小児の部分矯正とは?少数歯を短期間で整える「MTM」について
2026年4月23日

こんにちは。岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。
今回は、小児の部分矯正についてお話しします。
たとえば、
- ・この1本だけ、なかなか生えてこない
- ・12歳臼歯が手前の歯にひっかかって、まっすぐ生えてこない
このように、一部の歯だけにトラブルが起きていることがあります。
こうした場合に行うのが、MTM(マイナー・トゥース・ムーブメント)です。
MTMとは、少数の歯だけを動かして整える部分的な矯正治療のことです。
今回は、実際の症例も交えながら、できるだけわかりやすくご紹介します。
1)全顎矯正と部分矯正
矯正には「全体を整える治療(全顎矯正)」と「一部だけ整える治療(部分矯正)」があります。

1-1)全顎矯正
お口全体のかみ合わせや歯並びを整える治療です。
- ・ワイヤー矯正
- ・アライナー矯正(インビザライン、クリアコレクト、SMARTEEなど)
- ・小児予防矯正(プレオルソ、マイオブレイス、ムーシールドなどの既成マウスピース)
- ・小児矯正(固定式・取り外し式の拡大装置を用いて、顎の大きさや歯の並ぶスペースを整える治療)
1-2)部分矯正
気になる一部分だけを治療する方法です。
- ・前歯だけなど、限られた範囲を整える部分矯正
- ・自然には正しい位置に生えにくい永久歯を、正しい方向へ導く小児部分矯正
2)小児矯正における「全顎矯正」と「部分矯正」の違い
- お口ぽかん
- 口呼吸
- 舌の癖
- 飲み込み方や姿勢の問題
- 顎の成長バランス
こうした問題に対して、MFT(口腔筋機能療法)や既成のマウスピース型装置を使いながら、顎全体やお口の機能を育てていく治療は、全体をみる矯正治療にあたります。
一方で、永久歯への生え変わりの時期には、
- ・歯の生え方のトラブル
- ・歯が本来と違う場所・向きに生えてくること
といった問題が起こることがあります。
このような場合には、まず特に問題のある1本、あるいは限られた数本の歯を優先して治療することがあります。
全体を一度に動かすのではなく、まずはトラブルの大きい部分を整えることで、その後の治療が進めやすくなることもあるためです。
このような、少数の歯を対象にした矯正治療がMTMです。

3)実際の小児MTM症例
12歳臼歯(第二大臼歯)が斜めに生えてきたケース
ここからは、当院で実際に治療した症例をご紹介します。
この患者さんは、ほかの歯並びやかみ合わせには大きな問題がなかった一方で、12歳臼歯(第二大臼歯)だけが手前の歯にひっかかり、自力ではうまく生えてこられない状態でした。

術前の写真では、12歳臼歯が斜めの方向に傾いたまま生えてきていることがわかります。
このままでは自然な改善が難しいため、その歯だけを対象に矯正治療を行いました。

治療開始から6か月後には、12歳臼歯が起き上がってきて、正しい方向へ近づいています。
この患者さんは、臨床上問題ないレベルまで歯が起き上がったタイミングで装置を取り外し、あとは歯の根っこの完成を見守りつつ、上下の歯が噛み合う中での「噛み合わせの完成」を待つことになりました。
僕は大学時代にもよく似た症例を何度も経験しており、実は論文も書いています(大臼歯の近心傾斜および萌出不全に対する効率的な咬合誘導 吉村剛ら 小児歯科学雑誌 47巻5号)。

この症例でも、論文で発表した設計の矯正装置を用いました。

この装置は、
- ・シンプル
- ・歯の裏に装置が来るので目立たない
- ・歯みがきがしやすい
- ・違和感が少ない
といった特徴があります。
装置装着後、右側の奥歯は約3か月、左側も約6か月ほどで生える方向が修正されました。

4)第二大臼歯の近心傾斜は比較的よくみられるトラブル
第二大臼歯の近心傾斜は、決して珍しいものではなく、比較的よく問題になります。
今回は、歯列のガタガタや、受け口、出っ歯といった全体的な歯並びの問題がなかったため、この部分的な治療だけで終了しました。
ただし、患者さんによっては、
- ・歯が並ぶスペースが足りない
- ・全体のかみ合わせにも問題がある
といったケースもあります。
その場合は、MTMで一部分の問題を改善したあとに、さらに全体の矯正治療が必要になることもあります。

5)当院の矯正治療について
今回は比較的シンプルな装置で改善できた症例でしたが、矯正治療はいつも同じ方法で対応できるものではありません。
大切なのは、矯正の基本原則を踏まえながら、その患者さんに合った方法を考えることです。
当院では、矯正治療について複数の歯科医師が院内でカンファレンスを行い、それぞれの得意分野や治療経験を持ち寄って、よりよい治療法を検討しています。
「この歯だけ、少し気になる」
「自然に生えてくるのを待っていいのか心配」
そのような場合も、まずは一度ご相談ください。
6)まとめ
いかがでしたか?
- ・矯正治療には、お口全体を整える全顎矯正と、一部だけを整える部分矯正があります。
- ・小児では、永久歯の生え変わりの時期に、歯の生え方のトラブルや生える位置のずれが起こることがあります。
- ・そのような場合、まず問題のある歯だけを優先的に治療する方法があり、これをMTM(少数歯の移動)といいます。
- ・まずは「様子を見てよいのか」「治療が必要なのか」を確認するためにも、早めの相談がおすすめです。
最後までお読みいただきありがとうございました






