感覚が過敏な人のしくみと、その世界観に対する対策
2025年11月27日
小さなお子さんや発達がゆっくりなお子さんで、受診時や毎日の歯磨きの際に口を開けることを拒んだり、体を動かして嫌がることはありませんか?
こんにちは、医療法人つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。
ここ3回ほど、歯科での痛みや麻酔、歯科への怖い気持ちから起こる体の反応などについて特集してきました。
参考リンク
今回は、なぜ「歯医者・歯磨き=苦手」になりやすいのかの理由を、「感覚の偏り(過敏/鈍麻)」という観点から掘り下げていきます。
「歯医者さん、嫌だな、怖いな」
「どうしても歯医者に行く勇気が持てない」
「自閉傾向がある子供が、歯医者で極端に嫌がるため困っている」
そんな方にこそ、最後までお読みいただきたいです。
▼▼この記事の概要を図解▼▼

1.優位感覚の4タイプ
人は五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)を通じて情報を得ていますが、どの感覚に心と頭が反応しやすいかは人によって異なります。
この「感覚優位性」は、視覚・聴覚・体感覚の3つに分類され、最近では言語優位タイプもあると言われています。
優位感覚とは、その人が無意識に多く使う「脳のクセ」のようなもので、同じ出来事でも感じ方やインプット・アウトプットが異なります。
1)視覚優位タイプ
- 目から入る情報で物事を認識しやすい
- 絵・図・フローチャートで理解するのが得意
- 「空間」「色」「明るさ」など視覚的な表現を好む
- 目からの刺激に反応しがちで、気持ちがあちこちに飛びやすい
- 言葉だけの指示は覚えにくく、メモして視覚化すると理解しやすい
- 話の展開が早く、早口で主語が抜けやすい傾向
2)聴覚優位タイプ
- 音で物事を捉えるのが得意で、声の変化にも敏感
- 聞いて学習するのが得意で、音声コンテンツが効果的
- 「騒がしさ」「聞こえる音」など聴覚的な表現を好む
- 言葉で伝えられたことを理解し、そのまま繰り返せる
- 騒音があると集中しにくく、静かな環境が必要
- 論理的で、手順や分析を重視するタイプ
3)身体感覚優位タイプ
- 体験したこと、触れたことを記憶しやすい
- 体験・ロールプレイ・リズム・身体を動かす学習が定着しやすい
- 身振り手振りが多く、「温度」「肌ざわり」などの表現を好む
- 一つのことをじっくり味わうのが好き
- 早口だと処理が追いつかず、ゆっくりした話し方が合っている
- 見聞きしたことを身体で受け止めてから反応するタイプ
4)言語感覚優位タイプ
- 誰かと話したり、メモを取ったり、文章にまとめることで理解が深まる
- 自分なりのまとめ方やノート術が効果的
- 例え話やストーリーと関連づけて記憶するのが得意
2.感覚の偏りとその影響
1)感覚の偏り
「ふわふわの手触りが好き」「熱がり/寒がり」など、感覚の受け取り方は人それぞれです。
優位感覚が均等であるという方は意外に少なく、例えば以下のようなケースは良くみられるパターンです。
- 子供のころから眼鏡をかけている人は視覚からの感覚が弱く、聴覚・身体感覚を強く感じる
- 目が良い人は視覚からの感覚が強く、聴覚からの感覚が弱め
中でも、自閉症/自閉傾向がある方では、聴覚と触覚に偏りが出やすいとされています。
自閉症の診断基準にも「感覚刺激に対する過敏または鈍感、もしくは環境の感覚的側面への特異な興味」が含まれています。
定型発達の人の場合、会話は鮮明に聞こえ、背景音(エアコン、風、車の音といった環境音)は意識しないと聞き逃してしまうものなのですが、自閉症・自閉傾向のある方は“すべての音を均等に拾ってしまう”ことがあります。
以上により
という状態になることがあります。
環境音と会話が同じように聞こえてしまうために、会話が聞こえにくくなってしまうんですね。
自閉症の方の場合は、触覚でも同じようなこだわりや偏りが見られます。

2)感覚の偏りがあると、強いストレスを感じてしまうことがある
歯科医院には、こうした「感覚の偏り」があると、苦手に感じる刺激がたくさんあります。
- 歯科医院独特の臭い(義歯材料のレジン、根治用薬剤などの臭い)
- 歯科医院独特の音(チュイーン!という歯を削る音)
- 口の中を照らすための強いライトの光
- バキュームで口の中を吸われる感覚
- 歯を削られるときの振動
