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歯科助手のお仕事とその魅力~コンプライアンスを守って、安心安全な医療を。~患者さんへも自分たちにも〜

2025年1月20日

歯科助手のお仕事とその魅力~コンプライアンスを守って、安心安全な医療を。~患者さんへも自分たちにも〜

こんにちは!岩国市の医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。

今回は、歯科助手の仕事についてご紹介します。

歯科助手の役割や魅力、歯科衛生士との職務の違いなどをお伝えしたいと思います!

1.歯科助手の主な仕事内容

歯科助手は、患者さんが安心して治療を受けられる環境を整える、重要な役割です。

「国家資格が必要になる業務」以外のすべて業務のうち、それぞれの歯科医院で、お任せする業務を決めて行っています。よって、その業務はさまざまで、医院ごとにかなり差があります。

代表的な業務は以下の10個です。

1-1. 診療準備

患者さんの治療をスムーズに行えるように、治療に必要な器具や材料を事前に準備します。

当院は受付配属と診療室配属を完全に分けていますが、受付と診療室業務を兼任している歯科医院の方が多数派です。

1-2. 診療介助

歯科医師がスムーズに治療を行えるように、必要な器具や材料をチェアサイドに随時用意したり、患者さんの口腔内を吸引器で吸引したりします。

また、型を採るための印象材を練ったり、型に石膏を流し込んだりすることもあります。

1-3. 機材と物品の管理

治療に使用する器具や材料が、いつでも使用できるように管理することも重要な業務です。

器具の滅菌や保管、使用済み器具の洗浄、修理依頼、在庫管理や発注などを担当します。

小規模から中規模の歯科医院では、受付配属メンバーが滅菌消毒業務も兼任しているところも多いです。

当院は、受付配属メンバーは受付業務を専任で行っています。

1-4. 歯科医師のサポート業務

治療スケジュールの管理、カルテの整理、診療記録の入力を行います。

また、診療室や受付で、患者さんからの質問や相談もされることがあります。

その場でわかる範囲でお答えしたり、わからないことは歯科医師に確認してからお答えします。

1-5. 電話応対業務

患者さんからのお電話でのご予約のお申し込みや、変更に対応します。

診療内容やオペレーションを理解している歯科助手さんは、診療について理解していない受付専任の歯科助手さんと比べると、患者さんを可能な限り多く診療ができて、診療室スタッフに無理や危険が起こらない、上手な予約の取り方ができます。

当院は、電話業務は受付と診療室が分担して行っています。

1-6. 受付

窓口業務です。診察券や保険証の確認、問診票の記入補助、診療室への案内、会計業務などを行います。

保険診療を行う場合、保険証やマイナンバーの番号や期限の管理や、基礎的な保険診療のルールを知っておく必要があります。本格的な医療事務を目指す場合は、より深く保険のルールを学ぶ必要があります。

小規模の歯科医院では、診療介助業務と受付業務を兼任しているところの方が多いです。

1-7. 患者さんへのカウンセリングや治療の説明業務

歯科医師が行う医療面接とは別に、トリートメントコーディネーターやカスタマーサクセスとして、患者さんの価値観や治療の希望などを聞き取りしたり、相談相手になったりする業務です。

中規模以上の医療法人では、歯科助手の上位職種として、トリートメントコーディネーターやカスタマーサクセスを目指す人も多いです。

当院の場合は、数年の研鑽を積んだ、専任のマスタートリートメントコーディネーターが在籍しています。
トリートメントコーディネーターは、1日で認定資格が取れる協会もあれば、半年以上の研鑽が必要な協会もあり、レベル差が大きい資格です。

将来的に、診療室配属歯科助手・受付・保育士の上位職として、当院基準のトリートメントコーディネーターよりは、かなりチャレンジしていただきやすい、カスタマーサクセスを増やしていく予定です。

1-8. 院内環境の整備

清潔で快適な院内環境を保つため、掃除や備品の補充を行います。

1-9. 医療事務

保険算定の確認や修正を行う業務です。

医院によって求められるレベルが違います。

受付スタッフを医療事務と呼んでいるところもあれば、保険のルールに精通して、算定について歯科医師に意見ができる人を、医療事務と定義しているところもあります。

できることによって、収入も大幅に違っています。

当院の医療事務メンバーは、専門職を目指してトレーニングをしてもらっています。

1-10. MFT(筋機能療法)指導業務

歯科衛生士や保育士、管理栄養士が担当することも多いですが、歯科助手が担当する場合もあります。

お口の体操や、食事の姿勢などを指導する業務です。

当院では、保育士メンバーが行っていますが、ベテランの歯科助手メンバーは指導もできるようにトレーニングをしています。

2.歯科助手と仕事を分担する職種

歯科医院によって、受付・診療室業務すべてを行っているところもあれば、受付+滅菌、受付+医療事務、滅菌+準備+MFTを行っているところなど、組み合わせはさまざまです。

