますが、乳歯の指吸い癖と一緒で、3歳ぐらいまでにやめれれば歯列への影響は少ないとされています。
これらの癖は授乳などと同じような『吸う感覚』を味わうためにするといわれており、3歳以降も続けるようであれば、癖として定着してしまいます。
癖として定着している場合、自力での改善は意識してもなかなか難しいです。
口唇癖はほぼ無意識でする行動で、ストレスがかかったり、緊張するととくに唇を咬む傾向にあります。
指吸い癖もそうですが、『吸う感覚』が心地よい、と感じている場合は辞める動機がなかなかありません。
3.咬唇癖を治す方法
3-1)噛みたいときには別のことをさせる
唇を咬む癖が良くないことであることを本人に説明した上で、噛みたい時には他のこと、お気に入りの玩具で遊ぶなどといった、他の事をさせるよう誘導するという方法があります。
ただ、前述のとおり、いったん癖として定着してしまっていると、これだけで完全に癖を治すことは難しいことが多いです。
3-2)矯正により口腔の形の改善する+口腔機能の発達を促す
顔が丸く、頬の筋肉が強い場合、下顎が奥に押し込まれています。
(詳しくはこちらの記事もご覧ください:MFT特集その8「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える)
こうした場合、マウスピースなどで前歯のかみ合わせを「浅くする」ことにより、下顎の成長を促すことができます。また、上の前歯を矯正によって引っ込め、上下の前歯の間に下口唇を入らないようにすることが有効です。
また、口腔機能の発達不全が背景にある(唇の力が弱い・咬合力が未発達・舌を上に持ち上げる力が弱い、など)ことが多いため、MFT(筋機能訓練)により改善を試みることが重要です。
4.咬唇癖は放置すると悪化する
口の習癖は、様子を見ていても、咬合と筋肉の悪循環の作用により徐々に症状が悪化していく事が多いです。口唇癖はその典型です。
正常な発育を阻害する因子は、なるべく早めに矯正やMFTなどを組み合わせて実施して、形の修正・癖の修正を両面から支援することが重要だと考えます。
当院の筋機能療法(MFT)
まとめ
いかがでしたか?
- ・上顎前突、Deep biteでは、唇を咬む癖(咬唇癖)が出やすいです。
- ・唇と咬むから出っ歯が悪化し、出っ歯だから唇を咬む…という悪循環が発生し、咬合と筋肉の作用により悪化していく症例が多く存在します。
- ・咬む行為が本人にとって心地よい場合、自然にはなかなかやめられません。矯正などによる口腔の形の修正と、MFTなどのトレーニング、本人の発達と理解、を通じて正常な発育を阻害する因子を修正してあげることが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「30代入れ歯女子」 その入れ歯治療は正しい?
2024年11月11日
「30代入れ歯女子」 その入れ歯治療は正しい?
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
最近、「30代入れ歯女子」というキーワードを耳にすることが増えてきました。
「30代で入れ歯かぁ…お気の毒に。いっぱい虫歯を作ってしまったのかな?30代で重度歯周病でも無いだろうし…」と思って、どんなことが検索されているのか調べてみました。
なんと驚くべきことに、「歯並びや歯の形が悪いのを、入れ歯で手早く綺麗に」というニュアンスの記事も多いんですね。
もちろん、ご自身の体験や、歯科医院の症例紹介などでは「ああ、これは抜歯も仕方なかったんだろうな」という症例も多いです。
しかし、「審美目的で」安易な抜歯を前提にしていると思われるコメントも散見されるため、今回は啓発の気持ちも込めて「その抜歯→入れ歯治療は正しいか、正しいとは言えないか」というお話をさせていただきたいと思います。
1. そもそも正しい歯科治療とは?