一般の方でも、「嫌だな…」と感じる方も多いこうした刺激は、「感覚の偏り」がある場合、特に強いストレスとなってしまうことがあります。それが強い恐怖心・苦手意識・拒否感につながってしまう…というわけです。

3.簡単な工夫でストレスを軽減できることも
ちょっとした配慮で、困りごとや疲れ方を軽減できる場合があります。
できることから、試してみていただけたら嬉しいです。
- ライトの光が苦手・気になる → アイマスクを使う
- 大きな音や特定の音が苦手 → イヤーマフやイヤホンの使用
- 背もたれが倒れる感覚が怖い → 先に背もたれを倒しておく
- わずかな振動・接触でも強い痛みに感じる → 弱い刺激から慣らす
- 痛みや熱に鈍感(ケガやむし歯に気づかない) → 定期健診でフォロー
- 歯医者の臭いが苦手 → 事前に歯科側に相談する(個室対応、アロマオイルを使用するなど)
- (発達障害があり)気になるものがあると触ろうとする → 気になるものを隠す
患者さんが思っている以上に、歯科を怖いと感じている人は多いです。
我々歯科医師・歯科スタッフの多くは、「歯医者が怖い方」に慣れています。
「自分だけ恥ずかしい」と思わずに、まずは怖い・苦手だと感じているものについて歯科スタッフにご相談ください。
4.小児歯科・障害者歯科で治療が難しい理由
患者さんの歯科への苦手意識から治療が困難になるケースはあります。
多くは、ストレスや理解できない刺激によりパニックが起き、気持ちが折れてしまうことがきっかけです。
歯科医師は、そのとき「何が問題だったのか」を振り返りつつ、嫌なこととその受け取り方が人によって異なる点を踏まえ、個人に合わせた治療のやり方を組み立てます。
- 虫歯の大きさと治療法
- 精神的な配慮
- 落ち着いて治療を受けられる環境を用意できるか
などを考慮します。
5.感覚過敏と心理的拒否の違いと対応
患者さんが「感覚の偏り(過敏)」によって治療に強いストレスを感じているのか、恐怖心によって心理的に治療を拒否しているのか、はたまた両社が混在している状態なのか、他の要因も重なっているケースなのか。
上記のどれに該当するかで、歯科医師の対応も変わります。
1)感覚過敏が主なストレス源となっている場合
どんな刺激でも口や身体に触れた直後から力が入って拒否する場合、触れられることに少しずつ慣れていく“過敏の除去”が必要です。
口から遠い場所(肩など)から触れて、マッサージなどをしながら徐々に口に近づいていくように触れる方法や、いきなり歯を削らずに、バキュームだけ、水だけ、など刺激が小さいものから慣らしていく方法などがあります。
2)心理的拒否
優しい声かけや丁寧な関わりで、これまでの歯科診療や歯磨きのイメージを修正します。
笑気の使用などで「これならできる」という自信がつくと、行動が変化することもあります。
笑気についての参考リンク
6.まとめ
いかがでしたか?
- 感覚の受け取り方は一人ひとり違い、歯科が苦手になる理由にもつながります。
- 優位感覚を理解すると、お子さんの感じ方や行動の理由が見えやすくなります。
- 自閉症では聴覚・触覚に偏りが出やすく、強い疲労や拒否反応が起こりやすいです。
- アイマスクやイヤーマフなど、家庭でできる小さな工夫でも負担軽減に役立ちます。
- 感覚過敏と心理的拒否は別で、丁寧な対応や慣らしで改善することが多いです。
- 困りごとは一人で抱えず、歯科医に相談することで適した対応策を一緒に探せます。
お困りごとがある場合は、可能なところから一緒に検討できますので、まずはご相談ください。
参考文献
「学校における発達障害のある児童・生徒への対応」
日本学校歯科医会会誌 第138号(令和7年度 No.2)
怖くて歯医者に行けない人のメカニズムと自己対策について
2025年10月21日
こんにちは、つぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村です。
最近、歯科治療が怖いので、配慮をしてほしい等のリクエストが増えています。
患者さん全体に対して優しい接遇を心掛ける当院ではありますが、一般的な配慮と、歯科恐怖症やパニック障害などの症状が出る状態での配慮は違いがあります。
また、歯科恐怖症とパニック障害は関連がありますが、パニック障害は歯科だけで起きるわけではないなど、少し異なります。
それ以外にも関連するような疾患や症状があります。