現在当院では、診療室配属歯科助手さんは、診療介助+物品管理+滅菌+診療準備をしています。

MFTは保育士さんが、受付は専任の受付配属歯科助手の人が、医療事務業務も専任の医療事務担当の人が行っています。

 

歯科助手は国家資格が不要です。

当院は未経験での入職大歓迎です。入職したメンバーの9割が、未経験からチャレンジしています。

未経験の方にとって仕事を覚えやすい環境づくりとして、できるだけ最初に担当する業務には集中して学んでいただけるようにしています。

診療室の業務を一通りマスターできたら、次のキャリアアップとして、受付・患者さんへの説明業務・MFT(口呼吸を鼻呼吸に改善するためのパーソナルトレーニング)・インプラント手術の介助業務・顕微鏡を使用した精密治療の介助業務、など担当範囲を広げていただくようにしています。

3.歯科衛生士と歯科助手の業務の違い

歯科助手は「国家資格が必要な診療業務」を行うことができません。

「相対的歯科医行為」と言われる仮の蓋を入れたり外したり、歯周病検査や歯石除去をしたり、といったことはできません。

また、これは法律で決まったことではなく、あくまで学会のガイドラインに過ぎないのですが、泣いて暴れるお子さんの虫歯治療をする際に、安全のために道具を使って抑えないといけないような場面では、歯科衛生士か歯科医師が(治療担当の歯科医師とは別に)1名、治療の安全確保のために必要とされています。

大学病院などでは、若い歯科医師や研修医が暴れるお子さんを抑える役をすることもありますが、一般開業医ではまず歯科衛生士が同伴することになります。

4.歯科助手を守る「コンプライアンス」

4-1. 法律と規則の遵守

業務範囲を正しく理解し、法令を遵守することが重要です。

4-2. 感染対策の徹底

器具の滅菌や院内の衛生管理を徹底することで、患者さんとスタッフの安全を守ります。

コロナ流行期に、飲食店ではクラスターが多数発生したのに、歯科医院ではクラスターはほとんど発生しませんでした。

歯科医院の日頃の感染対策があったからだと思います。

当院でも、最新の感染対策ガイドラインに基づき、定期的な研修を実施しています。

4-3. 働きやすい職場環境の提供

スタッフが安心して働ける環境を整えることも、コンプライアンスの一環です。

当院では、労働基準法を遵守し、残業ゼロに向けての取り組み、産休・育休取得支援などを行っています。

5.歯科助手として働く魅力

歯科助手の仕事は、患者さんの笑顔を支えるやりがいのある職種です。

以下のような魅力があります:

  • ・未経験からでも始められる
  • ・専門性の高いスキルが身につく/資格取得できる
  • ・「ありがとう」と言ってもらえる仕事

5-1. 未経験からでも始められる

特別な資格が不要なため、未経験でも挑戦しやすい職種です。

5-2. 専門性の高いスキルが身につく/資格取得できる

日本に6万8713軒もある歯科医院・病院口腔外科の多くで、歯科助手経験者は優遇採用されます。

歯科の医療用語、印象材や石膏の扱い、吸引の技能、保険や滅菌の知識と経験が重視されるためです。

5-3. 「ありがとう」と言ってもらえる仕事

歯科助手という仕事は、医療現場の中でも特に患者さんとの距離が近く、直接「ありがとう」という感謝の言葉をいただける機会が多い職業です。

歯科治療に不安を抱える患者さんに寄り添い、優しく声をかけたり、治療の流れを丁寧に説明したりすることで、患者さんの緊張を和らげることができます。

6.歯科助手の仕事の「大変な部分」も正直にお伝えします

  • ・立ち時間が長い
  • ・覚えることが多い

6-1. 立ち時間が長い

歯科助手の仕事は、基本的に立ち仕事が多いです。

6-2. 覚えることが多い

歯科助手の仕事では、治療器具の名前や専門用語を覚える必要があります。

7.まとめ:歯科助手を目指す方へ

歯科助手は診療補助、器具管理、受付業務などさまざまな業務で歯科医院で活躍しています。

未経験からでも始められ、国家資格は不要ですが、専門性の高いスキルや知識を身につけることでキャリアアップが可能です。

もし歯科助手の仕事に興味を持っている方がいれば、ぜひ一度チャレンジしてみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

歯科医師と歯科衛生士の業務範囲って、どうちがうの?