その人の健康寿命を延ばす治療であることが重要です。
抜歯は、歯の状態が悪く保存が難しい状態である場合や、目指すかみ合わせ・歯並びを達成するために止むを得ない場合のみに行うものです。


画像は同意を得て使用しております。
例えば、上記のような、骨に埋まっている部分が少なすぎて、手で触っても抜けそうなくらい揺れている歯は抜くしかありません。
いつ抜けるか分からない状態の歯を残すと、最終的な入れ歯やインプラントなどの「失った歯の代わりに入る補綴物」を新しく入れた直後に、残っていた歯を失う…ということになってしまうことがあります。そんなことになれば、せっかく作った補綴物が無駄になってしまいます。
こうした「もう助けられる状態を過ぎてしまった歯」を抜歯して、新たに「長く持つ、噛める入れ歯やインプラント」を入れることで、しっかり食事が出来るようにすることは、医学的に理にかなっています。
また、歯並びが悪くて、歯が並ぶスペースが無い場合、抜歯してスペースを作るしかない場合もあります。歯を間引くことでスペースをつくり、そのスペースで綺麗な歯並びにすることで、口を閉じることが出来るようになったり、虫歯や歯周病のリスクを下げることができたり、笑顔に自信が持てるようになったります。

画像は許可を得て使用しております。
もちろん抜歯せずに綺麗な歯並びにできるなら、抜歯すべきではありません。
歯を抜くデメリットと、歯を抜いた結果得られるメリットを十分に検討して、歯を抜いた方が予後良好と判断されるときのみ、抜歯矯正を行うことになります。
2.入れ歯を検討するときに抜歯が必要になる歯
- ・虫歯や歯周病が進行し、治療が困難な場合
- ・歯根が破折している場合
- ・歯の根が排膿していて、治療困難な場合
多くの歯科医院では、機能している歯はできるだけ残す、と言う方針で治療を提案していると思います。
3. 入れ歯と天然歯の「噛む力」の差
義歯の咬合力は天然歯と比較して大幅に低下します。
部分床義歯
天然歯の30~50%程度の咬合力
総義歯(総入れ歯)
天然歯の10~20%程度の咬合力
入れ歯は天然の歯よりは噛む力は弱いです。
しかし、ぐらぐらしている歯や、割れている歯に比べると咬みやすい、それが入れ歯。
ちなみにインプラントは天然歯の100%の咬合力(噛む力が変わらない)と言われています。
見た目の改善だけのために健康な歯を抜いて、入れ歯にすることは、「見た目は綺麗になって、食事も今までと変わらず」…ではない、ということです。
ちなみに、総入れ歯の高齢者の「よくある悩み」に、
- ・家族と同じものが食べられない
- ・旅先で食べれるものがあるか不安なので旅行を躊躇する
というものがあります。
合う入れ歯を作ること、定期的にメンテナンスを行うことで解決可能な悩みではあると思います。
しかし、それでも「お餅」「たくあん」などは、食べにくいとおっしゃる方が多いです。
4. 歯がないと、歳をとってから苦労する
80歳で歯が20本無い人は、ある人に比べて
- ・要介護になる可能性が9.9倍も高い
- ・認知症になる可能性が1.9倍も高い
- ・転倒リスクが2.5倍も高い
- ・健康寿命が短い
私達は人生100年時代に生きています。
今、手っ取り早く、安く見た目を綺麗にするより、将来にわたって豊かな暮らしを維持できるよう、歯を大事にすることをおススメします。
5.「歯や歯並びの見た目を綺麗にしたい」なら矯正治療や審美補綴(セラミック矯正)を選ぼう
歯列矯正(ワイヤー矯正・マウスピース矯正)
歯列不正を改善するための第一選択としておススメです。
歯のガタガタや出っ歯の程度が大きい場合は抜歯が必要になることもありますが、残った歯への負荷が小さく、仕上がりも綺麗です。
ただ、治療期間が長いこと、費用が高くなりやすいデメリットがあります。
審美補綴(セラミック矯正)
被せ物で見た目を改善する方法です。
歯を削るため、矯正治療よりは歯に負荷がかかります。
歯の根の位置は変えられないため、仕上がりは矯正治療より劣ります。
しかし、3つメリットがあります。
矯正治療より短期間で治療が終わります。
治療中も仮歯を使用することで見た目や食事はいつも通りで過ごせます。
費用が矯正治療よりは安価です。
6. 健康な歯の安易な抜歯は避けましょう
歯は一生もの。
自然な歯を大切にし、健康的な状態で保つことが理想です。
入れ歯は、自然な歯を失った後の選択肢ではありますが、できれば入れ歯を使わなくて済むようにしたいものです。
せっかくの健康な歯を抜いて、入れ歯にしてしまうのは止めましょう!