今回はそれらについての基礎知識、対策についてお話しします。
1)「歯科恐怖症」と「パニック障害」の身体反応のメカニズム
歯科恐怖症とは
歯科恐怖症は、歯医者に行くことや治療を受けることに対して強い恐怖や不安を感じる状態を言います。
主な症状には、発汗・動悸・強い緊張・治療器具の音や匂いへの過敏反応などが挙げられます。
原因は過去の歯科治療への先入観が多いです。
診断基準としては、日常生活に支障をきたすほどの恐怖感や、歯医者に行けずに虫歯・歯周病が進行するケースが該当します。
歯科恐怖症と似て非なる精神的な疾患として、パニック障害があります。

パニック障害とは
パニック障害は突然の激しい不安発作が繰り返し起こる疾患で、歯科治療時にも発作が誘発されやすい傾向があります。
発作時には、激しい動悸・息苦しさ・めまい・発汗・恐怖感が現れます。
一般的には閉所で起きやすいと言われていますが、歯科治療でも閉鎖空間や麻酔、痛み、独特の音などが発作の引き金となりやすく、またなるのではないかという再発不安のため、治療中断などにつながります。
従って、歯科恐怖症とパニック障害は、互いに悪影響を与えやすい関係にあると言えます。
歯科治療での強い不安や恐怖がパニック発作を誘発し、その経験がさらに恐怖症を強化する悪循環が生まれます。
2)歯科診療を困難とさせる症状
歯科治療中の強い緊張や恐怖は、交感神経が活発になり、動悸や発汗、めまい、嘔吐反射といった身体反応を引き起こします。
またその特徴によって病名がつく、下記のような症状の原因となります。
パニック発作
上記の様に激しい動悸・息苦しさ・めまい・発汗・恐怖感が現れます。
過換気症候群
精神的不安や極度の緊張などにより過呼吸の状態となり、血液が正常よりもアルカリ性となることで様々な症状を出す状態です。
呼吸困難、過呼吸、動悸、胸痛、手足のしびれ(テタニー症状)などが発生します。
嘔吐反射
喉の奥や舌の付け根が刺激されたときに「えづき」や「吐き気」が出る自然な防御反応です。
体にとっては異物を吐き出す大切な働きですが、歯科治療中に強く出ると治療の妨げになります。
器具が口腔内に入ることで嘔吐反射が誘発されやすく、麻酔や薬剤への不安も発作の原因となります。
嘔吐反射は脳幹で発生し、8割ぐらいはコントロールできない反射ですが、2割ぐらいは意識(気持ち)が関係します。
反射が起きる部位は、スイッチのようなもので、そこに触れなければ反射はおきません。
またその部位は敏感な人でも最後臼歯あたりまでで、歯の萌出など成長に伴い敏感な部位は移動していきます。
近年の口呼吸の増加により、歯科治療で水が入ると呼吸ができないなどの状態になるため、嘔吐口が気道として敏感になってきています。
そのため嘔吐反射は増加傾向にあります。
メニエール病
激しいめまい、耳鳴り、難聴、耳の圧迫感などの症状を特徴とする内耳の障害です。
恐怖心は伴いませんが、突然の回転性めまいが発生し、数分から数時間続くことがあります。
めまいは非常に強く、立っていることが困難になることもあります。
ストレスが原因で発生することもあり、また歯科診療チェアーの動作で発生することもあります。
耳鼻科関連疾患ではありますが、歯科治療が困難となる人も多いです。
3)治療を受けるために、自分でできる対策
恐怖や緊張が引き金になっているこうした反応は、リラックスすることや、担当者との十分なコミュニケーショで軽減することが可能です。
歯科医院独特な音を聞こえないようにしたり、音楽を聴いたりすることも有効です。
腹式呼吸や4-7-8呼吸法なども効果的です。

腹式呼吸
お腹を膨らませるようにゆっくり吸って吐く方法で、緊張や不安をやわらげます。
4-7-8呼吸
4秒吸って、7秒止めて、8秒かけて吐き出すリズムで行います。
嘔吐反射には効果的なツボがあります。
嘔吐反射に効果があると言われているツボ
鎖骨の天突(てんとつ):鎖骨の中央にある凹んだ部分です。

ここを3秒間押し、3秒間待つという動作を繰り返すことで、嘔吐反射を軽減する効果があります。
また、嘔吐反射やメニエール病などは「ここが無理」という、スイッチの様な部位や角度があります。
それ以上は無理しないことが重要です。
歯科医師や歯科衛生士としっかりコミュニケーションを取りつつ、「無理なこと」をお伝えいただくことが重要です。
4)歯科恐怖症の方のために歯科医院が出来ること
歯科恐怖症の予防にはリラックスが最も重要です。