2024年12月16日

「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」

こんにちは!医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 院長の坪井です。今日は歯科衛生士と歯科医師の業務範囲の違いについての話題です。

岩国、歯医者、歯科衛生士

1.現在の歯科医院には多くの専門職が在籍する

昔々は、歯科医院にいる専門職といえば「歯科医師」だけでした。1960~1970年代の多くの歯科医院では、歯の詰め物や被せ物、入れ歯などを自作していたので、15~16時で外来診療は終わり、その後の時間で院長先生が自分で技工物を作っていました。

1970年代に入ると、歯科衛生士が多くの医院に勤務するようになります(資格そのものは1948年にはありましたが、一般的な医院に歯科衛生士が勤務するようになるのには、少しタイムラグがあったようです)。1989年に歯科保健指導が歯科衛生士の業務に追加されると、歯科医院における歯科衛生士の役割はますます重要になっていきました。

そうした歴史的背景から、歯科医院の専門職と言えば「歯科医師」「歯科衛生士」と思われる方が多いと思います。

現在では、もっと多くの職種のメンバーが歯科医院に在籍しています。例えば当院では、国家資格者だけでも歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士のほかに、薬剤師・保育士・管理栄養士が在籍しています。国家資格以外の職種に、歯科助手・受付・医療事務のメンバーも在籍していて、いずれも専門性が高い業務を担っています。

今日はそんな「歯科医院の色んなお仕事」の中でも、歯科医師と歯科衛生士の業務について解説していきます。

2.歯科治療には「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の区別がある。

  • 絶対的歯科医行為:歯科医師のみが行うことができる医療行為のこと
  • 相対的歯科医行為:歯科医師の監督下であれば歯科衛生士も行うことができる医療行為のこと

具体的な絶対的歯科医行為(歯科医師だけが行うこと)

  • ・治療計画の作成
  • ・歯や神経の抜歯
  • ・歯の切削
  • ・歯茎の切開
  • ・詰め物の充填
  • ・被せ物の装着
  • ・注射による麻酔(歯石除去のための麻酔以外)
  • ・レントゲン撮影

具体的な相対的歯科医行為(歯科医師の指導下で歯科衛生士も行えること)

  • ・歯周病検査
  • ・歯石や歯の着色の除去
  • ・ホワイトニング
  • ・表面麻酔の塗布
  • ・歯列矯正のワイヤー交換や装着
  • ・仮歯の調整と仮着
  • ・適切な教育が行われた場合に限り、歯石除去の麻酔は可能

3.法的にはどうなっているの?

絶対的歯科医行為と相対的歯科医行為の境界線は、実は曖昧です。厚生労働省の審議会などでも、ある特定のラインはある(人の体を切ったり削ったりするような)ものの、注射・麻酔・印象といった「特定行為(教育や実習を経て歯科衛生士による実施が可能となる行為)」というグレーゾーンがあって、その下に「歯科衛生士でもできる、明確な相対的歯科医行為」があるイメージです。ですから、歯科衛生士の業務は医院によって異なる(歯科医師の裁量による)ことも多いのです。

出典:厚生労働省審議会資料 医行為分類の枠組み(修正案)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002npzo-att/2r9852000002nq4x.pdf

4.相対的医行為のなかの「特定行為」 ~特に麻酔について~

歯科の世界で代表的な「特定行為」は麻酔ではないかと思います。

よく「歯科衛生士の麻酔はSRP時に限る」と言われますが、実際は法律にそういったことが明言されているわけではなく、特定の条件を満たした歯科衛生士が採血を行って、裁判で無罪になったケースもあります。麻酔では無く「採血」での無罪判決ですから「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の境界線がいかに曖昧かということが良く分かりますね。

5.当院の立場と考え

当院では歯科衛生士が麻酔を行うことはありません。

歯科衛生士が麻酔を行うことに反対の立場でそうしているのではなく、当院においては、運用上必要がないためです。

  • ・当院には歯科医師が複数名在籍しているので、歯科医師が局所麻酔をしにチェアサイドにいくことが、さほど大変でもない
  • ・エムラクリームという強力な表面麻酔を用いることで、SRP時に浸潤麻酔が必要となることが激減した。