確かにお手軽に見た目は綺麗になるかもしれませんが、その後の健康や機能面でのデメリットがあまりに大きすぎるのです。
7.まとめ
いかがでしたか?
- ・抜歯は必要最小限に留めるべきです
- ・入れ歯の咬合力は天然歯より弱いです
- ・歯の喪失は将来の健康リスクを高めます
- ・審美目的なら矯正や審美補綴を検討しましょう
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
子どもがプレオルソを嫌がる場合、どうしたら良い?
2024年10月26日
子どもがプレオルソを嫌がる場合、どうしたら良い? ~低年齢の小児マウスピース型矯正を成功させるコツ~
こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。
今日は、お子さんがマウスピース矯正装置を嫌がった時、どうしたら良い?というお話です。
お子さんの将来のために、せっかく始めたマウスピース矯正。
代表的なものにプレオルソ、ムーシールド、マイオブレイス、T4Kなどがあります。
しかし、いざ矯正装置を使い始めると、お子さんが嫌がって使ってくれない…
しばしば聞くお悩みです。
今回は、特にプレオルソについて、お子さんが嫌がった場合の対処法や実践的なアドバイスをご紹介します。
1 プレオルソとお子さんの心理
プレオルソは、毎日「日中1時間以上と就寝中」装着する矯正器具です。
プレオルソは柔らかく、歯茎にあたっても痛みはほとんど無い矯正装置です。
友達に見られるわけでも、痛いわけでもないプレオルソを、お子さんはどうして嫌がるのでしょうか?
それは、お子さん自身が歯並びに関心が薄く、矯正の必要性を感じていない低年齢で使用される矯正器具だからです。
親御様はお子さんの将来を考えて、歯並びを治してあげたい。
しかしご本人は、そもそも外見に対する意識が育つ前であり、モチベーションを保つことが難しいのです。
思春期になれば、矯正治療をさせてくれた保護者の方へ感謝する日が来るのですが、4~10歳というプレオルソの対象年齢においては「こんな面倒なことをするくらいなら、歯並びきにしないもん」と思ってしまうお子さんがいても仕方がないと思います。
2 お子さんにマウスピースを使ってもらいやすくなる方法
2- 1 お子さん本人が矯正治療に主体的に参加するように配慮する
保護者の方が準備したプレオルソを「はい、あとはお口に入れるだけよ」とお子さんに渡すより、お子さんが自分で準備するようにした方が、継続率が上がることが多いです。
具体的には
・プレオルソをお湯で軟化させて広げる作業をお子さんに任せる
・プレオルソをリテーナークリーナーなどで消毒する作業をお子さんに任せる
・装着時間の記録(ちゃんと使用できた日に、カレンダーにシールを貼るなど)をお子さんの仕事にする
などです。
ただし、お子さんに任せきりにするのではなく、保護者の方は毎日、手を出さずに側で見守ってあげる必要があります。
2-2 プレオルソの使用と楽しいことをセットにする
プレオルソを装着中は会話が難しいため、お子さんが不快に感じることもあります。
そういう時は、プレオルソとお子さんが楽しいと感じることをセットにしてみましょう。
・プレオルソの日中使用時間(1時間)はスイッチやスマホのゲームをやって良い
・プレオルソの日中使用時間はYouTubeを見て良い時間とする
などです。
ただし、プレオルソを入れたまま、他の事に夢中になるとお口が開いてしまうことがあります。
それではプレオルソの効果が期待できませんから、お口が開いてしまうようなら、お口にテープを貼ってあげるようにしてください。

3. 家族全体でのサポート
家族全員でサポートする姿勢も大切です。例えば、プレオルソを口腔内に装着して喋れない時に、他のご家族がみんなでおしゃべりを楽しんでいたら、プレオルソを外したくなってしまいますよね?