しかし自力でリラックスできない場合は、歯科恐怖症に効果のある麻酔や鎮静法を選ぶことができます。

笑気鎮静
笑気ガスを吸入することでリラックス効果を得ながら治療を受けられる方法です(当院でも小児患者さんに対して実施可能です)。
意識を保ったまま不安や恐怖心を和らげる効果があり、歯科治療に対する恐怖心が強い患者さんにおすすめです。
静脈内鎮静法
プロポフォールなどの静脈麻酔薬を用いて、鎮静を行います。
半分眠った状態で治療を受ける方法です。
大学病院または歯科麻酔科医が在籍する歯科医院で行われています。
(当院では実施しておりません)
全身麻酔
医科の手術の時と同じように、完全に眠った状態で治療を受ける方法です。
人工呼吸器など、大掛かりな麻酔科の設備が必要です。
(当院では実施しておりません)
当院での実績
低年齢のお子さんを含めてかなりの方が笑気のみで、なんとか治療できたとうケースが多く、歯科麻酔科での静脈鎮静・全身麻酔の依頼を行うことは滅多にありません。
様々な配慮を積み重ねて、小さな虫歯から歯科治療に挑戦していただき、なんとか治療を頑張れた、できたという経験が次の治療につながります。
「歯科治療の不安からパニック発作が発生した」という不安を、誤った学習として覚えてしまっている状態をリセットするためには、実際に不安を生む対象に晒されても、恐れている事態が起こらないということを新たに上書きする必要があります。
これは心理学的には系統的脱感作法とよばれる手法です。
系統的脱感作法
少しずつ“恐怖を感じる刺激”に慣れていく訓練法で、恐怖の段階をステップごとに分け、安心できる状態で順に乗り越えていく方法。

具体例:歯科恐怖症の患者さんのケース
ステップ1:見学と説明から始める
まずは診療室に入り、器具やチェアの説明を受ける
→「音やにおい」に慣れることが目的です。
ステップ2:チェアに座る練習
次は実際にチェアに座り、ライトを当てたり、鏡で口の中を確認したりします。
→「ここまでは怖くない」と感じる経験を積みます。
ステップ3:簡単な処置から開始
超音波スケーラーで軽く歯石を取るなど、痛みのない処置を体験します。
→「少しできた」という成功体験を重ねます。
ステップ4:麻酔や治療へ進む
慣れてきた段階で、表面麻酔→注射麻酔→虫歯治療…と徐々にステップアップ。
→最終的には、通常の治療が問題なく受けられるようになります。
治療で泣いてしまうお子さんだけでなく、大人の方でもご要望があれば対応できますので、ご希望の方はお申し出ください。
僕は現在の歯科医療はすごく進んでおり、全身麻酔まで行える大学病院まで含めれば、治療が不可能なことはないと考えております。
いずれかの医療につなげる努力はしますので、まずはご相談ください。
参考文献 「歯科における痛みとそのコントロール」 Dental diamond 2003 第28巻9号
いかがでしたか?
まとめ
・歯科医院での一般的な配慮と、歯科恐怖症やパニック障害などの症状が出る状態での配慮は違いがあります。
・歯科治療中の強い緊張や恐怖は、交感神経が活発になり、動悸や発汗、めまい、嘔吐反射といった身体反応を引き起こします。
歯科診療を困難とさせる疾患や周辺領域にはパニック発作、過換気症候群、嘔吐反射、メニエール病などが挙げられます。
・症状に応じ、様々な対策法やアドバイスが考えられます。
しかし、最も大事なのは小さな(治療)経験から積み上げられる「これならできる」という自信です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
歯科麻酔2 歯科医院での麻酔のしくみ
2025年9月20日
こんにちは。岩国市のつぼい歯科クリニックおとなこども矯正歯科 副院長の吉村剛です。
歯科医院で一番の関門と患者さんからよく言われるもの、それは麻酔です。
僕の治療でも毎日使用しています。
先日、僕の口の中の詰め物が脱離し、患者として同僚の先生に治療していただいた際にも麻酔を受けました。
僕自身もあの麻酔の感覚は、どうやっても好きにはなれないものです。
今回は痛くない麻酔にするための工夫と、麻酔が効きにくい場合の対策についてお話します。
参考リンク
歯科麻酔シリーズ1: 歯科麻酔 なるべく無痛に近い歯科治療の実現のために
1)世界一の麻酔の名手は「蚊」

蚊は人間に気づかれないように刺してきます。
そう!針を刺されているのに、気づかない。
では、蚊はどんな工夫をしているのでしょうか?