そのうえで、歯科衛生士の麻酔についてどう考えているかと申しますと、

  • ・歯科衛生士が麻酔できると、臨床のオペレーションがスムーズという事情は理解できる。
  • ・歯科衛生士専門学校で麻酔についての教育がほぼ皆無である現状で、敢えて歯科衛生士が麻酔をする必要は無いのではないか。
  • ・少なくとも一定の研修を受けたという資格は必要と考える。

という立場です。

 

実際、同じ立場の歯科医師は多くいます。

 

・「臨床歯科麻酔認定歯科衛生士(民間資格)」など必要な研修・教育を経て取得できる。
(民間資格なので、この資格がないと麻酔できない、というものではありません)。

・日本歯科麻酔学会と日本歯周病学会が連名で公開した「歯科衛生士による局所麻酔行為による見解」でも、「浸潤麻酔全般を現時点で歯科衛生士の業務とすることは困難であると考えます(中略)浸潤麻酔行為を含む歯科治療に積極的に関わろうとする歯科衛生士の活動は支援する」とされている。

 

よって、必要な教育・実習を経て、歯科医師の指導下で安全に処置する体制があれば、歯科衛生士のSRP時の浸潤麻酔はOKなのかもしれません。

個人的には、歯科衛生士の学校教育に麻酔が盛り込まれると、より安心かなと思います。

 

 

歯科医療の現場では、歯科医師と歯科衛生士がそれぞれの専門性を活かしながら協力することで、より質の高い医療を提供することができます。

「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」という境界線はありますが、それぞれの職種が互いの専門性を尊重し、補完し合うことが大切です。

 

当院では、このようなチーム医療の理念を大切にしながら、患者さんの健康を守るために日々努力しています。

現在、歯科医師および歯科衛生士の方を募集しております。

私たちと一緒に、患者さんの笑顔のために働きませんか?

ご興味をお持ちの方は、ぜひ当院の求人情報をご覧ください。
ご応募をお待ちしております。

 

つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 求人採用サイト

 

6.「絶対的歯科医行為」を行って歯科衛生士が逮捕されたケースはあるの?

調べた限りでは、歯科衛生士が絶対的歯科医行為を行って逮捕されたケースはみつかりませんでした。
一方で、歯科助手が絶対的歯科医行為や相対的歯科医行為を行ったとして逮捕された事例は、実際に存在します。

  • ・歯科助手がスケーリングやSRPを行って書類送検されたケース
  • ・歯科助手がレントゲン撮影を行って書類送検されたケース
  • ・院長の妻(歯科助手)が形成を行って書類送検されたケース
  • ・歯科助手が仮歯の装着および、診療報酬の水増し請求をしたとして逮捕されたケース

 

これらの行為は歯科医師法第17条に抵触します。

 

7.歯科業界のコンプライアンス

20年くらい前、私がまだ歯学生の時代は、今ほどコンプライアンスが重視されておらず、歯科助手がレントゲンボタンを押す…ようなことは、しばしば耳にする話でした。

しかし歯科医療の世界も、時代とともに進化し、法令遵守の意識が高まってきました。

無資格者による医療行為も、今では見られなくなりました。

しかし、歯科医療における行為の境界線は、依然として微妙な部分があります。

転職サイトなどで見かける情報の中には、求職者の不安を煽り転職を促す目的で、あえて誇張や誤解を招く表現を散りばめているものも散見します。

 

次回は「歯科助手のお仕事 ~コンプラ重視の歯科助手の職務とは~」というテーマで、より詳しく解説していきます。

この記事を最後までお読みくださった方は、歯科業界の方、歯科業界にご興味をお持ちの方だと思います。

歯科医療の世界で、法令を遵守しながら、患者さんのために最善を尽くす方法を考える機会になれば幸いです!

 

8.まとめ

いかがでしたか?

  • ・歯科医療の専門性と役割分担が進化し、現在では多様な職種が協働してチーム医療を実践しています。
  • ・歯科医師と歯科衛生士の業務範囲には「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」の区別があるが、その境界線は曖昧な部分もあります。
  • ・歯科衛生士による特定行為(例:麻酔)については、適切な教育と研修を経た上での実施が望ましいと思います。
  • ・歯科業界は法令遵守の意識が高くなり、いまではコンプライアンス違反の話はほぼ耳にしなくなりました。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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