・プレオルソ使用時間に他のご兄弟は宿題をする
・プレオルソ使用時間=テレビやゲームをする時間は、ご兄弟もおしゃべりせずテレビやゲームを楽しむ
・小児矯正の進捗を家族で共有し、小さな成長もみんなで喜ぶ
・矯正装置をしっかり使用できたことを、毎日褒める、親御さんが喜ぶ
など、矯正治療を頑張っているお子さんが疎外感を感じたりしないよう、達成感を感じられるようにサポートをしてくださると、成功率がUPします。
特に低年齢のお子さんの場合、上手にできたことをご家族がとても喜ぶと、大きな達成感を感じてポジティブに矯正治療に取り組むことができるお子さんが多いです。
4.達成感を味わえる仕組みを導入する
小さな目標を達成するたびにご褒美を設けるなど、達成感を得られるような仕組みを取り入れると効果的です。
・引換券制度(エコノミートークン法)
ちゃんと装置を使えたらシールが貰え、シールを何個集めたらご褒美が貰える、という方法。
・コレクションインセンティブ法
男の子ならカードゲームのカード(遊戯王カードやポケモンカードなど)、女の子ならシールなどをコレクションしたいという気持ちを利用する方法。
カードゲームやフレークシールを一緒に選んで購入して、パックごとお子さんに渡さずに、毎日装置をちゃんと使えた1枚もらえる、という感じです。
5. まとめ
プレオルソによる小児矯正は、将来のお子さんの健康な歯並びと笑顔のために効果的な治療法です。お子さんが使用を嫌がる場合も、主体性を大切にしながら、家族でサポートし、楽しみと組み合わせていくことが大事です。
多少の困難があっても継続することで、必ず良い結果につながります。
- ・お子さんがプレオルソを嫌がるのは、頑張るモチベーションが湧かないからです。
- ・お子さんが主体的に矯正治療に参加する実感を持てるよう配慮したり、楽しいこととセットにしたりするなど工夫をすると、嫌がらなくなることも多いです。
- ・ご家族のサポートやご褒美作戦も有効です。毎日のことなので、ご褒美は引換券制にするか、廉価なものを集めさせるかなどの作戦がおススメです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
MFT特集 第8回 – 「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える
2024年10月25日
MFT特集 第8回 – 「笑ったときに下顎の前歯が見えない」ディープバイト(Deep Bite)について考える
こんにちは。岩国のつぼい歯科クリニック 小児歯科専門医の吉村剛です。
今回はMFT(口腔筋機能療法)に関連した第8回の特集として、最近よく見られる深いかみ合わせ(deep bite)についてお話します。

MTF特集1~7はこちら(クリックすると、ページに移動します)
MFT特集その1 筋肉量を増やして小児口腔機能発達不全症を治そう
MFT特集その2 「正しい姿勢・咀嚼と嚥下・呼吸」を得るために大事なこと
MFT特集その3 お口の機能発達は10歳までが勝負!