・極細の注射針を使う
・時間をかけてゆっくり注入する
・表面を軽く麻酔して感じさせにくくする
これらが蚊のテクニックとされています。
なんかかゆくなってきましたが、歯科医院での麻酔はこのテクニックを模す形で進化しています。
細かく見ていきましょう!
1―1)表面麻酔

• 歯茎の表面に麻酔薬を塗布して感覚を麻痺させる
• 針を刺す際の痛みを軽減
1-2)電動注射器
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• コンピュータ制御で麻酔液をゆっくりと注入する
• 圧力変化による痛みを抑えやすい
1-3)極細針
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• 皮膚や歯茎への侵入時の刺激を小さくする
(点滴などは0.4-0.5mm、歯科麻酔は0.26mmぐらい、約半分、痛みは3割減!)
このような工夫を組み合わせることにより、麻酔処置時の痛みを軽減できるようになっています。
実際、昔よりも痛くなくなったと患者さんに言われることも多いです。
2)麻酔が効きにくい!?どういう場合にそうなるの?
歯科医師は無痛に近い歯科治療を目指していますが、残念ながら「麻酔が効きにくい」というケースは確かにあります。
どのようなことが原因なのでしょうか。
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2-1)炎症が起きている
歯や歯茎に強い炎症がある場合、通常よりも麻酔が効きにくくなることがあります。
炎症によって血流が増加し、麻酔薬が拡散してしまいやすくなり、薬の効果が十分に発揮されないためです。
また、炎症が進行していると患部のpHが低下し、麻酔薬の作用が弱まるという現象があります。
そのため、特に急性の歯の痛みや膿を伴う感染症がある場合には、通常より麻酔が効きにくくなることがあります。
従って、激しい痛みがある場合は治療前に、抗生剤の投薬などを行って炎症を抑えることが有効です。
2-2)飲酒や服薬の影響
治療前にアルコールを摂取していたり、普段から特定の薬を服用していたりすると、麻酔の効果が弱まることがあります。
アルコールは血流を促進する作用があり、効果の持続時間が短くなったり、効きが悪くなったりします。
また、向精神薬や一部の鎮痛剤など常用している薬が影響する場合もあります。
たばこも麻酔が効きにくくなります。
2-3)体質・体調による個人差、部位による効きやすさ
体質やその日の体調による個人差も、麻酔の効果に関わります。
もともと麻酔薬の代謝が早い体質の人もいます。
また、下顎の大臼歯部(奥歯)は麻酔が効きにくい神経の走行であるため、麻酔が効きにくい場合があります。
2-4)強い緊張やストレスを感じている
強い緊張やストレスを感じていると、緊張によって交感神経が活性化し、血流や代謝が変化するため、麻酔が効きにくくなる(と感じる)ケースもあります。
また、緊張していると通常よりも痛みに敏感になり、わずかな刺激でも強く感じてしまいます。
特に怖がりの方やお子さんでは、怖い気持ちが風船のように膨らんでおり、少しの気持ちで爆発してしまい、治療どころではなくなる場合があります。
実際、終わってしまって落ち着けばよく考えたら、
「痛みはたいしたことなかったけど、怖かった…」
という感想はよくあります。
また、気持ちの問題は治療が続くかぎり再現性をもって毎回発生しますので、対策が必要です。
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3)麻酔しても痛い!怖い!そんな時に痛みを感じにくくする方法
「痛い!」「怖い!」と緊張していると、麻酔していても痛みを感じやすくなってしまいます。
痛みをやわらげるためにも、リラックスが最も重要です。
3-1)緊張を和らげる、自力でできる注意ポイント
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・鼻呼吸をする
口で呼吸してしまうと、治療中の水や唾液によって息苦しくなり、より緊張してしまうことがあります。
鼻で大きく息をするようにした方が楽に治療を受けられます。
・目を閉じない/家族や術者の話しかけに耳を傾ける
目や耳からの情報が減ると、体で感じる刺激に集中して痛みが強く感じられるという現象が起きます。
通常、治療中に水しぶきがかからないように、顔にタオルをかけさせていただくことが多いです。