MFT特集その4 お口ポカンの影響と直し方について
MTF特集その5 口呼吸とアレルギー、アデノイド
MFT特集その6 矯正手法とMFTについて
MFT特集その7 舌癖と歯列不正のメカニズムについて
筋肉は、歯並びやかみ合わせに大きな影響を与えます。
第5回でも軽く触れましたが、日本人は丸顔が多く、幼い印象を持たれる顔が多い傾向があります。
骨や筋肉の視点から見ると、下あごの発達が悪く、咬筋が優位になりやすい顔の作りです。
実はこの特徴が、深いかみ合わせの症状と一致しています。
つまり、日本人は深いかみ合わせになりやすい顔の作りであると言えます。
1 ディープバイトの原因と影響
ディープバイトは奥歯をぎゅっと噛みしめてしまう「クレンチング」が原因です。
歯の高さである「咬合高径」は、噛む力と萌出する力のバランスで決まります。
噛む力が強ければ、萌出力が負けてしまい、歯の高さが低くなります。
このディープバイトの問題点は、時間が経つにつれてさらに深くなり(悪化する)可能性が高いことです。
2 下あごの成長とディープバイトの関係
下あごの成長は上あごに比べて遅く、思春期前後にピークを迎えます。
しかし、この時期に咬筋が強すぎると、下あごの発達が阻害され、上顎前突の傾向が強まります。
そのため、思春期前後までにバイトアップやマウスピース矯正など、下あごの発達を促す介入を行うことが有効です。
また、広島大学の研究でも、ディープバイトは自然には改善せず、むしろ悪化することが多いとされています。
3 家庭でできるディープバイト対策
家庭でできる対策としては「クレンチング(噛みしめ癖)予防」が挙げられます。
人間は集中すると癖が出やすく、奥歯を無意識に上下の歯を接触させてしまう癖がつくことがあります(歯牙接触癖:tooth contacting habit)。
これが進行すると、歯を常に噛んでいる状態となり、さらに問題が悪化することがあります。
また、ストレスがかかると歯ぎしりなど、奥歯を強くかみしめる症状が出る人もいます。
人は安静時、「上下の歯が当たっていない状態」が正常です。
上下の歯が接触するのは、食事時間も入れて1日約17分と言われています。
以上より、普段から上下の歯を当てない・噛みっぱなしにしないように意識することが大事です。
4 下あごに負担をかける癖に注意
頬杖やうつぶせ寝など、下あごに負担をかける癖も良くありません。
これらの癖は姿勢に関連しており、自分がどのような状況で下あごに力をかけているかを把握することが重要です。
例えば、ゲームをする時も、口を開けている人もいれば、奥歯をかみしめている子供も多くいます。
最近のお子さんの生活習慣の傾向として、ゲームやスマホなどを長時間するケースが多くみられます。
そうした生活習慣の中で、奥歯をかみしめるにしろ、開けているにしろ、お口の癖が強く影響するようになったと臨床家として感じています。
お子さんの生活の癖や姿勢の癖、お口の癖などを親御さんがしっかりチェックしてあげることが重要です。
当院の筋機能療法(MFT)
まとめ
生活習慣や癖が歯並びに影響することを意識し、「お口の悪い癖」「口腔機能発達不全」を見逃さないことが重要です。良く分からない場合は、お近くの歯医者さんでチェックしてもらってくださいね。
生活習慣の悪化を防ぐためにも、早めの対策がおススメです。
いかがでしたか?
・日本人は丸顔で、ディープバイトになりやすい顔の作りです。
・クレンチングによって下あごが押し込まれ、悪化しやすい傾向があります。
・ゲームなどの集中による癖もディープバイトに影響するため、生活習慣を見直すことが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
MFT特集7 舌癖と歯列不正のメカニズムについて
2024年9月26日
MFT特集7 舌癖と歯列不正のメカニズム~舌の悪い癖と歯並びが悪くなることの関わりについて~
こんにちは!岩国のつぼい歯科クリニック、小児歯科専門医の吉村です。
今回は、MFT(口腔筋機能療法)の第7回として、舌癖がどのように歯並びに影響を与えるかを解説します。
第1章 舌癖と歯列不正の関係
舌癖は「舌が正しい位置にない状態」とも言えます。
舌に力が入っていないと、舌の厚みや模様がはっきりしません。
舌が正しい位置にあれば、力が入り、舌の模様がはっきりします。
例えるなら、牛タンのブロックのように厚みがあり、縦にしっかりとした形が舌の正しい姿です。
舌が弛緩して低位になると、上下前歯の間か、下顎に収まるようになります。
- ・舌が上下の前歯の間に収まるようになれば、舌突出癖が誘発され、『開咬』になります。
- ・舌が下顎に収まってしまえば、下顎歯列が拡大されて、『反対咬合』の傾向を呈してきます。
- ・上顎は舌の刺激が少ないため、横幅が狭く、口蓋が高く(上顎のくぼみが深く)なります。
- ・低位舌の場合、口輪筋が発達不全をおこし、お口ポカン(口唇閉鎖不全)になりやすくなります。
- ・お口ポカンになると、前歯は『出っ歯』の状態を呈する場合があります。
第2章 舌癖が発音に与える影響
舌癖は発音にも影響を与えます。
舌が正しい位置にないと、サ行やタ行の発音がくぐもった音になり、ナ行やラ行も正しく発音できなくなることがあります。
話している内容は通じるのですが、もごもごしゃべっている感じとか、飴玉をなめている感じという印象になりやすいです。
また、舌癖に関連する他の口腔悪習癖も、改善の難易度に違いがあります。
個人差はありますが、一般的に改善しやすいものとしにくいものに分けられます。
◆改善しやすいもの:原因が明確で、その癖を継続している期間が短いもの
- ・口唇閉鎖不全
- ・咬合力の低下
- ・弄舌癖
- ・口唇癖
- ・一部の歯列異常(非骨格性のもの)
◆改善しにくいもの:複合的な要因によるもの
- ・口呼吸
- ・構音障害
- ・異常嚥下癖
- ・長期の指しゃぶりや咬爪癖
複合的な要因によるものは、歯科的なアプローチのみでは治療が難しいことがあります。
舌癖は「舌を自由に動かす」感覚が失われている場合が多いです。
MFTや矯正治療を通じて、自由に動かせる舌と理想的な歯並びを手に入れましょう。
当院の筋機能療法(MFT)
まとめ
いかがでしたか?
- ・舌癖がある舌は力が入っておらず、厚みがなく、模様やしわがはっきりしていないという特徴があります。
- ・舌が低位である場合、上下前歯の付近に存在すれば開咬となり、下顎に位置すれば下顎前突になりやすいです。
- ・舌癖がある場合、構音障害(くぐもったような発音)になることがあります。
- ・舌の習癖には治しやすいものと治しにくいものがあり、舌癖のある期間の長さで治療難易度が変わります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歯並びが治れば滑舌が改善する!?~滑舌と歯並びの関係~
2024年9月19日
歯並びと滑舌の関係
1. はじめに
こんにちは、つぼい歯科クリニックの院長 坪井です。
お子さんの滑舌が悪いことで悩んでいるお母さま方へ、今回は歯並びと滑舌の関係についてお話しします。
現代のお子さんの多くが、口唇や舌を正しく使えていないと言われています。
一般的に3割程度のお子さんが、舌や口唇を上手に動かすことが苦手な「口腔機能発達不全症」と言われていますが、小児歯科の臨床に携わる歯科医師の体感としては3割どころではなく、5~7割と感じています。
- 滑舌が悪い
- 舌の可動域が小さい
- 舌を挙上するのが苦手