しかし麻酔の効きが不十分な場合は、あえてタオルをかけずに目を開けて治療に臨んでいただくこともあります。
・歯科のチュイーンという音が苦手な場合は、ノイズキャンセリングヘッドホンをつけたり、個室で治療を受ける
痛みの直接的な引き金ではなくても、歯科の音やニオイが原因で、恐怖心・緊張が高まる人がいます。
その場合は、ノイズキャンセリングヘッドホンを用いて音楽を聴きながら治療を受ける、あるいは個室診療室で音やニオイがない状態で治療を受けたりすることも有効です。
当院は防音個室治療室もあるので、ご希望の場合はお気軽にご相談ください(予約制)。
3-2)自力では難しい場合には「鎮静」
・笑気鎮静法(しょうきちんせいほう)
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笑気ガスを吸入することで、リラックス効果を得ながら治療を受けることができる方法です。
意識を保ったままでありながら、不安や恐怖心を和らげる効果や、痛みを感じにくくなる効果があります。
歯科治療に対する恐怖心が強い患者さんや、嘔吐反射が強くて歯科治療が苦手という方におススメです。
笑気鎮静法のメリットとしては、治療開始前に鼻からガスを吸入し、数分程度でリラックスした状態になることが多く、身体への負担が少ない点があげられます。
また薬の効果が切れるのも早いため、治療後は比較的すぐに日常生活に戻れます。
当院の場合は、床下換気システムを設置した個室(2部屋)で笑気鎮静治療を行うことが可能です。
ただし、笑気鎮静法が適していない人もいます。
それは鼻呼吸できない人です。
笑気鎮静法が向かない人
・鼻炎などで鼻呼吸ができない人
・泣いて鼻水が出てしまっている状態の小児
・静脈内鎮静法
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静脈内鎮静法は、静脈に点滴で薬剤を投与し、半分眠ったようなリラックス状態で治療を受けられる方法です。
緊張や恐怖心が大幅に軽減され、痛みに対しても非常に鈍感な状態になるため、治療への不安がとても強い患者さんにも向いています。
歯科麻酔の専門家が在籍する医院や病院などで受けることができます。
静脈鎮静が向かない人
・暴れてしまう小児(点滴のルート確保が難しい)
4)低年齢で泣いて暴れてしまう/知的障害などのために治療困難な場合は「全身麻酔」
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全身麻酔は、眠った状態で治療を受けられる麻酔方法です。
意識もなく、覚醒した時にはすべてが終了しています。
このように聞くと、一般の方でも「それ良いですね!歯医者苦手だから、やってみたい!」と思われるかもしれませんが、実際はそんな簡単なお話ではありません。
全身麻酔での歯科治療のリスク・デメリット
・身体への負担が大きい
局所麻酔や静脈内鎮静に比べ、循環・呼吸に対する影響が強い。
・入院や高度な設備が必要
手術室、麻酔器、人工呼吸管理などの設備が必要で、一般的な歯科医院では対応できません。
・治療に制約がある
全身麻酔は頻繁には行えないため、処置をまとめて1回で行う必要がある。
一般の歯科医院の外来ではどうしても治療が難しい方向けの方法と思ってください。
5)お子様も含めて多くの方が、外来で治療できています
静脈内鎮静や全身麻酔まで行わず、笑気鎮静を使った治療を行うことだけでも、歯科治療で泣いてしまうお子さんを含めてかなりの方が、なんとか治療できたというケースは多いです。
当院でも、外来での治療は危険と判断する場合は大学病院にご紹介させていただいていますが、大多数の方は外来で治療ができています。
特に笑気鎮静は、強いストレスや恐怖に対しては有効だと考えています。
歯科恐怖症などで治療が困難な患者さんには、お薬手帳の内容や現在の通院状況などをお伺いして、必要な情報をもとにオーダーメイドな方法を検討しています。
お気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
・歯科麻酔は、表面麻酔、電動コントロール、極細針を使うことで、痛みが大幅に軽減されます。
・麻酔が効きにくいシチュエーションは確かにあり、患部の炎症、飲酒や服薬の影響、個人差や部位の違いが考えられます。
また、麻酔に強いストレスがある場合も特別な配慮が必要であると考えます。
・リラックスすることが一番大事ですが、物理的、精神的に難しい場合、笑気麻酔などの対応策があります。
最後までお読みいただきありがとうございました!