- 風船を膨らますことができない
- 蝋燭を吹き消せない
- 普段から口が開いている
- 食事がとても時間がかかる
今回は、こうした「小児口腔機能発達不全症」の症状のうち、滑舌と歯並びの関係に焦点を当ててお話しようと思います。
2. 子供の滑舌と歯並び
歯並びが滑舌に与える影響は非常に大きいです。
歯の位置がずれていると、舌が正しい位置に動かず、発音が難しくなります。
例えば、歯並びの横幅が狭く、口蓋(上顎のお椀のような形態)が深い場合、舌を上に持ち上げて上顎に触れさせることが難しくなることがあります。すると「タ行」の発音が難しくなることがあります。
また、上の前歯が前に出っ歯となっていて、下の前歯との距離が大きく空いている場合、舌を上の前歯に擦って音を出す「サ行」が言いにくくなることもあります。
滑舌が悪いと、友達とのコミュニケーションに支障をきたしたり、コンプレックスになったりすることがあるため、可能ならば低年齢のうちに改善したいところです。
3. 歯列矯正の効果
横幅が狭く出っ歯型の歯並びと、正常な歯並びを見比べてみましょう。

横幅が狭く、出っ歯型の歯並び

正常な歯並び
横幅が狭くなってしまった場合、上顎が深くなってしまい、舌を当てるのが難しくなってしまいます。
こうして舌を正常に動かすことが難しい場合、ちょっと籠ったような発音になることが多いです(口蓋化構音)。
歯列矯正治療では前歯を引っ込めたり、(10歳以下の小児の場合は)急速拡大装置と呼ばれる、上顎の横幅をしっかり広げる治療などで、構音が難しくなってしまう原因を治療することができます。

急速拡大装置
4. MFTや言語聴覚士によるトレーニングの併用
歯列矯正だけでなく、筋機能療法(MFT)や言語聴覚士によるトレーニングも有効です。
当院は、口腔機能発達不全症のお子様が矯正治療を行う場合、ほぼMFTも併用しています。
*ただし、お子様の年齢が10歳以上の場合で治療効果が薄いと判断した場合は、ご自宅での簡単なトレーニングの指導のみとさせていただいています。
MFTについては、こちらの記事もご覧ください。
参考リンク:お口の機能発達は10歳までが勝負!
参考リンク:当院のMFTの様子(インスタグラム)
*インスタグラムは音がでますのでご注意ください
5. まとめ
いかがでしたか?
・滑舌と悪い歯並びには関係があり、歯並びを治すことで滑舌が改善することがあります。
・特に「タ行」「サ行」で特に改善が見られます。
・MFTや言語聴覚士によるトレーニングを併用した方が効果的です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
矯正治療は何歳から始めるのが一番良い?
2024年9月3日
矯正治療は何歳から始めるのが一番良い?

こんにちは、岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井文です。
今日は「矯正治療は何歳から始めるのが一番良い?」という話題です。
当院には、2~3歳のお子様から、60代くらいまでの方が矯正治療に通院されています。
大人になってからでも、多くの場合は治療可能です。
しかし、悪い歯並びは子供のうちに治してしまう方がメリットが大きいのも、事実です。
1)小児矯正の重要性
まず、小児矯正についてお話ししましょう。
10歳前後までの時期が対象の小児矯正を行う理由は、成長期を利用して顎の骨を正しい位置に導くことができるからです。
この時期に矯正を行うことで、将来的に抜歯を避けることができる場合もあります。
小児矯正の詳細については、別の記事で詳しく書いていますので、ご興味がある方はぜひ読んでみてくださいね。
★参考リンク★
成長を利用して治す小児矯正で「非抜歯矯正」!
2)小児矯正のデメリット
一方で、小児矯正にはデメリットも存在します。
例えば、治療期間が長くなることや、装置の管理が難しいことがあります。
また、子供自身が治療に対して積極的でない場合、治療がうまく進まないこともあります。
3)12~13歳以上の矯正治療
では、小児矯正の時期を逃してしまった12~13歳以上の方の場合はどうでしょうか?
人間の頭蓋は10歳前後で成長をほぼ終えるので、「矯正治療で顎を育てることができる」時期は終わっています。
しかし実は、「顎を育てる時期が終わっている12~13歳」でも、早めに治療した方が良い理由があるんです。
今回は、その理由を5つご紹介します。
4)早めに歯列矯正を行うことのメリット
4-1)治療期間が短い・歯が良く動く
思春期の成長期にある12~13歳の段階では、骨や歯が柔らかく、治療に対する反応が良いです。
この時期に矯正治療を開始することで、治療期間を短縮し、歯の動きを促進することが期待できます。
4-2)痛み・違和感が少ない
若い時期に治療を始めると、歯や口腔の状態がまだ柔らかいため、痛みや違和感が少なく、患者が治療に対して快適に適応できます。
4-3)社会生活への影響が小さい
思春期は学業や友情など、社会的な関係が形成される時期です。
この時期に治療を始めると、社会生活への影響が少なく、同世代との交流や自己表現がしやすくなります。
成人後に治療を始めると、仕事や社会生活において制約を受ける可能性があります。
特に飲食業や営業など、外見や口元が重要な職業に従事する場合、治療が難しくなることがあります。
4-4)加速矯正を行える
近年では加速矯正技術が進歩しており、治療期間をより短縮することが可能です。
思春期に始めることで、このような新しい技術を駆使し、より迅速かつ効果的な治療が行えます。
4-5)高校デビュー・大学デビュー・社会人デビューの時には綺麗な歯並びでいられる
思春期に治療を終えると、高校や大学、社会人としての新たなステージに綺麗な歯並びで臨むことができます。
「失った時間は取り戻せない」ため、思春期に治療を受けることで、将来の自分に自信を持って臨むことができます。
5)私の体験談:思春期の思い出を変える矯正治療
5-1)私の生まれつきの歯並びの問題
私は生まれつき、上の2番目の前歯が2本生えていました。
本来1本のところに2本生えているため、その部分の歯並びが乱れていました。
小学生2年生のころ、母に連れられて矯正相談に行ったことを覚えています。
母は矯正治療が保険適用外であることから、治療を受けさせるべきかどうか、非常に悩んでいました。
母は私に「文ちゃん、歯並び、気になる?治したい?」と尋ねました。
当時の私は小学2年生で、外見や歯並びについて何も気にしていない年齢でしたので、
「全然!このままでいいよ!」と答えました。
母が、ホッとした表情をしたのを、よく覚えています。
5-2)思春期の変化
しかし、思春期に入ると外見がそれなりに気になるようになりました。
笑ったときに上の前歯の歯並びが乱れていることがコンプレックスとなって、口元を隠すことが増えました。
小学生のころは、歯を見せて笑っている写真が多く残っていますが、中学生~高校生の頃の写真では、歯を見せて笑っている写真はほとんどありません。
5-3)矯正治療の決断
大学生になった私は矯正治療を受けたいと、強く思うようになりました。
毎日鏡で自分の顔を見るたび、歯並びが気になる…と思うのを辛く感じるようになっていましたし、
歯磨きを頑張っても、歯並びが乱れて歯が重なっている部分には虫歯ができてしまいました。
両親も私の気持ちを汲んで、
「もっと早くに矯正させてあげたら良かった」
と言ってくれて、晴れて歯並びを治療を受けることが出来ました。
5-4)もっと早くにしておけば良かった
治療が終わったとき、私は自分の笑顔に自信を持てるようになりました。
ただ、矯正治療をする前に虫歯になってしまった歯は元には戻りませんし、
口元を隠して過ごした思春期の時間も戻りません。
矯正治療は何歳からでもできますが、どうせやるなら、確かに早めが良かったなと個人的には思っています。
6)矯正治療を考えている方へ
矯正治療は何歳からでも始められます。
しかし、矯正をされる方の多くが、子供か、若い方です。
「どうせやるなら早いうちに始める方が、メリットが大きい」からです。
小児期から始めれば、抜歯を回避できる可能性が高くなり、
思春期から始めれば、治療期間を短縮し、痛みや違和感を軽減することができます。
大学時代から始めれば、社会生活への影響も少なく、将来の自分に自信を持つことができます。
迷っていらっしゃる方は、当院でも無料矯正相談会を毎月開催しておりますので、よろしければ一度相談に知らしてくださいね。
まとめ
いかがでしたか?
・矯正治療は何歳からでも始めることができますが、早めに始めることで多くのメリットがあります。
・治療期間が短縮されます。
・痛みや違和感が軽減されます。
・社会生活への影響が少ないです。
・将来の自分に自信を持つことができます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。